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仕入先の工場監査のチェックリストと現地のメモから監査報告書の下書きを作り、是正を求める事項を根拠付きの一覧にする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

仕入先の工場で行った監査のチェックリストの判定と現地のメモを Microsoft Copilot に渡し、決まった様式の監査報告書の下書きと、是正を求める事項の一覧を作ります。監査員は下書きを直すだけになり、監査の翌日には仕入先へ報告書を送れます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
商社/小売/製造
対象部門
品質管理/購買
対象業務
書類作成/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
生成
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
条件付き
現在工数
30h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
67%
年間削減
240h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 監査員が現地でチェックリストに判定を付け、気づいたことを手元のメモに書く。写真を撮る
  2. 監査の後、主担当がメモを読み返し、副担当のメモと突き合わせる
  3. 報告書の様式に、監査の概要、章ごとの所見、良かった点を書く
  4. 不適合と観察事項を抜き出し、是正を求める事項の表を作る
  5. 副担当と上長が読み、言い回しと判定の根拠を直す
  6. 仕入先へ報告書を送り、是正の回答の期限を伝える
  7. 是正の回答が届いたら、表に回答と確認の結果を書き足す
導入後(After)
  1. 人監査員が現地でチェックリストに判定を付け、メモを決まった形でその日のうちに打ち込む
  2. 人主担当が、チェックリスト・2名のメモ・前回の報告書を、仕入先のフォルダに保存する
  3. 【AI】 Copilot Chat で、判定が「適合」以外の項目について、事実と要求事項の組の一覧を作らせる
  4. 【AI】 前回の是正を求めた事項が、今回どう確かめられたかの一覧を作らせる
  5. 人主担当が一覧を原本と照らし、事実の写し違いと抜けを直す
  6. 【AI】 Word の Copilot で、確かめた一覧とチェックリストを参照に、報告書の様式に沿った本文の下書きを作らせる
  7. 人主担当が下書きを直し、副担当と上長が確かめる
  8. 人報告書と是正を求める事項の一覧を仕入先へ送る。回答の期限は様式の決まりで記入する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 監査員が現地でチェックリストに判定を付け、気づいたことを手元のメモに書く。写真を撮る
  2. 監査の後、主担当がメモを読み返し、副担当のメモと突き合わせる
  3. 報告書の様式に、監査の概要、章ごとの所見、良かった点を書く
  4. 不適合と観察事項を抜き出し、是正を求める事項の表を作る
  5. 副担当と上長が読み、言い回しと判定の根拠を直す
  6. 仕入先へ報告書を送り、是正の回答の期限を伝える
  7. 是正の回答が届いたら、表に回答と確認の結果を書き足す

(a)報告書を書くのに半日かかる。 3番目と4番目は、メモを読み返しながら文章に起こす作業で、判定はもう済んでいます。それでも、約80項目のチェックリストとメモを見比べながら書くと、1件で2時間を超えます。監査の翌週まで報告書が出ないことが珍しくありません。

(b)監査員ごとに書き方が違う。 ある監査員は「〜が確認できなかった」と事実を書き、別の監査員は「管理が不十分である」と評価を書きます。仕入先は、評価の言葉だけでは何を直せばよいかが分かりません。 是正の回答も的外れになり、やり取りが1往復増えます。

(c)是正の依頼が遅れ、期限があいまいになる。 報告書が出るまで是正の依頼も出せません。監査から2週間たってから「30日以内に回答を」と依頼すると、仕入先にとっては現地で指摘を受けてから1か月半後が期限になります。 期限の起点がどこなのかも、報告書によって違います。

(d)前回の是正がどうなったかが報告書に残らない。 前回の監査で求めた是正を今回確かめたかどうかが、監査員の記憶とメモにしか残っていません。 同じ不適合が繰り返されていても、報告書からは読み取れません。

  1. 【人】 監査員が現地でチェックリストに判定を付け、メモを決まった形でその日のうちに打ち込む
  2. 【人】 主担当が、チェックリスト・2名のメモ・前回の報告書を、仕入先のフォルダに保存する
  3. 【AI】 Copilot Chat で、判定が「適合」以外の項目について、事実と要求事項の組の一覧を作らせる
  4. 【AI】 前回の是正を求めた事項が、今回どう確かめられたかの一覧を作らせる
  5. 【人】 主担当が一覧を原本と照らし、事実の写し違いと抜けを直す
  6. 【AI】 Word の Copilot で、確かめた一覧とチェックリストを参照に、報告書の様式に沿った本文の下書きを作らせる
  7. 【人】 主担当が下書きを直し、副担当と上長が確かめる
  8. 【人】 報告書と是正を求める事項の一覧を仕入先へ送る。回答の期限は様式の決まりで記入する

5番目が、この設計の分かれ目です。 一覧は報告書の骨組みで、ここで写し違いを直しておけば、6番目の下書きは一覧の範囲から外れません。 一覧を確かめずに報告書を書かせると、メモに無い表現が本文に混ざっても気づけません。

3番目と6番目を分けているのも、意図してのことです。 一度に報告書まで書かせると、どの所見がどのメモから来たのかが文章の中に埋もれます。 先に1行1件の一覧を作り、人が確かめてから文章にします。

02今回想定するシステム構成

構成図
監査のチェックリスト(項目・要求事項・判定)
監査員2名のメモ(Word。項目番号付き)
前回の監査報告書と是正の回答
   │  仕入先のフォルダ(SharePoint)に保存
   ▼【トリガー】主担当が監査の翌朝に資料のそろったことを確かめる
Copilot Chat(Work)
   │  / でチェックリスト・メモ・前回の報告書を指定
   ├──▶ 是正を求める事項の一覧(項目番号・判定・事実・要求事項・出典)
   └──▶ 前回の是正の確認結果の一覧
   ▼
【主担当が原本と照らして確かめる】
   ▼
Word の Copilot ── 報告書の様式に沿った本文の下書き(/ で一覧とチェックリストを指定)
   ▼
【主担当が直し、副担当・上長が確かめる】
   ▼
仕入先へ送付(Outlook)
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft Copilot(Copilot Chat と Word の Copilot)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
保管SharePoint(仕入先ごとのフォルダ)社内のファイルサーバー
送付Outlook仕入先とのポータル

新しく足すのは、監査員4名分の Copilot のライセンスだけです。 チェックリストも報告書の様式も、いま使っているものをそのまま使います。

Copilot Chat の / で資料を指定できることを使います。 公式のページでは、Copilot のライセンスがあり Work IQ がオンのとき、/ を入力して、人・ファイル・会議・メール・Teams のチャットを指定できるとされています。Work IQ がオフのときと、Copilot のライセンスが無いユーザーはファイルだけを指定できるとされています。この構成で指定するのはファイルだけなので、どちらでも組めます。

Word の Copilot でも同じように資料を指定します。 公式のページでは、特定の情報源を使うときは / を入力してファイルを選ぶとされています。利用には対象の Microsoft 365 のサブスクリプションか Copilot のライセンスが要り、機能によっては段階的に提供されるとされています。

扱えるファイルの形式も確かめておきます。 公式のページでは、Copilot(Work)で要約に使える形式に .docx、.pdf、.pptx などが、データの分析に使える形式に .xlsx、.csv などが挙げられ、.png や .jpg の画像もプロンプトに加えて質問できるとされています。ただし、この構成では写真をAIに渡しません(第7章の入力データ)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

監査の翌朝、主担当が資料のそろったことを確かめた時点を起点にします。 チェックリスト、監査員2名のメモ、前回の報告書と是正の回答の4つです。副担当のメモが届かないうちに始めると、副担当だけが見た不適合が一覧から抜けます。

監査の当日には始めません。 現地で付けた判定は、帰りの道中や翌朝に2名で見直すことがあり、見直す前の判定で一覧を作ると、変わった判定を後から探すことになります。 判定の見直しを終えてから起点にします。

仕入先から是正の回答が届いた時点が、2回目の起点です。 回答を仕入先のフォルダに保存し、一覧の行ごとに回答を並べさせます(第9章の本格構成)。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
監査のチェックリスト項目番号、章、要求事項の文、判定(適合/軽微な不適合/重大な不適合/観察事項)、判定の理由の短いメモ仕入先のフォルダ(表計算の形式)
監査員のメモ項目番号ごとの観察した事実、聞き取った内容、確認した記録の名前、写真の番号同上(Word。2名分)
前回の監査報告書前回の是正を求めた事項と、仕入先の是正の回答同上
報告書の様式章立て、書き方の決まり(事実と評価を分ける、要求事項の番号を入れる)購買部の共通のフォルダ

質を決めるのは、2つ目のメモの形です。 メモに項目番号が付いていないと、AIはどの事実がどの項目のものかを推測で結び付けます。現地のメモは、チェックリストの項目番号を先頭に書く決まりにします。 手書きのメモは、その日のうちに打ち込みます。

写真はAIに渡しません。 写真には仕入先の製造の現場がそのまま写っていて、監査で見せてもらった範囲を超える情報が含まれることがあります。 メモには写真の番号だけを書き、報告書に写真を添えるかは監査員が決めます。

報告書の様式には、書き方の決まりを文章で書いておきます。 「所見は観察した事実を書き、評価の言葉を使わない」「是正を求める事項には要求事項の項目番号を付ける」などです。この決まりがあることで、第3章の(b)がAIの指示の側でそろいます。

Step3

データの取得方法を決める

資料は、監査員が仕入先のフォルダに保存しています。取得の仕組みを新しく作る必要はありません。 主担当が Copilot Chat と Word の Copilot で、/ を使って資料を指定するだけです。

取るものどこからどうやって
チェックリスト仕入先のフォルダ/ で指定
監査員のメモ(2名分)同上/ で1ファイルずつ指定
前回の報告書と是正の回答同上/ で指定
報告書の様式と書き方の決まり購買部の共通のフォルダWord で様式を開き、/ で書き方の決まりを指定
他の仕入先の報告書他の仕入先のフォルダ指定しない

資料は名前で1つずつ指定します。 指定しないで「この仕入先の監査の報告書を書いて」と頼むと、Copilot は自分で情報源を探し、似た名前の他の仕入先の資料を拾うことがあります。 他社の監査の所見が混ざった報告書は、それだけで信用を失います。

表計算のチェックリストは、クラウドに保存したものを指定します。 公式のページでは、Excel のファイルは OneDrive か SharePoint に保存し自動保存を有効にしたものが対象とされ、ローカルのパスは使えないとされています。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 判定の見直し … 監査員2名で、チェックリストの判定を確定させます
  2. メモの打ち込み … 手書きのメモは打ち込み、各行の先頭に項目番号を付けます
  3. 2名のメモの突き合わせ … 同じ項目について2名の書いた事実が食い違っていないかを、主担当が目で確かめます
  4. ファイル名の統一 … 「仕入先コード_監査日_チェックリスト」「仕入先コード_監査日_メモ_監査員名」のようにそろえます
  5. 個人名の置き換え … メモの中の仕入先の担当者の氏名は、「品質保証課長」のような役職に置き換えます
  6. 写真の番号の確認 … メモに書いた写真の番号と、保存した写真が合っているかを確かめます

2番目と5番目を軽く見ないでください。 項目番号の無いメモは、第7章の指示で「出典の無い事実は書かない」としているため、一覧から落ちます。 落ちた事実は、主担当が照らすときに見つけるしかありません。

5番目は、報告書が仕入先の社内で回し読みされるためです。 「〇〇さんが手順を知らなかった」と書くと、仕組みの問題が個人の問題に読み替えられます。 報告書は仕組みの所見を書くもので、個人を評価するものではありません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、判定が付いた項目を、事実と要求事項の組にして並べることと、それを様式に沿った文章にすることです。

させること中身判断できないときの扱い
是正を求める事項の一覧判定が「軽微な不適合」「重大な不適合」の項目ごとに、メモの事実と要求事項の文を組にするメモに事実が無ければ「事実の記載なし」
観察事項の一覧判定が「観察事項」の項目を、事実と改善の提案の形で並べる同上
前回の是正の確認結果前回の是正を求めた事項ごとに、今回のメモに確認の記載があるかを並べる記載が無ければ「今回の確認の記載なし」
報告書の本文の下書き監査の概要、章ごとの所見、良かった点を様式に沿って書く一覧とメモに無いことは書かない
させないこと理由
判定の変更・追加現地で見たのは監査員。メモの書きぶりで判定を変えない
重大か軽微かの区分区分は取引の条件に関わる。監査員が付けたものを写すだけ
原因の推測原因の分析は仕入先が是正の回答で行う。報告書に推測を書かない
是正の方法の指示方法を決めるのは仕入先。報告書は求める状態を書く
回答の期限の計算様式の決まりで人が記入する
個人の評価仕組みの所見に限る

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 メモに「記録が一部欠けていた」と書かれた項目が「観察事項」になっていると、AIは文面から「軽微な不適合ではないか」と書き添えがちです。 その一文が報告書に残ると、監査員の判定と報告書の記載が食い違います。

3行目も、明記しないと書きます。 不適合の一覧を作らせると、AIは親切に「教育が不足していたためと考えられる」と原因まで書きます。仕入先は、推測された原因に合わせて是正の回答を書き、本当の原因の分析が浅くなります。

Step6

指示内容を固定する

一覧を作るときの指示(Copilot Chat):

あなたは製造業の購買部で、仕入先の工場監査の報告書を作る立場です。
次の資料だけを使ってください。資料に無いことを補わないでください。
/チェックリスト  /メモ_監査員A  /メモ_監査員B  /前回の監査報告書

【作るもの1:是正を求める事項の一覧】
- チェックリストで判定が「軽微な不適合」「重大な不適合」の項目だけを対象にします。
- 各項目について、メモから観察した事実を書き写してください。
  メモの文を要約してよいのは、意味を変えない範囲だけです。
  評価の言葉(不十分、不適切、甘い など)を足さないでください。
- 要求事項は、チェックリストの要求事項の文をそのまま写してください。
- 判定は、チェックリストの判定をそのまま写してください。
  判定を変えたり、判定の無い項目に判定を足したりしないでください。
- メモに事実の記載が無い項目は、事実の欄に「事実の記載なし」と書いてください。
- 2名のメモで同じ項目の事実が違う場合は、両方を並べ「メモの食い違い」と書いてください。
- 原因の推測、是正の方法、回答の期限は書かないでください。

【作るもの2:観察事項の一覧】
- 判定が「観察事項」の項目について、同じ形で並べてください。

【作るもの3:前回の是正の確認結果】
- 前回の監査報告書で是正を求めた事項ごとに、
  今回のメモに確認の記載があるかを並べてください。
- 記載があれば、その文を写してください。無ければ「今回の確認の記載なし」と書いてください。
- 是正が済んだかどうかの結論は書かないでください。

【共通】
- 人の氏名は書かないでください。役職か部署で書いてください。
- 各行に、出典(ファイル名と項目番号)を付けてください。
- 出力は、次の列の表にしてください。
  項目番号/章/判定/観察した事実/要求事項/出典/状態

「評価の言葉を足さない」を例で示しているのは、何も言わないと足すからです。 「記録が2件欠けていた」というメモが、「記録の管理が不十分であり、2件の欠落が認められた」になります。仕入先が直したいのは「不十分」ではなく、2件の欠落です。

「是正が済んだかどうかの結論は書かない」も同じです。 今回のメモに「手順書が改訂されていた」とあれば、AIは「是正済み」と書きます。手順書が改訂されていても、現場で守られているかは別の確認です。 結論は監査員が付けます。

報告書の本文を書くときの指示(Word の Copilot):

開いている様式に沿って、監査報告書の本文の下書きを作ってください。
次の資料だけを使ってください。
/是正を求める事項の一覧(確認済み)  /チェックリスト  /書き方の決まり

- 「監査の概要」には、監査日、監査の範囲(チェックリストの章)、
  判定の件数(適合・軽微な不適合・重大な不適合・観察事項ごと)を書いてください。
  件数はチェックリストの判定を数えた値だけを使ってください。
- 「章ごとの所見」には、章ごとに、一覧の事実をもとに書いてください。
  一覧に無い所見を足さないでください。
- 「良かった点」には、メモに「良好」「優れている」と書かれた事実だけを書いてください。
  メモに無ければ「記載なし」としてください。
- 書き方の決まりに従い、事実と評価を分けて書いてください。
- 原因の推測、是正の方法、取引の継続に関わる記載はしないでください。

件数を「数えた値だけ」に限るのは、本文の件数と一覧の件数を合わせるためです。 本文に「軽微な不適合5件」とあり、一覧が6行だと、仕入先はどちらが正しいのかを問い合わせてきます。 件数は主担当が最後に一覧と照らします。

Step7

出力形式を固定する

是正を求める事項の一覧は、次の列の表で受け取ります。

項目番号章判定観察した事実要求事項出典状態
4.3工程の管理軽微な不適合(メモの事実)(チェックリストの要求事項の文)メモ_監査員A 4.3記載あり
6.1計測器の管理重大な不適合(監査員Aの事実)/(監査員Bの事実)(要求事項の文)メモ_監査員A 6.1/メモ_監査員B 6.1メモの食い違い
7.2教育軽微な不適合事実の記載なし(要求事項の文)チェックリスト 7.2事実の記載なし

JSONではなく表で受け取るのは、この一覧がそのまま報告書の別紙になるからです。 後段に機械で読み込む仕組みは無く、主担当が照らして直し、仕入先へ送るので、Word の表として扱えるほうが手数が少なくなります。

列を固定する理由は3つあります。 1つ目は、「判定」をチェックリストからの写しにして、本文と一覧の判定を必ず一致させることです。2つ目は、「観察した事実」と「要求事項」を別の列にして、仕入先が「何を見られたか」と「何を求められているか」を取り違えないようにすることです。

3つ目は、「状態」の列で、主担当が先に見る行を絞れることです。 「メモの食い違い」と「事実の記載なし」の行は、主担当が監査員に確かめてから直します。

仕入先へ送る一覧には、次の2列を人が足します。

足す列書く人内容
回答の期限主担当様式の決まり(判定の区分ごとの日数)で記入する
是正の回答仕入先原因・対策・実施日

回答の期限をAIに書かせないのは、起点の日を間違えると取り返しがつかないからです。 監査日から数えるのか、報告書の送付日から数えるのかは自社の決まりで、様式の側に計算の式を持たせておきます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
仕入先のフォルダ(SharePoint)/ で指定チェックリスト・メモ・前回の報告書を渡す
Copilot Chat主担当の操作是正を求める事項・観察事項・前回の確認結果の一覧を作る
Word の Copilot主担当の操作様式に沿った本文の下書きを作る
仕入先の管理表主担当が記入監査日、判定の件数、回答の期限
Outlook主担当が送付報告書と一覧を仕入先へ送る

仕入先の管理表には、AIから何も書き込みません。 管理表の「重大な不適合の件数」は、取引の条件や次回の監査の頻度に関わる数字です。数字は主担当がチェックリストを数えて記入します。

仕入先への送付も自動にしません。 報告書は仕入先との取引の記録で、送った後に直すと、どちらの版が正しいのかが問題になります。 上長が確かめた版だけを送ります。

Step9

人が確認する

  1. 一覧の判定をチェックリストと照らす … 判定の列がチェックリストと1件ずつ一致しているかを見ます。件数も数えて合わせます
  2. 「メモの食い違い」「事実の記載なし」の行を直す … 監査員に確かめ、事実を書き足すか、どちらの事実を採るかを決めます
  3. 事実の写しを原本と照らす … メモの文と一覧の文を並べ、評価の言葉が足されていないか、数字が変わっていないかを見ます
  4. 前回の是正の確認結果に結論を付ける … 「確認済み」「再度の是正を求める」を監査員が付けます
  5. 本文の下書きを直す … 一覧に無い所見や、原因の推測が混ざっていないかを見ます
  6. 副担当と上長が確かめる … これまでどおりです

3番目を省かないでください。 報告書は仕入先にとって、自社の工場について書かれた公式の記録です。 「2件」が「数件」になっただけで、仕入先は是正の範囲を決められなくなります。

目標は1件60分です。 一覧の照らし合わせに25分、本文の手直しに20分、副担当と上長の指摘への対応に15分を見込みます。不適合の多い監査は60分を超えます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
メモに項目番号が無い行がある一覧から落ちる。主担当が項目番号を付けて指定し直す
2名のメモが同じ項目で食い違う「メモの食い違い」として出る。監査員2名で確かめる
判定の無い項目がある一覧に入れない。判定の付け忘れとして監査員に戻す
チェックリストを開けない・指定できないクラウドに保存し自動保存を有効にしたファイルか確かめる
他の仕入先の資料が混ざる資料を名前で指定し直す。混ざった版は捨てる
本文に原因の推測が入る削る。同じことが続くなら指示を見直す
前回の報告書が見つからない前回の確認結果の一覧は作らず、その旨を報告書に書く
監査の範囲がチェックリストの一部だけ監査しなかった章を「対象外」として概要に書く

上の2行が大半を占めます。 どちらもAIの問題ではなく、現地のメモの取り方の問題です。 項目番号を先に書く決まりが守られれば、ほとんど起きません。

Step11

記録を残す

  • 仕入先ごとに、監査日、指定した資料のファイル名と版
  • AIが出した一覧と本文の下書き(主担当が直す前のもの)
  • 主担当が確かめた後の一覧と、送付した報告書
  • 主担当が直した箇所と、その理由(判定の写し違い、評価の言葉の追加、事実の抜けなど)
  • 仕入先の是正の回答と、次回の監査での確認結果

2つ目の「直す前のもの」を残すのは、AIがどこで誤りやすいかを知るためです。 同じ種類の直しが続くなら、指示か、メモの取り方に原因があります。3か月分を見直すと、指示に足すべき一文が見えてきます。

最後の行は、次回の監査の資料になります。 前回の是正の回答と今回の確認結果が仕入先のフォルダに残っていれば、次回の監査の前に、繰り返している不適合を拾えます。

04実装レベルの3段階

最小構成:先月の監査の資料を Copilot Chat に指定し、一覧を作らせて当時の報告書と比べる / 一覧づくりの試し
半自動化:上記+すべての監査で、一覧を確かめてから Word の Copilot で本文の下書きを作る / 是正を求める事項の一覧、前回の確認結果、本文の下書き
本格構成:上記+仕入先の是正の回答を一覧の行ごとに並べ、回答の抜けと期限切れを拾う / 是正の回答の受け取りと確認の準備

本記事の想定は半自動化です。 1件180分が60分になる見込みは、この段階のものです。削れるのは文章に起こす作業で、照らす作業は残ります。 本格構成で効くのは、第3章の(d)です。 是正の回答を一覧の行に並べると、回答の無い行と、回答はあるが原因が書かれていない行が先に分かります。ただし、回答が是正として足りるかの判断は監査員が行います。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を3か月続けると、監査員ごとのメモの取り方の違いと、AIが誤りやすい書き方が分かります。 それをメモの決まりと指示に反映してから、本格構成に進みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
10 件
1件あたり現在時間
180 分
1件あたり導入後時間
60 分
現在  10件 × 180分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 10件 × 60分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
20h
削減率
67%
年間削減時間
240h
年間金額換算(時間単価3,800円)
91万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 部品・材料の仕入先が多く、購買部や品質管理部が年間の計画で仕入先の工場を順に回り、毎月いくつもの監査報告書を書いている製造業・商社・小売業(自社ブランド品の委託先)など。監査のチェックリストが決まっていて、項目ごとに判定を付ける運用がある場合。報告書の書き方や是正の求め方が監査員ごとにばらつき、仕入先から「何を直せばよいのか分からない」と言われたことがある場合。Microsoft 365 を使っている場合。
向いていない
  1. 監査が年に数回で、報告書を書く量が少ない場合。チェックリストが無く、監査員が自由な形式でメモを取っている場合(先にチェックリストを作る必要があります)。仕入先との秘密保持契約で、監査で得た情報を外部のクラウドで扱うことが禁じられている場合。なお、不適合かどうかの判定、是正の重さの区分、取引を続けるかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の監査を2件選ぶ(仕入先から是正の回答の書き直しを求められた件があれば、それを入れる)
  2. その2件のチェックリストとメモを、Copilot Chat に / で指定する
  3. 第7章の指示で、是正を求める事項の一覧を作らせる
  4. 当時送った報告書の表と、1行ずつ突き合わせる
  5. 判定が写し違えられていないか、評価の言葉が足されていないかを見る

5番目がいちばん大事な確認です。 判定がすべてチェックリストと一致し、評価の言葉が足されていなければ、本文の下書きまで進めます。

出てきた内容判断
判定が一致し、事実がメモのとおりに写された次の監査から使い始める
評価の言葉や原因の推測が足された指示の書き方で直る。構成は有効
どの項目の事実かの結び付けが違うメモの取り方が先。 項目番号を付ける決まりを作る

3行目が出ても失敗ではありません。 メモの取り方が報告書の書きにくさの原因だった、と分かったということです。項目番号を付けたメモで1件試し直すと、結び付けの違いはほぼ無くなるはずです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
判定が写し違えられる・足される判定はチェックリストの写しに限ると明記する。 件数を数えて照らす
評価の言葉が足される例を挙げて禁じる。直した箇所を記録する
原因の推測や是正の方法が書かれる書かないと明記する。原因の分析は仕入先の仕事
メモの事実と項目の結び付けが違うメモの各行に項目番号を付ける
他の仕入先の資料が混ざる資料を名前で1つずつ指定する
写真をAIに渡してしまう写真は渡さない決まりにし、メモに番号だけを書く
前回の是正を「是正済み」と書く結論は書かないと明記し、監査員が付ける
回答の期限がずれるAIに書かせず、様式の計算の式で記入する
仕入先の担当者の氏名が残る前処理で役職に置き換える
下書きを照らさずに送る上長の確認を経た版だけを送る

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、監査員が現地で決めたことを、AIが文面から読み替えるという同じ形をしています。判定と事実は写すもので、書き直すものではない、という指示で防ぎます。

下から2行目も早く効いてきます。 報告書は仕入先の社内で回し読みされ、名前の出た担当者が責めを負う形になると、次の監査で現場が記録を見せなくなります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 仕入先の工場の品質の体制・工程・記録についての所見、仕入先の担当者の役職、自社の取引の条件に関わる判定です。

  1. 秘密保持契約の範囲を確かめる … 監査で見せてもらった記録や工程の情報は、仕入先との秘密保持契約の対象になっていることが多くあります。社内の Microsoft 365 の中で扱うことがその範囲に入るかを、法務と確かめてください
  2. Web検索を止める … 公式のページでは、Web検索が有効なとき、アプリの中で文書を開いて指示したり、文書を名指しして指示したりすると、Bing へ送られる検索語が文書の内容の影響を受けうるとされ、その検索語には DPA が適用されないとされています。管理者が Allow web search in Copilot のポリシーで止められるので、監査の資料を扱う部署では止めておく前提にします
  3. 権限を仕入先ごとに見直す … 公式のページでは、Copilot は利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを表示するとされています。監査の資料のフォルダは、監査員と上長に限ります
  4. 写真を渡さない … 製造の現場の写真には、監査の範囲を超える情報が写ることがあります
  5. 個人を評価しない … 報告書は仕組みの所見を書くもので、仕入先の担当者個人の評価を書きません。氏名は役職に置き換えます
  6. 判定と取引の判断を任せない … 公式のページでは、生成AIの応答は100%事実であるとは保証されないとされています。判定、重さの区分、取引を続けるかの判断は、監査員と購買部の責任者が行います

なお、公式のページでは、プロンプト・応答・Microsoft Graph を通じてアクセスしたデータは基盤モデルの学習に使われないとされています。

誤りが起きた場合のリスクは、監査員の判定と違う判定が報告書に載ることと、メモに無い評価や推測が仕入先に届くことの2つです。 どちらも、写すべきものを写させ、照らしてから送ることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:メモの取り方を決める

監査員全員で、現地のメモの各行の先頭にチェックリストの項目番号を書く決まりを作ります。あわせて、写真はメモに番号だけを書くこと、仕入先の担当者は役職で書くことを決めます。

2週目:書き方の決まりを文章にする

報告書の様式に、「所見は事実を書き、評価の言葉を使わない」「是正を求める事項には要求事項の項目番号を付ける」などの決まりを書き足します。上長がこれまでに出した書き方の指摘を集めると、決まりの元になります。

3週目:先月の監査で試す

先月の監査を2件選び、第7章の指示で一覧を作らせて、当時の報告書と突き合わせます。判定の写し違いと評価の言葉の追加を最優先で見ます。 あわせて、Web検索を止める設定と、監査の資料のフォルダの権限を情報システム部と確かめます。

4週目:次の監査から使い始める

次の監査から、翌朝に一覧を作り、照らしてから本文の下書きを作ります。報告書を監査の翌日に送れたかを記録します。

2か月目: 月10件のすべての監査で使い、1件あたりの時間を記録します。主担当が直した箇所を集めます。3か月目以降: 直した箇所の記録から指示とメモの決まりを見直し、是正の回答を一覧に並べる本格構成を試します。監査員が替わっても同じ書き方の報告書が翌日に出るようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-15
確認した内容情報源確認日
Word の Copilot で、特定の情報源を使うときは / を入力してファイルを選ぶこと。選んだ文を表にできること。利用に対象の Microsoft 365 のサブスクリプションや Copilot のライセンスが要り、機能によっては段階的に提供されることMicrosoft Support: Draft and add content with Copilot in Word2026-10-14
Copilot のライセンスがあり Work IQ がオンのとき、/ で人・ファイル・会議・メール・Teams のチャットを指定できること。Work IQ がオフのときと Copilot のライセンスが無いユーザーはファイルだけを指定できることMicrosoft Support: Refer to specific files and more in Microsoft Copilot2026-10-14
Copilot(Work)で要約に使える形式に .docx、.pdf、.pptx など、データの分析に使える形式に .xlsx、.csv などが挙げられ、.png や .jpg の画像をプロンプトに加えられること。ローカルのパスは使えず、アップロードしたファイルかクラウドのファイルに限られることMicrosoft Support: File formats supported by Copilot2026-10-14
Copilot が利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを表示すること。プロンプト・応答・Microsoft Graph のデータが基盤モデルの学習に使われないこと。生成AIの応答は100%事実であるとは保証されないこと。Microsoft 365 Copilot が Microsoft Copilot に改称されたことMicrosoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot2026-10-14
Web検索が有効なとき、アプリの中での指示や文書の指定によって生成される検索語が文書の内容の影響を受けうること。生成された検索語に DPA が適用されないこと。管理者が Allow web search in Copilot のポリシーで Web検索を止められることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for web search in Microsoft Copilot and Microsoft Copilot Chat2026-10-14

監査で得た情報を社内のクラウドで扱えるかは、仕入先との秘密保持契約に従い、法務と確かめてください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。Copilot の機能は段階的に提供されるものがあり、利用できる範囲はライセンスと組織の設定によって異なります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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