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議会の答弁書の案を、過去の答弁・計画書の数値・施策の名称と照らして校正し、言い回しの食い違いを答弁の調整の前に拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

担当課が起案した答弁書の案を、過去の確定した答弁・計画書の数値・施策の正式な名称と照らして校正します。食い違いの箇所を根拠付きの一覧にし、答弁の調整に回す前に起案した課へ返します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
自治体
対象部門
経営企画/総務
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
必須
現在工数
20h/月
AI導入後
8h/月
想定削減
60%
年間削減
144h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当課が答弁書の案を起案し、会期のフォルダに置く
  2. 政策企画課の職員が案を開き、同じ議員・同じテーマの過去の答弁を会期のフォルダから探す
  3. 過去の答弁と案を並べ、方針の言い回しが変わっていないかを読む
  4. 案にある数値(目標値、実績値、事業費)を、総合計画や分野別計画の PDF で探して確かめる
  5. 施策の名称、組織の名称、表記を、庁内の表記の基準と見比べる
  6. 気づいた点を答弁書の案にコメントで書き、担当課に返す
  7. 担当課が直した案を、もう一度開いて確かめる
導入後(After)
  1. 人担当課が答弁書の案を起案し、会期のフォルダに置く
  2. 人政策企画課の職員が案を開き、本文を答弁校正用のエージェントに貼って校正を頼む
  3. 【AI】 エージェントが、過去の確定した答弁・計画書・施策の名称の台帳・言い回しの手引を探し、食い違いを根拠付きで一覧にする
  4. 人職員が一覧の根拠を開いて確かめ、指摘として残すものを選ぶ
  5. 人職員が指摘を答弁書の案にコメントで書き、担当課に返す
  6. 人担当課が直し、または「方針の変更による」と理由を書いて答弁の調整に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当課が答弁書の案を起案し、会期のフォルダに置く
  2. 政策企画課の職員が案を開き、同じ議員・同じテーマの過去の答弁を会期のフォルダから探す
  3. 過去の答弁と案を並べ、方針の言い回しが変わっていないかを読む
  4. 案にある数値(目標値、実績値、事業費)を、総合計画や分野別計画の PDF で探して確かめる
  5. 施策の名称、組織の名称、表記を、庁内の表記の基準と見比べる
  6. 気づいた点を答弁書の案にコメントで書き、担当課に返す
  7. 担当課が直した案を、もう一度開いて確かめる

(a)過去の答弁を探すのに時間がかかる。 同じテーマの質問は、別の議員から何年かおきに出ます。会期ごとのフォルダを何年分も開き、ファイル名から見当をつけて探します。 見つからなければ、そのまま点検が済んだことになります。

(b)数値の時点を取り違える。 総合計画の目標値は策定時の値、分野別計画は改定のたびに更新、実績値は年度ごとに変わります。案に「令和7年度末で85%」と書かれていても、どの計画の、どの時点の値かを確かめないと、別の計画の数字と食い違います。

(c)施策の名称が古いまま残る。 事業の再編で名称が変わった施策が、前の答弁を写した案にそのまま残ります。 議場で旧称を読み上げると、会議録にそのまま残ります。

(d)点検の目が人に頼っている。 政策企画課の3名のうち、過去の答弁の経緯を覚えているのは長く担当している1名だけということがよくあります。その人が見た案と、他の人が見た案とで、拾える食い違いの数が違います。

  1. 【人】 担当課が答弁書の案を起案し、会期のフォルダに置く
  2. 【人】 政策企画課の職員が案を開き、本文を答弁校正用のエージェントに貼って校正を頼む
  3. 【AI】 エージェントが、過去の確定した答弁・計画書・施策の名称の台帳・言い回しの手引を探し、食い違いを根拠付きで一覧にする
  4. 【人】 職員が一覧の根拠を開いて確かめ、指摘として残すものを選ぶ
  5. 【人】 職員が指摘を答弁書の案にコメントで書き、担当課に返す
  6. 【人】 担当課が直し、または「方針の変更による」と理由を書いて答弁の調整に回す

4番目が、この設計の分かれ目です。 一覧に出たものをそのまま返すと、方針を変えた答弁にまで「前回と違う」と指摘が付きます。職員が根拠を開き、誤りか、意図した変更かの見当をつけてから返します。

6番目で「方針の変更による」と書かせるのは、調整の場の手間を減らすためです。 前回と言い回しが違う箇所に理由が添えてあれば、副市長との協議で「なぜ変わったのか」から話を始めずに済みます。

02今回想定するシステム構成

構成図
担当課が答弁書の案を起案(Word。会期のフォルダ)
   ▼【トリガー】政策企画課の職員が案を開く
Microsoft Copilot(Agent Builder で作る答弁校正用のエージェント)
   │  知識:過去の確定した答弁(会期ごとにまとめた文書)
   │        総合計画・分野別計画(PDF)
   │        施策の名称と数値の台帳(SharePoint のリスト)
   │        答弁の言い回しの手引・表記の基準(埋め込みの文書)
   ├──▶ 数値と時点の食い違い
   ├──▶ 施策の名称の食い違い(旧称・略称)
   ├──▶ 過去の答弁との言い回しの違い(前回の該当箇所を並べる)
   └──▶ 言い回しの決まり・表記との違い
   ▼【職員が根拠を開いて確かめる】
答弁書の案にコメント → 担当課 → 答弁の調整へ
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot。Agent Builder で作る答弁校正用のエージェントと、Word の Copilot)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
文書の置き場SharePoint(会期ごとのフォルダ、計画書のフォルダ)-
台帳SharePoint のリスト(施策の名称と数値の台帳)-

新しく足すのは、政策企画課の3名の Copilot のライセンスと、答弁校正用のエージェントだけです。 起案する各課には、ライセンスは要りません。

エージェントは Agent Builder で作ります。 知識として SharePoint のファイルを100まで、リストを1つまで、端末から埋め込むファイルを20まで指定できるとされています。100という上限があるので、過去の答弁は1件1ファイルではなく、会期ごとに1つの文書にまとめます。 年4回の定例会と委員会の分を5年分まとめれば、数十ファイルに収まります。

施策の名称と数値の台帳は、SharePoint のリストで持ちます。 リストは2万行・生の文字で50MBまでとされています。施策の正式な名称、旧称、略称、計画上の目標値、最新の実績値、その時点、出典の計画と頁を1行に並べます。この台帳が、数値と名称を照らす相手になります。

Word の Copilot だけでも、案についての質問はできます。 Word の Copilot は開いている文書について質問に答え、どこから情報を取ったかを引用で示すとされています。ただし、過去の答弁や台帳と照らすには、それらを知識に持つエージェントが要ります。最小構成は Word の Copilot、半自動化はエージェント、と分けます(第8章・第9章)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

政策企画課の職員が、答弁書の案を開いたときに動かします。 案がフォルダに置かれたことを検知して自動で校正する仕組みは作りません。答弁書の案は、置かれた後にも担当課が直し続けることがあり、自動で動かすと古い版を校正してしまいます。 担当課から「点検をお願いします」の連絡を受けてから動かします。

連絡の決まりは、答弁書の案のファイル名で表します。 担当課は、点検に出せる状態になったらファイル名の末尾に「_点検依頼」と付けます。政策企画課の職員は、会期のフォルダでこの名前のファイルだけを開きます。版を取り違えないための、いちばん簡単な決まりです。

定例会の月は、1日2回にまとめて動かします。 午前と午後に「_点検依頼」のファイルをまとめて開き、順に校正を頼みます。届くたびに動かすより、同じテーマの案を続けて見られるので、職員の判断がそろいます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
答弁書の案質問の要旨、答弁の本文、起案した課、答弁者会期のフォルダ(Word)
過去の確定した答弁会期、議員名、質問の要旨、確定した答弁の本文会期ごとにまとめた文書(SharePoint)
計画書総合計画、分野別計画の本文と数値の表計画書のフォルダ(PDF)
施策の名称と数値の台帳正式な名称、旧称・略称、目標値、実績値、その時点、出典の計画と頁SharePoint のリスト
答弁の言い回しの手引「検討」「研究」「実施」の段階の使い分け、使わない言い回し埋め込みの文書
表記の基準庁内の表記の決まり(数字・送り仮名・組織名)埋め込みの文書

質を決めるのは、4行目の台帳です。 計画書の PDF から数値を探させると、同じ指標が複数の計画に違う時点で載っていて、どれと照らすべきかをAIが選ぶことになります。 台帳に「この指標はこの計画のこの時点の値を正とする」と決めておけば、照らす相手が1つに決まります。

過去の答弁は、確定版だけを入れます。 起案の途中の版や調整前の版を入れると、採られなかった言い回しを「前回の答弁」として示してしまいます。 会議録と見比べて確定版だと分かったものだけを、会期ごとの文書にまとめます。

会期ごとの文書は、たとえば次の形でまとめます。

【令和7年第3回定例会 一般質問 答弁(確定版)】
◆質問番号 12 議員:〇〇 質問の要旨:子育て支援の拠点の整備
答弁者:こども未来部長
答弁:子育て支援拠点の整備につきましては、第2期子ども・子育て
支援事業計画に基づき、令和8年度までに市内5か所の整備を進めて
まいります。……
◆質問番号 13 ……

質問ごとに「◆質問番号」の見出しを付けるのは、引用を1件の答弁に絞るためです。 見出しが無いと、引用が会期の文書全体を指し、どの答弁が根拠かを職員が探し直すことになります。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
答弁書の案の本文職員が Word から本文を写してエージェントに貼る校正の対象
過去の確定した答弁エージェントの知識に、会期ごとの文書を指定する言い回しの違いを拾う
計画書エージェントの知識に、計画書のフォルダを指定する台帳に無い数値の出典を探す
施策の名称と数値の台帳エージェントの知識に、リストを指定する名称と数値の照合
言い回しの手引と表記の基準エージェントに埋め込む言い回しと表記の照合

台帳のリストは、リストそのもののURLで指定します。 サイトを指定しても、そのサイトのリストは含まれないとされています。

計画書のフォルダは、URLで指定します。 SharePoint のフォルダのURLを入れると、エージェントはそのURLと配下を探すとされています。計画書を改定したら、古い版は別のフォルダに移します。古い版が配下に残っていると、改定前の数値を根拠に出してきます。

新しく置いたファイルは、すぐには使われません。 SharePoint に新しく置いたファイルは、エージェントの回答に含まれるまで数分かかることがあるとされ、知識の欄に「Preparing」と出ている間は使われません。定例会の直前に確定した前の会期の答弁を足すときは、足した後に知識の欄の表示を確かめてから使います。

「指定した情報源だけを使う」の設定をオンにします。 Agent Builder の「Only use specified sources」は、指定した情報源を優先させる設定で、一般的な知識を完全に止めるものではないとされています。そのため、指示の側でも「根拠の無い指摘をしない」と書きます(後述)。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 過去の答弁を会期ごとの文書にまとめる … 確定版だけを、「◆質問番号」の見出しを付けて並べます
  2. 施策の名称と数値の台帳を作る … 答弁によく出る指標から始めます
  3. 計画書の古い版をフォルダから外す … 改定のたびに行います
  4. 答弁書の案から、質問の要旨と答弁の本文だけを写す … 起案者の連絡先や決裁の欄は貼りません
  5. 答弁の言い回しの手引を文書にする … 長く担当している職員の頭の中にある使い分けを書き出します

5番目が、第3章の(d)への答えです。 「検討してまいります」は実施に向けて具体的に考えること、「研究してまいります」は実施を約束しない段階、といった使い分けは、たいてい文書になっていません。 一度書き出せば、エージェントが照らす相手になり、新しく来た職員の教材にもなります。

手引は、たとえば次の形で書きます。

【答弁の言い回しの手引(抜粋)】
3.1 方針の段階
  実施してまいります …… 予算の裏付けがあり、実施が決まっている
  進めてまいります …… 計画に位置付けがあり、取り組みが始まっている
  検討してまいります …… 実施に向けて具体的に考える。時期は約束しない
  研究してまいります …… 実施を約束しない。他市の事例などを調べる段階
3.2 使わない言い回し
  「前向きに善処します」「できる限り努力します」(段階が読み取れないため)

段階の言葉を表にしておくと、過去の答弁との違いが「一段進んだ」「一段下がった」として読めます。 エージェントの指摘も、前回と今回の言葉がこの表のどこに当たるかで示せます。

2番目の台帳は、最初から全部を作りません。 過去1年の答弁書に出てきた数値を数え、よく出る上位30の指標から行を作ります。 台帳に無い数値は計画書から探させ、出典を示せなければ「台帳に無い」として職員に回します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、答弁書の案の文を、知識にある記録と照らして食い違いを拾い、根拠を並べることだけです。

照らすもの照らし方判断できないときの扱い
数値と時点台帳の値・時点と一致するか。台帳に無ければ計画書の該当箇所根拠が見つからなければ「出典不明」
施策の名称台帳の正式な名称か。旧称・略称なら正式な名称を示す台帳に無い名称は「台帳に無い」
過去の答弁との言い回し同じテーマの確定した答弁と、方針の段階(検討・研究・実施)が違うか同じテーマの答弁が見つからなければ「該当なし」
言い回しの決まり手引で使わない言い回し、段階の言葉の使い方手引に無い言い回しは指摘しない
表記表記の基準と違う書き方基準に無いものは指摘しない
させないこと理由
答弁の内容の良し悪しの判断何を答えるかは首長と部長が決める
過去と違う言い回しを「誤り」とすること方針の変更かもしれない。違いを示すだけ
答弁の文の書き直し直すのは起案した課。指摘には修正の候補だけを付ける
根拠の無い指摘一般的な知識からの指摘は、照らす相手が無い
数値の計算・換算割合を計算し直したり年度を読み替えたりしない

2行目の「誤りとしない」がいちばん大事です。 議会の答弁は、前回の答弁から一歩進めた言い回しにすること自体に意味があります。「前回は『研究してまいります』、今回は『検討してまいります』」は、誤りではなく、担当課が決めた前進かもしれません。 AIの出力では「違い」とだけ書かせ、「誤り」という言葉を使わせません。

5行目の計算の禁止も効きます。 台帳に「達成率 85%」とあり、案に「目標の約8割を達成」とあれば、AIはこれを一致と判定しがちです。 答弁では「85%」と「約8割」のどちらで言うかも表現の決まりなので、数値の言い方が台帳と違えば、違いとして出させます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは市の政策企画課で、議会の答弁書の案を校正する立場です。
貼られた答弁書の案を、知識にある記録と照らして、食い違いを拾ってください。
答弁の内容を良くする提案はしないでください。

【照らすもの】
1. 数値と時点 …… 施策の名称と数値の台帳。台帳に無ければ計画書。
2. 施策の名称 …… 台帳の正式な名称、旧称、略称。
3. 過去の答弁 …… 同じテーマの確定した答弁の、方針の段階の言い回し。
4. 言い回しの決まり …… 答弁の言い回しの手引。
5. 表記 …… 表記の基準。

【厳守事項】
- 指摘には、必ず根拠の文書名と、その中の該当箇所(質問番号・頁・行)を
  付けてください。根拠を示せない指摘は書かないでください。
- 過去の答弁と言い回しが違う場合は「違い」と書き、「誤り」と書かないでください。
  前回の答弁の該当の文をそのまま写してください。
- 数値は、台帳または計画書に書かれた値と時点をそのまま写してください。
  計算、換算、年度の読み替えをしないでください。
- 「約8割」と「85%」のように言い方が違う場合も、違いとして挙げてください。
- 答弁の文を書き直さないでください。修正の候補は、正式な名称や
  台帳の値のように、根拠の文書にある言葉だけにしてください。
- 手引と基準に無いことは指摘しないでください。
- 同じテーマの過去の答弁が見つからない場合は「該当なし」と書いてください。

【出力】
指摘の一覧(表)と、最後に「照らせなかった数値・名称」の一覧。

この指示は、エージェントの指示として Agent Builder に書いておきます。 職員は答弁書の案を貼り、「この案を校正して」と頼むだけにします。3名が毎回指示を貼り直すと、人によって指示が変わり、第3章の(d)が戻ってきます。

「根拠を示せない指摘は書かない」を最初に置いているのは、一般的な知識での指摘を止めるためです。 前述のとおり、指定した情報源だけを使う設定は一般的な知識を完全には止めません。根拠の文書名と箇所を必須にすれば、知識に無い指摘は出しようがなくなります。

Step7

出力形式を固定する

表の形で返させます。 この構成ではシステムへの自動登録をしないため、JSON ではなく、職員が読んで答弁書の案のコメントに写しやすい表を出力の形にします。

【指摘の一覧】
| No | 種別 | 案の記述 | 根拠の記述 | 根拠(文書・箇所) | 修正の候補 |
| 1 | 数値 | 令和7年度末で85% | 令和6年度末 82.4% | 台帳 行12(第3次総合計画 p.48) | 時点の確認 |
| 2 | 名称 | 子育て応援プラザ | 子ども家庭センター(旧称:子育て応援プラザ) | 台帳 行31 | 子ども家庭センター |
| 3 | 過去の答弁 | 整備を検討してまいります | 整備を進めてまいります | 令和7年第3回定例会 質問番号12 | (違い。方針の変更か要確認) |
| 4 | 言い回し | 前向きに善処します | 使わない言い回し | 言い回しの手引 3.2 | - |

【照らせなかった数値・名称】
| 案の記述 | 理由 |
| 待機児童の解消率 | 台帳に無い。計画書にも該当なし |

1つ目の理由は、根拠の列があることです。 職員は根拠の文書と箇所を開き、指摘が正しいかを確かめます。Word の Copilot もエージェントも、応答の引用から元の文書に戻れます。 根拠の無い行は、そもそも出てこない指示にしています。

2つ目は、No.3 のような「違い」が、修正の候補ではなく確認の依頼として出ることです。 前回の答弁より一歩後退した言い回しになっているのは、誤りなのか、事情があってのことなのか、起案した課にしか分かりません。 担当課へのコメントでも「前回はこう答えています。方針の変更でしょうか」と問う形で返します。

3つ目は、「照らせなかった」一覧が独立していることです。 台帳に無い数値は、点検が済んだのではなく、点検できなかったということです。この一覧の数値は職員が計画書で確かめ、よく出るものは台帳に行を足します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
答弁書の案職員が Word から本文を写して貼る校正の対象
過去の答弁・計画書エージェントの知識に文書とフォルダを指定照らす相手。書き込まない
施策の名称と数値の台帳エージェントの知識にリストを指定照らす相手。書き込まない
担当課への返却職員が答弁書の案にコメントを書く指摘と根拠を返す

答弁書の案には、エージェントは書き込みません。 指摘を Word のコメントにするのは職員です。答弁書の文を書き換える経路を作らないことで、起案した課の文がAIの言葉に置き換わることを防ぎます。

台帳の更新も人が行います。 「照らせなかった」一覧から行を足すとき、出典の計画と頁を職員が確かめてから書き込みます。台帳は、この構成の正本です。 AIの出力から直接足すと、出典の確かでない数値が正本に入ります。

Step9

人が確認する

  1. 根拠の列を開く … 数値と名称の指摘は、全件、根拠の台帳の行か計画書の頁を開いて確かめます
  2. 過去の答弁との違いを読む … 前回の答弁の前後の文脈まで読み、意図した変更らしいかの見当をつけます
  3. 「照らせなかった」一覧を片付ける … 計画書で確かめ、確かめられなければ担当課に出典を聞きます
  4. 指摘をコメントにして返す … 違いは問う形で、誤りは修正の候補を添えて返します

2番目に時間をかけてください。 数値と名称は根拠を開けば済みますが、過去の答弁との違いは、議会での経緯を知らないと判断がつきません。 経緯を知る職員が手引に書き足していくと、2番目の時間が少しずつ短くなります。

担当課へのコメントは、種別ごとに書き方を決めておきます。 数値と名称は「台帳では〇〇(第3次総合計画 p.48)です。ご確認ください」、過去の答弁との違いは「令和7年第3回定例会の質問番号12では『進めてまいります』と答弁しています。方針の変更であれば、調整の資料に理由をお書きください」とします。問う形にそろえておくと、担当課が指摘を受け入れやすくなります。

目標は、1件あたり12分です。 根拠を開いて確かめるのに5分、過去の答弁の違いを読むのに3分、照らせなかったものを片付けるのに2分、コメントを書くのに2分という配分です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
同じテーマの過去の答弁が見つからない「該当なし」で出る。初めての質問か、知識の文書から漏れているかを見る
過去の答弁が複数あり、言い回しが分かれる新しい会期の答弁を前回として扱い、古いものは参考として並べる
台帳と計画書の数値が違う台帳を正とする決まり。台帳の時点が古ければ台帳の担当に知らせる
根拠の箇所が開いても見つからない指摘を採らない。同じことが続けば、知識の文書の形を見直す
知識に置いたファイルが「Preparing」のまま使われていない。表示が消えるのを待つ
答弁書の案が長い質問ごとに分けて貼る
議員の発言の引用が案に含まれる引用部分は校正の対象から外すよう、貼る前に職員が印を付ける
非公開の検討段階の資料に触れた案知識には入れていない。照らせない指摘として扱い、担当課に確かめる

3行目の「台帳と計画書の数値が違う」は、台帳の更新漏れのことが多い例外です。 実績値は年度ごとに更新されるので、決算の数値が確定した後に台帳を直したかを、毎年同じ時期に確かめる決まりにします。

Step11

記録を残す

  • 校正した答弁書の案の版(ファイル名と日時)
  • エージェントの出力の原文(指摘の一覧と照らせなかった一覧)
  • 職員が採った指摘と採らなかった指摘 … 採らなかった理由(方針の変更/根拠の誤り/表現の範囲)
  • 担当課の対応(直した・理由を付けて維持した)
  • 台帳に足した行と、その出典

3つ目の採らなかった理由が、いちばん役に立つ記録です。 「方針の変更」で採らなかった指摘が多ければ、その答弁は調整の場で説明が要る箇所です。「根拠の誤り」が多ければ、知識の文書の形か台帳を直す必要があります。

記録は、会期ごとの点検の一覧として持ちます。 質問番号、起案した課、指摘の数、採った数、担当課の対応の列を並べます。次の定例会の前に、同じ課の指摘の傾向を担当課と共有できます。

04実装レベルの3段階

最小構成:Word の Copilot に案の数値と名称を並べさせ、台帳の写しと比べさせる / 数値と名称の照合
半自動化:上記+Agent Builder のエージェントに、過去の答弁・計画書・台帳・言い回しの手引を知識として持たせ、決めた指示で校正させる / 数値・名称・過去の答弁・言い回し・表記の照合
本格構成:上記+「_点検依頼」のファイルが置かれたことをワークフローで検知し、校正の結果を政策企画課のチャネルに投稿する / 点検の依頼の受付と結果の配布まで

最小構成では、過去の答弁が照らせません。 ①の12分はほとんど減らず、②と③が減るだけです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が12分程度になり、この段階が本記事の想定です。 過去の答弁を探す時間がなくなり、職員の時間は根拠を開いて違いを読むことに使われます。 本格構成は、版の取り違えを防げてから考えます。 自動で動かすと、担当課が直している途中の版を校正する経路ができます。ファイル名の決まりが定着してからにしてください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
導入後 40件 × 12分 ÷ 60 = 8 時間/月
月間削減時間
12h
削減率
60%
年間削減時間
144h
年間金額換算(時間単価3,500円)
50万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 本会議の一般質問・代表質問に加え、常任委員会・特別委員会の質疑や議員への文書での回答があり、答弁書の案が月にならして数十件届く市区町村。答弁書の案を政策企画や議会担当の課がまとめて点検してから答弁の調整に回している団体。Microsoft 365 を使っており、議会担当の職員が Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot)を使える場合。
向いていない
  1. 議会の質問が年に数件で、担当者が過去の答弁をすべて覚えている規模の団体。過去の答弁書の確定版が紙でしか残っておらず、テキストにできない場合。庁内の端末の構成で Microsoft 365 のクラウドの機能を使えない場合。なお、答弁で何を答えるか、過去の答弁から立場を変えるかどうかは首長と部長が決めることで、この構成は食い違いを拾うだけです。

07最小構成で試す方法

  1. 前の定例会の答弁書の案のうち、調整の場で直しが入ったものを10件選ぶ
  2. Word で案を開き、Word の Copilot に「この答弁書の数値、施策の名称を一覧にして」と頼む
  3. 一覧にあわせて、施策の名称と数値の台帳の写しをチャットに貼り、「台帳と違うものを挙げて。計算しないで」と頼む
  4. 出てきた指摘を、実際に調整の場で直された箇所と突き合わせる
  5. 過去の答弁との違いは、この段階では人が見る

10件は「直しが入ったもの」を選んでください。 正解が分かっているので、AIが拾えたか、拾えなかったかをすぐに数えられます。

出てきた内容判断
調整の場で直された数値と名称を拾えたエージェントを作り、過去の答弁を知識に入れる
「約8割」と「85%」を一致と判定した指示の書き方で直る。構成は有効
台帳に無い数値ばかりで照らせない台帳づくりが先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 答弁に出る数値は、計画書よりも各課の事業の実績であることが多いからです。台帳に何を載せるかを決めるのが、この構成のいちばん大きな準備です。

最小構成で過去の答弁まで照らしたくなったら、前回の答弁を1件だけ手で探して一緒に貼ってください。 「この2つの答弁の、方針の段階の言い回しの違いを挙げて。誤りかどうかは書かないで」と頼めば、違いの拾い方と書かせ方を、エージェントを作る前に確かめられます。 ここで「誤り」と書いてくるなら、指示の厳守事項が効いているかを最初に見る点になります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
方針の変更まで「誤り」と指摘する「違い」と書かせ、前回の答弁を並べるだけにする
一般的な知識で指摘する根拠の文書名と箇所を必須にする。設定だけでは止まらない
古い計画書の数値を根拠に出す改定のたびに古い版をフォルダから外す
調整前の版が「前回の答弁」として出る知識には確定版だけを入れる
ファイルが100を超える過去の答弁を会期ごとの文書にまとめる
台帳のリストが知識に入らないサイトではなく、リストそのもののURLを指定する
「約8割」を「85%」と一致とみなす言い方の違いも挙げるよう指示に書く
直している途中の版を校正するファイル名の末尾の「_点検依頼」の決まりを守る
言い回しの手引が無く、段階の言葉を照らせない長く担当している職員の使い分けを書き出す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが「良かれと思って」指摘を足すところから起きます。根拠と違いの書き方を指示で縛れば、指摘の数は減り、残る指摘の確かさが上がります。

3行目から6行目は、知識の置き方の問題です。 どれも指示文では直らず、フォルダとリストに何を置くかで決まります。 計画書を改定した日、定例会が閉じて答弁が確定した日を、知識を手入れする日として政策企画課の予定に入れておくと、置き忘れが減ります。

最後の行は、構成を作る前に片付けておく準備です。 手引が無いまま始めると、言い回しの指摘は出ず、数値と名称の照合だけの構成になります。それでも①と②は減りますが、第3章の(d)の属人化は残ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公表前の答弁書の案、過去の答弁、計画書、施策の数値です。答弁書の案は、議場で読み上げられるまで公表されない、検討の途中の文書です。

  1. エージェントを共有しない … 答弁校正用のエージェントは政策企画課の3名だけで使います。埋め込んだファイルは、エージェントにアクセスできる人なら誰でもその情報にアクセスできるとされています
  2. 会期のフォルダの権限を絞る … Copilot は、利用者が少なくとも閲覧の権限を持つ組織のデータだけを示すとされています。答弁書の案のフォルダの権限が広すぎると、他の職員の Copilot の回答に公表前の案が出てくる可能性があります。権限の設定が、そのまま Copilot の見える範囲になります
  3. 検討段階の資料を知識に入れない … 知識に入れるのは、確定した答弁と公表済みの計画書と台帳だけです。決まっていない方針が「根拠」として指摘に出ると、それが調整の場に回ります
  4. 庁内のネットワークの構成を確かめる … 庁内の端末の構成によって、Microsoft 365 のクラウドの機能を使える端末が限られる場合があります。どの端末で答弁書の案を扱うかを、情報政策の担当と先に決めます
  5. 出力をそのまま信じない … Microsoft は、生成AIの応答が100%事実であることは保証されないとし、ほかの人に送る前に利用者が判断して見直すよう求めています

Copilot に送ったプロンプトと応答は、基盤のモデルの学習に使われないとされています。また、Copilot とのやり取りの記録は、管理者が Microsoft Purview で保持の設定をできるとされています。答弁書の案を貼ったやり取りをどれだけ残すかは、文書の保存の決まりとあわせて決めてください。

誤りが起きた場合のリスクは、議場で誤った数値や旧称が読み上げられることです。 会議録に残り、次の答弁の「前回」になります。指摘を採らなかったときの理由を記録する手順だけは、省かないでください。

10まず何から始めるか

1週目:過去の答弁の確定版を集める

前の会期から順に、確定した答弁書を集めます。どれが確定版か分からないものは、会議録と見比べて決めます。直近2年分から始め、会期ごとに「◆質問番号」の見出しを付けた文書にまとめます。

2週目:台帳を作る

過去1年の答弁書に出てきた数値と施策の名称を数え、よく出る上位30の指標と、名称が変わった施策から台帳の行を作ります。 出典の計画と頁、時点を必ず埋めます。

3週目:10件で試す

調整の場で直しが入った前の会期の案を10件選び、最小構成を試します。拾えた直し、拾えなかった直しを数えます。

4週目:エージェントを作る

Agent Builder で答弁校正用のエージェントを作り、会期ごとの文書、計画書のフォルダ、台帳のリスト、言い回しの手引と表記の基準を知識に入れます。指示は第7章の例から始めます。

2か月目: 閉会中の委員会の答弁と文書での回答から使い始め、職員が採らなかった指摘と理由を記録します。3か月目以降: 次の定例会で全件をこの流れに乗せ、1件30分が何分になったかを実測します。調整の場で数値と名称の直しが出なくなった時点で、この構成は定着です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Agent Builder の知識として、SharePoint のファイルを100まで、リストを1つまで、端末から埋め込むファイルを20まで指定できること。リストが2万行・生の文字で50MBまでであること。サイトを指定してもそのサイトのリストは含まれないこと。SharePoint のURLを入れるとそのURLと配下を探すこと。新しく置いたファイルは回答に含まれるまで数分かかり「Preparing」と表示されること。「Only use specified sources」が指定した情報源を優先させる設定で、一般的な知識を止めるものではないこと。埋め込んだファイルはエージェントにアクセスできる利用者なら誰でも情報にアクセスできることMicrosoft Learn: Add knowledge sources to an agent in Agent Builder2026-10-07
Word の Copilot が開いている文書について質問に答え、情報を取った箇所を引用で示すことMicrosoft サポート: Chat with Copilot about your Word document2026-10-07
Microsoft 365 Copilot が Microsoft Copilot に改称されたこと。プロンプトと応答が基盤のモデルの学習に使われないこと。利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを示すこと。管理者が Microsoft Purview で Copilot とのやり取りの保持を設定できること。生成AIの応答が100%事実とは保証されないことMicrosoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot2026-10-07

答弁で何を答えるか、過去の答弁からどう言い回しを変えるかは、首長と部長が決めてください。 本記事は Microsoft の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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