Media > AI活用ユースケース > 法務 > 暗号資産交換業者のAML担当が、入出庫のモニタリングのアラートを Azure OpenAI でブロックチェーン分析の結果・アクセスの記録・顧客の申告と突き合わせ、疑わしい取引の届出の要否を検討するメモの下書きを作る

暗号資産交換業者のAML担当が、入出庫のモニタリングのアラートを Azure OpenAI でブロックチェーン分析の結果・アクセスの記録・顧客の申告と突き合わせ、疑わしい取引の届出の要否を検討するメモの下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

暗号資産の入出庫や売買で上がったアラートごとに、ブロックチェーン分析の結果、アクセスの記録、取引時確認で受けた申告を時系列に並べ、金融庁の参考事例のどれに当たりうるかを挙げた検討メモの下書きを作ります。届出の要否は担当者が判断し、AIは結論を書きません。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
IT・SaaS/金融
対象部門
法務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
240h/月
AI導入後
90h/月
想定削減
63%
年間削減
1,800h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 案件管理の台帳で、前日に上がったアラートを担当者に割り当てる
  2. 担当者が顧客管理のシステムを開き、取引時確認の記録(職業、取引を行う目的、収入・資産の申告)を見る
  3. 取引モニタリングのシステムで、アラートの前後3か月の円の入出金、売買、暗号資産の入出庫を抜き出す
  4. ブロックチェーン分析のツールで、入庫元・出庫先のアドレスのリスクの区分と資金の流れを見る
  5. アクセスの記録で、ログインのIPアドレス、端末、タイムゾーンを見る
  6. 出庫なら受取人の通知の内容、入庫なら他の交換業者から届いた送付人の通知の内容を見る
  7. 過去に同じ顧客や同じアドレスでアラートがあれば、その判断の記録を探す
  8. 集めた事実を参考事例と照らし、検討メモを書いて、クローズか届出の検討かを上長に上げる
導入後(After)
  1. 自動取引モニタリングかブロックチェーン分析のツールがアラートを上げ、案件管理の台帳に登録される
  2. 自動顧客番号とアラートの日時をもとに、取引時確認の記録、前後3か月の入出金・売買・入出庫、アクセスの記録、通知の内容、過去の判断の記録を集める
  3. 自動プログラムが、円の入出金と暗号資産の入出庫を時刻の順に1本の時系列にし、金額・回数・期間を集計する
  4. 自動氏名・住所・連絡先を記号に置き換え、アドレスとIPアドレスは記号と元の値の対応表を別に持つ
  5. 自動Azure OpenAI が、時系列と集計を読み、参考事例のどの項目に当たりうるかを根拠の事実付きで挙げる
  6. 自動Azure OpenAI が、申告との違いと、未確認の事項を並べる
  7. 自動プログラムが、根拠に挙げた事実が時系列の中に実在するかを照合し、結論欄の空いた検討メモの下書きにする
  8. 人担当者が下書きを読み、元の画面で根拠の事実を確かめ、未確認の事項のうち必要なものを確かめる
  9. 人担当者が結論欄(クローズ/届出の検討)と理由を書き、上長に上げる
  10. 人届出の検討になったものは、所管の部署が届出の要否を判断する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 案件管理の台帳で、前日に上がったアラートを担当者に割り当てる
  2. 担当者が顧客管理のシステムを開き、取引時確認の記録(職業、取引を行う目的、収入・資産の申告)を見る
  3. 取引モニタリングのシステムで、アラートの前後3か月の円の入出金、売買、暗号資産の入出庫を抜き出す
  4. ブロックチェーン分析のツールで、入庫元・出庫先のアドレスのリスクの区分と資金の流れを見る
  5. アクセスの記録で、ログインのIPアドレス、端末、タイムゾーンを見る
  6. 出庫なら受取人の通知の内容、入庫なら他の交換業者から届いた送付人の通知の内容を見る
  7. 過去に同じ顧客や同じアドレスでアラートがあれば、その判断の記録を探す
  8. 集めた事実を参考事例と照らし、検討メモを書いて、クローズか届出の検討かを上長に上げる

(a)材料が7か所に散らばっている。 2番から7番まで、すべて別の画面です。同じ顧客について、円の入出金と暗号資産の入出庫を時刻の順に並べ直すだけで10分近くかかります。

(b)参考事例との当てはめが人によって違う。 参考事例の暗号資産交換業者の版には、現金の使用形態、真の取引者の隠匿、アカウントの利用形態、取引の形態と、数十の項目があります。ある担当者は第4の項目を中心に見て、別の担当者はアクセス環境の項目を中心に見る、というばらつきが出ます。

(c)未確認のことが書かれない。 「出庫先のアドレスの持ち主は分からない」「申告の職業と入金の規模が合うかは未確認」といった、分かっていないことの記録が抜けがちです。 後から上長や監査が読み返したとき、確かめた上でクローズにしたのか、確かめずにクローズにしたのかが区別できません。

(d)件数に追いつかない。 1件32分で月450件は240時間です。相場が大きく動いた月はアラートが増え、一次調査が数日遅れます。

  1. 【自動】 取引モニタリングかブロックチェーン分析のツールがアラートを上げ、案件管理の台帳に登録される
  2. 【自動】 顧客番号とアラートの日時をもとに、取引時確認の記録、前後3か月の入出金・売買・入出庫、アクセスの記録、通知の内容、過去の判断の記録を集める
  3. 【自動】 プログラムが、円の入出金と暗号資産の入出庫を時刻の順に1本の時系列にし、金額・回数・期間を集計する
  4. 【自動】 氏名・住所・連絡先を記号に置き換え、アドレスとIPアドレスは記号と元の値の対応表を別に持つ
  5. 【自動】 Azure OpenAI が、時系列と集計を読み、参考事例のどの項目に当たりうるかを根拠の事実付きで挙げる
  6. 【自動】 Azure OpenAI が、申告との違いと、未確認の事項を並べる
  7. 【自動】 プログラムが、根拠に挙げた事実が時系列の中に実在するかを照合し、結論欄の空いた検討メモの下書きにする
  8. 【人】 担当者が下書きを読み、元の画面で根拠の事実を確かめ、未確認の事項のうち必要なものを確かめる
  9. 【人】 担当者が結論欄(クローズ/届出の検討)と理由を書き、上長に上げる
  10. 【人】 届出の検討になったものは、所管の部署が届出の要否を判断する

3番目の集計をAIではなくプログラムで行うのは、数字の誤りを避けるためです。 「入庫から出庫まで何分」「30日の入金の合計」といった数字は、メモの根拠の中心になります。AIには計算済みの数字を渡し、それを参考事例と照らすところだけをさせます。

9番目の結論欄は、下書きの段階では空です。 AIの出力の形にそもそも結論の欄が無く、担当者が書かなければメモが完成しない作りにします。

02今回想定するシステム構成

構成図
取引モニタリング/ブロックチェーン分析のツール
   │  アラートを案件管理の台帳に登録
   ▼【トリガー】台帳への新しいアラートの登録
Azure Functions
   ├──▶ 顧客管理・入出金・入出庫・アクセスの記録・通知・過去の判断を集める
   ├──▶ 時系列の作成と集計(金額・回数・期間)
   ├──▶ 氏名・住所の記号化、アドレス・IPの対応表
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 構造化出力でJSON
   │   ① 参考事例の項目との対応(根拠の事実の番号付き)
   │   ② 申告との違い  ③ 未確認の事項
   ▼
Azure Functions ── 根拠の照合、検討メモの下書き(結論欄は空)
   ▼
【担当者が元の画面で確かめ、結論を書く → 上長 → 所管の部署】
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(情報の収集、時系列の作成と集計、記号化、根拠の照合)Power Automate
検知既存の取引モニタリングのシステムとブロックチェーン分析のツール各社が導入している製品
保管案件管理の台帳と自社の文書管理SharePoint

取引モニタリングとブロックチェーン分析のツールは、新しく足すものではありません。 この構成はそれらの結果を読むだけで、アラートの検知の基準やリスクの区分を変えません。 案件管理の台帳への書き込みは、下書きのメモを添えることだけです。

生成AIには Azure OpenAI(Microsoft Foundry)を使い、構造化出力で受け取ります。 Chat Completions API では response_format に、Responses API では text.format にスキーマを定義します。すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトには additionalProperties: false を設定します。 プロパティは最大100個、入れ子は最大5レベルで、配列の minItems・maxItems や数値の minimum は使えません。 項目の数の確かめは受け取った後にプログラムで行います。

基準の土台は、金融庁の「疑わしい取引の参考事例」の暗号資産交換業者の版(令和7年8月1日更新)です。 現金の使用形態、真の取引者の隠匿、アカウントの利用形態、取引の形態に着目した事例が番号付きで並んでいます。この番号を、AIに渡す一覧とメモの見出しにそのまま使います。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

案件管理の台帳に新しいアラートが登録されたことを起点にします。 取引モニタリングは前日の取引を夜間に流してアラートを出すことが多いので、朝の始業前に下書きがそろうよう、夜間にまとめて処理します。 ブロックチェーン分析のツールが入出庫のたびにアラートを上げる場合は、15分ごとに台帳を見て処理します。

同じ顧客に複数のアラートが同じ日に上がったときは、1つの検討メモにまとめます。 入庫のアラートと、その直後の出庫のアラートを別々に調べると、入庫直後の出庫という、参考事例でいちばん大事な形が見えなくなります。

出庫を止めて調査するアラートは、夜間を待たずにすぐ処理します。 出庫の保留をどこまで続けるかは顧客の不利益にもつながるので、下書きを早く出して担当者の判断を速くします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
アラートシナリオ名、検知の日時、対象の取引、敷居値案件管理の台帳
取引時確認の記録職業・事業内容、取引を行う目的、収入・資産の申告、居住の国、確認の日顧客管理のシステム
取引の履歴前後3か月の円の入出金、売買、暗号資産の入出庫(日時・金額・銘柄・アドレス)取引モニタリングのシステム
ブロックチェーン分析の結果入庫元・出庫先のアドレスのリスクの区分、関連する事業者の種類、資金の流れの経路ブロックチェーン分析のツール
アクセスの記録ログインの日時、IPアドレスの国、端末の識別、ブラウザの言語、タイムゾーンアクセスの記録
通知の内容出庫の受取人・入庫の送付人について、他の交換業者とやり取りした通知の項目通知の記録
過去の判断同じ顧客・同じアドレスの過去のアラートと、その結論と理由案件管理の台帳
参考事例の一覧暗号資産交換業者の版の項目番号と文言金融庁の公表資料から作った一覧

通知の内容は、犯収法が暗号資産交換業者に課している通知の義務に関わるものです。 犯収法は、顧客の依頼で受取顧客に暗号資産を移転するとき、依頼した顧客と受取顧客の本人特定事項などを、受取側の交換業者に通知して行うよう定めています。出庫先の受取人の情報が申告や過去の取引と合っているかは、検討の大事な材料になります。

参考事例の一覧は、更新の日付付きで持ちます。 参考事例は改訂されることがあり、どの版の項目番号でメモを書いたかが分からないと、後から読み返せません。

Step3

データの取得方法を決める

  1. 台帳からアラートを取る … 顧客番号、アラートの日時、対象の取引の番号を取ります
  2. 取引の履歴を取る … 取引モニタリングのシステムから、前後3か月の入出金・売買・入出庫を取ります
  3. ブロックチェーン分析の結果を取る … 対象のアドレスごとに、ツールのAPIか書き出しで区分と経路を取ります
  4. アクセスの記録を取る … 同じ期間のログインの記録を、IPアドレスの国と端末の識別に絞って取ります
  5. 通知の内容と過去の判断を取る … 対象の入出庫に紐づく通知の記録と、同じ顧客・アドレスの過去の判断を取ります

3番目は、ツールが返す区分の名前をそのまま持ちます。 ツールによって区分の名前と基準が違います。AIに渡すときも、ツールが付けた区分を言い換えずに渡し、区分の意味の一覧を添えます。

4番目でIPアドレスの元の値をAIに渡しません。 国と、同じIPアドレスを他の顧客が使っていないかの照合結果だけを渡します。照合はプログラムで行います。

集める期間は、アラートの日時の前後3か月を基本にし、口座開設から3か月以内の顧客は開設の日からにします。 参考事例には、開設後の短期間に多額・頻繁な入出金や入出庫があり、その後に解約したアカウントの取引が挙がっています。開設直後の動きは、期間を切ると見えなくなります。 取れなかったシステムがあれば、その名前を材料の冒頭に書き、AIにも「この材料は無い」と伝えます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 時系列の作成 … 円の入出金、売買、暗号資産の入出庫、ログインを、時刻の順に1本に並べ、各行に事実の番号(E001、E002…)を振ります
  2. 集計 … 期間ごとの入出金の合計、入庫から出庫までの時間、出庫先のアドレスの数などを計算します
  3. 申告との比較の材料 … 申告の収入・資産の区分と、期間の入金の合計を並べます。比べるのはプログラムではなく担当者ですが、並べるのはプログラムです
  4. 記号化 … 氏名・住所・連絡先を記号に置き換えます。アドレスは「アドレスA」と置き換え、ツールの区分だけを添えます
  5. アクセス環境の照合 … 同じIPアドレス・端末から他の顧客がアクセスしていないかを照合し、結果だけを持ちます
  6. 過去の判断の要約 … 過去のアラートの結論と理由を、日付付きの短い一覧にします

1番目の事実の番号が、この構成の土台です。 AIは根拠を「E014、E015」のように番号で返し、プログラムはその番号が時系列に実在するかを確かめます。AIが事実を作っても、番号の照合で必ず見つかります。

時刻は、すべて日本時間にそろえてから並べます。 ブロックチェーン上の記録や海外の交換業者からの通知は協定世界時で届くことがあり、そろえないと入庫と出庫の順が入れ替わります。 元の時刻と変換後の時刻は両方とも持ちます。

Step5

AIに処理させる

させること中身
参考事例との対応一覧の各項目について、当たりうる事実があれば事実の番号を挙げ、なぜ当たりうるかを1〜2文で書く
当たらない項目の理由アラートのシナリオに関係する項目で当たらないと見たものは、その理由を1行で書く
申告との違い職業・取引を行う目的・収入の申告と、取引の規模・頻度・相手の種類が合わない点を挙げる
未確認の事項判断に要るのに材料に無いこと(出庫先の持ち主、資金の出所の資料など)を挙げる
過去の判断との関係過去のアラートと同じ形か、新しい形かを書く
追加で確かめる方法の候補未確認の事項ごとに、社内のどの記録を見るか、顧客に何の資料を求めるかの候補
させないこと理由
疑わしい取引に当たるかの結論判断は担当者と所管の部署が行う
届出の要否犯収法の判断の方法に沿って人が行う
アドレスの持ち主の推測分からないことは未確認の事項に入れる
国籍・居住の国だけを理由にした評価参考事例も「合理性が認められない」場合を挙げている。国だけで当てはめない
顧客への連絡文の作成届出を検討していることを顧客に漏らしてはならない

いちばん効くのは、表の2行目「当たらない項目の理由」です。 当たる項目だけを書かせると、メモはいつも「当たる」方向に偏ります。当たらないと見た理由も残すと、クローズにした判断を後から説明できます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは暗号資産交換業者のマネロン・テロ資金供与対策の担当を補助し、
アラートの検討メモの下書きを作ります。結論は書きません。

【渡すもの】
- アラートの内容
- 時系列(各行に事実の番号 E001… が付いています)と集計の結果
- 取引時確認で受けた申告
- ブロックチェーン分析のツールが付けたアドレスの区分と、その意味の一覧
- 通知の内容、過去の判断の一覧
- 金融庁「疑わしい取引の参考事例(暗号資産交換業者)」の項目一覧(版の日付付き)

【させること】
1. 項目一覧の各項目について、当たりうる事実があれば reference_matches に挙げ、
   事実の番号を evidence_ids に入れ、理由を1〜2文で書いてください。
2. アラートのシナリオに関係する項目で当たらないと見たものは、
   not_matched に理由を1行で書いてください。
3. 申告と取引の規模・頻度・相手の種類が合わない点を declaration_gaps に
   挙げてください。
4. 判断に要るのに材料に無いことを open_questions に挙げ、
   社内で確かめる記録か、顧客に求める資料の候補を書いてください。

【厳守事項】
- 疑わしい取引に当たるか、届出が要るかを書かないでください。
- 根拠は必ず事実の番号で示してください。番号の無い事実を作らないでください。
- アドレスの持ち主や資金の出所を推測しないでください。分からなければ
  open_questions に入れてください。
- 居住の国やIPアドレスの国だけを理由に項目に当てはめないでください。
  申告や過去のアクセスとの違いがあるときだけ挙げてください。
- ツールの区分の名前を言い換えないでください。
- 顧客あての文章を書かないでください。

【参考事例の版】{reference_version}
【アラート】{alert}
【時系列と集計】{timeline}
【申告】{declaration}
【アドレスの区分】{address_risk}
【通知の内容】{transfer_notice}
【過去の判断】{past_decisions}

「居住の国やIPアドレスの国だけを理由に当てはめない」を入れるのは、参考事例の書き方に合わせるためです。 参考事例の項目は「国外であることに合理性が認められない」場合を挙げていて、国外であること自体ではありません。入れないと、海外出張の多い顧客のアラートが毎回同じ項目に当てはめられます。

Step7

出力形式を固定する

{
  "alert_ids": [""],
  "reference_version": "2025-08-01",
  "reference_matches": [
    { "item": "第4-(23)", "evidence_ids": ["E014", "E015"], "reason": "" }
  ],
  "not_matched": [
    { "item": "第2-(11)", "reason": "" }
  ],
  "declaration_gaps": [
    { "declared": "", "observed": "", "evidence_ids": [""] }
  ],
  "open_questions": [
    { "question": "", "how_to_check": "internal_record | customer_document", "detail": "" }
  ],
  "relation_to_past": "same_pattern | new_pattern | no_history"
}

1つ目の理由は、evidence_ids をプログラムで照合できることです。 番号が時系列に無ければ、その対応を「根拠なし」として表示し、メモの本文から外します。

2つ目は、結論の欄が無いことです。 スキーマに結論の欄を作らなければ、AIは結論を書けません。メモの結論欄は、プログラムが空欄で作り、担当者だけが書きます。

3つ目は、検討メモの形を毎回そろえられることです。 担当者が書くメモは、次の形の下書きになります。

【アラート】出庫 2件(シナリオ:入庫後短時間の出庫)
【時系列の要点】E012 円入金 → E014 購入 → E015 出庫(入金から38分)
【参考事例との対応】第4-(23):E015 の出庫先がツールの区分「オンラインカジノ」
【当たらないと見た項目】第2-(11):入庫元・出庫先に追跡を困難にするツールの区分なし
【申告との違い】申告「会社員・投資目的」に対し、30日で入出庫が往復12回
【未確認の事項】出庫先の受取人の通知の内容が申告の相手と合うか
【結論】(担当者が記入)
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
案件管理の台帳API・データ連携(各社の仕組みによる)アラートを読み、下書きのメモを添える
取引モニタリング・顧客管理・アクセスの記録・通知の記録読み取り時系列と申告の材料を集める
ブロックチェーン分析のツールAPI・書き出し(ツールによる)アドレスの区分と経路を取る
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)API呼び出し(構造化出力)参考事例との対応・申告との違い・未確認の事項

どのシステムにも、判断の結果を書き込みません。 出庫の保留や口座の制限、届出の操作は、すべて担当者と所管の部署が既存の手順で行います。

下書きのメモは、マネロン対策のグループだけが見られる場所に置きます。 犯収法は、疑わしい取引の届出を行おうとすること又は行ったことを、その顧客や関係者に漏らしてはならないと定めています。カスタマーサポートの画面から見える場所には置きません。

Step9

人が確認する

  1. 根拠の事実を元の画面で確かめる … evidence_ids の事実を、取引モニタリングやブロックチェーン分析のツールの画面で確かめます
  2. 未確認の事項のうち必要なものを確かめる … 社内の記録で分かるものは確かめ、顧客に資料を求めるものは、届出の検討を顧客に悟らせない聞き方を所管の部署と決めた手順で行います
  3. 結論を書く … クローズか届出の検討かと、その理由を書きます。参考事例との対応は材料で、結論は顧客の属性・取引時の状況など全体を勘案して担当者が出します
  4. 上長が確かめる … 結論と理由が材料と合っているかを見ます

3番目で、AIが挙げた対応をそのまま結論の理由にしないでください。 参考事例は、個別の取引が疑わしい取引に当たるかは、顧客の属性、取引時の状況その他の具体的な情報を総合的に勘案して判断する必要があるとしています。

目標は、450件をならして1件12分です。 対応の項目が無く、過去と同じ形のアラートは数分、未確認の事項の多いアラートは30分以上かかります。

経験の浅い担当者には、最初の1か月は上長が全件の結論を見る運用にします。 下書きの形がそろうと、経験の浅い担当者でも材料は早く読めますが、どの未確認の事項を確かめずに済ませてよいかの勘所は、メモの形だけでは身に付きません。 上長が直した箇所を担当者に返すと、その差が教材になります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
ブロックチェーン分析の結果が取れない銘柄「分析の結果なし」と明記して渡す。区分が無いことを低いリスクと扱わない
通知の内容が届いていない出庫・入庫未確認の事項に入れ、通知の記録の担当に確かめる
根拠の番号が時系列に無いその対応を「根拠なし」と表示し、メモから外す
応答がスキーマに合わない・拒否される1回だけやり直し、だめなら材料の一覧だけを担当者に渡す
同じ顧客に数日おきにアラートが続くまとめて1件のメモにし、過去の判断との関係を見る
参考事例が改訂された一覧を新しい版に差し替え、版の日付をメモに残す
法人の顧客事業内容と実質的支配者の記録を申告の材料に加える

| 出庫を保留したまま判断が遅れる | 保留中のアラートを台帳で別に数え、期限を決めて上長に上げる |

| 公的機関から照会があった顧客 | 照会の有無だけを材料に入れ、照会の中身はAIに渡さない |

1行目がいちばん起きやすい見落としです。 ツールが対応していない銘柄やチェーンでは区分が空になりますが、空は「分からない」で、「問題ない」ではありません。

最後の行の照会の中身を渡さないのは、扱える人を絞るためです。 捜査機関などからの照会の内容は、社内でも知る人を限っている情報です。参考事例には、公的機関など外部から犯罪収益に関係している可能性があるとして照会や通報があった取引が挙がっているので、「照会あり」という事実だけを時系列に入れれば、対応づけには足ります。

Step11

記録を残す

  • 集めた材料の全文(記号化の前後)と、記号の対応表
  • AIの出力のJSONと、根拠の番号の照合結果
  • 使った参考事例の一覧の版
  • 担当者が書いた結論と理由、確かめた未確認の事項
  • 上長の確認と、所管の部署への引き継ぎの記録

参考事例の版を残すのは、改訂の後に過去のメモを読み返すためです。 項目番号は改訂で変わることがあります。

not_matched の理由と、担当者がクローズにした理由は、別々に残します。 AIが当たらないと見た項目を担当者が「当たる」と判断し直したなら、その差が、指示や区分の一覧を直す材料になります。月に一度、AIの対応づけと担当者の結論が分かれたアラートを並べて見ると、どの項目の当てはめが苦手かが分かります。 シナリオごとのクローズの割合も、ここから数えられます。

04実装レベルの3段階

最小構成:手で作った時系列をAIの画面に貼り、参考事例との対応を出させる / 1件ごとの当てはめ
半自動化:上記+Azure Functions で材料を集めて時系列と集計を作り、Azure OpenAI に渡す / 材料の収集と当てはめの下書き
本格構成:上記+根拠の照合、記号化、過去の判断との関係、検討メモの下書きを台帳に添える / 一次調査の材料づくりの全体

最小構成では件数がさばけません。 時系列を手で作るので、月450件には使えません。当てはめが担当者の役に立つかを確かめる段階です。 半自動化で、①の大半がなくなります。 材料が1本の時系列で届くからです。本格構成で②と③も下書きになり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で、どのシステムから何が取れないかが先に分かります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
450 件
1件あたり現在時間
32 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  450件 × 32分 ÷ 60 = 240 時間/月
導入後 450件 × 12分 ÷ 60 = 90 時間/月
月間削減時間
150h
削減率
63%
年間削減時間
1,800h
年間金額換算(時間単価4,000円)
720万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 暗号資産の売買と入出庫のサービスを提供し、取引モニタリングとブロックチェーン分析のツールを入れて、アラートを月に数百件ずつ一次調査している暗号資産交換業者。アラート1件ごとに、円の入出金、暗号資産の入出庫、アクセスの記録、ブロックチェーン分析の結果を別々の画面から集めていて、調査の記録の書き方が担当者ごとに違う場合。Azure の契約があり、データを自社のテナントの中で扱う構成を取れる場合。
向いていない
  1. アラートが月に数十件で、担当者が1件ずつ丁寧に見て足りる場合。入出金・入出庫・アクセスの記録を同じ顧客番号で引き出せる仕組みがなく、データをそろえるところから始める必要がある場合。疑わしい取引に当たるかどうかの判断や届出の要否を機械に任せたい場合(この構成は判断を代替しません)。

07最小構成で試す方法

  1. 過去に調査が終わったアラートから30件を選ぶ(うち数件は、届出の検討に進んだものを入れる)
  2. 当時の材料を時系列に並べ、氏名・住所・アドレスを記号に置き換える
  3. 参考事例の暗号資産交換業者の版の項目一覧と一緒に、契約上の扱いを確かめた生成AIの画面に貼る
  4. 「当たりうる項目を事実付きで、当たらないと見た項目を理由付きで挙げ、未確認の事項を並べてください。結論は書かないでください」と指示する
  5. 当時の検討メモと突き合わせる
出てきた内容判断
当時のメモにない項目や未確認の事項が出た情報の自動収集に進む
時系列に無い事実を根拠にした指示で直る。事実の番号の照合を入れる前提で進む
国だけを理由に当てはめた指示の書き方で直る。構成は有効

時系列を手で作る時間も測ってください。 その時間が長いほど、自動で集める価値が大きくなります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが結論を書くスキーマに結論の欄を作らない
時系列に無い事実を根拠にする事実の番号で返させ、照合する
国だけを理由に当てはめる指示で禁じ、申告・過去のアクセスとの違いがあるときだけ挙げさせる
分析の結果が空の銘柄を問題なしと扱う「分析の結果なし」と明記して渡す
入庫と出庫を別々に調べる同じ顧客の同じ日のアラートはまとめる
下書きがサポートの画面から見える置き場所と権限を分ける
参考事例の改訂に気づかない一覧に版の日付を付け、定期的に公表資料を見る

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIの出力を判断そのものに見せてしまうことから起きます。結論の欄が無く、根拠が番号で照合されていれば、担当者は材料として読みます。

3行目は、顧客の扱いの公平さに関わります。 居住の国やログインの国だけで項目に当てはめるメモが続くと、同じ国の顧客のアラートが毎回届出の検討に寄ります。申告や過去のアクセスとの違いを根拠に書かせることで、国ではなく取引の事実で並べられます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客の本人特定事項と申告、取引の履歴、アドレス、アクセスの記録、他の交換業者との通知の内容、過去の調査の判断です。届出の検討の有無そのものが、顧客に知られてはならない情報です。

  1. 届出の検討を漏らさない … 犯収法は、疑わしい取引の届出を行おうとすること又は行ったことを、顧客やその関係者に漏らしてはならないと定めています。下書きのメモと材料は、マネロン対策のグループと所管の部署だけが見られる場所に置きます
  2. 判断をAIに寄せない … 犯収法は、判断を取引時確認の結果、取引の態様その他の事情、犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し、主務省令で定める方法で行うよう求めています。AIの対応づけは材料で、判断の方法そのものは社内の手順のとおり人が行います
  3. データの扱いを確かめる … Azure OpenAI では、プロンプトと出力は他のお客様や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないとされています。Global・DataZone のデプロイでは処理の場所が指定の地域の外に広がりうるので、地域を指定したデプロイを選びます。不正使用の監視でプロンプトと出力が保存され、人が確認する場合があり、変更の申請ができます
  4. ステートフルな機能を使わない … Responses API のメッセージ履歴や保存済み完了はサービスにデータを保存します。1件ごとに完結する呼び出しにします
  5. 渡す範囲を絞る … 氏名・住所・IPアドレスの元の値は渡さず、記号と照合結果だけを渡します

誤りが起きた場合のリスクは、届出すべき取引を材料の取りこぼしでクローズにすることと、届出の検討が顧客に伝わることの2つです。 前者は分析の結果なしの明記と未確認の事項の一覧で、後者は置き場所と権限で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:項目一覧と区分の一覧を作る

参考事例の暗号資産交換業者の版から、項目番号と文言の一覧を版の日付付きで作ります。ブロックチェーン分析のツールの区分の意味の一覧も作ります。

2週目:30件で試す

過去のアラート30件で、手で作った時系列から参考事例との対応を出させ、当時の検討メモと突き合わせます。

3週目:材料の集め方を決める

各システムとツールから顧客番号で材料を取る方法と、記号化の範囲を、システムの担当と決めます。

4週目:時系列の自動作成までをつなぐ

Azure Functions で材料を集め、時系列と集計を作るところまで組みます。この時点ではAIに渡さず、時系列だけを担当者に配ります。

2か月目: Azure OpenAI での対応づけと根拠の照合を足し、下書きのメモを台帳に添えます。3か月目以降: 過去の判断との関係を足し、1件32分が何分になったかを実測します。クローズの理由が毎回同じ形で残るようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
参考事例が令和7年8月1日更新で、暗号資産交換業者の版があること。事例が犯収法第8条第1項の届出義務の履行に当たり特に注意を払うべき取引の類型の例示であり、個別の取引は顧客の属性、取引時の状況その他の具体的な情報を総合的に勘案して判断する必要があること。形式的に合致するものが全て疑わしい取引に該当するものではないこと。取引の追跡を困難にするツール(ミキサー、タンブラー、ブリッジ等)を介した入出庫、ダークネットマーケットプレイス・ランサムウェアグループ・オンラインカジノサイト等に関連するアドレスとの送受信、国内居住の顧客のログイン時のIPアドレスが国外であることに合理性が認められない場合、入庫直後の多額の出庫などが挙げられていること金融庁: 疑わしい取引の参考事例2026-10-15
特定事業者が疑わしい取引に当たるかを判断し届け出なければならないこと(第8条第1項)。判断は取引時確認の結果、取引の態様その他の事情、犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し主務省令で定める方法で行うこと(第8条第3項)。届出を行おうとすること又は行ったことを顧客等に漏らしてはならないこと(第8条第4項)。暗号資産交換業者が受取顧客への移転の際に本人特定事項等を通知しなければならないこと(第10条の5)e-Gov 法令API: 犯罪による収益の移転防止に関する法律2026-10-15
Chat Completions API と Responses API の両方で構造化出力が使え、それぞれ response_format・text.format でスキーマを定義すること。すべてのフィールドを必須にし additionalProperties: false を設定すること。プロパティは最大100個、入れ子は最大5レベルであること。配列の minItems・maxItems、数値の minimum などが非対応であることMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-15
プロンプトと出力が他のお客様や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないこと。Global・DataZone のデプロイでは処理の場所が指定の地域の外に広がりうること。Responses API・保存済み完了がデータを保存すること。不正使用の監視でプロンプトと出力が保存・確認される場合があり、変更の申請ができることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-15

疑わしい取引に当たるかどうかと届出の要否は、担当者とマネロン対策の所管部署が判断してください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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