AIが作ったものは誰のものか|社内の権利を先に決める

「会社が契約している道具で、就業時間に、業務のために作ったのだから、当然うちのものですよね」「退職した担当者が、あの資料は自分の作品だと言ってきて、対応に困っています」——生成AIで作った資料や図が社内に溜まってきたころ、この2つはほぼ同時に出てきます。前者は結論としては多くの場合に合っているのですが、理由としては途中が2つ抜けています。道具を誰が契約したかは、権利が誰に付くかを決める条件のどこにも入っていません。この記事では、権利が生じるかどうかと、生じた権利が誰に付くかを分けたうえで、社内で先に決めておく項目を整理します。
カメ先生AIが作ったものは誰のものか、と聞かれるとね、会社か本人かの二択で答えたくなる。ところが法律の側の順番は違っていて、まず権利が生まれているかどうかを見るんだ。生まれていなければ、誰のものかという問いはそもそも立たない。
カメ子持ち主を決める前に、持ち主が付くものなのかどうかを先に見る、ということですか。
カメ先生そう。そして権利が生まれている場合に初めて、会社に付くのか本人に付くのかという条件の話になる。この条件は、契約や就業規則の書き方しだいで結論が変わってしまう部分を含んでいてね。
カメ子もめてから調べるのではなく、先に決めて書いておく類の話だということでしょうか。
- 最初に見るのは持ち主ではなく、権利が生じているかどうか。人の手が薄い生成物には、そもそも著作権が生じないと整理されている
- 権利が生じた場合に会社のものになるかは、著作権法15条1項の5つの条件で決まる。1つ欠けただけで、原則に戻って作った本人が著作者になる
- 権利が生じないものは、他社が同じものを出しても止められない。守り方は権利ではなく、渡した材料の側と、秘密として管理する側にある
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「会社の道具で作ったから会社のもの」で抜けている2つ
この言い方は、日常の感覚としては自然です。会社が費用を払って契約した道具を、就業時間内に、業務のために使った。だから成果は会社のものだ、という順番で考えます。ところが権利の側の順番は違います。先に見るのは持ち主ではなく、そもそも権利が生まれているかどうかです。生まれていなければ、誰のものかという問いは立ちません。
抜けている2つ目は、権利が生まれた場合の帰属先です。著作権は、原則として作った人に生まれます。会社に付くのは、著作権法15条が定める条件を満たしたときだけで、条件は5つあります。道具を誰が契約したかは、この5つのどこにも入っていません。費用を誰が払ったかも入っていません。ここが日常の感覚とずれる部分です。
この2つを分けずに「会社のもの」と決めてしまうと、もめたときに拠り所がありません。退職した担当者が自分の作品だと主張した場面で、会社が示せるのは契約書と就業規則の記載だけです。そこに何も書いていなければ、条件を1つずつ確かめる作業から始めることになります。以降の章では、まず権利が生じるかどうかを3つに分けます。
前提の1つ目は、そもそも権利が生じないものがあること
著作権法が保護するのは、思想または感情を創作的に表現したものです。人が創作的に表現したという部分が土台にあるため、AIが自動的に出力しただけのものは、この枠に入らないと整理されています。文化審議会著作権分科会の法制度小委員会が2024年3月15日に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」も、この構造の上に論点を並べています。
実務でこの型に当たるのは、たとえば指示を1行渡して出てきた画像をそのまま使う場合、定型の会議記録を要約させてそのまま配る場合、決まった書式の文面を生成させてそのまま送る場合です。件数でいえば、社内で作られるAI生成物の大半がこの型に入ります。ここに権利が生じないという前提は、不利な話ばかりではありません。
生じないということは、会社にも本人にも独占する権利が無いということです。他社が似たものを出しても止められない代わりに、本人が自分のものだと主張する根拠も無いということになります。この前提を社内で共有しておくと、退職の場面のやり取りが短く済みます。では何で守るのかという話は、後の2つの章で扱います。
前提の2つ目は、人の手が十分に入っていれば権利が生じること
同じAIを使っていても、人の手の入り方によって扱いは変わります。文化庁の考え方では、人の創作的な寄与があったかどうかを、指示や入力の分量と内容、生成をどれだけ試したか、出てきた複数のものから選んだかといった点から見る、という整理が示されています。1回で出たものをそのまま使ったのか、何度も出し直して選び、書き直したのかで線が動くということです。
ただし、どこからが十分かという数字はありません。何回試せばよい、何割を書き直せばよい、という基準は公的には示されていないため、事案ごとの判断になります。ここを社内で「10回試せば権利が生じる」といった形で決めてしまうと、根拠の無い基準が定着し、後から覆ります。決めるべきなのは基準ではなく、記録の残し方のほうです。
- 人の創作的な寄与がどこからかを示す数値の基準は、2026年9月の時点で公的には示されていない
- 線は生成物ごとに動くため、社内で一律の数値を決めると、決めた基準のほうが先に古くなる
- 社内で決められるのは記録の様式まで。個別の生成物に権利が生じるかどうかの判断は法務と弁護士に確かめる
- この記事の区分と条件の整理は、社内で論点を並べるための入口であって、当てはまるかどうかは事案ごとに変わる
記録として残すのは3つです。渡した指示の文面、何回出し直したか、人がどこを直したか。人の手が入ったことを後から示せるのは、成果物ではなく作業の記録のほうです。この記録は、社内で主張する材料であると同時に、委託先に申告を求めるときの様式にもなります。同じ様式を使えば、社内と社外で二重に作らずに済みます。
前提の3つ目は、外部の委託先が作ったものが別の筋になること
3つ目は、制作会社や外部の書き手、設計の委託先が納品したものです。社内の従業員が作った場合と違い、こちらは職務著作の枠組みが当てはまりません。委託先の側に権利が生じた場合、それを自社に移すには契約が要ります。発注して代金を払ったという事実だけでは、著作権は移りません。ここは生成AIが関わるかどうかに関係なく、もともとそうなっています。
ここにAIが入ると、論点が1つ増えます。委託先がAIを使って作った部分は、人の手が薄ければそもそも権利が生じていない可能性があります。権利が生じていないものは、契約で移すという書き方が空振りします。移すものが無いからです。だから契約の書き方も、従来のままでは足りなくなります。
実務では、権利を移す条項とは別に、権利の有無にかかわらず納品物を自由に使えることを保証させる条項を置きます。移す条項だけを置くと、権利が生じていなかった場合に何も残りません。加えて、AIを使ってよいか、使った場合に申告するか、という2点を先に決めます。この4点は後の章でまとめて扱います。
3つの前提を並べて比べる
ここまでの3つを1つの表にまとめます。判断に迷ったとき、目の前の生成物がどの行に当たるかだけを見ます。行が決まれば、社内での扱いと、どの文書に書いておくべきかも決まります。迷っている時間のほとんどは、行が決まっていないことから生まれます。
| 区分 | 典型的に当てはまるもの | 著作権は生じるか | 社内での扱い | 書いておく文書 |
|---|---|---|---|---|
| 人の手が薄い生成物 | 指示を1行渡して出てきた画像や文章をそのまま使ったもの、定型の会議記録の要約 | 生じないものとして扱っておく | 会社の資産として使うが、他社が同じものを出しても止められない前提で使う | AIの利用規程に1行 |
| 人の手が十分に入った生成物 | 構成と主張を人が決め、複数の候補から選び、書き直しを重ねた資料や原稿 | 生じうる。ただし程度の問題で、線は事案ごとに動く | 職務著作の5つの条件を満たせば会社のもの。満たさなければ作った本人のもの | 就業規則か職務規程 |
| 委託先が作った生成物 | 制作会社・外部の書き手・設計の委託先が納品したもの | 委託先の側に生じることがある | 契約で移すか、使える範囲を決めておかないと、後から使い方が縛られる | 業務委託契約の条項 |
表の1行目が件数の大半を占め、3行目が金額の大半を占めます。2行目は件数も金額も中くらいですが、もめたときにいちばん長引きます。人の手がどれだけ入ったかという評価が、会社と本人で食い違うからです。だから2行目に当たる仕事だけ、記録の様式を決めておきます。
表に無い4つ目として、社外の人が個人的に作って持ち込んだものがあります。取引先の担当者が善意で作った図や、応募者が提出した作品がこれに当たります。持ち込まれたものは、誰のものかを確かめてから使う。この1行を入れておくと事故が減ります。確かめずに社内資料へ転用すると、後からまったく筋の違う話になります。
会社のものになる条件は5つある
権利が生じた場合に、それが会社のものになるかどうかは、著作権法15条1項が定める職務著作の条件で決まります。条件は5つで、すべてを満たす必要があります。1つ目は、法人などの発意に基づいて作られたこと。2つ目は、その法人の業務に従事する者が作ったこと。3つ目は、職務上作成したものであることです。
4つ目は、その法人の著作の名義のもとに公表するものであること。5つ目は、作成の時点の契約や勤務規則などに別の定めが無いことです。5つのうち1つでも欠けると、原則に戻って作った本人が著作者になります。なお同じ条の2項により、プログラムの著作物については4つ目の公表の名義に関する条件が外れます。社外に出さない社内向けの処理でも、他の条件を満たせば会社のものになります。
この5つを読むと分かるのは、道具を誰が契約したかも、費用を誰が払ったかも、条件に入っていないということです。会社が払ったという事実は、5つのどれとも結び付いていません。だから冒頭の「会社の道具で作ったから会社のもの」は、結論だけを見れば多くの場合に合っていても、理由としては成り立ちません。理由が成り立たないと、争われたときに使えません。
5つのうち、実務で欠けやすいのはどこか
5つの条件のうち、社内で崩れやすいのは2つ目と4つ目と5つ目です。2つ目の「業務に従事する者」は、雇用関係にある従業員が典型です。業務委託で働いている人、派遣で来ている人、インターンとして関わっている人は、当てはまるかどうかが働き方の実態で変わります。契約の名称ではなく、指揮監督の実態で見られます。
4つ目の「その法人の著作の名義のもとに公表する」は、社外に出す資料で崩れます。制作した個人の名前を載せる慣習がある領域、たとえば記事や講演資料や図面で、個人名を前に出していると、この条件が満たされないと判断されうる場面が出てきます。社名と個人名を併記するのか、社名だけにするのかを、文書の種類ごとに決めておきます。決めていないと、担当者の好みで変わります。
5つ目は、契約や規則に別の定めがあるとそちらが優先するという条件です。善意で書いた「制作者の権利を尊重する」の1行が、会社への帰属を外していることがあります。就業規則、業務委託契約、社内規程のどこかに、意図せずそう読める記載が無いかを1度だけ洗います。洗う作業は法務に依頼し、AIには該当しそうな条項とその位置を並べさせるところまでにとどめます。
業務外の道具や、個人の契約で作った場合
会社が契約している道具ではなく、本人が個人で契約している道具を使って業務のものを作った場合はどうなるか。ここでよくある誤解が、道具が個人のものだから成果も個人のもの、という受け取り方です。職務著作の5つの条件に道具の所有者は入っていないため、会社の発意で、職務として作ったのであれば、道具が個人契約でも条件の判断は変わりません。
ただし別の問題が2つ立ちます。1つは、個人契約の道具に業務の情報を入れている点です。入れた内容が学習に使われる設定のままになっていないか、契約の条件を会社の側で確認できるか。もう1つは、その道具で作った記録が会社に残らない点です。人の手が入ったことを後から示す材料が、本人の手元にしか無いことになります。
実務の扱いとしては、業務のものを作るのは会社が契約した道具に限る、と1行だけ書いておきます。道具を限る目的は、権利の帰属ではなく、情報の管理と記録の所在にあります。この理由まで書いておくと、なぜ制限するのかという問い合わせが減ります。個人の道具を使ったからといって成果が個人のものになるわけではない、という点も同じ場所に書き添えておきます。
副業先で作ったものと、社内に持ち込まれたものの線
副業を認める会社が増えたことで、境目の相談が増えています。典型は2つです。副業先で作った資料や図を、自社の業務にも使いたいという相談。もう1つは、自社の業務で作ったものを副業先でも使いたいという相談です。どちらも、作ったときに誰の職務だったのかで判断が変わります。持ち込む人自身は、この区別を意識していないことがほとんどです。
副業先で作ったものは、副業先の職務著作になっている可能性があります。その場合、本人が自由に持ち出せるものではありません。本人が自分で作ったという事実と、本人が権利を持っているかどうかは別です。確かめずに自社で使ってしまうと、本人と副業先のあいだの話に自社が巻き込まれます。
逆向きも同じで、自社の職務として作ったものを副業先で使えば、自社の権利の問題になります。副業の規程に、成果物の持ち出しと持ち込みを1行ずつ書き足しておきます。書く場所は副業の規程であって、AIの利用規程ではありません。AIで作ったかどうかに関係なく、同じ線が要るからです。書く場所を間違えると、副業の申請をする人が読まない文書に埋もれます。
退職後の持ち出しに、規程のどこで備えるか
もめ方としていちばん多いのが、退職の場面です。本人が「あれは自分が作ったものだ」と言い、会社が「業務で作ったものだ」と言う。このとき双方が持ち出すのは記憶であって、記録ではありません。だから備えは、退職の手続きの側ではなく、規程の側に置きます。手続きの側に置くと、退職を切り出された日から準備が始まることになります。
規程に置くのは3行です。職務として作ったものは、AIを使ったかどうかにかかわらず会社に帰属すること。権利が生じない場合も、会社の業務のために作られたものとして扱い、退職後に自分の作品として持ち出さないこと。そして、作業の記録の置き場所は会社が指定する場所とすること。3行目が抜けると、1行目と2行目を示す材料がなくなります。
3行目の効き方は地味ですが実際的です。指示の文面と出し直しの記録が会社の側にあれば、誰がどこまで手を入れたかを後から並べられます。記録の置き場所を指定する1行は、権利の条項より先に効きます。なお、退職のときに何を片づけるかという手順そのものは別の記事の領分なので、ここでは規程に書く内容だけを扱います。
委託先との取り決めは4点に絞る
委託先との契約に書くことは、増やすほど締結が遅くなります。AIに関して増やすのは4点で足ります。1つ目は、納品物の制作にAIを使ってよいかどうか。禁止するのか、条件付きで認めるのか、自由にするのか。禁止する場合は、どの工程を禁止するのかまで書かないと運用できません。すべての工程を禁止すると、守れない条項が1つ増えるだけになります。
2つ目は、使った場合の申告です。どの工程で使ったか、どの範囲が生成されたものかを、納品時に書面で出してもらいます。3つ目は権利の移転で、生じた権利を自社に移す条項です。ここには著作者人格権の扱いも併せて書きます。著作者人格権は著作権法59条により譲渡できないため、実務では行使しないという約束を置きます。
4つ目が、前の章で触れた保証です。権利が生じていない場合でも納品物を自社が自由に使えること、第三者から請求を受けたときに委託先がどこまで対応するかを決めます。この4点目を置かないと、権利が生じていなかったときに契約が空振りします。4点とも、AIを使ったことを責める条項ではなく、納品物を後から安心して使うための条項として組みます。
発明や意匠の側は、答えが違う
ここまでは著作権の話でしたが、特許の側には別の答えが出ています。東京地方裁判所は2024年5月16日の判決(令和5年(行ウ)第5001号)で、特許法上の発明者は自然人に限られると判断し、AIを発明者として記載した出願の却下処分の取消しを求める請求を退けました。知的財産高等裁判所も2025年1月30日の判決(令和6年(行コ)第10006号)で、この判断を維持しています。
どちらの判決も、この問題は立法によって解決されるべきだという趣旨の言及をしています。いまの制度ではAIを発明者にできないが、制度が変わる可能性は残っているという状態です。海外でも同じ趣旨の出願が多くの国で退けられており、結論としては各国でおおむね揃っています。アメリカでも、AIが単独で作ったものには著作権が生じないという判断が2025年に連邦の控訴裁判所で示されています。
実務への影響は単純です。AIを使って生まれた技術的なアイデアでも、出願のときに書く発明者は人です。誰を発明者として書くかを、発案の場に居た人のなかから決める必要があります。この判断は、社内の開発規程と発明の取扱規程の側に置きます。著作権の規程に混ぜると、どちらの話をしているのか読む側が分からなくなります。
権利が生じない前提で、何で差を付けるか
社内のAI生成物の大半に権利が生じないとすると、困るのは同じものを他社が出しても止められないという点です。ここで多いのが、止められないなら意味がない、という受け取り方です。実際には、止められるかどうかと、同じものが出てくるかどうかは別の問題です。同じ指示を出しても、同じ材料が無ければ同じものは出てきません。
だから差が付くのは、出てきたものではなく、渡した材料の側です。自社の顧客から集めた声、過去の案件の記録、うまくいかなかった施策の一覧、社内で決めた判断の基準。これらを持っているかどうかで、同じ道具から出てくるものが変わります。守るべきなのは出てきたものではなく、それを出させた材料のほうです。
もう1つは、外に出す形の側です。生成物をそのまま出すのではなく、自社の実測値や事例を足してから出す。足した部分は人が作った表現になるため、その部分については権利が生じる余地が出てきます。ここも線は事案ごとに動くため、社内では足すことを手順として決めておき、権利が生じるかどうかの判断そのものは個別に法務へ回します。
権利の代わりに使える道は、秘密として守ること
権利が生じないものを守るもう1つの道が、秘密として管理することです。不正競争防止法2条6項は、営業秘密を、秘密として管理されていること、事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること、公然と知られていないこと、という3つの条件で定めています。3つのうち、社内の運用しだいで決まるのは1つ目です。
秘密として管理されているというのは、社内の誰が見てもそれが秘密だと分かる状態のことです。置き場所を分ける、見られる人を限る、秘密である旨を示す。AI生成物でいえば、渡した指示の文面、作業の記録、材料にした社内のデータがこれに当たります。出てきた成果物そのものよりも、材料と記録のほうが守る価値があります。
逆に、社内の共有の場所に誰でも見られる形で置いているものは、この条件を満たしません。共有した瞬間に、守る手段を1つ失っていることになります。共有する範囲と、秘密として扱う範囲を分けておく作業は、AIを使い始めた会社ほど後回しになりがちです。どこまでを秘密として扱うかは、法務と情報システムの両方で決めます。
規程への落とし方は、どの文書に何行書くかで決まる
ここまでの内容を、実際の文書に振り分けます。1つの規程にまとめて書きたくなりますが、読む人と改定の頻度が違うため、分けたほうが長く使えます。文書を分ける基準は、内容ではなく改定の頻度です。次の順で進めると、既存の文書をほとんど書き換えずに済みます。
就業規則、職務規程、業務委託契約の雛形、社内規程を順に見て、制作者の権利を尊重する趣旨の記載や、成果物を作成者に帰属させる趣旨の記載が無いかを確かめます。著作権法15条の5つ目の条件に当たるためです。読む文書の数だけ時間がかかるので、最初に着手します。
職務として作ったものは道具の種別にかかわらず会社に帰属すること、権利が生じない場合も会社の業務のために作られたものとして扱うこと、作業の記録は会社が指定する場所に置くこと。この3行は道具が増えても書き換える必要がないため、改定の頻度が低い文書に置きます。
使ってよい道具の一覧、業務のものは会社が契約した道具で作ること、記録として残す3つの項目。道具は入れ替わるため、この文書は改定の頻度が高くなります。帰属の原則をここに書き込むと、道具が増えるたびに帰属の条項まで見直すことになります。
AIを使ってよいか、使った場合の申告、権利の移転と著作者人格権を行使しない約束、権利の有無にかかわらず自由に使えることの保証。雛形に入れておけば、案件ごとに交渉する項目が減ります。既存の契約は更新のタイミングで順に差し替えます。
この作業で時間がかかるのは1段目です。既存の文書に、意図せず会社への帰属を外す記載が無いかを確かめる工程で、読む文書の数だけ時間がかかります。AIに下読みをさせる場合は、該当しそうな条項とその位置を並べさせるところまでにして、当たるかどうかの判断は法務が行います。ここを任せると、見落としに気づけません。
2段目以降は、書く量が少ないほど守られます。規程は、読む人が1回で読み切れる長さでないと運用されません。AIの利用規程に権利の話を全部書き込むと、道具が増えるたびに改定することになります。帰属の原則は就業規則の側に、道具ごとの条件は利用規程の側に置くのが、改定の手間の面でも合理的です。
これをやると、規程は1年で形だけになる
最後に、よい意図で導入されて逆に効かなくなる形を5つ挙げます。どれも決めた時点では正しく見えるものばかりです。1つでも当てはまるなら、次の改定を待たずに外してください。順番は、実際に起きる頻度の高いものから並べています。
- 規程に一行も書かないまま運用し、退職した本人が自作だと主張して持ち出す:示せる材料が無く、記憶の突き合わせになる
- 「会社が契約した道具で作ったものは会社のもの」とだけ書く:権利が生じるかどうかと帰属の条件が抜けているため、条件を争われたときに使えない
- 何回試せば権利が生じる、といった独自の基準を社内で決める:公的な基準が無いまま数字が独り歩きし、後から覆る
- AIで作ったものをすべて申告させる:量が多すぎて数週間で止まり、外に出るものの申告まで一緒に止まる
- 委託契約に権利を移す条項だけを置く:権利が生じていなかった場合に移すものが無く、自由に使える保証も残らない
1つ目がいちばん多く、いちばん高く付きます。規程に何も書かないまま運用を続け、退職の場面で初めて条件を確かめる。そのときに示せる材料が無いため、話は記憶の突き合わせになります。もめてから調べる場合と、先に書いておく場合では、かかる時間が桁で違います。しかも調べる側は、退職の日程という締切を抱えた状態で条文に当たることになります。2つ目と5つ目は、書いてあるのに使えないという形で表れるため、書いた時点では誰も気づきません。
4つ目は、書きすぎによる失敗です。AIで作ったものをすべて申告させる形にすると、申告は数週間で止まります。申告を求める範囲は、外に出るものと納品するものに絞るのが現実的です。社内の下書きまで対象にすると、守られない規程が1つ増え、本当に申告してほしいものまで一緒に出てこなくなります。
まとめ
誰のものかという問いに答える前に、権利が生まれているかどうかを見る。この順番を変えるだけで、社内の議論は短くなります。人の手が薄い生成物には権利が生じないと整理されており、件数でいえばそれが大半です。人の手が十分に入った場合に初めて、著作権法15条1項の5つの条件で会社か本人かが決まります。5つの条件に、道具を誰が契約したかも、費用を誰が払ったかも入っていません。委託先が作ったものは3つ目の筋で、契約に4点を足します。権利が生じないものは、渡した材料の側と、秘密として管理する側で守ります。文書は改定の頻度で分け、帰属の原則は就業規則に3行、道具ごとの条件は利用規程に置きます。どこまでを人が確かめるかは先に決め、条項が当たるかどうかの最終的な判断は法務と弁護士に確かめてください。今週やることは1つです。就業規則と業務委託契約の雛形を開き、成果物の帰属について何が書いてあるかを読んでみてください。何も書いていなければ、それが最初の1行になります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
