アンケートの自由記述はそのまま渡せない|AIに読ませる前の処理

アンケートの自由記述はそのまま渡せない|AIに読ませる前の処理

「無記名で取ったアンケートなので、そのままAIに読ませて問題ないと思っていました」「自由記述に取引先の担当者の名前が書かれていて、要約を社内で回してから気づきました」——自由記述をまとめる作業を生成AIに任せ始めた会社から、この半年で届くようになった声です。どちらのアンケートも、氏名を書く欄は用意していません。用意していないのに、名前が入っています。ここでよく出る受け止め方は、名前を聞いていないのだから個人情報ではない、というものです。けれどその前提は自由記述の欄では成り立ちません。回答者は、聞かれていないことまで自分の判断で書くからです。この記事では、自由記述に実際に混ざってくるものを名指しし、消すのか置き換えるのか残すのかをどう決めるか、原文をどこに置くか、取った時点の案内文とどう食い違うか、外部の道具に渡す前に何を確かめるかまでを並べます。要約のさせ方や分類の軸の決め方そのものは扱いません。


カメ先生カメ先生

無記名のアンケートは個人情報を含まない、と思われがちなんだ。でも実際に集まった自由記述を開くと、選択肢の欄では聞いていない社名や担当者の名前が、そこだけ手書きのように残っていることが多い。


カメ子カメ子

こちらが聞いていないのに、回答した人のほうが書いてしまうということですか。


カメ先生カメ先生

そうなるね。しかも書かれるのは、回答した本人のことだけとは限らない。〇〇支店の誰それの対応が、という形で、その場にいない人の話が入ってくる。集めた側から見ると、取るつもりのなかった人の情報が手元に来たことになる。


カメ子カメ子

自分のことを書いた人と、名前を出されただけの人とでは、扱いも変わってくるのでしょうか。


この記事のポイント
  • 無記名でも、自由記述には社名・担当者名・支店名・取引の金額が本人の手で書き込まれる。氏名の欄を消しても残る
  • 混ざるものは消す・置き換える・そのまま残すの3つに振り分ける。全部消すと業種や規模まで落ちて傾向が読めなくなる
  • 個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、個人情報を含む指示文を入れる前に利用目的の範囲内かを確かめるよう求めている

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目次

「無記名だから個人情報ではない」が成り立たない場所

最初に範囲をはっきりさせます。ここで扱うのは、集まった自由記述を生成AIに読ませる直前までの処理だけです。要約のさせ方や、分類の軸をどう決めるかは扱いません。渡す前に何を消し、何を置き換え、何を残すか。そこに絞ります。読ませたあとの読み方は、それだけで別の話になります。

無記名のアンケートは個人情報にあたらない、という言い方は、選択肢の欄だけを見ているときには当たっています。氏名も連絡先も聞いていないのですから、その欄からは誰かを特定できません。ところが自由記述の欄は、こちらが用意した項目に答える場所ではありません。回答者が言いたいことを、回答者の言葉で書く場所です。だから、聞いていない情報が入ります。

個人情報保護法でいう個人情報は、その情報だけで誰かが分かるものに限りません。ほかの情報と照らし合わせれば誰かが分かるものも含みます。自由記述に「先月伺った〇〇支店のご担当の方」と書かれていれば、社内の名簿と突き合わせるだけで1人に絞れます。氏名の欄が空でも、文章のほうが名簿の役目を果たしてしまう、ということです。

実務でこれが表に出るのは、たいてい2回目です。1回目は誰も開かずに集計して終わる。2回目に、去年の自由記述もまとめて読ませようという話になり、そこで過去の回答がまとめて外部の道具へ流れます。集めた時点ではなく、使い回した時点で問題になるのがこの話のやっかいなところです。

回答欄に実際に混ざってくるもの

何が混ざるのかを、個人情報という抽象的な言葉で持たずに、名指しで持っておきます。BtoBのアンケートで実際に見かけるのは、社名、回答者本人の氏名、部署名と役職、担当者の名前、支店や営業所の名前、電話番号やメールの記載、取引の金額と条件です。ここに、競合他社の実名が加わります。

いちばん多いのは社名です。弊社は〇〇工業ですが、という書き出しで自分から名乗る回答は珍しくありません。次に多いのが支店名と担当者名の組み合わせで、〇〇支店の△△さんにはよくしてもらっている、という形で出てきます。しかも褒めている文章のほうが名前が出やすい傾向があります。不満は主語を伏せ、感謝は名指しになります。

金額と条件は、件数は少ないのに影響が大きい種類です。今の単価だと厳しい、という程度なら問題になりませんが、他社さんは同じ内容で3割安い、と書かれると、未公開の取引条件がそのまま残ります。これを外部の道具に流すと、自社の情報ではないものを自社の判断で外に出したことになります。

もう1つ見落とされるのが、回答の欄の外に残る情報です。回答の受付時刻、使った端末の種類、配布したときの案内の宛先。集計の道具の設定によっては、回答者の氏名やメールが自動で記録され、無記名のつもりの表に列として並んでいることがあります。集計の前にその列を落としていないと、自由記述と同じ行のまま渡ります。

名前が書かれていなくても、誰が書いたかは分かる

名前を消せば分からなくなる、とも限りません。回答者が特定される経路は、匿名アンケートの危うさを扱った実務解説(2026年時点)でいくつかに整理されています。受付時刻と記述内容の組み合わせ、属性の組み合わせ、少数しかいない立場からの発言、そして文章の癖です。どれも、名前を消しても残ります。

受付時刻は見落とされがちです。その日しか出社していない人、その時間に手が空いている人が1人しかいなければ、時刻だけで絞れます。手当ては簡単で、渡す表から時刻を落として日付だけにするか、日付も月の単位にまとめます。時刻は分析にほとんど効かないのに、特定にはよく効きます。落としても失うものがありません。

属性の組み合わせも同じ理屈です。業種と従業員規模と地域を並べると、当てはまる会社が1社しかない組み合わせが出ます。BtoBのアンケートは母数が小さいので、3つ並べた時点で1社に絞れることが普通に起きます。並べる列を2つまでにする、規模は帯にまとめる、といった手当てが要ります。

文章の癖は処理では落ちません。同じ言い回しを繰り返す人、長文で書く人、語尾が独特な人。ここは消す側で対処できないので、扱いの側を変えます。原文をそのまま社内で回覧しない、報告に引くときは要点だけを書き直す。運用の決めごとにしておくほうが確実です。

混ざるのは回答した本人の情報だけではない

ここがアンケートに固有の難しさです。自由記述には、回答した本人ではない人の情報が入ります。名指しされた自社の従業員、取引先の担当者、その場に居合わせた第三者。本人は自分のことを書くつもりで、別の人の情報を提供しているという形になります。

集めた側から見ると、この情報は本人から同意を得ていません。回答者に示した案内文は回答者に向けたものなので、名指しされた人には何も伝わっていません。名指しされた人には説明していない情報を、外部の道具に流しているという構図になりやすいところです。

現場でよく起きるのは、社内の人の名前が入った自由記述を、そのまま評価の材料に使ってしまう場合です。褒められた記述を抜いて共有するのはまだしも、否定的な記述を人事の側が見る形にすると、アンケートの目的を超えます。誰の名前が出てきたら誰に見せないかを、処理を始める前に1行で決めておきます。

取引先の担当者の名前が入った場合は、別の手当てが要ります。自社の従業員なら社内の決まりで扱いの説明が付きますが、他社の従業員の情報は自社で預かっている理由がありません。実務では、名指しされた他社の人の情報は役割の呼び名に置き換え、原文のほうには残さないのが扱いやすい線になります。

混ざるものの種類ごとに扱いを決める

種類が分かったら、種類ごとに扱いを先に決めます。1件ずつ考えると判断がぶれるので、表を1枚作って、拾ったものをそこに当てはめる形にします。BtoBのアンケートでよく出る7種を並べると、次のようになります。

混ざるものそのままだと何が起きるか渡す版での扱い残す形
回答者本人の氏名名簿と突き合わせれば1人に絞れる消す回答ごとの通し番号だけを残す
社名取引の内容と結び付いて1社が特定される置き換える業種と規模の帯に変える
自社の従業員の名前と支店名本人の同意なく評価の材料になる置き換える役割の呼び名に変える
取引先の担当者の名前預かる理由のない他社の情報が残る消す立場だけを残す
電話番号やメールの記載そのまま連絡先として使える状態になる消す記載があった事実だけを残す
取引の金額と条件未公開の条件が外に出る置き換える金額の帯に変える
競合他社の実名他社の評判を自社の記録として保存することになる置き換える別の会社という書き方に変える

この表で迷いが出やすいのは3行目です。自社の従業員の名前は、改善のためには残したいという声が必ず出ます。誰の対応が良かったのかが分からないと表彰できない、という理屈です。ここは、渡す版からは落とし、原文の側で人事とは別の担当が拾うという二段構えにします。外部の道具に流す版と、社内で表彰に使う版を同じにしないということです。

7行目の競合の実名も、判断が割れます。自社の記録として他社の評判を保存することになるので、置き換えるのが無難です。ただし全部を同じ書き方にすると、どの会社の話が何件あったかが数えられません。同じ会社には同じ記号を当てて、対応の表は原文の側に1枚だけ置きます。

消すか、置き換えるか、そのまま残すか

扱いは3つしかありません。消す、置き換える、そのまま残す。迷いが生まれるのは、消すと分析が成り立たなくなる項目があるからです。全部消せば安全ですが、業種も規模も地域も落ちた自由記述の束は、傾向を読む材料になりません。安全にしたぶんだけ、読む理由が消えます。

線の引き方は1つです。その情報が無いと結論が変わるかどうかで決めます。業種が分からないと、製造業だけで起きている不満が見えないので、業種は残します。担当者の名前が分からなくても、対応の速さへの不満は読めるので、名前は消します。分析で何を知りたいのかを先に1行書いておくと、この判断が速くなります。

置き換えは、消すことと残すことの中間です。社名を業種と規模の帯に変える、人名を役割の呼び名に変える、金額を帯に変える。このとき、置き換えたあとも同じ相手の話だと分かるように、同じ相手には同じ記号を当てます。ここがばらばらだと、1社の回答が複数社に見えて件数が水増しされます。

なお、どこまで消すと使えなくなるかという論点そのものは、自由記述に限らない渡す項目全般の話として別に整理してあります。ここでは自由記述に限って、残す粒度は業種・規模の帯・地域の3つまでという目安だけを置きます。3つそろうと特定に近づくので、分析で並べて使うのはそのうち2つまでにします。

渡す前の処理を4つの段に分ける

ここまでの判断を、作業の順番に落とします。順番が要るのは、後ろの段からやると同じ手戻りが毎回出るからです。特に1つ目を飛ばすと、2つ目以降を何度やっても、次の回収でまた同じ列が生えてきます。

STEP1
集める側の設定を止める

回答者の氏名やメールを自動で記録する設定になっていないかを確かめ、切ります。受付時刻は日付だけに丸めます。既に配布中のものは途中からでも切ります。ここを先にやらないと、後の段でいくら消しても、次の回収でまた同じ列が並びます。

STEP2
混ざりものを拾う

自由記述の列だけを取り出し、前の章の7種を目印に拾います。機械で拾えるのは形の決まったもの、つまり電話番号とメールの形、数字と円の組み合わせだけです。社名と人名は形が決まっていないので、読んで拾う工程が残ります。

STEP3
扱いを決めて置き換える

拾ったものを消す・置き換える・残すに振り分けます。置き換えは対応の表を1枚だけ作り、同じ相手には同じ記号を当てます。対応の表は渡す版と一緒に置かず、原文の側に置きます。

STEP4
原文と渡す版を分けて置く

原文は元の場所に残し、渡す版だけを別の場所に作ります。ファイルの名前でどちらか分かるようにします。渡す版を作った日と、どの段まで処理したかを1行だけ添えておくと、途中で止まったときに続きから戻れます。

4つの段を1回通すと、次からは2つ目と3つ目だけになります。件数にもよりますが、200件の自由記述なら、慣れれば半日で通る分量です。最初の1回で対応の表を作っておくと、2回目からは半分の時間で終わります。

原文はどこに置き、誰が開けるか

処理をしたあと、原文を消してしまう会社があります。安全なようで、後から効いてきません。要約に出てきた話が本当に書かれていたのかを確かめられなくなるからです。AIの要約には、元の文に無い話が混じることがあります。確かめる先が無ければ、その場で気づけません。

だから原文は残します。残す代わりに、開ける人を絞ります。実務で扱いやすいのは、原文を開ける人を2人か3人に決め、部署ではなく名前で書いておくという形です。部署で決めると、異動のたびに範囲が静かに広がります。

置き場所も分けます。原文は社内の共有の場所に置いたままにし、渡す版だけを分析に使う場所へ移します。同じ場所に原文と渡す版を並べて置かない。これだけで、どちらを渡したのか分からなくなる事故が減ります。ファイルの名前の先頭に、原文か渡す版かを書いておくのも効きます。

保管の期限も先に決めます。アンケートの目的が次回の改善に使うことなら、次回が終われば原文の役目は終わります。期限を決めずに置くと、3年後に別の目的で読ませることになり、取った時点の案内文から離れていきます。期限は案内文に書いた範囲から逆算して決めます。

見つける工程をAIに任せてよいか

拾う作業は手間がかかるので、AIに任せたくなります。任せてよい範囲はあります。形の決まったものを拾うところと、人名や社名らしき語に印を付ける下書きまでです。ここまでなら、人が読む前の下ごしらえとして十分に役に立ちます。

任せてはいけないのは、消すかどうかの最終の判断です。理由は3つあります。取りこぼしが必ず出ること。社内でしか通じない略称や支店の通称を、人名や社名と結び付けられないこと。そして、消しすぎたかどうかは、分析で何を知りたいかを知っている人にしか判断できないことです。

実務では3つを先に決めます。AIに判断させない範囲を先に書くこと。消す・残すの最終判断と、外部に渡してよいかの可否がそれにあたります。拾ったものには根拠を書かせること。どの語をなぜ人名と見たのかを1件ずつ添えさせます。そして人が確認する範囲を先に決めること。全件は見られないので、件数の1割か、多い回は50件を上限に抜き取ります。

抜き取りの見方も決めておきます。見るのは、消し忘れが1件でもあるかどうかです。9割正しく消せていても、残った1件が社名ならそのまま外に出ます。正しく消せた率ではなく、漏れが出たかどうかで合否を見ます。漏れが出たら、その種類を拾い方の指示に足してやり直します。

取った時点の説明と食い違わせない

処理そのものより先に効いてくるのが、集めたときに何と書いたかです。個人情報保護委員会は2023年6月2日に出した生成AIサービスの利用に関する注意喚起で、個人情報を含む指示文を入力する場合は、あらかじめ特定した利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認することを求めています。

ここが食い違う典型が、アンケートの案内文です。社内の改善に使います、とだけ書いて集めた回答を、外部の生成AIの道具に読ませる。改善に使うという説明の中に、外部の事業者へ渡すことが含まれているかどうかは、読んだ人には分かりません。渡す先が増えたのに、説明は集めた日のままという状態になります。

手当ての順番は2つに分かれます。これから取るアンケートは、案内文に外部の道具を使うことと、渡す前に個人が分かる記述を落とすことを1行ずつ書きます。既に取ったアンケートは、案内文を読み返して、いまの渡し方がその範囲に入ると読めるかを確かめます。案内文の控えが残っていない回収分は、渡さない側に寄せます。

同じ注意喚起では、生成AIのサービスを提供する事業者が、その個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認することも求められています。案内文を直すことと、渡す先を確かめることは別の作業で、どちらか片方だけでは足りません。次の章が後半にあたります。

外部の道具に渡すときに確かめること

渡す先の確認は、道具の名前ではなく契約と設定で見ます。見るのは3つです。入力した内容が学習に使われない形になっているか、入力した内容がいつまで保存されるか、どこの国のどの事業者が預かるか。3つとも、無料で使える形と法人向けの契約とで扱いが変わります。

学習に使われない形は、契約の側で決まっている場合と、画面の設定を切り替える場合があります。厄介なのは後者です。担当者が自分の画面で切り替えただけでは、別の担当者の画面には効いていません。組織の単位でまとめて設定できるかを確かめ、できないなら個人の画面の設定に頼らない使い方にします。

保存の期間も見ます。不正な使い方を監視するために一定の期間は保存する、という形が多く、その期間は事業者によって違います。消す設定にしても、即座に消えるとは限りません。だから案内文に、外部には一切残りません、とは書けません。書くなら、残る期間まで含めて書ける範囲にします。

預ける先が国外の事業者になる場合は、別の確認が要ります。2026年4月7日に閣議決定された個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案には、処理の委託を受けた事業者について、預かった個人データの扱いに関する義務の見直しが含まれています。預ける側だけでなく預かる側の義務も動く方向なので、契約を見直す時期に合わせて確かめます。

加工すれば個人情報ではなくなるのか

名前を消したのだから個人情報ではない、という整理を社内でしてしまう会社があります。ここは法律の言葉で線が引かれているので、正しい形で持っておきます。個人情報保護委員会の説明では、加工した情報は2つに分かれます。

1つは匿名加工情報です。特定の個人を識別できないように加工し、元の個人情報を復元できないようにしたもので、個人情報には当たらず、本人の同意なしに第三者へ提供できます。もう1つは仮名加工情報で、ほかの情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工したものです。作った側は元のデータを持っているので原則として個人情報に当たり、第三者への提供は原則として禁じられています。

アンケートの自由記述で名前を伏せただけの状態は、ほぼ間違いなく後者の側です。原文を手元に残している以上、照らし合わせれば戻せます。伏せたから自由に渡せる、という順番にはなりません。渡してよいかどうかは、加工の度合いではなく、取った時点の案内文と、渡す先との契約で決まります。

実務では、匿名加工情報の形まで作り込む必要はほとんどありません。作るのに手間がかかるうえ、傾向を読むのに要る粒度まで落ちます。仮名加工に相当する処理までを社内の標準にして、外に公開しない前提で回すほうが、手間と使い勝手の釣り合いが取れます。公開する数字が要るなら、そこだけ別に作ります。

回答者に何と書いて集めるか

ここまでは集めたあとの話です。集める側でできる手当てもあり、こちらのほうが効きます。いちばん効くのは、自由記述の欄の近くに1行だけ注意を置くことです。匿名アンケートの実務解説(2026年時点)では、集計は匿名で行うが、自由記述の内容によっては個人が特定される可能性があると明記することが勧められています。

この1行があるだけで、書く側の判断が変わります。名前を書くかどうかを回答者自身が選べるようになるからです。処理で消すより、書かれないようにするほうが漏れません。消す作業は必ず取りこぼしますが、書かれなかったものは取りこぼしようがありません。

併せて書いておくとよいのが3つあります。誰が読むのか、どこまで共有するのか、外部の道具を使うのか。どれも1行で足ります。長い説明文にすると読まれなくなるので、自由記述の欄のすぐ上に短く置きます。

  • 読む人の範囲を書く(例:改善を担当する部署の3名が読みます)
  • 共有する形を書く(例:個人が分かる記述を落としたうえで、要点を全社に共有します)
  • 外部の道具を使うなら書く(例:要点の整理に外部の生成AIの道具を使います。入力した内容は学習に使われない契約です)
  • 特定される可能性を正直に書く(例:集計は匿名で行いますが、記述の内容によっては個人が分かる場合があります)

逆に書いてはいけないのが、守れない約束です。一切外部には出しません、と書いたあとで外部の道具に渡すと、処理をどれだけ丁寧にやっても説明と食い違います。案内文は、いま実際にやっていることの範囲で書く。やり方を変えたら案内文も変える、という順番を崩さないことです。

従業員に聞くアンケートは別の危うさがある

顧客に聞くアンケートと、従業員に聞くアンケートでは、危うさの向きが違います。顧客の場合は情報が社外に出ることが問題になりますが、従業員の場合は社内で誰が書いたかが分かってしまうことのほうが問題になります。同じ処理では足りません。

母数が小さいからです。部署ごとに集計すれば、5人の部署で否定的な記述が1件あれば5分の1まで絞れます。そこに役職や勤続年数の列が加わると1人に決まります。集計の単位を細かくするほど、匿名は成り立たなくなります。人数の少ない部署は、1つ上の階層にまとめてから見ます。

自由記述をAIに読ませるときも、扱いを変えます。部署ごとに要点を出させると、その部署の1件がそのまま引用される形になりがちです。まとめる単位を部署ではなく全社か事業の単位にし、原文の引用を使わずに傾向だけを出させます。これだけで、書いた人が読み取られる確率が下がります。

運用の側も先に決めます。原文を人事の評価に使わない。個人が特定できてしまった記述は報告から外す。誰が原文を開けるかを名前で決める。この3つを、アンケートを配る前に書いて一緒に配ります。配ったあとに決めると、決めた内容が信用されません。次の回から回答が薄くなります。

渡す前に見る確認表

ここまでの内容は、1枚の確認表に落ちます。渡す版を作り終えたあと、外部の道具に入れる前に上から見ます。項目は10個に収めます。多くすると使われなくなり、使われない表は無いのと同じです。

  • 回答者の氏名やメールを自動で記録する設定が切ってあるか
  • 受付時刻の列が、日付か月に丸めてあるか
  • 自由記述の中に、社名・支店名・担当者名が残っていないか
  • 名指しされた自社の従業員の名前が、役割の呼び名に置き換わっているか
  • 取引先の担当者の名前と連絡先が消えているか
  • 取引の金額と条件が、帯の表現に変わっているか
  • 置き換えの対応表が1枚あり、同じ相手に同じ記号が当たっているか
  • 原文と渡す版が別の場所にあり、開ける人が名前で決まっているか
  • 集めたときの案内文の範囲に、いまの渡し方が入っているか
  • 渡す先の契約で、入力した内容が学習に使われない形になっているか

この表で最初に引っかかるのは、たいてい1つ目と9つ目です。設定は配布のたびに戻っていることがあり、案内文は前の回のものを使い回していることが多いからです。この2つは、処理の技術ではなく段取りの問題なので、先に直すほうが効きます。

  • 無記名の設定にしたつもりが、回答者のメールが列として残ったまま、自由記述ごと外部の道具に渡していた
  • 社名を機械で全部消したら業種の記述まで落ち、どの業界で起きている不満なのか読めなくなった
  • 置き換えの記号を回収の回ごとに振り直し、同じ会社が別の会社として2件に数えられた
  • 原文を安全のために消してしまい、要約に出てきた指摘が本当に書かれていたのか確かめられなくなった
  • 社内の改善にのみ使います、と書いて集めた回答を、翌年になって外部の生成AIの道具に読ませていた
  • 5人の部署の従業員アンケートを部署ごとにまとめさせ、書いた本人が周囲に分かってしまった

最後に、判断を人に残す場所を2つだけ決めておきます。消すか残すかの最終の決定と、外部に渡してよいかどうかの可否です。どちらも、分析で何を知りたいかと、集めたときに何と説明したかが材料になります。どちらも社内にしかない情報なので、外から来た仕組みには持たせられません。

まとめ

無記名で集めたアンケートでも、自由記述の欄には回答者が自分の手で社名や担当者の名前を書き込みます。しかも書かれるのは本人のことだけではなく、名指しされた従業員や取引先の担当者の情報が混ざります。渡す前にやることは4つで、集める側の設定を止め、混ざりものを拾い、消す・置き換える・残すに振り分け、原文と渡す版を分けて置く。あわせて、集めたときの案内文といまの渡し方が食い違っていないかを読み返します。まずは直近の1回分を開いて、自由記述に社名がいくつ書かれているかを数えるところから始めてください。数えた時点で、この作業が要るかどうかは決まります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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