外注先のAI利用で決める6項目|発注側が握る条件

外注先のAI利用で決める6項目|発注側が握る条件

「制作会社に記事を頼んでいるが、AIで書いているのかどうか分からない」「デザインの外注先にAIの利用を禁止すべきか、社内で答えが出ない」。制作を外に出しているマーケティング部門から、この二つが並んで届くようになりました。国の指針も動いています。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインは2026年3月31日に第1.2版が公表され、AIに関わる主体をAI開発者・AI提供者・AI利用者の三つに分けて整理しています。外注先にAIを使う仕事を出す会社は、この区分でいえばAI利用者の側に立ちます。つまり、外注先が使うかどうかを見守る立場ではありません。問われているのは使用の可否ではなく、成果物の責任をどこまで自社で持つかという線引きです。この記事では、発注側が決めるべきことを6項目に絞り、決めた内容を毎回の発注に載せるところまで整理します。


カメ先生カメ先生

外注先のAI利用って、使ってよいか駄目かを決める話だと思われがちなんだけど、本当は『どこまでを外注先の判断に任せるか』を決める話なんだ。


カメ子カメ子

使ってよいと決めたら、それで終わりではないんですか。


カメ先生カメ先生

終わらないよ。同じ許可でも、下調べの下書きまでなら発注側の確認は軽く済む。納品する成果物そのものに使うなら、確かめる工程を足さないと釣り合わない。


カメ子カメ子

許可の中身しだいで、こちらの手間まで変わるんですね。


この記事のポイント
  • 決めるのは、使ってよい工程・使ってよいサービス・秘密情報の扱い・権利の担保・開示・検収の6項目
  • 禁止か放置かの二択ではなく、工程ごとに線を引き、外注先が答えられる形にして渡す
  • 一度決めて終わりにせず、発注のひな形と検収の記録に載せて、毎回同じ手順で回す

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目次

禁止と放置の間に、発注側の設計がある

外注先のAI利用について、社内の議論は二つの極に振れがちです。一方は全面禁止で、契約書に一行入れて終わらせる案。もう一方は、相手のやり方には口を出さないという放置です。どちらも一見すると筋が通っていますが、実務では機能しません。全面禁止は、守られているかどうかを確かめる手段が発注側にありません。文章の下書きに使ったかどうかは、納品物を見ただけでは分からないからです。禁止と書いた瞬間に、外注先には黙って使う動機が生まれます。

放置のほうは、もっと直接的な形で跳ね返ります。制作物に誤った数字が入っていた、他社の表現に似ていると指摘された、渡した資料が社外のサービスに入力されていた。こうした事態が起きたとき、対外的に説明を求められるのは発注した側です。外注先に非があったとしても、読者や取引先から見れば、その記事や資料を出したのは自社です。責任の所在は、作業の分担では動きません。だから、任せる範囲を先に自分で決める必要があります。

補助線として役立つのが、国の指針が採っている主体の分け方です。AI事業者ガイドラインは、AIに関わる立場をAI開発者・AI提供者・AI利用者の三つに区分し、全てのAIシステムやサービスを対象に含めています。第1.2版は2026年3月31日の公表で、本編に加えてチェックリストなどの別添が付いています。外注先に制作を頼む会社は、自分の手でAIを操作していなくても、成果物を世に出す立場としてAI利用者の側に置かれます。外注しているから自社は関係ない、という整理はできないと考えておくのが安全です。

決めることは6項目に絞れる

では何を決めればよいのか。契約書の解説やガイドラインを突き合わせると、論点は驚くほど収束します。使ってよい工程、使ってよいサービス、秘密情報の扱い、権利の担保、使ったことの開示、そして検収。この6つです。逆に言えば、この6つに答えを持たないまま「AIの利用は事前承認制とする」とだけ書いても、承認の基準がないため運用できません。承認制は、承認の判断基準とセットでなければ機能しないのです。

6項目は、それぞれ別々の心配ごとに対応しています。工程の線引きは品質の心配、サービスの指定は情報漏えいの心配、秘密情報の扱いは契約と法令の心配、権利の担保は第三者からの指摘の心配、開示は検収の設計、検収は最終的な出口の管理です。まとめて一つの条項に押し込むと、どれか一つが抜けても気づけません。次の表に、決めないままにしたときに何が起きるかを並べます。

決める項目決めないままだと起きること決め方の目安
1 どの工程まで使ってよいか下書きだけのつもりが、納品物そのものに使われている下調べ・案出し・成果物の三段階で線を引く
2 どのサービスを使ってよいか入力が学習に使われる個人向けの環境で作業される学習に使わない契約であることを条件にする
3 秘密情報を入れてよいか渡した資料が社外に出て、経路をたどれなくなる原則は入力禁止とし、必要なときだけ事前の同意を取る
4 権利をどう担保するか納品後に第三者から指摘され、発注側が矢面に立つ帰属と非侵害の約束に加えて、確認の手順まで決める
5 使ったことを伝えるか検収の重みを決められず、確認が形だけになる工程ごとに申告を受け、隠す動機を作らない
6 検収で何を確かめるか外注先の確認をそのまま信じ、誤りが世に出る事実・権利・表現の三点を発注側が見る

この表の使い方は、上から順に埋めることです。6項目は独立していないので、上の答えが下の答えを縛ります。たとえば工程を下調べまでに限れば、秘密情報を入力する場面はほとんど生じません。反対に成果物そのものにAIを使ってよいと決めるなら、権利の担保と検収の設計を厚くしないと釣り合いません。1番の答えを決めずに4番だけを厳しくすると、現場では守れない条件になります。

項目1:どの工程まで使ってよいかを段階で切る

最初に決めるのは、制作のどの工程までAIを使ってよいかです。ここを「使ってよい」「使ってはいけない」の二値にすると、実態と合いません。制作の工程は、情報を集める段階、構成や案を出す段階、実際に成果物を作る段階に分かれます。それぞれで、AIが混ざったときの影響がまるで違います。下調べに使うことと、納品物そのものを生成させることは、同じ許可で扱えません

下調べの段階なら、出てきた内容は人が裏取りしてから使うのが前提です。誤りが混ざっていても、次の工程で落ちます。案出しの段階も、採用するかどうかを人が決めるため、影響は限定的です。危ないのは三段階目です。納品する文章や図案そのものが生成物だと、誤りも、他社の表現との近さも、そのまま外に出ます。契約書の解説でも、AIの利用範囲を書くときは対象となる業務の部分まで明記することが勧められています。曖昧な許可は、後で認識のずれになります。

実務では、次のような書き分けが扱いやすくなります。下調べと案出しは許可、成果物の生成は事前の相談制、そして数字や固有名詞を含む記述の生成は不可。工程で線を引くと、外注先も判断に迷わなくなります。ここで一つ注意があります。工程の線引きは、外注先の作業効率を落とすためのものではありません。むしろ許可の範囲を明示したほうが、外注先は安心して使えます。禁止だけを並べた条件は、結局のところ守られません。

項目2:どのサービスを使ってよいかは、契約の形で指定する

二つ目は、使ってよいAIサービスの指定です。ここで見るのはツールの名前ではなく、契約の形です。同じ名前のサービスでも、個人向けの無料の使い方と、法人向けの契約や外部連携の仕組みを経由した使い方では、入力したデータの扱いが変わります。フリーランス向けの実務解説では、個人向けの無料プランは入力データが学習に使われる扱いのサービスが多く、法人向けの契約プランや外部連携の経由では既定で学習に使わない設計とされると整理されています。

したがって発注側が指定すべきなのは、「学習に使われない契約であること」という条件です。名前で指定すると、サービスが増えたり仕様が変わったりするたびに条件を書き直すことになります。条件で指定しておけば、外注先が別のサービスを使う場合でも判断ができます。あわせて、入力したやり取りがどのくらいの期間保管されるのか、契約が終わったあとに消えるのかも確認の対象に入れておきます。学習に使われないことと、保管されないことは別の話です

確認は口頭で済ませないでください。受託側の実務解説では、参画前に確かめる項目として学習利用の設定を外した証跡の確認が挙げられています。管理画面の設定を撮った画像でも、契約の種別が分かる書面でも構いません。証跡を求めること自体が、条件を本気で運用している合図になります。なお、外注先がさらに別の会社や個人に再委託している場合は、その先まで同じ条件が届いているかを確かめる必要があります。ここが抜けると、条件は一段目で止まります。

項目3:秘密情報と個人情報を入れてよいかを先に書く

三つ目は、渡した資料をAIに入力してよいかどうかです。これは実務で最も判断が割れる論点でもあります。秘密保持の契約では、秘密情報を第三者に開示しないと定めるのが普通ですが、生成AIのサービスに入力する行為が第三者への開示に当たるかどうかは、解釈が分かれる領域だと指摘されています。契約書に何も書かれていない場合、外注先は自分の判断で線を引くことになります。その判断は、発注側の想定とずれる可能性があります。

だから発注側が先に書きます。基本の形は、渡した資料は本件の業務のためだけに使い、AIの学習には使わせない、というものです。契約書の解説でも、提供した情報を目的外で使わせないことと、AIの学習目的で二次利用させないことが別々の論点として挙げられています。加えて、秘密情報の定義が広いのか狭いのかを確かめてください。業務で知り得た一切の情報を秘密とする広い定義なら、社名や案件名も入力できないことになります。定義を確認せずに許可を出すと、条項どうしが矛盾します。

個人情報は、さらに慎重に扱います。契約書の解説では、個人情報保護法の第三者提供と外国にある第三者への提供の規定への対応が挙げられ、個人データを国外のAIサービスに入力しないこと、やむを得ず入力する場合は事前に通知することが推奨されています。実務としては、原則は入力禁止と定め、どうしても必要な場面だけメールなど記録の残る形で事前に同意を取る運用が現実的です。口頭の許可は、担当が替わった時点で存在しなかったことになります。

項目4:権利は帰属条項だけでは守れない

四つ目は権利です。多くの契約書には、成果物に関する一切の知的財産権は委託者に帰属する、という条項が入っています。これ自体は必要ですが、AIが関わる制作では、この一行だけでは足りません。理由は二つあります。そもそも権利が発生していない場合があることと、第三者の権利を侵していないかは別問題であることです。順に見ていきます。

一つ目について、文化庁の整理では、簡単な指示を入力しただけでAIが自動生成したものには、原則として著作権が発生しないとされています。著作物は人が創作的に表現したものを指すからです。試行錯誤した詳細な指示や、生成物への大幅な加筆修正といった人の創作的寄与があれば発生の可能性が出てきます。つまり、帰属させる約束をしても、元になる権利が薄ければ他社の利用を止められないことがあります。独占して使いたい素材ほど、人の手が入る工程を残しておく意味があります。

二つ目は侵害の話です。著作権侵害の成立には、類似性と依拠性の二つが必要とされ、類似性は作風やアイデアの近さでは足りず、具体的な表現が似ていることが問題になります。依拠性については、利用者が既存の著作物を知らなかった場合でも、学習に使われたデータに含まれていれば認められうるという整理が示されています。知らなかったという説明が通りにくい構造です。だから契約には非侵害の保証を入れたうえで、実際に確かめる手順まで決めておきます。特定の作品名や作家名を挙げた指示を禁じること、公開前に画像や文章の類似を検索して確かめること。この二つが実務の最低線です。あわせて、指示文そのものを成果物に含めるかどうかも決めておくと、次の案件での再利用の可否が明確になります。

項目5:使ったことを伝えてもらう形を作る

五つ目は開示です。外注先がAIを使ったかどうかを発注側に伝えてもらうかどうか、伝えるならどの粒度で伝えるかを決めます。ここで大事なのは、開示を求める目的をはっきりさせることです。目的は責める材料を集めることではなく、検収の重みを決めることです。成果物そのものにAIが使われたと分かれば、事実確認と類似の確認を厚くします。下調べだけなら、通常の検収で足ります。

粒度は、工程と範囲の二つで十分です。どの工程で使ったか、成果物のどの部分に反映されているか。この二点が納品時に一行添えられていれば、発注側は確認の配分を決められます。使用したサービスの契約の種別まで書いてもらうと、項目2の条件と突き合わせられます。逆に、指示文の全文提出まで求めると外注先の負担が跳ね上がり、形だけの提出になります。求める情報は、検収の判断に使う分だけにとどめるのが続けるこつです。

開示を根づかせるうえで避けたいのが、申告した外注先を不利に扱うことです。AIを使ったと申告した案件だけ単価を下げる、次から発注を減らす。こうした対応が一度でもあれば、次から誰も申告しなくなります。申告は罰の入口ではなく、確認の入口だと伝えること。なお、成果物を対外的に公開する際に「AIを利用して制作した」と表示するかどうかは、これとは別の判断です。企業のガイドラインの整理でも、誤解を招きやすい写実的な画像やニュース性の高い文章については明示を検討することが勧められています。社内向けの申告と、対外的な表示を混同しないでください。

項目6:検収は発注側の仕事として設計する

六つ目は検収です。ここまでの5項目を決めても、最後に発注側が何も見なければ、条件は絵に描いた餅になります。検収で確かめるのは三点に整理できます。事実が合っているか、権利の面で危ない箇所がないか、自社の表現の基準に沿っているか。この三点は、外注先の自己確認では代替できません。自社の過去の発言との整合や、使ってはいけない表現の線引きは、社内にしか材料がないからです。

検収には期限を決めます。契約書の解説では、受領後10営業日以内に検査し、期間内に指摘がなければ承諾が完了する、という形が例として挙げられています。期限を決めない検収は二方向に壊れます。発注側がいつまでも指摘を続ければ外注先の作業が終わりませんし、逆に確認しないまま時間だけが過ぎれば、事実上の無検収で公開されます。期限は、外注先を縛るためではなく、自社の確認を予定に入れるために決めます

確認の量は、開示の内容で変えます。成果物そのものにAIが使われた案件は、数字と固有名詞と日付を全件確認し、類似の検索も行う。下調べだけの案件は、通常どおりの抜き取り確認にする。この配分を先に決めておけば、案件ごとに悩まずに済みます。運用を始めた最初の数か月は、誤りがどこに出やすいかを記録してください。誤りの型が見えてくると、確認する箇所を絞れるようになります。全件確認をいつまでも続けると、担当者が疲れて形骸化します。

6項目を毎回の発注に載せる

ここからが本題です。6項目に答えを出しても、それが担当者の頭の中にあるだけなら、次の案件では消えています。発注のたびに同じ条件が伝わり、同じ検収が回る形にして初めて意味を持ちます。大がかりな社内規程を作る必要はありません。既にある発注の流れに差し込むだけで足ります。次の順に進めると、一か月ほどで回り始めます。

STEP1
6項目の答えを一枚にまとめる

表の項目に沿って、自社の答えを短く書きます。長い文章は要りません。工程の線、サービスの条件、秘密情報の扱い、権利の担保、開示の粒度、検収の期限と観点。この六行が原本になります。

STEP2
発注のひな形に差し込む

発注書と依頼メールの定型文に、六行から必要な部分を写します。毎回書き起こすと抜けが出るので、ひな形の側に持たせます。案件ごとに変える箇所だけを空欄にしておきます。

STEP3
着手前に外注先の答えを受け取る

条件を伝えるだけで終わらせず、使う予定の有無と、使う場合のサービスの契約の種別を返してもらいます。証跡が出せるかもここで確認します。やり取りは記録の残る形で行います。

STEP4
納品時に申告と検収を突き合わせる

納品物に添えられた申告を見て、検収の配分を決めます。申告と実際の内容が食い違っていた場合は、その場で指摘し、記録に残します。

STEP5
四半期に一度、決めた内容を見直す

サービスの仕様も、社内の方針も変わります。誤りが出た箇所と、外注先から出た質問を材料に、六行を書き換えます。変えなかった場合も、確認した日付だけは残します。

この手順の要点は、判断を案件ごとに繰り返さないことにあります。毎回ゼロから考えると、担当者によって答えが変わり、外注先は混乱します。一枚の原本があれば、判断の速度も上がります。特に効くのが三つ目です。着手前に相手の答えを受け取っておくと、納品後に「聞いていない」という話にならず、双方の記憶違いを防げます。

発注書に書く言い回しを用意しておく

実際に発注書へ書くとなると、法務の言い回しをどこまで使うかで手が止まります。契約書の改定は時間がかかるので、まずは個別の発注書と依頼メールに載せる短い文から始めるのが現実的です。次の形であれば、専門的な表現を使わずに条件が伝わります。書き方は自社の言葉に直して構いませんが、六つの論点が全て入っているかだけは確かめてください。

  • 本件では、下調べと案出しの工程に限りAIの利用を認めます。納品物そのものの生成は事前にご相談ください
  • AIを利用する場合は、入力した内容が学習に使われない契約の環境でお願いします。ご契約の種別が分かる資料をご提示ください
  • 当社からお渡しする資料は、本件の業務以外に使用せず、AIへの入力は行わないでください
  • 納品物が第三者の権利を侵していないことをご確認のうえ、ご納品ください。特定の作品名や作家名を挙げた指示はお控えください
  • AIを利用した工程と、反映された範囲を納品時にお知らせください。確認の進め方を決めるために伺うものです
  • 納品後10営業日以内に当社で検査を行い、期間内にご連絡がない場合は検収完了といたします

この文面には、意図して外した要素があります。違反したときの罰則です。最初から罰則を並べると、外注先は条件そのものへの合意を渋ります。まずは運用を始め、実際に問題が起きた箇所から契約の側に格上げしていくほうが、現場は動きます。金額の大きい案件や、扱う情報が重い案件だけを先に契約書の改定に回す、という順番も取れます。

もう一つ、社内で先に握っておきたいことがあります。この条件を誰の名前で出すのかです。制作の担当者が個人の判断で出した条件は、担当が替わると消えます。部門の標準として出し、法務や情報システムの部署にも一度目を通してもらってください。部門の標準になった条件だけが、担当交代を越えて残ります。目を通した記録があれば、後から社内で異論が出たときの説明も短く済みます。

すでに取引のある外注先へどう切り出すか

新規の発注なら条件を最初から出せますが、難しいのは長く付き合っている外注先です。いまさら条件を出すと、疑っていると受け取られないか。この心配で切り出せずにいる担当者は少なくありません。結論から言えば、切り出し方の順序を守れば関係は悪くなりません。過去にさかのぼって確認しないことが第一です。これまでの納品物について使用の有無を問いただすと、相手は防御に回ります。

伝える順番は、目的、範囲、時期の三つです。まず、自社が成果物を世に出す立場として確認の体制を整えていること。次に、禁止ではなく工程ごとに線を引く形であること。最後に、次の案件から適用したいこと。この順で話せば、相手を疑う話ではなく、自社の体制の話として伝わります。あわせて、条件が守れない場合は相談してほしいと添えておくと、無理に合わせて黙って使う事態を避けられます。

外注先から出やすい反応も想定しておきます。多いのは、条件が付くぶん単価を上げてほしいという要望と、そもそも使っていないという回答です。前者は、確認や証跡の提出にかかる手間の話なので、費用として妥当な部分は認めます。後者については、いまは使っていなくても将来使う可能性があるため、条件だけ共有させてほしいと伝えます。使っていない外注先にとっても、条件の共有は不利益になりません。相手が個人の場合は、書面のやり取りに慣れていないこともあるため、メールで一往復する形にすると負担が軽くなります。

確認したことを記録に残す

運用が形になってきたら、次に効いてくるのが記録です。条件を伝えたこと、相手が答えたこと、検収で誰が何を見たこと。これらが残っていないと、問題が起きたときに何も説明できません。逆に記録があれば、不備が見つかった場合でも、体制として確認していた事実を示せます。特別な仕組みは不要で、案件のフォルダとメールの控えで足ります。

記録する内容残す場所後で使う場面
6項目に対する自社の答え発注のひな形と部門の共有資料新しい外注先に条件を説明するとき
外注先から受け取った回答と証跡案件のフォルダと発注書の控え納品物に疑義が出たとき
使用した工程と範囲の申告納品時のやり取りの記録検収の配分を決めるとき
検収で誰が何を確認したか検収の記録票社外から問い合わせを受けたとき
例外を認めた理由と期限決裁の記録同じ例外を求められたとき

表の最後の行は見落とされがちです。運用を始めると、必ず例外の相談が来ます。締め切りが迫っているので今回だけ成果物の生成を認めてほしい、この資料だけは入力させてほしい。例外を認めること自体は問題ありません。問題は、理由と期限を書かずに認めることです。記録のない例外は、次から前例になります。一度だけの判断であることを残しておけば、同じ相談が来たときに同じ基準で答えられます。

やってしまいがちな決め方

運用がうまくいかない例には、共通した型があります。どれも真面目に取り組んだ結果として起きるもので、担当者の力量の問題ではありません。着手の前に目を通しておくと、同じ道を通らずに済みます。

  • 契約書に一行だけ入れて終わりにする:承認の基準がないため、外注先は何を相談すればよいか分からない
  • サービスの名前で指定する:仕様が変わるたびに条件が古くなり、指定外の環境で作業される
  • 申告した外注先を不利に扱う:次から誰も申告しなくなり、開示の仕組みが死ぬ
  • 検収の期限を決めない:確認しないまま公開されるか、いつまでも手直しが終わらないかの両極になる
  • 担当者の個人的な依頼として伝える:担当が替わった時点で条件が消え、また一から作り直しになる

五つに共通するのは、決めた内容を運ぶ経路を用意していないことです。条件そのものは正しくても、それが発注のたびに相手へ届く仕組みがなければ、伝わるかどうかは担当者の記憶に依存します。前の章で挙げたひな形と記録は、この経路を作るためのものです。逆に言えば、条件が多少ゆるくても、毎回同じ形で伝わっているほうが実際の事故は減ります。

AIに判断させない範囲は、発注側が握る

最後に、6項目のどれにも共通する土台を書いておきます。AIに判断させてよい範囲と、人が決める範囲の線引きです。外注していても、この線引きだけは発注側に残ります。金額や条件の提示、法令や規約の解釈、他社との比較で優劣を断定する記述、人や組織の評価に関わる内容。間違えたときに取り返しがつかない領域は、生成物をそのまま出さないと決めておきます。これは技術の話ではないので、外注先に委ねる筋のものではありません。

あわせて、出力に根拠を書かせる運用を条件に加えると、検収が速くなります。どの資料のどの部分を根拠にしたのかが添えられていれば、確認する側はそこだけを見て判断できます。根拠が示せない記述は、そのまま使わない。この一線があるだけで、事実の誤りはかなり減ります。根拠として示された資料が古いこともあるため、日付まで書いてもらうと確実です。人が確認する範囲を先に決めることは、AIを信用しないことではなく、使い続けるための設計です

  • 条件は禁止事項の列挙ではなく、許可の範囲を書く。守れる形にしないと申告されなくなる
  • 外注先がさらに別の先へ再委託している場合は、同じ条件がその先まで届いているかを確認する
  • 秘密情報の定義が広い契約では、社名や案件名の入力も制限される。既存の条項と矛盾させない
  • サービスの仕様と国の指針は改定される。条件の見直し時期をあらかじめ決めておく
  • 事実・固有名詞・日付の確認は、どの体制であっても人の工程として残す

よくある質問

外注先にAIの利用を全面的に禁止してはいけないのですか

禁止すること自体は選べます。扱う情報が特に重い案件では、合理的な判断になる場面もあります。ただし、守られているかを発注側が確かめる手段は限られます。下調べに使ったかどうかは納品物からは分かりません。全面禁止にする場合は、対象を案件単位に絞り、代わりに検収の工程を厚くしてください。全案件を一律に禁止すると、実態として黙認と変わらない状態になりやすくなります。

外注先が個人やフリーランスの場合、同じ条件を出してよいですか

条件の中身は同じで構いませんが、渡し方を変えると通りやすくなります。契約書の改定を求めるのではなく、発注書や依頼メールに短い文で書く形にします。証跡の提出も、契約の種別が分かる範囲で十分です。受託側の実務解説でも、契約のAI利用条項の有無や、使えるサービスの指定を着手前に確認することが推奨されています。確認したいという意思は、相手にとっても判断の助けになります。

成果物にAIが使われたかどうかを、機械的に判定できますか

判定を目的にした仕組みはありますが、結果を根拠にして外注先の責任を問うのはお勧めしません。判定の精度には幅があり、人が書いた文章を生成物と誤って判定することもあります。取るべき手段は判定ではなく、着手前の条件の共有と、納品時の申告です。判定に頼るほど、外注先との関係は確認から詮索に変わります。検収で見るべきは、由来ではなく内容の正しさです。

まとめ

外注先のAI利用は、使ってよいか駄目かを一言で決められる問題ではありません。決めるのは、使ってよい工程・使ってよいサービス・秘密情報の扱い・権利の担保・開示・検収という6項目です。工程で線を引き、学習に使われない契約であることを条件にし、渡した資料の入力は原則として認めない。権利は帰属の一行で終わらせず、第三者の権利を侵していないかを確かめる手順まで決める。使った工程は申告してもらい、その内容で検収の重みを変える。ここまでが設計の部分です。そして本当の分かれ目は、決めた内容を発注のひな形と検収の記録に載せ、毎回同じ形で回せるかどうかにあります。担当者の記憶に依存した条件は、次の異動で消えます。まずは六行の原本を作り、次の発注から一つずつ載せていってください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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