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社内の新規事業の提案を Power Automate で受け、記入の不足と審査の区分を判定して、経営企画の審査の台帳に入れる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

社員から Microsoft Forms で届く新規事業の提案を Power Automate で受け、AI Builder のプロンプトで項目ごとの記入の足りなさと、審査の区分を決めるための印を判定します。結果は SharePoint の審査の台帳に入り、事務局は印の付いた提案から確かめます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service
連携・自動化
Make/Power Automate/Zapier
対象業界
IT・SaaS/商社/製造/金融
対象部門
経営企画
対象業務
内容確認・チェック/分類・仕分け
主な課題
入力作業が多い/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
判定
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
30h/月
AI導入後
8h/月
想定削減
73%
年間削減
264h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. Forms に提案が届くと、事務局の共有メールボックスに通知が来る
  2. 担当者が Forms の回答の画面を開き、12の欄を読む
  3. 必須の8つの欄について、書いてあるか、審査で話ができる程度に書いてあるかを見る
  4. 足りない欄があれば、提案者に何を書き足してほしいかをメールで書いて差し戻す
  5. 足りている提案について、既存事業との関係、社外との関わり、扱うデータや領域を読み取り、回し先の審査の場を決める
  6. 審査の台帳(SharePoint のリスト)に、提案者、所属、題名、区分、受付日、状態を手で入れる
  7. 区分に迷う提案は、制度の立ち上げから担当している1名に回して決めてもらう
導入後(After)
  1. 人社員が Forms の様式から提案する(様式はこれまでどおり)
  2. 自動回答の送信をきっかけに Power Automate のフローが動き、回答の中身を取得する
  3. 自動必須の欄が空のものを、AIを呼ぶ前に条件で拾う
  4. 自動12の欄をまとめた文を AI Builder のプロンプトに渡し、欄ごとの記入の状態と、区分を決めるための印を JSON で受け取る
  5. 自動印の組み合わせから、フローの条件分岐で審査の区分を決める
  6. 自動審査の台帳に1件を登録し、状態を「受付確認待ち」にする
  7. 自動`thin` や `empty` の欄があれば、差し戻しの文面の下書きを作り、事務局に承認の依頼を出す
  8. 人事務局が承認の画面で、記入の判定と区分と差し戻しの文面を確かめ、直して承認する
  9. 自動承認されたら、提案者に受付の連絡か差し戻しを送り、台帳の状態を更新する
各工程の詳しい説明を読む
  1. Forms に提案が届くと、事務局の共有メールボックスに通知が来る
  2. 担当者が Forms の回答の画面を開き、12の欄を読む
  3. 必須の8つの欄について、書いてあるか、審査で話ができる程度に書いてあるかを見る
  4. 足りない欄があれば、提案者に何を書き足してほしいかをメールで書いて差し戻す
  5. 足りている提案について、既存事業との関係、社外との関わり、扱うデータや領域を読み取り、回し先の審査の場を決める
  6. 審査の台帳(SharePoint のリスト)に、提案者、所属、題名、区分、受付日、状態を手で入れる
  7. 区分に迷う提案は、制度の立ち上げから担当している1名に回して決めてもらう

(a)読むのに時間がかかる。 1件の提案は様式の欄だけで2,000〜4,000字になることがあり、12の欄を読み通してからでないと回し先を決められません。

(b)薄い記入を見逃す。 欄が埋まっていると、読む側は「書いてある」と受け取りがちです。「想定する顧客:中小企業全般」「収益:月額課金」で審査会に回し、審査の場で差し戻しになることが月に数件あります。提案者にとっては、受付で言ってくれればよかった差し戻しです。

(c)区分の決め方が人によって違う。 「既存のサービスに機能を足す提案だが、新しい顧客層を狙っている」ものを事業部審査と見るか、新規事業審査会と見るか。社外の企業との協業を「提携」と見るかどうか。 担当者によって判断が分かれ、7番目に回る提案が毎月10件近く出ます。

(d)台帳の転記が後回しになる。 入力は週末にまとめてになりがちで、その間の「受け付けてもらえたか」の問い合わせに台帳で答えられません。

  1. 【人】 社員が Forms の様式から提案する(様式はこれまでどおり)
  2. 【自動】 回答の送信をきっかけに Power Automate のフローが動き、回答の中身を取得する
  3. 【自動】 必須の欄が空のものを、AIを呼ぶ前に条件で拾う
  4. 【自動】 12の欄をまとめた文を AI Builder のプロンプトに渡し、欄ごとの記入の状態と、区分を決めるための印を JSON で受け取る
  5. 【自動】 印の組み合わせから、フローの条件分岐で審査の区分を決める
  6. 【自動】 審査の台帳に1件を登録し、状態を「受付確認待ち」にする
  7. 【自動】 thin や empty の欄があれば、差し戻しの文面の下書きを作り、事務局に承認の依頼を出す
  8. 【人】 事務局が承認の画面で、記入の判定と区分と差し戻しの文面を確かめ、直して承認する
  9. 【自動】 承認されたら、提案者に受付の連絡か差し戻しを送り、台帳の状態を更新する

8番目が、この設計の分かれ目です。 AIの判定がそのまま提案者に届く経路はありません。事務局は印と「何が足りないか」の一文を見て、そこだけ原文に当たります。 全件を最初から読む運用に戻すと、30分はほとんど減りません。

5番目を条件分岐にしているのは、一度条件に書けば、勘所を持つ1名に頼らずに同じ決め方ができるからです。

02今回想定するシステム構成

構成図
社員の提案(Microsoft Forms の回答)
   │
   ▼【トリガー】When a new response is submitted
Power Automate(クラウドフロー)
   ├──▶ Get response details で12の欄を取得
   ├──▶ 必須の欄が空かを条件で確認
   ▼
AI Builder のプロンプト(Run a prompt、JSON 出力)
   │   欄ごとの記入の状態(filled / thin / empty)と足りない点
   │   区分を決めるための印(既存事業/社外/データ・規制)
   ▼
Power Automate ── 印から審査の区分を条件分岐で決める
   ├──▶ SharePoint のリスト(審査の台帳)に Create item
   ├──▶ 差し戻しの文面の下書きを作る
   ▼
Approvals ── 事務局が判定・区分・文面を確かめて承認
   ▼
Outlook ── 提案者へ受付の連絡または差し戻し
SharePoint ── 台帳の状態を Update item
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウドフロー)Make、Zapier
生成AIAI Builder のプロンプト(Run a prompt、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
保管SharePoint のリスト(審査の台帳、区分の決まり、判定のログ)-
承認Approvals コネクタ(Start and wait for an approval of text)Teams の承認
受付Microsoft Forms(提案の様式)-

新しく足すのは、フロー、プロンプト、SharePoint の2つのリスト(区分の決まり・判定のログ)だけです。 台帳には、記入の判定・区分の印・承認の結果の3列を足します。

受付を Microsoft Forms のコネクタで受けます。 トリガーの「When a new response is submitted」は回答の ID を返し、中身は「Get response details」で ID を渡して取りに行く作りです。古い同名のトリガーは「DEPRECATED」と表示されているので、新しく作るフローでは使いません。

生成AIを AI Builder のプロンプトにしているのは、Power Automate の中で完結するからです。 「Run a prompt」でプロンプトを選ぶと入力が並び、前のアクションの値を入れられます。公式の説明では、AI Builder のプロンプトは Azure OpenAI Service の GPT のモデルで動き、利用できる地域が限られ、利用の上限や容量による制限を受けることがあるとされています。

プロンプトの出力は JSON にでき、保存した時点の形がフローで使われます。 区分の印を条件分岐で読むには、この固定が欠かせません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

Forms の回答が送信されたときに、1件ずつ動かします。 トリガーは Microsoft Forms のコネクタの「When a new response is submitted」です。返ってくるのは回答の ID(responseId)で、続けて「Get response details」にフォームの ID と回答の ID を渡し、12の欄の値を受け取ります。

提案の様式がグループのフォームの場合は注意が要ります。 公式の既知の制限として、グループのフォームはドロップダウンに出てこず、フォームの ID を手で入れる必要があるとされています。ID はフォームを編集するときのアドレス欄にあり、FormId= の後ろの部分だけを貼ります。事務局のチームで作ったフォームはこれに当たることが多いので、最初に確かめます。

このコネクタは組織のアカウントでしか動きません。 協業先など社外からの提案は別の窓口で受けます。

止まった提案を拾い直すため、毎朝1回、台帳に無い回答を探す別のフローを置きます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
提案の回答12の欄(題名、課題、想定する顧客、解決のしかた、既存の手段との違い、収益の見込み、必要な体制、最初の検証の案、社外との関わり、扱うデータ、関係する既存事業、補足)と、提案者のメールアドレス、送信の日時Microsoft Forms(Get response details)
区分の決まり印の組み合わせと審査の場の対応、各審査の場の開催の周期SharePoint のリスト(新しく作る)
事業部の一覧事業部の名前、扱っている主なサービス、事業部審査の担当の部長SharePoint のリスト(既存のものを使う)
過去の提案同じ提案者の、直近の提案の題名と状態審査の台帳

質を決めるのは、事業部の一覧です。 主なサービスの名前が並んでいなければ、「既存事業の延長か」をAIは文面の印象で判定することになります。 社内の略称や旧名も入れます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
12の欄の値Get response details の動的な出力プロンプトに渡す本文
提案者のメールアドレス同上(回答者の情報)連絡先と、過去の提案の検索
事業部の一覧SharePoint の Get itemsプロンプトに渡す照合の材料
同じ提案者の直近の提案審査の台帳を Get items(Filter Query で提案者を指定、Top Count で件数を絞る)再提出の見分け
区分の決まりSharePoint の Get items条件分岐の材料

Get response details の出力は動的で、欄は質問の文に結び付きます。 様式の文を変えたら、フローを開き直して参照を確かめることを事務局の手順に書きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 必須の欄の空を先に拾う … 8つの必須の欄のうち、空白だけのもの・「なし」「未定」だけのものを条件で見つけます。ここで拾えるものは、AIに判定させずに empty にします
  2. 本文をまとめる … 12の欄を「【欄の名前】値」の形で1つの文につなぎます。欄の名前は様式の質問の文ではなく、決まった短い名前に置き換えます
  3. 長さの確認 … 全体の字数を数え、極端に長いもの(12,000字を超える目安)は事務局へ回します
  4. 社外の固有名詞の扱い … 「社外との関わり」の欄に書かれた企業名はそのまま渡しますが、台帳の一般の閲覧者には見えない列に入れます
  5. 再提出の見分け … 同じ提案者の直近の提案で、状態が「差し戻し中」のものがあれば、題名の近さとあわせて再提出の候補とし、前回の差し戻しの理由を一緒に渡します
  6. 事業部の一覧を添える … 事業部の名前と主なサービスの名前の短い一覧をプロンプトの入力にします

1番目を条件で先に拾うのは、空欄は機械で分かるからです。 AIには、書いてあるものが足りているかだけを見させます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、2つの判定と、1つの短い書き出しだけです。

見るもの判定の仕方返す値
必須の8つの欄審査の場で話ができる程度に、具体的な対象・数・手段が書かれているかfilled / thin / empty、thin なら足りない点を一文
既存事業との関係提案のサービス・顧客が事業部の一覧の扱いと重なるかexisting_extension / new_domain / unclear
社外との関わり他社との提携・出資・買収・共同開発の記載があるかnone / partnership / investment / unclear
扱うデータ・領域個人情報、金融・医療・教育など規制のある領域に触れる記載があるかnone / personal_data / regulated / unclear
根拠上の印を付けた根拠の、提案の文からの抜き書き欄の名前と抜き書き

thin の判定の基準は、欄ごとに具体的に渡します。 「想定する顧客」なら業種・規模・役職のどれか1つ以上が特定されているか、「収益の見込み」なら誰がいくら払う形かが書かれているか、「最初の検証の案」なら何を何件で確かめるかが書かれているか。基準を渡さないと、文が長いものを filled、短いものを thin にします。

させないこと理由
審査の区分を決める印から区分を決めるのは経営企画の決まり。フローの条件で決める
提案の良し悪しや採否の見込み審査の場の仕事。受付で評価を書くと、審査の前に結論があるように読める
足りない欄を推測で埋める提案者が書くべきこと。埋めると差し戻す理由が消える
提案者の人物や所属についての所見受付の判断に関係しない
unclear を避けて決めつける迷うものは事務局が原文で決める

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 「市場が大きく有望」のような一言が台帳に残ると、審査する側が先に読んでしまいます。出力の形にも評価を書く場所を作りません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは社内の新規事業の提案制度の事務局で、届いた提案の受付の確認をします。
提案の良し悪しは判断しません。記入が足りているかと、回し先を決めるための印だけを返します。

【必須の欄と、filled とする基準】
- issue(課題)……誰の、どんな困りごとかが書かれている
- customer(想定する顧客)……業種・規模・役職のうち1つ以上が特定されている
- solution(解決のしかた)……何を提供するかが具体的に書かれている
- difference(既存の手段との違い)……比べる相手と違いが書かれている
- revenue(収益の見込み)……誰が何に対して払う形かが書かれている
- team(必要な体制)……必要な役割か人数が書かれている
- first_test(最初の検証の案)……何を、どれくらいの数で確かめるかが書かれている
- external(社外との関わり)……関わる社外の相手の有無が書かれている

【status の選び方】
- filled … 上の基準を満たしている
- thin …… 書いてあるが基準を満たしていない。missing_point に足りない点を一文で書く
- empty … 書いていない(空欄の判定はこちらで済ませてあるので、渡された欄だけ見る)
迷ったときに filled を選ばないでください。

【印の付け方】
- business_relation:提案のサービスや顧客が【事業部の一覧】の扱いと重なれば
  existing_extension、重ならなければ new_domain、判断できなければ unclear
- external_relation:他社との提携・共同開発は partnership、出資・買収は investment、
  記載が無ければ none、判断できなければ unclear
- data_domain:個人情報を扱う記載があれば personal_data、金融・医療・教育など
  規制のある領域に触れる記載があれば regulated、無ければ none、迷えば unclear
- 印ごとに、根拠にした提案の文を evidence にそのまま写してください。

【厳守事項】
- 審査の区分(事業部審査・新規事業審査会・拡大審査)を書かないでください。
- 提案の評価、採否の見込み、市場性についての意見を書かないでください。
- 提案に書かれていないことを補って filled にしないでください。
- missing_point は提案者に向けた依頼として使います。
  「〜が書かれていません」ではなく「〜を書き足してください」の形で書いてください。
- 前回の差し戻しの理由が渡された場合は、その点が直っているかを resubmit_check に書いてください。
- JSON のマークダウンを付けずに、JSON だけを返してください。

【提案】{proposal_text}
【事業部の一覧】{division_list}
【前回の差し戻しの理由】{previous_reason}

「迷ったときに filled を選ばない」を書かないと、thin が減ります。 迷ったら thin に倒し、事務局が原文で filled に戻すほうが、薄い記入が審査の場に届くより安く済みます。

最後の行は公式の FAQ に沿っています。 JSON を作れなかったというエラーは、モデルが JSON の前後に余計な情報を付けたことが原因のことがあり、「Don't include JSON markdown in your answer」の趣旨の一文を足すとよいとされています。

Step7

出力形式を固定する

プロンプトの出力を JSON にし、次の例を与えて形を「Custom」にします。

{
  "fields": [
    { "name": "customer", "status": "thin",
      "missing_point": "対象とする企業の業種か規模を書き足してください",
      "evidence": "中小企業全般" }
  ],
  "business_relation": "new_domain",
  "external_relation": "partnership",
  "data_domain": "personal_data",
  "relation_evidence": [
    { "flag": "external_relation", "field": "external",
      "evidence": "A社の決済の仕組みと連携する" }
  ],
  "resubmit_check": ""
}

fields には必須の8つの欄の分を並べます。1つ目の理由は、記入の判定と区分の印を別の場所に置けることです。 差し戻しの文面は fields から、区分は3つの印から作り、片方の決まりを変えてももう片方に影響しません。

2つ目は、形が固定されることです。 公式の説明では、JSON の例を書き換えると形式が「Custom」になり、テストし直しても更新されません。保存した時点の形がフローでの実行時に使われ、変わりません。 例の書き換えの後は「Save custom」で保存しないと変更が失われるとされているので、手順に入れます。なお、生成された JSON のスキーマは表示できますが、今のところ直接は編集できず、キーの無い配列だけの形は使えません。 fields を名前付きの要素の配列にしているのはこのためです。

3つ目は、evidence で確認が速くなることです。 原文の12の欄を最初から読み直さずに済みます。

区分は、フローの条件分岐で次のとおり決めます。 決まりは SharePoint の「区分の決まり」のリストに置き、フローはそれを読んで使います。

印の組み合わせ審査の区分
external_relation が investment、または data_domain が regulated拡大審査
external_relation が partnership、または data_domain が personal_data拡大審査(法務の同席のみ)
上に当たらず、business_relation が existing_extension事業部審査(該当の事業部)
上に当たらず、business_relation が new_domain新規事業審査会
いずれかが unclear区分を空にして事務局が決める

unclear が1つでもあれば区分を空にします。 迷う提案に区分を仮置きすると、事務局が承認の画面で見落としたときにそのまま回ります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Microsoft FormsWhen a new response is submitted、Get response details回答の ID を受け、12の欄を取得する
AI Builder のプロンプトRun a prompt記入の判定と印を JSON で返す
SharePointGet items、Create item、Update item事業部の一覧と区分の決まりを読み、台帳に登録・更新する
ApprovalsStart and wait for an approval of text差し戻しの文面を事務局が直して承認する
OutlookOffice 365 Outlook のメールの送信提案者に受付の連絡か差し戻しを送る

承認は、公式の手順にある「Start and wait for an approval of text」を使います。 提案の文面を「Suggested Text」に入れて事務局に割り当てると、事務局は Power Automate の承認の画面で文面を直してから応答でき、承認か却下かでフローが分かれます。 差し戻しの文面をAIが作ったまま送る経路を作らないための仕組みです。

審査の台帳への登録は Create item で、承認の後の状態の更新は Update item で行います。 台帳は汎用のリスト(カスタムリスト)で作ります。公式の制限として、Power Automate のリストのフローは汎用のリストと汎用のドキュメントライブラリでしか動かず、お知らせ・連絡先・予定表・タスクなどのテンプレートのリストには対応していないとされています。既存の台帳がタスクのリストで作られていたら、作り直しが要ります。

SharePoint のコネクタの上限は、接続ごとに60秒あたり600回の呼び出しです。 毎朝の拾い直しで台帳を1件ずつ読む作りにせず、Get items の Filter Query で絞ってまとめて読みます。

Step9

人が確認する

事務局が承認の画面で見るのは、次の順番です。

  1. 区分が空の提案を先に開く … unclear の印がある提案です。根拠の抜き書きを読み、必要なら原文に当たって区分を決めます
  2. thin の欄の一文を読む … 足りない点の書き方が提案者に失礼でないか、本当に足りないかを見ます。thin が3つ以上ある提案は、原文を一度通して読みます
  3. 拡大審査に回る提案の根拠を確かめる … 法務と財務の同席を頼むことになるので、partnership・investment・regulated の根拠の文が本当にそう読めるかを見ます
  4. 承認する … 文面を直して承認すると、提案者への連絡と台帳の更新が進みます
  5. 判定を覆したら記録する … どの欄の判定や、どの印を、どちらに変えたかを判定のログに残します

3番目を省かないでください。 提携の記載を読み違えて回すと、提案者も法務・財務も空振りの準備をすることになります。

目標は、60件をならして1件8分です。 印の付いていない、区分が決まった提案は、承認の画面で一覧を見て数分で承認できます。時間を使うのは、区分が空のものと thin の多いものです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
必須の欄が空AIを呼ばずに empty とし、差し戻しの文面を定型で作る
Run a prompt が JSON を返さない1回だけやり直し、それでも失敗したら区分を空にして事務局へ
提案の字数が極端に長いAIに渡さず「長文のため要確認」として事務局へ
様式の質問の文を変えて参照が切れたフローが失敗する。事務局がフローを開き直して参照を付け直す
同じ提案者から同じ題名の提案が短い間に2件二重送信として後の1件を台帳に入れず、事務局に知らせる
再提出なのに前回の差し戻しの点が直っていないresubmit_check に書き、事務局が承認の画面で判断する
承認の依頼に事務局が応答しない3営業日で事務局の別の担当にも依頼を出す
毎朝の拾い直しで台帳に無い回答が見つかる事務局に知らせ、手動でフローを動かす

上から3行目までが大半です。 失敗の理由は台帳の列に日本語で書き、事務局が状態の列だけで見分けられるようにします。

Step11

記録を残す

  • 回答の ID、受付の日時、提案者、題名
  • AIに渡した本文と、返ってきた JSON の全文
  • フローが決めた区分と、そのとき使った区分の決まりの版
  • 事務局の承認の結果、直した差し戻しの文面、承認した人と日時
  • 事務局が判定や印を覆した記録 … どの欄・どの印を、どちらに変えたか
  • 差し戻しから再提出までの日数

3つ目で決まりの版を残すのは、決まりが後から変わるからです。 拡大審査に回す条件を見直したとき、過去の提案がどの決まりで回ったかが分からないと、回し直しの範囲が決まりません。

5つ目は、プロンプトを直す材料です。 同じ欄で thin を filled に戻すことが続くなら、その欄の基準が厳しすぎます。

04実装レベルの3段階

最小構成:プロンプトの画面に提案を貼り、記入の判定と印を見る / 1件ごとの記入の確認
半自動化:上記+Forms の回答を起点にフローを動かし、区分を決めて台帳に登録し、承認を経て提案者に連絡する / 受付・判定・登録・差し戻しの下書き
本格構成:上記+審査会の議題の一覧を区分ごとに自動で作り、審査の結果を台帳に戻して提案者に知らせる / 受付から審査の結果の連絡まで

この記事の想定は半自動化です。 審査の結果の伝え方は提案者の意欲に直結するので、本格構成に進むかは慎重に決めてください。 半自動化で、1件30分が8分になります。 読む時間と転記の時間が大きく減り、残るのは承認の画面での確認と、区分が空の提案の判断です。区分の表が育ち、unclear が減るほど、8分の中の判断の時間は短くなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  60件 × 30分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 60件 × 8分 ÷ 60 = 8 時間/月
月間削減時間
22h
削減率
73%
年間削減時間
264h
年間金額換算(時間単価4,000円)
106万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 社内の新規事業の提案制度を常時受付で運用し、毎月数十件の提案が Microsoft Forms やメールで届く IT・製造・商社・金融などの会社。経営企画の事務局が1件ずつ読み、記入の足りない提案を差し戻し、どの審査の場に回すかを決めて台帳に転記している場合。Microsoft 365 と Power Automate を使え、SharePoint のリストで審査の台帳を持てる場合。
向いていない
  1. 提案の募集が年1回のコンテスト形式で、受付の時期にしか提案が届かない会社。提案が月に数件で、事務局が読んで決めれば足りる場合。審査の区分が決まっておらず、毎回の審査会で回し先を話し合っている場合。なお、提案を採るか見送るかの判断と、提案の中身の評価は、この構成の対象外です。

07最小構成で試す方法

  1. 先月までに届いた提案から20件を選ぶ(区分に迷った提案、審査の場で記入の不足を指摘された提案を必ず入れる)
  2. その20件について、事務局が付けた区分と差し戻しの有無を一覧にしておく
  3. Power Automate のプロンプトの作成の画面で、第7章の指示の例を入れ、1件ずつ提案の本文と事業部の一覧を貼ってテストする
  4. 出てきた記入の判定と印を、手で区分の表に当てはめて区分を出す
  5. 事務局の当時の判断と見比べ、thin と印の根拠の抜き書きが当たっているかを見る

20件で十分です。 ここで確かめたいのは、「欄ごとの基準を渡せば、薄い記入を拾えるか」と、「印から区分を決める表で、当時の判断と同じ区分になるか」の2つです。

出てきた内容判断
当時の差し戻しと同じ欄に thin が付いたフローに組む段階に進む
長い欄を何でも filled にした欄ごとの基準の書き方を直す。構成は有効
区分の表で当時と違う区分が多く出た表の決まりを事務局で見直すのが先。 AIの問題ではないことが多い

3行目が出ることは珍しくありません。 食い違った提案を並べて、どちらの決め方を正とするかを決めること自体が、この段階の成果です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
長い欄を何でも filled にする欄ごとに filled の基準を具体的に書き、迷ったら thin に倒す
AIが区分や評価を書きたがる指示で禁じ、出力の形に区分と評価の場所を作らない
JSON を作れなかったというエラーJSON のマークダウンを付けない旨を指示に足す
JSON の例を直したのに反映されない「Save custom」で保存し忘れている
グループのフォームがトリガーに出ないフォームの ID の FormId= の後ろを手で入れる
様式の質問の文を直したらフローが止まった欄の参照は質問の文に結び付く。様式を変えたらフローを開き直す
台帳のリストに書き込めないタスクなどのテンプレートのリストは非対応。汎用のリストで作る
unclear の提案に区分が仮置きされるunclear が1つでもあれば区分を空にする
提案の中の社外の企業名が台帳で広く見える閲覧の範囲を分けた列に入れる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「AIに受付以上のことをさせる」形で起きます。

下の方の行は、公式の既知の制限に書かれているものが多く、作る前にコネクタの制限の欄を読めば避けられます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 社員の氏名と所属、まだ社内でも公開していない事業の構想、提携を考えている社外の企業名、扱おうとしている個人情報や規制のある領域についての記述です。

  1. データがどの地域で処理されるかを管理者と確かめる … 公式の地域別の表では、AI Builder のプロンプトで使える GPT-4.1 mini と GPT-4.1 は、日本では「GA (cross-geo)」とされ、cross-geo のモデルは地域の外でデータを処理する場合があると注記されています。未公開の事業の構想を扱う以上、モデルの選び方と管理者の設定を導入前に決めてください
  2. Experimental のモデルを業務のフローに使わない … 同じ表で、Claude などのモデルは日本では「Experimental (cross-geo)」です。受付の判定のように毎月使う処理には、GA のモデルを選びます
  3. AIの判定をそのまま提案者に送らない … 承認の画面を必ず通し、送るのは事務局の承認の後にします
  4. 台帳の閲覧の範囲を分ける … 審査の台帳の一般の列は提案者と審査の担当が見られる範囲に、社外の企業名や個人情報の記述の列は事務局と審査の場の参加者に限ります
  5. 区分の決まりを編集できる人を経営企画の責任者に限る … 書き換えると拡大審査に回る提案が変わります
  6. 提案の評価にAIを使わない … この構成は受付の確認だけです。採否の判断や提案者の評価にAIの出力を使わないことを、制度の要項に書いておきます

誤りが起きた場合のリスクは、薄い記入の提案が審査の場に回ることと、回し先を誤ることの2つです。 どちらも、根拠の抜き書きを残し、事務局が承認の画面で確かめる設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:区分の決め方を表に書き出す

制度の立ち上げから担当している1名に、過去に迷った提案を10件ほど挙げてもらい、どう決めたかを聞き取ります。 それを「どの印がそろえばどの審査の場か」の表にします。事業部の一覧に、主なサービスの名前と社内の略称を足します。

2週目:20件で試す

第8章のとおり、プロンプトの作成の画面で20件をテストします。thin の判定が当時の差し戻しと合うかと、区分の表で当時の判断と同じ区分になるかを見ます。 合わない提案は、事務局で並べて決め方をそろえます。

3週目:受付から台帳までをつなぐ

Forms のトリガー、Get response details、Run a prompt、Create item までをフローにします。この時点では提案者への連絡を出さず、台帳に判定と区分が入るところまでを見ます。 事務局はこれまでどおり自分で読み、AIの判定と見比べます。

4週目:承認と連絡をつなぐ

Approvals と Outlook をつなぎ、承認の後に提案者に連絡が届くようにします。最初の月は、事務局が承認の前に全件の原文を読みます。

2か月目以降: 覆した記録を欄ごとに数え、プロンプトの基準と区分の表を直します。毎朝の拾い直しのフローを足します。事務局が承認の画面の一覧と根拠の抜き書きだけで大半の提案を承認できるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-29/最終更新:2026-10-29
確認した内容情報源確認日
トリガー「When a new response is submitted」が回答の ID を返し、「Get response details」で中身を取ること。旧トリガーが DEPRECATED であること。組織のアカウントでのみ動くこと。グループのフォームはドロップダウンに出ずフォームの ID を手で入れることMicrosoft Learn: Microsoft Forms connector2026-10-29
「Run a prompt」のアクション(2025年5月に名称変更)でプロンプトをフローに組み込めること。AI Builder のプロンプトが Azure OpenAI Service の GPT のモデルで動き、地域が限られ、上限や容量の制限を受けうること。「Start and wait for an approval of text」で人の確認を入れられることMicrosoft Learn: Use your prompt in Power Automate2026-10-29
出力を JSON にでき、JSON の例を書き換えると Custom になり保存時の形が実行時に使われること。Save custom で保存すること。スキーマは編集できず、キーの無い形は非対応なこと。JSON を作れないときに JSON のマークダウンを付けない旨を指示に足すことMicrosoft Learn: JSON output2026-10-29
日本では GPT-4.1 mini・GPT-4.1 が GA (cross-geo)、Claude などが Experimental (cross-geo) であること。cross-geo のモデルは地域外でデータを処理しうることMicrosoft Learn: Prompt model availability by region2026-10-29
Create item・Get items(Filter Query・Top Count)の仕様。Power Automate のリストのフローが汎用のリストと汎用のドキュメントライブラリのみ対応であること。接続ごとに60秒あたり600回の上限Microsoft Learn: SharePoint connector2026-10-29

審査の区分の決め方と、提案を採るか見送るかの判断は、経営企画の責任者と審査の場で決めてください。 本記事は公開されている仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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