測量会社の技術者が、公共測量の作業規程の準則と発注者の特記仕様から、作業ごとの精度・手順・成果の点検の根拠を引く
技術者が「この案件の3級基準点測量で、点検計算はどこまでやるか」「UAV写真測量の標定点の配置の決まりは」と尋ねると、その案件に当たる版の作業規程の準則、発注者の作業規程、特記仕様書から根拠の条文を探し、引用付きで示します。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- 不動産/建設/自治体
- 対象部門
- 品質管理
- 対象業務
- 内容確認・チェック/情報検索
- 主な課題
- 属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 品質標準化/教育コスト削減/検索時間短縮
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 技術者が作業の途中や点検のときに、根拠を確かめる必要に気づく
- 案件の台帳で、発注者と、適用する作業規程と準則の版を確かめる
- 特記仕様書と打合せ簿を開き、その作業について書かれているかを探す
- 発注者の作業規程を開き、準則を準用しているかを確かめる
- 準則のPDF(版を合わせて)から該当の条と付録の様式を探す
- 分からなければ、詳しい技術者か照査の担当に聞く
- 自動準則の改正、発注者の作業規程の改訂、案件の特記仕様書と打合せ簿の追加のたびに取り込む
- 人技術者が画面で案件を選び、作業の種類と工程を選んで質問を書く
- 自動中継プログラムが案件の台帳から、発注者、適用する作業規程と準則の版を引き、絞り込みの条件を作る
- 自動Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッドが、その案件の特記仕様書・打合せ簿、発注者の作業規程、その版の準則から根拠を探し、引用付きで答える
- 自動中継プログラムが、引用を「特記仕様・打合せ簿」「発注者の作業規程」「準則」の順に並べ替えて画面に出す
- 人技術者が引用の元の条文を確かめ、作業を進める。判断が要るものは照査の担当に回す
- 人照査の担当は、同じ画面の引用を根拠にして点検の指摘を書く
各工程の詳しい説明を読む
- 技術者が作業の途中や点検のときに、根拠を確かめる必要に気づく
- 案件の台帳で、発注者と、適用する作業規程と準則の版を確かめる
- 特記仕様書と打合せ簿を開き、その作業について書かれているかを探す
- 発注者の作業規程を開き、準則を準用しているかを確かめる
- 準則のPDF(版を合わせて)から該当の条と付録の様式を探す
- 分からなければ、詳しい技術者か照査の担当に聞く
(a)版を取り違える。 共有フォルダには準則の版が並んでいます。最新の版を開く癖があると、改正前の版で発注された案件で、新しい版の条文を根拠にします。
(b)特記仕様の上書きを見落とす。 準則の条文を先に見つけると、そこで探すのをやめます。特記仕様で追加された点検や様式の指定は、照査で指摘されて初めて気づくことがあります。
(c)探せる人が限られる。 「この県の作業規程は準則の第何条を読み替えている」と覚えているのは、その県の案件を長く担当した数名です。若手の技術者は、その数名に聞くまで手が止まります。
(d)照査と作業者で根拠が違う。 作業者と照査の担当が、別の版や別の条文を見て話していることがあります。指摘のやり取りが、根拠のすり合わせから始まります。
- 【自動】 準則の改正、発注者の作業規程の改訂、案件の特記仕様書と打合せ簿の追加のたびに取り込む
- 【人】 技術者が画面で案件を選び、作業の種類と工程を選んで質問を書く
- 【自動】 中継プログラムが案件の台帳から、発注者、適用する作業規程と準則の版を引き、絞り込みの条件を作る
- 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッドが、その案件の特記仕様書・打合せ簿、発注者の作業規程、その版の準則から根拠を探し、引用付きで答える
- 【自動】 中継プログラムが、引用を「特記仕様・打合せ簿」「発注者の作業規程」「準則」の順に並べ替えて画面に出す
- 【人】 技術者が引用の元の条文を確かめ、作業を進める。判断が要るものは照査の担当に回す
- 【人】 照査の担当は、同じ画面の引用を根拠にして点検の指摘を書く
6番目を人が行うのは、観測の結果が許容範囲に入っているかの判定が、技術者の仕事だからです。 画面に出るのは条文の引用で、その数値と自分の観測値を比べるのは技術者です。
5番目の並べ替えを中継プログラムで行うのも、意図してのことです。 文書の重みの順をAIの文に任せると、準則の条文が先に書かれることがあります。並べる順は、文書の種類という印で機械的に決めます。
02今回想定するシステム構成
準則と付録(版ごと)・発注者の作業規程・特記仕様書・打合せ簿 ▼【トリガー】改正・改訂・案件の書類の追加のたびに取り込み Cloud Storage + メタデータ(JSON Lines:文書の種類・版・発注者・案件) ▼ Agent Search(Vertex AI Search)のデータストア ▼【人】技術者が案件・作業・工程を選んで質問 中継プログラム(Cloud Run) ├──▶ 案件の台帳 ── 発注者・作業規程・準則の版(読み取りのみ) ├──▶ 絞り込みの条件:案件 + 発注者 + 準則の版 ├──▶ answer メソッド(Gemini で生成、引用と根拠の強さ付き) ├──▶ 引用を文書の種類の順に並べ替える ▼ 技術者・照査の担当の画面 ──【人】元の条文を確かめる
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド | Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル) | ─ |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・案件の台帳・検索をつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 保管 | Cloud Storage(準則・作業規程・特記仕様書の写しとメタデータ、質問と回答の記録) | ─ |
案件の台帳と照査の記録には、この構成から書き込みません。 台帳からは適用する作業規程と版を読むだけで、照査の指摘は担当がいつもの記録に書きます。
検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 公式のドキュメントでは、検索の指定(searchSpec.searchParams)に絞り込みの filter を書け、一度に引く結果は既定で10件、最大で25件です。回答の生成の指定には、引用を付ける includeCitations(既定は false)、関係の薄い内容で答えない ignoreLowRelevantContent、答え方を指示する promptSpec.preamble があります。根拠の強さで回答を止める groundingSpec もあり、条文に根拠の無い答えを止めるために使います。
データの置き場所は先に決めます。 公式のドキュメントでは、データストアの場所は global・us・eu で、日本のリージョンはありません。 準則は国土地理院が公開している文書ですが、特記仕様書と打合せ簿は発注者との契約の書類です。 発注者の取り決めに外部のクラウドへの保存の制限が無いかを、取り込む前に確かめます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は2つです。技術者が質問したときと、文書の取り込みです。
質問は、画面で案件を選び、作業の種類と工程を選んで質問を書き、「根拠を探す」を押したときに動きます。案件を選ばずに押すことはできない作りにします。 案件の無い一般の質問(研修での確認など)は、準則の版を選ぶ別の画面にします。
| 画面の項目 | 書き方 | 使い道 |
|---|---|---|
| 案件 | 進行中の案件の一覧から選ぶ(必須) | 発注者、版、特記仕様書の絞り込み |
| 作業の種類 | 基準点測量/水準測量/地形測量及び写真測量(UAV・点群を含む)/応用測量/その他 | 検索の文の先頭 |
| 工程 | 計画・準備/選点・設置/観測/計算/点検/成果の整理 | 検索の文の先頭 |
| 質問 | 自由記述(「点検計算で許容範囲を超えた路線の扱い」) | 検索の質問文 |
工程を入れるのは、同じ作業でも工程ごとに条文が分かれているからです。 準則は作業ごとに編と章を立て、その中で計画・観測・計算・点検を条で分けています。工程を書かずに探すと、観測の条と点検の条が混ざって出ます。
取り込みは、準則の新しい版、発注者の作業規程の改訂版、案件の特記仕様書と打合せ簿を Cloud Storage に置いたときに動きます。準則の前の版は消しません。 改正前の版で発注された案件が、まだ動いているからです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 作業規程の準則 | 本文と付録(測量機器検定基準、現場試験の基準、測量成果検定基準、標準様式、計算式集、公共測量標準図式など)。版ごと | 国土地理院の「作業規程の準則について」のページのPDF |
| 発注者の作業規程 | 準則を準用する旨、読み替え、独自の章。発注者ごと・版ごと | 発注者から受け取ったPDF |
| 特記仕様書・打合せ簿 | 案件ごとの追加・変更の指示、協議で決まったこと | 案件のフォルダ |
| 案件の台帳 | 案件番号、発注者、契約日、適用する作業規程と準則の版 | 社内の台帳 |
質を決めるのは、案件の台帳の「適用する版」の欄です。 契約の書類から、どの作業規程のどの版に基づくかを読み取って台帳に書きます。この欄が空の案件は、検索を始めません。 推測で最新の版を当てると、この構成の意味がなくなります。
国土地理院のページには、準則の全文と付録が別々のPDFで置かれています。 全文は約1.9MBで、付録の標準様式や公共測量標準図式は数MBあります。本文と付録を別の文書として取り込み、付録には doc_kind を appendix と付けます。
データの取得方法を決める
準則は条ごとに、付録は章ごとに分けて1文書にし、Cloud Storage に置きます(公式では1ファイル200MB、一度の取り込みで10万ファイルまで)。メタデータは JSON Lines で、1行ごとに id、structData、content(mimeType と uri)を書きます。
{"id":"jun-r7-art-xxx","structData":{"doc_kind":"standard",
"rule_version":"R7","orderer":["all"],"project":["all"],
"work":"水準測量","phase":"点検","article":"第◯条"},
"content":{"mimeType":"application/pdf","uri":"gs://survey-rules/jun-r7-art-xxx.pdf"}}
{"id":"pref-a-rule-2024-ch3","structData":{"doc_kind":"orderer_rule",
"rule_version":"R5","orderer":["pref-a"],"project":["all"],
"work":"基準点測量","phase":"観測","article":"第3章"},
"content":{"mimeType":"application/pdf","uri":"gs://survey-rules/pref-a-rule-2024-ch3.pdf"}}
{"id":"p2026-041-spec-05","structData":{"doc_kind":"special_spec",
"rule_version":"R5","orderer":["pref-a"],"project":["p2026-041"],
"work":"基準点測量","phase":"点検","article":"特記第5項"},
"content":{"mimeType":"application/pdf","uri":"gs://survey-rules/p2026-041-spec-05.pdf"}}
この構成では、版を日付の範囲ではなく rule_version の値で持ちます。 どの版で作業するかは案件ごとに決まっているので、今日の日付と比べる必要がありません。公式の構文では、文字の項目は ANY() に並べた値のどれかと完全に一致するかを見られ、AND・OR と括弧で組み合わせられます。項目はスキーマで索引可能にしておかないと、絞り込みに使えません。
rule_version: ANY("R5")
AND orderer: ANY("all","pref-a")
AND project: ANY("all","p2026-041")
AND work: ANY("基準点測量")
4行とも、中継プログラムが案件の台帳から作ります。 技術者に版を選ばせると、いちばん新しい版を選びます。台帳の「適用する版」の欄が空なら、answer メソッドを呼ばずに「案件の適用版が未登録です。台帳を確認してください」と返します。
AIへ渡す前に整形する
- 準則を条ごとに分ける … 編・章・条の番号と見出しを
articleに書き、作業の種類と工程をworkとphaseに入れます - 付録を章で分ける … 標準様式は様式ごと、計算式集は式の区分ごとに分けます
- 発注者の作業規程の準用の関係を書く … 「準則を準用する」とある作業規程には、読み替えの条を別の文書として切り出し、
ordererを付けます - 特記仕様書を項目ごとに分ける … 項目ごとに1文書にし、どの作業・工程の話かを付けます
- 打合せ簿を足す … 協議で決まったことを特記仕様と同じ
special_specとして足し、協議の日を本文の頭に書きます - 案件の台帳の適用版を埋める … 進行中の案件すべてについて、契約の書類から版を書きます
3番目を軽く見ないでください。 発注者の作業規程は、準則の条をそのまま使い、一部だけを読み替える形が多くあります。読み替えの条を切り出しておかないと、準則の元の条文だけが引かれ、読み替えが抜けます。
AIに処理させる
させるのは、その案件に当たる版の準則・作業規程・特記仕様書から、作業と工程に当たる条文を探し、引用して短くまとめることです。
| させること | 中身 |
|---|---|
| 当たる条文を示す | 文書の種類、条や項目の番号と見出し、本文の引用 |
| 上書きを示す | 特記仕様・打合せ簿に同じ事項の定めがあれば、その旨を先に |
| 読み替えを示す | 発注者の作業規程が準則を読み替えていれば、その条 |
| 付録を示す | 様式や計算式が要るものは、付録の章の名前 |
| 確かめることを挙げる | 根拠を決めるのに要る事実(使う既知点の種類、観測の方法) |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 観測の結果が許容範囲に入るかを判定する | 観測値と条文の数値を比べるのは技術者 |
| 再測が要るかを書く | 技術者と照査の担当、場合により発注者との協議で決まる |
| 条文に無い方法を一般の測量の知識で補う | 公共測量は承認を得た作業規程に基づいて行う |
| 許容範囲の数値を条文から写さずに書く | 数値の写し違いが、そのまま成果の誤りになる |
| 別の版の条文を引用する | 版で作業の方法が違う |
3行目は法律の仕組みから来ています。 測量法第33条は、測量計画機関が公共測量を実施しようとするときは、観測機械の種類、観測法、計算法などを定めた作業規程を定めて国土交通大臣の承認を得ること、公共測量はその作業規程に基づいて実施しなければならないことを定めています。一般の知識で補った方法は、承認を得た作業規程の外にあります。
answer メソッドの設定は次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
includeCitations | true | 条文に出典を付ける(既定は false) |
ignoreLowRelevantContent | true | 関係の薄い条文で答えない |
filter | 準則の版、発注者、案件、作業の種類 | その案件の根拠だけを引く |
maxReturnResults | 15 | 特記仕様・作業規程・準則の3層から引くため、既定より少し多く |
groundingSpec | includeGroundingSupports を有効、filteringLevel を FILTERING_LEVEL_HIGH | 根拠の弱い答えを出さない |
promptSpec.preamble | 下の指示 | 答え方の規則を与える |
filteringLevel を高くすると、根拠の弱い回答は生成されず、answerSkippedReasons に LOW_GROUNDED_CONTENT が返ります(関係の薄い内容で止まったときは NO_RELEVANT_CONTENT)。どちらのときも、画面には「この案件の規程で該当の条文が見つかりません。照査の担当に確認してください」と出し、 準則の目次と特記仕様書へのリンクを並べます。
指示内容を固定する
answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の指示を入れます。中継プログラムは、作業の種類と工程、準則の版を検索の文の先頭に付けます。
あなたは測量会社の技術部で、公共測量の案件の作業の根拠となる
条文を探す補助をする立場です。読むのは技術者と照査の担当です。
【前提】
検索の対象は、指定の案件に当たる版の作業規程の準則と付録、
その発注者の作業規程、その案件の特記仕様書と打合せ簿だけです。
検索の文の最初に、作業の種類、工程、準則の版が書かれています。
【答え方】
1. 特記仕様書・打合せ簿に同じ事項の定めがあれば、最初に書き、
本文を引用する
2. 発注者の作業規程に読み替えや独自の定めがあれば、次に書く
3. 準則の条文を、条の番号と見出しを付けて引用する
4. 様式や計算式が要るものは、付録の章の名前を書く
5. 根拠を決めるのに技術者が確かめることがあれば、2つまで挙げる
6. 全体を250字程度に収める
【厳守事項】
- 許容範囲・点検の割合などの数値は、条文の本文の引用の中でだけ
書いてください。引用の外で数値を書かないでください。
- 観測の結果が許容範囲に入るか、再測が要るかを書かないでください。
- 検索結果に無い作業の方法を、一般の測量の知識で補わないでください。
- 指定の版と違う版の条文を引用しないでください。
- 特記仕様書と準則で定めが違うときは、両方を引用し、
どちらに従うかは書かないでください。
- 当たる条文が見つからないときは、
「この案件の規程で該当の条文を確認できませんでした」とだけ書いてください。
「数値は引用の中でだけ書く」を明記しないと、AIは条文の数値を言い換えて書きます。 「mm」と「cm」、「√S」の付け忘れのような写し違いは、読んだだけでは気づきにくく、照査で見つかる前に計算に使われます。 引用の中の数値なら、元の条文とそのまま突き合わせられます。
「どちらに従うかは書かない」も大事です。 特記仕様と準則の定めが違うとき、どちらを優先するかは契約の書類の決まりと発注者との協議で決まります。AIがもっともらしく優先を決めると、協議が要る場面が見えなくなります。
出力形式を固定する
answer メソッドの返り値を、中継プログラムが次の形にまとめます。
{
"query_id": "",
"project_id": "",
"orderer": "",
"rule_version": "",
"work": "",
"phase": "plan | setup | observe | compute | check | deliver",
"answer_text": "",
"citations": [ { "doc_kind": "special_spec | orderer_rule | standard | appendix",
"article": "", "quote": "", "uri": "" } ],
"conflict": false,
"ask_engineer": [],
"status": "answered | skipped | no_version",
"skipped_reason": ""
}
1つ目の理由は、citations を文書の種類の順に並べ替えられることです。 中継プログラムが special_spec → orderer_rule → standard → appendix の順に並べ、画面ではこの順に色を分けて出します。特記仕様の上書きを、技術者が読み飛ばせない並びにします。
2つ目は、conflict で協議の要る場面を知らせられることです。 同じ工程について special_spec と standard の両方の引用があれば、中継プログラムが true にし、画面の上に「特記仕様と準則の両方に定めあり。照査の担当に確認」と出します。
3つ目は、rule_version を必ず画面に出せることです。 技術者と照査の担当が、同じ版の条文を見ていることを最初に確かめられます。
公式のドキュメントでは、引用の位置(startIndex/endIndex)は文字ではなく UTF-8 のバイト単位です。日本語の答えの文で引用の箇所に印を付けるときは、バイトの位置を文字の位置に直してから使います。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| Cloud Storage | 準則・作業規程・特記仕様書とメタデータの置き場 | 取り込みの起点 |
| Agent Search | answer メソッド | 条文の引用と答えの文 |
| 案件の台帳 | 中継プログラムが毎晩読み込んだ写し | 発注者、適用する作業規程と準則の版 |
| 技術者・照査の画面 | 社内の画面(現場ではタブレット) | 案件の選択、質問、答えと引用 |
特記仕様書を引けるのは、その案件の担当と照査の担当だけにします。 中継プログラムが、案件の担当の表から選べる案件を決めます。準則と発注者の作業規程は、全員が引けます。
公式のドキュメントには、データストアの文書ごとに読める人を決めるアクセス制御がありますが、Preview の機能で、データストアを作るときにしか有効にできません。 この構成では、案件ごとの制御を中継プログラムの絞り込みで行い、Preview の機能には頼りません。
人が確認する
- 案件と版を見る … 画面の上に、案件番号と発注者、準則の版が出ます。いま作業している案件と合っているかを最初に見ます
- 引用の元の条文を開く … 数値を使う前に、元のPDFの条文と突き合わせます
conflictを照査に回す … 特記仕様と準則の両方に定めがあるものは、作業者だけで決めません- 外れを記録する … 違う条文が出た、見つからなかったときは「違う」を押して理由を書きます
2番目を省かないでください。 引用の数値は条文の写しですが、表の行や注記を取り違えて引用していることがあります。 元の条文の表で、行と列を確かめてから使います。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 案件の適用版が台帳に無い | 検索をせず、台帳の確認を求める |
根拠の弱い答え(LOW_GROUNDED_CONTENT) | 答えを出さず、目次と特記仕様書を出す |
関係の薄い内容しか無い(NO_RELEVANT_CONTENT) | 同上。規程に無い質問として記録する |
| 特記仕様と準則の両方に定めがある | conflict を立て、照査の担当に回す |
| 打合せ簿が取り込まれていない | 画面に「最新の打合せ簿の取り込み日」を出し、古ければ担当が足す |
| 発注者の作業規程が準則のどの版を準用するか不明 | 発注者に確かめ、台帳に書くまで検索しない |
| answer メソッドが応答しない | 準則の目次と特記仕様書へのリンクだけを出す |
6行目は、案件を始める前に片付けておく問題です。 作業規程に「準則を準用する」とだけあり、版が書かれていないことがあります。どの版を準用するかを発注者に確かめた記録を、台帳に残します。
記録を残す
- 質問ごとの、案件、作業の種類、工程、質問の文、技術者
- 絞り込みの条件の全文と、answer メソッドの返り値の全文(答えの文、引用、根拠の強さ、
answerSkippedReasons) conflictが立った質問と、照査の担当がどう決めたか- 技術者が「違う」を押した記録と理由
- 取り込んだ準則・作業規程・特記仕様書の版と取り込みの日
3つ目は、成果の検定や発注者の検査で根拠を問われたときに使います。 どの条文を根拠に、誰がどう決めたかを、案件ごとに示せます。
04実装レベルの3段階
半自動化で、1件10分が6分程度になります。 準則と作業規程を探す時間は無くなりますが、特記仕様書と打合せ簿を開いて確かめる作業が残ります。本格構成で3分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の画面を1か月使うと、どの発注者の作業規程で読み替えの切り出しが足りないかが先に分かります。作業規程の整理を終えてから特記仕様書を足すほうが、外れたときに原因を分けて見られます。
05工数削減シミュレーション
導入後 600件 × 3分 ÷ 60 = 30 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 国・都道府県・市町村の公共測量を年に数十件受注し、発注者ごとの作業規程と案件ごとの特記仕様書に沿って作業している測量会社。技術者が数十名いて、作業の途中や成果の点検のたびに準則と特記仕様のどこに書いてあるかを探している場合。準則の改正(GNSS標高測量の導入など)の前後の案件が並行し、どの版で作業するかを取り違えるおそれがある場合。
- 公共測量をほとんど受注せず、民間の測量が中心の場合。技術者が数名で、全員が準則と主な発注者の作業規程を覚えている場合。発注者の作業規程や特記仕様書を電子のファイルで受け取れず、紙だけで扱っている場合(先に電子化から始めます)。なお、観測の結果が許容範囲に入っているかの判定、再測の要否の判断、成果の検定、発注者との協議の結論は、この構成では代替できません。作業の根拠となる条文を探して示すまでです。
07最小構成で試す方法
- 進行中の案件を2件選び(準則の版の違う案件を1件ずつ)、それぞれの準則の版、発注者の作業規程、特記仕様書をそろえる
- 過去の照査の指摘と技術者からの質問から、その2件に関わるものを30件選ぶ(基準点、水準、UAV写真測量を混ぜる)
- 30件それぞれで、照査の担当が根拠にした条文を書き出してもらう
- 案件ごとに3つの文書を手元のAIサービスに読ませ、30件を1件ずつ尋ねる
- 「特記仕様書を先に、次に発注者の作業規程、最後に準則の条文を引用して答えてください。数値は引用の中でだけ書いてください」と指示する
3番目の書き出しは必ず先に済ませてください。 照査の担当が根拠にした条文と比べないと、当たったかが決まりません。5番目では、別の版の条文を引いていないか、特記仕様の定めを飛ばしていないかを最優先で見ます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 照査の担当と同じ条文が、正しい順で出た | Agent Search のデータストアに進む |
| 準則の条文だけが出て特記仕様が抜けた | 文書の種類の印と並べ替えで直る。構成は有効 |
| 照査の担当の根拠が、どの文書にも書かれていない | 社内の慣行で照査している。 AIの問題ではない |
3行目は、試すと何件か出ます。 社内で受け継がれてきた点検のしかたが、どの規程にも根拠を持たないことがあります。社内の照査の基準として文書にするか、やめるかを決める材料になります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 別の版の条文が出る | 版の絞り込みを中継プログラムが案件の台帳から必ず付ける |
| 特記仕様の上書きが抜ける | 文書の種類で並べ替え、特記仕様を先に出す |
| 数値が言い換えられて写し違う | 数値は引用の中でだけ書かせる |
| 発注者の読み替えが抜ける | 読み替えの条を切り出し、発注者の印を付ける |
| 観測と点検の条文が混ざる | 工程を画面で選ばせ、検索の文の先頭に付ける |
| 絞り込みが効かない | 項目をスキーマで索引可能にする |
| 引用の印がずれる | 引用の位置は UTF-8 のバイト単位。文字の位置に直す |
| 打合せ簿の取り込みが遅れる | 最新の取り込み日を画面に出す |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも答えが「それらしく」出るので、画面を見ただけでは気づけません。索引を作ったら、版の違う2つの案件で同じ質問を投げ、GNSS標高測量のように改正で変わった作業で違う条文が出ることを必ず確かめてください。
4行目と5行目も早いうちに効いてきます。 読み替えの抜けは、その発注者の案件だけで起きるので気づきにくく、工程の混ざりは、点検の場面で観測の条文を根拠にしてしまう形で出ます。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 作業規程の準則と付録、発注者の作業規程、案件ごとの特記仕様書と打合せ簿、案件の台帳です。特記仕様書と打合せ簿には、発注者の事業の計画や、用地・施設の情報が含まれることがあります。
- 公開の文書と契約の文書を分けて扱う … 準則は国土地理院が公開しています。特記仕様書と打合せ簿は、発注者との契約の書類として扱い、引ける人を案件の担当に限ります
- 置き場所を発注者の取り決めと照らす … データストアの場所に日本は無く、
global・us・euから選びます。契約で外部への保存に制限があれば、その案件の書類は取り込みません - 土地の所有者などの個人の情報を取り込まない … 打合せ簿に立入りの承諾や所有者の名前が書かれていれば、取り込む前に外します
- 判定は技術者が行う … 許容範囲に入るか、再測が要るかは、観測値と条文を突き合わせた技術者と照査の担当が決めます
- 承認を得た作業規程の外に出ない … 測量法第33条のとおり、公共測量は承認を得た作業規程に基づいて行います。一般の知識で方法を補わせないことが、そのまま法令を守ることになります
誤りが起きた場合のリスクは、別の版の条文や特記仕様の抜けた根拠で作業し、成果の点検や検査で手戻りが出ることです。 版の絞り込み、文書の種類の並べ替え、数値を引用の中でだけ書かせること、の3つで防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:案件の台帳に適用版の欄を足す
進行中の案件すべてについて、適用する作業規程と準則の版を契約の書類から書き込みます。版の分からない案件は、発注者に確かめます。
2週目:30件で試す
第8章のとおり、版の違う2件の案件で30件を試します。照査の担当の根拠がどの文書にも無かった件数を数えます。
3週目:準則を条で分け、作業と工程の印を付ける
準則の本文と付録を分け、条ごとに作業の種類と工程を付けます。改正前と改正後の両方の版を整えます。
4週目:データストアを作る
Agent Search にデータストアを作り、版と発注者で絞って探す画面を作ります。この時点では特記仕様書は入れず、準則と主な発注者の作業規程だけで始めます。
2か月目: 案件の台帳からの版の読み取りと、特記仕様書・打合せ簿の取り込み、文書の種類の並べ替えを足します。3か月目以降: conflict の件数と「違う」が押された件数を毎月数え、受注の多い発注者から順に作業規程の読み替えを整えます。照査の指摘のうち根拠のすり合わせで始まるものが無くなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの searchSpec.searchParams に filter を書けること、maxReturnResults が既定10・最大25であること。includeCitations(既定は false)、ignoreLowRelevantContent、promptSpec.preamble。groundingSpec の includeGroundingSupports と filteringLevel(FILTERING_LEVEL_LOW/FILTERING_LEVEL_HIGH)、根拠の弱い回答で LOW_GROUNDED_CONTENT、関係の薄い内容で NO_RELEVANT_CONTENT が返ること。引用の startIndex/endIndex が UTF-8 のバイト単位であること | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-26 |
絞り込みの構文(ANY()、AND・OR と括弧)。項目をスキーマで索引可能にする必要があること | Google Cloud: Filter generic search for structured or unstructured data | 2026-10-26 |
メタデータ付きの非構造化データの JSON Lines の形(id、structData、content の mimeType と uri)。1ファイル200MB、一度の取り込みで10万ファイルまでであること | Google Cloud: Prepare data for ingesting | 2026-10-26 |
データストアの場所が global・us・eu であること。マルチリージョンでは保存中のデータの所在をその地域に留められること | Google Cloud: Agent Search locations | 2026-10-26 |
| 作業規程の準則の全文(PDF 約1.90MB)と付録(測量機器検定基準、現場試験の基準、測量成果検定基準、標準様式、永久標識、計算式集、公共測量標準図式、多言語表記による図式)が別々のPDFで公開されていること。平成20年以降の一部改正の履歴(R2・R5・R7 など) | 国土地理院: 作業規程の準則について | 2026-10-26 |
| 作業規程の準則が2025年3月31日に一部改正され4月1日から施行されたこと。GNSS標高測量(3級水準測量が対象)の導入、三次元点群データを使用した断面図の作成方法の追加。準則が測量法第34条に規定され、公共測量作業規程を作成するための一般的な規準として用いられていること | 国土地理院: 「作業規程の準則」を一部改正しました | 2026-10-26 |
| 測量法第33条(測量計画機関は作業規程を定めて国土交通大臣の承認を得ること。公共測量は承認を得た作業規程に基づいて実施すること)、第34条(作業規程の準則) | e-Gov 法令API: 測量法 | 2026-10-26 |
観測の結果の判定、再測の要否、特記仕様と準則の定めが違うときの扱いは、技術者と照査の担当が、必要に応じて発注者と協議して決めてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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