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海外向け取扱説明書の翻訳の途中稿を、章ごとに用語集と画面表示の文言に照らし、訳語の不統一と訳抜けの候補を修正案付きで翻訳者に返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

翻訳者から章ごとに届く取扱説明書の対訳表を、社内の用語集と機械の画面表示の文言表に照らして点検します。訳語の不統一、禁止訳、訳抜けの候補に修正案と根拠を付け、技術文書の担当が確かめてから翻訳者に返します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/医療/商社/製造
対象部門
品質管理/研究開発
対象業務
内容確認・チェック
主な課題
人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 翻訳者が対訳表を共有フォルダに置き、翻訳会社の担当からメールで知らせが届く
  2. 技術文書課の担当が対訳表を開き、原文の列を読みながら用語集の見出し語を探す
  3. 見出し語があれば、用語集で承認訳を引き、訳文の列で同じ語が使われているかを見る
  4. 原文の[ ]で囲まれた画面表示の文言を、文言表で引いて訳文と見比べる
  5. 訳文の空欄、原文のままの行、数値の違いを流し見る
  6. 気づいた点を指摘の一覧に書き、修正案を添えて翻訳会社にメールで返す
  7. 翻訳者の直しが入った対訳表が戻り、指摘した行だけを見直す
導入後(After)
  1. 人翻訳者が対訳表を共有フォルダの「受領」に置く(今までどおり)
  2. 自動n8n が30分ごとに「受領」を確かめ、新しい対訳表を読み込む
  3. 自動書式(4列そろっているか、セグメントIDの重複が無いか)を確かめる
  4. 自動用語集と画面表示の文言表を引き、照合の規則で候補を拾う
  5. 自動候補だけを前後のセグメントと関係する用語とともに Claude に渡し、誤りかどうかの判定と修正案を受け取る
  6. 自動修正案が承認訳を含んでいるか、数値を変えていないかをワークフローが確かめる
  7. 自動修正案の一覧を作り、その言語の担当に Slack で確認を頼む
  8. 人担当が一覧を開き、外れた指摘を消し、必要なら修正案を直して「返す」を押す
  9. 自動翻訳会社の担当に一覧をメールで送り、対訳表を「処理済み」へ移す
  10. 人翻訳者が指摘ごとに「採用/不採用(理由)」を書いて直した対訳表を戻す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 翻訳者が対訳表を共有フォルダに置き、翻訳会社の担当からメールで知らせが届く
  2. 技術文書課の担当が対訳表を開き、原文の列を読みながら用語集の見出し語を探す
  3. 見出し語があれば、用語集で承認訳を引き、訳文の列で同じ語が使われているかを見る
  4. 原文の[ ]で囲まれた画面表示の文言を、文言表で引いて訳文と見比べる
  5. 訳文の空欄、原文のままの行、数値の違いを流し見る
  6. 気づいた点を指摘の一覧に書き、修正案を添えて翻訳会社にメールで返す
  7. 翻訳者の直しが入った対訳表が戻り、指摘した行だけを見直す

(a)用語集を目で引くので、見落としが出る。 1章に数百のセグメントがあり、用語集の見出し語は1章に数十回出てきます。「承認訳ではない語が使われている」より、「承認訳が使われていない」ほうが見落としやすいのは、無いものは目に留まらないからです。

(b)画面表示の文言は一字違いが見えない。 「Reference Return」と「Reference return」、「Referenzpunktfahrt」と「Referenzfahrt」。意味は通じるので、読み流すと誤りに見えません。 画面と違う文字列のまま出荷され、海外の代理店から「説明書のボタンが画面に無い」と問い合わせが来ます。

(c)読めない言語は確認が浅い。 ドイツ語と中国語は、読める担当が不在の週は語の有無しか見られません。訳抜けは、その言語が読めないと見つけられません。

(d)指摘の書き方が担当者ごとに違う。 用語IDを書く人、文全体を書き直す人がいて、翻訳者は意図を読み取るのに時間を使います。

  1. 【人】 翻訳者が対訳表を共有フォルダの「受領」に置く(今までどおり)
  2. 【自動】 n8n が30分ごとに「受領」を確かめ、新しい対訳表を読み込む
  3. 【自動】 書式(4列そろっているか、セグメントIDの重複が無いか)を確かめる
  4. 【自動】 用語集と画面表示の文言表を引き、照合の規則で候補を拾う
  5. 【自動】 候補だけを前後のセグメントと関係する用語とともに Claude に渡し、誤りかどうかの判定と修正案を受け取る
  6. 【自動】 修正案が承認訳を含んでいるか、数値を変えていないかをワークフローが確かめる
  7. 【自動】 修正案の一覧を作り、その言語の担当に Slack で確認を頼む
  8. 【人】 担当が一覧を開き、外れた指摘を消し、必要なら修正案を直して「返す」を押す
  9. 【自動】 翻訳会社の担当に一覧をメールで送り、対訳表を「処理済み」へ移す
  10. 【人】 翻訳者が指摘ごとに「採用/不採用(理由)」を書いて直した対訳表を戻す

8番目が、この設計の分かれ目です。 担当は原文と訳文を最初から読むのではなく、用語IDと根拠の付いた候補が当たっているかを見ます。 読めない言語でも、画面表示の文言の不一致と用語集の照合は文字列の問題なので確かめられます。

4番目と5番目を分けているのも、意図してのことです。 対訳表の全文をAIに渡して「用語の誤りを探して」と頼むと、見つけたものは出てきますが、見つけなかったものが分かりません。 規則で拾った候補を全件記録し、AIはそれに判定を付けるだけにすると、どの候補がなぜ外れたかが後から追えます。

02今回想定するシステム構成

構成図
【トリガー】30分ごと(Schedule Trigger、平日の8時〜20時)
   ▼
n8n
   ├─ Google Drive ── 「受領」フォルダの新しい対訳表を探して取得
   ├─ Extract From File(XLSX)── 対訳表を行に分ける
   ├─ Google Sheets ── 用語集(承認訳・禁止訳・区分)
   ├─ Data Table ── 画面表示の文言表(制御ソフトの版ごと)
   ├─ Code ── 書式の確認、照合の規則で候補を拾う
   ▼
Basic LLM Chain + Anthropic Chat Model + Structured Output Parser
   │   候補ごとの判定、承認訳を使った修正案、根拠の用語ID
   ▼
Code ── 修正案の検査(承認訳を含むか、数値を変えていないか)
   ▼
Convert to File(XLSX)→ Google Drive「確認待ち」
   ▼
Slack(Send and Wait for Response:Approval)── その言語の担当へ
   ▼
【担当が確かめて「返す」】
   ▼
Gmail ── 翻訳会社の担当へ一覧を送る / 対訳表を「処理済み」へ移す
役割想定する製品代替候補
ワークフローn8nMake、Power Automate
生成AIClaude(n8n の Anthropic Chat Model ノード)OpenAI API、Gemini API
保管Google ドライブ(受領・確認待ち・処理済みのフォルダ)SharePoint
台帳Google スプレッドシート(用語集)、n8n の Data Table(画面表示の文言表と記録)用語管理の専用ツール
通知Slack(n8n の Slack ノード)Microsoft Teams

n8n を選ぶのは、照合の規則をワークフローの中に持てるからです。 候補を拾う規則(最長一致、語形の正規化、数値の抜き出し)は Code ノードに書き、AIに渡すのは候補になったセグメントと、それに関係する用語だけにできます。発売前の機種の説明書を、丸ごと外へ出さずに済みます。

対訳表の読み込みには、Extract From File ノードの Extract From XLSX を使います。 公式ページでは、このノードの操作に Extract From XLSX・Extract From CSV などが並び、返す一覧は Convert to File ノードの Convert to XLSX で作れます。 Convert to XLSX には、シート名や1行目を見出しにするかの設定があります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

Schedule Trigger で30分ごとに動かし、Google ドライブの「受領」フォルダを確かめます。 公式ページでは、Schedule Trigger は分・時間・日などの間隔や Cron の式で動かせ、ワークフローに時間帯の設定が無ければ n8n のインスタンスの時間帯に従い、自前で置いた場合の既定は America/New York とされています。ワークフローの設定で Asia/Tokyo を指定してから、平日の8時〜20時に絞ります。

翻訳者がファイルを置いた瞬間に動かす必要はありません。 返すのは担当が確かめた後で、担当の確認は勤務時間の中で行います。30分の遅れより、置きかけのファイル(書き込みの途中)を読まないことのほうが大事です。そのため、最終更新から10分以上たったファイルだけを対象にします。

Google Drive ノードの「Search files and folders」で「受領」フォルダのファイルを探し、「Download a file」で取り出します。処理が終わったら「Move a file」で「処理済み」へ移します。 移すのは一覧を翻訳会社に送った後だけにします。「受領」に残っているファイルの数が、そのまま未処理の数になります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
対訳表セグメントID、原文、訳文、翻訳者のメモ。ファイル名に機種・章・言語・版共有フォルダの「受領」
用語集用語ID、日本語の見出し語、言語ごとの承認訳、禁止訳、区分(一般・安全・製品名)、使い分けの注記Google スプレッドシート
画面表示の文言表文言ID、日本語、言語ごとの画面の文字列、制御ソフトの版Data Table(開発部門のCSVを取り込む)
既訳の記録同じ機種の他の章で確定した原文と訳文の組Data Table
不採用の記録翻訳者が不採用にした指摘と理由Data Table

質を決めるのは、用語集の「使い分けの注記」です。 「原点」が機械原点を指すときと、ワークの原点を指すときで承認訳が違う、という類の注記が無いと、規則もAIも一律に同じ訳を求めてしまいます。 注記がある用語は、候補の判定でAIに注記をそのまま渡します。

画面表示の文言表は、説明書が対象とする制御ソフトの版で引きます。 ファイル名の版から文言表の版を決め、版が文言表に無ければ照合をせずに担当へ知らせます。 古い版の文言で照合すると、正しい訳文を誤りとして返すことになります。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
対訳表の行Extract From XLSX照合の対象
用語集Google Sheets ノードの Get Row(s)見出し語・承認訳・禁止訳
画面表示の文言Data Table ノードの Get完全一致の照合
既訳と不採用の記録Data Table ノードの Get章をまたいだ不統一、同じ指摘のくり返しの抑止

画面表示の文言表は、開発部門が版を出すたびに Data Table へ取り込みます。 公式ページでは、Data Table ノードの行の操作に Insert・Update・Upsert・Get・If Row Exists などがあります。文言IDと版を組にして Upsert し、版ごとに引けるようにします。

用語集は Google スプレッドシートのまま技術文書課が直します。ワークフローは読むだけで、書き込みません。 用語集を直すのは人の仕事で、翻訳者の不採用の理由を見て決めます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 書式の確認 … 4列がそろっているか、セグメントIDに重複や空欄が無いかを見ます。崩れていれば照合をせずに担当へ知らせます
  2. 正規化 … 全角・半角、連続した空白、引用符の種類をそろえます。画面表示の文言の照合だけは正規化しない文字列でも比べます
  3. 見出し語の最長一致 … 原文から用語集の見出し語を、長いものから順に探します。「原点復帰」が見つかった箇所では、「原点」を重ねて拾いません
  4. 候補の拾い出し … 次の表の規則で候補を作ります
  5. 文脈の付与 … 候補ごとに、前後1つずつのセグメントと、その候補に関係する用語集の行だけを添えます
候補の種類拾う規則
term_missing原文に見出し語があるのに、訳文に承認訳(語形を正規化したもの)が無い
term_forbidden訳文に禁止訳がある
ui_mismatch原文の[ ]内の文言について、文言表の文字列が訳文に完全一致で無い
untranslated訳文が空、または原文と同じ
number_mismatch原文と訳文で、数値・単位・型番の並びが合わない
length_outlier原文に対する訳文の長さの比が、言語ごとに決めた範囲の外
inconsistent同じ原文に、既訳と違う訳文が付いている

3番目を省くと候補が倍に増えます。 日本語には語の区切りが無いので、短い見出し語は長い見出し語の一部として何度も当たります。長い語を先に取り、その範囲を短い語の探索から外します。

ui_mismatch と untranslated と number_mismatch は、AIの判定を通さずに確定の候補にします。 文言表と一致しない、空である、数値が違う。これらは文字列の事実で、AIに「許される範囲か」を聞く性質のものではありません。

Step5

AIに処理させる

Basic LLM Chain に、残りの候補(term_missing・term_forbidden・length_outlier・inconsistent)の判定と修正案を作らせます。 公式ページでは、Basic LLM Chain はモデルに渡すプロンプトを決めるノードで、Require Specific Output Format を有効にすると出力の形を決めるパーサーをつなぐとされています。

させること中身
判定候補が本当に誤りか(error)、語形変化や言い換えで許される範囲か(acceptable)、決められないか(unsure)
修正案承認訳に差し替えた訳文。差し替える語の前後だけを変えた最小の修正
根拠用語ID と、使い分けの注記のどれに当たるか
訳抜けの指摘length_outlier について、原文にあって訳文に無い内容を原文の言葉で示す
担当向けの説明日本語で1〜2文。読めない言語でも担当が判断できるように、該当部分の意味を添える
させないこと理由
候補に無い箇所の指摘候補は規則で拾う。AIが足すと、拾い方の記録と合わなくなる
文の書き直し・言い回しの好み文の流れは翻訳者が決める
数値・単位・型番の修正原文と照らす作業は規則が行い、AIは触らない
用語集に無い訳語の提案承認訳を決めるのは技術文書課
画面表示の文言の判定文言表との完全一致で決まる

「acceptable」を判定に入れているのが、この構成の要です。 ドイツ語の複合語では承認訳が別の語の一部になり、中国語では語順の都合で語が分かれることがあります。規則は機械的なので、こうした正しい訳文も候補として拾います。 それを誤りとして返すと、翻訳者は「直さなくてよい指摘」に答える時間を使います。

Step6

指示内容を固定する

Basic LLM Chain のシステムメッセージに、次のように書きます。

あなたは工作機械メーカーの技術文書課で、取扱説明書の翻訳の用語を点検する担当です。
翻訳者から届いた途中稿のうち、照合の規則で拾われた「候補」だけを判定します。

【入力】
- 対象言語
- 候補の一覧(候補ID、種類、セグメントID、原文、訳文、前後のセグメント)
- 候補に関係する用語集の行(用語ID、見出し語、承認訳、禁止訳、使い分けの注記)

【判定の選び方】
- error ......... 承認訳を使うべき箇所で使われていない、または禁止訳が使われている
- acceptable .... 承認訳が語形変化・複合語・語順の都合で形を変えて含まれている、
                  または使い分けの注記により別の承認訳が正しい
- unsure ........ 上のどちらとも決められない
迷ったときに error を選ばないでください。unsure にしてください。

【修正案の書き方】
- error のときだけ suggested_target を書いてください。
- 訳文のうち、差し替える語とその前後の数語だけを変えてください。
  文の構成を変えたり、言い回しを整えたりしないでください。
- 修正案に使う訳語は、用語集の承認訳だけにしてください。
- 数値、単位、型番、記号は訳文のまま残してください。

【訳抜けの候補(length_outlier)】
- 原文にあって訳文に無い内容があれば、missing_source に原文の言葉をそのまま写してください。
- 無ければ acceptable にしてください。長さの違いだけで error にしないでください。

【厳守事項】
- 候補の一覧に無い箇所について指摘しないでください。
- 用語集に無い訳語を提案しないでください。
- 根拠の用語IDを示せない error は出さないでください。
- note_ja には、判定の理由と、該当部分の意味を日本語で1〜2文で書いてください。
- 翻訳の巧拙や文体の評価は書かないでください。

「迷ったときに error を選ばない」を明記しないと、AIは候補をほぼ全部 error にします。 規則が拾ったという事実を、誤りの根拠のように扱うからです。unsure を逃げ道として用意し、担当が見る候補として扱います。

「長さの違いだけで error にしない」も効きます。 ドイツ語は日本語より長く、中国語は短くなりがちです。長さは訳抜けを疑うきっかけで、訳抜けそのものではありません。 原文の言葉を写せたときだけ訳抜けとします。

Step7

出力形式を固定する

Structured Output Parser で、次の形に決めます。 公式ページでは、JSON の例から生成するか JSON Schema で定義するかを選べ、例から生成するとすべての項目が必須として扱われ、$ref を使った参照には対応しないとされています。入れ子の定義は参照を使わずに直接書きます。

{
  "file": "MC-500_ch12_de_v3.xlsx",
  "language": "de",
  "results": [
    {
      "candidate_id": "C-0412",
      "segment_id": "12-087",
      "type": "term_missing",
      "verdict": "error | acceptable | unsure",
      "term_ids": ["T-0231"],
      "suggested_target": "",
      "missing_source": "",
      "note_ja": ""
    }
  ]
}

1つ目の理由は、候補IDで規則の記録と結び付けられることです。 拾った候補とAIの判定を突き合わせ、判定が返らなかった候補があれば unsure として残します。 候補が黙って消えることがありません。

2つ目は、修正案をワークフローが検査できることです。 suggested_target が承認訳を含んでいるか、元の訳文と比べて数値・単位・型番が変わっていないかを Code ノードで見ます。どちらかを満たさない修正案は消し、判定を unsure に落とします。

3つ目は、翻訳者に返す一覧がそのまま作れることです。 一覧は次の列で作ります。

列中身
指摘ID・セグメントIDどの行への指摘か
種類用語の不一致/禁止訳/画面表示の不一致/未訳/数値の不一致/訳抜けの疑い
現在の訳文・修正案差し替えの前後
根拠用語IDと承認訳、または文言IDと画面の文字列
翻訳者の回答採用/不採用(翻訳者が記入)
不採用の理由翻訳者が記入
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Google ドライブGoogle Drive ノード対訳表の検索・取得、一覧の保存、処理済みへの移動
用語集Google Sheets ノードの Get Row(s)見出し語・承認訳・禁止訳の読み取り
画面表示の文言表・記録Data Table ノード文言の照合、既訳、不採用、処理の記録
Anthropic のモデルAnthropic Chat Model ノード候補の判定と修正案
SlackSlack ノードの Send and Wait for Response担当への確認の依頼と、返すかどうかの選択
GmailGmail ノードの Send a message翻訳会社の担当へ一覧を送る

担当への確認には、Slack ノードの Send and Wait for Response を承認の形で使います。 公式ページでは、承認する人が Slack の中で承認・却下でき、承認できる人を指定でき、誰が応じたかが出力に残るとされています。承認できる人を、その言語の担当に限ります。条件として、n8n が Slack から公開の HTTPS で届く場所にあること、Slack のアプリの Interactivity の受け口を登録すること、資格情報に Signing Secret を入れることが要るとされています。

メールは Gmail ノードの Send a message で送り、一覧のファイルを添付します。 公式ページでは、添付するファイルを入力のどの項目から取るかを指定でき、既定では本文の末尾に n8n から自動で送られた旨の一文が付くとされています。取引先への連絡なので、この一文を付けるかは設定で決めておきます。

Anthropic Chat Model ノードでは、Prompt Caching を有効にします。 公式ページでは、システムプロンプトなどをリクエストの間で保持でき、5分か1時間を選べるとされています。判定の規則を書いたシステムメッセージは毎回同じなので、章をまとめて処理するときに効きます。

Step9

人が確認する

その言語の担当が、Slack の知らせから一覧を開いて確かめます。

  1. ui_mismatch を先に見る … 文言表の版が説明書の対象と合っているかを確かめます。版が合っていれば、そのまま返します
  2. error を確かめる … 用語IDと承認訳が、その文脈で正しいかを見ます。使い分けの注記がある用語は特に見ます
  3. unsure を判断する … 消すか、error にして修正案を書くかを決めます
  4. 訳抜けの疑いを確かめる … missing_source の原文の言葉が、訳文の前後のセグメントに移っていないかを見ます
  5. 「返す」を押す … 一覧から消した指摘は、記録に「担当が消した」として残ります

読めない言語でも、1番と2番は確かめられます。 文言表との一致と承認訳の有無は、文字列の問題だからです。3番と4番に読める人の判断が要るので、読める担当が不在の週は、その2つだけを次の週に回します。 1番と2番を先に返すと、翻訳者の手が止まりません。

目標は、1件をならして10分です。 候補が数件の章は数分で終わり、新機種の最初の章のように用語が多い章は20分を超えます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
対訳表の列が足りない・IDが重複照合をせずに担当へ知らせ、翻訳会社に書式の直しを頼む
文言表に説明書の版が無い画面表示の照合をせず、開発部門に版の書き出しを頼む
書き込み途中のファイルを拾った最終更新から10分以内のファイルは次の回に回す
同じ章の新しい版が届いた古い版の一覧が確認待ちなら取り下げ、新しい版で作り直す
判定が返らない候補があるunsure として一覧に残す
修正案が承認訳を含まない・数値を変えた修正案を消し、unsure に落とす
出力が決めた形に合わない1回だけやり直し、だめなら候補を全件 unsure にして担当へ
候補が極端に多い(例:数百件)AIに渡さず担当へ知らせる。多くは書式か版の取り違え
担当が決めた時間までに選ばない翌朝に再通知する。翻訳者へは送らない

最後から2行目は、AIの問題ではありません。 別の機種の文言表で照合した、列が入れ替わっていた、というときに候補が跳ね上がります。上限を置くと、取り違えがAIの費用になる前に止まります。

Step11

記録を残す

  • 対訳表のファイル名、機種・章・言語・版、受け取った日時
  • 照合の規則が拾った候補の全件と、使った用語集・文言表の版
  • AIの判定と修正案、ワークフローが消した修正案とその理由
  • 担当が消した・直した指摘と、応じた人と時刻
  • 翻訳者の回答(採用/不採用)と不採用の理由
  • 用語IDごとの、error の数と不採用の数

最後の行が、用語集の見直しの材料になります。 ある用語の指摘がいつも不採用になるなら、承認訳が実際の文脈に合っていないか、使い分けの注記が足りません。 翻訳者の理由を読んで、用語集を直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:対訳表の一部と用語の行を手で生成AIの画面に貼り、指摘を出させる / 1章ごとの用語の点検
半自動化:上記+n8n で対訳表を読み、照合の規則で候補を拾い、AIの判定付きの一覧を担当に送る / 候補の拾い出しと判定
本格構成:上記+修正案の検査、Slack での確認、翻訳会社への送付、回答の記録と用語ごとの集計 / 点検から翻訳者への返却まで

最小構成では、画面表示の文言の照合ができません。 文言表は数千件あり、手で貼れる量ではありません。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が16分程度になります。 見出し語を探す①と文言表を引く②は無くなりますが、一覧から修正案を整えて翻訳会社に送る④が残ります。本格構成で10分になり、この段階が本記事の想定です。 差が出るのは、修正案の検査と送付が、担当の確認のボタン1つになるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、使い分けの注記が足りない用語が見えてきます。用語集を直してから送付を足すほうが、不採用の往復が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
10 分
現在  120件 × 30分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 120件 × 10分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価4,000円)
192万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 機械・装置・医療機器・業務用ソフトの取扱説明書を複数の言語で出しており、翻訳者から章ごとに途中稿を受け取って社内で用語を確かめている企業。用語集と、製品の画面に出る文言の各言語の一覧が社内にあるのに、照合が担当者の目に頼っている場合。担当者が読めない言語があり、確認の深さが言語によって違う場合。
向いていない
  1. 翻訳が年に数件で、その都度読み合わせれば足りる場合。用語集が無い、または承認された訳語が決まっていない場合(先に用語集を整えるほうが効果が大きい)。納品された完成稿を受け入れてよいかの判定(本記事は途中稿を翻訳者に返す往復を扱う)。なお、訳文が自然か、その国の規制に合う表現かの判断はこの構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 最近の改訂で、翻訳者とやり取りした章を言語ごとに5件ずつ、計15件選ぶ(当時の指摘の一覧が残っているものにする)
  2. 用語集から、その章に出てくる用語の行を抜き出す
  3. 手元の生成AIの画面に、対訳表のうち用語が出てくるセグメントと用語の行を貼り、「承認訳が使われていない箇所と禁止訳が使われている箇所を、用語IDとともに挙げてください。語形の変化で承認訳が含まれていれば挙げないでください」と指示する
  4. 当時の指摘の一覧と突き合わせる
  5. 画面表示の文言は、文言表と訳文を表計算で突き合わせ、完全一致しない行を数える

15件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「用語集の注記だけで判定が当たるのか」と、画面表示の文言の不一致がどれくらいあるかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の指摘と重なり、AIだけの指摘も当たっているn8n で組む段に進む
語形の変化を誤りとして挙げる指示の acceptable の書き方を直す。構成は有効
使い分けのある用語でいつも外れる用語集の注記を書き足す
画面表示の不一致が想定より多い文言表の版の管理が先。 AIの問題ではない

最後の行が出たら、どの版の文言で照合するかを開発部門と決めるところから始めてください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
短い見出し語が長い語の中で何度も当たる最長一致で拾い、取った範囲を短い語の探索から外す
語形の変化を誤りとして返す判定に acceptable を置き、「迷ったら error にしない」と指示する
古い版の文言表で照合するファイル名の版で文言表を引き、版が無ければ照合しない
AIが文全体を書き直す修正案を「差し替える語の前後だけ」に限り、数値の変化を検査する
用語集に無い訳語を提案する承認訳を含まない修正案はワークフローが消す
書き込み途中のファイルを読む最終更新から10分以上たったものだけを対象にする
列の入れ替わりで候補が跳ね上がる候補の数に上限を置き、超えたらAIに渡さない
同じ指摘が毎回返る不採用の記録と照らし、同じ用語・同じ文脈の指摘は出さない
Slack のボタンを押しても再開しない資格情報に Signing Secret を入れ、Interactivity の受け口を登録する
夜中に動く・朝に動かないワークフローの時間帯を Asia/Tokyo にする(既定は America/New York)

上の2行が、この構成でいちばん起きやすい失敗です。 どちらも規則の側の問題で、AIを賢くしても直りません。

3行目は、気づかないまま起きます。 照合が古い版のままだと、正しく直した翻訳者の訳文を誤りとして返します。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 発売前の機種を含む取扱説明書の原文と訳文、用語集、画面表示の文言表、翻訳者と翻訳会社の担当の名前とメールアドレスです。発売前の機種の仕様は、社外に出る前の情報です。

  1. AIに渡す範囲を候補に限る … 対訳表の全文ではなく、候補のセグメントと前後1つずつ、関係する用語の行だけを渡します。文言表と用語集を丸ごと渡しません
  2. 外部のAIに渡してよい機種を決める … 守秘の取り決めがある共同開発の機種などは、対象から外すか、渡してよい範囲を契約に照らして決めます
  3. 翻訳者への送付は人が決める … 一覧は担当の確認を経てから送ります。AIの判定を直接送らないのは、外れた指摘が翻訳者の時間を使い、取引先との関係に響くからです
  4. 安全に関わる用語は人が必ず見る … 危険・警告・注意の表示語のような用語の指摘は、判定が acceptable でも担当の確認に回します

誤りが起きた場合のリスクは、正しい訳文を誤りとして返して翻訳者の時間を使わせることと、規則の外にある用語の誤りを見落とすことの2つです。 前者は acceptable と担当の確認で、後者は出版前の通し読みを省かないことで防ぎます。この構成は通し読みの代わりではありません。

10まず何から始めるか

1週目:用語集を整える

用語集に、使い分けの注記と禁止訳の列をそろえます。全語でなくてよく、安全に関わる用語と、これまで指摘が多かった上位100語から始めます。

2週目:15件で試す

最近の章から言語ごとに5件を選び、手元の生成AIの画面で用語の指摘を出させて、当時の指摘と突き合わせます。語形の変化を誤りとして挙げていないかを最優先で見ます。

3週目:文言表と書式を決める

制御ソフトの開発部門と、画面表示の文言表をどの版で、どの形で書き出すかを決めます。あわせて、翻訳会社と対訳表の4列の書式を取り決めます。

4週目:候補の拾い出しをつなぐ

n8n で「受領」フォルダから対訳表を読み、照合の規則で候補を拾って、AIの判定付きの一覧を担当に送るところまで作ります。この時点では翻訳会社に送りません。

2か月目: 修正案の検査と Slack での確認、翻訳会社への送付を足します。3か月目以降: 翻訳者の回答を記録し、用語ごとの不採用の数を見て用語集を直し、1件30分が何分になったかを実測します。ドイツ語と中国語の章も、英語と同じ深さで用語が確かめられるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-15
確認した内容情報源確認日
分・時間・日などの間隔と Cron で動かせること。ワークフローに時間帯が無ければインスタンスの時間帯に従い、自前の既定が America/New York であることn8n Docs: Schedule Trigger2026-10-14
Google Drive ノードに Search files and folders、Download・Move・Upload a file などがあることn8n Docs: Google Drive2026-10-14
Extract From File ノードに Extract From XLSX・CSV などの操作があることn8n Docs: Extract From File2026-10-14
Convert to File ノードに Convert to XLSX があり、シート名・見出し行の設定があることn8n Docs: Convert to File2026-10-14
Basic LLM Chain がプロンプトを決め、Require Specific Output Format でパーサーをつなぐことn8n Docs: Basic LLM Chain2026-10-14
JSON の例から生成するとすべての項目が必須になること、$ref に対応しないことn8n Docs: Structured Output Parser2026-10-14
Anthropic Chat Model ノードに Prompt Caching(無効・5分・1時間)があることn8n Docs: Anthropic Chat Model2026-10-14
Slack の中で承認・却下でき、承認できる人を指定でき、誰が応じたかが出力に残ること。公開の HTTPS、Interactivity の受け口、Signing Secret が要ることn8n Docs: Approvals in Slack2026-10-14
Gmail ノードの Send a message で添付・CC などを指定でき、既定で自動送信の一文が付くことn8n Docs: Gmail message operations2026-10-14
Data Table ノードの行の操作に Insert・Update・Upsert・Get・If Row Exists などがあることn8n Docs: Data table2026-10-14

発売前の機種の説明書を外部のAIサービスに渡してよいかは、社内の規程と取引先との契約に従って決めてください。 本記事は n8n の公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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