賃貸物件のポータルの掲載文とチラシを、不動産の表示に関する公正競争規約の禁止表現と物件データとの食い違い・必要な表示の抜けで、掲載前に校正する
賃貸物件のポータルの掲載文と募集チラシの文面を、掲載の前に校正します。表示規約で使い方の決まった用語、物件データとの食い違い、必要な表示事項の抜けを指摘し、直しの案を付けて店舗の担当者へ返します。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Power Automate
- 対象業界
- 不動産/広告
- 対象部門
- マーケティング/営業
- 対象業務
- 内容確認・チェック/書類作成
- 主な課題
- 人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 校正
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 店舗の営業担当が物件データを入れ、キャッチコピーとコメントを書いて「掲載申請」にする
- 本部の広告担当が、申請の一覧を開いて1件ずつ見る
- キャッチコピーとコメントを読み、「最高」「格安」「日本一」など使い方の決まった用語が無いかを見る
- コメントの徒歩分数・築年数・設備の記載を、物件データの欄と見比べる
- 礼金・敷金・保証会社・保険・定期借家などの欄が空でないかを見る
- 直してほしい箇所を、システムの差し戻しのコメント欄に書いて店舗へ返す
- 問題が無ければ掲載を承認し、ポータルへ入稿する
- 人店舗の営業担当が物件データとコメントを入れ、「掲載申請」にする
- 自動申請された物件の物件データと、キャッチコピー・コメント・チラシの文面を取り出す
- 自動必要な表示事項の欄が埋まっているか、徒歩分数・築年数から書ける表現かを、規則で判定する
- 自動Azure OpenAI が、文面を1文ずつ見て、使い方の決まった用語、物件データと照らすべき記載、表記の乱れを指摘し、直しの案を出す
- 自動AIが拾った記載の数値を物件データと規則で照らし、引用が原文にあるかを照合する
- 自動`pass` / `fix_requested` / `manager_review` を規則で決める
- 人本部の広告担当が `fix_requested` と `manager_review` の指摘を確かめる
- 人直しの依頼を店舗へ返す。`manager_review` は広告責任者へ回す
- 人`pass` のものは一覧で流し見て、掲載を承認する
各工程の詳しい説明を読む
- 店舗の営業担当が物件データを入れ、キャッチコピーとコメントを書いて「掲載申請」にする
- 本部の広告担当が、申請の一覧を開いて1件ずつ見る
- キャッチコピーとコメントを読み、「最高」「格安」「日本一」など使い方の決まった用語が無いかを見る
- コメントの徒歩分数・築年数・設備の記載を、物件データの欄と見比べる
- 礼金・敷金・保証会社・保険・定期借家などの欄が空でないかを見る
- 直してほしい箇所を、システムの差し戻しのコメント欄に書いて店舗へ返す
- 問題が無ければ掲載を承認し、ポータルへ入稿する
(a)件数に対して人が足りない。 1,500件を4名で見ると、1人あたり1日20件近くになります。件数が多い日は、3番と4番が浅くなります。
(b)コメントとデータの食い違いが見えにくい。 コメントは文章、データは欄なので、画面の上と下を行き来して見比べる必要があります。 「駅まで徒歩5分」と書いた担当者は、物件データの最寄駅とは別の駅を思い浮かべていることもあります。
(c)用語の判断が担当者によって違う。 「特選」「厳選」は選別の基準を持っていれば使えるとされ、「最高」は根拠となる事実を併せて書けば使えるとされています。どこまでを差し戻すかが、担当者の経験で変わります。
(d)空の欄に気づきにくい。 礼金や保証会社の欄が空のときは、本当に不要なのか入れ忘れなのかが画面だけでは分かりません。空の欄は、目に止まりにくい欄です。
(e)チラシは掲載文の誤りを引き継ぐ。 チラシは掲載文を写して作るので、ポータルで見落とした「格安」や誤った徒歩分数がそのまま刷られます。刷ったチラシは直せず、仲介の会社に配った分は回収もできません。 本部はチラシを別に見る時間を取れていません。
- 【人】 店舗の営業担当が物件データとコメントを入れ、「掲載申請」にする
- 【自動】 申請された物件の物件データと、キャッチコピー・コメント・チラシの文面を取り出す
- 【自動】 必要な表示事項の欄が埋まっているか、徒歩分数・築年数から書ける表現かを、規則で判定する
- 【自動】 Azure OpenAI が、文面を1文ずつ見て、使い方の決まった用語、物件データと照らすべき記載、表記の乱れを指摘し、直しの案を出す
- 【自動】 AIが拾った記載の数値を物件データと規則で照らし、引用が原文にあるかを照合する
- 【自動】
pass/fix_requested/manager_reviewを規則で決める - 【人】 本部の広告担当が
fix_requestedとmanager_reviewの指摘を確かめる - 【人】 直しの依頼を店舗へ返す。
manager_reviewは広告責任者へ回す - 【人】
passのものは一覧で流し見て、掲載を承認する
7番目が、この設計の分かれ目です。 広告担当は文面を一から読み直すのではなく、AIと規則が指した箇所と、引用された文と物件データの値を見て判断します。 pass と出たものも、掲載の承認は人が行います。
5番目で数値を規則で照らすのも、意図してのことです。 AIは「徒歩3分」という記載を拾うだけで、それが物件データの6分と合わないかは規則が決めます。数を比べるのは、AIより規則のほうが確実です。
02今回想定するシステム構成
店舗の営業担当が掲載申請(物件データ+キャッチコピー・コメント・チラシの文面) ▼【トリガー】物件管理のシステムで「掲載申請」になる Azure Functions(申請の受け取りと前処理) ├──▶ 必要な表示事項の欄の空きを規則で判定 ├──▶ 徒歩分数・築年月から書ける表現を規則で判定 └──▶ 文面を1文ずつに分ける ▼ Azure OpenAI(構造化出力)── 用語・照らすべき記載・表記の指摘と直しの案 ▼ Azure Functions ── 記載の数値と物件データの照合、引用の照合、判定 ▼ 【本部の広告担当が確認】 ├──▶ 店舗への直しの依頼(物件管理のシステムの差し戻し) └──▶ 広告責任者へ(manager_review のみ)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 生成AI | Azure OpenAI(Microsoft Foundry) | Claude API、Gemini API |
| 連携 | Azure Functions(申請の受け取り、規則の判定、数値と引用の照合) | Power Automate |
| 保管 | SharePoint(用語の一覧、表記の決まり、判定の記録) | 社内のファイルサーバー |
| 通知 | Microsoft Teams(広告責任者への相談) | Outlook のメール |
ポータルサイトへの入稿には手を入れません。 この構成は掲載申請と承認のあいだに入り、指摘と直しの案を出すだけです。承認と入稿は、いまと同じく物件管理のシステムで人が行います。
Azure OpenAI を選ぶ理由は、構造化出力で JSON スキーマに沿った出力を受けられることです。 公式の説明では、Chat Completions API と Responses API の両方で構造化出力が使え、指定した JSON スキーマに従うとされています。1文ごとの指摘を決まった形で受けられるので、後段で数値を物件データと照らす処理を書けます。 社内で Microsoft 365 と Azure を使っており、契約と権限の管理を一つにまとめられることも理由です。
照らす基準は、不動産の表示に関する公正競争規約と同施行規則です。 首都圏不動産公正取引協議会のサイトで、規約の本文と、物件の種別ごとの必要な表示事項の一覧(別表)が公開されています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
物件管理のシステムで、物件の状態が「掲載申請」になったことを起点にします。 書いている途中の文面を校正しないために、担当者が書き終えて申請したことを合図にします。
起動のしかたは、物件管理のシステムが何を出せるかで決まります。状態の変化を通知できるなら、その通知で Azure Functions を呼びます。 通知が無いシステムなら、掲載申請の一覧を数分おきに書き出して読み、まだ校正していないものだけを処理します。どちらでも、物件番号と申請の版で一度だけ処理するように、処理済みの組を記録します。
書き換えの再掲載は、変わった文だけを校正します。 前回の申請の文面と比べ、変わっていない文は前回の指摘をそのまま引き継ぎます。1行だけ書き換えた再掲載に、全文の指摘をもう一度出さないためです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 物件データ | 物件の種別、所在地、最寄駅と徒歩分数、道路距離、構造・階数、面積、築年月、入居可能時期、賃料、管理費、礼金、敷金と償却、保険、保証会社、定期借家の別、契約期間 | 物件管理のシステム |
| 掲載文 | キャッチコピー、おすすめのコメント、備考 | 物件管理のシステム |
| チラシの文面 | チラシに載せる見出しとコメント | チラシの作成ソフトの書き出し |
| 用語の一覧 | 使い方の決まった用語と区分、使ってよい条件、置き換えの例 | SharePoint(広告責任者が管理) |
| 表記の決まり | 「徒歩○分」の書き方、設備名の書き方、記号の使い方 | SharePoint |
| 過去の指摘 | 広告責任者が判断した事例(通した表現と直した表現) | SharePoint |
質を決めるのは、用語の一覧の「使ってよい条件」の列です。 公正取引協議会の解説では、「特選」「厳選」は実際に選別の基準を設けている場合、「最高」「格安」は根拠となる事実を併せて表示する場合に限って使えるとされています。条件を列に書いておくと、AIは「この文には根拠の事実が併せて書かれていない」と指摘できます。 条件の無い一覧だと、用語を見つけた時点で一律に指摘するだけになります。
物件データは、AIの判断の材料であると同時に、照合の相手です。 文面に書かれた徒歩分数や築年数を、物件データの値と比べます。物件データの欄が空なら照合できないので、空の欄はそれ自体を指摘にします。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 方法 |
|---|---|---|
| 物件データと掲載文 | 物件管理のシステム | 物件番号で読み出す(連携の口が無ければ、掲載申請の一覧の書き出し) |
| チラシの文面 | チラシの作成ソフト | 文面を文字として書き出したファイル |
| 前回の申請の文面 | 判定の記録 | 物件番号で前回の版を引く |
| 用語の一覧と表記の決まり | SharePoint | 版の番号付きで読み込み、関数の中に持つ |
チラシは画像ではなく、文面を文字で取り出します。 作成ソフトから文字として書き出せない場合は、チラシのもとにしたポータルの掲載文を使い、チラシで足した見出しだけを手で入れる運用にします。画像から文字を読み取る段を足すと、読み取りの誤りが指摘に混ざります。
用語の一覧には版の番号を付けます。 広告責任者が「この表現は通す」と判断を変えたとき、どの版で校正したかが分からないと、同じ表現への指摘が日によって違う理由が追えません。
AIへ渡す前に整形する
- 必要な表示事項の欄の判定 … 物件の種別に応じて、必要な欄が埋まっているかを見ます。中古の賃貸マンションや貸家なら、別表9の項目です
- インターネット広告の項目の判定 … ポータルの掲載では、情報公開日(又は直前の更新日)と次回の更新予定日が入っているかを見ます
- 徒歩分数の再計算 … 道路距離の欄があれば、80メートルにつき1分、1分未満の端数は1分として計算し、物件データの徒歩分数と比べます
- 築年月からの判定 … 築年月と入居の履歴から、「新築」と書ける物件かを判定します
- 文の分割 … キャッチコピー、コメント、備考、チラシの文面を、句点と改行で1文ずつに分けます
- 前回との差分 … 再掲載なら、前回の文面と比べて変わった文に印を付けます
- 物件の特定につながる情報の確認 … コメントに入居者や貸主の名前、部屋番号が書かれていないかを見て、あれば伏せたうえで指摘にします
1番目から4番目をAIにさせないのは、規約と物件データで答えが決まるからです。 表示規約の施行規則は、徒歩による所要時間を道路距離80メートルにつき1分間として算出し、1分未満の端数は1分とすると定めています。計算で決まるものは計算で決めます。
2番目は、ポータルの掲載に固有の項目です。 別表9では、情報公開日(又は直前の更新日)と次回の更新予定日はインターネット広告の項目になっています。チラシには求められない項目なので、媒体で切り替えます。
AIに処理させる
させるのは、文面を1文ずつ見て、指摘を3種類に分けて挙げ、直しの案を書くことです。
| 見るもの | させること | 判断の材料 |
|---|---|---|
| 使い方の決まった用語 | 用語の一覧の区分に当たる語を拾い、使ってよい条件が文の中で満たされているかを見る | 用語の一覧(区分と条件) |
| 物件データと照らす記載 | 徒歩分数、築年数、面積、設備、賃料・初期費用の記載を拾い、項目名と書かれた値をそのまま返す | 物件データの項目名 |
| 表記の乱れ | 表記の決まりに反する書き方を挙げる | 表記の決まり |
| 直しの案 | 指摘のある文について、用語の一覧の置き換えの例や物件データの値を使った案を書く | 用語の一覧、物件データ |
2行目は、AIに比べさせません。 「駅徒歩3分」という記載から、walk_minutes という項目名と 3 という値を返させるだけです。物件データの6分と比べるのは、後段の規則です。 AIが比べると、コメントに書かれた別の駅への分数を、最寄駅への分数として比べてしまいます。記載が最寄駅についてのものかが分からない場合は、station に書かれた駅名をそのまま返させます。
用語は、規約の区分に沿って一覧にします。 公正取引協議会の解説では、合理的な根拠が無ければ使えない用語として、完全無欠を意味する用語(完全、完ぺき、絶対、万全など)、競争事業者より優位であることを意味する用語(日本一、日本初、業界一、超、当社だけ、抜群など)、一定の基準による選別を意味する用語(特選、厳選など)、最上級を意味する用語(最高、最高級、極、特級など)、著しく安いという印象を与える用語(格安、破格、激安など)、著しく人気が高い印象を与える用語(完売など)が挙げられています。例示以外の似た用語も同じ扱いとされているので、AIには「似た語も区分に当てる」ように指示します。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 表示が規約に違反するかの結論 | 広告責任者と、迷うものは公正取引協議会への相談で決める |
| 数値の比較 | 規則で行う。別の駅への分数を取り違える |
| 物件データの値の書き換え | データを直すのは店舗の担当者 |
| 用語の一覧に無い宣伝文句の創作 | 直しの案は、置き換えの例と物件データの値から作る |
| 原文に無い引用 | 引用は原文の文字をそのまま写す。照合で確かめる |
4行目がいちばん起きやすい失敗です。 「もっと魅力的に」と頼まなくても、指摘のある文を直すときにAIは新しい宣伝文句を足します。足された文句が、別の使い方の決まった用語を含んでいることもあります。 直しの案は、指摘の箇所を取るか置き換えるだけにします。
指示内容を固定する
あなたは賃貸住宅の仲介会社の広告担当で、ポータルサイトの掲載文と募集チラシの
文面を、掲載の前に校正する担当です。渡された文を1文ずつ見て、指摘と直しの案を返してください。
【やること】
1. 用語の一覧の区分に当たる語を拾い、term_findings に挙げる。
一覧に無くても、同じ区分の意味を持つ似た語は挙げる。
その文の中に、一覧の「使ってよい条件」を満たす記載があるかを condition_met に書く。
2. 徒歩分数、築年数、面積、設備、賃料・初期費用について書かれた記載を拾い、
data_claims に、項目名(walk_minutes / building_age / area / equipment / fee)と、
書かれた値をそのまま返す。徒歩分数は、書かれた駅名も station に写す。
3. 表記の決まりに反する書き方を notation に挙げる。
4. 指摘のある文には、直しの案を rewrite に書く。
【厳守事項】
- 規約に違反するか、違反しないかを書かないでください。
「違反です」「問題ありません」という言葉を使わないでください。
- data_claims の値を、物件データと比べないでください。比べるのは後の工程です。
- 数値を計算し直したり、丸めたりしないでください。書かれた文字をそのまま返してください。
- quote は原文の文字を1字も変えずに写してください。要約や言い換えをしないでください。
- 直しの案に、新しい宣伝文句を足さないでください。
指摘の箇所を取るか、用語の一覧の置き換えの例か、物件データの値に置き換えるだけにしてください。
- 迷ったときは term_findings に挙げてください。挙げずに済ませないでください。
【媒体】{media}
【物件データ】{property_data}
【文面(1文ずつ、番号付き)】{sentences}
【用語の一覧(版:{term_version})】{term_list}
【表記の決まり】{notation_rules}
「比べないでください」を名指しで書かないと、AIは比べます。 物件データを一緒に渡しているので、「徒歩3分は物件データの6分と食い違います」と親切に書いてきます。その比較が別の駅についての記載だったとき、誤った指摘になります。 比べる工程を規則に置くために、AIには拾うところまでを頼みます。
「新しい宣伝文句を足さない」は、直しの案の質より、直しの案の安全のための指示です。 店舗の担当者は直しの案をそのまま貼ることが多く、足された文句は誰も校正しないまま掲載されます。
出力形式を固定する
次の形の JSON を、構造化出力で受け取ります。
{
"property_id": "",
"term_version": "",
"sentences": [
{
"sentence_no": 2,
"quote": "",
"term_findings": [
{ "term": "格安", "category": "low_price", "condition_met": false }
],
"data_claims": [
{ "item": "walk_minutes", "value": "3", "station": "" }
],
"notation": [ { "issue": "", "quote": "" } ],
"rewrite": ""
}
]
}
構造化出力を使う理由は、後段で規則を当てるためです。 data_claims が項目名と値で返るので、Functions が物件データの同じ項目と比べられます。公式の説明では、すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトには additionalProperties: false を設定する必要があるとされています。指摘の無い文も、空の配列で返させます。
判定は Functions が次の規則で決めます。
| 判定 | 条件 |
|---|---|
manager_review | 用語の一覧で「責任者判断」の区分に当たり condition_met が false。または過去の指摘に無い用語 |
fix_requested | 必要な表示事項の欄の空き、data_claims と物件データの食い違い、「新築」と書けない物件、notation のどれかがある |
pass | どれも無い |
| 共通 | quote が原文に見つからない文は fix_requested 以上にして人へ |
data_claims の照合は、駅名で分けます。 station が物件データの最寄駅と同じなら徒歩分数を比べ、違う駅なら「最寄駅以外の駅の分数」として人に見せます。別の駅への徒歩分数も、物件データの道路距離が無ければ確かめようがないので、指摘として残します。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 物件管理のシステム | 状態の通知、または掲載申請の一覧の書き出し | 物件データと掲載文を読む。判定を差し戻しのコメント欄に表示する |
| チラシの作成ソフト | 文面の書き出し | チラシの見出しとコメント |
| Azure OpenAI | API 呼び出し(構造化出力) | 1文ごとの指摘と直しの案 |
| SharePoint | 読み込みと書き込み | 用語の一覧・表記の決まりを読む。判定と確認の結果を書く |
| Teams | 通知 | manager_review を広告責任者へ知らせる |
物件データと掲載文そのものには書き込みません。 直しの案を自動で掲載文に入れる作りもできますが、店舗の担当者が知らないうちに文面が変わることになります。直すのは担当者で、この構成は差し戻しのコメントに指摘と案を出すだけです。
人が確認する
本部の広告担当が全件の承認を行います。 開き方を判定で変えます。
manager_reviewを先に見る … 用語と引用、その文に書かれた根拠の事実を読み、広告責任者へ回すかを決めますfix_requestedの指摘を確かめる … 物件データとの食い違いは、物件データの側が誤っていないかも見ます- 差し戻すかを決める … 採った指摘だけを差し戻しのコメントに残し、店舗へ返します
passを一覧で流し見る … 物件名、キャッチコピー、賃料を並べて見て、掲載を承認します- 指摘を退けたら理由を残す … 「根拠の資料あり」「責任者が承認済み」など、選択肢から選びます
2番目で物件データの側を疑うのは、食い違いの半分はデータの入れ間違いだからです。 コメントの徒歩3分が正しく、物件データの6分が別の出入口から測った値ということもあります。どちらを直すかは店舗の担当者が現地を知っています。
目標は、1,500件をならして1件2分です。 指摘のある掲載が3割前後という想定で、それを大きく超える月は、用語の一覧の条件が足りないか、特定の店舗の書き方が崩れています。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 物件データの徒歩分数・道路距離が空 | 照合できない。空の欄そのものを指摘にする |
| 物件の種別が別表のどれか決まらない | 必要な表示事項の判定をせず、広告担当へ |
| コメントに入居者・貸主の名前や部屋番号 | 伏せたうえで、削除の依頼として指摘する |
| 用語の一覧に無い用語が挙がった | manager_review。採否を一覧に足す |
quote が原文に無い | 「引用不一致」の印を付けて人へ |
| チラシの文面が文字で取れない | ポータルの掲載文で代え、チラシで足した見出しは手で入れる |
| Azure OpenAI が応答しない・出力を拒否する | 規則の判定だけを出し、文面は目視の手順に戻す |
| 用語の一覧の版が更新された | 更新の日時より後の申請から新しい版で校正。前の判定は書き換えない |
7行目は設計の最初に入れておきます。 AIが応答しなくても、必要な表示事項の欄と徒歩分数の判定は規則で出せます。掲載が止まらないように、規則の判定だけでも返せる形にしておきます。
記録を残す
- 校正にかけた申請の版(物件番号、申請の日時、媒体)
- 物件データの値と、規則による判定の結果
- Azure OpenAI に渡した文面と、返った JSON の全文
- 使った用語の一覧と表記の決まりの版の番号
- 判定、広告担当の採否、退けた理由、広告責任者の判断
- 店舗が直したあとの再申請の判定
退けた理由の記録は、用語の一覧を直す材料になります。 同じ用語で「根拠の資料あり」が続くなら、その根拠の示し方を一覧の条件に書き足す時期です。 公正取引協議会への相談の結果も、用語の一覧の条件に反映します。
店舗ごとの指摘の件数も残します。 特定の店舗で同じ指摘が続くなら、校正より先に、書き方の研修が効きます。
04実装レベルの3段階
最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ貼るので、月1,500件には使えません。用語の一覧の出来を確かめる段階です。 半自動化で、必要な欄の空きを見る作業が無くなります。 規則で全件を判定するので、③の1分がほぼ消えます。本格構成で、指摘を確かめる作業だけが残ります。 差が大きいのは、記載と物件データの照合が、画面の上下を行き来する手作業だからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、物件データの道路距離や築年月が空の物件がどれくらいあるかが分かります。そこを埋めてから本格構成に進むほうが、照合できない指摘が減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 1,500件 × 2分 ÷ 60 = 50 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 賃貸住宅の仲介・管理を行い、物件管理のシステムから複数のポータルサイトへ月に千件を超える募集の掲載文を出している不動産会社。キャッチコピーやおすすめのコメントを各店舗の担当者が書き、本部の広告担当が少人数で掲載前に目で見ている場合。コメントに書いた徒歩分数や「新築」が物件データと合わない、礼金や保証会社の欄が空のまま出る、といった指摘を受けたことがある場合。
- 掲載が月に数十件で、担当者の目視で足りる場合。物件データが整っておらず、徒歩分数や築年月の欄が空の物件が多い場合(食い違いを見る相手がありません)。売買の物件広告が中心の場合は、確かめる表示事項が違います。なお、表示が規約に適合するかの最終判断はこの構成では代替できず、社内の広告責任者の確認と、迷う表示についての不動産公正取引協議会への相談が前提になります。
07最小構成で試す方法
- 先月の掲載文から30件を選ぶ(うち数件は、広告担当が差し戻したものを入れる)
- 用語の一覧(区分と使ってよい条件)と表記の決まりを1つのテキストにまとめる
- 社内で使える生成AIの画面に、一覧と1件分の物件データ・掲載文を貼る
- 「文を1つずつ見て、使い方の決まった用語、徒歩分数・築年数・設備などの記載、表記の乱れを表で挙げてください。違反かどうかは書かないでください。記載の値は書かれたまま写してください」と指示する
- 出てきた指摘を、当時の差し戻しのコメントと突き合わせる
30件は必ずやってください。 指摘の当たり外れより先に、用語の一覧の「使ってよい条件」が足りているかが分かります。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の差し戻しと同じ指摘が出た | Functions と構造化出力に進む |
| 「違反です」と書いてきた | 指示で直る。禁じる言葉を足す |
| 物件データと勝手に比べて誤った指摘を出した | 比べないと指示し、比較を規則に移す設計が要る |
3行目は、この段階で出ることが多い失敗です。 画面に物件データと文面を一緒に貼ると、AIは比べたがります。その比較を規則に移す理由が、ここで分かります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 「違反です」と結論を書いてくる | 結論の言葉を名指しで禁じ、区分と条件だけを返させる |
| AIが物件データと比べて誤った指摘を出す | 比べないと指示し、照合は規則で行う |
| 別の駅への徒歩分数を最寄駅と比べる | station を返させ、駅名が違えば別扱いにする |
| 直しの案に新しい宣伝文句が入る | 足さないと指示し、置き換えの例と物件データの値に限る |
| 用語を見つけるたびに一律に指摘する | 用語の一覧に「使ってよい条件」の列を足す |
| 原文に無い文を引用する | quote を原文と照合する |
| 物件データの空の欄で照合できない | 空の欄そのものを指摘にする |
| ポータルとチラシで必要な項目が違う | 媒体ごとに必要な表示事項を切り替える |
| 再掲載のたびに同じ指摘が出る | 変わった文だけを校正し、前回の採否を引き継ぐ |
| 用語の一覧の版が混ざる | 版の番号をログに残す |
| 「新築」の判定で入居の履歴が分からない | 物件データに「入居の履歴あり」の欄を足す。空なら人へ |
| 指摘が多すぎて読まれない | 区分ごとの採用率を見て、ほとんど退けられる条件を見直す |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、AIが文面と物件データを一緒に見て、比べようとして起きます。拾うのはAI、比べるのは規則。 この線を指示と処理の両方で守ります。
下の2行は、運用を始めて1か月ほどで効いてきます。 「新築」は建築後1年未満で、まだ人が住んだことのないものに限られます。築年月だけでは判定できず、入居の履歴を物件データに持たせる必要があります。 指摘が多すぎる問題は、校正の仕組みそのものを使われなくします。退けられた指摘の割合を区分ごとに見て、条件を直します。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 物件の所在地、賃料と初期費用、建物の情報、掲載文、そして会社の用語の一覧と過去の判断の事例です。入居者の個人情報は原則として含みませんが、コメントに部屋番号や貸主の名前が書かれることがあります。
- AIに渡す前に、人を特定できる記載を伏せる … 貸主や入居者の名前、部屋番号、電話番号がコメントにあれば、伏せてから渡し、削除の依頼として指摘します
- デプロイの種類を確かめる … Azure OpenAI のデプロイの種類によって、処理の場所が指定の地域の外に広がる場合があります。社内の規程に合わせて選びます
- この構成は規約への適合の判断を代替しません … 表示が規約に適合するかは、広告責任者が判断し、迷うものは公正取引協議会に相談します。AIが出すのは、用語の区分と条件、記載と物件データの食い違いまでです
- 直しの案を自動で掲載文に入れない … 置き換えの案でも、物件の事情で合わないことがあります。採るかは広告担当と店舗の担当者が決めます
- 掲載の承認を自動にしない …
passは指摘が見つからなかったというだけです。承認は人が行います - おとり広告の防止は別の仕組みで行う … 規約第21条は、取引できない物件や取引する意思の無い物件の表示を禁じています。成約した物件の掲載を下ろすのは、物件管理のシステムの募集の状態で管理し、この校正の対象にしません
誤りが起きた場合のリスクは、使い方の決まった用語や食い違いを見落として掲載することと、AIの書いた文句が校正されないまま掲載されることの2つです。 前者は「迷ったら挙げる」と規則の照合で、後者は直しの案を置き換えに限ることで防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:用語の一覧に条件の列を足す
使い方の決まった用語を、公正取引協議会の解説の区分に沿って並べ、区分ごとに「使ってよい条件」と「置き換えの例」を書きます。広告責任者と一緒に、過去に通した表現と直した表現を1年分見直します。
2週目:30件で試す
先月の掲載文から30件を選び、社内で使える生成AIの画面で試します。当時の差し戻しと突き合わせ、「違反です」と書いてこないか、物件データと勝手に比べていないかを最優先で見ます。
3週目:必要な欄と徒歩分数の規則を作る
物件の種別ごとに必要な表示事項の欄を決め、ポータルとチラシで切り替えます。道路距離と築年月が空の物件の数を数え、店舗に埋めてもらいます。
4週目:掲載申請から規則の判定までをつなぐ
Functions で掲載申請を読み、必要な欄と徒歩分数の判定を出すところまで作ります。この時点では Azure OpenAI を呼ばず、規則の判定だけを広告担当に見てもらいます。
2か月目: Azure OpenAI の構造化出力と、記載と物件データの照合を足し、判定を出します。広告担当が退けた指摘を毎週数えます。3か月目以降: 差し戻しのコメントへの表示と広告責任者への通知を足し、1件6分が何分になったかを実測します。退けた理由から用語の一覧を直す流れが回り始めた時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 表示規約第18条第2項の用語(完全無欠、競争事業者より優位、一定の基準による選別、最上級、著しく安い印象、著しく人気が高い印象)と例示、合理的な根拠や根拠となる事実の併記が要ること、例示以外の類似用語も同様に規制されること。「新築」が建築後1年未満で居住の用に供されたことがないものであること | 首都圏不動産公正取引協議会: 特定用語の使用基準 | 2026-10-13 |
| 規約第8条で物件の種別ごとに必要な表示事項を定めていること。施行規則で、徒歩による所要時間を道路距離80メートルにつき1分間とし、1分未満の端数は1分として算出すること。規約第21条がおとり広告(取引できない物件・取引の対象となり得ない物件・取引する意思がない物件の表示)を禁じていること。令和6年10月1日施行の変更までが反映されていること | 首都圏不動産公正取引協議会: 不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則 | 2026-10-13 |
| 別表9(中古賃貸マンション・貸家・中古賃貸アパート等)の必要な表示事項に、取引態様、交通の利便、面積、建築年月、賃料、礼金等、敷金・保証金等と償却、損害保険料等、家賃保証会社等との契約、管理費・共益費等、定期建物賃貸借の旨、契約期間があること。インターネット広告では入居可能時期と、情報公開日(又は直前の更新日)及び次回の更新予定日が項目になっていること | 不動産公正取引協議会連合会: 表示規約第8条に規定する必要な表示事項の一覧表(別表) | 2026-10-13 |
Chat Completions API と Responses API の両方で構造化出力が使えること。すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトに additionalProperties: false を設定する必要があること | Microsoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法 | 2026-10-13 |
表示が規約に適合するかは、社内の広告責任者が判断し、迷うものは不動産公正取引協議会に相談してください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。地域の公正取引協議会によって運用の解説が異なる場合があります。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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