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社内で決まったこと・起きたことの報告から、適時開示が要るかの一次判定と根拠の基準を示し、開示の担当が確かめる論点をまとめる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

各部門と子会社から届く「決まったこと・起きたこと」の報告を、適時開示が求められる会社情報の項目に当てはめ、軽微基準を直前の連結決算から計算して、開示が要る可能性を一次判定します。開示するかを決めるのは人です。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
IT・SaaS/商社/小売/製造
対象部門
法務/財務
対象業務
内容確認・チェック/分類・仕分け
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/対応スピード向上/属人化解消
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
40h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
63%
年間削減
300h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 各部門・子会社が報告の申請を出し、開示グループに届く
  2. 担当が報告を読み、ガイドブックの目次から当たりそうな開示項目を探す
  3. 項目ごとの軽微基準を読み、直前の連結決算の数値の一覧から基準の金額を計算する
  4. 報告の金額の見込みと比べる。金額の見込みが無ければ、報告者に電話で聞く
  5. 決定の機関と時期を確かめ、いつ開示が要るかを考える
  6. 論点を1枚のメモにまとめ、開示グループの責任者に上げる
  7. 責任者が開示の要否を決め、必要なら東京証券取引所に相談する
導入後(After)
  1. 人各部門・子会社が報告の申請を出す(様式に「金額の見込みが分からない」の選択肢を足す)
  2. 自動申請の到着をきっかけに、報告の内容を取り出す
  3. 自動Claude API が、報告を開示項目の候補に当てはめ、金額の見込み・相手先・決定の機関・日付を取り出す
  4. 自動プログラムが、候補の項目ごとに、直前の連結決算の数値から軽微基準の金額を計算し、見込みと比べる
  5. 自動Claude API が、足りない情報と、開示の担当が確かめる論点を書き出し、報告者への質問の下書きを作る
  6. 自動プログラムが、一次判定の区分を規則で決め、確認票を作って開示グループに通知する
  7. 人担当が確認票を読み、項目の当てはめと計算を確かめ、報告者に質問を送る
  8. 人責任者が開示の要否を決め、必要なら東京証券取引所に相談する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 各部門・子会社が報告の申請を出し、開示グループに届く
  2. 担当が報告を読み、ガイドブックの目次から当たりそうな開示項目を探す
  3. 項目ごとの軽微基準を読み、直前の連結決算の数値の一覧から基準の金額を計算する
  4. 報告の金額の見込みと比べる。金額の見込みが無ければ、報告者に電話で聞く
  5. 決定の機関と時期を確かめ、いつ開示が要るかを考える
  6. 論点を1枚のメモにまとめ、開示グループの責任者に上げる
  7. 責任者が開示の要否を決め、必要なら東京証券取引所に相談する

(a)当たる項目を探すのに時間がかかる。 決定事実と発生事実だけで項目は数十あり、子会社の項目もあります。「業務上の提携」なのか「新たな事業の開始」なのか「子会社等の異動を伴う株式の取得」なのかは、報告の書き方からは分かりにくいことがあります。

(b)軽微基準の計算は、項目ごとに違う。 業務上の提携は連結売上高の増加見込額が直前連結会計年度の連結売上高の10%以上か、損害は連結純資産の3%以上か連結経常利益の30%以上か。同じ「売上が減る」報告でも、項目によって比べる数値が違います。 3番目の計算を毎回手で行い、どの数値を使ったかが記録に残っていません。

(c)足りない情報の聞き直しで時間を失う。 金額の見込みが空、決定の機関が不明、相手先が主要取引先かが分からない。4番目の電話で半日待つことがあり、その間に「直ちに」の時間が過ぎていきます。

(d)開示の時期を取り違える。 ガイドブックは、株主総会の決議事項についても、通常は株主総会の決議後ではなく、取締役会による付議の決議後直ちに適時開示を行う必要があるとしています。また、取締役会の決議という形式にとらわれず、業務執行を実質的に決定する機関が事実上決定した段階での開示が必要としています。「総会で決まってから」「取締役会の後で」と考えていると、時期が遅れます。

(e)担当者によって、判断の速さが違う。 経験の長い担当は報告を読んで当たりを付けられますが、異動してきた担当はガイドブックを最初から引きます。同じ報告でも、メモが上がるまでの時間が倍違います。

  1. 【人】 各部門・子会社が報告の申請を出す(様式に「金額の見込みが分からない」の選択肢を足す)
  2. 【自動】 申請の到着をきっかけに、報告の内容を取り出す
  3. 【自動】 Claude API が、報告を開示項目の候補に当てはめ、金額の見込み・相手先・決定の機関・日付を取り出す
  4. 【自動】 プログラムが、候補の項目ごとに、直前の連結決算の数値から軽微基準の金額を計算し、見込みと比べる
  5. 【自動】 Claude API が、足りない情報と、開示の担当が確かめる論点を書き出し、報告者への質問の下書きを作る
  6. 【自動】 プログラムが、一次判定の区分を規則で決め、確認票を作って開示グループに通知する
  7. 【人】 担当が確認票を読み、項目の当てはめと計算を確かめ、報告者に質問を送る
  8. 【人】 責任者が開示の要否を決め、必要なら東京証券取引所に相談する

7番目と8番目は全件で行います。 この構成は、判断を代わりに行うものではありません。判断の材料を、報告が届いてすぐにそろえるものです。

4番目をプログラムに置いているのは、意図してのことです。 基準の金額は、直前の連結決算の数値に率を掛けるだけで決まります。AIには、報告の文章を読まないと決まらない当てはめだけを任せます。

6番目の区分も規則で決めます。 金額の見込みが基準以上、または金額の見込みが無い(該当しないことが明らかでない)なら「開示が要る可能性が高い」。AIに「開示が要りますか」とは聞きません。

02今回想定するシステム構成

構成図
各部門・子会社の報告(社内の申請)
   │
   ▼【トリガー】申請の到着
Python(取り出し・呼び出し・計算)
   ▼
Claude API ── ① 開示項目の候補への当てはめと、事実の取り出し
   │   候補の項目番号/金額の見込み(何の金額か)/相手先/決定の機関/日付
   ▼
Python ── 軽微基準の計算と比較(直前の連結決算の数値から)
   ▼
Claude API ── ② 足りない情報と論点、報告者への質問の下書き
   ▼
Python ── 一次判定の区分(規則)、確認票の作成
   ▼
【開示の担当が確認 → 責任者が開示の要否を決める】
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(開示項目への当てはめ、事実の取り出し、論点と質問の下書き)OpenAI API、Gemini API
集計Python(軽微基準の計算と比較、区分の決定、確認票の作成)Google Apps Script
申請既存の社内の申請の仕組み報告の受付の一覧
財務の数値直前の連結決算の数値の一覧連結会計のシステムからの書き出し

開示の仕組み(東京証券取引所の適時開示情報伝達システム)にはつなぎません。 開示資料の作成と登録は、責任者が要否を決めてから人が行います。この構成の出力が、開示の操作に直結する経路を作らないためです。

開示項目の一覧と軽微基準は、東京証券取引所の公表資料から自社で作ります。 東京証券取引所は、適時開示が求められる会社情報の一覧を「2026年7月10日現在」として示し、実務の取扱いを会社情報適時開示ガイドブック(2026年7月版)にまとめています。項目ごとに番号を付け、基準の式(どの数値の何%か)を1行ずつ書いた一覧にします。 AIはその番号を返し、プログラムはその式で計算します。

当てはめの結果はJSONで受け取ります。 Claude API の構造化出力は、output_config.format にJSONスキーマを指定すると、返答がスキーマに沿ったJSONになる仕組みです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

報告の申請が開示グループに届いたことを起点にします。 申請の仕組みから通知を受けるか、Python のスクリプトを5分おきに動かして新しい申請を拾います。1日1回のまとめての処理にはしません。 発生事実は、その発生を認識した時点での開示が必要とされているからです。

夜間や休日に届いた報告も、届いた時点で処理します。 確認票ができたら、開示グループの当番に通知します。ガイドブックは、立会時間中であるか否かを問わず直ちに開示を行うよう求めています。

報告者が申請を差し替えたときは、最初から処理し直します。 金額の見込みが後から書き足されることが多く、差し替え前の確認票を見て判断すると、古い数値で決めることになります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
報告件名、内容、相手先、金額の見込み、決定の機関、決定・認識の日、添付資料社内の申請
開示項目の一覧項目番号、項目名、決定事実・発生事実・子会社の区分、軽微基準の式開示グループで作る一覧
財務の数値直前連結会計年度の連結売上高、連結経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、連結純資産、連結資本金、発行済株式の総数直前の連結決算の数値の一覧
取引先の区分直前事業年度の売上高・仕入高に占める割合が10%以上の取引先財務で作る一覧
過去の判断の記録似た報告と、そのときの判断と理由開示の判断の記録

質を決めるのは、2つ目の開示項目の一覧です。 ガイドブックの全文をAIに渡すと長く、どの項目に当てたかの番号もぶれます。項目ごとに、ガイドブックの説明と軽微基準を短く切り出した一覧を作ります。

4つ目の取引先の区分は、取引先との取引停止の判定に使います。 ガイドブックは、主要取引先を直前事業年度の売上高又は仕入高が売上高総額又は仕入高総額の10%以上である取引先としています。報告に相手先の名前があっても、主要取引先かどうかは一覧を引かないと分かりません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
報告の各欄申請の画面の項目当てはめと事実の取り出し
添付資料の本文契約書案・取締役会の資料などの添付金額や決定の機関の補い
財務の数値決算の確定のたびに更新する一覧軽微基準の計算
過去の判断の記録同じ相手先・同じ項目の過去の行論点の参考

財務の数値の一覧は、決算が確定したら必ず更新します。 「直前連結会計年度」が切り替わったのに古い数値で計算すると、基準の金額がずれます。一覧には、どの年度の数値かと更新日を必ず持たせ、確認票に印字します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 報告の正規化 … 申請の各欄をテキストにし、金額の欄の単位(千円・百万円・億円)をそろえます
  2. 添付資料のテキスト化 … PDFはテキストにします。取締役会の資料は、決議事項の部分だけを取り出します
  3. 子会社の判定 … 報告者の所属から、上場会社の件か子会社等の件かを決めます。項目の候補が変わるからです
  4. 相手先の照合 … 相手先の名前を取引先の区分の一覧と照らし、主要取引先かを付けます
  5. 候補の絞り込み … 決定事実か発生事実か、上場会社か子会社等かで、AIに渡す項目の一覧を絞ります
  6. 年度の割り付け … 「3年以内に開始する各連結会計年度のいずれか」で見る項目のために、決定や発生の日がどの連結会計年度に属するかを、自社の決算期から計算して付けます

1番目の単位をそろえる処理を軽く見ないでください。 報告者は「300」とだけ書くことがあります。百万円の300と千円の300では、軽微基準の判定が正反対になります。 単位が書かれていない金額は、取り出しはしても計算には使わず、質問に回します。

Step5

AIに処理させる

させることは2つです。1つ目は当てはめと事実の取り出し、2つ目は足りない情報と論点の書き出しです。

1つ目は、報告を読み、開示項目の候補を番号で選ばせ、計算に要る事実を取り出させます。

取り出すもの例判断できないときの扱い
候補の項目番号業務上の提携、取引先との取引停止、訴訟の提起複数を挙げる。迷ったら挙げる
金額の見込みと、その意味「売上高の増加見込額」「損害の見込額」「訴訟の目的の価額」意味が分からなければ unknown
金額の対象の期間3年以内のいずれかの年度、単年度書かれていなければ空
相手先会社名書かれていなければ空
決定の機関と日付取締役会、経営会議、社長決裁「方向を確認」などは unclear
発生を認識した日事故の日、訴状の送達の日書かれていなければ空

金額の「意味」を取り出させるのが要です。 報告の「年5億円の取引」は、売上高の増加見込額なのか、契約の総額なのか、相手先から受け取る対価なのか。軽微基準は項目ごとに比べる数値が違うので、金額の意味を取り違えると、正しい計算でも結論が誤ります。

2つ目は、1つ目の結果と計算の結果を受けて、開示の担当が確かめる論点と、報告者への質問の下書きを書かせます。

論点の型例
決定の時期「部長会で方向を確認」は、業務執行を実質的に決定する機関の決定に当たるか
金額の根拠売上高の増加見込額が、3年以内の各年度のいずれかで見積もられているか
バスケット条項軽微基準の範囲でも、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすか
複数の項目資本提携を伴う提携で、株式の取得と提携の両方の基準を見る必要があるか
インサイダー情報の管理開示の要否にかかわらず、社内の情報管理の対象に入れるか
させないこと理由
開示が要るかの結論責任者が決める。必要なら東京証券取引所に相談する
軽微基準の計算プログラムが式で計算する
金額の見込みの推定報告に無い金額を作らない。質問に回す
「開示不要」と書く該当しないことが明らかでない場合も開示が必要とされている
開示資料の文案要否が決まる前に文案を作ると、決まったものとして扱われる

3行目と4行目が、いちばん起きやすい失敗です。 金額の見込みが空の報告を渡すと、AIは文脈から「数千万円程度と思われる」と書き、それをもとに「軽微基準未満」と結論しがちです。 金額は作らせず、空なら空として計算から外し、区分を「情報が足りない」にします。

Step6

指示内容を固定する

1つ目(当てはめと事実の取り出し)の指示です。

あなたは上場会社の開示グループで、社内の報告を受けて
適時開示の要否の検討の準備をする担当です。

【すること】
1. 報告の内容が当たりうる開示項目を、項目の一覧から番号で選んでください。
   当たりうるものはすべて挙げてください。迷ったものも挙げてください。
   一覧にない番号は書かないでください。
2. 選んだ項目ごとに、軽微基準の計算に要る事実を報告から取り出してください。

【取り出す事実】
- amount: 報告に書かれた金額。数字と単位をそのまま写してください。
- amount_meaning: その金額が何の金額か。
  sales_increase / sales_decrease / loss / claim_value /
  acquisition_price / contract_total / unknown から選んでください。
- period: 金額がどの期間の見込みか。書かれていなければ空にしてください。
- counterparty: 相手先。
- decision_body: 決定した機関。「方向を確認」「検討を開始」は unclear にしてください。
- decided_or_recognized_on: 決定した日、または発生を認識した日。

【厳守事項】
- 報告に書かれていない金額を推定しないでください。空のままにしてください。
- 単位が書かれていない金額は、amount に数字だけを写し、
  missing_info に「単位」と書いてください。
- 開示が要るかどうかの結論は書かないでください。
- evidence には、根拠にした報告の文をそのまま写してください。

【報告】{report}
【開示項目の一覧(候補を絞ったもの)】{items}

2つ目(論点と質問)の指示です。

次の報告について、当てはめの結果と軽微基準の計算の結果を読み、
開示の担当が確かめるべき論点と、報告者への質問を書いてください。

【論点の書き方】
- 論点は1つずつ、「何を確かめるか」と「なぜ確かめるか」を書いてください。
- 軽微基準の範囲に収まっている項目についても、
  バスケット条項の検討が要るかを論点に入れてください。
- 決定の機関が unclear のときは、業務執行を実質的に決定する機関の
  決定に当たるかを論点に入れてください。

【質問の書き方】
- 報告者が答えられる具体的な質問にしてください。
  例:「売上高の増加見込額を、今期・来期・再来期の年度ごとに教えてください」
- 1つの質問で1つのことを聞いてください。

【してはいけないこと】
- 「開示は不要です」「開示が必要です」と書かないでください。
- 計算の結果を書き換えないでください。

【報告】{report}
【当てはめの結果】{mapping}
【軽微基準の計算の結果】{threshold_results}

1つ目の指示で amount_meaning を選択肢にしているのは、計算のプログラムが、金額の意味ごとに比べる基準を選ぶからです。 contract_total(契約の総額)は、売上高の増加見込額とは限りません。意味が contract_total や unknown なら、計算には使わず質問に回します。

2つ目の指示で、軽微基準の範囲の項目にもバスケット条項の論点を書かせているのは、ガイドブックがその検討を常に求めているからです。

Step7

出力形式を固定する

2つの呼び出しとプログラムの結果を、次の形のJSONにまとめて確認票にします。

{
  "report_id": "",
  "entity": "parent | subsidiary",
  "fact_type": "decision | occurrence",
  "candidates": [
    { "item_id": "", "amount": "", "unit": "", "amount_meaning": "sales_increase",
      "period": "", "counterparty": "", "evidence": "",
      "threshold": { "base": "consolidated_sales", "base_value": 0,
                     "rate": 0.1, "threshold_value": 0, "fiscal_year": "" },
      "comparison": "above | below | not_computable" }
  ],
  "decision_body": "", "decision_body_status": "clear | unclear",
  "missing_info": [],
  "issues": [ { "point": "", "why": "" } ],
  "questions_to_reporter": [],
  "screening": "likely_required | basket_review | insufficient_info | no_item_matched"
}

1つ目の理由は、計算の根拠が欄で残ることです。 threshold に、どの数値(base)の何%(rate)で、どの年度(fiscal_year)の数値を使ったかを残します。後から「なぜ開示しなかったか」を問われたとき、計算をそのまま示せます。

2つ目は、screening を規則で決められることです。

screening条件
likely_requiredいずれかの候補で comparison が above
insufficient_infoabove が無く、not_computable の候補がある(金額・単位・意味が不明)
basket_reviewすべての候補が below
no_item_matched候補が1つも無い。この場合もバスケット条項の論点を付ける

not_computable を below と同じに扱わないのが、この表の要です。 ガイドブックは、軽微基準に該当するかどうか明らかでない場合にも開示が義務付けられるとしています。計算できないものは、開示が要る側に寄せて人に回します。

構造化出力は、enum の値の大文字・小文字が保証されないとされているので、大文字・小文字を区別せずに比べます。拒否や max_tokens での打ち切りではスキーマに合わない出力になりうるので、stop_reason を見て、打ち切りなら呼び直し、それでも失敗なら確認票に「自動の判定なし」と出して人に回します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
社内の申請通知を受けるか、5分おきに読む新しい報告と添付を拾う
Claude APIAPI呼び出し(2回)当てはめと事実の取り出し、論点と質問
財務の数値・取引先の区分一覧を読む軽微基準の計算、主要取引先の判定
確認票開示グループだけが見られる場所に書き出す担当が開いて読む
社内チャット開示グループの当番への通知区分と件名だけを知らせる。報告の中身は通知に書かない

通知に報告の中身を書かないのは、未公表の重要な情報だからです。 通知は件名と区分だけにし、中身は確認票を開いて読みます。

Step9

人が確認する

開示の担当が全件を確かめます。 見る順番を決めておきます。

  1. likely_required を最初に見る … 計算の根拠(base、rate、fiscal_year)と金額の意味を確かめ、責任者に上げます
  2. insufficient_info を次に見る … 質問の下書きを直して報告者に送ります。答えを待つ間も、責任者には件名を知らせておきます
  3. basket_review と no_item_matched を見る … 当てはめの漏れがないかと、バスケット条項の論点を読みます
  4. 判断を記録する … 責任者の判断と理由、東京証券取引所に相談したかを残します

1番目と2番目は、届いた日のうちに見ます。 「直ちに」の要請に対して、この構成が縮めるのは準備の時間です。準備ができても人が開かなければ、時間は縮みません。 当番を決め、通知を受けたら確認票を開く運用にします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
金額の単位が書かれていない計算に使わず not_computable。質問に回す
金額の意味が分からないunknown として計算に使わず、質問に回す
財務の数値の一覧が古い年度と更新日を確かめ、古ければ確認票に警告を出す
1つの報告が複数の項目に当たる項目ごとに計算し、いずれかが above なら likely_required
子会社の報告で、上場会社の項目にも当たる両方の候補を挙げる
報告が差し替えられた最初から処理し直す。古い確認票に「差し替え済み」と印を付ける
応答が打ち切られた・失敗した「自動の判定なし」として人に回す。処理の失敗で報告を止めない
利益が少額の会社の特例に当たるガイドブックの特例を確かめるよう論点に入れる

最後の行は、計算の式だけでは足りない場合です。 ガイドブックは、直前連結会計年度の連結経常利益が連結売上高の2%に満たない場合などに、利益が少額の場合の開示基準の特例があるとしています。特例に当たるかをプログラムで判定し、当たるなら式を切り替えるか、人に回します。

Step11

記録を残す

  • 報告の版と、届いた日時
  • 使った開示項目の一覧の版と、財務の数値の年度・更新日
  • 2回の呼び出しの指示と応答の全文、使ったモデル
  • 軽微基準の計算の式と結果
  • 責任者の判断と理由、東京証券取引所への相談の有無と日時
  • 開示した場合は開示の日時、しなかった場合はその理由

5つ目と6つ目は、開示しなかった判断の記録として最も大事です。 後から開示の遅れを問われたときに、いつ報告が届き、いつ何を見て、なぜそう判断したかを示します。記録は開示グループだけが見られる場所に置き、閲覧の記録も残します。

04実装レベルの3段階

最小構成:一覧と報告を手でAIの画面に貼り、当てはめさせる / 項目の候補の洗い出し
半自動化:上記+申請から自動で取り出し、軽微基準を計算して確認票を作る / 当てはめと計算
本格構成:上記+論点と質問の下書き、規則による区分、当番への通知、判断の記録の集計 / 一次判定の全体と、判断の記録

本記事の想定は本格構成です。 1件40分が15分になるのは、項目を探す時間、計算の時間、質問を書く時間が自動になるからです。担当の確認と責任者の判断は残ります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で3か月の計算の結果を見ると、どの項目で not_computable が多いかが分かります。そこから報告の様式を直すと、聞き直しの件数が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
40 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  60件 × 40分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 60件 × 15分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
25h
削減率
63%
年間削減時間
300h
年間金額換算(時間単価4,500円)
135万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 子会社を多く持つ上場会社で、各部門・子会社から開示の担当へ「この件は開示が要るか」という報告や相談が毎月数十件届く場合。軽微基準の計算を担当者が毎回手で行っており、計算の根拠が残っていない場合。開示の担当が少人数で、担当者の経験によって判断の速さが違う場合。社内の報告の様式があり、金額の見込みや決定の機関を書かせる運用ができる場合。
向いていない
  1. 開示の要否の相談が月に数件で、担当者が東京証券取引所の会社情報適時開示ガイドブックで都度確かめられる場合。報告の様式がなく、口頭や電話で相談が来る運用を変えられない場合。なお、開示が要るかどうかの最終の判断と、開示の時期・内容の決定は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去1年の報告から30件を選ぶ(実際に開示したものを10件、開示しなかったが迷ったものを10件入れる)
  2. 開示項目の一覧の最初の版を作る。ガイドブックから、自社で起きやすい項目を20ほど選び、軽微基準の式を1行ずつ書く
  3. 手元のAIサービスに一覧と報告を貼り、第7章の1つ目の指示で当てはめさせる
  4. 取り出された金額で、軽微基準を手で計算する
  5. 当時の判断と突き合わせる
出てきた内容判断
当時と同じ項目が挙がった計算のプログラムと確認票に進む
当時開示した件で、項目が挙がらなかった一覧の項目の書き方が足りない。一覧を直す
空の金額を推定して埋めた指示で禁じる。計算をプログラムに置く理由が分かった
金額の意味を取り違えたamount_meaning の選択肢と報告の様式を見直す

2行目が1件でも出たら、そこを直してから先に進んでください。 開示した件を見落とす一次判定は、使えません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
空の金額を推定して「軽微」と結論する金額を作らせない。 空なら not_computable で人へ
金額の単位を取り違える単位が無い金額は計算に使わない
契約の総額を売上高の増加見込額として比べるamount_meaning で分け、意味が違えば計算に使わない
財務の数値が前の年度のまま年度と更新日を確認票に印字する
計算できないものを below と同じに扱う該当しないことが明らかでない場合も開示が必要とされている
「開示不要」と書かれる指示で禁じ、区分にも「不要」を作らない
バスケット条項の検討が抜けるすべての確認票に論点として付ける
子会社の報告で上場会社の項目を見落とす両方の候補を挙げさせる
通知に報告の中身が載る件名と区分だけにする
判断の記録が残らない責任者の判断と理由を確認票と同じ場所に残す
株主総会の決議事項を総会の後に開示すると考える取締役会による付議の決議後に開示が要ることを論点に入れる

上の5行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、計算できないものを「軽微」に寄せてしまうという同じ形の失敗です。分からないものは、開示が要る側に寄せて人に回すことを、指示・区分・確認の3か所で守ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公表前の提携・買収・訴訟・事故・取引停止の情報です。投資判断に影響する未公表の重要な情報そのものです。

  1. 閲覧できる人を限る … 確認票と記録は開示グループと法務だけが見られる場所に置き、閲覧の記録を残します。ガイドブックは、内部者取引規制について、実現に向けた作業の開始を決定した段階から重要事実に該当し得るものとして情報管理を行うことが求められるとしています
  2. 外部のサービスに渡す条件を確かめる … Claude API について、Anthropic は保存されたデータを明示の許可なくモデルの学習に使わないとし、会話の内容は既定では保存しない(一部のモデルを除く)としています。ゼロ・データ・リテンション(ZDR)の取り決めは営業窓口に申し込むものです。Files API はZDRの対象外とされているので、この構成では使わず、報告はリクエストの本文で渡します
  3. JSONスキーマに機密を書かない … 構造化出力のスキーマは、プロンプトとは別にキャッシュされるとされています。相手先の名前や案件名を enum の値に入れないでください
  4. 判断を代わりに行わない … 区分に「開示不要」を作りません。開示の要否は責任者が決め、必要なら東京証券取引所に相談します
  5. 開示の操作を自動にしない … 開示の仕組みにはつなぎません。開示資料の作成と登録は人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、開示が要るものを要らないと判断して開示が遅れることと、未公表の情報が漏れることの2つです。 前者は計算できないものを人に回すことで、後者は閲覧の範囲と通知の中身を絞ることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:開示項目の一覧を作る

ガイドブックから、自社で起きやすい項目を20ほど選び、項目番号・区分・軽微基準の式を1行ずつ書きます。比べる数値(連結売上高、連結純資産など)と率を、ガイドブックの文言どおりに写します。

2週目:30件で試す

過去の報告30件を、手元の利用が認められたAIサービスで当てはめさせます。当時開示した件の項目がすべて挙がるかを最優先で見ます。

3週目:報告の様式を直す

金額の欄に単位と「何の金額か」の選択肢を足し、「分からない」も選べるようにします。決定の機関の欄も選択肢にします。様式を直すだけで、聞き直しが減ります。

4週目:計算のプログラムを作る

財務の数値の一覧から基準の金額を計算し、取り出した金額と比べるプログラムを作ります。2週目に手で計算した結果と同じになるかを確かめます。

2か月目: 申請からの自動の取り出しと、確認票・当番への通知をつなぎます。3か月目以降: 論点と質問の下書きを足し、1件40分が何分になったかを実測します。報告の到着から判断の材料がそろうまでの時間が縮み、担当者による差が小さくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
適時開示が求められる会社情報(2026年7月10日現在)の一覧。上場会社の決定事実(業務上の提携又は業務上の提携の解消、固定資産の譲渡又は取得など)、発生事実(災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害、訴訟の提起又は判決等、取引先との取引停止など)、決算情報、子会社等の決定事実・発生事実の区分日本取引所グループ: 適時開示が求められる会社情報2026-10-08
会社情報適時開示ガイドブック(2026年7月版)が上場会社の実務マニュアルとして編さんされていること日本取引所グループ: 会社情報適時開示ガイドブック2026-10-08
軽微基準に該当するものを除き直ちに開示が義務付けられ、該当するかどうか明らかでない場合にも開示が義務付けられること。決定事実は業務執行を実質的に決定する機関の決定時、発生事実は発生を認識した時点での開示が必要で、立会時間中か否かを問わないこと。株主総会の決議事項も通常は取締役会による付議の決議後直ちに開示が必要なこと。バスケット条項への該当性を常に検討する必要があること。臨時報告書が不要でも適時開示が必要な場合があること。内部者取引規制では実現に向けた作業の開始の決定段階から情報管理が求められること。業務上の提携の基準(連結売上高の増加見込額が直前連結会計年度の連結売上高の10%以上など)。損害の基準(連結純資産の3%、連結経常利益の30%、親会社株主に帰属する当期純利益の30%)と利益が少額の場合の特例。訴訟の提起の基準(訴訟の目的の価額が連結純資産の15%以上など)。主要取引先の定義(売上高又は仕入高の10%以上)と取引停止の基準東京証券取引所: 会社情報適時開示ガイドブック(2026年7月版、PDF)2026-10-08
output_config.format にJSONスキーマを指定すると返答がスキーマに沿ったJSONになること。enum の大文字・小文字が保証されないこと。拒否や max_tokens での打ち切りではスキーマに合わない出力になりうることClaude Docs: Structured outputs2026-10-08
保存されたデータを明示の許可なくモデルの学習に使わないこと。会話の内容は既定では保存しない(一部のモデルは30日の保存が必要)こと。ZDRは営業窓口に申し込むこと。Files API がZDRの対象外であること。構造化出力ではJSONスキーマが別にキャッシュされることClaude Docs: API and data retention2026-10-08

開示が要るかどうかの最終の判断と、開示の時期・内容の決定は、上場会社の開示の責任者が、必要に応じて東京証券取引所に相談して行ってください。 本記事は日本取引所グループ・東京証券取引所と Anthropic の公開している情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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