広告主から月次レポートに届く「この数字はなぜ」の質問メールに、レポートの元の数値と運用の記録から回答の下書きを作る
広告主から月次レポートに届く「この数字はなぜ」という質問メールを受け、レポートの元の数値と運用の記録を引いて回答を下書きします。根拠の数値と原因の候補を分けて示し、運用担当が確かめて返信します。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude
- 連携・自動化
- Make/n8n/Power Automate/Zapier
- 対象業界
- EC/IT・SaaS/広告
- 対象部門
- マーケティング/営業
- 対象業務
- 問い合わせ対応/情報検索
- 主な課題
- 問い合わせが多い/属人化している/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 生成
- 主な効果
- 対応スピード向上/属人化解消/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- ノーコード連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 広告主から質問のメールが届き、窓口の運用担当が読む
- 質問がレポートのどの数値を指しているかを確かめる。「先月の件」「あの数字」のように曖昧なら、レポートを開いて見当を付ける
- 元の数値のシートを開き、該当するキャンペーンと指標の今月と前月の値を探す
- 指標を分解して、何が動いたのかを見る(CPAならクリック数、CPC、コンバージョン率のどれか)
- 運用の記録を開き、その期間の変更を探す。記録で足りなければ媒体の管理画面の変更履歴を見る
- 回答のメールを書く。数値を引用し、原因の候補を書き、今後の対応を添える
- 上長が見る必要のある回答なら、Slack で確認を取ってから送る
- 自動広告主のドメインから届いたメールでワークフローが動く
- 自動AIが、レポートの数値についての質問かどうかを判定し、質問なら対象の月・媒体・キャンペーン・指標を拾う
- 自動広告主の一覧から、元の数値のシートと運用の記録のシートを引く
- 自動元の数値から、対象のキャンペーンの今月と前月の行を取り、運用の記録からその期間の変更を取る
- 自動AIが、数値が示していることと、記録に基づく原因の候補を分けて、回答を下書きする
- 自動根拠が揃ったものは Gmail に返信の下書きを作り、揃わないものは運用担当が確かめる点を Slack に送る
- 人運用担当が数値と記録を確かめ、必要なら管理画面の変更履歴を見て、下書きを直して送る
各工程の詳しい説明を読む
- 広告主から質問のメールが届き、窓口の運用担当が読む
- 質問がレポートのどの数値を指しているかを確かめる。「先月の件」「あの数字」のように曖昧なら、レポートを開いて見当を付ける
- 元の数値のシートを開き、該当するキャンペーンと指標の今月と前月の値を探す
- 指標を分解して、何が動いたのかを見る(CPAならクリック数、CPC、コンバージョン率のどれか)
- 運用の記録を開き、その期間の変更を探す。記録で足りなければ媒体の管理画面の変更履歴を見る
- 回答のメールを書く。数値を引用し、原因の候補を書き、今後の対応を添える
- 上長が見る必要のある回答なら、Slack で確認を取ってから送る
(a)根拠を探すのに時間がかかる。 3番から5番で、レポート、元の数値、運用の記録、管理画面の4つを行き来します。質問の文章は1行でも、根拠を揃えるのに20分かかります。
(b)原因を知っているのが運用した本人だけ。 窓口と運用の担当が違う広告主では、窓口が運用の担当に聞きに行き、その返事を待ちます。運用の担当が休みの日は、回答が止まります。
(c)事実と推測が混ざる。 急いで書くと、「競合の影響と考えられます」のような、根拠の無い説明が入ります。翌月に広告主から「先月は競合と言っていたが」と聞き返されて、説明に困ることがあります。
(d)回答が遅れると、不信になる。 数値が悪いときほど、広告主は早い説明を求めます。回答に2日かかると、「把握していないのでは」と受け取られます。
- 【自動】 広告主のドメインから届いたメールでワークフローが動く
- 【自動】 AIが、レポートの数値についての質問かどうかを判定し、質問なら対象の月・媒体・キャンペーン・指標を拾う
- 【自動】 広告主の一覧から、元の数値のシートと運用の記録のシートを引く
- 【自動】 元の数値から、対象のキャンペーンの今月と前月の行を取り、運用の記録からその期間の変更を取る
- 【自動】 AIが、数値が示していることと、記録に基づく原因の候補を分けて、回答を下書きする
- 【自動】 根拠が揃ったものは Gmail に返信の下書きを作り、揃わないものは運用担当が確かめる点を Slack に送る
- 【人】 運用担当が数値と記録を確かめ、必要なら管理画面の変更履歴を見て、下書きを直して送る
6番目が、この設計の分かれ目です。 元の数値が取れない、運用の記録に該当する変更が無い、といった質問は、下書きを作らずに「確かめる点」だけを送ります。 根拠の無いまま文章だけが整った下書きを作ると、そのまま送られる危険が高まります。
7番目を省かないのは、回答が広告主への説明責任になるからです。 数値は元のシートと同じでも、原因の候補が本当に原因かを判断できるのは運用担当だけです。
窓口と運用の担当が違う広告主では、7番目の流れが変わります。 これまでは窓口が運用の担当に聞きに行き、返事を待っていました。導入後は、根拠と候補の揃った下書きを運用の担当が先に確かめ、窓口がそれを送ります。 聞きに行く往復が無くなり、運用の担当が休みの日でも、数値が示していることまでは窓口が答えられます。
02今回想定するシステム構成
広告主からの質問メール ▼【トリガー】New Email Matching Search(Gmail) Zapier ├──▶ AI by Zapier ── 質問かどうかの判定と、対象の拾い出し ├──▶ Filter ── 質問でなければ止める ├──▶ Google スプレッドシート ── 広告主の一覧(元の数値と運用の記録の場所) ├──▶ Google スプレッドシート ── 元の数値(今月・前月の行) ├──▶ Google スプレッドシート ── 運用の記録(対象の期間の変更) ▼ Paths(根拠あり/根拠が足りない/対象が特定できない) ├─ 根拠あり ──▶ AI by Zapier ── 回答の下書き │ └──▶ Gmail に返信の下書き(Create Draft Reply) └─ それ以外 ──▶ Slack で運用担当に「確かめる点」 ▼ 【人】運用担当が確かめて送る
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| ワークフロー | Zapier(Paths・Filter) | Make、n8n、Power Automate |
| 生成AI | AI by Zapier(質問の判定と拾い出し、回答の下書き) | Claude API、OpenAI API |
| 数値と記録 | Google スプレッドシート(元の数値、運用の記録、広告主の一覧) | BigQuery の集計結果 |
| メール | Gmail | Outlook |
| 通知 | Slack | Microsoft Teams |
元の数値のシートと運用の記録は、新しく足すものではありません。 新しく作るのは、広告主の一覧(広告主のドメイン、元の数値のシート、運用の記録のシート、窓口と運用の担当)と、元の数値のシートに足す前月比の列だけです。
起点は、Gmail の New Email Matching Search のトリガーです。 検索の文字列に合う新しいメールが届いたときに動きます。40社の広告主のドメインを検索の文字列に並べ、広告主からのメールだけで動かします。 広告主からのメールには日程の連絡や素材の送付もあるので、2番目でAIに質問かどうかを判定させ、Filter で止めます。Filter は、データが条件に合うときだけ Zap の先へ進める機能で、Professional 以上のプランで使えます。
下書きは Gmail の Create Draft Reply で作ります。 既存のメールへの返信の下書きを作るアクションで、広告主とのスレッドの中に回答が並びます。 送信の Send Email や Reply to Email は使いません。
AIのステップには AI by Zapier を使います。 返してほしい項目を名前と型で定義でき、Professional、Team、Enterprise のプランで使えます。モデルの階層は、判定と拾い出しは Standard(1倍のタスク)、回答の下書きは Advanced(3倍のタスク)を候補にします。 指標の分解と記録の読み合わせには一段強い推論が効くためで、Standard で足りるかを最初に試してから決めます。AI by Zapier は URL の中身を取りに行けないとされています。 レポートの共有リンクを渡しても読めないので、元の数値はシートの行として差し込みます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
広告主のドメインからメールが届いたことを起点にします。 質問は月次レポートの送付後の1週間に集中しますが、時期で絞らず、いつ届いても動かします。 月の途中に「先週から数字が落ちている」と聞かれることもあるためです。
検索の文字列は、広告主の一覧のドメインから作ります。広告主が増えたら、一覧と検索の文字列の両方に足します。 片方だけ足すと、その広告主の質問だけが下書きされません。月1回、一覧の社数と検索の文字列のドメインの数を比べます。
同じスレッドへの2通目以降でも動きます。 広告主が回答に追加の質問を返してきたときに、同じ流れで下書きを作るためです。ただし、1通目の回答を運用担当が送る前に2通目が届いたときは、下書きを作らずに Slack で知らせます。 同じスレッドに未送信の下書きが2つ並ぶのを避けるためです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 質問のメール | 本文、件名、差出人、スレッド | Gmail |
| 広告主の一覧 | ドメイン、広告主名、元の数値のシート、運用の記録のシート、窓口と運用の担当 | Google スプレッドシート |
| 元の数値 | 月、媒体、キャンペーン、表示回数、クリック数、費用、コンバージョン数、CPC、CPA、前月比 | 広告主ごとのシート |
| 運用の記録 | 日付、媒体、キャンペーン、変更の内容、変更の理由、担当 | 広告主ごとのシート |
| レポートの注記 | その月のレポートに書いたコメント | 広告主ごとのシート |
質を決めるのは、運用の記録です。 記録に「入札を調整」とだけ書かれていれば、下書きの原因の候補も「入札の調整」までしか書けません。記録の書き方を「何を、いくつから、いくつへ、なぜ」に揃えるのが、最初の準備作業です。 たとえば「目標CPAを3,000円から2,500円へ。月末の予算消化を抑えるため」です。
レポートの注記を入れるのは、すでに広告主に伝えた説明と食い違わないためです。 レポートで「新しい広告文のテストを始めた」と書いていれば、回答もそれと揃えます。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 広告主の行 | Lookup Spreadsheet Row(広告主の一覧をドメインで) | 元の数値と運用の記録の場所、担当 |
| 対象の数値の行 | Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)(元の数値をキャンペーンで) | 今月と前月の値、前月比 |
| 対象の期間の変更 | Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)(運用の記録をキャンペーンで) | 原因の候補の根拠 |
| レポートの注記 | Lookup Spreadsheet Row(注記を月で) | 伝え済みの説明 |
Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) は最大500行を返します。 元の数値は日別・キャンペーン別に持つと1か月で数百行になるので、月別・キャンペーン別に集計した「月次」のシートを別に持ち、そこを引きます。 日別の行をAIに渡すと、合計の計算をAIにさせることになります。
前月比は、シートの計算式で作っておきます。 CPAが前月から何%動いたか、クリック数、CPC、コンバージョン率のどれがどれだけ動いたかを、月次のシートの列として持たせます。 AIに計算させると、桁や割り算の向きを誤ることがあり、その誤りがそのまま広告主に届きます。
運用の記録は、対象のキャンペーンと、その月と前月の期間で取ります。 キャンペーンが特定できない質問では、広告主のすべての記録をその期間で取りますが、30行を超えたら下書きを作らず、運用担当に回します。 記録が多すぎると、関係の無い変更を原因の候補に挙げやすくなります。
AIへ渡す前に整形する
- 引用の除去 … 返信のメールでは、過去のやり取りが本文の下に引用されています。最新の1通の本文だけを切り出してAIに渡します
- 署名の除去 … 広告主の署名を切ります
- 広告主の特定 … 差出人のドメインで広告主の一覧を引きます。同じドメインで複数のブランドを持つ広告主は、件名か本文のブランド名で絞ります
- 対象の月の決定 … 「先月」「今月」のような表現は、メールの受信日から月に直します。この計算はワークフローで行い、AIにはさせません
- 指標名の揃え … 広告主が使う「獲得単価」「CV」を、シートの列名(CPA、コンバージョン数)に揃える対応表を持ちます
1番目を省くと、過去の質問にもう一度答えます。 引用された先月の質問が本文に残っていると、AIはそれも質問として拾います。
4番目をワークフローで行うのは、月の境目の誤りを防ぐためです。 10月1日に届いた「先月」は9月ですが、文脈によっては8月のレポートの話のこともあります。受信日から決めた月を下書きに明記し、運用担当が確かめられるようにします。
AIに処理させる
AIのステップは2つに分けます。 1つ目で質問かどうかを判定して対象を拾い、2つ目で回答を書きます。間に数値と記録の参照と Paths を挟み、根拠が揃ったものだけを2つ目に渡します。
1つ目のステップでさせること: 質問かどうか(レポートの数値についての質問/それ以外)、対象の媒体・キャンペーン・指標、質問の数(1通に複数の質問があれば分ける)、急ぎかどうか(「至急」「明日の会議で」などの表現)を拾います。
2つ目のステップでさせること:
| 書くこと | 根拠にするもの | 書き方 |
|---|---|---|
| 数値が示していること | 元の数値の行と前月比の列 | 値をそのまま引用する。言い切ってよい |
| 動きの分解 | 前月比の列(クリック数、CPC、コンバージョン率) | どの要素がどれだけ動いたかを書く |
| 原因の候補 | 運用の記録の行 | 「〇月〇日に〇〇を変更しており、その影響の可能性があります」と書く |
| 確かめる点 | 記録に無いこと | 運用担当向けに、確かめるべき点を並べる。下書きの本文には入れない |
| 今後の対応 | 書かない | 運用担当が決める |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 数値の計算 | 前月比はシートの計算式で作る。AIの計算の誤りが広告主に届く |
| 記録に無い原因の記述 | 競合、季節、媒体の仕様変更などは確かめようがない |
| 今後の見通しや改善の約束 | 広告主への約束になる。運用担当が決める |
| 責任の所在の記述 | 「弊社の設定の誤り」などの判断は人が行う |
1行目と2行目が、最もよく起きる失敗の元です。 AIは、CPAとクリック数と費用から自分で計算し直して、シートと違う値を書くことがあります。記録に原因が見当たらないと、もっともらしい説明を自分で作ります。 どちらも、指示で禁じたうえで、2つ目のステップに渡す材料をシートの行だけに絞ることで防ぎます。
指示内容を固定する
1つ目のステップ(質問の判定と拾い出し):
広告主から届いたメールの最新の1通を読み、次を判定してください。
- is_report_question:月次レポートの数値についての質問なら true。
日程の連絡、素材の送付、請求や契約の質問は false。
- 対象の媒体、キャンペーン、指標を、本文に書かれた言葉のまま拾う。
書かれていなければ空欄。推測で埋めない。
- 質問が複数あれば、質問ごとに分けて questions に並べる。
- 「至急」「明日の会議で」などの表現があれば urgent を true。
- 「先月」「今月」は月に直さず、書かれた言葉のまま period_text に入れる。
【メール本文】{latest_body}
【件名】{subject}
「先月」を月に直させないのは、前処理の4番目でワークフローが決めるためです。 AIの側で直すと、ワークフローの決めた月と食い違ったときにどちらが正しいか分からなくなります。
2つ目のステップ(回答の下書き):
あなたは広告会社の運用担当です。広告主から届いた月次レポートの
数値についての質問に、回答のメールを下書きしてください。
【厳守事項】
- 数値は【元の数値】【前月比】に書かれた値だけを引用してください。
自分で計算し直したり、四捨五入の桁を変えたりしないでください。
- 原因の候補は【運用の記録】に書かれた変更だけを根拠にしてください。
記録に無い原因(競合、季節、媒体の仕様変更、市場の動向など)は
書かないでください。
- 原因は「〜の可能性があります」と書き、言い切らないでください。
根拠にした記録の日付と内容を必ず添えてください。
- 記録に該当する変更が無いときは、原因の候補を書かず、
check_points に運用担当が確かめる点を書いてください。
- 今後の見通し、改善の約束、責任の所在は書かないでください。
- 【伝え済みの説明】と食い違う説明を書かないでください。
【構成】
1. 質問へのお礼と、対象の月・キャンペーン・指標の確認(1文)
2. 数値が示していること(元の数値の引用)
3. 動きの分解(どの要素がどれだけ動いたか)
4. 原因の候補(記録がある場合のみ)
5. 結び(今後の対応は運用担当が書き足す、と空けておく)
【質問】{question}
【対象の月】{target_month}
【元の数値】{metrics_rows}
【前月比】{mom_rows}
【運用の記録】{change_log_rows}
【伝え済みの説明】{report_note}
【指標名の対応】{metric_alias}
「記録に無い原因を書かない」に、例を並べないと効きません。 例が無いと、「競合他社の出稿の増加により」のような一文を自然に書きます。禁じる原因の種類を具体的に並べ、書けないときの行き先(check_points)を用意します。 行き先が無いと、空欄を埋めようとして作ります。
結びの「今後の対応」を空けておくのは、運用担当に必ず一文を書かせるためです。 全部埋まった下書きは、読まずに送られやすくなります。
出力形式を固定する
2つ目のステップは、次の項目で受け取ります。
{
"target": { "month": "", "media": "", "campaign": "", "metric": "" },
"facts": [
{ "statement": "", "source_row": "" }
],
"breakdown": [
{ "factor": "clicks | cpc | cvr | cost", "change": "", "source_row": "" }
],
"cause_candidates": [
{ "statement": "", "log_date": "", "log_entry": "" }
],
"check_points": [],
"draft_body": "",
"confidence": "high | low"
}
1つ目の理由は、事実と候補を項目で分けられることです。 facts は元の数値の行、cause_candidates は運用の記録の行を必ず指します。source_row や log_entry が空の要素は、ワークフローの側で消します。 根拠の無い文が下書きに残りません。
2つ目は、check_points を Slack にだけ送れることです。 運用担当が確かめる点は、広告主へのメールには入れず、Slack の通知に載せます。たとえば「9月12日以降の変更が記録に無い。管理画面の変更履歴を確認」です。Google 広告の変更履歴では、変更の内容と変更したユーザーを確認でき、対応する期間の表示回数やクリック数なども表示されます。 記録が足りないときに人が見に行く先として、通知に書いておきます。
3つ目は、Paths の判定に使えることです。
| 経路 | 条件 |
|---|---|
| 対象が特定できない | 1つ目のステップで campaign も metric も拾えない |
| 根拠が足りない | 元の数値の行が取れない、または cause_candidates が空で check_points がある |
| 根拠あり | 上のどちらにも当たらない |
「根拠が足りない」でも、facts の部分の下書きは Slack に載せます。 数値が示していることだけでも、運用担当が回答を書く時間は減ります。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| Gmail | New Email Matching Search のトリガー | 広告主からのメールを受ける |
| AI by Zapier | Zap のステップ | 質問の判定と拾い出し、回答の下書き |
| Google スプレッドシート | Lookup Spreadsheet Row / Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) | 広告主の一覧、元の数値、運用の記録、注記を引く |
| Paths by Zapier | 分岐 | 根拠の有無で下書きか通知かに分ける |
| Gmail | Create Draft Reply | 広告主のスレッドに返信の下書きを作る |
| Slack | メッセージの送信 | 担当への通知と check_points |
Paths は左から順に評価され、どれにも当たらないときの分岐を1つ置けます。 「対象が特定できない」を左端に置き、どれにも当たらない分岐は運用担当への通知にします。1つのグループに置ける分岐は10本までです。
シートへは書き込みません。 元の数値と運用の記録は読み取りだけで、回答を送ったかどうかの記録も、Gmail のスレッドに残る送信の履歴で足ります。 書き込みを足すと、元の数値のシートを誤って書き換える経路ができます。
Slack の通知の宛先は、広告主の一覧の窓口と運用の担当の両方です。 窓口と運用の担当が違う広告主では、運用の担当が原因の候補を確かめ、窓口が送ります。
人が確認する
広告主に届くものは、すべて運用担当が確かめてから送ります。
- 対象の月とキャンペーンが合っているかを見る … 下書きの最初の1文で確認します
- 引用した数値をシートと見比べる …
source_rowの行を開いて、値が同じかを見ます。ここだけは省きません - 原因の候補が本当に効いているかを判断する … 記録の変更の日付と、数値が動き始めた日がずれていないかを見ます
check_pointsを確かめる … 必要なら管理画面の変更履歴を見て、記録に無い変更が無いかを確かめます- 今後の対応を書き足して送る … 結びの空けた箇所に、運用担当の判断を書きます
2番目で値が違っていたら、送る前にその下書きを捨てて書き直します。 1か所でも違えば、他の数値も疑われます。
3番目は、AIにできない判断です。 記録に「9月20日に目標CPAを下げた」とあっても、CPAが上がり始めたのが9月5日なら、その変更は原因ではありません。日別の動きと記録の日付の照らし合わせは、運用担当が管理画面で確かめます。
目標は、120件をならして1件8分です。 根拠の揃った質問は数値の確認と一文の書き足しで済み、根拠が足りない質問は管理画面を見る時間がかかります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 質問ではないメール | 1つ目のステップで判定し、Filter で止める |
| 1通に複数の質問 | 質問ごとに拾い、下書きは1通にまとめる。質問が4つ以上なら運用担当に回す |
| 広告主の一覧に無いドメイン | 下書きを作らず Slack で知らせる。新しい担当者のアドレスのことが多い |
| 対象の月の元の数値がまだ無い | 月の途中の質問。下書きを作らず運用担当に回す |
| 運用の記録が30行を超える | 下書きを作らず、facts だけを Slack に載せる |
| 未送信の下書きがあるスレッドに2通目 | 下書きを作らず Slack で知らせる |
| 請求や契約についての質問 | 1つ目のステップで「それ以外」とし、営業の担当に回す |
| AI by Zapier のステップが失敗した | Slack に失敗を知らせ、運用担当が通常どおり回答する |
上から3行目は、思ったより起きます。 広告主の担当者が替わったときや、別の部署から質問が届いたときで、広告主の一覧にドメインではなく個人のアドレスで登録していると漏れます。 一覧はドメインで持ちます。
記録を残す
- 質問のメールと、そのスレッド(Gmail に残る)
- 1つ目のステップで拾った対象と、判定の結果
- 2つ目のステップの出力の全体(
facts、cause_candidates、check_points、draft_body) - 運用担当が実際に送った文面
- 運用担当が原因の候補を採用したか、外したか
- 広告主ごとの質問の数と、質問された指標
5つ目は、運用の記録の質を見る材料になります。 原因の候補が外され続ける広告主は、記録の書き方が粗いか、記録に残っていない変更があるかのどちらかです。
最後の行は、レポートの改善に使えます。 毎月同じ指標について質問が来る広告主には、レポートの側にその指標の分解を最初から載せておけば、質問そのものが減ります。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 根拠の収集と下書きを自動にし、原因の判断と送信は運用担当が行います。 最小構成は、確かめるための段階です。 質問ごとに数値と記録を書き出すので、月120件には使えません。半自動化で、書き出しの手間が無くなります。 本格構成で変更履歴を取り込むには、媒体ごとのAPIの利用申請と個別の実装が要ります。 この部分は利用環境に応じた個別実装になります。半自動化で check_points に「記録に無い」が多く出る広告主から、取り込みを検討します。
05工数削減シミュレーション
導入後 120件 × 8分 ÷ 60 = 16 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 数十社の広告主の運用型広告を受託し、毎月のレポートを送った後に「この数字はなぜ下がったのか」という質問がメールで月に数十〜百件以上届く広告会社。レポートの元の数値を Google スプレッドシートに広告主ごとに集めており、入札・予算・広告文などの変更を運用の記録として残している場合。質問への回答に、運用担当が毎回レポートと管理画面を行き来している場合。
- 広告主が数社で、質問が月に数件の場合。レポートを媒体の管理画面から都度出しており、元の数値を一か所に集めていない場合。運用の変更を記録に残しておらず、原因を担当者の記憶でしか辿れない場合。なお、数値が動いた本当の原因の特定と、広告主への約束になる見通しの判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月届いた質問のメールから15件を選ぶ(原因が記録で分かったもの、分からなかったものを両方入れる)
- 質問ごとに、元の数値の月次の行と前月比、その期間の運用の記録を書き出す
- 手元のAIサービスの画面に、質問と、書き出した数値と記録を貼り付ける
- 「この質問に回答を下書きしてください。数値は貼り付けた値だけを引用し、計算し直さないでください。原因の候補は運用の記録にある変更だけを根拠にし、記録に無い原因は書かないでください」と指示する
- 出てきた下書きを、実際に送った回答と並べて読む
15件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「記録に無い原因を作らないか」と「数値を計算し直さないか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 数値の引用と原因の候補が、実際の回答と同じ方向 | Zapier での組み立てに進む |
| 記録に無い原因を書いてしまう | 指示に禁じる原因の種類を並べる。構成は有効 |
| 記録が粗くて原因の候補が書けない | 運用の記録の書き方を先に揃える。 AIの問題ではない |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、原因の説明が担当の記憶に頼っていたことが分かったということです。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 記録に無い原因を書く | 禁じる原因の種類を並べ、行き先として check_points を用意する |
| 数値を計算し直してシートと違う値を書く | 前月比をシートの計算式で作り、計算を禁じる |
| 根拠の無い文が下書きに残る | source_row と log_entry が空の要素をワークフローで消す |
| 過去の質問にもう一度答える | 引用を切り、最新の1通だけを渡す |
| 「先月」の月を取り違える | 受信日から月を決め、下書きに明記する |
| 日別の行を渡して合計を計算させる | 月次の集計シートを引く |
| 運用の記録が粗くて候補が出ない | 「何を、いくつから、いくつへ、なぜ」に揃える |
| 原因の候補と数値の動き始めの日がずれる | 人が日別の動きと記録の日付を照らす |
| 広告主の新しい担当者のメールで動かない | 広告主の一覧をドメインで持つ |
| レポートで伝えた説明と食い違う | レポートの注記を入力に入れる |
| 下書きがそのまま送られる | 結びの今後の対応を空けておく |
| 今後の見通しを約束してしまう | 見通しと約束を書かせない |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、根拠の無い文が、もっともらしい形で下書きに入るという同じ形をしています。指示で禁じるだけでなく、根拠の項目が空の文を機械的に消すところまで作ります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 広告主の名前、広告の費用とコンバージョンの数値、運用の変更の記録、広告主とのメールです。個人の情報は、広告主の担当者の名前とメールアドレスが中心です。
- AIに渡す範囲を、質問の対象までに限る … 渡すのは対象のキャンペーンの月次の行と、その期間の記録だけです。広告主のすべての数値や、他の広告主の数値は渡しません
- 広告主ごとにシートを分ける … 一覧から引くシートを広告主ごとにし、別の広告主の数値が下書きに混ざる経路を作りません
- 送信をワークフローに持たせない … Gmail のアクションは返信の下書きの作成だけにします
- この構成は原因の特定を代替しない … 下書きに出るのは記録に基づく候補で、本当の原因かどうかは運用担当が判断します
- 広告主との契約の守秘の範囲を確かめる … 広告主の数値を外部のAIのサービスで扱ってよいかを、契約の守秘の条項で確かめておきます
- Zapier の接続の権限を絞る … Gmail と Google スプレッドシートの接続は、運用部の共有のアカウントで行い、個人のアカウントの全メールや全シートに届く接続にしないようにします
誤りが起きた場合のリスクは、誤った数値を広告主に伝えることと、根拠の無い原因を説明として伝えることの2つです。 前者は計算を禁じてシートの値だけを引用させ、人が見比べることで防ぎ、後者は根拠の無い文を機械的に消すことで防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:運用の記録の書き方を揃える
運用担当6名で、記録の書き方を「何を、いくつから、いくつへ、なぜ」に揃えます。過去の記録を直す必要はありません。今月の変更から揃えます。 あわせて、広告主ごとに月次の集計シートと前月比の列を作ります。
2週目:15件で試す
先月の質問から15件を選び、手元のAIサービスで回答を下書きさせます。記録に無い原因を書いていないか、数値を計算し直していないかを最優先で見ます。
3週目:広告主の一覧を作る
40社のドメイン、元の数値と運用の記録のシート、窓口と運用の担当を一覧にします。
4週目:受信から下書きまでをつなぐ
Zapier で、Gmail のトリガーから、判定、シートの参照、Paths、返信の下書き、Slack までを作ります。この時点では、広告主を5社に絞って動かします。
2か月目: 40社に広げ、原因の候補が採用された割合を広告主ごとに数えます。3か月目以降: 1件25分が何分になったかを実測し、毎月同じ指標の質問が来る広告主のレポートを見直します。質問の数そのものが減り始めた時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| AI by Zapier が Zap の中に置くAIのステップであること。出力の項目を名前・型で定義できること。モデルの階層が Standard(1倍)・Advanced(3倍)・Premium(5倍)のタスクであること。Professional・Team・Enterprise のプランで使えること。URLの中身を取りに行けないこと | Zapier Help: Use AI by Zapier to analyze and return data | 2026-10-07 |
| Gmail のトリガーに New Email Matching Search があること。アクションに Create Draft Reply(既存のメールへの返信の下書き)、Send Email、Reply to Email があること | Zapier: Gmail integrations | 2026-10-07 |
| Lookup Spreadsheet Row が1行を探すこと。Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) が最大500行を返すこと | Zapier Help: Find and update spreadsheet rows in Google Sheets | 2026-10-07 |
| Filter が条件に合うデータのときだけ Zap の先へ進めること。条件を AND/OR で組めること。Professional・Team・Enterprise のプランで使えること | Zapier Help: Add conditions to Zap workflows with filters | 2026-10-07 |
| Paths の1グループに最大10本の分岐を置けること。左から順に評価されること。どれにも当たらないときの分岐を1つ置けること | Zapier Help: Add branching logic to Zaps with Paths | 2026-10-07 |
| Google 広告の変更履歴で過去2年間の変更を一覧でき、変更したユーザーを確認できること。対応する期間の表示回数・クリック数・コンバージョン数・費用なども表示されること | Google 広告ヘルプ: 変更履歴について | 2026-10-07 |
広告主の数値を外部のAIのサービスで扱ってよいかは、広告主との契約で確かめてください。 本記事は Zapier と Google 広告の公開している仕様で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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