AIに読ませても原本は捨てられない|残す条件を先に決める

「読み取りの仕組みを入れて、届いた請求書はすべてデータになりました。それで、この紙の束はいつ捨てられるのでしょうか」「電子化できたのだから、原本はもう置いておかなくてよいと思っていました」——読み取りを入れた現場から、決まって同じ時期に出てくる問いです。制度の側には、すでに答えの一部が書かれています。国税庁が公表している電子帳簿保存法の一問一答は、読み取った後の紙を即時に廃棄してよいかという問いに対して、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、一定の確認を行った後であれば即時に廃棄して差し支えない、と答えています。ただしこれは「読み取ったから捨てられる」という意味ではありません。本当は、捨ててよいかどうかは読み取りの出来ではなく、その書類を残させている制度と相手の側で決まっている、という話です。この記事では、デジタル化だけでは原本を手放せない理由を3つに分け、仕分けの表と、読み取った後に必ずやることまでを、決める順番どおりに整理します。
カメ先生読み取りの仕組みを入れた会社でいちばん多い行き違いが、ここなんだ。データになった時点で紙は役目を終えた、と思ってしまう。でも紙を残させている理由は、読み取りの外側にあってね。
カメ子読み取りの精度が上がっていけば、いずれ捨てられるようになるのではないのですか。
カメ先生精度はたしかに条件のひとつだけれど、それだけでは足りないんだ。制度が求めているのは、いつ取り込んだかが分かること、後から書き換えられないこと、必要なときに探して出せること。この3つは、読み取りの正確さとは別の話なんだよ。
カメ子捨ててよい理由と、残さなければならない理由が、別々にあるということですね。分け方から順に見ていきます。
- 原本を手放してよいかは、読み取りの出来ではなく、法令・確認の必要・相手との関係の3つで決まる
- 年数を先に断言しない。書類ごとに、どの制度が期間を決めているかという根拠の所在を特定する
- 電子で残す側にも条件がある。入力の期限を過ぎた書類は、電子と紙の両方を残すことになる
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読み取りが終わった日に、紙の山はまだ減らせない
読み取りの仕組みが動きはじめると、現場では必ず同じ場面が起きます。データは増え、確認の画面も整い、探す時間も短くなった。ところが、キャビネットの中身は1枚も減っていない。誰かが「もう捨ててよいはずだ」と言い、誰かが「いや、まだ判断できない」と言い、そのまま半年が過ぎます。止まっているのは作業ではなく、捨ててよいと決める人がいないことです。
決裁が出ない理由をたどると、やる気や慎重さの問題ではないことが分かります。押す側が必要としているのは「この書類は何年残す」という数字ではなく、その数字がどこから来ているのかという説明です。担当者に聞けば「7年と聞いています」、経理に聞けば「10年ではないか」、法務に聞けば「契約書は別だと思う」と返ってくる。3人とも間違っていないことがありますが、3人とも根拠を示せないため、誰も押せません。
つまり、そろえるべきは年数ではなく、年数の出どころです。どの制度が、どの書類について、いつから何を求めているのか。ここが1行で書かれていれば、決裁は驚くほど早く出ます。逆にここが空白のままだと、「念のため残す」が既定の答えになり、読み取りを入れた目的だった置き場の縮小は永久に始まりません。この記事の組み立ては、年数を並べることではなく、根拠の所在を書類ごとに埋められる形にすることに置いています。
データにしたから捨てられる、が崩れる3つの理由
原本を手放せない理由は、まとめて語ると必ず堂々巡りになります。分けて数えると3つです。①法令で保存が求められているものは、読み取りをしたかどうかとは無関係に期間が決まっています。②読み取りの正しさを後から確かめる必要があるものは、間違うと取り返しがつかない項目を含んでいます。③相手との関係で原本が要るものは、自社の都合だけでは線を引けません。
この3つを混ぜたまま議論すると、結論はいつも「とりあえず全部残す」になります。理由が違えば打ち手が違うからです。①は制度と条文の所在を特定する仕事、②は突き合わせの設計をする仕事、③は相手や手続きの側に1回だけ確認しに行く仕事で、担当する人も、かかる時間も、終わり方も違います。混ぜて1つの会議にかけると、いちばん慎重な意見に全体が引きずられます。
- ①は調べれば決まる。担当は台帳を持つ人で、終わりは「根拠の所在が全行埋まったとき」
- ②は決めれば動く。担当は読み取り後の確認をする人で、終わりは「確認の記録が残る形になったとき」
- ③は聞けば分かる。担当は相手と接している人で、終わりは「提示を求められる手続きの有無が書かれたとき」
理由1:期間を決めているのは読み取りではなく制度の側
最初に押さえるべきは、保存の期間を決めているのが読み取りの仕組みではない、という一点です。国税庁のタックスアンサーは、法人の帳簿書類について、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要であるとしています。さらに、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度については10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)としています。この年数は、読み取ってデータにしたかどうかでは動きません。
電子帳簿保存法そのものが、そういう作りになっています。国税庁の一問一答は、読み取ったデータをどれくらいの期間保存する必要があるかという問いに対して、この法律は保存方法などについて所得税法・法人税法その他の国税に関する法律の特例を定めるものであるから、読み取ったデータについてもそれぞれの法律で定められた期間保存する必要がある、と答えています。変えられるのは残し方であって、残す長さではないということです。
ここを取り違えると、逆向きの事故が起きます。「電子にしたので短くできる」と考えて早く消してしまう事故と、「電子は永久に置いておけるから期限を決めなくてよい」と考えて何も決めない事故です。前者は取り返しがつかず、後者は数年後に置き場の費用と探す時間の両方を押し上げます。残し方を変えたときこそ、期間は制度の側から取り直す、と覚えておくのが安全です。
年数を自分で断言しない。根拠の所在を書類ごとに特定する
社内の資料に「請求書は7年」とだけ書いてしまうのは、親切なようでいて危険です。書類の名前が同じでも、その紙を残させている制度は1つとは限りません。取引の記録としての側面、消費税の仕入税額控除の要件としての側面、相手との契約で定めた保管の約束としての側面が、同じ1枚に重なっていることがあります。いちばん長い期間に合わせるのが正解とも限らず、どれが効いているのかを書かないかぎり、次の担当者は同じ調べ直しをします。
実務としてやることは単純です。書類の一覧に「根拠の所在」の列を足し、制度の名前、条文または公表資料の名前、確認した年月、確認した人の4つを書きます。年数の列は、その右に置きます。順番が逆になると、根拠の空いた年数だけが独り歩きします。年数は変わりますが、根拠の所在は変わりません。制度が改正されたときに見に行く場所が決まっているかどうかが、数年後の手間を分けます。
参照先の例を挙げます。国税関係の帳簿書類であれば、国税庁のタックスアンサーと、電子帳簿保存法の一問一答が出発点になります。個人の情報を含む同意や提供の記録であれば、個人情報保護委員会が公表しているガイドラインの第三者提供時の確認・記録義務編が出発点です。ここでは、第三者提供に係る記録の保存期間について、原則3年としたうえで、契約書などの書面に記録すべき事項が記載されていてその書面を記録に代える場合は、提供を行った日から1年とする扱いが示されています。同じ「記録」でも、作り方によって期間が変わるという一例です。
理由2:読み取りの正しさを、後から確かめる必要がある
2つ目の理由は、読み取った結果が正しいかどうかを、後になって確かめたくなる場面があることです。金額、日付、氏名、口座、数量。このあたりの項目は、1文字違っただけで支払いや請求の相手が変わり、取り返しがつきません。原本を手放した後に誤りが見つかると、照らし合わせるものが存在しない状態で、どちらが正しかったのかを議論することになります。
制度の側も、この点を廃棄の前提に組み込んでいます。一問一答が即時の廃棄を認めている条件は、最低限の同等確認を行った後であること、と明示されています。同等確認とは、読み取ったデータの記録事項と書面の記載事項とを比較し、同等であることを確認することを指し、折れ曲がりなどがないかを含むと説明されています。つまり「読み取った」ことと「確認した」ことは別の行為で、廃棄の条件になっているのは後者です。
社内の設計としては、これだけでは足りません。確認をどの順で、どの項目から見るのか。誰が見て、見たことをどこに残すのか。件数が多い日の扱いをどうするのか。ここを決めずに「確認してから捨てる」とだけ書くと、忙しい日に飛ばされ、飛ばしたことが記録に残りません。確認の設計は、廃棄の可否と同じ重さで扱うべき部分です。
理由3:相手や制度との関係で、原本でなければ通らない場面
3つ目は、自社の都合では決められない理由です。分かりやすい例が印紙税の扱いです。一問一答は、読み取って保存する書類であっても、印紙税の課税文書であれば収入印紙を貼付しなければならないとしたうえで、貼付した後に読み取って最低限の同等確認を行った後であれば、印紙が貼られた紙を即時に廃棄しても差し支えない、としています。ここまでは「捨ててよい」の話です。
ところが同じ説明の中に、続きがあります。印紙税の過誤納があった場合の還付の申請では、過誤納となった事実を証するために必要な文書の原本の提示が必要であり、読み取ったデータやそれを出力した書面にもとづいて還付を受けることはできない、と書かれています。同じ1枚の紙に、捨ててよい根拠と、捨てると取り返しがつかない場面が同居しているわけです。押印のある書面や、相手が原本の郵送を求める契約も、構図は同じです。
対処は、書類の種類ごとに1回だけ確認して台帳に書くことです。この書類について、原本の提示を求められる手続きが制度の側にあるか。相手の運用で原本を返せと言われることがあるか。この2つを書いて、どちらも確認できなかった書類は「まだ捨てない」に倒します。分からないものを捨てない、は消極的な判断ではなく、確認が終わっていないという記録です。
読み取っても電子だけにできない書類がある
そもそも読み取りで置き換えられない書類があります。一問一答によれば、スキャナ保存の対象は、取引の相手先から受け取った請求書などや自己が作成したそれらの写しなどの国税関係書類のうち、決算関係書類を除く全ての書類です。除かれる決算関係書類とは、具体的には棚卸表、貸借対照表および損益計算書などの計算・整理・決算に関して作成された書類を指すと説明されています。
帳簿の側も別扱いです。仕訳帳や総勘定元帳といった帳簿は、スキャナ保存の区分では対象外に置かれています。さらに、売上伝票などの伝票類は、所得税法施行規則および法人税法施行規則に規定する保存すべき書類には当たらないため、そもそも国税関係書類に該当せず、スキャナ保存の適用がない、とされています。読み取ってデータにしてもよいことと、そのデータで紙の保存に代えられることは別だ、ということです。
対象になる書類の中も一様ではありません。一問一答の区分表では、契約書や領収書のように資金や物の流れに直結・連動する書類のうち特に重要なもの、請求書・納品書・送り状のように直結・連動する書類、見積書・注文書・検収書のように直結も連動もしない書類、という3段に分けられています。前の2つがいわゆる重要書類、最後が一般書類にあたり、入力の期限や求められる条件が変わります。仕分けの表を作るときは、書類の名前ではなく、この区分のどこに入るかで行を立てると後が早くなります。
電子で残すときに満たすことになる条件
紙を手放す代わりに、電子の側では条件を満たし続けることになります。一問一答が要件表としてまとめているものを、実務の言葉に置き換えると3つの束になります。いつ取り込んだかが分かること(入力期間の制限と、タイムスタンプの付与。または訂正・削除の事実と内容を確認できるシステムでの保存)、後から書き換えられていないこと(版の管理と、重要書類については帳簿との相互関連性の保持)、必要なときに探して出せること(検索の機能と、見読可能な装置の備付け、整然として明瞭な出力)です。
読み取りそのものにも数字の条件があります。一定水準以上の解像度として1インチあたり200ドット以上、そして赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラーでの読み取りが挙げられています。一般書類の場合は、カラー画像ではなくグレースケールでの保存も可能とされています。検索の条件については、取引等の年月日、取引金額、取引先の3つが検索の項目として示されています。この3つが後から引けない置き方をしていると、他の条件を満たしても運用が詰まります。
この分野は改正が続いているため、いつの版で判断したかを残すことが欠かせません。令和3年度の税制改正により、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、税務署長の承認制度が廃止され、あわせて適正事務処理要件(相互けんせい、定期的な検査、再発防止策の社内規程の整備など)が廃止されました。定期的な検査を終えるまで紙を置いておく、という運用が不要になったのはここです。さらに令和5年度の税制改正により、令和6年1月1日以後に保存を行う書類から、解像度・階調・大きさに関する情報の保存の要件と、入力者等に関する情報の確認の要件が廃止され、帳簿との相互関連性を確保する対象が重要書類に限定されました。
入力の期限を過ぎると、紙も一緒に残すことになる
見落とされやすいのが、読み取るまでの日数に期限がある点です。一問一答は、受け取ってから速やかに入力する方式について、おおむね7営業日以内に入力していれば速やかに行っているものとして取り扱う、と説明しています。業務の処理に係る通常の期間を経過した後に速やかに行う方式については、最長では受け取りなどから2か月とおおむね7営業日以内に入力すればよい、と示されています。
この2か月は暦の上での2か月です。一問一答は、4月21日に受け取った書類であれば業務処理サイクルの最長2か月は6月20日にあたり、そのおおむね7営業日後までに入力すればよい、という例まで挙げています。自社が2週間の処理サイクルであれば2週間とおおむね7営業日以内、20日なら20日とおおむね7営業日以内、という考え方です。サイクルの長さは自社で決められますが、決めた長さが自社の期限になります。
期限を過ぎた場合の扱いも明記されています。誤って入力期間を経過した書類については、他の条件に沿って入力するとともに、その書類を紙のまま保存することになるとされています。廃棄の可否に関する説明でも、入力期間を経過した場合には、データと合わせて書面を保存する必要があるという注記が置かれています。ここから分かるのは、捨ててよいかどうかは、届いた日から読み取るまでの日数で先に決まっているということです。届いた日を記録していない運用では、期限内だったことを後から示せません。
捨ててよい・捨てられないの仕分け表
ここまでの3つの理由と制度の区分を、1枚の表にします。ポイントは、最初から年数の列を作らないことです。年数の列を置くと空欄が埋まらないまま止まりますが、手放せるかどうかの列だけなら、調べなくても分かる行から先に埋まります。埋まった行が増えるほど、残った行の性格がはっきりします。
| 書類の置かれ方 | 紙を手放せるか | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 棚卸表・貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類 | 読み取りでは代えられない | そもそも対象外であること。紙としての置き場と期間 |
| 仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿、売上伝票などの伝票類 | 読み取りでは代えられない | 制度の対象にあたるかどうか。誰がその判断をしたか |
| 契約書・領収書(特に重要とされる区分) | 条件を満たせば手放せる | 入力の期限、帳簿との相互関連性、印紙を貼る必要の有無 |
| 請求書・納品書・送り状(流れに直結する区分) | 条件を満たせば手放せる | 入力の期限、同等確認をした記録の残し方 |
| 見積書・注文書・検収書(流れに直結しない区分) | 条件を満たせば手放せる | 求められる条件が軽い代わりに、区分の判断根拠を残すこと |
| 押印があり、相手が原本を求める書面 | 手放さない | 相手の運用。原本の提示を求める手続きが制度側にあるか |
| 同意の記録など個人の情報を含む書類 | 別の制度の側で決まる | どの制度が期間を決めているか。記録の作り方で期間が変わらないか |
表を埋め終えたら、着手の順番は上からではありません。手放せないと決まった行から、置き場と鍵の担当を決めます。ここが決まらないうちに手放せる行を処理すると、残った紙が行き場を失って机の上に積み上がります。手放せる行は、その後で「条件のうち何が足りないか」を1行ずつ潰していけば十分です。
読み取った後に必ずやる3つ
廃棄まで進む前に、読み取った直後の工程を固めます。ここが緩いと、後から何をどう確かめたのかを説明できなくなり、結局「念のため紙も残す」に戻ります。次の順で決めます。
読み取ったデータと書面を比べる作業について、どの項目を、どの順で見るかを書き出します。金額・日付・相手の名前のように間違うと戻せない項目を先頭に置き、折れや欠けがないかもここで見ます。件数が多い日にどう分担するかも、この段で決めておきます。
空欄のまま次の工程に流さない、という一行を先に置きます。人が入力して埋めるのか、その書類だけ紙を残すのか、差し戻すのか。選択肢を3つに絞っておくと、現場で迷いません。埋めた場合は、埋めたという事実が残る形にします。
誰が、いつ、何件を、どの項目まで確認したかを残します。そのうえで、廃棄を実行する承認は確認した本人以外が出します。確認と廃棄を同じ人が続けて行うと、急いだ日に確認だけが飛びます。
抜き取りで済ませたくなりますが、制度が廃棄の条件として示しているのは1件ごとの同等確認です。抜き取りは社内の上乗せではなく、条件を欠いた状態にあたります。どうしても全件が難しい書類がある場合は、その書類だけ紙を残す、という分け方のほうが説明できます。
原本の置き場と、持ち出しの線を先に引く
手放せないと決まった紙には、置き場の設計が要ります。誰が鍵を持つか、持ち出したときに何を記録するか、外部の倉庫に預けるなら何を単位にして箱に詰めるか。箱の単位を書類の種類ではなく年度だけで切ると、1種類だけ取り出したいときに全部を戻すことになります。種類と年度の2つで切るのが現実的です。
実はいちばん危ないのは、保管中の紙ではなく読み取り待ちの紙です。届いてから読み取るまでの間、封筒のまま机の上にある期間がいちばん長く、紛失も期限切れもここで起きます。前の章で見たとおり、この期間の長さがそのまま廃棄の可否を決めます。受け取った日を記録する、置く場所を1か所に決める、読み取り済みの箱と分けるという3つだけでも、事故はかなり減ります。
廃棄そのものの実務も決めておきます。溶解か裁断か、委託するなら証明を受け取るか、社内で行うなら誰が立ち会うか。そして、どの書類を、何年何月に、何件手放したかという記録を残します。捨てた記録がないと、数年後に「あるはずのものが無い」と言われたときに、捨てたのか失くしたのかを区別できません。
AIに任せてよい範囲と、任せてはいけない判断
この仕事でAIが効くのは、読み取りそのものと、仕分けの下ごしらえです。書類の名前の揺れを寄せる(納品書と物品受領書と検収書が同じ棚に混ざっている状態を整える)、同じ様式のものをまとめる、台帳の空欄を洗い出すといった作業は、件数が多いほど人の手では終わりません。台帳の行を読ませて、根拠の所在の列が空いている行だけを抜き出させるのは、素直な使い方です。
一方で、捨ててよいかの判定はAIにさせません。理由は能力ではなく、この分野が改正を繰り返していることにあります。令和3年度と令和5年度の改正で要件がいくつも入れ替わっており、古い版の条件をそのまま答えても、文章としては自然に見えてしまいます。承認制度や定期的な検査のように、すでに無くなったものが答えに混じる形が典型です。
運用の線としては、AIの出力を「候補」と「根拠の所在」の2列で受け取り、判定の列は空にして人が埋めます。根拠の所在には、資料の名前と何年何月版かを書かせます。根拠が書けない候補は、そもそも候補として扱わないというだけで、事故の大半は防げます。人が確認する範囲も先に決めておきます。全件を人が見るのか、区分ごとに1件ずつ見るのか、最初の1か月だけ全件にするのか。ここを決めずに走らせると、確認したつもりの列だけが増えます。
捨て方でやりがちな失敗
実際に起きている失敗を並べます。どれも、悪意や手抜きではなく、順番を1つ飛ばしたことで起きています。
- 読み取り完了をもって廃棄の合図にする:条件になっているのは確認であって読み取りではない。確認の記録がないまま捨てると、後から説明できない
- 年数の一覧だけを社内に配る:根拠の所在が無いので改正に追従できず、数年後には誰も信用しなくなる
- 受け取った日を記録していない:入力の期限に間に合っていたことを示せない。期限を過ぎていれば、紙も一緒に残すことになる
- 対象外の書類まで同じ流れに乗せる:決算関係書類や帳簿、伝票類は読み取りでは代えられない。まとめて処理すると気づかない
- 確認した人が廃棄も実行する:急いだ日に確認だけが省かれ、記録の上では確認済みになる
- 捨てた記録を残さない:後から不足を指摘されたときに、廃棄したのか紛失したのかを区別できない
裏を返せば、防ぐ手立ては多くありません。受け取った日を残す、確認した記録を残す、捨てた記録を残す。この3つの記録があれば、判断そのものが多少揺れても、後から説明する材料は残ります。
よくある質問
読み取りの精度が十分に高ければ、原本は捨ててよいのですか
精度は条件の一部にすぎません。廃棄の条件として示されているのは、読み取ったデータと書面を比べる同等確認を行うことであり、精度が高いことではありません。加えて、入力の期限、検索できる形になっていること、後から書き換えられない置き方になっていることが並行して求められます。精度が高いほど確認は速く終わりますが、確認そのものを省いてよいという意味にはなりません。
社内から「何年残せばよいか一覧でほしい」と言われたら、どう答えますか
年数だけの一覧は作らず、根拠の所在を同じ表に入れて渡すのが安全です。制度の名前、参照した公表資料、確認した年月、確認した人。この4つが入っていれば、改正があったときに見に行く場所が決まります。年数を先に確定させたくなりますが、確定させるべきなのは調べ方のほうです。
紙ではなく、はじめから電子で受け取った書類はどう扱いますか
受け取った形が電子の場合は、読み取りとは別の制度の側の話になります。2024年1月からは電子で行った取引の記録について電子のまま保存することが求められており、紙に出力して保存する運用は前提から外れています。この記事が扱っているのは、あくまで紙や元のファイルを読み取ってデータにした後の、元の側の扱いです。
すでに確認をしないまま捨ててしまった書類があります
まず、いつ・どの種類を・何件捨てたのかを分かる範囲で書き出します。次に、その書類が3つの理由のどれに当たるかを判定します。法令で期間が決まっているものであれば、取引の相手から写しを取り寄せられるか、社内の別の記録で代替できるかを確認します。そのうえで、同じことが起きない形に工程を直します。隠して先に進むと、次に指摘されたときの説明がさらに難しくなります。
まとめ
読み取ってデータにした後の原本をいつ手放せるかは、読み取りの出来では決まりません。決めているのは、法令で期間が求められているか、読み取りの正しさを後から確かめる必要があるか、相手や手続きの側で原本が要るかの3つです。年数を社内で断言せず、書類ごとに根拠の所在を書く。電子で残す側の条件(いつ取り込んだかが分かること、書き換えられないこと、探して出せること)と、入力の期限を確かめる。手放せない行から置き場を決め、手放せる行は条件の不足を1つずつ潰す。読み取った後は、確認の対象と順番、読み取れなかった項目の扱い、確認の記録と別の人による承認まで決める。捨ててよいかの判定はAIにさせず、根拠の所在を書かせて人が確かめる。まずは手元の台帳に「根拠の所在」の列を1本足すところから始めてみてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
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