AIが全社に広がらない原因は最初の部署|配る順番を設計する

AIが全社に広がらない原因は最初の部署|配る順番を設計する

「最初の部署ではうまくいったのに、2つ目から急に止まりました」「全社に配る計画は立てたのですが、他の部署に見せられる事例が1つも出てきません」——生成AIの推進役から届く声です。どちらも2部署目以降の進め方が悪かったように見えますが、たどると原因はもっと前にあります。使うこと自体は、もう珍しくありません。総務省が2026年7月に公表した令和8年版情報通信白書の企業向けアンケートでは、日本において自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は86.4パーセントで、2024年度調査の55.2パーセントから大きく上がりました。それでも全社に広がらないのは、配り方が雑だからではありません。本当は、最初に選んだ1部署が、そもそも他の部署に渡せる形の事例を出せない部署だった、という話です。この記事では、よく選ばれてしまう4つの部署がなぜ向かないのか、向く部署の条件、そして1部署から隣接2部署、全社へと進む順番の設計までを整理します。


カメ先生カメ先生

全社に広げる計画って、だいたい2部署目から先の話が厚くなるんだ。でも詰まる原因は、もっと前にあってね。最初にどこへ入れたか、で半分決まってしまう。


カメ子カメ子

最初の部署は、いちばんやる気のあるところを選べばよいのではないのですか。


カメ先生カメ先生

そこが落とし穴でね。やる気は人についていて、部署についていないんだ。その人が異動した瞬間に、事例ごと消えてしまう。次の部署が真似できる形で残るかどうかが、選ぶときの物差しになるんだよ。


カメ子カメ子

広げるための部署を選ぶ、という見方に変わるわけですね。どこで選び方を誤るのかから確かめます。


この記事のポイント
  • 全社に広がらない原因は、2部署目以降の進め方ではなく、最初の1部署の選び方にある
  • 情報システム部門・最も忙しい部署・乗り気な人がいる部署・役員直下の部署は、どれも事例が残らない
  • 選ぶ物差しは意欲ではなく、同じ作業が毎週出ること、数で言えること、隣に渡せること

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

目次

使う会社は増えた。それでも次の部署が始まらない

まず現在地を数字で押さえます。前述の令和8年版情報通信白書は、2026年1月から2月にインターネットで実施した企業向けアンケート(日本の有効回答515件)にもとづいて、生成AIの活用方針について「積極的に活用する方針」と「活用する領域を限定して利用する方針」の合計が68.9パーセントになったと報告しています。2024年度調査の49.7パーセントからの上昇です。方針を決めた会社も、実際に使っている会社も、この2年で一気に増えました。

ところが、同じ白書は活用の深さを段で尋ねています。業務での活用状況の選択肢には、従業員が個人作業の効率化で活用している部署内の特定業務で活用している業務プロセスがAI中心に変更されているという段が置かれています。使っているという回答の中に、この3つがまとめて入っている、ということです。個人が自分の作業を速くしている状態と、部署の仕事に組み込まれている状態は、同じ「使っている」でも次に起きることがまったく違います。

帝国データバンクが2026年3月に実施した調査(全国2万3,349社対象、有効回答1万312社)でも、業務で活用していると答えた企業は34.5パーセントで、大企業46.5パーセント、中小企業32.4パーセント、小規模企業28.0パーセントと規模で差がありました。活用している企業のうち効果があると答えた割合は86.7パーセントに達しています。効果が出ないから広がらない、という説明は成り立ちません。効いているのに次の部署へ渡っていない、という現象を説明する必要があります。

広がらない原因を2部署目に探すと、打ち手が出てこない

止まったとき、多くの現場はまず2部署目の側を疑います。説明会の回数が足りなかった、手順書が分かりにくかった、担当者が忙しかった。どれも本当のことですが、これらはすべて「渡すものがある」ことを前提にした原因です。渡すものが無い場合、説明会を増やしても手順書を作り直しても、事態は動きません。

実際に2部署目の担当者が言うのは、たいてい同じ一言です。「それは、あの部署だからできたのでは」。この言葉が出た時点で、原因は2部署目ではなく1部署目にあります。1部署目で起きたことが、その部署に固有の事情に依存していたということだからです。人が特別だった、余裕が特別だった、扱っている情報が特別だった。どれか1つでも当てはまると、次は始まりません。

見分け方は簡単です。1部署目の担当者に、次の部署でも同じことが起きるかを聞いてみます。「たぶん大丈夫だと思います」と返ってきたら、まだ渡せる形になっていません。渡せる状態なら、「この作業なら移せる、この作業は前提が違うから難しい」と、作業の名前を挙げて分かれます。作業の名前で答えられるかどうかが、1部署目が終わったかどうかの、実質的な合図になります。

  • この記事が扱うのは、部署から部署へ配る順番の話。試した仕組みを本番の環境へ上げる移行の話とは別
  • 配った後に使われなくなる定着の話でもない。ここで扱うのは、配る前にどこを1部署目にするか
  • 全社から事例を集めて回す仕組みも別の話。ここでは1部署目が2部署目へ渡す持ち物だけを扱う

選ばれがちな部署1:情報システム部門

最も多い選び方が、情報システム部門から入れる、というものです。理由は分かります。道具に強く、設定を自分でできて、事故が起きたときの復旧も早い。導入そのものは、間違いなくいちばん速く終わります。問題は、その後に何が残るかです。

この部門の仕事は、他の部署の仕事を支える仕事です。つまり、営業の見積もりも、経理の突き合わせも、人事の面談記録も、そこには実物としてありません。結果として出てくる事例は、設定の手順、権限の切り方、使ってよい範囲の書き方といった「入れるための話」に寄ります。これは全社に必要な情報ですが、営業部の人が読んでも自分の来週の仕事は1つも変わりません。

もう1つの副作用として、効果を数で言えない点があります。障害の対応時間が短くなった、といった数字は出せますが、他の部署がそれを自分の数字に置き換えられません。結果、「情報システム部門では便利らしい」という感想だけが社内に流れ、次の部署が手を挙げる理由になりません。この部門は、1部署目ではなく、1部署目を支える側に置くのが順当です。

それでも情報システム部門から入れたい事情がある場合は、1部署目とは呼ばずに「先に自分たちで触っておく期間」として切り分けます。設定、権限、記録の取り方、止め方を先に確かめておくのは有益で、むしろやっておくべき仕事です。ただし、その期間に出た材料を全社向けの事例として配らないこと。配ると、受け取った部署は「情報システム部門向けの話だ」と判断して、そこで読むのをやめます。

選ばれがちな部署2:いちばん忙しい部署

次に多いのが、いちばん忙しい部署から入れる選び方です。効果が大きそうに見えますし、本人たちも困っているので断りません。ところが忙しい部署は、試す時間がない部署でもあります。ここが見落とされます。

新しい道具を業務に組み込むには、最初の数週間だけ、いつもより時間がかかります。使い方を覚える時間、出てきたものを確かめる時間、うまくいかなかったときに元のやり方に戻す時間。この上乗せ分を吸収できる余裕が無い部署では、繁忙が来た瞬間に元のやり方に戻ります。そして戻ったことは報告されません。報告する時間も無いからです。

さらに悪いことに、忙しい部署が戻った事実は、社内では「効かなかった」として伝わります。実際には試せなかっただけですが、区別して語られることはまずありません。最初の1部署は、繁忙の谷間にある部署を選ぶのが定石です。困っている度合いは2部署目以降で効いてきます。1部署目に必要なのは、困っていることではなく、確かめる時間があることです。

逆に、忙しい部署を1部署目にしてよい例外が1つだけあります。繁忙の原因そのものが、対象にしようとしている作業である場合です。毎週の集計に2日かかっていて、それが繁忙の中身なら、短くなった分はその部署の余裕として直接返ってきます。この場合でも、着手は繁忙期の直前ではなく直後に置きます。直前に始めると、覚える時間と繁忙が重なり、覚える側が必ず後回しになります。

選ばれがちな部署3:いちばん乗り気な人がいる部署

推進役から見て、いちばん心強い選び方です。声をかければ返事が早く、自分で調べ、勝手に工夫まで始めてくれる。実際、最初の3か月の成果はこの選び方がいちばん出ます。問題は、出た成果が部署ではなくその人に紐づいていることです。

具体的にはこうなります。その人は、うまくいく頼み方を体で覚えていきます。どこまで任せてどこから自分で直すか、おかしな答えが返ったときにどう気づくか。これらは本人の中では明確ですが、書き出されないまま蓄積されます。次の部署に渡そうとした瞬間に、渡すものが「その人の説明」しか無いことが分かります。そして、その人が異動や産休や退職で抜けると、部署の中でも再現できなくなります。

この選び方をどうしても採るなら、最初から2人目を並走させるのが条件です。同じ作業を2人が別々にやり、出てきた違いを毎週1回だけ突き合わせる。違いが出た箇所こそが、書き出すべき勘どころです。1人でうまくいっているうちは誰も書きませんが、2人でやると、書かないと揃わないという状況が自然に生まれます。

部署に根づいたかどうかの確かめ方もあります。その人に1週間だけ休んでもらい、同じ作業が同じ手順で回るかを見ます。回れば部署に残っていますし、回らなければ、まだその人の中にあります。研修のような形で確かめようとすると、本人が同席するので必ず回ってしまい、確かめたことになりません。休みの週に回るかどうかは、第2段に進んでよいかの判断にもそのまま使えます。

選ばれがちな部署4:役員直下の部署

経営企画や社長室のように、役員の直下にある部署から始める選び方もあります。話が速い、予算が通る、全社への号令もかけやすい。進めるための条件はすべてそろっているように見えます。

ここで起きるのは、失敗を報告できないという現象です。うまくいかなかった使い方、やってみて止めた使い方、期待したほど速くならなかった作業。これらは次の部署にとって最も価値のある情報ですが、役員の目に触れる場所では報告の対象になりません。結果として、上がってくるのは成功だけになります。

成功だけが並んだ資料を渡された2部署目は、そのとおりにやってみて、報告されていなかった落とし穴に全部落ちます。そして「うちには合わない」と結論します。1部署目の価値は、効いた事例と同じだけ、止めた事例にあります。止めた事例が出てこない構造の部署は、どれだけ推進力があっても1部署目には向きません。選ぶなら、報告の経路が役員を経由しない部署です。

もう1つの副作用として、他の部署が意見を言いにくくなる点があります。役員直下の部署が出した型に対して、「うちの仕事には合わない」と言うのは、部署をまたいだ場では口にしにくい。表立った反対が出ないまま、実際には誰も使わないという状態になります。反対が出ないことを合意と読み違えると、全社に配った後になって初めて、使われていないことに気づきます。

4つに共通するのは、事例が次の部署に渡らないこと

ここまでの4つは、向かない理由がばらばらに見えて、行き着く先は同じです。次の部署が真似できる形の事例が残らないという一点に集まります。情報システム部門は業務の実物が無いので出ない。忙しい部署は試す時間が無いので出ない。乗り気な人がいる部署は人に紐づくので渡せない。役員直下の部署は失敗が出ないので半分しか渡らない。

この共通点から、選ぶときの物差しが決まります。問うべきは「その部署でうまくいくか」ではなく、「その部署でうまくいったとき、隣の部署はそれを真似できるか」です。主語が1部署目ではなく2部署目になる、という点が重要です。1部署目の成功は目的ではなく材料です。

この視点で見直すと、候補の順位が入れ替わります。派手な効果は出ないが毎週同じ作業がある部署、規模がほどほどで断りにくくない部署、隣に似た仕事をしている部署がある部署。こうした地味な候補が上位に来ます。1部署目に選ぶべきなのは、いちばん効く部署ではなく、いちばん移しやすい部署です。

向く部署の条件は5つ

移しやすさを分解すると、条件は5つになります。全部そろう部署は稀なので、3つ以上そろっていれば候補、と考えて構いません。

  • 同じ作業が毎週繰り返し出る:月に1回の作業では、3か月かけても3回しか試せない
  • 成果を数で言える:件数、日数、差し戻しの回数。金額に換算できなくてよいが、数えられること
  • 他部署が真似できる形の仕事:その部署だけの専用の仕組みや資格が前提になっていない
  • 断りにくくない規模:小さすぎると全社の説得材料にならず、大きすぎると合意に時間がかかる
  • 隣に広げる相手がいる:似た作業をしている部署が、社内に2つ以上見えている

5つのうち、実務でいちばん効くのは1つ目です。毎週出る作業がある部署は、3か月で12回試せます。12回あれば、うまくいく型と、うまくいかない型の両方が見えます。四半期に1回の作業では、1回目の結果がたまたまなのかどうかすら分かりません。頻度は、他の条件の不足をある程度まで補います。

5つ目も軽視できません。隣に広げる相手がいない部署を選ぶと、1部署目が終わった時点で行き先が無くなり、2部署目を探すところからやり直しになります。候補を挙げる段階で、その部署の隣に誰がいるかを一緒に書く。これだけで、後の設計がかなり楽になります。

最初に配る部署の見極め表

候補が複数あるときの比べ方を表にします。使い方は簡単で、候補ごとに列を埋めて、埋まらない欄が多いところを外すだけです。点数を付ける必要はありません。埋まらない欄そのものが、その部署を選んだときに起きることを教えてくれます。

見るところ向いている状態この欄が埋まらないと起きること
同じ作業の頻度毎週または毎日、同じ形の作業が出る試せる回数が足りず、結果がたまたまかどうか判断できない
数えられる成果件数・所要日数・差し戻し回数などが今も記録されている効いたかどうかを感想で語ることになり、次の部署を説得できない
仕事の再現性専用の仕組みや特別な資格を前提にしていない隣の部署が「うちとは前提が違う」と判断して受け取らない
部署の規模全社から見て小さすぎず、合意に何か月もかからない小さいと軽く見られ、大きいと着手までに季節が変わる
隣の存在似た作業をする部署が社内に2つ以上ある1部署目が終わった時点で行き先が無く、探し直しになる
報告の経路うまくいかなかったことを、そのまま書いて出せる成功だけが残り、次の部署が同じ落とし穴に全部落ちる
余裕の有無この3か月に大きな繁忙期が入っていない繁忙が来た週に元のやり方へ戻り、戻ったことが報告されない

表を埋めるのは、推進役1人ではできません。頻度と再現性は現場の人でないと書けず、規模と報告の経路は管理の側でないと書けません。候補ごとに、現場の1人と管理の1人に30分ずつ聞く。この1時間を惜しむと、後の3か月を失います。

配る順番の設計:1部署、隣接2部署、全社

選び終えたら、広げる順番を先に紙に書きます。ここを書かずに始めると、1部署目が終わった時点で必ず止まります。次がどこかを決めていない状態で成果報告をしても、聞いた側は「よかったですね」で終わるからです。段は3つで足ります。

STEP1
第1段:1部署に入れる(目安3か月)

選んだ1部署だけに配ります。この段の目的は効果を最大化することではなく、他の部署に渡せる形の材料を作ることです。毎週の作業のうち、どれを対象にするかを2つか3つに絞り、それ以外には手を出しません。範囲を広げると、うまくいった理由が分からなくなります。

STEP2
第2段:隣接する2部署に広げる(目安2か月)

1部署目と似た作業をしている部署を2つ選び、同時に配ります。1つではなく2つにするのは、片方だけで起きたことが1部署目に固有の事情なのか、2部署目に固有の事情なのかを切り分けるためです。ここで初めて、渡した材料が本当に渡せる形だったかが分かります。

STEP3
第3段:全社に配る

第2段で2部署とも動いたものだけを、全社向けの形に直します。片方でしか動かなかったものは、全社には出しません。出すと、動かなかった側と同じ条件の部署が一斉につまずきます。全社に出すのは、2回以上再現したものだけ、という線を引きます。

段ごとに期間の目安を置いていますが、期間で区切って進めるのではなく、条件を満たしたら進みます。期間はあくまで、伸びすぎていないかを見るための目印です。3か月の予定が6か月になっているなら、選んだ部署の側に原因がある可能性を疑います。

段を進んでよいかは、使った回数では測らない

次の段へ進む判断を、利用の回数や人数で測ってしまうと、たいてい誤ります。回数は、使ってみた人が多ければ増えます。増えた回数の中身が、その部署の仕事を変えたのか、個人が自分の作業を速くしただけなのかは、回数からは分かりません。白書が活用状況を段で尋ねているのも、ここが混ざるからです。

見るべきものは3つに絞れます。1つ目は、対象にした作業が、AIを使う前提で回るようになったか。担当者が休んだ日に、別の人が同じ手順で回せるかで分かります。2つ目は、効いた作業と、止めた作業の両方が書き出されているか。止めた作業が1つも無い場合は、まだ試し足りていないか、報告されていないかのどちらかです。3つ目は、他の部署の人が読んで、自分の作業に置き換えられるか。1部署目の人以外に、実際に読ませて確かめます。

この3つ目が、いちばん省かれます。書いた本人は分かるので、読めば通じると思ってしまうからです。隣の部署の人を1人つかまえて、その場で読んでもらい、分からなかった箇所に印を付けてもらう。30分で済み、第2段の成否をほぼ決めます。

なお、3つとも満たしていない状態で第2段に進んでしまった場合は、2部署目を止めるのではなく、1部署目に戻って足りないものだけを作ります。止めると、2部署目の担当者には「振り回された」という記憶だけが残り、第3段で協力が得られません。並走の期間を2週間延ばして、その間に止めた事例と読み手の確認を埋めるほうが、全体としては速く終わります。

最初の部署で必ず作る4つの持ち物

第1段が終わったときに手元に無ければならないものは、4つです。報告書ではなく、次の部署がそのまま使える形の持ち物として作ります。

  1. 使い方の型:対象にした作業について、何を渡し、何を返させ、どこを人が直すかを作業の順に書いたもの。所要時間の目安も入れる
  2. 効いた事例:型のとおりにやって短くなった作業を、前後の数で示したもの。数は件数や日数でよく、金額に換算しない
  3. 止めた事例:やってみて元のやり方に戻した作業と、その理由。理由は「精度が低かった」ではなく、どの項目でどう外れたかまで書く
  4. 次の部署への渡し方:誰が説明し、最初の何週間は誰が並走し、困ったときにどこへ聞くかを書いた1枚

4つ目が抜けがちです。型と事例まで作って満足し、渡す手順を決めないまま第2段に入ると、2部署目は資料を受け取っただけの状態になります。並走の期間は2週間もあれば十分ですが、並走する人を名前で決めておくことが要ります。「推進チームが支援します」では、誰も動きません。

なお、これは全社から事例を集めて回す仕組みとは別のものです。ここで作るのは、1部署目から2部署目へ渡す1回分の持ち物だけです。集める仕組みを先に作ろうとすると、集める対象がまだ1件も無い状態で仕組みだけが立ち上がり、たいてい形骸化します。

渡せる事例と、渡せない事例の見分け方

第1段で出てきた事例は、そのまま全部が渡せるわけではありません。見分け方は単純で、その事例の説明から部署の名前を消しても意味が通るかを見ます。通らない場合は、その部署に固有の事情が前提に入っています。

よくある固有の事情は3つです。その部署だけが持っている情報(顧客の履歴、専用の台帳、独自の分類)、その部署だけの承認の流れ(部長が毎朝まとめて見る、など)、その部署にいる特定の人の判断です。1つ目と2つ目は、2部署目の事情に置き換えれば渡せます。3つ目だけは、書き出さないかぎり渡せません。

渡せないと分かった事例は、捨てずに別の欄に置きます。第3段で全社に出すときに、「この型は、こういう前提がある部署だけで効く」という注意書きの材料になるからです。全社に出す資料に、効く条件と効かない条件が両方書かれていると、受け取った部署は自分で判断できます。効く話だけが並んだ資料は、読み手に判断させないぶん、外れたときの反発が大きくなります。

判定は推進役が1人でやらず、1部署目の担当者と一緒にやります。固有の事情は、中にいる人ほど固有だと気づきません。毎朝の確認を当たり前だと思っている人は、それを前提として書きません。外から読む人が「これは誰がやるのですか」と聞いた箇所が、だいたい固有の事情の隠れている場所です。聞かれた箇所に印を付けていくだけで、判定はほぼ終わります。

AIに任せてよい範囲と、任せてはいけない判断

この仕事でAIが効くのは、候補部署の仕事を洗い出して比べるところです。各部署の業務の一覧、週次の定例の一覧、過去1年の作業依頼の記録。こうしたものを読ませて、同じ形の作業が繰り返し出ている箇所を抜き出させる。件数が多いほど、人の目では見落とします。見極め表の空欄を洗い出させるのも、素直な使い方です。

一方で、どの部署から配るかの決裁はAIにさせません。理由は、この判断に効く材料の半分が、記録に残っていないことにあります。誰と誰が仲が悪い、あの部長は新しいものに慎重、来期に組織が変わる予定がある。こうした事情は資料に書かれておらず、AIには見えません。見えない材料を除いたまま出した答えは、もっともらしく、そして実行すると止まります。

運用の線としては、AIに出させるのは候補の一覧と、そう考えた根拠までです。根拠には、どの資料のどの記述からそう判断したかを書かせます。そのうえで、人が確認する範囲を先に決めます。上位3つの候補については全部の根拠を人が読む、それ以外は見出しだけ見る、といった線です。根拠が書けていない候補は、そもそも候補として扱わないというだけで、検討のやり直しはかなり減ります。

選んではいけない部署と、選び直すときの動き方

最後に、候補から外すべき部署を並べます。どれも「入れれば動く」部署ですが、次に渡らないという点で共通しています。

  • 情報システム部門:業務の実物が手元に無いので、他部署が読んで自分の作業に置き換えられる事例が出ない
  • いちばん忙しい部署:試す時間の上乗せを吸収できず、繁忙の週に元へ戻る。戻ったことは報告されない
  • いちばん乗り気な人がいる部署:成果がその人に紐づき、異動や退職で消える。渡すものが説明しか残らない
  • 役員直下の部署:うまくいかなかったことを報告できず、成功だけが並ぶ。2部署目が落とし穴に全部落ちる
  • 隣に似た部署が無い部署:1部署目が終わった時点で行き先が無く、2部署目を探すところからやり直しになる
  • 組織変更が決まっている部署:型を作り終える前に人と担当が入れ替わり、作った持ち物ごと宙に浮く

すでに向かない部署で始めてしまった場合は、止めて選び直すより、1部署目を残したまま、条件を満たす部署を並べて2つ目として立てるほうが現実的です。止めると、1部署目の人が「自分たちのやり方は否定された」と受け取ります。並べて立てれば、1部署目は使い続けたまま、渡せる形の材料を新しい側で作れます。

並べて立てるときに1つだけ決めます。全社に出す型は、新しい側で作ったものを使う、という線です。ここを曖昧にすると、2つの型が社内に並び、3部署目がどちらに従えばよいか分からなくなります。使い続ける自由と、全社の型をどちらにするかは、別に決めてよい問題です。

まとめ

生成AIが全社に広がらない原因は、2部署目以降の進め方ではなく、最初の1部署が、他の部署に渡せる形の事例を出せない部署だったことにあります。情報システム部門は業務の実物が無く、いちばん忙しい部署は試す時間が無く、乗り気な人がいる部署は成果が人に紐づき、役員直下の部署は失敗が報告されない。選ぶ物差しは意欲ではなく、同じ作業が毎週出ること、数で言えること、隣が真似できること、断りにくくない規模であること、隣に広げる相手がいることの5つです。順番は1部署、隣接2部署、全社の3段で置き、段を進む判断は回数ではなく、休んだ日に回るか、止めた事例が出ているか、隣の部署の人が読んで置き換えられるかで見ます。候補の洗い出しはAIに任せてよい一方、どこから配るかの決裁は人がやります。まずは、候補になりそうな部署を3つ挙げて、見極め表の欄を埋めるところから始めてみてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

運営会社:株式会社デボノ

目次