取引先に自社のAIを使わせてよい?|社外に開ける線引き

取引先に自社のAIを使わせてよい?|社外に開ける線引き

「取引先から、うちにも同じものを使わせてほしいと言われました」「まずは社内のアカウントを1つ貸して様子を見ようと思います」——社内で育てた生成AIの仕組みがうまく回り始めた会社から、よく出てくる相談です。ここで最初に外れているのは、アカウントを貸すことを「小さく試す」だと考えている点です。社外に開けることは、社内で使う範囲を広げることの延長ではありません。本当は、別法人に使わせた時点で、契約・責任・情報の持ち主・費用・止め方の5つが同時に動く、別の種類の決定です。この記事では、開け方の4通りと、どちらを選ぶにしても先に決めておく項目を整理します。


カメ先生カメ先生

社内で育てたAIを取引先にも使わせたい、という話はね、いま本当に増えているんだ。うまくいっている仕組みほど、外から見えるからね。


カメ子カメ子

社内で使えているものなら、そのまま使ってもらえばよいのではないのですか。


カメ先生カメ先生

そこが分かれ目でね。社内は同じ会社の中だから、就業規則も秘密保持も1つで足りている。相手が別の法人になると、その1つがどこにも効かなくなるんだ。同じ画面でも、置かれている条件がまるで違う。


カメ子カメ子

画面が同じでも、その画面を使ってよい根拠が社内と社外では別ものになる、ということですね。


この記事のポイント
  • 社外に開けると、自社の立場がAIの利用者から提供者に変わり、負う役割が増える
  • 開け方は4通り。画面ごと開く・結果だけ渡す・相手の環境に作る・開けないで、契約も止め方も変わる
  • 開ける範囲の書き出しと設定の洗い出しはAIに任せ、開ける・開けないの決裁は人が持つ

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目次

「社内のアカウントを1つ貸す」から始まる事故

いちばん多い始まり方が、社内で使っている仕組みのアカウントを1つ作って、取引先の担当者に渡す形です。手続きが要らず、その日から使えます。ところがこの形は、あとから条件を足せないという性質を持っています。使えてしまっている状態から制限をかけるのは、使わせないと決めるより難しい。

実際に起きるのは、順番の入れ替わりです。先に使わせて、あとで契約を整えようとする。しかし相手の会社から見ると、すでに業務に組み込まれているものを止められると困るため、条件の交渉が対等になりません。結果として、本来なら開けないと判断したはずの範囲まで、開いたまま固定されます。貸した側の担当者が異動すると、誰が貸したのかも分からなくなります。

もう一つ、アカウントを1人に渡すと、そこから先が見えなくなります。相手の会社の中で共有され、何人が使っているのか、どの部署で使われているのか、自社からは分かりません。使った人の記録は残るのに、使った人が誰なのかが特定できないという、いちばん扱いにくい状態になります。

社外に開けた時点で、自社の立場が変わる

社内だけで使っているあいだ、自社はAIを使う側です。ところが他社に使わせる形にすると、自社はAIを提供する側になります。総務省と経済産業省がまとめたAI事業者ガイドラインは、2026年3月31日に第1.2版が公表され、事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに大別して役割を整理しています。第1.2版では、主体ごとの役割の書き分けがさらに明確になりました。

このうちAI提供者は、モデルをシステムやサービスとして組み込み、その機能と社会への影響を検証し、既存のシステムとつなぎ、安全側に倒すための設定や指示の設計を行い、リスク対策をどの水準まで行うかを検討する主体とされています。つまり相手に使わせると決めた瞬間から、自社は答えの出方に責任を持つ立場に移ります。社内で使っていたときは「変な答えが出たら人が直す」で済んでいたものが、外に出ると、そもそも変な答えが出にくいように作ってあるかを問われます。

この変化は、社内の稟議では見えにくい。使う道具は同じで、増えるのはアカウントが数個だけだからです。しかし同じ道具でも、誰に向けて開けたかで負う役割が変わる。開ける判断を出す前に、提供する側として何を検証したのかを書いておくと、あとで相手から問われたときに答えられます。

開け方は4通りある

社外に開けると言っても、形は1つではありません。大きく4通りあり、それぞれで契約の形、責任の置き場所、情報の混ざり方、費用の持ち方、止め方が変わります。先に全体を並べて、自社の案件がどこに当たるかを決めてから、条件の話に入ります。

開け方相手がすること情報の混ざり方止めるとき
①画面ごと開く自社の仕組みに入って自分で操作する相手の入力が自社側に残る口を閉じる。相手の業務が止まる
②結果だけを渡す依頼を出し、答えを受け取る相手の依頼文が自社側に残る受付をやめる。相手の業務は続く
③相手の環境に作る自分の会社の中で同じものを動かす混ざらない。相手側に閉じる更新をやめる。動いているものは残る
④開けない自社の成果物だけを受け取る混ざらない何も起きない

この表で先に見てほしいのは、いちばん右の列です。止めたときに相手の業務が止まるかどうかが、4つの違いをいちばんよく表しています。止めると相手が困る形を選ぶなら、止めるときの手順と予告の期間を契約に書く必要が出ます。止めても相手が困らない形なら、そこまでの取り決めは要りません。

もう一つ、真ん中の列です。相手の入力が自社側に残るかどうかで、あとから決める項目の数が変わります。残る形を選んだ場合だけ、相手の従業員の入力をどう扱うかという論点が丸ごと増えます。この論点は後半で詳しく扱いますが、開け方を選ぶ段階で、増えることを知っておく必要があります。

①画面ごと開く:いちばん早く、いちばん戻しにくい

相手の担当者にアカウントを発行し、自社の仕組みにそのまま入ってもらう形です。相手から見ればすぐ使えて、自社から見れば作り足すものがありません。導入は4通りの中でいちばん速く、後戻りは4通りの中でいちばん難しい形です。

この形で必ず出てくるのが、範囲の問題です。自社の仕組みは社内の資料を読める状態で作られているので、そのまま開けると相手が自社の内部資料に触れられてしまいます。だから開ける前に、相手が読める資料の置き場所を分ける作業が要ります。これは設定を1つ変えれば終わる話ではなく、どの棚をどちらから見えるようにするかを、業務の言葉で書き出す作業です。ここを飛ばすと、開けたあとに「この資料が見えているらしい」という連絡が相手から来ます。

加えて、相手の会社の中で誰が使うのかを決めます。1人に渡すのか、部署に渡すのか、契約した会社の従業員なら誰でもよいのか。人数が変わるたびに連絡をもらう形にするのか、相手の側で追加できる形にするのか。アカウントを増やす権限を相手に渡すかどうかは、開ける範囲を決めるのと同じ重さの決定です。

開けたあとの窓口も先に決めます。相手の担当者が使い方でつまずいたとき、誰に聞くのか。自社の情報システム部門が受けるのか、日ごろ接している営業の担当者が受けるのか。決めていないと、相手は最初に話した人に連絡し、その人が毎回中継することになります。窓口と、対応する時間帯と、返事の目安の日数を、開ける前に文書で渡す。相手の社内でも、この3つが分かっていないと使い始められません。

②結果だけを渡す:仕組みは自社に置いたまま

相手から依頼を受け、自社の中で仕組みを回して、答えだけを返す形です。相手は自社のAIに触りません。仕組みも設定も資料も自社の中に留まるので、範囲の切り分けをやり直す必要がなく、開ける準備がいちばん軽くなります。

この形の利点は、止め方が簡単なことです。受付をやめれば終わりで、相手の業務は自分たちのやり方に戻るだけです。欠点は、依頼のたびに自社の人手がかかること。相手が使う回数が増えるほど、自社の担当者の作業が増えます。件数が増えたときに、人を足すのか、①の形に切り替えるのかを先に決めておくと、途中で運用が破綻しません。

注意が要るのは、相手が送ってくる依頼文です。依頼には相手の内部の情報が入ります。相手の顧客名、金額、社内の事情。これが自社の記録に残り、自社の仕組みの記録にも残ります。渡してよい情報の範囲を、依頼を受け始める前に相手と合わせておく。合わせていないと、相手の会社の秘密保持の取り決めに違反した情報が、自社に届いてしまう事態になります。

③相手の環境に同じものを作る:混ざらない代わりに重い

相手の会社の中に、同じ作りのものを用意する形です。使う資料も、動かす場所も、記録も相手側に閉じます。情報が混ざらないので、情報の持ち主をめぐる論点がほぼ消えます。相手の会社の規模が大きく、自社に情報を出せない事情がある場合は、この形しか選べないこともあります。

代わりに重くなるのは、作る手間と、そのあとの面倒です。設定の手順、使い方の説明、動かなくなったときの連絡先。相手側で動いているものは自社から中が見えないので、不具合の切り分けに時間がかかります。作って渡して終わりにできるのか、直し続ける約束をするのかを、最初に決めておく必要があります。ここを曖昧にすると、無償の保守が何年も続きます。

止め方も独特です。取り決めを終えても、相手側で動いているものはそのまま残ります。残ってよいのか、消してもらうのか、消したことをどう確かめるのか。終わったあとに何が残るかを、始める前に書いておく。これは③を選ぶときに必ず出てくる論点で、①や②では出てきません。

この形を選ぶ場面は限られています。相手の会社の規模が大きく、情報を外に出せない決まりがある場合か、相手が同じものを長く使い続ける見込みがある場合です。数か月だけ試したい相手に③を選ぶと、作る手間に見合いません。使う期間の見込みを相手に聞いてから形を選ぶと、この行き違いは避けられます。

④開けない、という答えを残しておく

4つ目は、開けないという選択です。これを最初から選択肢に入れておかないと、「どう開けるか」だけの議論になり、開けない理由を述べる人が反対派に見えてしまいます。開けないことは断ることと同じではありません。自社でAIを使って作った成果物を、これまでどおり相手に渡す形は続きます。変わるのは、相手が自分で操作するかどうかだけです。

開けないと決めるべき場面は、はっきりしています。相手が入れる情報に第三者の個人情報が含まれる見込みがあるとき、自社が使っている道具の取り決めが第三者への提供を認めていないとき、相手が競合と取引しているとき、そして止めるときの手順を自社側で決められないときです。最後の1つは見落とされやすいのですが、止められないものを開けるのは、開けたことより危険です。

断り方も用意しておきます。「開けません」だけだと関係が悪くなるので、代わりに出せるものを一緒に示します。成果物の形で渡す、使い方の手順書を渡す、相手の環境に作る案を見積もる。開けない理由を道具の話ではなく、情報と契約の話として説明すると、相手も社内で説明しやすくなります。

開ける前に踏む手順

どの形を選ぶにしても、決める順番は同じです。順番を変えると、決まったはずのことが後半でひっくり返ります。特に、道具の設定から入ると必ずやり直しになります。設定は最後です。

STEP1
相手が何をしたいのかを、業務の名前で書く

「AIを使いたい」ではなく「見積書の下書きを作りたい」まで具体化します。ここが決まらないと範囲が決まりません。

STEP2
その業務でやり取りされる情報の種類を並べる

個人情報が入るか、第三者から預かった情報が入るか、自社の秘密が入るかを1つずつ確かめます。

STEP3
4つの開け方のどれにするかを決める

止めたときに相手の業務が止まるか、相手の入力が自社に残るかの2点で選びます。

STEP4
契約に書く項目を洗い出し、法務に渡す

責任、情報の扱い、記録の帰属、費用、終わり方、再委託の6つは最低限そろえます。

STEP5
決まった範囲どおりに設定を作り、確かめてから開ける

開ける前に、相手の立場で入ってみて、見えてはいけないものが見えないかを人が確認します。

この5段階のうち、時間がかかるのは2番目と4番目です。1番目と3番目は半日で決まります。先に3番目まで決めてしまい、契約の検討と並行して設定を作るという進め方はできますが、設定を先に作って契約を後回しにするのは避ける。作ったものが惜しくなって、条件の交渉が甘くなるためです。

決める項目:誰の情報が入り、何を入れてよいか

最初に決めるのは、その仕組みの中を流れる情報が誰のものかです。自社の情報だけなのか、相手の情報が入るのか、さらにその先の第三者の情報が入るのか。3層あることを最初に確かめる。相手の会社の担当者が、自分の会社の顧客の名前を入れる場面は、想像より頻繁に起きます。

個人情報が絡む場合、日本の個人情報保護法では、第三者への提供は原則としてあらかじめ本人の同意が必要とされています(27条1項)。一方で、利用目的の達成に必要な範囲内で取扱いを委託することに伴って提供される場合は、本人の同意が不要とされています(27条5項1号)。また、契約上その事業者が個人データを取り扱わない旨が定められている場合には、そもそも「提供」に当たらないと整理されることがあります。同じ画面でも、契約の書き方によって法律上の位置づけが変わります

秘密情報についても同じことが起きます。不正競争防止法で営業秘密として守られるには、秘密として管理されていること、有用であること、公然と知られていないことの3つが必要です(2条6項)。社外の人が入れる仕組みに社内の秘密が混ざると、管理されている状態だと言いにくくなります。入れてよい情報の範囲は、禁止の言葉ではなく、入れてよいものの名前で書く。「機密情報は入力禁止」では、何が機密かの判断が相手の担当者に委ねられてしまいます。

範囲を書いたら、相手の担当者が読んで分かる長さにします。法律の条文を引いた文書をそのまま渡しても、実際に入力する人は読みません。入れてよいものの例を5つ、入れてはいけないものの例を5つ、具体的な書類の名前で並べる。抽象的な分類ではなく、相手の会社で実際に飛び交っている書類の名前で書けるかどうかが、守られるかどうかの分かれ目になります。

  • 個人情報保護委員会は2023年6月2日に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出している。社外に開ける場合は、自社の利用規約だけでなく、使っている道具の側の取り決めも併せて確かめる
  • 相手が海外の法人である場合、越境の取り扱いが別に問われる。国内の取引先だけを前提に条件を作ると、あとで作り直しになる

決める項目:ログと入力の記録は誰のものか

開ければ必ず記録が残ります。誰がいつ何を入力し、何が返されたか。この記録が誰のものかを決めていないと、あとで必ずもめます。自社が保管しているという事実と、自社が自由に使えるという権利は別です。保管しているのは自社でも、中身は相手の業務の情報です。

決める内容は4つです。どこまで記録するか(入力の全文か、使った回数だけか)。どのくらい残すか(期間を日数で書く)。誰が見られるか(自社の担当者か、管理者だけか、相手も見られるか)。何に使ってよいか(不具合の調査だけか、仕組みの改善にも使ってよいか)。この4つ目が争点になりやすい。相手の入力を自社の仕組みの改善に使うなら、そう書いて合意を取る。黙って使うと、あとから止められます。

相手側にも見せる形にしておくと、関係が保ちやすくなります。相手の会社にも、自分の従業員が何を入力したのかを知る必要があるからです。月に一度、使った回数と使った人の一覧を渡すだけでも、相手の社内で説明が立ちます。記録を自社だけが持つ状態は、相手にとっては自分の会社の行動が見えない状態です。

決める項目:相手が出した答えの責任

開けたあと、相手の担当者がその仕組みで作ったものを、相手の会社の業務で使います。その内容が間違っていたとき、誰が責任を負うのか。ここを書いていない取り決めが、実際にはかなり多い。道具を貸した側と、出てきたものを使った側で、負うものが違うという整理を先に置きます。

現実的な線引きは3段階です。仕組みが動かなかった場合は自社。出てきた内容が事実と違った場合は、使う前に確かめる責任が相手。ただし、自社が用意した資料そのものが間違っていた場合は自社。この3段階を契約に書き、併せて相手に「出てきたものは必ず人が確かめてから使う」ことを取り決めに入れてもらう。これは相手を縛るためではなく、相手の会社の中でその運用が守られるようにするためです。

加えて、答えの根拠を残す作りにしておきます。どの資料を見て答えたのかが画面に出る形なら、相手が確かめる作業が現実的な手間で済みます。根拠が出ない作りのまま外に開けると、確かめる責任を相手に負わせておきながら、確かめる手段を渡していないことになります。根拠を書かせる作りにしてから開けるのが順番です。

決める項目:やめるときにどう閉じるか

始め方は熱心に話し合われますが、終わり方はほとんど決められません。ところが実務でいちばん揉めるのは終わるときです。取引が終わる、担当が変わる、道具を別のものに替える、相手の会社が別の会社と一緒になる。どれも起きます。

決めることは5つです。誰の判断で止められるか。止める何日前に伝えるか。止めたあと、相手の手元に何が残ってよいか。自社に残った相手の入力と記録をどうするか。消したことをどう伝えるか。特に3つ目と4つ目は、開け方によって答えが変わります。①なら自社側に相手の入力が残り、③なら相手側に仕組みが残ります。

緊急で止める場合も分けて書きます。情報が外に出た疑いがある、相手の従業員が不適切な使い方をしている、道具の側で不具合が出た。こうした場面では、予告の期間を待たずに止める必要があります。予告して止める場合と、その場で止める場合の2通りを、条件と押せる人の名前つきで書いておく。押せる人が1人だけだと、その人が休んでいる日に止められません。

決める項目:再委託をどう扱うか

開けた相手が、その先の会社に作業を出している場合があります。相手の会社が自社のAIを使って作業をするつもりでいても、実際に手を動かすのは相手が委託した別の会社、ということは珍しくありません。開けた先が1社だと思っていたら、実は3社が触っていたという状態は、取り決めを書いていなければ起こります。

書き方は2通りです。禁じる形と、届け出れば認める形。禁じる形は簡単ですが、相手の実務が回らず、結果として隠れて使われます。届け出る形にするなら、届け出る単位(会社ごとか、案件ごとか)、届け出る内容(会社名、作業の範囲、期間)、断れる場合の条件を書きます。相手が使う先を把握できる形にしておくことが、禁じることより実効性があることが多い。

併せて、相手の会社の従業員以外がアカウントを使う場面も想定しておきます。相手の会社に常駐している派遣の人、業務委託の人、短期のアルバイト。使ってよい人を「相手の会社の従業員」と書くと、この人たちが外れます。書くなら「相手の会社の指揮のもとで当該業務に従事する者」のように、雇用の形ではなく業務との関係で書きます。

相手の従業員が入力した内容が、自社側に残る

①の画面ごと開く形を選ぶと、必ずこの論点が出ます。相手の会社の従業員が入力した内容が、自社の仕組みの中に残る。相手から見れば、自分の会社の業務の中身が、取引先の会社の記録に蓄積されていく状態です。ここを説明せずに開けると、あとから相手の情報システム部門に止められます。

扱いは3つに分けます。1つ目は相手に知らせること。相手の会社の中で従業員に伝えてもらう必要があるので、伝えるための文面を自社から渡します。2つ目は見られる人を絞ること。自社の担当者の誰までが中身を読めるのかを決め、必要以上の人が読めない状態にします。3つ目は残す期間を切ること。期間を書かずに残すと、相手が説明できなくなります。

入力の中に、相手の会社の顧客の個人情報が混ざる可能性があるなら、その1点だけで開け方を見直す価値があります。混ざる前提で条件を整えるか、混ざらない②の形に変えるか。相手の担当者に「入れないでください」と伝えるだけでは、混ざります。混ざらない作りにするか、混ざる前提で条件を整えるかの二択で、注意の呼びかけは対策に数えない

費用の持ち方と、止めるボタンを誰が押せるか

費用は、開け方によって性質が変わります。①は使った分だけ自社の請求が増えるので、相手が使うほど自社の負担が増えます。②は自社の人手が増えます。③は最初に作る費用がかかり、そのあとは相手側の負担になります。どの形でも、増える側が誰かをはっきりさせてから開ける。無償で始めると、あとから有償に変えるのがきわめて難しくなります。

上限も決めます。相手が想定より多く使った場合に、どこで止めるか。金額で切るのか、回数で切るのか、期間で切るのか。上限に近づいたときに誰に知らせるのかも決めます。ここを決めていないと、請求が来てから気づくことになり、その時点では止めにくくなっています。

そして止めるボタンです。契約を結んだ人と、実際に設定を止められる人は、たいてい別です。押せる人を名前で2人以上決め、その人たちが押す条件を先に書いておく。担当者の異動や退職で押せる人がいなくなる事態を避けるため、決めた内容は台帳に書いて、更新の時期と一緒に見直します。

更新の時期も台帳に載せます。社外に開けた仕組みは、自社が結んでいる契約の更新と、相手との取り決めの更新の2つが別々に走ります。片方だけが切れると、根拠のないまま開いている期間ができる。2つの期限を同じ台帳の同じ行に並べ、早いほうの3か月前に見直しの予定を入れる。見直しでは、使われている量、決めた範囲との差、押せる人が今も在籍しているかの3点を確かめます。

AIに任せてよい範囲と、やってはいけない開け方

この検討でAIが効くのは2か所です。1つは開ける範囲を業務の言葉で書き出すところ。相手がやりたいことの説明を渡して、どの資料が要るか、どの情報が流れるかを一覧にさせる。人が書くと抜けやすい「その業務に付随して触れてしまうもの」を挙げてくれます。もう1つは設定の洗い出し。いまの仕組みで社外に見えうる場所を、設定の一覧から機械的に並べさせる作業です。

反対に、開ける・開けないの決裁はAIにさせません。判断に必要な材料のうち、相手との取引の経緯、相手の会社の体制、自社が負える責任の範囲は、仕組みの中にありません。AIには候補と根拠までを出させ、決める人の名前を決裁の記録に残す。出てきた案は、法務と情報システム部門の人が読んでから使います。

最後に、実際によく起きる開け方の失敗を挙げます。どれも「早く使ってもらう」ことを優先した結果として起きるものです。

  • 社内のアカウントを1つ作って貸す:使う人が特定できず、範囲も切れず、あとから条件を足せない
  • 契約より先に設定を作る:作ったものが惜しくなり、条件の交渉が甘くなる
  • 「機密情報は入力禁止」とだけ伝える:何が機密かの判断が相手の担当者に委ねられ、必ず混ざる
  • 止め方を決めずに開ける:相手の業務に組み込まれてから止められなくなる
  • 無償で始めて様子を見る:使用量が増えても有償に切り替えられず、負担だけが残る
  • 再委託の扱いを書かない:把握していない会社が触っている状態になり、情報の経路が説明できなくなる

まとめ

社内で育てたAIを取引先に使わせることは、社内の利用範囲を広げることの延長ではありません。別法人に開けた時点で、自社はAIを使う側から提供する側に移り、答えの出方について問われる立場になります。開け方は、画面ごと開く、結果だけを渡す、相手の環境に同じものを作る、開けないの4通りで、止めたときに相手の業務が止まるか、相手の入力が自社側に残るかの2点で選べます。どれを選ぶにしても先に決めるのは、誰の情報が入り何を入れてよいか、記録は誰のもので何に使ってよいか、相手が出した答えの責任をどう分けるか、やめるときにどう閉じるか、再委託をどう扱うかの5つです。画面ごと開くなら、相手の従業員の入力が自社に残ることを相手に伝え、見られる人と残す期間を切ります。費用は増える側を先に決め、止めるボタンを押せる人を名前で2人以上置く。AIには開ける範囲の書き出しと設定の洗い出しまでを任せ、開ける・開けないの決裁は人が持ちます。まずは、相手がやりたいことを業務の名前で1行書くところから始めてみてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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