AIの使い方の違反は誰に言う?|申し出が届く経路

AIの使い方の違反は誰に言う?|申し出が届く経路

「同僚が顧客の名簿をそのままAIに貼り付けているのを見たのですが、どこに言えばよいのか分かりませんでした」「使っているのが自分の上司なので、言い出すこと自体が気まずいです」——社内でAIの使い方の決まりを配った後、こういう声が現場から出てきます。決まりを配ったのに申し出が半年で1件も来ない会社は珍しくありませんが、それは違反が起きていないという意味ではありません。申し出が来ないのは、たいてい言う先が決まっていないか、言った後に自分がどうなるか分からないかのどちらかです。この記事では、気づいた人の申し出が受け口まで届くように、経路をどこに置くか、匿名をどこまで認めるか、一次で受けるのは情報システム部門か法務か、そして申し出が減らない返し方までを整理します。


カメ先生カメ先生

AIの使い方の決まりを破っている人を見つけたとき、どこへ言えばよいのかという話なんだけれど。決まりを書いた時点で、申し出の経路もできていると思われがちなんだ。


カメ子カメ子

決まりの文書の最後に、相談先の部署名が書いてあることが多い気がします。


カメ先生カメ先生

部署名だけが書いてあることは多いね。でも実際に届くかどうかを決めるのは、部署名ではなく「言った後に自分がどう扱われるか」が先に分かっているかどうかなんだ。そこが書かれていないと、部署名があっても誰も使わない。


カメ子カメ子

言った後に何が起きるかというのは、どこまで書いておけばよいのでしょうか。


この記事のポイント
  • 経路は1本にしない。上長に言う道と、上長を通さずに直接届く道の2本を並べて書く。上長自身が当事者のとき、1本だけの経路は物理的に止まる
  • 匿名は入口で認め、名乗った人については探さない・不利益に扱わない・名前を知る人を2人までにするという3つを、最初の1件が来る前に配る
  • 返しの時間を先に決める。1営業日で受領、5営業日で方針、その後は週ごとに状況。無言の期間が2週間続くと、握りつぶされたと受け取られる

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目次

申し出が来ないのは、違反が起きていないからではない

決まりを配って半年、申し出は0件。この状態を「守られている証拠」と読むのは危ういところです。申し出の件数は、違反の数ではなく経路の使いやすさを映した数字だからです。使いにくい経路なら、違反があっても0件になります。0件という数字からは、どちらなのかが読み取れません。

経路が使われない理由は、たいてい3つのどれかです。1つ目、どこに言えばよいか分からない。2つ目、言った後に自分がどう扱われるか分からない。3つ目、言っても何も変わらないと思っている。この3つは、どれも経路の側の作りの問題であって、現場の意識の問題ではありません。意識の問題として扱うと、研修を増やす話になって終わります。

この記事で扱わない範囲もはっきりさせます。申し出を受けた後に、誰をどう調べ、どう直し、どう扱うかという処分と是正の手順は別の記事の領分です。ここで扱うのは、気づいた人が口を開いてから受け口に届くまでの区間だけに絞ります。社外で自社の名をかたる偽の存在への通報とも、別の話として切り分けます。

区間を絞る理由は、ここが最も詰まりやすいからです。調べる手順や直す手順は、受け取ってからいくらでも整えられます。けれど届かなかった申し出は、存在しなかったことになります。順番としても、受けた後の手順を細かく設計するより先に、届く道を通しておくほうが効きます。

AIの使い方の違反は、公益通報の枠にそのままは乗らない

多くの会社には、すでに内部通報の窓口があります。そこに乗せればよいと考えたくなりますが、ここで一度立ち止まる必要があります。社内で決めたAIの使い方を破ることは、法令の違反とは限らないからです。枠が合っていないまま乗せると、受ける側が扱いに迷います。

制度の側の前提を押さえます。消費者庁の説明によれば、公益通報者保護法は、勤務先の法令違反行為を通報した人を守る仕組みです。改正法は2025年6月11日に公布され、2026年12月1日から施行されます。従業員が301人以上の事業者には、内部の窓口の設置と、通報に対応する従事者の指定が義務づけられます。300人以下の事業者では努力義務です。

一方、社内で決めたAIの使い方の決まりは、それ自体が法律ではありません。顧客の名簿をAIに貼り付けた行為が、個人情報の扱いに関する法令の違反に当たる場合もあれば、社内の決まりの違反にとどまる場合もあります。受ける側は、届いた時点ではどちらか分かりません。

だから設計はこうします。既存の内部通報の窓口は残したまま、AIの使い方についての申し出を受ける経路を別に用意し、法令の違反に当たりそうな内容が来たときは既存の窓口へ渡すという道筋を先に書いておく。渡す判断をする人の役職名も決めます。決めておかないと、どちらの窓口も「うちの担当ではない」と言える状態になり、申し出はその隙間で止まります。

申し出の中身は3つに分かれる

経路を設計する前に、何が届くのかを分けておきます。実際に届くものは、決まりに反する使い方、決まりには反していないが危うい使い方、道具そのものの不具合の3つに分かれます。3つは受ける人も、その後の動きも違います。

1つ目は分かりやすい例です。入れてはいけない情報を入れた、許可されていない道具を使った、といった申し出です。2つ目が厄介で、決まりの文面には触れていないけれど、このままだと事故になるという申し出です。2つ目を受ける口がないと、事故になるまで誰も言わない状態が続きます。決まりは、起きたことの後を追って書かれるからです。

3つ目は、使ってよいとされている道具の側の問題です。出力に他社の情報らしきものが混ざる、社外秘の設定が効いていない、といった内容です。これは人の違反ではないので、通報という言葉で受けると誰も出してきません。受け口の言葉を「申し出」や「気づいたこと」に変えるだけで、出てくる量が変わります

3つに分けておく実利は、一次で受ける先が決まることです。1つ目は決まりを所管する部門、2つ目は所管の部門と使っている現場の両方、3つ目は道具を管理する部門。分けずに1つの箱に入れると、箱を開けた人が毎回どこへ回すかを考えることになります。考える時間の分だけ返事が遅れ、遅れた分だけ次の申し出が減ります。

経路は「気づいた人からの近さ」で3層に置く

経路は1本ではなく、気づいた人からの距離で3層に置きます。すぐ隣(同じ職場)、1つ外(決まりを所管する部門)、その外(会社としての窓口)の3つです。どれか1つだけにすると、必ず止まる場面が出ます。

1層目は、同じ職場の中で言える相手です。多くの申し出は、ここで終わります。終わってよいのですが、条件が1つあります。その場で解決した内容も、件数と種類だけは数えて上に上げる決めにしておきます。数えないと、同じ誤解が何度も起きていることに誰も気づきません。

2層目は、決まりを所管する部門への直通の道です。ここが実質的な本線になります。1層目を飛ばして2層目に直接言ってよい、と明文で書くことが要点です。書いていないと、順序を守らなかったことを後から責められるのではないかと考えて、誰も飛ばしません。書き方は「どちらを使っても構いません」の1行で足ります。

3層目は、既存の内部通報の窓口です。ここは日常的に使う道ではなく、2層目が機能しないときの逃げ道として置きます。3層目まで来た件があるということは、2層目の作りに問題があるという合図でもあります。3層すべてを、決まりの文書の同じページに並べて書き、どの層から入ってもよいと添えます。

一次で受けるのは情報システム部門か法務か

2層目を誰が受けるかで、会社は必ず迷います。情報システム部門と法務、それに人事や監査の部門が候補に挙がります。結論から言うと、最初の受け取りは道具を管理している部門、内容の重さの判定は決まりを所管する部門に分けるのが早く回ります。1つの部門に両方を持たせると、忙しい時期に受け取りごと止まります。

受ける部門向いている申し出向かない申し出置くときの条件
情報システム部門道具の設定や不具合、許可されていない道具の利用人の処遇に関わる内容内容の重さを判定せず、受けたら所管へ回すと決める
法務やコンプライアンスの部門法令に触れそうな内容、社外との取り決めに関わる内容日々の操作の相談相談と申し出を同じ口で受けない(相談が来なくなる)
決まりを所管する部門決まりの解釈、決まりに反する使い方道具そのものの不具合回ってきた内容を判定し、必要なら法務へ渡す役を持つ
人事の部門上長が当事者の場合の申し出道具や設定に関する内容評価に響かないことを文書で示してから置く

表のとおりに分けるときの落とし穴は、回す作業が誰の仕事か決まっていないことです。受けた本人が回すのか、受けた部門の長が回すのかを、役職名で決めます。決めないと、受けた箱の中で数日止まります。止まっている間、申し出た人には何も見えません。

もう1つ、一次で受ける人には判定させないことも決めておきます。受ける人の役割は、受けたことを記録して回すところまでです。重さの判定まで任せると、受ける人が「これは大した話ではない」と思った時点で止まります。判定する人と受ける人を分けるのは、止まる場所を減らすための形です。

判定にAIを使いたくなる場面もありますが、申し出の重さをAIに判断させないでください。使ってよいのは、届いた文面を読みやすく整えることと、過去の似た申し出を探すことまでです。要約させる場合も元の文面をそのまま残し、判定する人は必ず元の文面を読みます。人が確認する範囲は、この「元の文面を全件読む」という形で先に決めておきます。

受け口を1つに絞ると、途中で止まる

経路を1本にしたくなる理由は分かります。管理が楽で、記録も1か所にまとまります。けれど1本にすると、その1本の上に当事者がいた場合、申し出は物理的に届きません。上長を通す設計なら、上長自身が当事者のときに止まります。これは運用の努力では避けられません。

だから二重にします。上長を通す道と、上長を通さずに所管の部門へ直接届く道。この2本は、どちらが正式でどちらが例外という書き方をしません。どちらを使ってもよい、と並べて書きます。片方を例外と書くと、例外を選んだ理由を後で説明させられる気がして、選ばれなくなります。

二重にすると重複が起きます。同じ件が両方から来ることがありますが、重複は問題ではなく、むしろ経路が生きている証拠です。重複を嫌って片方を閉じると、閉じた側でしか言えなかった人の申し出が消えます。重複の整理は、受けた後に記録を突き合わせれば済む作業で、数分で終わります。

二重の道を作るときに、もう1つ必要なものがあります。所管の部門そのものが当事者の場合の道です。ここは3層目の既存の窓口が担います。3層目に社外の受け口を含めている会社なら、AIの使い方についても社外の受け口が使えるかどうかを確かめて、使えるなら明記します。確かめずに書くと、社外の受け口が受け取りを断る場面が出ます。

匿名をどこまで認めるか

匿名を認めるかどうかは、この設計でいちばん議論になる部分です。認めれば申し出は増えますが、確かめるための問い返しができません。入口では匿名を認め、調べる段では名乗ってもらう道を残すという組み方が、実務では収まりがよくなります。

具体的には、入口の様式に名前の欄を置きますが必須にしません。代わりに、やり取りだけができる連絡の手立てを用意します。本人が誰か分からなくても返事だけは返せる形にしておけば、匿名のまま問い返しができます。返せない匿名は、一方通行の投書箱になります。

匿名で受ける場合の限界も、先に伝えます。誰がいつ何をしたのかが特定できない申し出は、確かめられる範囲が狭くなります。これは断り文句ではなく事実なので、受け口の説明文に正直に書いておきます。書いておくと、匿名で出す人も自分から手がかりを添えてくれるようになります。

逆に、匿名を理由に扱いを下げるのは避けます。匿名だから後回しにする、匿名だから記録しない、という運用にすると、匿名の口は形だけになります。受けた順に記録し、確かめられる範囲で確かめ、確かめられなかったことも記録に残す。この扱いを、名乗った申し出と同じにそろえます。そろっているかどうかは、記録の日付の並びを見れば分かります。

名乗った人を守る決めを、先に書いておく

名乗ってもらうには、名乗った後に何が起きないかを先に示す必要があります。守る決めを、申し出を受け始めてから作るのでは遅すぎます。最初の1件が来る前に、文書にして配っておきます。配る場所は、経路の案内と同じ紙の上です。

書く内容は3つです。1つ目、申し出をした人を探す行為をしないこと。2つ目、申し出を理由に不利益な扱いをしないこと。3つ目、名前を知る人の範囲を限ること。公益通報者保護法の改正法では、従業員数にかかわらず、通報者を探す行為や通報を妨げる行為が禁じられます。法令の対象になる通報でなくても、同じ扱いを社内の決めとして書いておけば、線が1本で済みます

3つ目の「名前を知る人の範囲」は、具体的に人数で書きます。受けた人と、判定する人の2人まで。それ以上に広げる場合は本人に断る。人数で書くと守れているかどうかを後から確かめられますが、「必要最小限」と書くと確かめられません。確かめられない決めは、破られても気づけません。

加えて、いつまで守るのかも書きます。改正法では、通報を理由とした解雇は無効とされ、解雇以外の不利益な取扱いも禁じられます。社内の決めに写すときは、期間を区切って書くほうが確かめやすくなります。たとえば申し出から1年の間は、その人の異動や評価の変更を所管の部門が事前に把握する、といった形です。期間と確かめ方の両方が書かれていない決めは、あってもなくても同じになります。

申し出のときに書いてもらう項目

受け口に置く様式は短くします。長い様式は、書いている途中で手が止まります。必須にするのは、何が起きたか、いつ起きたか、どこで起きたかの3つだけ。残りは任意にします。3つとも1行で書ける内容なので、思い立った日に出せます。

任意で置く項目は4つです。関わった人、使われた道具、自分がどう関わったか、どうしてほしいか。最後の「どうしてほしいか」は、受ける側にとって最も情報量の多い欄です。止めてほしいのか、決まりのほうを直してほしいのか、ただ知っておいてほしいのかで、次の動きが変わります

書いてもらわない項目も決めます。申し出の内容を裏づける資料の添付を必須にしないこと。画面の写しを求めると、それを取るために本人がもう一度その画面を開くことになり、手間と気まずさの両方が増えます。任意で置き、無くても受けます。裏づけを集めるのは、受けた側の仕事です。

様式は、紙でも画面でも構いませんが、提出したことが本人に見える形にします。送った後に何も表示されないと、届いたかどうか分からず不安が残ります。受付の番号を返す、控えが手元に残る、といった形にしておけば、後で状況を尋ねるときの手がかりにもなります。手がかりがないと、尋ねること自体をあきらめます。

受けてからの返し方を、時間で決める

経路が使われ続けるかどうかは、最初の1件の返し方で決まります。受けてから返すまでの時間を、あらかじめ数字で決めておきます。決めないと、忙しい週に返事が止まり、止まったことが噂として職場に広まります。噂は、次の申し出を確実に減らします。

決めるのは3つの時間です。受け取った合図を返すまでが1営業日、内容をどう扱うかの方針を返すまでが5営業日、その後は1週間ごとに状況を返す。扱いが決まらない期間でも、決まっていないという連絡は返します。無言の期間が2週間続くと、握りつぶされたと受け取られます。

返す内容にも決めが要ります。調べている最中の詳細は返さず、いまどの段にあるかだけを返します。詳細を返すと、そこから当事者に伝わる経路ができてしまいます。段の呼び名を3つか4つに決めておけば、毎回書き方を考えずに済み、返すこと自体の負担も下がります。

最後に、終わったときの返し方です。結果の詳細は返せないことが多いのですが、終わったこと自体は必ず返します。終わりの連絡がないと、その人にとって申し出は終わりません。処分の中身を伝える必要はなく、確かめた範囲と、決まりや設定をどう変えたかを伝えれば足ります。変えていないなら、変えなかった理由を1行添えます。

申し出が減る返し方

返し方を誤ると、2件目が来なくなります。ここでは、実際に申し出を止めてしまう返し方を並べます。どれも悪意なく、丁寧なつもりで行われるのが厄介なところです。

  • 申し出た人に「本人には直接言ってみましたか」と返す。言えないから受け口に来ているので、経路の存在そのものを否定することになる
  • 受けた内容を、そのまま当事者の上長へ転送する。名前を伏せても、いつ何をしたかという情報から誰が言ったかは推測できる
  • 全社への注意喚起として、その事例を具体的に配る。職場の人数が少ない場合、誰の話かが特定できてしまう
  • 決まりの条文を引いて「これは違反に当たりません」とだけ返す。危ういという申し出は、条文に触れていないから出てくる
  • 1件目の調べに時間をかけて、返事を2週間出さない。丁寧に調べているつもりでも、申し出た側からは無視と区別がつかない

2番目と3番目は、どちらも本人を守るつもりの動きが、かえって本人を露出させている例です。伏せる対象は名前だけではありません。日時、場所、関わった人数のような、絞り込みに使える情報も同じように扱います。伏せ方の基準を先に決めておかないと、その場の判断で漏れます。

4番目には、決まりの側を直す入口があります。条文に触れていない申し出が何度も来るなら、直すのは人ではなく条文のほうです。返すときも「今回は決まりには当たりませんが、同じ懸念が3件目なので条文を見直します」という形にすると、申し出た側の行動が無駄にならなかったことが伝わります。

社外から来る指摘の受け口

申し出は社内からだけ来るわけではありません。取引先や委託先から「御社の担当者が、こちらの渡した資料をAIに入れているようだ」という指摘が来ることがあります。この種の指摘は、社内向けに作った経路にはまったく乗りません

社外からの指摘は、たいてい営業の担当者に直接届きます。届いた担当者が当事者に近い立場なら、そこで止まります。だから、営業が受けた指摘を上げる先を、社内の経路と同じ場所に決めておきます。決めておけば、受けた担当者が上げるかどうかを判断せずに済みます。判断させるから止まります。

決め方は3つです。誰が受けても24時間以内に所管の部門へ上げる。上げる先の宛先は1つに固定する。上げた時点で、指摘した相手にも受け取ったことを返す。社外からの指摘は、返事の速さがそのまま取引の信頼に響きます。中身の回答より先に、受け取った事実を返します。

加えて、委託先との取り決めの側にも書いておきます。気づいたことをどこへ言えばよいかを、契約や覚書の中に1行だけ入れる。入れておけば、委託先の担当者が自社の営業窓口を通さずに所管の部門へ直接言えます。逆に書かれていないと、言うかどうかから迷わせることになり、迷った末に言われないまま終わります。

経路を作った後、使われるまでにやること

経路を作っただけでは使われません。決まりの文書に書いてあるだけの窓口は、存在を知られていないのと同じです。作った後に、使われる状態まで持っていく作業が別に要ります。この作業は1か月ほどかかります。

STEP1
3層の道を1枚に書く

同じ職場の相手、所管の部門への直通、既存の内部通報の窓口。3つを1枚に並べ、どれを使ってもよいと明記する。

STEP2
守る決めを先に配る

探す行為をしない、不利益な扱いをしない、名前を知る人を2人までにする。この3つを文書にして、経路の案内と一緒に配る。

STEP3
最初の1件を自分で流す

軽い内容で1件流し、受け取りから返信までの時間を実際に測る。決めた時間で返せない箇所があれば、直してから公開する。

STEP4
説明する場を3回に分ける

配って終わりにせず、全体への説明、部門ごとの説明、新しく入った人への説明の3回に分ける。1回では届かない。

STEP5
件数を四半期ごとに見る

0件が続く経路は、使われていないと読む。増えた場合も減った場合も、理由を1行書いて残す。

3つ目の「最初の1件を自分で流す」は省略されやすいのですが、ここで詰まりが見つかります。受け取りの合図を返す仕組みがない、記録を残す場所が決まっていない、といった穴は、流してみるまで気づきません。本番の1件目でこの穴に当たると、その1件が最悪の形で処理され、噂だけが残ります。

4つ目の説明は、相手によって内容を変えます。全体への説明では「どこに言えばよいか」と「言った後どうなるか」の2点だけを伝えます。部門ごとの説明では、その部門で実際に起きそうな場面を1つ挙げて、それが申し出の対象かどうかを一緒に考えます。抽象的な説明だけでは、自分の場面に当てはめられません。

申し出が増えたことを、悪い数字として扱わない

経路が通ると、件数は増えます。ここで件数の増加を「違反が増えた」と読むと、経路そのものが閉じます。受ける部門が責められれば、次からは受ける前に減らそうとします。減らす方法はいくらでもあり、どれも表からは見えません。

読み方を先に決めておきます。件数は、経路の通り具合を見る数字です。中身の深刻さは別の数字で見ます。件数と深刻さを分けて報告する形にしておくと、増えた月に慌てずに済みます。分けずに報告すると、件数が増えた月はそのまま悪い月として扱われます。

  • 四半期ごとに、件数・種類の内訳・受けてから返すまでの平均日数の3つを報告する(深刻さの判定は別に扱う)
  • 0件が2四半期続いたら、経路の説明をやり直す(違反がないのではなく、届いていない可能性を先に疑う)
  • 同じ種類の申し出が3件を超えたら、決まりの条文か道具の設定を見直す(人を注意しても3件目は止まらない)

もう1つ、報告のときに一緒に出すとよいものがあります。申し出をきっかけに直したものの一覧です。決まりの条文を直した、設定を変えた、説明を足した。直った実績が見えると、次の申し出が出やすくなります。件数だけを報告すると、報告そのものが後ろ向きな数字の共有になって終わります。

よくある質問

上司が当事者の場合は、どうすればよいですか

上長を通さずに所管の部門へ直接届く道が用意されているはずなので、そちらを使います。用意されていないなら、それは経路の作りの不備です。決まりの文書に「上長を通さずに直接連絡してよい」と書かれているかどうかを確かめ、書かれていなければ、その1行を足してもらうこと自体を所管の部門に申し出ます。

決まりに違反しているかどうか、自分では判断できません

判断しないまま出して構いません。受け口は、違反かどうかを判定する場ではなく、気づいたことを集める場です。判定は受けた側の仕事なので、「違反かどうか分かりませんが」と書き添えて出せば足ります。判定まで出す側に求めると、確信を持てる人しか出さなくなり、件数は自然に0に近づきます。

すでに内部通報の窓口があります。別に作る必要がありますか

別の口を作るか、既存の口でAIの使い方も受けると明記するか、どちらかです。どちらでもよいのですが、書かないままにするのがいちばんよくありません。既存の窓口は法令の違反を想定して案内されていることが多く、社内の決まりの違反を受けてよいのかが読み取れないからです。案内文に1行足すだけで済みます。

匿名の申し出ばかりで、調べようがありません

調べられる範囲で調べ、調べられなかったことを記録に残します。そのうえで、匿名が多い理由を見ます。名乗ると不利益があると思われているか、名乗るほどのことではないと思われているかのどちらかです。前者なら守る決めの配り方を、後者なら受け口で使っている言葉の選び方を直します。

申し出の内容を、AIに要約させてもよいですか

整える用途なら構いませんが、条件が2つあります。元の文面を必ず残すことと、重さの判定はAIにさせないことです。要約は言い回しの強さを落とすので、切迫した申し出が穏やかな文章に変わります。判定する人は元の文面を読み、要約は目を通す順番を決めるためだけに使います。

まとめ

申し出が届かないのは、現場の意識ではなく経路の作りの問題でした。社内のAIの決まりを破ることは法令の違反とは限らないので、既存の内部通報の窓口にそのまま乗せず、AIの使い方についての申し出を受ける道を別に置き、法令に触れそうな内容を渡す道筋と、渡す判断をする人を先に決めます。

道は3層です。同じ職場の相手、所管の部門への直通、既存の窓口。上長を通す道と通さない道を並べて書き、どちらを使ってもよいと明記します。匿名は入口で認め、名乗った人については探さない・不利益に扱わない・名前を知る人を2人までにするという3つを、最初の1件が来る前に配ります。返しは1営業日で受領、5営業日で方針、その後は週ごと。件数が増えた月は、違反が増えた月ではなく経路が通った月として読みます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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