法令の確認をAIで一次処理する方法|二次確認まで設計する

法令の確認をAIで一次処理する方法|二次確認まで設計する

「この書き方で問題ないか確認しておいて、と言われても、法務がいないので誰にも聞けません」「AIに聞いたら大丈夫だと返ってきたのですが、根拠がどこにも書いていなくて、そのまま出す気になれませんでした」——法務部門を持たない部門では、毎週のように起きている詰まりです。ここで足りていないのは、AIの精度ではありません。本当は、AIに何をどこまでやらせ、どこから先を人が引き取るのかという線が引かれていないことが原因です。この記事では、日常の小さな法令確認をAIに一次で通すための材料の渡し方、返ってきたものの読み方、そして二次確認へ回す条件と回し先の決め方までを整理します。


カメ先生カメ先生

法令の確認をAIにやらせると危ない、とよく言われる。けれど危ないのは確認そのものではなくて、一次と二次を分けずに一度で終わらせようとするときなんだ。条文を渡さずに聞けば、記憶の中のもっともらしい条文が返ってくる。


カメ子カメ子

条文を渡すかどうかで、返ってくるものの性質が変わるということですか。


カメ先生カメ先生

そう。そして一次でやらせるのは判断ではない。関係しそうな条文を集めて、どの要件に触れる可能性があるかを理由つきで並べるところまで。そこで止めれば、出てきたものを人が突き合わせられる。


カメ子カメ子

判断を返させるのではなく、人が確かめられる材料を返させる、という分け方なのですね。その材料には、何を添えて渡すのでしょう。


この記事のポイント
  • 一次処理にやらせるのは判断ではなく仕分けと当たり付け。関係しそうな条文と、触れる可能性のある要件を理由つきで並べさせるところで止める
  • 渡す材料は3つ。条文そのものと施行日、社内規程と過去に出した判断、区分の定義と基準。材料を添えないと、もっともらしい条文が作られて返ってくる
  • 二次確認へ回す条件は5つを先に決める。金額が動く/契約に触れる/個人を特定できる情報を扱う/社外に出る/社内に前例がない

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目次

法務に上げるほどでもない確認が、いちばん滞る

法令の確認には、大きさの違うものが混ざっています。契約書を1本読み通すような文書単位のレビューは、専門の担当者が時間を取って進める仕事です。一方で、現場で毎日出てくるのはもっと小さい問いです。この表記は対象になるのか。この使い方に届出が要るのか。この取引はその法律の適用に入るのか。この記録はいつまで残す必要があるのか。どれも数分で答えが出そうに見えて、実際には誰も答えを持っていません。

小さい問いほど滞ります。理由は3つあります。自部門に法務がいないので聞く先がない。外に聞くと大ごとになるうえ費用も発生する。自分で調べると、条文にたどり着くまでで半日が消える。その結果、確認しないまま進めるか、確認できるまで止めるかの二択になります。どちらも、後で困る側に倒れます。

道具がないわけではありません。総務省の令和7年版情報通信白書(2025年7月公表)では、生成AIについて「積極的に活用する」「領域を限定して活用する」と答えた日本企業は49.7%でした。半数近くが方針を持っている一方で、法令の確認だけは手前で止まります。間違えたときに戻せない種類の仕事だからです。だからこそ、戻せる範囲まで作業を切り分ける設計が要ります。

この記事で扱う範囲を先に決めておきます。扱うのは、上に挙げたような日常の小さな確認です。契約書という文書単位のレビューと、その提供が弁護士法との関係でどこまで許されるのかという整理は、別の記事の領分なので踏み込みません。メール配信に限った法令の項目一覧も、広告表現の規制も同じく扱いません。分野を横断して毎日出てくる、小さな問いの通し方だけを書きます

一次処理とは、判断ではなく仕分けと当たり付けのこと

一次処理という言葉を、作業の中身で定義しておきます。参考になる実例があります。デジタル庁が令和7年度に行った「法制事務における生成AIの活用等に関する技術検証」では、法案の条文にアナログ的な手法を前提にした規制が含まれていないかを点検するツールが作られました。報告によると、100件の条文を約2分で判定し、判定の理由もあわせて出力するため、担当者は出力内容のチェックに集中できるとされています。

ここで起きている分担が、そのまま一次処理の見本になります。AIがやるのは、条文を集める、決められた区分に仕分ける、なぜその区分にしたのかの理由を書く、の3つです。人がやるのは、出てきた仕分けが合っているかを確かめることです。AIは答えを出しているのではなく、人が確かめられる形に並べ直しています

判断と仕分けの違いは、返させる文の形に出ます。「これは適法ですか」と聞けば、はいかいいえが返ります。これは判断で、受け取った側には確かめる手がかりが残りません。「どの条文のどの要件に触れる可能性があるか、触れないと考えられる理由もあわせて挙げてください」と聞けば、条文番号と要件が返ります。後者は、返ってきたものを原文に当てれば正誤が付きます。一次処理で返させるのは、必ず後者の形にします。

出口も先に決めておきます。一次処理の結果は3つのどれかに落ちます。このまま進めてよい、社内規程の範囲で手当てすれば足りる、二次確認へ回す。出口が3つしかないと決めておくと、返ってきた文章を読み込みすぎずに済みます。どの出口にも落ちない回答は、材料が足りていない合図なので、材料を足して聞き直します。

AIに通してよい問いと、最初から人へ回す問い

何でも一次処理に通そうとすると、途中で必ず破綻します。問いの型で分けておきます。次の表は、日常の確認に出てくる4つの型について、一次処理でやらせることと、最初から人へ回す条件を並べたものです。

問いの型現場での出方一次処理でやらせること最初から人へ回す条件
用語と表記の確認この言い方は規制の対象になる語に当たるのか対象語を定めている条文を引き、定義の部分を抜き出して、当たる場合と当たらない場合の分かれ目を並べるその表記を社外の広告や契約の文面に使う予定がある場合
手続の要否この使い方に届出や通知が要るのか手続を定めた条文と、期限や提出先が書かれた部分を並べ、要否の分かれ目になる要件を挙げる期限が既に迫っていて、間違えると取り返しがつかない場合
適用の範囲この取引はその法律の対象に入るのか適用の範囲と除外を定めた条文を並べ、自社の事情のうちどこを確かめれば決まるかを挙げる自社の業種や規模が、範囲の境目に近いと分かっている場合
保存と期限この記録はいつまで残す必要があるのか保存の義務を定めた条文と年数を並べ、数え始めの時点がいつからかを挙げる既に廃棄してしまった記録について、後から確認している場合

表の使い方は1つだけ決めます。4列目に当てはまった時点で、一次処理は飛ばして人へ回します。一次処理に通してから回すのではありません。通すと、返ってきた文章に引っ張られて判断が甘くなるからです。先に外すほうが速く、間違いも減ります。

通さないと決めた問いは、そのまま放置せずに置き場所を作ります。問いの1文、いつまでに答えが要るか、決まらないと何が止まるか。この3つを書いた一覧を作り、週に一度まとめて回します。1件ずつ相談すると先延ばしになりますが、まとめて出すと1回のやり取りで片づきます。回す先の選び方は後の章で扱います。

渡す材料1:条文そのものと、その施行日

材料を添えずに聞くと、何が起きるかは決まっています。AIは学習した範囲の記憶から、もっともらしい条文番号と条文の文章を組み立てて返します。番号は実在することが多く、文章も自然なので、読んだだけでは見分けが付きません。条文は必ずこちらから添えます。これが一次処理の前提条件です。

条文の取り出し先は決めておきます。国の法令であれば、デジタル庁が運営する法令検索(イーガブ法令検索)から取れます。施行中の法令に加えて、それに係る未施行の法令も収録されているのが重要な点です。法令ごとに時点の違う複数の版が存在するため、いま画面に出ている条文が、どの時点のものかを必ず見ます。過去30日間に更新された法令を確認できる一覧もあるので、よく使う法令はここを見る習慣を付けます。

施行日は本文に書き添えます。たとえばフリーランス・事業者間取引適正化等法は2024年11月1日に施行されました。改正電気通信事業法の外部送信規律は2023年6月16日の施行です。施行日を添えずに聞くと、施行前の条文や改正前の版が混ざって返ってきます。渡すときは条文の先頭に、何年何月何日時点の条文かを1行で書いておきます。1行あるだけで、後から見直した人が版のずれに気づけます。

未施行の条文を渡すときは、もう一段の注意が要ります。未施行のものを現在の条文として渡すと、今はまだ不要な手続を要ると判定してきます。未施行を渡す場合は、現在の版と未施行の版を両方添えて、今日の時点でどちらが適用されるかを明示します。これから変わる部分を先に知りたいときは、比較の作業そのものを一次処理に任せると、変更箇所の当たり付けが速くなります。

渡す材料2:社内規程と、過去に出した判断

法令だけでは、現場の問いは決まりません。多くの会社では、社内規程のほうが法令より厳しく作られているからです。法令上は届出が不要でも、社内規程では上長の承認が要る。法令上の保存期間は5年でも、社内では7年と決めている。法令だけを渡すと、社内規程を破る答えが返ってきます。規程の該当部分も同時に渡します。

もう1つ添えたいのが、過去に出した判断です。似た問いについて、以前どう決めたか。3件から5件あれば十分効きます。過去の判断は、法令と規程の間にある解釈の幅を埋めます。同じ問いに会社として違う答えを返してしまう事故は、この材料がないときに起きます。新しく文書を作る必要はありません。

集め方は、新しく作らないことが原則です。既にあるものを集めます。上長が返したメールの文面、会議の議事に残った決定、以前に外部へ照会したときの回答。すでに書かれたものを1か所に置き直すだけで、材料としては成立します。置き場所は1つに決め、日付と誰が決めたかだけ足しておきます。なお、1件をどう書くかという書き方の設計は別の記事の領分なので、ここでは触れません。

渡す材料3:区分の定義と基準を先に書いておく

3つ目の材料は、判断そのものではなく、判断の枠です。先に挙げたデジタル庁の点検ツールでは、各類型の定義と、どの段階に当たるかの基準をあらかじめ書き込んだうえで、単語だけでなく法令全体の文脈を考慮するよう指示していると報告されています。区分と基準を先に渡しているので、出力が毎回同じ形で返ってきます。

自分の業務に置き換えると、決めるのは3つです。どの区分に仕分けるか(たとえば、手続が要る/要らない/条件によって変わる)。それぞれの区分の定義。区分ごとに次にやることは何か。区分を先に渡さないと、返ってくる文章の形が毎回変わり、比べられなくなります。比べられない出力は、溜めても資産になりません。

出力の形も指定します。1行につき、条文番号と項号、区分、そう判断した理由、確かめるべき事実、の5つの列で返させる。これだけで、返ってきたものをそのまま突き合わせの作業表として使えます。文章で返させると、読むだけで時間が溶けます。列を決めて返させると、確かめる作業が機械的になり、担当が代わっても同じ手順で回せます。

出典を書かせる。書けないなら書けないと返させる

一次処理の成果物が使えるかどうかは、出典の有無でほぼ決まります。デジタル庁の法制執務マニュアルチャットボットは、この点を丁寧に作り込んでいます。報告によると、意味の近さによる検索を70%、キーワードの一致による検索を30%の割合で併用し、見つかった上位10件をAIが再評価して並べ替え、関連性の高い上位5件から回答を生成する設計です。

さらに、生成された回答について実際の記載を確認したいという要望が強かったことを踏まえ、出典となるページを明示し、該当箇所のテキストをハイライト表示する作りにしたとされています。実務でも同じことを求めます。条文番号と項号まで書かせる。渡した材料のどの部分から取ったかを書かせる。材料の中に根拠が見つからないときは、見つからないと返させる。この3つを毎回の指示に固定します。

根拠が見つからないという回答は、失敗ではありません。むしろ価値があります。材料が足りていないという情報が手に入るからです。そこで足すべきは条文なのか、社内規程なのか、過去の判断なのかが分かれば、次の一手が決まります。何かしら答えを返してくる状態のほうが、実は危険です。書けないと返せる設計になっているかを、最初に1問投げて確かめておきます。

言い切らせない聞き方に変える

聞き方を変えるだけで、返ってくるものの使いやすさが変わります。避けるのは、はいかいいえで終わる問いです。「これは適法ですか」「届出は要りますか」と聞くと、断定が返ります。断定は、根拠が合っていても間違っていても同じ顔をしているので、受け取った側に確かめる手がかりが残りません

代わりに使う型は3つです。1つ目は両面で返させる型で、当たる可能性と当たらない可能性の両方を、それぞれの条文とともに挙げさせます。2つ目は分かれ目を返させる型で、どの事実が確かめられれば結論が決まるのかを挙げさせます。3つ目は不足を返させる型で、この材料だけでは決まらない点を挙げさせます。3つとも、結論ではなく次の作業を返させる聞き方です

実務では、この3つを1回のやり取りに詰め込まず、順番に使います。まず関係する条文を集めさせ、次に分かれ目を挙げさせ、最後に不足を挙げさせる。一度に聞くと、条文の精度が落ちます。1回目で出てきた条文を人が目で確かめ、外れているものを取り除いてから2回目に進むと、後の工程の手戻りが目に見えて減ります。

返ってきたものの読み方:当たっている型の見分け

返ってきた文章を全部読み込む必要はありません。当たっている回答には、共通の形があります。条文番号だけでなく項や号まで書かれている。要件が箇条に分解されている。渡した材料に出てくる語を、言い換えずにそのまま使っている。そして、決めるために足りない事実が挙げられている。この4つがそろっている回答は、突き合わせに進む価値があります

突き合わせのやり方は決まっています。返ってきた条文番号を、先の法令検索でそのまま引きます。開いた条文の文面と、AIが引用した文面を見比べます。ここまでで1件あたり30秒ほどです。読み込むのは、番号が一致した条文だけにします。番号が合っていない時点で、その行の理由づけを読む意味はありません。

引っかかりやすい場所も挙げておきます。文章がきれいに整っているほど、人は確かめる手を止めます。とくに、社内規程の言い回しをそのまま使って書かれた回答は、社内の誰かが書いたように読めてしまいます。読みやすさは、正しさの証拠になりません。文体ではなく、条文番号が原文と一致しているかどうかだけを見ます。

返ってきたものの読み方:外している4つの型

外し方にも型があります。スタンフォード大学の研究者らが2025年に学術誌で公表した検証では、法律調査に特化したツールでも誤りが17%と33%の割合で残り、特化していない大規模言語モデルでは43%に達したと報告されました(検証の対象は2024年5月時点のツールです)。注目すべきは誤りの中身で、架空の資料を作り出す型だけでなく、実在する資料を誤って結びつける型が含まれていた点です。実務で見つかるのは、次の4つです。

  • 条文番号は実在するが、引用されている文面は別の条文のもの。番号だけを見て正しいと判断してしまう
  • 引いた条文は正しいが、改正前の版から取られていて、いつ時点の条文かが書かれていない
  • 一般論としては正しいが、自社の業種や規模が適用の除外に当たることを見落としている
  • 渡した社内規程を読まずに、世間でよくある運用を前提にして答えている

見つけ方は型ごとに違います。1つ目は条文の文面を原文と1文ずつ照らせば出ます。2つ目は施行日を見れば出ます。3つ目は適用の範囲と除外の条文を、別に1問立てて引かせると出ます。4つ目は、返ってきた答えに社内規程の語が1つも出てこないかどうかで見分けが付きます。規程を渡したのに規程の語が出てこないなら、読んでいません。

この4つを、確認の手順に固定します。番号を引く、施行日を見る、適用の範囲を別に聞く、規程の語が出ているかを見る。1件あたり2分から3分で回ります。この2分を省くと、一次処理の成果物は使えない材料に変わります。速さの利得は仕分けの側にあるので、確認の側を削ってはいけません。

二次確認へ回す条件を、先に5つ決めておく

回すかどうかを毎回その場で考えると、忙しい日ほど回さなくなります。条件を先に決め、当てはまったら自動的に回す形にします。次の表は、5つの条件と、回す先、回すときに添えるものを並べたものです。

回す条件当てはまる場面の例回す先の第一候補回すときに添えるもの
金額が動く違反したときに課される金銭や、対応にかかる費用が発生し得る社内で予算を持つ責任者と、必要に応じて外部の専門家一次処理の出力と、想定される金額の幅
契約に触れる取引先との取り決めの内容そのものを変える必要が出る契約を所管する部門該当する取り決めの条項と、変えたい点
個人を特定できる情報を扱う氏名や連絡先を含む記録の扱いが論点になる個人情報の取り扱いを所管する部門扱う情報の項目と、取得元、保存の場所
社外に出るその判断の結果が、社外向けの文面や公表物に載る広報または法務の窓口掲載予定の文面と、掲載する媒体と時期
社内に前例がない過去の判断の材料に、似た事例が1件も見当たらないその業務を所管する部門の責任者一次処理の出力と、なぜ前例がないと判断したか

5条件の使い方は、足し算ではなく1つでも当たれば回す、にします。2つ当たったら回す、という決め方にすると、回らなくなります。回す件数が多すぎて業務が止まるようなら、条件を緩めるのではなく、条件に当たる作業そのものを減らせないかを先に考えます。たとえば社外に出す文面の型を用意しておけば、4つ目に当たる件数は自然に減ります。

回す前にやることも決めておきます。一次処理の出力をそのまま転送してはいけません。人が確かめた結果、外れていた行は削り、残った行に自分の見立てを1行足します。回す相手に渡すのは、AIの出力ではなく、人が確かめた後の3行から5行です。そのまま転送すると、相手の側で同じ確認をやり直すことになり、全体の時間はむしろ増えます。

二次確認の回し先を、4つから選ぶ

回し先は4つあり、費用と時間と確からしさが違います。1つ目は条文の原文に当たり直すこと。費用はゼロで、その日のうちに終わります。2つ目は社内規程の持ち主に聞くこと。半日から数日で、社内の解釈が確定します。3つ目は所管の官庁が公表している質疑応答や相談の窓口に当たること。数日から数週間かかりますが、公表されている質疑応答は無料で、しかも書かれた形で残ります。4つ目が外部の専門家です。

選ぶ順番は、上から順に試すのが基本です。多くの問いは1つ目と2つ目で片づきます。一次処理の出力が、この順番を短くしてくれます。どの条文を見ればよいかが分かっていれば1つ目は数分で終わり、社内規程のどこが論点かが分かっていれば2つ目のやり取りも1往復で済みます。一次処理の効き目は、答えが出ることではなく、聞く先が絞れることに出ます

外部の専門家へ回すときは、渡す形を整えます。問いを1文で書く。関係すると考えている条文の番号を並べる。自社の事情のうち、答えに影響しそうな事実を挙げる。既に確かめたことと、まだ確かめていないことを分ける。この4点がそろっていると、やり取りの往復が1回か2回で終わります。整えずに丸ごと投げると、事実の確認だけで数往復します。

一次処理を通す5工程

ここまでを、毎回同じ順番で回せる形にまとめます。1件あたり、慣れれば15分から30分です。

STEP1
問いを1文に書き直す

確認したいことを、主語と述語のある1文にします。1文にできない問いは2つ以上が混ざっているので、分けてから進めます。この段階で、先の4条件のどれかに当たるなら一次処理を飛ばします。

STEP2
材料を3点そろえる

条文とその施行日、社内規程の該当部分、過去に出した似た判断。3点のうち欠けるものがあれば、欠けていることを明記して渡します。黙って欠かすと、その部分が作られて返ってきます。

STEP3
区分と出力の形を指定して返させる

区分の定義と基準を先に書き、条文番号と項号、区分、理由、確かめるべき事実の5列で返させます。断定を求めず、当たる可能性と当たらない可能性の両方を挙げさせます。

STEP4
条文番号を引いて突き合わせる

返ってきた番号を法令検索で引き、文面を照らします。番号が合わない行は、理由を読まずに削ります。施行日、適用の除外、社内規程の語の有無も、ここで一緒に見ます。

STEP5
二次確認の要否を5条件で判定する

金額、契約、個人を特定できる情報、社外、前例なし。1つでも当たれば回します。回す先は上から順に選び、確かめた後の3行から5行だけを渡します。

工程を5つに割る理由は、途中で止められるようにするためです。2工程目で材料がそろわないと分かれば、そこで止めて材料を集めに行けます。止められない手順は、途中で気づいても最後まで走ってしまいます。工程ごとに、次へ進んでよいかを1つだけ確かめる問いを置いておくと、判断が速くなります。

記録に何を残すか

一次処理は、記録を残して初めて効きが積み上がります。残す項目は固定します。毎回違う形で残すと、後から並べても比べられません。

  • 問いの1文と、確認した日付
  • 渡した材料の3点と、条文がいつ時点のものだったか
  • 返ってきた条文番号と、そのうち突き合わせで残った番号
  • 人が変えた点と、変えた理由を1行
  • 二次確認へ回したかどうか、回した先、返ってきた結論

この5項目が溜まると、そのまま材料2の「過去に出した判断」になります。つまり記録は、次の一次処理の精度を上げるために残しています。30件も溜まると、似た問いに対して社内の答えが安定し始めます。置き場所は1か所に決め、検索できる形にしておきます。表計算の1行1件で十分です。

残す作業を軽くする工夫も要ります。工程4で削った行と残した行を、そのまま記録の形にしておけば、追加の入力はほぼ発生しません。記録を別作業にすると、忙しい週から順に抜けます。作業の副産物が記録になるように工程を組んでおくのが、続けるための唯一の方法です。

AIに法律の判断をさせない。人が確認する範囲を先に決める

最後に、外してはいけない線を書いておきます。AIに法律の判断をさせないことです。一次処理で返させるのは、関係する条文と、触れる可能性のある要件と、その理由までです。適法かどうか、やってよいかどうかの結論は、人が持ちます。総務省と経済産業省が公表している「AI事業者ガイドライン」は、2026年3月31日に第1.2版が出ており、利用する側が果たす役割についても整理されています。自社の方針を作るときの下敷きになります。

線の引き方は具体に落とします。AIの出力だけを根拠にして社外へ出す文面を確定しない。金額と契約に関わる件は、必ず人が確かめてから進める。返ってきた内容には必ず根拠を書かせ、根拠が書けないときは書けないと返させる。この3つを社内の決めごとにして、一次処理の指示文の先頭に毎回入れます

あわせて、人が確認する範囲を先に決めます。全件を人が確かめるのは、二次確認の5条件に当たった件と、前例がないと判定された件です。それ以外は、月に一度まとめて抜き取りで見ます。範囲を決めずに始めると、最初の1か月は全件を見て、2か月目からは何も見なくなります。最初から抜き取りの割合を決めておくほうが、長く続きます。

なお、契約書という文書単位のレビューをどこまで任せられるのか、そしてその提供が弁護士法との関係でどう整理されるのかは、この記事では扱いません。別の記事の領分です。ここで書いたのは、文書を読むより手前にある、日常の小さな確認を通すための段取りに限られます。

まとめ

日常の法令確認が滞るのは、聞く先がなく、自分で調べると半日かかるからでした。そこにAIを入れるときの要点は、一次と二次を分けることです。一次でやらせるのは判断ではなく、条文を集めて区分し、理由を書くところまで。渡す材料は、条文と施行日、社内規程、過去の判断の3点。返ってきたものは、条文番号を引いて突き合わせ、施行日と適用の除外と規程の語の有無を見ます。二次確認へ回す条件は、金額・契約・個人を特定できる情報・社外・前例なしの5つを先に決めておきます。回し先は原文、規程の持ち主、所管の窓口、外部の専門家の順に試します。最後の結論は人が持ち、確認する範囲は始める前に決める。まずは直近に止まっている確認を1件選んで、問いを1文に書き直すところから始めてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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