VBAマクロの引き継ぎにAIを活かす方法|作り直すかを決める

「前任者が作った集計のマクロ、ボタンを押せば動くけれど中身は誰も分からない」「AIに読ませれば全部書き直してくれるのでは」。マーケや営業管理の現場で、こうした声を聞く機会が増えました。どちらの声にも一理あり、生成AIはVBAの説明をかなり上手にこなします。ただ、AIを使えば古いマクロを新しく書き直せる、という期待は少しずれています。引き継ぎで最初に要るのは書き直しではありません。本当は、そのマクロが何をしているかを言葉にして、残すか・直すか・作り直すか・やめるかを決めることです。この記事では、AIに説明させる前の下ごしらえ、説明の確かめ方、よくある3種類のマクロでの進め方、そして4つの行き先の決め方を整理します。
カメ先生作った人が異動や退職でいなくなり、中身の分からないマクロだけが残る。これは多くの会社で同じように起きている現象なんだ。そこに生成AIが入ってきて、コードを日本語で説明させられるようになった。
カメ子説明してもらえるなら、あとはAIの言うとおりに直せば済むのではありませんか。
カメ先生そこが落とし穴でね。AIの説明はもっともらしく聞こえるけれど、表のどの列を使うか、月の境目をどう扱うかといった細部で外れることがある。だから説明は下書きとして受け取り、テスト用の写しで動かして確かめる。残すか作り直すかをAIに判断させてもいけない。決めるのは、そのマクロの出力を使っている人たちだよ。
カメ子AIは中身を読む係で、行き先を決める係ではない、ということですね。
- 古いマクロの引き継ぎで最初に決めるのは、書き直し方ではなく「残す・直す・作り直す・やめる」の行き先
- AIに渡す前に接続先・パスワード・顧客データを消し、説明はテスト用の写しで動かして確かめる
- VBスクリプトの段階的な廃止とネット由来のマクロの既定の停止で、放置しても動き続けるとは限らない
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引き継ぎで最初に決めるのは「どう直すか」ではない
中身の分からないマクロを引き継いだとき、多くの人は「どう直せばよいか」から考え始めます。けれど、まだ何をしているか分からない段階で直し方を考えても、判断の材料がありません。先に要るのは、そのマクロがどのファイルを読み、どんな計算をして、どこに何を書き出しているかを、コードを読めない人にも分かる言葉で書き出すことです。生成AIが最も力を発揮するのは、この書き出しの下書きです。
書き出しができると、行き先の候補が見えてきます。今も毎月使われていて問題が無いなら残す。一部の部品だけが古いなら直す。仕様がすでに業務と合っていないなら作り直す。出力を誰も見ていないならやめる。やめるという選択肢は意外に多く当たります。前任者のためだけに作られた集計が、担当が替わったあとも惰性で回っていることは珍しくありません。
つまり、AIに期待する役割は「書き直してくれる相手」ではなく、「中身を読み上げてくれる相手」です。書き直しの案を出させる場面もありますが、それは行き先が「直す」か「作り直す」に決まってからの話です。順番を逆にすると、誰も使っていないマクロをきれいに書き直すという、いちばん無駄な作業が生まれます。
もう一つ大事なのは、行き先を決める人を先に決めておくことです。マクロを引き継いだ担当者が一人で判断すると、出力を受け取っている他部署の事情が抜け落ちます。集計の結果を会議資料に使っている人、その表を別の仕組みに取り込んでいる人など、出力の受け手を洗い出し、その人たちと一緒に決める段取りを最初に組んでおきます。
放置できなくなった理由1:VBスクリプトの段階的な廃止
古いマクロを今見直すべき理由の一つが、マイクロソフトによるVBスクリプトの段階的な廃止です。ウィンドウズの公式ブログでは2024年5月に段階的な廃止の計画が示され、マイクロソフト365の開発者向けブログは2025年9月9日の記事で、VBAのプロジェクトへの影響と備え方を説明しています。ここで注意したいのは、廃止されるのはVBスクリプトであって、VBAそのものではないという点です。
同じ記事によると、計画は3段階です。第1段階ではVBスクリプトは既定で有効なままで、既存のVBAのプロジェクトはそのまま動きます。第2段階は2026年から2027年ごろとされ、VBスクリプトが既定で無効になります。第3段階は時期未定で、将来のウィンドウズから取り除かれます。無効になった環境では、マクロの中から外部のVBスクリプトのファイルを呼び出す処理や、VBスクリプト由来の正規表現の部品を参照している処理が動かなくなるおそれがあります。
正規表現の部品については手当てもあります。同じ記事は、オフィスのバージョン2508(ビルド19127.20154)以降では、正規表現の部品がVBAに標準で含まれ、外部の部品を参照しなくても使えるようになったと案内しています。ただし、古いマクロが参照設定で外部の部品を指定したままなら、その書き方のまま動くかどうかは自社の環境で試さないと分かりません。
マーケや営業管理のマクロで正規表現が使われるのは、電話番号やメールアドレスの形式を整える、会社名の表記をそろえる、といったリスト整形の場面です。外部のスクリプトの呼び出しは、ファイルを移動したり別の処理を起動したりする場面で使われます。自分の部署のマクロがこのどちらかに当たるかを、AIの説明を使って最初に洗い出しておくと、廃止の影響を先回りして確かめられます。
- 第2段階の開始時期は「2026年から2027年ごろ」とされており、正確な月は公式の告知で確かめる
- マイクロソフトは、VBスクリプトを無効にした環境でプロジェクトを試し、隠れた依存を見つけることを勧めている
放置できなくなった理由2:ネット由来のマクロは既定で止まる
もう一つの理由は、インターネットから入ってきたファイルのマクロを既定で止める扱いです。マイクロソフトの管理者向け文書によると、エクセルなどのオフィスのアプリは、インターネット由来の目印が付いたファイルのマクロを既定で実行しなくなりました。エクセルでは、最新の更新チャネルで2022年7月27日に始まったバージョン2206から展開されています。対象はウィンドウズ版のオフィスだけで、マックやウェブ版は含まれません。
この扱いが引き継ぎで効いてくるのは、マクロ付きのファイルの受け渡し方です。前任者がメールに添付して配っていた、ブラウザでダウンロードして使っていた、という運用だと、新しい担当者の手元ではマクロが止まり、見慣れない警告の帯が出ます。同じ文書は、共有フォルダをIPアドレスで開いた場合も、信頼済みの場所として登録されていなければ止まることがあると説明しています。
個別のファイルなら、プロパティの画面で目印を外せば動きます。ワンドライブやシェアポイントのファイルは、ブラウザからではなく「デスクトップアプリで開く」を選ぶと目印が付かない、とも案内されています。ただし、警告を外す手順を覚えることと、そのマクロを信頼してよいかを判断することは別の話です。中身が分からないまま目印を外す習慣がつくと、本当に危ないファイルが紛れたときに止められません。
文書は、信頼済みの場所は慎重に、少なく使うよう求めています。引き継いだマクロが動かないからといって、共有フォルダを丸ごと信頼済みにするのは避けます。まずAIの説明で中身を把握し、残すと決めたマクロだけを、管理された置き場所に移すのが順番です。
AIに渡す前に、コードから消す情報
古いマクロには、作った人の手元でしか意味を持たない情報が埋め込まれていることがよくあります。代表的なのは、社内のデータベースや共有フォルダの接続先、ログインのためのパスワード、担当者の名前やメールアドレス、そして検算用に貼り付けたままの顧客データです。コードの中に書かれたパスワードは、そのまま外部のAIに渡してはいけません。
消し方は単純で、値を意味の分かる仮の言葉に置き換えます。接続先なら「共有フォルダの場所」、パスワードなら「接続用の暗証」、顧客の会社名なら「会社名の例」とします。置き換えても、処理の流れを説明させるには十分です。AIが知る必要があるのは、どこかに接続していることと、その後に何をしているかであって、接続先の具体的な値ではありません。
シートそのものを渡す場合はさらに注意が要ります。マクロの説明に必要なのは、列の見出しと数行の例だけです。実際の顧客名や金額が並んだ表を丸ごと貼り付けるのではなく、見出しを残して中身を架空の値に差し替えた数行を用意します。会社として利用を認めているAIか、入力した内容が学習に使われない設定になっているかも、渡す前に確かめておきます。
置き換えをした後は、元のコードと置き換えたコードの対応表を手元に残しておきます。AIの説明に「共有フォルダの場所から表を読み込む」と出てきたとき、それが実際にはどのフォルダかを後で突き合わせるためです。この対応表自体にも接続先やパスワードが載るので、保存する場所は社内の限られた人しか開けない所に限ります。
- 社内の接続先・共有フォルダの場所を仮の言葉に置き換えた
- パスワードや暗証の値を消した
- 担当者の氏名・メールアドレスを消した
- 検算用に貼られた顧客データを架空の値に差し替えた
- 使うAIが会社として認められたもので、入力が学習に使われない設定か確かめた
AIに読ませる順番:全体の地図から一つずつの処理へ
マクロをAIに読ませるときは、いきなり「このコードを説明して」と丸ごと渡すより、二段に分けるほうが説明の質が安定します。一段目では、マクロ全体を渡して、どんな処理の塊に分かれているか、どの塊がどの順番で呼ばれるかの地図を作らせます。二段目で、塊ごとに細かい説明を書かせます。長いマクロを一度に説明させると、後半の処理ほど説明が粗くなりがちだからです。
説明を書かせるときの指示には、三つの条件を入れておきます。一つ目は、説明の一文ごとに、根拠になったコードの行を示させること。二つ目は、読み取れない箇所や推測で書いた箇所を、推測だと明記させること。三つ目は、入力(どのファイルのどの列を読むか)と出力(どこに何を書くか)を必ず表にまとめさせることです。根拠の行が示されていない説明は、確かめようがありません。
処理の流れ図の下書きを作らせるのも有効です。文章の説明だけでは、分岐や繰り返しがどうつながっているかが見えにくいためです。流れ図は完成品として使うのではなく、出力を使っている人と打ち合わせるときの叩き台にします。「この分岐はもう使っていない条件では」といった指摘は、流れ図を前にしたほうが出やすくなります。
AIが「この処理は非効率なので書き換えるべき」といった提案を混ぜてくることもあります。説明の段階では、書き換えの提案は脇に置きます。今は何をしているかを知る段階であり、書き換えるかどうかは行き先を決めてからです。指示の中で、説明の段階では改善案を書かないことと先に伝えておくと、読み上げに集中した説明が返ってきます。
説明の正しさは、テスト用の写しで動かして比べる
AIの説明を読んで納得できても、それが正しいとは限りません。確かめる方法は一つで、ファイルの写しを作り、実際に動かして、説明どおりの結果になるかを比べることです。本番のファイルで試すと、上書きや送信が起きたときに取り返しがつきません。写しは、本番のフォルダとは別の場所に置きます。
比べ方のこつは、先に予想を書いておくことです。AIの説明をもとに「この入力の表なら、集計の表のこのセルにはこの数字が入るはず」と予想を書き、それから動かします。予想と実際が食い違った箇所が、説明の外れている所です。先月分の入力と出力が両方残っている月があれば、同じ入力で動かして先月の出力と一致するかを見るのが最も確実です。
外部に接続したり、メールを送ったり、別のファイルを上書きしたりする処理があるマクロは、写しで動かす前にもう一段の準備が要ります。接続先や送信先を、テスト用の場所や自分宛てに差し替えるか、その行だけを一時的に止めてから動かします。どの行が外部に作用するかは、AIの説明の入出力の表で先に確かめておきます。
マクロ付きのファイルを写し、名前に「テスト」と付けて別のフォルダに置きます。本番のファイルを開いたまま作業しないようにします。
AIの入出力の表を見て、接続・送信・上書きの行を洗い出し、テスト用の宛先に差し替えるか一時的に止めます。
AIの説明をもとに、入力に対してどんな結果が出るはずかを書き出し、それから実行します。
予想と違った箇所を記録し、その部分のコードをもう一度AIに読ませて説明を直させます。直した説明も同じ手順で確かめます。
シナリオ1:毎月のリード集計マクロ
よくあるのが、マーケティングの管理ツールや問い合わせフォームから書き出した表を読み込み、月ごと・流入経路ごとのリード数を数えて集計表に並べるマクロです。ボタン一つで月次の報告の表ができるので、担当が替わっても押し続けられている一方で、数え方の条件が誰にも説明できないという状態になりやすい種類です。
AIに読ませるときに確かめたいのは、数える条件の細部です。月の境目を受付日で切っているか登録日で切っているか、同じ会社からの重複をどう除いているか、社内の人のテスト送信や競合からの登録をどんな条件で外しているか。こうした条件は、コードの中では一行の比較や、決め打ちの文字列として埋まっています。説明の中に数える対象・除く対象・期間の切り方の三つが書かれているかを確かめます。
もう一つの落とし穴は、列の位置の決め打ちです。書き出した表の何列目を流入経路として読む、という書き方をしていると、管理ツールの書き出しの形式が変わった月から、黙って違う列を数え始めます。数字がそれらしく出るので気づかれにくいのが厄介です。AIには、列を見出しの名前で探しているか、位置で決め打ちしているかを明示させます。
このシナリオでは、行き先の判断材料として、今の管理ツールに同じ集計の画面が備わっていないかも確かめます。ツール側でできるなら、マクロを直すより、ツールのレポートに寄せて条件を記録に残すほうが引き継ぎやすくなります。どちらに寄せるにしても、数え方の条件は報告の受け手と合意し直してから決めます。
シナリオ2:広告レポートの整形マクロ
広告の管理画面から書き出した数字を、社内向けの報告の型に並べ替え、クリック率や獲得単価を計算して色を付けるマクロも、マーケの現場に多く残っています。媒体ごとに書き出しの形式が違うため、媒体の数だけ処理の塊があり、一部の媒体の処理だけが古いまま放置されていることがよくあります。
AIの説明で確かめたいのは、率や単価の計算の仕方です。割り算の分母に何を使っているか、ゼロで割る場合にどう扱っているか、四捨五入をどの段階でしているかで、報告の数字は少しずつ変わります。管理画面の数字と報告の数字が合わないと問い合わせを受けたとき、原因はたいていこの計算のどこかにあります。説明には計算式を日本語の文で書かせ、元の行を添えさせると、受け手にも確かめてもらえます。
媒体の書き出しの形式は、媒体側の画面の変更で予告なく変わることがあります。整形のマクロが見出しの名前を決め打ちで探している場合、名前が一文字変わっただけで、その列が空のまま報告が作られます。AIには、見出しが見つからなかったときにどう振る舞うか、つまり止まるのか、空のまま進むのかを説明させます。空のまま進む作りなら、それだけで直す理由になります。
このシナリオでは、使っていない媒体の処理が残っていないかも見ます。すでに出稿をやめた媒体の塊が残っていると、コードが長くなり、読む人を迷わせます。AIの地図で媒体ごとの塊を並べ、今も書き出しを受け取っている媒体に印を付けていくと、残す部分と消す部分の見当がつきます。
シナリオ3:外部のファイルを読み込むマクロ
三つ目は、共有フォルダにある別のファイルを開き、その中身を転記したり結合したりするマクロです。営業の案件一覧を担当者ごとのファイルから集める、複数の展示会のリストを一つにまとめる、といった用途です。このシナリオは、三つの中で最も引き継ぎで壊れやすい種類です。マクロの外側にあるフォルダやファイルに依存しているからです。
AIに確かめさせたいのは、どこのファイルを、どんな名前の決まりで探しているかです。フォルダの場所がコードに直接書かれている、ファイル名に日付や担当者名が入っていることを前提にしている、といった依存は、組織変更やフォルダの整理で簡単に切れます。前の節で触れたとおり、共有フォルダをIPアドレスで指定している作りなら、ネット由来のマクロを止める扱いに引っかかる可能性もあります。
このシナリオでは、VBスクリプトへの依存も重点的に確かめます。ファイルの移動や別の処理の起動に、外部のVBスクリプトのファイルを呼び出していることがあるからです。AIには、マクロの外にある部品や別のファイルを呼び出している箇所を、すべて一覧にさせると伝えます。一覧に挙がった箇所は、段階的な廃止の影響を受けるかどうかを一つずつ確かめます。
また、読み込んだ個人情報の扱いも確認項目です。担当者ごとのファイルから顧客の連絡先を集めてくる作りなら、集めた後のファイルがどこに保存され、誰が開けるかを確かめます。マクロが動くかどうかとは別に、集めた情報の置き場所が社内の規程に合っているかは、引き継いだ人が見ておくべき点です。
残す・直す・作り直す・やめるの4つをどう分けるか
説明と写しでの確かめが済んだら、行き先を決めます。判断の軸は、出力が今も使われているか、仕様が今の業務と合っているか、依存している部品や外部のファイルに先行きの不安がないか、そして読める人がいるか、の四つです。AIの説明はこの四つを埋めるための材料であり、どの行き先にするかを決めるのは出力の受け手と担当者です。
| 行き先 | 当てはまる状態 | 次にやること | 決める人 |
|---|---|---|---|
| 残す | 出力が使われ、仕様も合っている。廃止の対象の部品に当たらない | 説明と入出力の表を保存し、置き場所を管理された所に移す | 担当者と出力の受け手 |
| 直す | 仕様は合っているが、一部の部品や決め打ちが古い | 直す箇所を限って書き換え案を出させ、写しで確かめる | 担当者と上長 |
| 作り直す | 仕様が業務と合わない、外部への依存が多い、誰も読めない量 | 作り直す先を選び、今の数え方の条件を仕様として書き出す | 出力の受け手と情報システムの担当 |
| やめる | 出力を誰も見ていない、別の仕組みで同じことができている | 受け手に告知し、一定期間は写しを残してから止める | 出力の受け手 |
迷いやすいのは「直す」と「作り直す」の境目です。目安の一つは、直す箇所がマクロ全体のどのくらいに及ぶかです。数か所の決め打ちを見出しの名前で探す形に変える程度なら直す、処理の塊の半分以上に手が入るなら作り直す、と考えると判断が速くなります。ただしこれは目安で、読める人が社内にいるかどうかの事情のほうが重いこともあります。
「やめる」を選ぶときは、いきなり消さないことが大切です。受け手に止める日を告知し、しばらくは写しを残しておきます。止めてから、年に一度の集計でだけ使っていたことが分かる、という事態が起きるからです。止めた日と理由を記録に残しておけば、後から問い合わせがあっても対応できます。
作り直す先の選択肢は、手順が決まっているかで分かれる
作り直すと決めた場合、行き先はいくつかあります。一つ目は表計算の標準機能です。関数やピボットテーブル、外部のデータを取り込んで整える機能で足りる集計なら、マクロを使わずに組めます。マクロが無ければ、既定の停止や部品の廃止の影響を受けないという利点があります。二つ目は、マーケティングの管理ツールや営業支援の仕組みに備わったレポートや自動化の機能に寄せる方法です。
三つ目は、VBAのまま書き直す方法です。読める人が社内にいて、処理の中身が表計算の中で完結しているなら、現実的な選択肢です。四つ目として、手順が決まりきらない作業、たとえば表記のゆれの判断や自由記述の分類を含む作業なら、AIを組み込んだ道具やAIエージェントを検討する余地があります。ただし、AIに任せる部分は結果が毎回同じとは限らない点を前提にします。
どの行き先を選ぶかは、手順が文章で書き切れるかどうかで大まかに分かれます。書き切れる手順なら、標準機能やツールの機能、VBAの書き直しで十分です。書き切れない判断が混ざるなら、その判断の部分だけを人かAIに回す設計にします。手順の全部をAIエージェントに寄せるのは、数え方が決まっている集計では過剰になりがちです。
行き先ごとの具体的な作り方は、この記事では扱いません。ここで押さえたいのは、どの行き先でも、今のマクロから読み取った数え方の条件と入出力の表が、そのまま新しい仕組みの仕様書になるということです。AIの説明と写しでの確かめを丁寧にやっておくほど、作り直しの手戻りは減ります。
書き換え案をAIに出させるときの線
「直す」と決めた場合、書き換え案の下書きをAIに出させるのは効率的です。ただし線を引いておきます。まず、直す範囲をこちらで指定し、それ以外の箇所には手を入れさせないことです。範囲を決めずに頼むと、関係のない箇所まで書き方を整えた案が返ってきて、どこが変わったのかを確かめる手間が増えます。
次に、書き換えた箇所ごとに、変更前と変更後で振る舞いがどう変わるかを説明させます。たとえば見出しの名前で列を探す形に変えたなら、見出しが見つからないときに止まるのか、空で進むのかを明記させます。変更の説明が無い書き換え案は受け取らない、と決めておくと、確かめるべき点がはっきりします。
書き換えた案は、必ず前の節と同じ手順で写しで動かし、先月の出力と一致するかを確かめます。AIの書き換え案は、文法の上では正しく動いても、数え方の条件を知らないうちに変えていることがあります。本番に入れるかどうかの判断と、動作の確認は人が持つ。この線を崩さないことが、引き継ぎを安全に終わらせる条件です。
VBスクリプト由来の正規表現の部品を使っている箇所を直す場合も同じです。新しいバージョンのオフィスでは標準の部品で置き換えられますが、社内の全員の端末がそのバージョン以降になっているとは限りません。書き換えの前に、利用者の端末のバージョンを情報システムの担当に確かめ、古い端末が残っているなら、書き換えの時期を合わせます。
引き継ぎの記録として、マクロの横に残すもの
行き先が「残す」や「直す」に決まったマクロは、次の引き継ぎで同じ苦労を繰り返さないよう、記録を残します。分厚い説明書を作る必要はありません。マクロ付きのファイルと同じ場所に、1枚の説明を置いておくだけで、次の担当者の負担は大きく変わります。
1枚に書くのは、何のためのマクロか、入力はどのファイルのどの列か、出力はどこに何を書くか、数える条件と除く条件、外部に作用する処理、依存している部品、出力の受け手、最後に確かめた日と確かめた人、です。AIの説明と入出力の表を下書きにすれば、ほとんどの欄は埋まります。ただし、出力の受け手と、条件を合意した相手の欄は人が書くことにします。
記録は、マクロを直したときに一緒に直さないと、すぐに古くなります。直したら記録も直す、という決まりを、書き換えの手順の最後に入れておきます。年に一度、マクロが動く環境の変化、たとえばオフィスのバージョンやVBスクリプトの扱いの変化に合わせて、依存している部品の欄だけでも見直しておくと安心です。
部署の中にマクロが何本もあるなら、1枚の説明とは別に、一覧を一つ作っておくと全体が見えます。一覧には、マクロの名前、置き場所、行き先、担当者、最後に確かめた日だけを並べます。一覧に載っていないマクロは使わないという決まりにしておくと、担当者が知らないまま使われ続けるマクロが減っていきます。
やり直しになる進め方
最後に、古いマクロの引き継ぎでつまずきやすい進め方をまとめます。どれも、AIの説明を便利に感じたところで起きやすいものです。
- AIの説明を読んだだけで行き先を決める:写しで動かしていない説明は、細部の条件で外れていることがある
- パスワードや接続先が入ったまま渡す:コードの中の値は、社外に出してはいけない情報そのもの
- 本番のファイルで試す:上書きや送信が起きると、元に戻せない
- 警告の帯を外すことを先に覚える:中身を知らないまま目印を外す習慣がつく
- 範囲を決めずに書き直しを頼む:変更点が多すぎて、確かめる手間が書き直しの手間を上回る
- 受け手に確かめずにやめる:年に一度だけ使う人が、止めた後に困る
反対に、うまく進む現場に共通しているのは、AIに判断させない範囲を先に決めていることです。コードを読んで説明する、流れ図の下書きを作る、書き換え案を出す、ここまでがAIの仕事です。説明が正しいかを写しで確かめる、行き先を決める、本番に入れる、ここからが人の仕事です。この線を最初に書いておくと、担当者が替わっても同じ進め方で回せます。
また、うまくいく現場では、引き継ぎを一度に全部終わらせようとしません。部署のマクロの一覧を作り、出力の受け手が多いものや、外部のファイルに依存しているものから順に手を付けます。一本ずつ行き先を決めて記録を残していけば、数か月で全体が見える状態になります。
よくある質問
VBAそのものも、いずれ使えなくなるのですか?
マイクロソフトの開発者向けブログは、段階的に廃止されるのはVBスクリプトであり、VBAそのものは廃止されないと説明しています。影響を受けるのは、マクロの中から外部のVBスクリプトを呼び出す処理や、VBスクリプト由来の部品を参照している処理です。自社のマクロがこれに当たるかを確かめておけば、慌てて作り直す必要はありません。
パスワードで保護されていて、コードが見られないマクロはどうすればよいですか?
保護を外す手段を探す前に、作った人や前任の部署に確かめるのが先です。正規の手順で保護を外せない場合、そのマクロは中身を確かめられない以上、残すか作り直すかを判断する材料がありません。出力の受け手と相談し、入力と出力の組を集めて仕様を書き出し、作り直すかやめるかの判断に回すのが現実的です。
どのAIに読ませればよいですか?
会社として利用を認めていて、入力した内容が学習に使われない設定になっているものを選びます。性能の差より、渡してよい情報の範囲が社内の規程で決まっているかのほうが重要です。どのAIを使っても、説明の外れは起きうるので、写しで動かして確かめる手順は省けません。
コードを読めない担当者でも、この進め方はできますか?
できます。AIの説明と入出力の表は、コードを読めない人にも分かる言葉で書かせるためのものです。写しで動かして結果を比べる作業も、コードを読む力は要りません。ただし、外部に作用する行を止める作業や、書き換え案を本番に入れる判断は、社内で少しでもVBAを読める人か、情報システムの担当に確かめてもらうと安全です。
マクロが何十本もある場合、どこから手を付ければよいですか?
まず一覧を作り、出力の受け手が多いもの、月次や週次で必ず使うもの、外部のファイルやVBスクリプトに依存しているものに印を付けます。印の多いものから順に進めます。逆に、誰も使っているか分からないものは、受け手を探す段階で「やめる」の候補に入ることが多く、早めに整理できます。
まとめ
作った人がいなくなったVBAのマクロを引き継ぐとき、最初に要るのは書き直しではなく、何をしているかを言葉にして行き先を決めることです。生成AIはこの読み上げの下書きに向いていますが、渡す前に接続先やパスワード、顧客データを消し、説明には根拠の行を示させ、テスト用の写しで動かして確かめます。VBスクリプトの段階的な廃止や、ネット由来のマクロを既定で止める扱いがあるため、放置しても動き続けるとは限りません。残す・直す・作り直す・やめるの判断は、出力の受け手と一緒に人が決めます。まずは部署のマクロの一覧を作り、出力の受け手が多い一本から、AIに全体の地図を描かせるところから始めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
