退職時に片づけるAIの項目一覧|アカウントと生成物

退職時に片づけるAIの項目一覧|アカウントと生成物

「退職の手続きでAIの席は止めたのですが、翌月になって外部の道具から請求が届きました」「引き継ぎ資料はもらったのに、その人が作っていた自動の集計だけが止まりません」——人が辞めたあとに、情報システムの担当者のところへ回ってくる困りごとです。席を止める作業は手順化されていることが多いのに、その周りに残るものは手順の外にあります。退職で回収できるのは席であって、その人が作った仕事の形は席と一緒には消えません。情報処理推進機構が公開している内部不正防止のガイドラインは第5版で、改訂の観点として雇用の流動化による退職者増加への対策が挙げられています。人が動く前提で手順を組み直す必要がある、ということでもあります。この記事では、AIまわりに残る5種類のものを挙げたうえで、最終出社日から逆算した片づけの順番を整理します。


カメ先生カメ先生

人が辞めるときの片づけは、貸したものを返してもらう作業だと思われがちだ。でもAIのまわりでは、返してもらう形になっていないものが多いんだよ。本人が作って本人の領域に置いたままのものは、席を止めた瞬間に見えなくなる。


カメ子カメ子

見えなくなるというのは、消えるのとは違うのでしょうか。


カメ先生カメ先生

違うんだ。消えているものもあれば、動き続けているのに誰も触れなくなるものもある。厄介なのは後者でね、止まっていないのに止め方を知っている人がいない、という状態が残る。


カメ子カメ子

止まっていないことに、あとから気づくということですか。


この記事のポイント
  • 席を止めても、本人が作った指示文・助手・自動化は残る。回収の対象に入っていないから残る
  • 片づけは最終出社日の当日ではなく、申し出を受けた日から逆算して3つの期日に割る
  • 席を止めるのは最後にする。先に止めると、本人の領域にしかないものが取り出せなくなる

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目次

席を止めても、仕事の形は止まらない

退職の手続きで確実に実行されるのは、貸与した端末の返却と、業務で使う各種の席を止めることです。どちらも一覧があり、担当が決まっていて、済んだかどうかを確認できます。一覧に載っているものは、ほぼ確実に片づきます。問題は、AIまわりに残るものの多くが、その一覧に載っていないことです。

載らない理由は単純で、会社が配ったものではないからです。本人が使いやすいように書きためた指示文、自分の業務に合わせて作った助手、自分だけが見ていた対話の履歴。どれも会社の資産として登録されていません。登録されていないものは、返却の対象にならない。だから、あることに気づかれないまま消えるか、残ったまま誰も触れなくなります。

情報処理推進機構が公開している内部不正防止のガイドラインは第5版で、基本方針から事後対策まで33項目の対策を示しています。改訂の観点には、雇用の流動化による退職者増加がもたらすリスクを低減する人的管理が挙げられています。人が動くことを例外ではなく前提として、手順の側を組み直す——AIまわりの片づけも、同じ発想で並べ直す必要があります。

退職のときに残るのは、5種類に分かれる

残るものを数え上げると、5種類に収まります。本人が書きためた指示文、本人が作ったカスタムの助手、共有されていない対話の履歴、本人の名義で申し込まれた外部の道具、そして止め方を本人しか知らない自動化です。5つとも、席を止める作業では片づきません。片づけるには、席を止める前に別の作業が要ります。

5つを並べると、性質が2つに分かれることが分かります。前の3つは、失うと困るもの。後の2つは、残ると困るものです。失うと困るものは取り出す作業が、残ると困るものは止める作業が必要になります。この2つは急ぐ順番が逆なので、同じ作業として扱うと必ずどちらかが後回しになります。

順番としては、失うと困るものを先に片づけます。理由は取り返しの効き方です。止め忘れたものは、あとから見つけて止められます。取り出し忘れたものは、席を止めた時点で取り出せなくなる。この非対称が、この記事の工程の順番を決めています。

5種類を洗い出す入口も、3つに分かれます。会社が契約している道具の一覧、本人からの申告、そして実際に動いている処理の一覧です。3つとも見ないと、必ず抜けます。契約の一覧には本人名義のものが載らず、本人の申告には自動で動いているものが挙がりにくく、動いている処理の一覧には作っただけで使われていないものが出てきません。3つの入口をそれぞれ別の担当が見る形にすると、抜けの位置が分かりやすくなります。次の5節で、1つずつ形を見ていきます。

残るもの1:本人が書きためた指示文

いちばん量が多く、いちばん気づかれにくいのが、本人が書きためた指示文です。毎回同じ形で書かせるための長い文、社内の言い回しに直すための決まり文句、確認の観点を並べた点検用の文。どれも試行錯誤の結果なので、書き直すとなると同じだけの時間がかかります

困るのは、置き場所が人によって違うことです。道具の中に保存している人、表計算の1つのシートにためている人、手元の文書ファイルに並べている人、対話の履歴からその都度探し直している人。置き場所が決まっていないので、本人以外は探せません。引き継ぎ資料に載るのは、たいてい業務の手順のほうで、指示文はそこに出てきません。

取り出すときの単位は、文そのものではなく、業務との対応です。この文はどの業務のどの工程で使うのか、という1行を添えてもらいます。文だけを渡されても、いつ使うのかが分からなければ使われない。対応の行がないまま集めた指示文は、置き場所に積まれるだけで、半年後には誰も開かなくなります。

引き取ったあとに、一度そのまま動かして結果を見る工程も入れてください。指示文は、使っていた道具の側が変わると、同じ文でも返ってくるものが変わります。本人が使っていたときには合っていたのに、引き取った時点ではずれている、ということが起こります。動かして確かめるまでは、引き継ぎが終わったことにしない。確かめる相手は、引き取る本人です。作った人に確かめてもらうと、ずれていても気づけません。

残るもの2:本人が作ったカスタムの助手

2つ目は、特定の業務のために本人が組み立てた助手です。定型の応答を返すもの、社内の資料を読ませて質問に答えさせるもの、決まった形式の文書を組み立てるもの。提供されている機能の範囲で作れるので、情報システムを通さずに増えます。作られた数を会社が把握していないことが多いのが、この種類の特徴です。

退職のときに問題になるのは、所有者の扱いです。作った人の領域にぶら下がっている場合、席が止まると同時に動かなくなります。誰かに共有してあっても、所有者が消えると共有ごと切れる作り方は珍しくありません。使えていたのに、ある日いきなり使えなくなるという形で表に出ます。

もう1つ確かめたいのが、読ませている資料の側です。助手に社内の資料を読ませている場合、その資料がどこに置かれているかを一緒に確認します。本人の領域に置いたままの資料を参照していると、助手を引き取っても中身が空になります。助手を引き取るときは、参照している資料の置き場所まで一緒に移す。ここを見落とすと、形だけ引き継いで動かないものが残ります。

もう1つ、助手には作った人の頭の中にしかない前提が埋め込まれています。どの期間の資料を見るのか、どの取引先は対象から外しているのか、どの言い回しは使わないと決めたのか。設定の画面を見ても、なぜその設定なのかは出てきません。引き取るときは、動かし方ではなく、外した条件を聞いてください。外した理由を知らずに引き取ると、後任が親切のつもりで条件を戻し、元の失敗をもう一度やることになります。

残るもの3:共有されていない対話の履歴

3つ目は、本人と道具のあいだだけで交わされた対話の履歴です。ここには、業務の判断の経緯が入っていることがあります。なぜこの案を選んだのか、どの案を検討して外したのか。資料に残らなかった検討の過程が、履歴の中にだけ残っているという状況が起きます。

ただし、履歴を丸ごと引き継ぐのは現実的ではありません。量が多く、業務と関係のないやりとりも混ざり、他の従業員や取引先の名前が入っている可能性もあります。丸ごと渡すという判断は、渡された側にとっても扱いに困るものになります。

実務としては、本人に取り出してもらう形が現実的です。引き継ぐ業務ごとに、参照すべきやりとりがあれば、そこだけを文書にして残してもらう。履歴そのものではなく、履歴から取り出した判断の経緯を残してもらう。取り出す作業には本人の記憶が要るので、最終出社日の直前に頼んでも間に合いません。早い段階で依頼する理由が、ここにあります。

この工程には、副次的な効き目もあります。会社として入れないと決めた情報が、実際には入っていたことが見つかる機会になることです。見つかったときに責める形にすると、次の人からは何も出てこなくなります。申告してもらう前に、見つかった場合にどう扱うかを先に伝えておいてください。扱いが先に決まっていれば、報告は上がります。決まっていなければ、報告は上がらず、同じことが別の人の手元で続きます。

残るもの4:本人の名義で申し込まれた外部の道具

4つ目は、性質が変わります。業務の必要から、本人が自分の名義で外部の道具に申し込んでいる場合です。少額で始められるものが多く、部門の判断で入っていることもあれば、本人が立て替えていることもあります。会社の契約の一覧に載っていないので、席を止めても止まりません

退職後に起きるのは、2つです。1つは、支払いが続くこと。本人の名義のまま請求が発生し、退職者に届きます。もう1つは、その道具に入れた業務のデータが、会社の手の届かない場所に残ることです。どちらも、本人が辞めたあとに気づくと、対処の手数が一気に増えます。

片づけ方は、名義の切り替えか、解約かの二択です。業務で使い続けるなら会社の名義に切り替え、使わないなら解約してデータを取り出す。どちらにしても、本人が在籍しているあいだにしか手続きができないのが厄介なところです。退職後に本人へ連絡して手続きを頼むのは、双方にとって気持ちのよい作業ではありません。

先に確かめておきたいのが、そもそも名義を切り替えられるかどうかです。個人しか申し込めない形の道具では、会社の名義に移すこと自体ができません。この場合は、解約してデータを取り出し、会社で契約している道具に業務ごと移すことになります。移し先の検討には日数がかかるので、最終出社日の直前に分かると間に合いません。書き出してもらった時点で、切り替えの可否だけを先に問い合わせておいてください。

残るもの5:止め方を本人しか知らない自動化

5つ目が、いちばん長く尾を引きます。決まった時刻に動く集計、条件に合った連絡が来たときに動く仕分け、定期的に外部の情報を取りに行く処理。本人が席を外しても動き続けるように作ってあるので、退職しても止まりません。むしろ、止まらないことが作った目的でした。

残ると困る形は3つあります。1つ目は、動いているのに結果を誰も見ていない状態。2つ目は、本人の席にひもづいていて、席を止めた瞬間に途中で失敗し続ける状態。3つ目は、外部の道具や取引先に向けて何かを送り続ける状態です。3つ目は、気づくまでの時間がそのまま影響の大きさになります。

確かめる順番は、送るものがあるかどうかから見ます。社外に何かが出ていく処理を先に洗い出し、次に社内だけで完結する処理を見る。止めるかどうかを決める前に、何が動いているのかを一覧にする。一覧が無い状態で個別に止めていくと、必ず取りこぼします。取りこぼしは、数か月後に別の形で表に出ます。

引き取って動かし続ける場合も、そのままでは動かないことがあります。自動で動く処理は、作った人の権限で動いているからです。本人が見られた場所を引き取る人が見られなければ、引き取った翌日から失敗し続けます。引き取る前に、その処理が何を見て何に書いているかを一覧にしてください。見ている先と書いている先が分かれば、必要な権限も分かります。動かしてみてから調べると、止まっているあいだの分をあとで作り直すことになります。

実務仕様:最終出社日から逆算して期日を置く

ここまでの5種類を、最終出社日の当日にまとめて片づけるのは無理です。取り出す作業には本人の時間が要り、止める作業には情報システムの段取りが要ります。逆算して、3つか4つの期日に割るのが現実的です。次の表は、期日ごとに何をするか、誰が動くか、終わっていないと何が起きるかを並べたものです。

時点やること誰が動くか終わっていないと起きること
申し出を受けた日使っている道具と作ったものを、本人に書き出してもらう本人と直属の上長本人しか知らない道具が、最後まで一覧に出てこない
最終出社日の2週間前引き取る人を業務ごとに決め、引き継ぎの場を日程に入れる上長と情報システム引き取り手のない自動化が、そのまま動き続ける
最終出社日の1週間前残すものを共有の場所へ移し、消すものを本人と確認する本人と引き取る人本人の領域にしかない指示文と助手が、席と一緒に失われる
最終出社日動いているものを止め、外部の道具の名義を切り替える情報システムと上長退職後に外部の道具から請求が届き、本人に連絡することになる
翌営業日席を止め、止めた日時と担当を記録に残す情報システム止めたかどうかを後から確認できず、棚卸しのたびに調べ直す

表の並びで確かめたいのは、席を止める行がいちばん下にあることです。席を止めるのは、取り出す作業が全部終わってからにする。手続きの一覧では席を止める作業が先頭に来ていることが多いので、ここは意識して順番を入れ替える必要があります。

工程1:使っている道具を、本人に書き出してもらう

最初の工程は、本人に書き出してもらうことです。情報システムの側で把握できるのは、会社が契約している道具に限られます。本人の名義で入っているものは、本人に聞く以外に知る方法がありません。聞き方を工夫しないと、聞いても出てきません。

STEP1
道具の名前ではなく、業務から聞く

何を使っていますかと聞くと、会社が配ったものしか挙がりません。この業務はどうやって進めていましたかと聞くと、手順の中に道具が出てきます。

STEP2
自分で作ったものがあるかを、別の質問で聞く

使っている道具と、自分で作ったものは別の質問にします。作ったという意識がないまま作っている人が多いので、まとめて聞くと落ちます。

STEP3
決まった時刻に動いているものを挙げてもらう

自動で動くものは、使っているという感覚から外れています。時刻や条件で動くものはありますか、という聞き方に変えると出てきます。

STEP4
自分の名義で申し込んだものを挙げてもらう

立て替えている場合があるので、責める形にしないでください。精算と切り替えの窓口を先に案内すると、正直に挙がりやすくなります。

書き出してもらったものには、引き継ぐ相手がいるかどうかを、その場で本人に書いてもらう。本人が思う引き継ぎ先と、上長が考える引き継ぎ先が違うことはよくあります。違いがその場で見えれば、あとの工程で調整できます。見えないまま進むと、最終出社日の直前に調整が発生します。

工程2:引き取る人を、物ではなく業務で決める

引き取る人の決め方を、物ごとにすると失敗します。この指示文は誰が、この助手は誰が、と割っていくと、引き取った人にとって使う場面のないものが手元に残ります。使う場面のないものは、引き取られた瞬間から使われません。決め方は、物ではなく業務の側にあります。

業務で決めるとは、その業務を引き継ぐ人が、その業務で使っていたものを全部引き取るということです。指示文も、助手も、判断の経緯も、自動化もまとめて1人に渡ります。まとめて渡すと量は増えますが、使う場面が分かっている人の手元に行くので、実際に使われます。

引き取る業務が無いものも出てきます。本人が自分の判断で作って、その人だけが使っていたもの。ここは無理に引き取り先を探さないでください。引き取り手のないものは、残す理由を書けるかどうかで決める。書けないなら消します。消す判断をその場でしないと、所有者のいないものが残り、次の棚卸しでまた同じ判断を迫られます。

工程3:消すものと残すものを、本人がいるうちに分ける

分ける作業は、本人がいるうちにやります。本人が抜けたあとに残されたものを見ても、それが何のために作られたものかが分かりません。分からないものは、消す判断も残す判断もできないので、そのまま置かれます。置かれたものは、次に誰かが片づけようとしたときに、また同じ壁になります。

分け方は、3つの箱に入れる形が分かりやすいです。引き継ぐ業務があるので残すもの、業務は無いが記録として残すもの、消すもの。2つ目の箱には、判断の経緯や、過去に検討して外した案が入ります。使う予定はないが、同じ検討をやり直さないために残します。

消す箱に入れたものは、その場で消さずに、期間を決めて置いておきます。退職の直後は、消したものが必要になる場面が最も多い時期だからです。引き継いだ人が実際の業務を1周してみて、要らないと確認できてから消す。1か月から3か月ほどの猶予を置くと、戻す手間がほとんど発生しなくなります。

工程4:動き続けているものを止める順番

止める作業には順番があります。社外に出ていくものから止め、社内で完結するものは後にします。社外に出ていくものは、止め忘れたときの影響が会社の外に出るためです。取引先に向けた定期の連絡、外部の道具への書き込み、社外の宛先への自動の送信。この3つを先に洗い出してください。

止めるときに一緒に決めるのが、止めたあとに誰が同じことをするかです。動いていた処理には、たいてい受け取っている人がいます。止めるだけ止めて受け手に伝えないと、届かなくなったことに気づいた人から問い合わせが来ます。止める連絡は、受け手にも同時に出してください。

社内で完結するものは、止めるのではなく、いったん止めて様子を見る形が使えます。止めて2週間、誰からも問い合わせが来なければ、その処理は実際には使われていなかったということです。止めてみて何も起きないかどうかで、要否を確かめる。一覧を見て判断するより、正確で早い方法です。

ただし、この確かめ方は本人が在籍しているあいだにしか使えません。止めてみて何かが起きたときに、何が起きたのかを説明できる人がその場にいる必要があるからです。社外に出ていくものは最終出社日の1週間前までに止め、社内で完結するものはその翌日から順に止めていく。この並べ方にすると、影響が出ても本人に確かめられる期間が2週間近く残ります。最終出社日に全部を止める段取りにすると、この期間がまるごと消えます。

工程5:席を止めるのは、いちばん最後にする

最後に席を止めます。順番を最後にする理由は、席が生きているあいだにしかできない作業があるからです。本人の領域に保存された指示文の取り出し、本人が所有者になっている助手の移管、本人の名義で入っている外部の道具の切り替え。席を止めた時点で、この3つはどれも難しくなります

ただし、遅らせるにも限度があります。最終出社日を過ぎた席が生きていると、使われていないのに使える状態が続きます。実務としては、最終出社日の翌営業日に止めるのが落としどころです。それまでに取り出す作業を終えるよう、前の工程の期日を組んでください。

止めたら、止めた記録を残します。いつ、誰が、どの席を止めたか。止めた記録が無いと、次の棚卸しのたびに同じ席を調べ直すことになる。記録は1行で足ります。担当者の手元ではなく、次に棚卸しをする人が見る場所に置いてください。手元に置くと、その人が異動した時点で失われます。

止めた席を、いつ消すかも一緒に決めておきます。退職から数か月のあいだは、過去のやりとりを確かめたいという照会が来ることがあります。止めた状態なら中を見られる場合がありますが、消したあとは見られません。逆に、止めたまま何年も置いておくと、棚卸しのたびに判断を保留する行が増えていきます。消すまでの期間を人ごとに決めるのではなく、退職の手続きの中で一律に決めておくと、判断がそのつど発生しなくなります。

ミニ用語解説:この片づけで出てくる言葉

片づけの場面では、似た言葉が混ざりやすくなります。混ざったまま話すと、止めたつもりが止まっていない、渡したつもりが渡っていないという食い違いが起きます。用語の意味を最初に合わせておくと、確認の往復が減ります。ここでは、実務で取り違えやすい4つを整理します。

席を止めると、席を消す

止めるのは、その人が入れなくなる状態にすることです。消すのは、その人に関する設定ごと無くすことです。止めた状態なら、中にあるものを後から取り出せる場合があります。消した後は取り出せません。退職の手続きでは、まず止めて、期間を置いてから消す形が実務的です。

所有者と、共有されている人

所有者は、そのものを作った人、または移された人です。共有されている人は、使えるだけの人です。所有者が消えると共有ごと切れる作りになっていることがあるので、引き継ぐときは共有を増やすのではなく、所有者そのものを移してください。

引き継ぎ資料と、判断の経緯

引き継ぎ資料は、業務をどう進めるかを書いたものです。判断の経緯は、なぜその形になったかを書いたものです。前者だけを引き継ぐと、後任が同じ検討をやり直します。AIとのやりとりの中に残っているのは、多くの場合こちらの後者です。

止めると、消す(自動で動く処理の場合)

自動で動く処理を止めるのは、動かないようにすることです。消すのは、その処理の定義ごと無くすことです。止めた状態なら、必要だったと分かったときに戻せます。消した後は、作り直しになります。退職時は、まず止める側で揃えてください。

AIに任せてよい作業と、人が確かめる範囲

この片づけにも、AIを使える場面があります。任せてよいのは、集めたものを整理して並べる作業までです。書き出してもらった一覧を業務ごとに分類する、指示文を読んで何をする文なのかの説明を付ける、似た内容のものをまとめて重複を示す。どれも量が多く、判断の要らない作業です。

任せてはいけないのは、消してよいかどうかの判定です。判定させると、なぜその判定になったのかが残りません。消す判断は、残す理由を書けるかどうかで人が決めるのが、この記事を通した線です。AIには、分類と説明の付与までをさせて、なぜそう分類したのかを一緒に書かせてください。書かせた理由を読んでから、人が次に進みます。

  • 指示文の中に取引先の名前や社内の固有の情報が入っていることがある。AIに読ませる前に、外に出ない設定かを確認する
  • 分類させた結果は、引き取る人に見せてから確定する。引き取る人にとって使う場面があるかは、一覧を見ただけでは分からない
  • 自動で動く処理の停止は、AIに手順を書かせてもよいが、実行は人が行う。止める操作は戻せない場合がある
  • 書き出してもらった一覧そのものは、退職後も一定期間は保管する。止め忘れが見つかったときに、最初に参照する材料になる

やり直しになる進め方

最後に、後からやり直しになる進め方を並べます。どれも作業の途中では効率がよく見えて、退職から1か月ほど経ってから効いてくるものばかりです。5つとも、手順の一覧に載っている作業だけを実行した結果として起きます。

  • 最終出社日の当日に、まとめて片づける:取り出す作業に本人の時間が要ることが計算に入っていない。当日は止める作業だけにする
  • 席を先に止めてから、必要なものを探す:本人の領域にあるものが取り出せなくなる。止めるのは取り出しが終わってから
  • 引き継ぎ資料だけをもらって終わりにする:手順は残るが、指示文と判断の経緯は残らない。後任が同じ検討をやり直す
  • 物ごとに引き取り手を割り振る:使う場面のない人の手元に渡り、引き取った瞬間から使われなくなる
  • 本人名義の外部契約を、退職後に処理しようとする:本人に連絡して手続きを頼むことになり、双方に負担が残る

5つに共通しているのは、会社が配ったものだけを片づけの対象にしていることです。AIまわりで価値が高いものほど、本人が自分で作っています。配ったものの一覧で片づけると、配っていないものが全部こぼれる。一覧を作り直すか、本人に書き出してもらう工程を足すか。どちらかをやらないと、同じ取りこぼしが毎回起きます。

まとめ

退職時のAIまわりの片づけは、席を止める作業ではありません。本人が作って本人の領域に置いたままのものを、席が生きているうちに取り出す作業です。残るものは5種類——書きためた指示文、作ったカスタムの助手、共有されていない対話の履歴、本人名義の外部の道具、止め方を本人しか知らない自動化。前の3つは取り出す作業が、後の2つは止める作業が必要になります。最終出社日から逆算して期日を割り、引き取る人は物ではなく業務で決め、席を止めるのはいちばん最後にしてください。AIに任せてよいのは分類と説明を付けるところまでで、消してよいかどうかの判定まで渡すと、なぜ消したのかを誰も説明できなくなります。まず、次に退職の申し出があったときに渡す書き出しの用紙を1枚作ってみてください。聞き方を変えるだけで、出てくる量が変わります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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