届いた請求書をAIで処理する方法|突合と保存まで設計

届いた請求書をAIで処理する方法|突合と保存まで設計

「読み取りの精度が上がれば、経理の残業は減るはずだと思っていました」「入れてみたら入力は確かに速くなったのに、支払日の前は前と同じように慌てています」——請求書の処理に道具を入れた会社から、よく返ってくる言い方です。矛盾しているように聞こえますが、理由ははっきりしています。請求書の処理で長いのは読む工程ではなく、届いてから支払ってよいと決まるまでの間に挟まる待ち時間だからです。この記事では、受け取り経路の分かれ方から、注文と検収と請求の突合、AIに任せる範囲と人が決める範囲、保存の要件、そして例外の扱いまでを、届いてから支払うまでの一本の流れとして設計します。


カメ先生カメ先生

請求書の処理が遅いと聞くと、多くの人はまず読み取りの話だと受け取る。ところが実際に時計を当ててみると、いちばん長いのは誰かの承認や返事を待っている時間なんだ。


カメ子カメ子

読む速さを上げても、その待ち時間は短くならない、ということですか。


カメ先生カメ先生

そうなる。しかも待ち時間は、金額が合わなかったときにいちばん伸びる。合わない理由を確かめるには、注文した部署と、物を受け取った部署の両方に聞かないといけないからね。


カメ子カメ子

経理の中だけでは片づかない仕事が、経理の机の上で止まっている、という形なのでしょうか。


この記事のポイント
  • 請求書が届く経路は郵送・メール添付・取引先のポータルに割れる。入口が3つあるままだと、届いた事実そのものが社内で把握できない
  • 突合は注文・検収・請求の3点。合わなかったときに誰がどこで止めて誰に戻すかを決めていないと、差異は経理の机で滞留する
  • AIに任せてよいのは項目の抜き出しと突合の候補出しまで。支払ってよいという判断は人が決め、決めた根拠を記録に残す

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目次

処理が遅いのは、読み取りの精度のせいではない

請求書の処理を速くしたいという相談は、たいてい読み取りの精度の話から始まります。読めない書類が混ざれば手入力が発生しますから、その心配自体は的外れではありません。ただし読み取りの結果がどこまで正しくなるかは、原稿の状態や様式の決まり方、項目の定義といった書類の側の条件で決まるもので、道具を替えれば上がるという性質のものではありません。この論点は別に整理されているので、ここでは1節だけ触れて先に進みます。

実際に時間を測ると、順番が逆であることが分かります。1枚を読み取って項目を起こす作業は分で数えられますが、その1枚が支払ってよいと決まるまでに置かれている時間は日で数えます。入力は分の仕事、待ちは日の状態です。読み取りを2倍速くしても、日で数える側が1日も縮まなければ、締め日の前の慌ただしさは何も変わりません。道具を入れたのに楽になった感じがしない、という声の正体はここにあります。

では何が待ち時間を作っているのか。届いた事実を誰も把握していない期間、注文の記録と突き合わせられない期間、金額が合わずに差し戻されて往復している期間、承認する人が不在の期間。おおよそこの4つに分かれます。4つのどれも経理の中だけでは短くできず、注文した部署と物を受け取った部署を巻き込まないと動かないという共通点があります。以降は、この流れを受け取りから支払いまで一本につなぐ設計として書いていきます。

受け取り経路が3つに割れることが、最初の詰まり

請求書がどこから入ってくるかを書き出すと、たいていの会社で3つになります。郵送で紙が届くもの、メールに添付されて届くもの、そして取引先が用意したポータルに置かれるものです。この3つは性質がまったく違うのに、社内では同じ「請求書」として扱われています。違う性質のものを同じ箱に入れると、どこで詰まっているかが見えなくなります

郵送は、封を開けるまで中身が分かりません。開封の担当が決まっていれば遅れは1日か2日で収まりますが、名宛人が個人名になっていると、その人が出張から戻るまで机の上に置かれます。メール添付は速い代わりに、担当者個人のメールボックスに入ります。担当者が転送を忘れた分は、督促が来るまで誰も知りません。厄介なのは3つ目です。ポータルは取りに行かないと届かない経路で、待っていても社内には何も入ってきません。

この違いは、月末の数字に直接効きます。郵送とメールは「来たのに気づかなかった」という遅れですが、ポータルは「そもそも取りに行っていない」という欠落です。届いた事実を社内の誰も知らないまま支払期日を越える請求書が生まれるのは、取りに行く形の経路だけです。まずは自社の取引先を、この3つのどれで届くかで数えてみてください。社数が出た時点で、手を付ける順番が決まります。

経路ごとに「最初に触る人」を決める

経路を1つにまとめるのが理想ですが、取引先の都合で決まるものなので、こちらの希望では動きません。現実的な対処は、経路は3つのまま残したうえで、それぞれに最初に触る人を1人決めることです。誰の手に最初に入るかが決まっていないと、届いた時刻が記録に残らず、遅れの原因がいつも「たぶん誰かが持っていた」で終わります。

具体的には3つを置きます。郵送は開封の当番を曜日で決め、開封した日を書き込む。メールは請求書の受け口を1つ作り、取引先にはそこ宛に送ってもらう。個人宛に届いたものは、受け取った人が中身を読まずにその受け口へ転送する、という運用にします。ポータルは会社ごとに取り出しの担当と頻度を決め、一覧表にして毎月そこを見ながら回収します。ポータルだけは、仕組みではなく人の当番でしか埋まりません

ここで先に決めておくと後が楽になるのが、取引先への案内を、経路を変える依頼と一緒に出すかどうかです。受け口を作った直後に全取引先へ一斉に案内すると、切り替える会社と切り替えない会社が混ざり、しばらくは経路が4つになります。件数の多い上位の取引先から順に、四半期に分けて案内するほうが、混乱が短く済みます。

取引先のポータルは、放っておくと社内に記録が残らない

ポータルの厄介さは、回収の手間だけではありません。多くのポータルには掲載の期間があり、一定の期間を過ぎると過去の請求書が引けなくなります。支払いは済んでいるのに手元に控えが無い、という状態は、後から金額を確かめたいときにも、保存の義務の面でも困ります。取り出しを後回しにできる経路だからこそ、期限を決めて回収する必要があります

保存の面でも、ポータルは扱いが1段ややこしくなります。電子で受け取った書類を電子のまま保存する義務は2024年1月から始まっていますが、ポータルやメールから取り出して別の場所に置く形を取る場合は、取り出した後の改変を防ぐ手当てが要ります。具体的には、時刻の証明を付けるか、訂正や削除の履歴が残る仕組み、あるいは訂正や削除ができない仕組みで保存するかのどちらかです。手元の共有フォルダにそのまま置く運用は、この点で足りません。

運用の形としては、1件の請求書につき1つのファイルで保存し、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で1件ずつ引ける状態にしておくのが基本です。まとめて1つのファイルに束ねると、後から1件だけを取り出せなくなり、探す時間が保存の手間を上回るので避けてください。なお、要件を満たす手段そのものには複数の選び方があり、費用のかからない方法もあります。そちらは保存の側から整理した別の記事に譲ります。

突合の3点は、それぞれ別のことを確かめている

請求書が届いてから支払うまでの中心にあるのが、注文・検収・請求の3つを突き合わせる作業です。3点突合と呼ばれますが、この3つは同じことを3回確かめているのではありません。確かめている対象が3つとも違うため、どれか1つを省くと、省いた分だけ別の種類の事故が通り抜けます。

注文が確かめているのは、そもそも社内の誰かがそれを頼んだのか、頼んだときの単価と数量はいくらだったのか、です。検収が確かめているのは、頼んだものが実際に届いたのか、いつ届いたのか、数は合っていたのか。請求が確かめているのは、いくら請求されているのか、税率ごとの区分は付いているのか、登録番号は書かれているのか。次の表に、3つの役割と、抜けたときに何が通るかを並べます。

突き合わせる記録そこで確かめていること記録を持っている部署抜けると通ってしまうもの
注文の記録社内の誰かが正式に頼んだか。約束した単価と数量はいくつか発注した部署・購買誰も頼んでいない請求、値上げ後の単価での請求
検収の記録頼んだものが実際に届いたか。いつ、いくつ届いたか受け取った現場・倉庫納品されていない分の請求、翌月に届いた分の前倒し請求
請求書いくら請求されているか。税率ごとの区分と登録番号が書かれているか経理・支払の担当同じ内容の二重請求、書式が足りず後で困る請求

3つのうち、多くの会社で最も弱いのが真ん中の検収です。物であれば受け取った記録が残りますが、役務や制作の仕事は、いつ何が終わったのかを誰も記録していないことが珍しくありません。検収の記録が無い取引は、突合が実質2点になります。まずは自社の取引を、検収の記録が残るものと残らないものに分けるところから始めてください。

合わないときに、誰がどこで止めるか

突合そのものは機械の得意な作業なので、仕組みを入れれば合わない件は必ず見つかります。問題はその後です。見つけた差異を誰に戻すかが決まっていないと、差異は見つかった場所、つまり経理の机に溜まります。経理は注文の事情も納品の事情も知らないので、そこで止まった時点で、確かめるための往復が始まります。

設計としては、差異の型ごとに、止める人と戻す先と返事の期限を先に決めます。次の表は、よく出る5つの型についての置き方です。金額の大小で分けるのではなく、原因がどこにあるかで分けるのが要点になります。原因の側で分ければ、戻す先が自動的に決まるからです。

差異の型よくある原因止める人戻す先と期限
数量が合わない分納された、返品が反映されていない支払の担当受け取った現場へ。3営業日で回答
単価が合わない改定の連絡が発注側に届いていない発注した部署の責任者取引先へ。次の締めまでに決着
注文の記録が無い口頭で頼んだ、少額なので手続きを省いた発注した部署の責任者その部署で事後の手続き。当月中
検収の記録が無い役務の終わりを誰も記録していない発注した部署担当者が確認して記録を作る。3営業日
同じ内容が二重に来た再発行分と元の分が両方処理された支払の担当取引先へ照会。支払は保留のまま

表を作るときに迷うのが、少額の差異をどこまで自動で通すかです。金額の幅で自動的に通す運用は、幅を決めた根拠と、通した件数を毎月見ることをセットにしないと、幅だけが独り歩きします。端数の処理で1円から数円の差が出るだけの取引と、数量の取り違えが混ざる取引では、同じ幅にできません。まずは1か月分の差異を型で数え、件数の多い上位2つだけに幅を設けるところから始めると、運用が壊れにくくなります。

AIに任せる範囲と、人が決める範囲を先に切る

ここまでの流れのどこにAIを入れるかを決めます。任せてよいのは項目の抜き出しと、突合の候補出しと、差異の説明文の下書きまでです。届いた請求書から日付と金額と取引先と明細を起こし、過去の注文の記録から近いものを何件か並べ、どの項目が一致してどの項目が違うかを整理させる。ここまでは繰り返しの作業なので、人がやるより速く、疲れによる取り違えも起きません。

任せてはいけないのは、支払ってよいという判断です。理由は精度ではなく、責任の所在にあります。支払いは会社の外にお金が出る行為で、間違えたときに取り戻せるとは限りません。誰がいつ何を根拠に承認したかが記録に残っていない支払いは、後から誰も説明できません。同じ理由で、差異を「誤差の範囲だから通してよい」と決める判断も人が持ちます。

線を引くときの目安は単純です。やり直しが効く作業は任せてよく、やり直しが効かない決定は人が持つ。抜き出しを間違えても直せますが、支払ってしまった後では直せません。この基準で切ると、任せる範囲は自然に「書類とデータを整える仕事」に寄り、人の仕事は「止めるか通すかを決める仕事」に寄ります。決める仕事が減らないのは欠点ではなく、決める仕事だけに時間を使えるようになった、と読むのが正しい見方です。

AIの出力には、必ず根拠を書かせる

任せる範囲を決めても、出てきた結果をそのまま信じる運用にすると、確認のために結局すべてを人が見直すことになります。それでは元の作業量に戻ってしまうので、確認を短くするための出力の形を先に決めます。要点は、答えだけを出させないことです。どこから取ったのか、何と突き合わせたのかが一緒に出ていれば、確認は一致しなかった箇所だけで済みます。

具体的に書かせるのは4つです。抜き出した項目が請求書のどのあたりの記載から来たのか。どの注文の記録と結び付けたのか、そしてなぜそれを選んだのか。一致した項目と一致しなかった項目の一覧。最後に、判断が付かなかったので人に回す、という区分です。人に回す、という区分を出力に持たせないと、迷った分まで機械が勝手にどちらかへ倒します。迷いを表に出させるのが、確認を短くする最短の道です。

  • 抜き出した項目は、請求書のどの記載から取ったのかを併記させる。目視の確認は併記された箇所だけで済む
  • 突合の候補は1件に絞らせず、近い順に複数を根拠つきで出させる。1件に絞らせると外れたときに気づけない
  • 一致・不一致・判断不能の3つに区分させる。判断不能の件数は毎月数え、多い型から仕組みを直す
  • 個別の取引先名や金額を含むデータを外部の道具に入れるときは、入力が学習に使われない設定かを先に確かめる

運用に乗せた後は、判断が付かなかった件の中身を月に1回だけ見てください。同じ型の取引先が並んでいるなら、直すべきはAIの使い方ではなく、その取引先からの請求書の受け取り方です。出力の質を上げる作業と、材料を整える作業は別物で、多くの場合は後者のほうが効きます。

保存の要件は、受け取った形で決まる

処理が終わった請求書をどう残すかは、処理の設計と切り離せません。判断の分かれ目は1つで、電子で受け取ったものは電子のまま保存するという点です。電子で授受した取引の記録をデータで保存する義務は2024年1月から始まっており、それ以前に認められていた、印刷して紙で保管する取り扱いは2023年末で終わっています。

検索できる状態にするために求められるのは、取引年月日・取引金額・取引先の3項目です。ただし基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じられることを条件に、検索の機能をそろえなくてよいとされています。また、相当の理由があって対応できない場合の猶予の措置も置かれています。要件を満たす手段は複数あり、費用をかけずに規程で対応する道も残されているので、道具を買う前に自社がどの区分に当たるかを確かめてください。要件を満たす手段の選び方そのものは、保存の側から整理した別の記事に譲ります。

この記事の主題に引き付けると、実務で事故が起きるのは要件の理解ではなく経路ごとに保存の入口が割れることです。郵送の分は紙で残り、メールの分は担当者のメールボックスに残り、ポータルの分はポータルに残ったまま。同じ月の請求書が3か所に散れば、探す時間も、二重に支払う危険も増えます。処理の入口を1つにまとめる話と、保存の場所を1つにまとめる話は、同じ設計の裏表だと考えてください。

デジタルインボイスが増えると、読み取りの工程そのものが消える

中期の見通しも押さえておきます。デジタル庁は、国際的な規格をもとにした国内向けのデジタルインボイスの標準仕様を管理する立場にあり、最新版は2026年6月に公表されています。仕様は3つに分かれていて、通常の請求書のほかに、買い手の側が作る自己請求(支払通知書)の形式と、免税事業者向けの形式が用意されています。

この経路が使われるようになると、請求の情報が画像ではなくデータとして届くので、読み取りという工程自体が要らなくなります。突合も、項目がそろった状態から始められます。ただし、受け取り側で何がどこまで自動になるかは、デジタル庁のページでは説明されていません。仕組みが用意されていることと、自社の処理が自動で回ることの間には、社内の設計という距離が残ります

実務として気をつけたいのは、移行の途中で経路が減らないことです。対応した取引先から順に新しい経路が増える一方、対応していない取引先は郵送やメールのまま残ります。新しい経路が加わる時期は、古い経路が消えるまでの数年間、経路が一時的に増えるという前提で受け入れ側を設計してください。買い手の側が作る形式に触れたのは、請求書が来るのを待つのではなく、こちらが確定した金額を先に通知する形も選べるからです。差異の往復を根本から減らす道として、検討する価値があります。

例外を5つ書き出してから、仕組みに載せる

請求処理の仕組みが定着しない原因の大半は、例外の扱いを決めないまま動かし始めることです。標準の流れだけを作って運用を始めると、最初の1か月で例外が出て、そのたびに担当者が個別に判断します。個別の判断が積み上がると、仕組みの外に第二の運用ができあがり、半年後には誰も全体像を説明できなくなります

先に書き出しておきたい例外は5つです。値引きや返品が後から反映される取引。前払いをしていて、請求書と入金の順番が逆になる取引。複数の月の分がまとめて1枚で届く取引。取引先の都合で請求書が再発行され、元の分と2枚ある取引。そして立替や経費の精算と重なり、同じ支出が2つの経路で上がってくる取引です。どれも「たまにしか起きない」ものですが、たまに起きるからこそ、起きたときに誰も手順を思い出せません。

  • 例外は担当者の判断に任せる、と決める:担当者が交代した時点で、判断の基準ごと引き継がれずに消える
  • 標準の流れに乗らない請求書を別のフォルダに寄せる:寄せた先が見られなくなり、支払期日を越える塊ができる
  • 再発行の分を元の分と差し替えて処理する:どちらを支払ったのかが記録から消え、二重払いに気づけなくなる
  • まとめ請求を月ごとに割らずにそのまま計上する:後から月別の実績を出せず、予算の管理と噛み合わなくなる
  • 例外の件数を数えない:仕組みに載っていない仕事の量が見えず、いつまでも人手が減らない

書き出した5つには、それぞれ「誰が判断するか」と「どこに記録するか」だけを付けます。手順を細かく書く必要はありません。例外の処理で本当に困るのは手順が分からないことではなく、判断してよい人が分からないことだからです。判断者さえ決まっていれば、手順はその場で作れます。

締めと承認の締切を、支払日から逆算して置く

ここまでの部品を、月の流れに組み込みます。起点にするのは支払日です。支払日から逆算して、差異を確かめ終える日、承認を締め切る日、受け取りを締め切る日の3つを置きます。先に受け取りの締切を置いてしまうと、遅れて届いた請求書の逃げ場が無くなり、翌月へ持ち越す運用が常態化します。逆算の順番を守ってください。

次の5工程が、立ち上げから定着までの最短の道です。全社一斉ではなく、件数の多い取引先から順に載せ替えるのが前提になります。工程3までを1か月、工程5までを1四半期で回すのが、無理のない速度です。

STEP1
支払日から3つの締切を逆算して置く

支払日、差異の決着日、承認の締切、受け取りの締切の順に、日付を後ろから決めます。ここで営業日の数え方を決めておくと、月末が休日の月に慌てずに済みます。

STEP2
経路ごとに最初に触る人を決め、入口を1か所に寄せる

郵送の開封当番、請求書の受け口となるメールの宛先、ポータルの取り出し担当と頻度を決めます。取引先への案内は上位の数社から始めます。

STEP3
突合の3点がそろう取引と、そろわない取引を分ける

検収の記録が残らない取引を先に洗い出します。そろわない取引は、何をもって完了とするかを発注した部署と決めておきます。

STEP4
差異の型ごとに、止める人と戻す先と期限を書く

1か月分の差異を型で数え、件数の多い順に上から決めます。すべての型を先に埋めようとせず、上位3つが決まった時点で運用を始めます。

STEP5
例外5つの判断者と、毎月見る4つの数字を決める

例外は判断者と記録場所だけを決めます。数字は次の節のとおりで、月末の30分だけ見る場を作れば足ります。

工程2から先へ進む前に、1つだけ確かめてください。入口を寄せる前に道具を選ぶと、道具の仕様に合わせて業務を作り直すことになり、載せ替えの途中で必ず止まります。業務の形が決まってから道具を選ぶ順番を守れば、選択肢はむしろ増えます。

定着したかどうかは、4つの数字で見る

仕組みを入れた効果を、処理にかかった時間で測ろうとすると、たいてい失敗します。時間は測る人によってばらつくうえ、繁忙の度合いに左右されるからです。代わりに件数で数えられる4つを置きます。どれも表計算ソフトで数えられるもので、集計の道具を新しく買う必要はありません。

1つ目は、差し戻した件数と、その型の内訳。2つ目は、承認の締切に間に合った件数の割合。3つ目は、例外として人が個別に判断した件数。4つ目は、取引先から「支払いはどうなっていますか」と照会が来た件数です。4つ目は社外から見た遅れの指標で、社内の数字がすべて良く見えるときでも、ここだけは正直に動きます

読み方の目安も決めておきます。差し戻しの件数が減らないのに例外の件数が減っているなら、例外が例外として記録されず、標準の流れの中で人が黙って処理している可能性があります。締切に間に合った割合だけが上がっているときは、締切の前に駆け込みで承認している疑いがあるので、承認から支払日までの日数も併せて見てください。数字は1つだけ見ると必ず良く見えます。4つを並べたときの噛み合わなさが、直すべき場所を教えてくれます。

立ち上げでつまずく型

最後に、載せ替えの途中で止まる型をまとめます。どれも道具の性能とは関係のないところで起きるもので、順番の問題です。着手の前に読んでおくと、同じ穴を踏まずに済みます。

  • 全社・全取引先を一斉に切り替える:例外の量が同時に押し寄せ、切り戻しもできなくなる。件数の多い上位から順に載せる
  • 経理だけで設計する:差異を戻す先である発注部署と現場が決まっていないため、運用を始めた翌週に止まる
  • 読み取りの精度を上げることを目標に置く:精度が上がっても待ち時間は縮まない。目標は差し戻しの件数と締切の順守に置く
  • 例外の扱いを後回しにする:最初の1か月で第二の運用ができ、仕組みの外側が育つ
  • 取引先に何も知らせずに運用だけ変える:宛先や様式の変更が伝わらず、こちら側の都合で相手の作業が増える

この5つに共通するのは、速さを上げる工夫から入って、止まる場所を決める作業を後回しにしている点です。請求処理は、速くする仕組みより、止まったときに誰が動くかを決めた仕組みのほうが、結果として速く回ります。

よくある質問

突合を注文と請求の2点だけにしてもよいですか

検収の記録がどうしても作れない取引に限れば、2点で運用している会社はあります。ただしその場合、納品されていない分の請求と、翌月に届いた分の前倒しの請求は、突合では止まりません。2点にすると決めたなら、代わりに発注した部署の担当者が「受け取った」と一言だけ記録に残す運用を足してください。詳細な検収書は要りません。日付と担当者名が残れば、突合の3点目としては足ります。

取引先のポータルが10社を超えました。どう管理すればよいですか

一覧表を1枚作り、会社名、取り出しの頻度、担当者、掲載の期限、前回取り出した日の5列だけを持たせてください。自動で取りに行く仕組みを検討する前に、まず表で回します。表で3か月回してみると、取り出しの遅れが特定の数社に偏っていることが分かるはずです。仕組みを入れるべきかは、その偏りを見てから判断すると無駄がありません。

少額の差異は、いくらまで自動で通してよいですか

金額で決める前に、差異の原因で分けてください。端数の処理から生じる数円の差と、数量の取り違えによる差は、金額が同じでも意味がまったく違います。実務としては、端数に起因する型に限って幅を設け、それ以外は金額の大小にかかわらず止める形が扱いやすいです。幅を設けた型については、通した件数を毎月数え、件数が増えているときは幅ではなく原因を疑ってください。

経理が1人しかいません。承認を分けられない場合はどうしますか

同じ人が起票と承認を兼ねる形は避けたいので、承認を経理の外に出します。金額の区分を2つだけ作り、一定額を超えるものは発注した部署の責任者が承認する、という形にすれば、人を増やさずに分けられます。記録の面でも、誰がいつ承認したかが残るので、後から説明できる状態になります。少人数の会社ほど、承認者を経理の内側に置かないことが効きます。

まとめ

請求書の処理を速くする鍵は、読む工程ではなく届いてから支払ってよいと決まるまでの間に挟まる、待ち時間の側にあります。受け取り経路が3つに割れていることを認めたうえで、それぞれに最初に触る人を置く。注文と検収と請求の3点を突き合わせ、合わなかったときに誰がどこで止めて誰に戻すかを、差異の型ごとに決めておく。AIには項目の抜き出しと候補出しを任せ、支払ってよいという判断と、通してよいという判断は人が持つ。電子で受け取ったものは電子のまま、1件1ファイルで残す。そして例外を5つ書き出してから仕組みに載せる。まずは自社の取引先を、届く経路で数えるところから始めてください。3つの社数が出た時点で、どこから手を付けるべきかは自然に決まります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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