デジタルヒューマンをBtoBで使う方法|人の姿を作る前の判断

「展示会で流す説明の動画を、AIで作った人物にしゃべらせてよいものでしょうか」「導入事例に出てくれる取引先が見つからないので、架空の担当者を立てる案が社内で出ています」——動画やサイトの制作を発注する側から、この半年でよく持ち込まれるようになった相談です。この2つは同じ道具の話に見えますが、答えは正反対になります。AIで作った人の姿は、人を雇う代わりに置く安い人手ではありません。その場面で人の姿が何を担っているかによって、置き換えてよい役と、置き換えた瞬間に信用が落ちる役に割れる道具です。この記事では、実在しない人物像を一から作る場合に絞って、使える場面の見分け方と、姿を作り始める前に決めておく項目を整理していきます。
カメ先生デジタルヒューマンを入れると人件費が下がる、という説明のされ方をよく見かけるね。ただ、費用の側から入ると最初の判断をたいてい間違えるんだ。置き換わっているのは人手ではなく、画面の中で人の姿が担っていた役のほうだからだよ。
カメ子同じ動画でも、姿が担っている役が違うことがあるということですか。
カメ先生そうなんだ。手順を見せるための姿と、この人が言っているから信じられる、という姿は別物でね。前者は作った人物像に替えても伝わる情報は減らない。後者は替えた瞬間に、伝えたかったものだけが消える。
カメ子見た目の出来がどれだけ上がっても、後者は置き換えられないままだということでしょうか。
- 判断の起点は費用ではなく、その場面で人の姿が何を担っているか。説明を運ぶ姿と、信用の担保になっている姿は別
- 一から作った人物像でも、実在の人に似てしまえばその時点で肖像やパブリシティの論点に入る。似ていないという判定を生成の側に任せない
- 出す場所の表示の規定を先に読み、開示の文言と公開前に人が見る範囲を、作り始める前に決める
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「人を作れば安く済む」から入ると、判断の順番が狂う
最初に出てくる動機は、ほぼ例外なく費用と手間です。社員に出演してもらうと日程調整が要る。撮影のたびに費用がかかる。担当者が異動すると動画を作り直すことになる。だからAIで人物像を作って、台本だけ差し替えれば済むようにしたい。この発想そのものは間違っていません。問題は、費用の比較から入ると「置き換えてはいけない役」まで対象に入ってしまうことです。
実際に起きるのは、こういう順番です。まず操作説明の動画で試して、うまくいく。次に会社紹介に広げて、ここもうまくいく。三つ目に導入事例の動画へ手を伸ばしたところで、取引先から問い合わせが来る。この人は実在するのかと。ここで初めて、置き換えてよいかどうかは動画の種類ではなく、その動画が何を根拠にして信じられているかで決まることに気づきます。気づく場所が公開後になると、取り下げの判断を人前ですることになります。
順番を逆にしてください。費用の話をする前に、いま画面に映っている人が何を担っているのかを1行で書く。担っているものが情報の伝達だけなら置き換えの検討に進む。担っているものに「この人が言っている」という要素が混ざっていたら、そこで止める。この1行を書く作業は、見積もりを取るより先に、無料で終わります。以降の章は、その1行の書き方と、書いた結果で分かれる二つの道を順に開いていきます。
デジタルヒューマンと呼ばれているものは、3つの層に分かれる
社内で話がかみ合わない原因のひとつは、この言葉が指す範囲が広すぎることにあります。実務で出てくるものは、少なくとも3つの層に分かれます。第1層は静止した人物像です。資料の中の人物写真やサイトのイラストの代わりに置くもので、動きも声もありません。第2層は台本を読み上げる動画です。姿と声と口の動きが組み合わさり、指定した文章をしゃべります。第3層は対話する相手です。相手の質問を受けて、その場で答えを返します。
3つは別物です。層が上がるほど、姿そのものより「答えの中身を誰が保証するのか」という問題が重くなります。第1層で問題になるのは見た目だけです。第2層では、読み上げた内容の正しさが問われます。第3層になると、その場で出た答えが会社の回答として扱われ、言っていないことを言ったことにされる余地が生まれます。層ごとに、決めておくことの数も、関わる部署も変わります。
発注の相談が来たら、まずどの層の話なのかを確かめてください。第1層のつもりで見積もりを取ったのに、提案が第3層で戻ってくることがあります。第3層を入れるなら、答えられない質問をどこへ逃がすかを設計に含めない限り、公開できません。逆に第1層で足りるなら、決めることは名乗り方と表示だけで済みます。層を確かめないまま比較検討を始めると、条件のそろわない見積もりが並びます。
BtoBで置き換わるのは人ではなく、画面の中の役
BtoBの発信で人が映っている場面を数えると、その姿が担っている役は5つくらいに整理できます。手順を実演する役、目的の場所へ導く案内の役、決まった内容を読み上げる説明の役、自分の経験をもとに推薦する役、そして質問に答える役です。前の3つでは、姿は情報を運ぶ入れ物として働いています。後の2つでは、姿そのものが情報の一部になっています。
この違いは、視聴者が次に取る行動で確かめられます。手順の動画を見た人は、手を動かして真似します。誰が実演していたかを後から思い出す人はほとんどいません。一方で推薦の動画を見た人は、誰が言っていたのかを確かめようとします。会社名を調べる、その人の経歴を探す。視聴者が話し手を確かめようとするかどうかが、置き換えの可否を分ける実際の線です。
だから判断の問いは「この動画にAIを使ってよいか」ではありません。この動画を見た人が、話し手が誰かを確かめようとするかです。確かめようとしない場面では、姿は替えが利きます。確かめようとする場面では、替えた瞬間に確かめる先が存在しなくなります。次の章の表は、この問いを実際の場面に当てはめたものです。
置き換えてよい役と、置き換えると信用が落ちる役
自社が出している動画とサイトの人物を全部並べて、次の表のどの行に当たるかを仕分けてみてください。仕分けると、置き換えの検討に進める本数は想像よりずっと少なく、そのかわり境目がはっきりします。表の右端は、置き換える場合に併せて置いておくものです。置き換えの可否だけを決めて、この列を空のまま公開すると、後から問い合わせを受けたときに答えるものがありません。
| 場面 | 画面の中で人の姿が担っているもの | 作った人物像で置き換えてよいか | 置き換えるなら併せて置くもの |
|---|---|---|---|
| 製品の操作手順を見せる動画 | 手元と順番を示す進行の役 | 置き換えてよい | 生成であることの表示と、手順の出どころの記載 |
| 展示会のブースや受付の案内 | 来場者を目的の場所へ導く案内の役 | 置き換えてよい | 人に代わる合図と、答えられない質問の逃がし先 |
| 定型の会社説明・職種の紹介 | 決まった内容を読み上げる説明の役 | 条件付きで置き換えてよい | 実在の社員と誤解されない名乗り方と、更新の担当 |
| 導入事例に出てくる取引先の担当者 | その人が実際に使ったという事実そのもの | 置き換えてはいけない | 匿名の文章に切り替え、社名の掲載可否を取り直す |
| 経営者のメッセージ・告知やおわび | 発言者本人が責任を負うという合図 | 置き換えてはいけない | 本人の署名を添えた文章に切り替える |
| 専門家として意見を述べる役 | 発言者の経歴が主張を支えている構造 | 置き換えてはいけない | 実在の書き手の名前と経歴、根拠にした資料の案内 |
表の3行目に「条件付き」と書いたのは、ここが実務でいちばん揺れるからです。会社説明は決まった内容の読み上げなので、情報としては置き換えられます。ところが視聴者の一部は、映っている人を社員だと受け取ります。社員だと受け取られたまま放置すると、置き換えてよいはずの動画が置き換えてはいけない動画に変わります。名乗り方ひとつで行が移動する、という意味です。
表を作る作業自体に半日もかかりません。動画の一覧を出し、それぞれについて「視聴者は話し手が誰かを確かめようとするか」を書き入れるだけです。仕分けた結果は、制作会社に見せる資料としてそのまま使えます。どの動画は人物像で作ってよく、どの動画は実写のままにするのかを、見積もりの前に渡せるからです。
効く側:相手が話し手を問題にしていない説明
置き換えが効く場面には、共通する3つの性質があります。1つ目は、話している内容が公開されている資料で裏を取れること。2つ目は、話し手が替わっても内容が1文字も変わらないこと。3つ目は、その動画を見た人が次に取る行動が、後から取り消せる範囲にとどまることです。3つとも当てはまる動画は、人物像に置き換えても失うものがありません。
具体的には、製品の初期設定の手順、申し込みの画面の入力方法、社内向けの操作研修、展示会の会場案内、営業時間や休業の告知といったものが当てはまります。これらは撮り直しの頻度が高く、内容が変わるたびに人を呼び直す必要がありました。差し替えの回数が多い動画ほど、置き換えの効き目が大きくなります。年に1回しか更新しない動画を置き換えても、手間はほとんど減りません。
効く側に振り分けた動画でも、決めることは残ります。台本の内容を誰が確かめるか、画面に映る製品の表示が古くなっていないか、表示の規定に沿った開示をどこに入れるか。人物像を作る手間が減った分を、内容の確認に回してください。作る速さだけが上がると、内容が古いまま流れ続ける動画の本数が増えます。制作が楽になった会社ほど、この症状が出ます。
落とす側:名前と所属が根拠になっている場面
置き換えると信用が落ちるのは、映っている人の名前と所属が、その主張を支える根拠になっている場面です。導入事例、推薦の言葉、専門分野の解説、経営の意思表示。これらは内容が正しいかどうかとは別に、誰が言っているのかが情報の一部として読まれています。ここに実在しない人物像を置くと、情報の半分が空洞になります。
問題は、この空洞が公開直後には見えないことです。見え始めるのは、読者が確かめようとしたときです。会社名で検索して出てこない、経歴が他のどこにも載っていない、同じ顔が別の会社のサイトにも使われている。確かめようとした人にだけ、作りものだと分かる構造は、最初から作りものだと分かる構造より、損害が大きくなります。確かめる人は、たいてい検討の終盤にいる人だからです。
次の5つは、実際に問い合わせや指摘につながる形です。読み替えの効かない失敗なので、企画の段階で外してください。
- 導入事例の担当者を人物像にする:実在の取引先の発言として読まれるため、社名を伏せていても事実と異なる推薦になる
- 実在しない専門家に肩書を付けて解説させる:経歴の裏が取れず、引用された先で出典として扱われる
- 社員紹介のページに人物像を混ぜる:どこまでが実在の社員か読者に区別できず、ページ全体の信用が落ちる
- おわびや不具合の告知を人物像に読ませる:責任を負う主体が画面から消え、文章で出すより不誠実に受け取られる
- 採用の募集要項で先輩社員として語らせる:応募者が入社後に事実と違うと気づく種類の失敗で、取り返しがきかない
一から作っても、似てしまえば実在の人の権利の話に入る
実在しない人物像を作っているつもりでも、出来上がった顔が特定の人物に似ることがあります。学習のもとになった素材の偏りや、指示に入れた属性の組み合わせによって、見た人が誰かを思い浮かべる顔が出てきます。似た時点で、それは実在の人の姿を無断で使った場合と同じ論点に入ります。肖像やパブリシティの扱い、営業上の利益の侵害といった論点です。
この記事はその論点の中身までは扱いません。別の記事で、実在の人の声や姿を複製する場合の権利の整理を行っています。ここで決めておくべきことは一つだけです。似ていないという判定を、生成の側に任せない。生成の道具に「実在の人物に似せないでください」と条件を付けることはできますが、似ていないことを確認したという記録にはなりません。
人が確かめる工程は、手順にすると3つで済みます。社内の複数人に見せて、誰かを思い浮かべた人がいないかを聞く。その業界で顔の知られている人物と並べて見比べる。社名や商品名と組み合わせた状態で、特定の人を連想させないかを見る。3つとも通らなかった候補は、直すのではなく作り直してください。部分的に直すと、似ているという指摘が来たときに、直した経緯のほうが問題になります。
出す場所の表示の規定を、作る前に読む
同じ動画でも、置く場所によって求められる表示が変わります。自社サイトに置くだけなら社内の方針で決められますが、動画共有や交流サイトに上げるなら、その場所の規定が先に来ます。規定は作った後に読むものではなく、台本を書く前に読むものです。表示の入れ方によって、画面の構成そのものが変わることがあるからです。
YouTube のヘルプでは、改変または合成されたコンテンツの開示について、実在する場所の追加映像、実在する2人のプロテニス選手の試合のリアルな動画、実際には言われていないアドバイスが言われたかのように見せるもの、著名人による窃盗行為の偽の映像などが、開示の必要な例として挙げられています。一方で、美顔フィルタの適用、背景のぼかしやヴィンテージ効果などの特殊効果フィルタ、生成AIツールを使用した動画案のアウトラインやスクリプト作成は、開示が不要な例とされています。ラベルは、写真のようにリアルな内容では動画プレーヤーに表示されることもあり、非現実的な内容では説明欄を開いたときに表示されることがあると説明されています。
Meta は2024年2月の発表で、自社の生成機能で作られた画像にラベルを付けること、画像に埋め込まれた生成の記録を読み取って他社の道具で作られた画像にもラベルを付けられるようにすることを示しています。音声と動画については業界標準の信号がまだ組み込まれていないため、投稿者に開示の機能を使うよう求めており、使わなかった場合はペナルティを適用する可能性があるとされています。繰り返し開示しない場合、動画の削除や収益化の停止にまで及ぶ可能性が規定に書かれています。加えて、欧州の利用者に届く形で出す場合は、欧州連合のAI規則の透明性に関する規定が2026年8月2日から適用されるとされているため、海外向けの発信がある会社は原典で要件を確かめてください。
開示は減点ではない。どこに何と書くかで受け取られ方が変わる
生成であることを書くと見てもらえなくなる、という心配から開示を避ける相談がありますが、順序が逆です。開示を避けて後から指摘された場合の損害のほうが、開示によって減る視聴より大きくなります。しかも媒体の側が自動でラベルを付ける仕組みを広げているため、避け続けること自体が難しくなっています。決めるべきなのは、書くかどうかではなく、どこに何と書くかです。
実務では、書く場所を3つに分けると整理しやすくなります。媒体が用意している申告の欄、動画の中の表示、説明文や記事の本文です。媒体の欄は規定に沿って必ず埋める。動画の中の表示は、冒頭ではなく人物が初めて映る場面に合わせる。本文では、なぜその手段を選んだのかを1文で添える。理由が1文添えてあるだけで、隠していたのではないという読まれ方に変わります。
文言も決めておいてください。毎回違う言い方をすると、同じ会社の中で扱いがばらつきます。映っている人物は実在しない、台本は自社が作成している、この2つが伝われば足ります。断り書きの雛形を1つ作り、動画の管理表に貼り付けておくと、担当が替わっても運用が続きます。凝った言い回しは要りません。
姿を作る前に決める6つの項目
ここまでの判断を通過して、実際に人物像を作ると決めた場合に、着手前に決めておく項目を並べます。どれも後から決めることはできますが、後から決めると作り直しが発生します。とくに5番目と6番目は、作り終わってから考え始めると、公開の直前で止まります。
どの動画のどの場面で、何を伝えるために映るのかを1行にします。書けない場合は、まだ役が決まっていません。1行が書けると、表情や服装の指定もここから決まります。用途を広げたくなったときに、この1行が判断の基準になります。
自社サイトだけか、動画共有や交流サイトにも上げるかで、必要な表示が変わります。媒体の申告欄の有無、ラベルの出方、開示しなかった場合の措置まで、この時点で読んでおきます。海外の利用者に届く形で出すなら、その地域の規定も確かめます。
名前を付けるのか、役職を付けるのか、無名のままにするのか。実在の社員と誤解されない形にします。名前を付ける場合は、実在の人名と重なっていないかを検索で確かめます。名乗り方は、置き換えの可否そのものを変えることがあります。
操作説明には使う、導入事例には使わない、というように、使う側と使わない側の両方を書きます。使わない用途を書いておかないと、素材が手元にある限り、誰かがいつか使います。範囲は年に1回見直せば足ります。
複数人で見て誰かを思い浮かべないかを確かめる工程を、公開前に必ず1回通します。指摘が出たときに公開を止める判断をする人を、名前で決めておきます。制作会社ではなく、自社の側に置きます。
人物像は、服装や画質の古さで数年後に浮きます。見直す時期を先に書き、やめる場合に差し替える先まで決めておきます。やめ方を決めていない素材は、担当者がいなくなった後も残り続けます。
6項目は、紙1枚に収まります。この1枚を制作の依頼書に添付すると、見積もりの精度も上がります。用途の範囲が書いてあれば、制作側は必要な表情や角度の数を見積もれるからです。逆に1枚を作らないまま発注すると、出来上がってから用途の話を始めることになります。
名前と肩書を付けるかどうかで、扱いが変わる
人物像に名前と肩書を付けると、親しみが出て社内の評判は良くなります。ただし、付けた瞬間に扱いが変わります。名前のある人物は、読者にとって実在の可能性がある人物になるからです。名前を付けるかどうかは、見た目の判断ではなく、責任の所在の判断です。名前を付けるなら、その名前で発信した内容に誰が答えるのかを決めておく必要があります。
実務上は、3つの選び方があります。無名のまま案内役として使う、記号のような呼び名だけを付ける、人名らしい名前と肩書を付ける。後ろに行くほど、決めておくことが増えます。人名らしい名前を選ぶ場合は、同姓同名の実在の人物がいないかを確認し、肩書に実在の部署名を使わないようにします。実在の部署名と人名らしい名前が並ぶと、社員名簿に載っている人だと読まれます。
BtoBの発信では、無名か記号のような呼び名で足りる場面がほとんどです。取引先が知りたいのは案内役の名前ではなく、案内された先の情報だからです。名前を付けたくなったら、その名前が読者にとって何の役に立つかを一度書いてみてください。書けない場合は、社内の愛着のために付けようとしています。愛着で付けた名前は、後から外しにくくなります。
国内で動いている使われ方から、現在地を測る
検討の材料として、いま国内で実際に動いている用途を1つ見ておくと、話の前提がそろいます。JCOM株式会社は2026年3月2日に、約15万作品のメタデータを活用した対話型のAIアバターを開発したと発表しています。音声での対話によって番組をすすめるもので、2026年3月6日から12日にかけて顧客のモニター向けの実証実験を行い、2026年上期の商用展開を目指すとされています。
この事例で注目すべきなのは、人物像の出来ではなく置き場所です。発表では、テレビの画面のほか、店舗やオフィスの受付などのデジタルサイネージへの展開が予定されているとされています。つまりいま実用の段になっているのは、相手が目的を持って近づいてくる場所での案内の役です。こちらから届けにいく発信ではありません。
自社で検討するときも、この置き場所の違いは効きます。相手が用事を持って来る場所では、案内の役が人物像であっても違和感が出にくい。逆に、こちらから送る動画や広告では、相手は用事を持っていないので、話し手が誰かのほうに注意が向きます。先に効果が出るのは、相手が用事を持って来る場所の案内からです。受付、会員向けの画面、展示会のブース。ここから試すと、失敗しても取り返しがつきます。
制作を外に出すときに、発注の段階で決めること
人物像の制作を外部に頼む場合、通常の動画制作の発注書には載っていない項目が出てきます。できあがった人物像を、契約が終わった後も自社で使い続けられるのかが、その代表です。作り手の道具に紐づいた素材だと、契約が切れた時点で同じ人物を再現できなくなります。シリーズものの動画を作っていた場合、途中で人物が変わることになります。
併せて決めるのは、似ていないことの確認を誰がやるか、その記録をどちらが保管するか、指摘が来たときの連絡の順番です。制作側に確認を任せる場合でも、公開を止める判断は自社に残してください。止める判断が外部にあると、判断が遅れます。発注書に3行書いておけば足りる話です。
費用の面では、1体を丁寧に作って長く使うほうが、毎回作るより安くなります。ただし長く使うには、更新の手段が要ります。服装を変えられるか、背景を差し替えられるか、口の動きだけを作り直せるか。更新の単位を見積もりの段階で聞いておくと、2年目以降の費用が読めます。聞かずに発注すると、小さな修正のたびに全部を作り直す見積もりが出てきます。
AIに任せてよい工程と、任せてはいけない判定
人物像の制作では、生成の道具に任せられる工程が多い一方で、任せると成り立たない判定が混ざっています。任せてよいのは、候補の姿を複数出すこと、服装や背景の組み合わせを試すこと、台本の下書きを作ること、字幕の文字起こしを整えることです。任せてはいけないのは、実在の人に似ていないという判定と、その動画を公開してよいという判断です。
理由は、どちらも生成の側に材料がないからです。似ていないという判定には、業界で顔が知られている人の情報が要ります。公開してよいという判断には、その動画がどの場面で誰に向けて出るかの文脈が要ります。材料を持っていない相手に判定を頼むと、根拠のない合格が返ってきます。返ってきた合格は、確認したという記録には使えません。
- 候補の姿を出させるときは、実在の人物の名前や作品名を指示に入れない。入れた指示はそのまま記録に残る
- 出てきた候補について、なぜその顔になったのかを説明させても、説明の正しさは確かめられない。判定の代わりにしない
- 台本の下書きを任せる場合も、製品の仕様と価格に触れる部分は人が原典と突き合わせる
- 公開前に人が見る範囲を先に決める。全編を見るのか、人物が映る場面だけか、名乗りと表示の部分だけかを書いておく
- 社外に出す前の素材を外部の道具に入れるときは、入力が学習に使われない設定かを先に確認する
人が確認する範囲は、本数が増える前に決めておいてください。最初の数本は全編を見ますが、月に10本を超えたあたりで誰も見なくなります。最初から範囲を狭く決めておいたほうが、確認は続きます。人物が映る場面と、名乗りと表示の部分。この2つに絞れば、1本あたり数分で終わります。
よくある質問
実在しない人物像なら、権利の確認は不要ですか
不要にはなりません。一から作った人物像でも、結果として実在の人物に似ることがあり、似た時点で実在の人の姿を使った場合と同じ論点に入ります。公開前に複数人で見比べる工程を通し、指摘が出たら作り直してください。権利そのものの整理は別の記事で扱っているので、似ていた場合はそちらの判断に進みます。
生成であることを表示すると、見てもらえなくなりませんか
表示によって視聴が減ることはあり得ますが、表示せずに後から指摘された場合の損害のほうが大きくなります。媒体の側が自動でラベルを付ける仕組みを広げているため、隠し通すこと自体が難しくなっています。表示の有無ではなく、どこに何と書くかを決めてください。理由を1文添えるだけで受け取られ方が変わります。
社員の姿をもとに人物像を作る場合はどうなりますか
それはこの記事の範囲外になります。実在する人の姿や声をもとに作る場合は、一から作る場合とは論点が変わり、本人の同意の取り方や利用の範囲を先に決める必要があります。社員であっても同じです。別の記事で、実在の人の声と姿を使う場合の条件を整理しているので、そちらから検討を始めてください。
一度作った人物像は、どのくらい使い続けられますか
期限は決まっていませんが、服装や画質の古さで数年のうちに浮きます。年に1回、見直す時期を決めておいてください。加えて、使うのをやめる場合の差し替え先を先に決めておくと、判断が遅れません。やめ方を決めていない素材は、担当者が替わった後も社内のどこかで使われ続けます。
まとめ
AIで作った人の姿を使うかどうかは、道具の出来で決める話ではありません。決め手は、その場面で人の姿が何を担っているかの一点です。視聴者が話し手を確かめようとしない場面では置き換えが効き、確かめようとする場面では置き換えた瞬間に確かめる先が消えます。まず手元の動画とサイトの人物を全部並べ、この問いで仕分けてください。半日で終わります。仕分けたうえで置き換えると決めたら、役を1行で書き、出す場所の表示の規定を読み、名乗り方と用途の範囲を決め、似ていないことを人が確かめる工程と、止める判断をする人を置く。作り始める前に紙1枚を埋めておけば、公開直前で止まることはありません。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
広告・SNS・動画にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
