ディープリサーチの精度はどこまで測られたか|深さと裏付けの限界

「競合の動きを調べておいてと頼んだら、翌朝には30ページの報告書が返ってきた。ただ、載っている数字が合っているかを誰も確かめていない」「一晩で何十件も読んでくれるのは助かるが、これをそのまま役員会に出す気にはならない」——自律的に調べて報告書にまとめる機能を試した部門からは、この2つがほぼ同時に届きます。困りごとの正体は、機能の賢さ不足ではありません。この機能が苦手なのは調べることではなく、どこまで調べれば足りるかを決めることです。範囲を決めるのは人の仕事で、決まった範囲の中を走るのが機能の仕事。この分担が抜けたまま任せると、読みやすい報告書と、確かめられない中身が同時に出てきます。この記事では、通常のやり取りに聞く場合と何が違うのか、向く調査と向かない調査をどう切り分けるのか、引いてきた出典をどう確かめ、どこから人が引き取るのかを、4つの選択肢を並べながら決められる形で整理します。
カメ先生ディープリサーチって、賢いモデルに検索を許した機能だと思われがちなんだけど、本当は調べる手順そのものを機械に渡す機能なんだ。
カメ子聞き方を工夫すれば、普通のやり取りでも同じことができそうな気もします。
カメ先生そこが違ってね。ある測定では、報告書1本のために外部の情報源へ73回から211回も取りに行っていた。人が出すのは最初の指示だけで、その先の枝分かれは機械が決めている。
カメ子枝分かれを機械が決めるということは、どこを見に行ったのかは後から追うしかないんですね。
- 分かれ目は答えがすでにどこかに書かれているか。書かれている問いには速く、書かれていない問いには任せても速くならない
- 報告書としての体裁には9割前後の点が付くのに、拾うべき情報は3割から4割しか集まっていないという評価結果がある
- 出典のリンクは9割以上が生きていて話題も合う。しかし主張を裏付けているかは4割から8割にとどまる
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ディープリサーチとは、調べる手順ごと任せる機能
ディープリサーチは、指示を1回受け取ったあと、自分で検索語を組み立て、出てきたページを開き、足りない部分をまた検索し直しながら、最後に出典を添えた報告書を作る機能の総称です。提供する会社ごとに呼び方は違いますが、中身は共通しています。人が出すのは最初の問いだけで、その先の判断は機械が持つという点が、通常のやり取りとの決定的な違いです。知識量の差ではなく、主導権の置き場所の差だと考えてください。
規模感を数字で押さえておきます。2026年5月に公開された測定では、14のモデルに130の調査課題を与えて報告書を作らせたところ、上位のモデルは1本の報告書のために外部の情報源へ73回から211回取りに行っていました。動きの少ないモデルでも7回から60回です。人が同じことをすれば数日かかる巡回を、1回の指示で走らせているのが、この機能の実質にあたります。
だからこそ、失敗の仕方も通常のやり取りとは違います。1回の応答であれば、おかしな点は読めば見当が付きます。ところが200回の巡回の結果が30ページの報告書になっていると、どこで道を間違えたのかは読んでも分かりません。この記事で扱う注意点のほとんどは、この追えなさから生まれています。まず、通常のやり取りとの違いを実務の言葉に置き換えるところから始めます。
通常のやり取りに聞くのと、どこが違うのか
通常のやり取りで市場の規模を尋ねると、答えは学習した内容と、その場で引いた数件のページから組み立てられます。速く、安く、そして確かめる作業がまるごと人の側に残ります。ディープリサーチは同じ問いに対して数十件から数百件を巡り、どの記述をどこから取ったかを添えて返してきます。返ってくるものが1本の文章から、文章と出典の束に変わる、と捉えると扱い方が見えてきます。
変わらない部分もあります。どちらも、集めた文章から答えを組み立てているという点は同じです。したがって、そもそも誰も書いていないことは、何回巡回させても出てきません。ここを取り違えると、もっと深く調べてほしいと指示を重ねるだけの時間が生まれます。出てこないのは指示の弱さではなく、材料が世の中に無いからです。
使い分けの目安は、問いの形で決まります。用語の意味、考え方の整理、社内の議論のたたき台づくりなら、通常のやり取りで足ります。複数の会社や制度を横に並べて、出典を添えた一覧が欲しいときに、ディープリサーチの形が効きます。逆に、答えが1行で済む問いに30ページの報告書を作らせるのは、自分で確認の手間を増やしているだけです。手が2つある話ではなく、実際には4つあります。
4つの選択肢を並べて、どれを選ぶか決める
調べ物を前にしたとき、法人の実務で選べる手は4つです。通常のやり取りに聞く、ディープリサーチに任せる、外部の調査会社に頼む、自社で一次調査をする。この4つは互いの代わりになるものではなく、答えの在り処が違うだけです。まず全体を並べて、それぞれで人に残る作業まで見ておきます。
| 選択肢 | 向く問いの形 | 返ってくるもの | 人に残る作業 |
|---|---|---|---|
| 通常のやり取りに聞く | 用語や考え方を整理したい | 1本の文章 | 事実の確認がほぼ全部 |
| ディープリサーチに任せる | 公開されている情報を横に並べたい | 出典を添えた報告書 | 拾い漏れの補いと数字の照合 |
| 外部の調査会社に頼む | 対外的に示す数字が必要になった | 設計から報告まで一式 | 設問と対象が問いに合っているかの確認 |
| 自社で一次調査をする | 自社の顧客にしか答えられない | 他にない自前のデータ | 設計と集計と解釈の実務 |
選ぶ順番は、上から順に試すことではありません。先に問いを1文で書き、その答えがすでに世の中に書かれているのか、まだ誰も書いていないのかを判定します。書かれているなら上の2つ、書かれていないなら下の2つ。この1回の判定で、迷っている時間の大半は消えます。判定を飛ばして任せると、書かれていない答えを機械が作文して返してくることになります。
実務では、1つの調査の中で4つが混ざります。市場の全体像は自律巡回で集め、決めに使う数字だけ外部に頼み、顧客の受け止め方は自社で聞く。混ぜること自体は正しく、危ないのは混ざったことを報告書が隠してしまう場合です。どの記述をどの手で得たのかは、最後の1枚まで分けて持っておきます。
分かれ目は「答えがすでに書かれているか」
この分かれ目には、測定の裏付けがあります。2026年6月に公開された研究は、自律調査の機能を6つの公開問題集で走らせ、巡回の途中で答えそのものが書かれたページに当たったかどうかで正答率を比べました。結果は極端です。ある問題集では、答えが載ったページに当たる前の正答率が7.69%、当たった後は89.74%。別の問題集でも17.86%から82.14%へ跳ねています。
同じ研究は、答えが露出した場合の効き方を統計でも確かめ、その後に正答へ至る度合いが2.20倍から8.92倍になると報告しています。一方で、問題集の名前や周辺の説明だけを拾った場合は、正答に近づく効果が確認されず、6つのうち5つで逆向きの値でした。強いのは探し当てたときであって、集めた材料から考え合わせて答えを作るところではない、ということです。
この研究の目的は評価方法への警告なので、点数全体への水増しは最大4%程度と控えめに報告されています。効いているのは、答えに当たった個々の問いです。実務への訳し方はこうなります。答えがどこかに書かれている問いは、任せると速い。書かれていない問いは、任せても速くならない。国内で導入している会社の一覧は前者、自社が値上げしたときに何割が離れるかは後者です。後者を任せると、それらしい数字が出典付きで返ってきます。出典を開くと、まったく別の業界の記事だったりします。
向く調査には共通の形がある
向く問いには形があります。答えが公開されていて、しかも1か所にまとまっていない。この散らばっているが公開されているという状態で、いちばん効きます。逆に、1つの公式資料を開けば済む問いに使うと、待ち時間の分だけ損をします。実務でよく効いた頼み方を並べます。
- 制度や規則の要件を、複数の官公庁の資料から拾って並べる
- 同じ分野の会社を10社単位で拾い、それぞれが公表している数字を横に並べる
- ある技術について、直近半年に出た発表を時系列に並べ直す
- 海外で先に始まった動きを、国内で使われている言い方に対応させて集める
- 自社の主張の反証になりそうな論点を、あえて集めさせる
最後の1つは見落とされがちなので補います。反証を集める仕事は、拾い漏れがあっても価値が落ちにくいという珍しい性質を持っています。10件の反論のうち6件しか出てこなくても、6件は使えます。網羅が求められる仕事とは、任せたときの安全度がまるで違うのです。企画書の弱点探しや、想定質問の洗い出しは、この機能のいちばん素直な使い道です。
向く場面でも条件が1つあります。範囲を人が決めていることです。何を集めるかだけでなく、いつからいつまでか、どこの国か、どの種類の情報源までを認めるか。これを言わずに任せると、機械は自分で範囲を決めます。決め方の癖は追えないので、同じ問いを翌週に投げても違う報告書が返ってきます。
向かない調査を、問いの形で見分ける
向かない問いは、答えの在り処で見分けられます。推計しか存在しない問い、自社の中にしか答えが無い問い、そして調査そのものを設計しないと答えが生まれない問い。この3つは、任せる範囲を限定しないと危険です。任せてよい範囲まで含めて、判定の形にしておきます。
| 問いの形 | 答えの在り処 | 任せてよい範囲 |
|---|---|---|
| 制度の要件を並べる | 公開されている | 収集と一覧化まで任せる |
| 各社の公表値を集める | 公開されている | 収集と出典の明示まで任せる |
| 市場の規模を決める | 推計しか存在しない | 推計の前提を集めるところまで |
| 自社の顧客の反応を知る | 自社の中にしか無い | 設問の案出しまで |
| 対外的に言い切る数字を作る | 設計した調査の中だけ | 任せない |
最下段だけは、はっきり任せないと書いています。対外的に示す数字は、どう調べたかを説明できることが中身と同じくらい重要になります。巡回の枝分かれを機械が決めた過程は、後から言葉で説明できません。説明できない過程で得た数字を対外的な資料に載せるのは、精度の問題ではなく手続きの問題です。
中段の2つは、切り方を覚えると急に使えるようになります。市場の規模そのものは任せず、誰がどんな前提でいくらと言っているかの一覧だけを任せる。顧客の反応そのものは任せず、聞くべき設問の候補を30個出させて、そこから人が10個選ぶ。答えを出させるのではなく、答えの材料を集めさせる形に組み替えるのがこつです。
報告書の見た目と、中身の充実は別に測られている
2026年1月末に公開された評価は、この機能の弱点を軸ごとに分けて見せました。22の分野にわたる132の調査課題を用意し、専門家が書いた記事から9,430個の細かい判定項目を作り、報告書がその項目を満たしたかを1つずつ確かめる方式です。項目の作成には専門家による確認が400時間以上入っています。評価対象は2025年11月の時点で提供されていた8つの機能です。
3つの軸で並べると、形がはっきりします。報告書としての提示の巧さは74.6点から91.9点。ところが拾い上げるべき情報を集められた度合いは23.0点から40.0点にとどまります。考察の軸は35.9点から51.9点。総合では最も良いものが45.4点で、いちばん強い機能でも、判定項目の半分を満たせていません。
実務で起きていることが、この並びでほぼ説明できます。届いた報告書は読みやすく、構成も整い、出典も並んでいる。だから会議を通ってしまう。しかし拾うべき情報の6割前後は入っていない可能性がある。上位と下位で差はありますが、提示の点だけが高いという形はどの機能にも共通していました。読みやすさを品質の代わりに使ってはいけない、という指摘として受け取るのが正確です。
出典が付いていることと、根拠になっていることは違う
出典の質を3つに分けて測った研究があります。リンクが開けるか、開いた先の話題が合っているか、そしてその記述が主張を実際に裏付けているか。14のモデルで測った結果、リンクが開ける割合は14のうち12が94%を超え、話題の一致は上位モデルのすべてで80%を超えました。ここまでは良い数字です。
3つ目だけが落ちます。主張を裏付けていた割合は、最も低いもので24%、最も高いもので77%。上位のモデルに絞っても39%から77%の幅に散らばりました。リンクは生きていて、開いた先は確かにその話題で、しかし書いてあることは違う。この形の外れ方は、リンクを開いて眺めるだけの確認では絶対に見つかりません。
同じ研究は、出典の本数と裏付けの精度が逆に動くことも示しています。最も多く出典を付けたモデルは130課題で1,272件の引用を作りましたが、裏付けの精度は低い側でした。出典の数は、確かさの指標として使えません。研究者はこれを、多くの断片から一度に組み立てるほど取り違えが増えるためだと説明しています。多い報告書ほど確認の手間が増え、しかも当たりは悪いという順番になります。
深く調べさせるほど、事実の精度は下がる
同じ研究には、深さだけを変えた実験があります。外部へ取りに行く回数の上限を2回、10回、30回、50回、70回、100回、150回と振り、2つの機能で測ったものです。結果は直感の逆で、2回のときが最も正確、150回のときが最も不正確でした。2つの平均で約42%落ちています。
内訳が示唆的です。一方の機能は79%から17%まで落ち、もう一方は80%から58%で止まりました。落ち方の幅には差がありますが、最も急に落ちるのは2回から10回の区間で、79%が46%になっています。深く掘るほど良くなるのではなく、集める先が増えた時点で組み立てが崩れ始めるということです。
そして見た目の指標は落ちません。リンクが開ける割合と話題の一致は、150回の時点でも92%を超えたままでした。つまり深く調べさせたときの劣化は、報告書の見た目からは判別できません。念のため広く調べておいてという頼み方が、確認の難しい報告書を作る方向に効いてしまう。ここが、この機能をめぐる実務上のいちばん厄介な性質です。
指示文を凝るより、範囲を6項目で決める
ここまでの数字は、1つの実務結論に集まります。言い回しを工夫するより、範囲を先に決めるほうが効く。範囲とは、何を集めるかだけでなく、何を集めないかを含みます。次の順で決めると、抜けにくくなります。1本の調査につき、決めるのに5分かかりません。
知りたいことを、主語と述語のある1文にします。2つの問いが入っていたら分けます。1文にできない問いは、機械の側でも分解に失敗します。
その答えは公開されているか、推計しかないか、自社の中にしか無いか。ここで4つの選択肢のどれに渡すかが決まります。判定を飛ばすと、無い答えが作文されて返ってきます。
いつからいつまでの発表を対象にするか、どの国と地域までを含めるかを書きます。切らないと、10年前の発表と今月の発表が同じ重みで並びます。
官公庁と業界団体の資料まで、企業の公表資料まで、報道まで、個人の書き込みまで。どこで線を引くかを書きます。線を引かないと、下の層が数で上を押します。
すでに手元にある資料、対象外の業種、比較の必要がない地域を先に外します。除外は、指示の中でいちばん効く1行になります。
何行の表か、1件あたり何項目か、出典は主張ごとに1対1で付けるのか。形を決めておくと、拾い漏れが空欄として目に見えます。
6項目のうち、効くのに省かれやすいのは5番目です。集めなくてよいものを名指しすると、巡回の枝分かれが目に見えて減ります。深さが浅いほど事実の精度が保たれるという先ほどの測定結果からすれば、除外を書くことは手抜きではなく精度への投資です。
6番目の出力の形は、確認のしやすさを決めます。文章で返させると、抜けているのか、そもそも該当が無いのかが読み取れません。表の形を先に決めておくと、拾い漏れが空欄として現れます。空欄が3つあると分かれば、その3つだけを人が調べればよい。報告書を読み込むのではなく、空欄を数えるだけで済みます。
時間と手間は、無くならずに移動する
4つの選択肢は、払うものの種類が違うだけで、払わずに済む選択肢はありません。通常のやり取りに聞けば、確かめる時間が全部残ります。自律巡回に任せれば、機械が数十分走る代わりに、拾い漏れを埋める時間と数字を照合する時間が残ります。外部に頼めば、設問と対象が問いに合っているかを読む時間が残ります。自社で一次調査をすれば、設計と集計の実務が残ります。
見積もりのときに落ちるのは、いつも同じ項目です。見積もりから抜けるのは、確認にかかる人の時間です。報告書の分量は指示の書き方で何倍にもなりますが、人が確認できる速さは変わりません。30ページの報告書は、10ページの報告書の3倍の確認時間を要求します。ここを見積もりに入れないと、確認しないまま使う運用に自然に流れていきます。
しかも、先ほどの測定を踏まえると長い報告書は確認の時間が伸びるうえに、当たりも悪いという関係になります。深く調べさせるほど事実の精度が落ちるのですから、量を増やす方向の指示は費用対効果を二重に悪くします。長さを求めるのは、報告書を作る側の安心のためであって、判断の役には立ちません。
引いてきた出典の確かめ方
自律巡回が付けた出典には、固有の確かめ方があります。人が集めた出典と違い、どこを見に行ったのかが機械の側の記録にしか残っていないからです。順番を決めておくと、30ページでも20分で済みます。
- 巡回したページの一覧を先に出させ、報告書の記述と照らして、一覧に無い出所が混ざっていないかを見る
- 主張と出典を1対1で書かせる。1つの段落に出典が3つ並んでいる形は、どれが根拠か分からない
- 出典が5本並んでいても、5本が同じ発表を引いているだけなら、確かめた元は1本しかない
- 出典の公開日と、報告書が語っている時点がずれていないかを、数字を含む記述だけ見る
- リンクが開けたことを確認済みと扱わない。開いた先で、その1文を探すところまでを1件とする
3番目は自律巡回に特有の錯覚なので補足します。この機能は同じ話題のページを大量に集めるので、出典の本数が、裏を取った回数のように見えてしまいます。1つの発表を10媒体が報じていれば、出典は10本になります。数えるべきは本数ではなく、独立した出所の数です。
5番目は、先ほどの測定がそのまま根拠になります。リンクが開ける割合は9割を超えるのに、主張を裏付けている割合は4割から8割。リンクを開いて話題が合っていることを確認する作業には、精度の面での価値がほとんどありません。開いた先で該当の1文を探すところまで進めて、はじめて確認になります。数字を含む記述に絞れば、この作業は現実的な時間で終わります。
人が引き取る工程を、先に決める
確認を人がやると決めても、人の確認にも得手不得手があります。2025年9月に公開された実験は、機械が先に埋めた候補を人が判定する作業を2,784人で測りました。会社の報告書に載った表から排出量の数値を拾う、まさに調査の下働きにあたる作業です。拾えた誤りの割合は、誤りの種類でまったく違いました。
数字を取り違えたような分かりやすい誤りは82%が直されました。正しい値が同じ表の別の欄にあり、年度や区分がずれていた誤りは約77%。ところが、決まりの理解が必要な誤りは、31%しか直されていません。技術的には正しいのに、専門の知識が無いと正しいと判断できなかった1枚では、正答が21%まで落ちました。
同じ実験は、確認の設計についても3つ示しています。直すときに正しい値の入力まで求めると、直す回数が有意に減りました。AIに好意的な人ほど誤りを見逃し、好意度の低い層のほうが正確でした。そして報酬を上乗せしても改善しませんでした。研究者の提言は明快で、判定する人と修正する人を分けることです。判定する側の手間が判定の結果によって変わらないようにする、という設計です。
実務への落とし込みは2段です。まず、確認する項目を決まりの理解が要るものと、要らないものに分けます。数字の写し間違いや日付のずれは誰でも拾えるので、手が空いている人に回せます。用語の定義や制度の適用範囲がからむ判定は31%しか拾えないのですから、業務を知っている人に名指しで回します。次に、直す作業は判定から切り離します。判定の欄には、合っている、疑わしい、の2つだけを書かせます。
社内で回すときに決めておく取り決め
最後に、部門で運用に乗せるときの取り決めです。この機能は外部のページを大量に開くので、通常のやり取りとは違う配慮が要ります。決めるのは3つだけで足ります。持ち込んでよい情報の線、残す記録、そして出来上がった報告書の扱いです。
持ち込んでよい情報の線は、いちばん先に引きます。問いに書いた自社の数字は、検索語として外に出る前提で扱います。未公表の売上や、契約先の社名を問いに入れると、それが巡回の検索語になる可能性があります。調べたい内容から自社固有の情報を外し、業種と規模の一般的な言い方に置き換えてから投げるのが安全です。この置き換えは、質問を1文にする工程と同時にやると忘れません。
残す記録は3行で足ります。報告書の先頭に付けておくと、半年後に読んだ人が扱いを間違えません。
- 誰が範囲を決めたか:問いの1文と、除外した条件を書いた人の名前
- いつ時点の情報か:巡回を走らせた日と、対象にした発表の期間
- どこまで確認したか:数字を照合した箇所と、確認していない箇所
3つ目が最も重要です。確認していない箇所を書くのは気が引けますが、確認済みと未確認が区別されていない報告書は、全体が未確認と同じ扱いになります。逆に、未確認の範囲が明記されていれば、その部分を使わない判断ができます。出来上がった報告書は成果物ではなく素材として回す、という前提を部門で共有しておくと、この3行は自然に埋まるようになります。
やりがちな進め方
うまくいかない使い方には共通の形があります。どれも機能の不具合ではなく、範囲と確認を決めていないことが原因です。実際によく見かけるものを並べます。
- 指示文の言い回しを直し続ける:答えが世の中に無い問いは、どう頼んでも出てこない
- 念のため広く深く調べさせる:巡回が増えるほど事実の精度は落ち、確認の手間だけが増える
- 出典の本数を確かさの目安にする:本数が多いほど裏付けの精度が下がる関係が測定されている
- リンクが開けたことを確認済みと扱う:リンクは9割以上生きていて、それでも中身は合わないことがある
- 読みやすさで会議を通す:提示の点は9割前後付くのに、拾い上げは3割から4割にとどまる
- 判定と修正を同じ人に同時にやらせる:直す手間が増えると、直さない判定に流れる
- 報告書をそのまま社外資料の下敷きにする:巡回の過程は説明できないので、根拠を問われたときに答えられない
最後の項目は、うまく回り始めた部門でこそ起きます。何度か当たりが良かったあと、確認が形だけになり、社外に出した資料の数字の出所を問われて止まる。説明できない過程で得た数字を対外的に使わないという一線だけは、精度の話とは切り離して守っておく必要があります。
よくある質問
通常のやり取りとディープリサーチは、どちらから試すべきですか
問いを1文にして、答えの在り処を判定するのが先です。用語の整理や考え方のたたき台なら通常のやり取りで足ります。複数の出所を横に並べたい問いだけ、自律巡回に渡してください。答えが1行で済む問いに報告書を作らせると、確認の手間だけが増えます。
報告書のどこを最初に見ればよいですか
本文ではなく、巡回したページの一覧と、数字を含む記述です。一覧に無い出所が本文に混ざっていないかを見て、次に数字の記述だけを出典の該当箇所まで開きます。この2つで、報告書全体を読むより早く使えるかどうかが判定できます。
拾い漏れがあるかどうかは、どうすれば分かりますか
出力の形を先に表で指定しておくと、拾い漏れが空欄として現れます。文章で返させると、抜けているのか該当が無いのかが区別できません。加えて、自分が知っている事実を2つか3つ意図的に含む範囲を指定し、それが報告書に入っているかを見る方法も有効です。
社外に出す資料の下敷きに使ってよいですか
集めた材料としては使えますが、数字と固有名詞は原典まで開いて確かめたものだけを載せてください。巡回の枝分かれは後から説明できないため、根拠を問われる場面では過程が説明できる手に切り替えます。対外的に言い切る数字は、この機能に任せない範囲として扱うのが安全です。
調べる回数の上限は、多いほうがよいのですか
いいえ、測定では逆でした。上限を2回から150回まで振った実験で、事実の裏付けの精度は平均で約42%落ちています。最も急に落ちたのは2回から10回の区間です。広く集めさせるより、範囲を狭く切って複数回に分けて走らせるほうが、確認しやすい結果になります。
まとめ
ディープリサーチは、調べる手順ごと機械に渡す機能です。報告書1本のために外部へ73回から211回取りに行く巡回を1回の指示で走らせられる代わりに、どこで道を間違えたのかを読んで追うことはできません。だから使い分けの分かれ目は1つに絞れます。答えがすでにどこかに書かれている問いは任せると速く、書かれていない問いは任せても速くなりません。答えが載ったページに当たった前後で正答率が7.69%から89.74%へ跳ねる一方、周辺の情報だけを拾った場合には効果が確認されなかった、という測定がその裏付けです。品質の見方も決まっています。報告書としての提示には74.6点から91.9点が付くのに、拾い上げるべき情報は23.0点から40.0点にとどまり、総合では最も良いものが45.4点。読みやすさを品質の代わりに使ってはいけません。出典も同じで、リンクが開ける割合は9割を超え、話題の一致も8割を超えるのに、主張を裏付けている割合は4割から8割です。しかも深く調べさせるほど事実の精度は落ち、2回から150回に増やすと平均で約42%下がります。だから打ち手は、言い回しを凝ることではなく範囲を決めることです。問いを1文にし、答えの在り処を判定し、期間と地域を切り、情報源の種類を決め、集めなくてよいものを名指しし、出力の形を先に指定する。確認は人が引き取りますが、人も万能ではありません。数字の取り違えは82%拾えるのに、決まりの理解が要る誤りは31%しか拾えないのですから、要る側は業務を知っている人に名指しで回し、判定と修正は分けます。範囲を決める人と、確認していない箇所を書く欄。この2つを用意したところから、この機能は道具になります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
データ分析にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
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