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情報システムの更新で、現場のヒアリングメモから要件定義書の骨子と確認すべき論点を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

情報システムの更新で、所管課へのヒアリングメモを、要件定義書の章立てに沿って要件の候補に振り分けます。メモの根拠付きで骨子を下書きし、他のメモとの食い違いや数値の抜けを、次に確認すべき論点として挙げます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Microsoft Copilot
対象業界
その他/医療/教育/自治体
対象部門
情報システム
対象業務
書類作成/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
生成
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
条件付き
現在工数
42h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
64%
年間削減
324h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が所管課にヒアリングし、当日のうちにメモを書く
  2. メモを読み直し、要件定義書の章立てのどこに当たるかを1項目ずつ振り分ける
  3. 同じ案件の過去のメモを開き、同じことについて別の係が違うことを言っていないかを見比べる
  4. 処理件数や繁忙期など、数値が要る章で数値が出ていないものを拾う
  5. 要件定義書の下書きの該当の章に書き足す
  6. 論点台帳に、食い違いと確認の要る事項を書き、次のヒアリングの質問にする
導入後(After)
  1. 人担当者が所管課にヒアリングし、決めた書式でメモを書く
  2. 人メモから住民の個人の情報や職員の私的な事情を除き、案件ごとの ChatGPT のプロジェクトに貼り付ける
  3. 【AI】 ChatGPT が、プロジェクトの指示とファイル(章立て、現行システムの資料、論点台帳)を前提に、メモを章ごとの要件の候補に振り分ける
  4. 【AI】 過去のメモとの食い違い、数値の抜け、現行のやり方の再現の要望を論点として挙げる
  5. 人担当者が要件の候補と論点を読み、採るものを要件定義書の下書きに写し、論点台帳を更新する
  6. 人更新した論点台帳をプロジェクトのファイルに差し替え、次のヒアリングの質問を決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が所管課にヒアリングし、当日のうちにメモを書く
  2. メモを読み直し、要件定義書の章立てのどこに当たるかを1項目ずつ振り分ける
  3. 同じ案件の過去のメモを開き、同じことについて別の係が違うことを言っていないかを見比べる
  4. 処理件数や繁忙期など、数値が要る章で数値が出ていないものを拾う
  5. 要件定義書の下書きの該当の章に書き足す
  6. 論点台帳に、食い違いと確認の要る事項を書き、次のヒアリングの質問にする

(a)振り分けに時間がかかる。 ヒアリングの話は、業務の流れに沿って進みます。1つの発言に、業務フローと帳票と処理件数が混ざっています。 メモを章ごとにばらして書き直すだけで、1件に30分ほどかかります。

(b)食い違いを見落とす。 窓口の係は「予約は当日まで受けたい」と言い、施設の管理の係は「前日の17時で締めないと鍵の準備が間に合わない」と言う。別の日のメモに書かれていると、両方がそのまま要件の下書きに入ります。 事業者との打ち合わせで初めて気づくと、手戻りが大きくなります。

(c)論点の拾い方が担当で違う。 経験のある担当は、処理件数や繁忙期の数値が抜けていることに気づきますが、経験の浅い担当は、話された内容だけを書き写します。 非機能要件の章が空のまま、調達の直前まで進むことがあります。

(d)異動で経緯が途切れる。 要件定義は数か月かかり、途中で担当が異動すると、どの要望をなぜ採ったのか、どの論点がどう決まったのかが、メモの山の中に埋もれます。 後任は最初のメモから読み直すことになります。

  1. 【人】 担当者が所管課にヒアリングし、決めた書式でメモを書く
  2. 【人】 メモから住民の個人の情報や職員の私的な事情を除き、案件ごとの ChatGPT のプロジェクトに貼り付ける
  3. 【AI】 ChatGPT が、プロジェクトの指示とファイル(章立て、現行システムの資料、論点台帳)を前提に、メモを章ごとの要件の候補に振り分ける
  4. 【AI】 過去のメモとの食い違い、数値の抜け、現行のやり方の再現の要望を論点として挙げる
  5. 【人】 担当者が要件の候補と論点を読み、採るものを要件定義書の下書きに写し、論点台帳を更新する
  6. 【人】 更新した論点台帳をプロジェクトのファイルに差し替え、次のヒアリングの質問を決める

6番目が、この設計の分かれ目です。 ChatGPT のプロジェクトは、アップロードしたファイルと指示を同じプロジェクトの会話で共有します。論点台帳を毎回差し替えることで、どの論点が決着し、どれが残っているかを、次のメモの振り分けに反映させます。 差し替えを忘れると、決着した論点がいつまでも挙がります。

5番目を人が行うのも、意図してのことです。 AIが出すのは要件の候補と論点までで、要件定義書に写すかどうかは担当者が決めます。 要件定義書そのものを AI に書き換えさせません。

02今回想定するシステム構成

構成図
所管課へのヒアリング
   ▼ 決めた書式のヒアリングメモ(担当者が書く)
   ▼ 個人の情報を除く(担当者)
ChatGPT(案件ごとのプロジェクト)
   │  プロジェクトの指示:振り分けの決まり、出力の形、禁止事項
   │  プロジェクトのファイル:要件定義書の章立て/現行システムの機能一覧・帳票一覧
   │                         /論点台帳(最新版)/過去のメモの要約
   ▼
要件の候補(章ごと、根拠付き)+論点の一覧+次回の確認事項
   ▼
【人】担当者が採るものを要件定義書に写し、論点台帳を更新して差し替える
役割想定する製品代替候補
処理ChatGPT(法人向けプランのプロジェクト)Microsoft Copilot、Claude
保管庁内の共有フォルダ(ヒアリングメモ、論点台帳、要件定義書の下書き)庁内の文書管理

ヒアリングメモも要件定義書も、新しく足すものではありません。 足すのは、案件ごとの ChatGPT のプロジェクトと、その指示文、ヒアリングメモの書式です。システムの間をつなぐ仕組みは作らず、担当者が貼り付けて読み、写します。

ChatGPT のプロジェクトは、関係する会話・ファイル・指示を1か所にまとめる仕組みです。 公式の説明では、プロジェクトには会話の一覧とアップロードしたファイルや接続した情報源の欄があり、プロジェクトの指示はその中のすべての会話に適用されます。 プロジェクトはパソコンのフォルダを直接読むものではないので、使ってほしいファイルはアップロードしておく必要があります。 案件ごとに1つのプロジェクトを作り、ヒアリング1回ごとに新しい会話を始めます。

法人向けのプランを前提にするのは、入力の扱いのためです。 OpenAI の説明では、ChatGPT Business や ChatGPT Enterprise などの入力と出力について、既定では自社のデータをモデルの学習に使わないとされています。ヒアリングメモには庁内の業務の情報が入るため、個人向けのプランでは使いません。

要件定義書の章立ては、デジタル庁の要件定義書標準テンプレートから取ります。 このテンプレートは、デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン実践ガイドブック(DS-120)のテンプレート集に含まれ、業務要件定義(業務の範囲、業務フロー、入出力情報項目及び取扱量、処理件数、繁忙期など)、機能要件定義(機能一覧、画面、帳票、データ、外部インタフェース)、非機能要件定義(ユーザビリティ、性能、信頼性、継続性、情報セキュリティ、移行、運用、保守など)の章を持ちます。実践ガイドブックは政府の情報システム向けの参考文書ですが、章立ては自治体の業務システムの要件の整理にも使えます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

ヒアリングの当日か翌日に、担当者がメモを書き終えた時点で使います。 メモが2〜3件たまってからまとめて貼ると、どの発言がどのヒアリングのものかの区別が崩れます。1回のヒアリングにつき、プロジェクトの中に1つの会話を立てます。

会話の題名は「2026-10-14 施設予約 窓口係」のように、日付・案件・ヒアリング先にそろえます。後で論点の根拠をたどるときに、会話の一覧がそのままヒアリングの記録の目次になります。

同じヒアリングのメモを直して貼り直すときは、会話ごと作り直します。 1つの会話に直す前と直した後のメモが並ぶと、どちらの発言を根拠にしたかが分からなくなります。

論点台帳を更新したら、その日のうちにプロジェクトのファイルを差し替えます。 差し替えるまでは次のメモを貼らない、という順番を課内で決めておきます。

Step2

入力データを集める

データ中身置き場所
ヒアリングメモ日付、ヒアリング先(課・係・役職)、話題ごとの発言、出てきた数値、宿題会話に貼り付け
要件定義書の章立て標準テンプレートを参考にした、自市の要件定義書の章と節の一覧(番号付き)プロジェクトのファイル
現行システムの資料機能一覧、帳票一覧、処理件数の実績、利用者数プロジェクトのファイル
論点台帳論点の番号、内容、出どころのヒアリング、状態(未決・決着)、決着の内容プロジェクトのファイル(最新版に差し替え)
過去のメモの要約これまでのヒアリングごとの、要件の候補と論点の一覧プロジェクトのファイル(ヒアリングのたびに追記)

質を決めるのは、2行目の章立てと4行目の論点台帳です。 章立てに番号が無いと、AIは要件の候補を自分で考えた見出しに振り分け、下書きのどこに写せばよいかが分からなくなります。 論点台帳が古いと、決着した論点を何度も挙げます。

ヒアリングメモの書式を決めるのも、同じくらい効きます。 書式は、日付、ヒアリング先、出席者の役職、話題ごとの発言(誰の発言か)、出てきた数値、宿題、の6つの欄です。誰の発言かが書かれていないメモからは、根拠付きの要件の候補を作れません。

書式は、たとえば次のような形です。

【日付】2026-10-14
【案件】施設予約システム更新(第7回)
【ヒアリング先】市民活動推進課 窓口係
【出席者】窓口係 係長、窓口係 主任、情報政策課 担当2名
【話題と発言】
・予約の締切(窓口係 係長)「当日の朝まで受けたい。急な会合の相談が多い」
・抽選(窓口係 主任)「4月と10月の抽選の受付の週は、普段の何倍も来る」
・許可書(窓口係 主任)「今の許可書の形のままで出してほしい」
【数値】抽選の受付の週の件数:未確認(「普段の何倍も」)
【宿題】窓口係:昨年度の月別の受付件数を調べて送る

数値の欄に「未確認」と書けるようにしておくのが要点です。 聞けなかった数値を空欄にすると、聞かなかったのか聞けなかったのかが分かりません。

Step3

データの取得方法を決める

データの受け渡しは、担当者の手作業です。 庁内の共有フォルダからメモを開いて貼り付け、論点台帳と過去のメモの要約をプロジェクトにアップロードします。

取るものどこから手順
ヒアリングメモ共有フォルダの案件のフォルダ個人の情報を除いてから会話に貼る
論点台帳共有フォルダの案件のフォルダ更新のたびに、プロジェクトのファイルを差し替える
過去のメモの要約前回までの会話の出力ヒアリングごとに1ファイルに追記し、差し替える
現行システムの資料現行の事業者の納品物案件の開始時に1回アップロードする

過去のメモの要約を別ファイルにするのは、会話をまたいで見比べるためです。 プロジェクトの会話はそれぞれ独立しているので、前の会話の中身を確実に参照させるには、ファイルとして置くのが確かです。 要約は、そのヒアリングで採った要件の候補と論点だけを、論点台帳と同じ番号で書きます。

回ヒアリング先採った要件の候補(章の番号)挙がった論点
第4回施設管理係1.2.1 鍵の受け渡しの手順、1.4.3 前日17時の締切論点12(締切)
第5回予約の利用者の代表2.2.4 スマートフォンでの空き状況の確認論点14(本人確認の方法)

採らなかった候補は、要約に入れません。 入れると、次の会話で AI が採らなかった候補を前提に振り分けます。採らなかった理由は、庁内の共有フォルダの記録にだけ残します。

現行システムの資料は、事業者との契約で外部に出してよいかを先に確かめます。 納品物の扱いに制限があれば、機能一覧の見出しだけを書き写したものにします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 個人の情報を除く … 例に挙がった住民の氏名、相談の中身、職員の健康や家庭の事情は消します
  2. 発言者を役職に置き換える … 「〇〇係長」を「施設管理係 係長」のように、個人名ではなく役職で書きます
  3. 数値の単位をそろえる … 「月に300件くらい」「1日10件ちょっと」は、聞いたままの表現を残し、単位だけを明記します
  4. 宿題を分ける … ヒアリング先が後で調べると言ったものは、宿題の欄に移します
  5. 論点台帳の差し替え … 前回のヒアリングの後に決着した論点を、台帳に反映しておきます

1番目と2番目を、貼り付ける前に必ず行うのが要点です。 窓口の係のヒアリングでは、困った事例として住民の具体的な話が出ることがあります。要件を組み立てるのに、その住民が誰かは要りません。 個人名を役職に置き換えておくと、異動の後でも発言の重みが分かります。

4番目で宿題を分けるのは、論点と混ぜないためです。 宿題は相手が調べて返すもの、論点はこちらが決める場を作るもので、追いかけ方が違います。

3番目で「くらい」を残すのは、AIに数値を丸めさせないためです。 「300件くらい」を「300件」と書き換えると、確定した数値のように見えます。概数であることが、それ自体、次のヒアリングで確かめる論点です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、メモの発言を章ごとの要件の候補に振り分け、論点を挙げ、次回の確認事項を作ることです。

させること中身
要件の候補への振り分け発言1つずつを、章立ての番号に振り分ける。1つの発言が複数の章に当たれば分ける
要件の種類の印「業務の必要」「現行の再現」「改善の要望」「制約(法令・規程・予算)」のどれか
食い違いの検出過去のメモの要約・論点台帳と照らし、同じ事項について違うことが言われていれば挙げる
抜けの検出処理件数、繁忙期、利用者数、保管期間など、数値が要る章で数値が無いものを挙げる
次回の確認事項食い違いと抜けを、次のヒアリングでの質問の形にする
させないこと理由
メモに無い要件の追加根拠の無い要件は、調達の段で説明できない
要件として採るかの判断所管課と情報政策の担当が決める
数値の推定・丸め概数は概数のまま。推定は論点にする
食い違いの解決どちらを採るかは関係する係と決める
製品名・事業者名の推奨特定の製品に寄せた要件は競争を狭める

種類の印は、所管課と話すときの順番を決めるために付けます。 「制約」は法令や規程から来るので動かせず、「業務の必要」は理由を確かめれば採り、「改善の要望」は予算と優先度で決め、「現行の再現」はやり方を変えられないかをまず話します。 4つに分けておくと、次のヒアリングの時間の使い方が決まります。

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 章立ての中で空いている章があると、AIは一般的なシステムの要件で埋めようとします。「バックアップを毎日取る」のような一見もっともな要件が、誰も言っていないのに下書きに入ります。 空いている章は、空いていることを論点として挙げさせます。

Step6

指示内容を固定する

プロジェクトの指示には、次の内容を書きます。

あなたは市の情報政策課で、業務システムの更新の要件定義を担当する職員を
手伝う立場です。貼り付けられたヒアリングメモを、プロジェクトのファイルの
「要件定義書の章立て」に沿って要件の候補に振り分け、論点を挙げてください。

【振り分けの決まり】
- 要件の候補は、メモの発言1つずつから作ってください。
  メモに無い要件を足さないでください。
- 章は、章立てのファイルの番号(例:1.2.3)で示してください。
  章立てに無い見出しを作らないでください。
- 要件の候補ごとに、根拠として発言をそのまま写し、発言者の役職を書いてください。
- 種類を次から選んでください:業務の必要/現行の再現/改善の要望/制約
  「今の画面と同じにしてほしい」「今の帳票をそのまま」は現行の再現です。

【論点の挙げ方】
- 「過去のメモの要約」と「論点台帳」を読み、同じ事項について違うことが
  言われていれば、食い違いとして両方の発言と出どころを書いてください。
- 論点台帳で「決着」となっている論点は、新しい発言が決着の内容と
  違うときだけ挙げてください。
- 処理件数、繁忙期、利用者数、保管期間、応答時間について、
  このメモで数値が出ていない、または「くらい」「ちょっと」などの概数の
  ときは、抜けとして挙げてください。数値を推定しないでください。
- 章立てのうち、まだ要件の候補が1つも無い章を挙げてください。
  一般的な要件で埋めないでください。

【厳守事項】
- 製品名や事業者名を書かないでください。
- どの要件を採るべきかについて意見を書かないでください。
- 住民や職員の個人名が残っていたら、出力の先頭で指摘してください。

【出力】次の3つの表を、この順で出してください。
1 要件の候補(章の番号/要件の候補/種類/根拠の発言/発言者)
2 論点(区分:食い違い・抜け・空きの章/内容/出どころ/関係する論点の番号)
3 次回の確認事項(質問/聞く相手/関係する論点)

会話には、メモの前に「施設予約システム更新 第7回 窓口係 2026-10-14」のように、何回目のどこへのヒアリングかを1行書いて貼ります。

「決着した論点は、新しい発言が違うときだけ挙げる」を明記しないと、毎回同じ論点が並びます。 担当者は論点の一覧を読まなくなり、本当に新しい食い違いが埋もれます。

「空きの章を挙げる」を「一般的な要件で埋めない」と並べて書くのは、同じ失敗の裏表だからです。 埋めることを禁じるだけでは、空きの章には何も出ず、非機能要件の章が空のまま進む(第3章の(c))ことに気づけません。

Step7

出力形式を固定する

会話の画面に、3つの表で受け取ります。 表にするのは、要件定義書の下書きと論点台帳に、行単位で写すためです。

章の番号要件の候補種類根拠の発言発言者
1.4.2繁忙期(4月・10月の抽選の受付)の受付件数に耐えること業務の必要「4月と10月の抽選の受付の週は、普段の何倍も来る」窓口係 係長
2.3.1利用許可書を現行と同じ様式で出力すること現行の再現「今の許可書の形のままで出してほしい」窓口係 主任
区分内容出どころ関係する論点
食い違い予約の締切が、窓口係は当日、施設管理係は前日17時第7回 窓口係/第4回 施設管理係論点12
抜け抽選の受付の週の件数が「普段の何倍も」で数値が無い第7回 窓口係新規
空きの章3.6 継続性に関する事項に、まだ候補が無い-新規

1つ目の理由は、根拠の発言と発言者で、要件の出どころを後からたどれることです。 要件定義書の下書きに写すときも、根拠の列を備考として残します。異動の後任は、この列から元のメモに戻れます。

2つ目は、種類の列で「現行の再現」を一覧で拾えることです。 再現の要望は、要件定義書に写す前に、業務のやり方を変えられないかを所管課と話す論点にします。

3つ目は、論点の番号で論点台帳と結び付けられることです。 新規の論点には担当者が番号を振って台帳に足し、次の会話から AI はその番号で参照します。

Step8

システムへ連携する

システムどうしの連携は作りません。 ChatGPT の出力は担当者が読み、表を文書と表計算に写します。

つなぎ先方式内容
ヒアリングメモ担当者が貼り付け1回のヒアリングにつき1つの会話
プロジェクトのファイル担当者がアップロード・差し替え章立て、現行システムの資料、論点台帳、過去のメモの要約
要件定義書の下書き担当者が写す採った要件の候補と根拠
論点台帳担当者が写す新規の論点、決着の記録

つなぐ仕組みを作らないのは、要件定義が数か月の作業で、案件ごとに章立ても関係者も違うからです。 年に数件の案件のために連携を作るより、書式と指示文をそろえるほうが効きます。

表を写すときは、章の番号の列で並べ替えてから下書きに貼ります。 1回のヒアリングの候補は複数の章にまたがるので、番号順にすると下書きのどの章に入れるかが一目で分かります。

Step9

人が確認する

  1. 個人名の指摘を見る … 出力の先頭に指摘があれば、メモを直して貼り直し、元の会話を消します
  2. 要件の候補の根拠を読む … 根拠の発言がメモにそのまま書かれているかを確かめます。メモに無い言い回しになっていれば、その候補は採りません
  3. 「現行の再現」を所管課と話す論点にする … そのまま要件定義書に写しません
  4. 食い違いを論点台帳に足す … 関係する係と決める場を設けます
  5. 空きの章を見る … 次のヒアリングで、その章について聞く相手を決めます

2番目を省かないでください。 AIは発言を要件らしい言葉に言い換えます。言い換えの中で、「できれば」が「すること」に変わることがあります。 根拠の発言の言い回しで、要望の強さを確かめます。

目標は、36件をならして1件25分です。 個人の情報を除いて貼り付け、表を読み、採るものを写し、論点台帳を更新するまでです。

食い違いの論点は、AIが挙げたからといって本当に食い違っているとは限りません。 窓口係の「当日まで」と施設管理係の「前日17時」は、一般の予約と施設の鍵を使う予約で話が分かれているだけのこともあります。どちらの場合も、論点台帳に足して関係する係に確かめるのが先で、担当者が机の上で決着させないようにします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
メモに発言者が書かれていない振り分けはさせるが、根拠の発言者が「不明」の候補は採らない。書式を守ってもらう
章立てに当てはまらない話題「章立て外」として挙げさせ、章立てを見直すかを担当者が決める
論点台帳の差し替えを忘れた決着した論点が挙がるので、差し替えてから会話をやり直す
メモが長く、要件の候補が多すぎる話題ごとに分けて貼る
個人名が残っていた会話を消し、メモを直して貼り直す
案件が終わったプロジェクトの会話とファイルを、庁内の規程に沿って整理する

いちばん多いのは、2行目の章立て外の話題です。 「今のシステムの事業者の対応が遅い」「窓口の人手が足りない」のように、システムの要件ではない話もヒアリングでは多く出ます。捨てずに章立て外として挙げさせると、運用や保守の章、業務の見直しの論点に回せるものが見つかります。

Step11

記録を残す

  • ヒアリングメモの原本(庁内の共有フォルダ)
  • 会話の題名(日付・案件・ヒアリング先)と、出力の3つの表を写した記録
  • 要件定義書の下書きの、要件ごとの根拠の列
  • 論点台帳の版(差し替えのたびに日付を付けて残す)
  • 採らなかった要件の候補と、その理由

会話の画面そのものを記録の正本にはしません。 会話は担当者の利用の範囲で残りますが、庁内の文書の保存の決まりに沿う記録は、表を写した共有フォルダの側に置きます。 案件が終わってプロジェクトを整理しても、記録が残るようにするためです。

採らなかった候補の理由を残すのは、後で同じ要望が出るためです。 調達の段や事業者との打ち合わせで「なぜこれが入っていないのか」と問われたとき、理由が残っていれば、ヒアリングをやり直さずに答えられます。

04実装レベルの3段階

最小構成:個人の会話にメモと章立てを貼り、振り分けをさせる / 1件ごとの振り分け
半自動化:上記+案件ごとのプロジェクトに指示とファイルを置き、論点台帳と過去のメモの要約を差し替えながら使う / 振り分け、食い違いと抜けの検出、次回の確認事項
本格構成:上記+課内でメモの書式・指示文・論点台帳の書式を統一し、案件の開始の手順に組み込む / 案件をまたいだ品質のそろい

半自動化で、1件70分が25分になり、この段階が本記事の想定です。 振り分けと見比べはAIが行い、担当者の手元には読んで写す作業が残ります。 最小構成で個人の会話を使うのは、試す間だけにします。 指示とファイルを毎回貼り直す手間がかかり、続けると担当者ごとに使い方がばらけます。 本格構成は、時間より引き継ぎのための段階です。 書式と指示文が課内で統一されると、異動で案件を引き継いだ後任が、同じ手順でそのまま続けられます。 第3章の(d)を防ぐのは、この段階です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1案件で、章立ての番号の振り方と、メモの書式の足りない欄が分かります。 本格構成でも、APIでつないで自動で振り分ける形にはしていません。 振り分けの結果を読んで採るかを決める作業は、ヒアリングに出た担当者にしかできず、自動にしても確認の時間は減らないからです。仕組みを足すより、案件をまたいで同じ書式と指示文を使い続けることのほうが効きます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
36 件
1件あたり現在時間
70 分
1件あたり導入後時間
25 分
現在  36件 × 70分 ÷ 60 = 42 時間/月
導入後 36件 × 25分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
27h
削減率
64%
年間削減時間
324h
年間金額換算(時間単価3,500円)
113万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 標準化の対象外の業務システム(施設予約、文書管理、図書館、学校の校務など)の更新を毎年いくつも抱え、情報政策の担当課が所管課へのヒアリングを重ねて要件定義書を作っている自治体。ヒアリングメモはあるが、要件定義書の章立てへの振り分けと論点の洗い出しが担当者の経験に頼り、担当の異動で途切れている場合。ChatGPT の法人向けのプラン(Business や Enterprise)を庁内で使える場合。
向いていない
  1. 標準化対象の20事務のシステムの移行(標準仕様書に沿うことが前提で、要件をヒアリングから組み立てる余地が小さい)。ヒアリングメモに住民の個人の情報が多く含まれ、伏せる手間が大きい場合。要件定義を事業者に一括して委託し、庁内でヒアリングメモを扱わない場合。なお、どの要望を要件として採るか、業務の見直しをどこまで行うかの判断と、調達仕様書の確定は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 最近終わった案件のヒアリングメモから5件を選ぶ(後で食い違いが見つかったメモを含める)
  2. その案件の要件定義書の章立てを番号付きで書き出し、ChatGPT のプロジェクトにアップロードする
  3. プロジェクトの指示に第7章の内容を書き、メモを1件ずつ古い順に会話に貼る。2件目からは前の出力の要約をファイルに追記してから貼る
  4. 出てきた要件の候補と論点を、実際の要件定義書と、当時の論点台帳と比べる
出てきた内容判断
当時見つけた食い違いが、論点として挙がった課内の書式と指示文をそろえて使い始める
メモに無い要件が混ざる指示の書き方で直る。構成は有効
発言者が分からず根拠が付かないメモの書式を先に決める

3行目が出たときは、AIより先にメモの書き方を見直します。 根拠付きの振り分けは、メモに誰の発言かが書かれていて初めてできます。

5件は、必ず古い順に貼ってください。 食い違いは、後のメモが前のメモと違うことを言ったときに見つかります。順番を崩すと、当時と同じ条件で見つけられたかを確かめられません。 試すときに使ったメモも、貼る前に個人の情報を除いたものにしておきます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
メモに無い要件が入る指示で禁じ、根拠の発言がメモにあるかを確かめる
空いた章を一般的な要件で埋める空きの章を論点として挙げさせる
決着した論点が毎回挙がる論点台帳を差し替え、決着の扱いを指示に書く
「できれば」が「すること」に変わる根拠の発言の言い回しで要望の強さを確かめる
現行の再現がそのまま要件になる種類の印で拾い、業務の見直しの論点にする
概数が確定した数値に見える概数を残させ、抜けとして挙げさせる
個人名が残ったまま貼る貼る前に除く。残っていたら指摘させ、会話を消す
章立ての番号が無い自市の版の章立てに番号を振ってからアップロードする

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、要件の根拠がメモにあるかの問題です。

「現行の再現」の扱いも、早めに課内で決めておきます。 印が付いても、所管課との話し合いが済まないまま下書きに写されると、結局は現行の画面と帳票の再現が並んだ要件定義書になります。 再現の印が付いた候補は、話し合いの結果が論点台帳に書かれるまで写さない、という決まりにすると守られます。根拠の列を要件定義書まで持ち運べば、調達の段まで同じ確認ができます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 所管課へのヒアリングメモ、現行システムの機能一覧・帳票一覧、論点台帳、要件定義書の章立てです。住民の個人の情報は扱わない前提です。

  1. 法人向けのプランを使う … 既定で入力を学習に使わないプランを、庁内の利用の決まりに沿って使います
  2. 個人の情報を貼る前に除く … 住民の事例、職員の私的な事情は消し、発言者は役職で書きます
  3. 現行の事業者の資料の扱いを確かめる … 納品物を外部のサービスに置いてよいかを、契約と照らします
  4. 製品・事業者を推奨させない … 要件定義書が特定の製品に寄ると、調達の競争性を損ないます
  5. 要件の採否は人が決める … AIが出すのは候補と論点までです
  6. どの端末から使うかを庁内の情報セキュリティポリシーで決める … ヒアリングメモを扱う端末と、ChatGPT を使える端末が同じとは限りません

ヒアリングに出た職員には、メモを AI で整理することを伝えておきます。 発言が役職付きで要件定義書の根拠に残ることも含めて知っていれば、記録に残したくない話は、メモの外で伝えてもらうこともできます。

誤りが起きた場合のリスクは、根拠の無い要件が調達仕様書まで進むことと、ヒアリングに出た住民や職員の情報が外に出ることの2つです。 前者は根拠の発言の確認で、後者は貼る前の除去で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:章立てに番号を振る

デジタル庁の要件定義書標準テンプレートを参考に、自市の要件定義書の章立てを作り、章と節に番号を振ります。 業務の性格上使わない章も、番号は残しておきます。番号を後から振り直すと、論点台帳の参照が崩れます。

2週目:5件で試す

終わった案件のメモから5件を選び、プロジェクトで振り分けさせます。当時見つけた食い違いが論点として挙がるかを最優先で見ます。

3週目:メモの書式を決める

日付、ヒアリング先、出席者の役職、話題ごとの発言、数値、宿題の6つの欄の書式を作り、次のヒアリングから使います。

4週目:進行中の案件で使う

いま要件定義の段にある案件1つで、プロジェクトを作り、論点台帳と過去のメモの要約を差し替えながら使います。

2か月目: 課内の2つ目の案件に広げ、採らなかった候補の理由を残す運用を始めます。3か月目以降: 1件70分が何分になったかを実測し、指示文と書式を課内の手順書にします。担当の異動があっても、後任が論点台帳とプロジェクトから続きを始められた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
ChatGPT のプロジェクトが関係する会話・ファイル・指示をまとめ、会話の欄とアップロードしたファイルや接続した情報源の欄を持つこと、プロジェクトの指示がその中のすべての会話に適用されること、パソコンのフォルダを直接読まないためファイルをアップロードする必要があることChatGPT: Projects and chats2026-10-14
ChatGPT Business・Enterprise・Edu などと API の入力と出力について、既定ではモデルの学習に使わないこと、SAML SSO と利用できる機能の管理ができることOpenAI: Enterprise privacy at OpenAI2026-10-14
DS-120 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン実践ガイドブックが参考文書(Informative)で、テンプレート集に要件定義書標準テンプレートが含まれること(2026年7月15日更新)デジタル庁: 標準ガイドライン群2026-10-14
要件定義書標準テンプレートが業務要件定義・機能要件定義・非機能要件定義に分かれ、業務の範囲、業務フロー、入出力情報項目及び取扱量、処理件数、繁忙期、機能一覧、画面、帳票、データ、外部インタフェース、性能、信頼性、継続性、情報セキュリティ、移行、運用、保守などの章を持つことデジタル庁: DS-120 各種テンプレート(ZIP)2026-10-14
標準化対象事務が現時点で20事務であること、自治体ごとのカスタマイズで改修や維持の負担が大きくなっていたことが標準化の背景に挙げられていることデジタル庁: 地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化2026-10-14

どの要望を要件として採るか、業務の見直しをどこまで行うかは、所管課と情報政策の担当で決めてください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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