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社労士事務所が通達・行政のQ&Aと事務所の過去の回答記録から、顧問先の質問に当てはまる根拠を探す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

顧問先から届いた労務・社会保険の質問について、通達・疑義照会と事務所の過去の回答記録から当てはまる根拠を探し、引用と日付の付いた根拠のメモにします。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
その他/士業
対象部門
人事
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
80h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
70%
年間削減
672h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 職員が顧問先の質問を受け、論点を書き出す
  2. 法令等データベースの通知検索で、語を変えながら関係する通達を探す
  3. 日本年金機構の疑義照会のPDFを開き、同じ論点の照会が無いかを目で探す
  4. 事務所の共有フォルダとメールを語で検索し、過去に同じ質問に答えた記録を探す
  5. 見つけた根拠を、通達の番号と該当の段落を写してメモにまとめる
  6. 社会保険労務士がメモを見て、顧問先への回答を決める
導入後(After)
  1. 人職員が顧問先の質問を受け、検索の画面に分野(労働基準・社会保険の適用など)を選び、質問の文を入れる。顧問先の名前と社員の名前は入れない
  2. 自動中継の処理が、分野と「現行」の状態で絞り込みの式を作る
  3. 自動Vertex AI Search の answer メソッドが、通達と疑義照会から該当箇所を探し、文ごとに引用を付けて論点の整理を返す
  4. 自動search メソッドが、同じ分野の事務所の過去の回答を探し、日付の新しい順に返す
  5. 自動中継の処理が、引用の無い文と支持の低い文を外し、過去の回答の日付より後に同じ分野の通達が出ていれば印を付ける
  6. 自動引用・過去の回答・印をまとめた根拠のメモを画面に出す
  7. 人職員が引用の元の通達と疑義照会を開いて確かめ、メモに要るものを残す
  8. 人社会保険労務士がメモを見て、顧問先への回答を決める
  9. 人回答を送った後、職員が回答を事務所の回答の記録として登録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 職員が顧問先の質問を受け、論点を書き出す
  2. 法令等データベースの通知検索で、語を変えながら関係する通達を探す
  3. 日本年金機構の疑義照会のPDFを開き、同じ論点の照会が無いかを目で探す
  4. 事務所の共有フォルダとメールを語で検索し、過去に同じ質問に答えた記録を探す
  5. 見つけた根拠を、通達の番号と該当の段落を写してメモにまとめる
  6. 社会保険労務士がメモを見て、顧問先への回答を決める

(a)通達を探すのに時間がかかる。 2番は、質問の言葉と通達の言葉が違うと見つかりません。顧問先は「パートさん」「手当」と書き、通達は「短時間労働者」「報酬」と書きます。 語を変えて何度も検索します。

(b)疑義照会のPDFは目で探すしかない。 3番の疑義照会は、区分ごとに長いPDFにまとまっています。どの区分に入っているかが分かっても、その中のどの照会が同じ論点かは、読んで探すことになります。

(c)過去の回答がベテランの記憶にしか無い。 4番で、事務所の記録はファイル名もメールの件名もばらばらです。「前に似た質問があった」と覚えている職員がいれば早く、いなければ見つかりません。

(d)古い回答を使い回す。 過去の回答が見つかると、その回答の根拠をそのまま使いたくなります。その後に通達が改正されていても、回答の文書にはそのことが書かれていません。 5番のメモに古い根拠が入り、6番で社会保険労務士が気づけばよいほうです。

(e)社会保険労務士の確認が重くなる。 メールの量が多い月ほど、メモの根拠の確かさが職員によって変わります。社会保険労務士は、メモの根拠を自分で調べ直すことになり、 確認に時間がかかります。

  1. 【人】 職員が顧問先の質問を受け、検索の画面に分野(労働基準・社会保険の適用など)を選び、質問の文を入れる。顧問先の名前と社員の名前は入れない
  2. 【自動】 中継の処理が、分野と「現行」の状態で絞り込みの式を作る
  3. 【自動】 Vertex AI Search の answer メソッドが、通達と疑義照会から該当箇所を探し、文ごとに引用を付けて論点の整理を返す
  4. 【自動】 search メソッドが、同じ分野の事務所の過去の回答を探し、日付の新しい順に返す
  5. 【自動】 中継の処理が、引用の無い文と支持の低い文を外し、過去の回答の日付より後に同じ分野の通達が出ていれば印を付ける
  6. 【自動】 引用・過去の回答・印をまとめた根拠のメモを画面に出す
  7. 【人】 職員が引用の元の通達と疑義照会を開いて確かめ、メモに要るものを残す
  8. 【人】 社会保険労務士がメモを見て、顧問先への回答を決める
  9. 【人】 回答を送った後、職員が回答を事務所の回答の記録として登録する

7番目が、この設計の分かれ目です。 職員は答えの文を読むのではなく、引用の元を開いて、そこに本当にそう書かれているかを確かめます。 引用の確かめを省くと、根拠のメモが「検索が言ったこと」のメモになります。

9番目が、仕組みを育てる作業です。 回答を決まった形で登録していけば、次に同じ論点の質問が来たとき、過去の回答として引けるようになります。

02今回想定するシステム構成

構成図
職員(検索の画面:分野の選択+質問の文)
   ▼【トリガー】検索の画面で送信
中継の処理(Python。Cloud Run)
   │   分野と状態で絞り込みの式を作る
   ▼
Vertex AI Search(Agent Search)
   ├── answer メソッド ── 通達と疑義照会の該当箇所(文ごとの引用・支持の度合いつき)
   └── search メソッド ── 事務所の過去の回答(同じ分野・新しい順)
   │   データストア:厚生労働省の通知・通達、年金機構の疑義照会と回答、
   │                 事務所の過去の回答(顧問先の名前を置き換えたもの)
   ▼
中継の処理 ── 引用の無い文と支持の低い文を外す。過去の回答の後に出た通達の印
   ▼
検索の画面(論点の整理/引用の元/過去の回答と印)
   ▼
【職員が引用の元を確かめる】→【社会保険労務士が回答を決める】
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドと search メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの論点の整理に使うモデル)―
連携中継の処理(Python。Cloud Run で動かし、検索の画面と検索をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(通達と疑義照会と過去の回答の写し、メタデータ、問い合わせの記録)―

新しく作るのは、検索の画面と中継の処理、過去の回答の登録の決まりです。 通達と疑義照会は公開の資料で、事務所がいま見ているものと同じです。 過去の回答は、顧問先ごとのフォルダから顧問先の名前を置き換えた写しを作って入れます。

土台は、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式ページでは、answer メソッドは検索の結果から答えを作り、答えの文ごとに出典を示す引用を付けられるとされています。主張ごとの根拠の支持の度合いは0から1の値で返り、groundingSpec の filteringLevel を設定すると、支持の低い答えを返さないようにできます。公式ページには、Vertex AI Search が Agent Search へ改称中である旨の記載があります。

日本語は、答えの機能の対応言語です。 公式の言語の一覧では、日本語(ja-JP)は検索の機能と、answers and follow-ups(答えと追加の質問)に対応しています。

データストアの場所に、日本はありません。 公式ページでは、データの保存の場所として選べるマルチリージョンは us と eu で、それ以外は global です。通達と疑義照会は公開の資料ですが、過去の回答には顧問先の事情が書かれています。 社会保険労務士法は業務で知り得た秘密を漏らすことを禁じているので、過去の回答は、顧問先と社員を特定できる記載を置き換えてから入れます(第13章)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

職員が検索の画面で、分野を選んで質問の文を送ったときに動きます。 分野は「労働時間・休日」「賃金・手当」「社会保険の適用」「社会保険の報酬・保険料」「雇用保険」「労災保険」などから1つ以上を選びます。分野を選ばせるのは、絞り込みのためです。 選ばないと、「手当」という語で労働基準と社会保険の両方の通達が混ざって出ます。

データの入れ替えは、別の決まった時期に行います。 公式の法令等データベースのページでは、データは毎月更新され、更新までの間に発出された法令・通知は「登載準備中」のコーナーに載るとされています。担当の職員が月に1回、事務所で扱う分野の新しい通知を確かめて取り込みます。疑義照会は、年金機構のページのお知らせで追加を確かめます。

過去の回答は、回答を送った日のうちに登録します。 社会保険労務士が回答を決めて顧問先に送った後、職員が登録の画面から入れます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
通知・通達文書番号、発出日、件名、本文、分野、状態(現行・改正あり・廃止)厚生労働省の法令等データベースから担当が保存
疑義照会と回答区分、照会の要旨、回答、掲載の時期日本年金機構のページのPDF
事務所の過去の回答回答の日、分野、論点、根拠にした通達の番号、回答の要旨、回答した社会保険労務士顧問先ごとのフォルダから写しを作る
質問分野、質問の文検索の画面
置き換えの表顧問先が使う言葉と通達の言葉の対応事務所で作る表

質を決めるのは、通達の「状態」の項目です。 通達は後から改正されたり、廃止されたりします。状態が「現行」のものだけを answer メソッドに渡すのが基本で、改正や廃止のあったものは、元の文書番号から新しい文書番号を引けるように項目を持たせます。

過去の回答には、「根拠にした通達の番号」の項目を必ず持たせます。 後から同じ分野で新しい通達が出たとき、この番号の通達が改正されたのか、別の通達が足されたのかを分けて示せます。

公開の資料の扱いも確かめておきます。 厚生労働省のホームページのコンテンツは、特記の無い限り公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した条件で利用でき、編集・加工して使うときは、そのことを記載し、国が作ったかのような形で公表しないとされています。根拠のメモは事務所の中で使うもので、顧問先に渡すときは、メモではなく社会保険労務士の回答として出します。

Step3

データの取得方法を決める

通知・通達は、担当の職員が登録の画面から入れます。 法令等データベースの通知を保存し、登録のときに分野・発出日・状態・文書番号を入れ、メタデータを作ります。公式ページでは、取り込めるファイルは TXT、JSON、Markdown、PDF、HTML、DOCX、PPTX、XLSX、XLSM で、1つのファイルは200MBまで、1回の取り込みは10万ファイルまでとされています。メタデータは、id と structData、文書の場所を示す content の uri を1行に1つ書いた JSON Lines か NDJSON のファイルで渡します。

疑義照会のPDFは、照会ごとに分けてから入れます。 公式の年金機構のページでは、主な疑義照会と回答が、国民年金の適用・保険料、厚生年金保険の適用・徴収、年金給付の区分ごとのPDFで載っています。1つのPDFに多くの照会が入っているので、そのまま入れると、引用がPDFの別の照会の段落に当たることがあります。 中継の処理が照会ごとに文書に分け、区分を分野の項目に写します。

スキャンした通達には、レイアウトパーサーを使います。 公式ページでは、スキャンしたPDFや画像の中に文字があるPDFには、データストアを作るときにレイアウトパーサーを有効にすることを勧めています。 古い通達はスキャンしたPDFのことがあるので、最初から有効にして作ります。

過去の回答は、中継の処理が決まった形の文書に書き出してから入れます。 顧問先のフォルダの回答の文書から、回答の日・分野・論点・根拠の番号・要旨を書き出し、顧問先の名前、社員の名前、会社を推し量れる固有の事情を、記号に置き換えます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 絞り込みの式を作る … 画面で選んだ分野を、メタデータの絞り込みの式にします
  2. 現行のものに限る … answer メソッドに渡す通達には、必ず状態が「現行」のものだけを選ぶ条件を足します
  3. 根拠と前例を分ける … answer メソッドは通達と疑義照会だけ、search メソッドは過去の回答だけに絞ります
  4. 質問の言葉を通達の言葉に寄せる … 置き換えの表を通し、「パートさん」を「短時間労働者」、「手当」を分野に応じて「賃金」か「報酬」に置き換えた文を足します
  5. 個人と顧問先の情報の確かめ … 質問の文に会社の名前や社員の名前が書かれていれば、送る前に消すよう画面で知らせます

絞り込みの式は、次の形になります。 公式ページの書き方では、文字の項目は 項目: ANY("値") で、式は AND と OR でつなぎ、日付は ISO 8601 の文字列と比較の記号で絞れます。

doc_type: ANY("circular", "pension_qa")
AND field: ANY("社会保険の適用")
AND status: ANY("current")

絞り込みに使う項目は、インデックスの対象にしておきます。 公式ページでは、絞り込みに使う項目はスキーマの設定で indexable にする必要があり、indexable にしても絞り込みに使えない項目がありうるとされています。最初に、上の項目で絞り込めることを試してから運用に入ります。

4番目の置き換えは、元の文を消さずに足します。 置き換えた文だけで検索すると、顧問先の言葉で書かれた過去の回答が見つからなくなります。 過去の回答の検索には、元の文も使います。

Step5

AIに処理させる

answer メソッドにさせるのは、通達と疑義照会の該当箇所を論点ごとに並べることだけです。 結論は書かせません。過去の回答の検索と、後から出た通達の印は、中継の処理の規則で行います。

させること中身
論点の整理質問の論点ごとに、該当する通達と疑義照会の記載を並べる
引用文ごとに、元の通達と疑義照会を示す
記載の無いことの明示見つからない論点は「該当の記載が見つかりません」と書く
過去の回答の検索(search メソッド)同じ分野の過去の回答を、日付の新しい順に返す
中継の処理の規則中身
引用の無い文を外す引用の付いていない文はメモに出さない
支持の低い文を外す支持の度合いが事務所で決めた値を下回る文を外す
後から出た通達の印過去の回答の日付より後の発出日で、同じ分野の通達があれば印を付ける
根拠の番号の照合過去の回答が根拠にした通達の状態が「改正あり」「廃止」なら印を付ける

後から出た通達の印は、規則で付けます。 生成AIに「この回答はいまも有効か」と聞くと、その判断そのものが新しい解釈になります。 日付と状態を比べて印を付けるだけにし、有効かどうかは社会保険労務士が読んで決めます。

させないこと理由
結論の記載解釈の決定は社会保険労務士が行う
顧問先への回答の文顧問先の事情を見て社会保険労務士が書く
一般的な知識での補い根拠のメモに出典の無い記載が混ざる
過去の回答の有効性の判断日付と状態の印までにする

3行目が起きやすい失敗です。 通達が見つからない論点について、一般に言われている取扱いをそれらしく書き、引用を付けずに文を足します。 中継の処理で引用の無い文を外すのは、このためです。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドのプリアンブル(答えの書き方の指示)の例です。

あなたは社会保険労務士事務所で、顧問先の質問の根拠を調べる職員の補助です。
検索で見つかった厚生労働省の通知・通達と、日本年金機構の疑義照会と回答だけを使ってください。

【書き方】
- 質問の論点を分け、論点ごとに見出しを付けてください。
- 論点ごとに、当てはまる通達または疑義照会の記載を、元の書き方に近い形で示してください。
- 通達の文書番号、発出日、疑義照会の区分が分かれば、文の中に書いてください。
- 同じ論点で通達と疑義照会の両方があれば、両方を分けて示してください。

【厳守事項】
- 検索で見つからなかった論点は「該当の記載が見つかりません」と書いてください。
  一般的な知識や他の資料で補わないでください。
- 「〜に該当します」「〜は対象外です」のような結論を書かないでください。
  記載をそのまま示すだけにしてください。
- 質問の会社の事情に当てはめた判断をしないでください。
- 改正前の取扱いと改正後の取扱いを混ぜないでください。
  発出日の違う通達は、日付が分かるように分けて示してください。

「結論を書かない」を明記しないと、最後の1文に結論を書き足します。 「以上から、通勤手当は報酬に含まれます」のような1文です。正しいかどうかにかかわらず、その1文がメモから顧問先への回答に写されます。 結論を書くのは社会保険労務士です。

「改正前と改正後を混ぜない」も大事です。 状態を「現行」に絞っていても、現行の通達の中に「従前の取扱いは〜」という記載があります。それを今の取扱いと並べて書くと、どちらが今の取扱いか読み分けにくくなります。

引用は、answer メソッドの設定で付けます。 公式ページでは、answerGenerationSpec の includeCitations で引用を返すかを決め、既定は false です。必ず true にします。引用の位置を示す startIndex と endIndex は、文字の数ではなく UTF-8 のバイトの数で数えられるので、中継の処理で画面に印を付けるときはバイトから文字の位置に直します。

Step7

出力形式を固定する

中継の処理が、answer メソッドと search メソッドの結果を次の形にまとめて画面に返します。

{
  "query": { "field": ["社会保険の報酬・保険料"], "text": "通勤手当を6か月分まとめて払う場合の報酬の扱い" },
  "points": [
    {
      "heading": "まとめて支給する通勤手当の報酬月額への算入",
      "sentences": [
        { "text": "疑義照会(厚生年金保険 適用)では、…と回答されている。",
          "citations": [{ "doc": "pension_qa_kosei_tekiyo_0412", "kind": "pension_qa" }],
          "support": 0.88 }
      ]
    }
  ],
  "dropped_sentences": 1,
  "past_answers": [
    { "answer_date": "2023-05-18", "answer_id": "A-0613", "basis": ["通達 X-123"],
      "summary": "6か月定期の通勤手当の月割りの扱い", "flags": ["later_circular"] }
  ]
}

dropped_sentences は、引用が無いか支持の低い文を外した数です。 画面には「根拠を確かめられなかった文を1つ外しました」と出し、外した文そのものは見せません。

flags の later_circular は、過去の回答の日付より後に同じ分野の通達が出ていることを示します。 根拠にした通達の状態が「改正あり」「廃止」なら basis_changed を付けます。画面では、印の付いた過去の回答を灰色にし、「後に通達あり」と表示します。

画面の欄中身
論点の整理論点ごとの通達と疑義照会の記載。文ごとに引用の元を開くリンク
引用の元通達と疑義照会の該当の文書を開くボタン
過去の回答同じ分野の回答を新しい順に。日付、根拠の番号、要旨、印
根拠のメモに残す職員が確かめた引用と過去の回答を選び、メモに書き出すボタン
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
検索の画面中継の処理の API分野と質問の文を受け、まとめた結果を返す
Vertex AI Searchanswer メソッド、search メソッド根拠の引用と過去の回答
Cloud Storage中継の処理と登録の画面が書く通達・疑義照会・過去の回答の写しとメタデータ
顧問先の台帳読まない検索に顧問先の情報を使わない
相談の記録職員が根拠のメモを貼る回答の決定までの記録

顧問先の台帳には、つなぎません。 検索に要るのは分野と質問の文だけで、どの顧問先の質問かを検索の側が知る必要はありません。 根拠のメモを相談の記録に貼るのは職員です。

answer メソッドには、敵対的な問い合わせや答えを求めない問い合わせを無視する設定があります。 公式ページの例では ignoreAdversarialQuery と ignoreNonAnswerSeekingQuery を true にしています。答えが返らなかったときは answerSkippedReasons を画面に出し、 職員が質問の文を書き直せるようにします。

Step9

人が確認する

職員と社会保険労務士の2段で確かめます。

  1. 職員が引用の元を開く … 論点ごとに、引用された通達と疑義照会の該当の段落を開き、そこに本当にそう書かれているかを確かめます
  2. 職員が過去の回答の印を見る … later_circular や basis_changed の付いた回答は、後から出た通達を開いて、前提が変わったかを確かめます
  3. 職員が根拠のメモに残す … 確かめた引用と過去の回答だけを選んでメモにし、社会保険労務士に上げます
  4. 社会保険労務士が回答を決める … メモの根拠を読み、顧問先の事情に当てはめて回答を書きます

1番目を省かないでください。 answer メソッドの引用は文ごとに付きますが、引用の元のどの段落を根拠にしたかは、開いて読まないと分かりません。 段落を読み違えた引用は、支持の度合いが高くても起きます。

「該当の記載が見つかりません」と出た論点は、職員がいまの方法で探します。 見つかった通達が取り込まれていなければ、取り込み漏れとして担当の職員に知らせます。

目標は、240件をならして1件6分です。 引用の確かめと印の確かめに数分かかる想定で、それより長い月は、置き換えの表か分野の付け方を見直します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
答えが返らない(支持が低い・答えを求めない問い合わせ)理由を画面に出し、質問の文か分野を変えて引き直す
引用の元が改正前の通達状態の項目の付け誤り。担当の職員が状態を直す
過去の回答の顧問先が推し量れる置き換えの漏れ。写しを差し替えて取り込み直す
最新の通知が取り込まれていない登載準備中のコーナーを確かめ、担当の職員が取り込む
疑義照会の引用が別の照会に当たる照会ごとの分け方の誤り。分け直して取り込み直す

4行目は、毎月起きうることです。 法令等データベースのページには、登載された情報が厚生労働省所管の全ての法令・通知を網羅しているわけではなく、官報に掲載された内容と異なる場合は官報が優先すると書かれています。根拠のメモは、取り込んだ範囲での検索の結果だと画面に明記します。

Step11

記録を残す

  • 問い合わせの分野と質問の文(顧問先の名前を消したもの)、送った職員、日時
  • answer メソッドと search メソッドの結果の全文、外した文の数、付けた印
  • 職員が根拠のメモに残した引用と、残さなかった引用
  • 根拠のメモと、社会保険労務士が決めた回答
  • 取り込んだ通達・疑義照会の版と取り込んだ日、状態を直した記録

3つ目は、検索を育てる材料になります。 職員が残さなかった引用が多い分野は、分野の付け方か置き換えの表が合っていません。 月に1回、担当の職員が見て直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:通達と疑義照会のPDFを手でAIの画面に貼り、論点ごとの引用を書き出させる / 1件ごとの段落の引き当て
半自動化:上記+通達と疑義照会を Vertex AI Search に入れ、分野と状態で絞って引用付きで返す / 通達と疑義照会の検索と引用
本格構成:上記+過去の回答を置き換えて入れ、後から出た通達の印と根拠のメモの書き出しまで / 過去の回答の検索、印、メモ

半自動化で、①の通達探しが短くなります。 ただし過去の回答はいまの方法で探すので、②が残ります。本格構成で1件6分になり、この段階が本記事の想定です。 過去の回答を引けることと、後から出た通達の印が付くことで、②と③のほとんどが確かめの作業に置き換わります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の間に、状態の項目を正しく付ける運用と、毎月の取り込みの運用を固めます。この2つが固まらないまま過去の回答を入れると、後から出た通達の印が、状態の付け誤りで外れます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  240件 × 20分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 240件 × 6分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
56h
削減率
70%
年間削減時間
672h
年間金額換算(時間単価3,500円)
235万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 顧問先を数十社から百社以上持ち、労働時間・賃金・社会保険の適用などの解釈の質問を毎月数百件受けている社会保険労務士事務所。根拠の通達や疑義照会を、職員がそのつど行政のサイトで探し、過去に同じ質問へどう答えたかをベテランの記憶とメールの検索に頼っている場合。過去の回答を使い回して、その後に出た通達を見落とした経験がある場合。
向いていない
  1. 顧問先が少なく、質問が月に数十件で、社会保険労務士が自分で調べて足りている事務所。質問の多くが手続きの様式や期限で、解釈の根拠を探すことが少ない事務所。過去の回答の記録が残っておらず、残す決まりも作れない事務所。なお、法令や通達の解釈の決定、顧問先への回答の内容、労働基準監督署や年金事務所への照会の要否の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の質問から20件を選ぶ(社会保険の適用・報酬の質問と、労働時間の質問を半分ずつ入れる)
  2. その20件について、当時の根拠のメモと回答を出しておく
  3. 当時の根拠になった通達と疑義照会のPDFを、手元のAIサービスの画面に貼り付ける
  4. 「この資料だけを使って、次の質問の論点ごとに当てはまる記載を引用してください。資料に無いことは『該当の記載が見つかりません』と書き、結論は書かないでください」と指示し、顧問先の名前を消した質問を貼る
  5. 出てきた引用を、当時の根拠のメモと突き合わせる

20件は必ずやってください。 組む前に、「資料の中から当てはまる段落を引けるか」と「結論を書かずにいられるか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時のメモと同じ段落が引けたデータストアの作成に進む
最後に結論を書き足した指示の書き方で直る。構成は有効
顧問先の言葉では当てはまる段落が引けない置き換えの表が先。 言葉の対応を作る

3行目は失敗ではありません。 顧問先の言葉と通達の言葉の差が、いまも職員の検索に時間がかかる理由だと分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
分野を選ばずに労働基準と社会保険が混ざる分野の選択を必須にする
改正前の通達が引用される状態の項目を付け、answer メソッドは「現行」に絞る
疑義照会の引用が別の照会に当たるPDFを照会ごとに分けて入れる
引用の印の位置がずれる位置は UTF-8 のバイト数。文字の位置に直す
引用が返らないincludeCitations の既定は false。true にする
結論の1文が書き足される結論を書かないと明記し、引用の無い文を外す
過去の回答の顧問先が推し量れる置き換えの決まりを作り、取り込む前に確かめる
過去の回答の有効性を生成AIに聞く日付と状態の印までにし、判断は社会保険労務士

上の5行は、取り込みと設定の失敗です。 どれも、資料の時点と区切りを正しく持たせることで防げます。

下の3行は、判断を仕組みに寄せてしまう失敗です。 根拠のメモは、社会保険労務士が判断するための材料です。結論も有効性も、材料の側に書かせないでください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 厚生労働省の通知・通達と年金機構の疑義照会(公開の資料)、事務所の過去の回答(顧問先の事情を含む)、職員が入れる質問の文です。

  1. 秘密を守る義務を前提にする … 社会保険労務士法は、開業社会保険労務士などが正当な理由がなく業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならないと定めています。過去の回答は、顧問先と社員を特定できる記載を置き換えてから入れます
  2. 国外の場所に保存することを整理する … データストアの場所に日本はありません。置き換えた後の写しだけを入れ、元の回答の文書は事務所の中に置いたままにします
  3. 質問の文に顧問先の名前を入れない … 画面で知らせ、問い合わせの記録にも残さないようにします
  4. 解釈を仕組みで決めない … 出すのは根拠のメモまでです。顧問先への回答と、行政への照会の要否は、社会保険労務士が決めます
  5. 公開の資料の利用の条件を守る … 厚生労働省のコンテンツは公共データ利用規約に準拠した条件で利用でき、編集・加工したものを国が作ったかのように示さないとされています。根拠のメモを顧問先にそのまま渡さないのは、このためでもあります

誤りが起きた場合のリスクは、古い取扱いを根拠にすることと、顧問先の秘密を外に出すことの2つです。 前者は状態の項目と印で防ぎ、後者は置き換えと画面の知らせで防ぎます。どちらも、取り込む前の決まりで防ぐものです。

10まず何から始めるか

1週目:20件で試す

先月の質問から20件を選び、手元のAIサービスで通達と疑義照会のPDFから引用させます。結論を書き足していないか、顧問先の言葉で段落が引けるかを最優先で見ます。

2週目:メタデータと分野を決める

通達に持たせる分野・発出日・状態・文書番号の付け方と、画面で選ぶ分野の一覧を決めます。置き換えの表の最初の版も、20件の質問の言葉から作ります。

3週目:通達と疑義照会でデータストアを作る

事務所で扱う分野の現行の通達と、疑義照会のPDFを照会ごとに分けたものを入れます。レイアウトパーサーを有効にして作り、絞り込みが効くことを確かめます。

4週目:検索の画面と中継の処理をつなぐ

answer メソッドで引用付きの論点の整理を返し、引用の無い文を外すところまで作ります。この時点では職員のいまの調べ方と並べ、同じ根拠が引けるかを見ます。

2か月目: 過去の回答の置き換えの決まりを社会保険労務士と決め、直近の分から入れて、後から出た通達の印を足します。3か月目以降: 1件20分が何分になったかを実測します。経験の浅い職員の根拠のメモを、社会保険労務士が調べ直さずに読めるようになった時点で、この構成は運用に乗ったと言えます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-28/最終更新:2026-10-29
確認した内容情報源確認日
answer メソッドが検索の結果から答えを作り、文ごとの引用を付けられること。includeCitations の既定が false であること。引用の startIndex・endIndex が UTF-8 のバイト単位であること。支持の度合いが0〜1の値で、filteringLevel で支持の低い答えを返さないようにできること。プリアンブルで書き方を指示できること。ignoreAdversarialQuery・ignoreNonAnswerSeekingQuery と answerSkippedReasons があること。Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-28
絞り込みの式が ANY、AND/OR、比較の記号で書け、日付は ISO 8601 の文字列で比べられること。絞り込みに使う項目を indexable にし、indexable でも絞り込みに使えない項目がありうることGoogle Cloud: Filter custom search for structured or unstructured data2026-10-28
取り込めるファイルの形式、1ファイル200MB・1回10万ファイルまでであること。メタデータを id・structData・content の uri で JSON Lines か NDJSON に書くこと。スキャンしたPDFにはデータストアを作るときにレイアウトパーサーを有効にするよう勧めていることGoogle Cloud: Prepare data for ingesting2026-10-28
日本語(ja-JP)が検索の機能と answers and follow-ups に対応していることGoogle Cloud: Languages and locales2026-10-28
データの保存の場所として選べるマルチリージョンが us と eu で、ほかは global であることGoogle Cloud: Locations2026-10-28
法令等データベースの通知検索で厚生労働省所管の主な通知等を検索できること。データが毎月更新され、更新までの間の通知が登載準備中のコーナーに載ること。全ての法令・通知を網羅しているわけではなく、官報と異なる場合は官報が優先すること(利用に際しての注意事項)厚生労働省: 法令等データベースサービス2026-10-28
ホームページのコンテンツが特記の無い限り公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した条件で利用でき、編集・加工したときはその旨を記載し、国が作成したかのような態様で公表しないこと厚生労働省: 利用規約・リンク・著作権等2026-10-28
主な疑義照会と回答が、国民年金 適用・保険料、厚生年金保険 適用・徴収、年金給付の区分ごとのPDFで掲載されていること。疑義照会が年金事務所等から機構本部への問い合わせであること。2026年9月10日に「年金給付」の新規の疑義照会が追加されたこと日本年金機構: 主な疑義照会と回答について2026-10-28
開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員が、正当な理由がなく業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならないこと(第21条)e-Gov 法令API: 社会保険労務士法2026-10-28

通達・疑義照会の解釈と、顧問先への回答の内容は、必ず社会保険労務士が原典で確かめて決めてください。 本記事は上の公式の情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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