Media > AI活用ユースケース > 物流 > 顧客から工場に届く生産計画の変更連絡メールから、品番・数量・日付の変更点を抜き出し、資材・製造・出荷の担当に関係する変更だけを通知する

顧客から工場に届く生産計画の変更連絡メールから、品番・数量・日付の変更点を抜き出し、資材・製造・出荷の担当に関係する変更だけを通知する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

顧客から届く生産計画の変更連絡のメールと添付から、品番・数量・納入日の変更点を抜き出し、受注計画の台帳と突き合わせます。生産管理の担当が確かめた後、資材・製造・出荷の担当には、それぞれに関係する変更だけが届きます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/Power Automate/Zapier
対象業界
商社/物流/製造
対象部門
物流/生産/購買
対象業務
データ入力・転記/分類・仕分け
主な課題
入力作業が多い/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
21h/月
想定削減
65%
年間削減
468h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 生産管理課の共用の受信箱に、顧客から変更連絡のメールが届く
  2. 担当者がメールと添付を開き、どの品番のどの納入日がどう変わったかを探す
  3. 受注計画の台帳を開き、品番と納入日で該当の行を探して、いまの数量と日付を見る
  4. 変更前と変更後を見比べ、増えたのか減ったのか、前倒しか後ろ倒しかを確かめる
  5. 台帳の数量と日付を書き換える
  6. 資材・製造・出荷のうち関係する部署へ、Teamsのチャネルに変更を書いて知らせる。急ぎのものは電話もする
  7. 顧客に受け取った旨を返信する
導入後(After)
  1. 自動共用の受信箱に、登録した顧客のアドレスからメールが届くとフローが動く
  2. 自動本文と、PDFや画像の添付をAI Builder のプロンプトに渡し、変更の行を抜き出してJSONで受け取る
  3. 自動顧客の品番を、品番の対応表で自社の品番・ライン・主要な資材・出荷の便に引き当てる
  4. 自動受注計画の台帳から該当の行を引き、いまの数量と日付を変更前として並べる
  5. 自動変更の種類(増量・減量・前倒し・後ろ倒し・取消・追加・納入先の変更)を、数字の比較で決める
  6. 自動変更の一覧を生産管理課へ承認の依頼として送る
  7. 人生産管理課の担当が、一覧と元のメールを見比べて承認する。食い違いがあれば直すか差し戻す
  8. 自動承認された変更を台帳に書き、変更の種類に応じて資材・製造・出荷のチャネルへ、その部署に関係する行だけを投稿する
  9. 人担当者が顧客に受け取った旨を返信する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 生産管理課の共用の受信箱に、顧客から変更連絡のメールが届く
  2. 担当者がメールと添付を開き、どの品番のどの納入日がどう変わったかを探す
  3. 受注計画の台帳を開き、品番と納入日で該当の行を探して、いまの数量と日付を見る
  4. 変更前と変更後を見比べ、増えたのか減ったのか、前倒しか後ろ倒しかを確かめる
  5. 台帳の数量と日付を書き換える
  6. 資材・製造・出荷のうち関係する部署へ、Teamsのチャネルに変更を書いて知らせる。急ぎのものは電話もする
  7. 顧客に受け取った旨を返信する

(a)変更点を探すのに時間がかかります。 変更後の計画表だけが添付されている場合、どこが変わったかは前回の表と並べないと分かりません。 「変更箇所は黄色」とあっても、PDFの印刷の具合で色が分かりにくいことがあります。

(b)部署への連絡が漏れます。 数量が増えた変更を製造には伝えたが、資材には伝え忘れた。部品は作れるのに材料が足りない、という形で漏れが表に出ます。逆に、減った変更が資材に伝わらず、要らなくなった材料を手配し続けることもあります。

(c)転記で数字を誤ります。 メールの数字を台帳に打ち直し、台帳の数字をTeamsに打ち直す。同じ数字を2回打つので、誤りも2回入る機会があります。 150を105と打った誤りが、出荷の前日まで見つからないこともあります。

(d)忙しい日ほど遅れます。 1件20分で、月180件なら月60時間です。月末と長い休みの前に変更が集中し、その日に届いた変更が翌日にしか部署へ伝わらないことがあります。前倒しの変更では、この1日が効きます。

  1. 【自動】 共用の受信箱に、登録した顧客のアドレスからメールが届くとフローが動く
  2. 【自動】 本文と、PDFや画像の添付をAI Builder のプロンプトに渡し、変更の行を抜き出してJSONで受け取る
  3. 【自動】 顧客の品番を、品番の対応表で自社の品番・ライン・主要な資材・出荷の便に引き当てる
  4. 【自動】 受注計画の台帳から該当の行を引き、いまの数量と日付を変更前として並べる
  5. 【自動】 変更の種類(増量・減量・前倒し・後ろ倒し・取消・追加・納入先の変更)を、数字の比較で決める
  6. 【自動】 変更の一覧を生産管理課へ承認の依頼として送る
  7. 【人】 生産管理課の担当が、一覧と元のメールを見比べて承認する。食い違いがあれば直すか差し戻す
  8. 【自動】 承認された変更を台帳に書き、変更の種類に応じて資材・製造・出荷のチャネルへ、その部署に関係する行だけを投稿する
  9. 【人】 担当者が顧客に受け取った旨を返信する

7番目の承認は外しません。 抜き出しの誤りがそのまま資材の手配に流れると、誤った数量の材料が発注されます。 担当者がやることは、メールを読んで台帳を探すことから、並んだ一覧を元のメールと見比べることに変わります。

5番目を数字の比較で決めているのも、意図してのことです。 「前倒し」や「増量」は、AIにメールの言葉から判断させることもできます。しかし顧客のメールの言葉と、自社の台帳から見た変更の向きが違うことがあります。 台帳の値と変更後の値を比べれば、向きは1つに決まります。

02今回想定するシステム構成

構成図
顧客からの変更連絡(本文/PDF・画像の添付)
   │
   ▼【トリガー】新しいメールが届いたとき (V3)(差出人で絞る)
Power Automate(クラウド フロー)
   ├──▶ 添付ファイルの取得 (V2)
   ├──▶ AI Builder のプロンプト(プロンプトを実行する)
   │       変更の行を抜き出す(顧客品番・納入日・数量・納入先・根拠の文)
   ├──▶ SharePoint:品番の対応表を引く(アイテムを取得)
   ├──▶ SharePoint:受注計画の台帳を引く(アイテムを取得)
   ├──▶ 変更の種類を数字の比較で決める
   ▼
承認(生産管理課の担当)
   ▼
Power Automate
   ├──▶ SharePoint:台帳を書き換える(項目を更新する/項目を作成する)
   ├──▶ 配列のフィルター処理で部署ごとの行に分ける
   └──▶ Teams:資材・製造・出荷のチャネルへ投稿
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウド フロー)Make、Zapier
生成AIAI Builder のプロンプト(プロンプトを実行する、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude
保管SharePoint のリスト(受注計画の台帳・品番の対応表・変更の記録)Dataverse
受付と通知Office 365 Outlook の共用の受信箱、Microsoft Teams のチャネル―

新しく足すのは、フローと、品番の対応表と変更の記録のリストです。 受注計画の台帳は今あるものを使います。顧客には何も変えてもらいません。 変更連絡の書き方を顧客にそろえてもらう案は、8社のうち何社かは応じてくれても、全部はそろいません。

AIは、Power Automate の中から AI Builder のプロンプトを呼びます。 フローに「プロンプトを実行する」アクションを足し、作っておいたプロンプトを選ぶと、前のアクションの内容を入力に渡せます。 プロンプトは Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があるとされています。

添付はプロンプトの「画像またはドキュメント」の入力で渡します。 プロンプトにはテキストの入力と、画像またはドキュメントの入力を組み合わせて持たせられ、対応するファイルの種類は PNG、JPG、JPEG、PDF です。 ファイルの合計は25MB未満、ドキュメントは50ページ未満、処理は最大100秒という制限があります。

出力は JSON で固定します。 プロンプトの出力を JSON にし、JSON の例を書き換えると形式が「カスタム」になり、プロンプトをもう一度テストしても形式は更新されません。 保存した形式がフローでもそのまま使われるので、台帳と通知へ流す前提ではここを固定します。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

共用の受信箱にメールが届いたことを起点にします。 Office 365 Outlook コネクタの「新しいメールが届いたとき (V3)」を使い、差出人のフィルターに顧客の担当者のアドレスをセミコロンで区切って並べます。 社内からのメールや、顧客からの請求や品質の連絡まで拾わないためです。

差出人だけでは絞りきれない顧客には、件名のフィルターを足します。 「計画変更」「内示変更」のような件名を決めて送ってくる顧客なら、件名でさらに絞れます。件名が決まっていない顧客は差出人だけで受け、変更連絡でないメールはプロンプトの側で見分けて止めます。

「添付ファイルを含める」は「いいえ」にします。 公式ドキュメントでは、これを「はい」にするとコネクタがすべての添付のダウンロードを待ち、タイムアウトが起きる可能性があるとされ、「いいえ」にして「添付ファイルの取得 (V2)」で別に取る回避策が示されています。計画表のPDFは大きくなりがちなので、最初から回避策の形で組みます。

受信箱の振り分けのルールでメールを別のフォルダーへ移す運用とは、組み合わせ方に気をつけます。 このトリガーは受信した日時で動き、フォルダーを移しても受信の日時は変わらないため、最後に正常に動いた時刻より前に受信したメールは飛ばされるとされています。人が後から手で移したメールは拾われません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
変更連絡のメール差出人、件名、受信日時、本文Office 365 Outlook(V3 のトリガー)
添付変更後の計画表、変更前後の対照表(PDF・画像)添付ファイルの取得 (V2)
品番の対応表顧客の品番、自社の品番、製造のライン、主要な資材、出荷の便、納入先のコードSharePoint のリスト
受注計画の台帳顧客、自社の品番、納入日、数量、納入先、内示か確定かSharePoint のリスト
顧客の一覧顧客のコード、担当者のアドレス、変更の締め切り(何日前まで受けるか)SharePoint のリスト

質を決めるのは、品番の対応表です。 顧客のメールに書かれるのは顧客の品番で、自社の台帳は自社の品番で持っています。対応表がなければ、AIが正しく抜き出しても台帳の行にたどり着けません。 対応表は、今は担当者の頭の中か、各自の手元の一覧にあることが多いので、これを1つのリストにまとめるのが最初の準備作業です。

変更の締め切りを顧客の一覧に持たせるのは、急ぎの印を付けるためです。 納入日まで締め切りより近い変更は、契約の取り決めの外で受ける変更になります。受けるかどうかは人が決めますが、急ぎとして一覧の上に出します。

Step3

データの取得方法を決める

本文はトリガーの出力から、添付は「添付ファイルの取得 (V2)」で取ります。このアクションは、メッセージのIDと添付のIDから添付の名前、種類、大きさ、中身を返します。

取るものどこから何に使うか
本文V3 のトリガーの出力プロンプトのテキストの入力
添付の中身と種類添付ファイルの取得 (V2)PDF・画像ならプロンプトのドキュメントの入力へ
自社の品番などSharePoint の「アイテムを取得」(フィルター クエリで顧客の品番を指定)台帳の行への引き当て、送り先の決定
いまの数量と日付SharePoint の「アイテムを取得」(自社の品番と納入日で指定)変更前の値
締め切り顧客の一覧急ぎの判定

台帳は「アイテムを取得」のフィルター クエリで引きます。 このパラメーターは返すエントリを OData のフィルターで絞るもので、自社の品番と納入日を条件にすれば、該当の1行だけが返ります。 該当が0行なら「追加」の候補、2行以上なら台帳の側の重複として人に回します。

添付のインライン画像は除きます。 添付の情報には、本文に埋め込まれた画像かどうかの印が付きます。署名のロゴまでプロンプトに渡すと、処理の時間と量が増えるだけです。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 差出人の確認 … 顧客の一覧にあるアドレスかを確かめ、顧客のコードを決めます
  2. 本文の整形 … 過去のやり取りの引用部分と署名を落とし、いちばん新しい本文だけを渡します。引用部分に残った前回の変更を、もう一度抜き出させないためです
  3. 添付の仕分け … PDF・PNG・JPG・JPEG はプロンプトへ。それ以外の形式は、プロンプトに渡さずに人へ回します
  4. 大きさの確認 … 添付の合計が25MB未満、ドキュメントが50ページ未満かを確かめ、超えるものは人へ回します
  5. 重複の確認 … 同じ顧客から同じ件名・同じ添付の名前のメールが短い間に二度届いたら、2通目を止めて人に知らせます
  6. 前回の連絡の確認 … 同じ顧客の同じ品番について、承認待ちの変更が残っていれば印を付けます。承認待ちのまま次の変更が来ると、変更前の値がずれるからです

3番目で表計算の形式の添付を人に回すのは、プロンプトのドキュメントの入力が通常 PNG・JPG・JPEG・PDF に限られるためです。 公式ドキュメントでは、Word や表計算などのファイルはプロンプトの設定でコード インタープリターを有効にした場合に扱えるとされていますが、この構成の最初の段階では有効にせず、表計算の形式で送ってくる顧客には、PDFで送ってもらえるかを相談します。

6番目は軽く見ないでください。 午前に届いた変更がまだ承認されていないうちに、午後に同じ品番の再変更が届くことがあります。午後の変更を、台帳に残っている午前より前の値と比べると、変更の向きを誤ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、メールと添付から変更の行を抜き出し、行ごとに根拠の文を写すことだけです。 変更の種類も、送り先も、受けるかどうかも決めさせません。

抜き出す項目中身書かれていないときの扱い
顧客の品番顧客が書いた品番そのまま行ごと needs_check
納入日(変更前)顧客が「変更前」として書いた日付空のまま(台帳から取る)
納入日(変更後)変更後の日付日付の変更がなければ空
数量(変更前)顧客が「変更前」として書いた数量空のまま(台帳から取る)
数量(変更後)変更後の数量。取消なら0数量の変更がなければ空
納入先変更後の納入先の名前やコード変更がなければ空
根拠判断に使った本文の文、または添付のページと行必ず書く

顧客が書いた「変更前」も抜き出させるのは、台帳との食い違いを見つけるためです。 顧客が「120個から150個へ」と書いていて、台帳が100個なら、どこかで前回の変更が反映されていないか、顧客の側の勘違いです。 どちらにしても人が確かめるべきことなので、両方の値を並べて承認の一覧に出します。

させないこと理由
変更の種類の判定台帳の値と比べてフローが決める
送り先の部署の判断変更の種類から規則で決める
顧客の品番から自社の品番への読み替え対応表で引く。似た品番に寄せない
書かれていない年や数量の補完「来週火曜」のような書き方は、受信日から人が確かめる
変更を受けられるかの判断能力と材料の確認、顧客との調整は人が行う

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 「10/20」とだけ書かれた日付に年を補うのは簡単に見えますが、年末に届く翌年1月の変更で年を誤ります。 年が書かれていない日付は、書かれたまま返させ、フローの側で受信日から決め、決めた年を承認の一覧に表示します。

Step6

指示内容を固定する

あなたは部品メーカーの生産管理課で、顧客から届いた生産計画の
変更連絡を読む担当です。メール本文と添付だけを見て、変更の行を
抜き出してください。推測で埋めないでください。

【抜き出す項目】
customer_part_no ... 顧客が書いた品番。書かれたまま写す
before_date ........ 顧客が変更前として書いた納入日
after_date ......... 変更後の納入日
before_qty ......... 顧客が変更前として書いた数量
after_qty .......... 変更後の数量。取消と書かれていれば 0
destination ........ 変更後の納入先。変更がなければ空
evidence ........... 根拠にした本文の文、または添付のページと行

【厳守事項】
- 1つの品番の1つの納入日を1行にしてください。
- 書かれていない項目は空にしてください。他の行から補わないでください。
- 品番は書かれた文字列をそのまま写してください。似た品番に直したり、
  ハイフンや桁を補ったりしないでください。
- 日付に年が書かれていなければ、年を補わず、書かれたまま
  (例:10/20)写してください。
- 「来週」「月末」のような書き方は、日付に直さず、そのまま写して
  needs_check を true にしてください。
- 数量を計算しないでください。「30個増」と書かれていれば
  after_qty は空にし、evidence に「30個増」と写してください。
- 変更後の表だけが添付されていて変更箇所の印が読み取れない場合は、
  表の全部の行を抜き出し、changed_mark を unknown にしてください。
- 本文の引用部分(前回のやり取り)は読まないでください。
- 変更を受けるべきか、どの部署に関係するかは書かないでください。
- 計画の変更連絡でないメールなら、changes を空にし、
  mail_type に種類を書いてください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。

【顧客】{customer_name}
【受信日時】{received_at}
【本文】{body}
【添付】{attachment}

「数量を計算しない」を明記しないと、増減で書かれた変更を勝手に足し算します。 「30個増」と書かれていると、AIは何かの数から30を足した数を after_qty に入れます。足す元の数が台帳の値と違えば、誤った変更後の数量が承認の一覧に並びます。 増減で書かれた変更は、フローの側で台帳の値に足します。

最後の1行は、公式ドキュメントの対処に沿ったものです。 プロンプトのテストで「JSON を生成できませんでした」が出るのは、モデルが JSON をマークダウンなどで囲むためで、この指示を足すことで解決できる場合があるとされています。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 AI Builder の JSON 出力は、キーの無い配列(例:["abc", "def"])を形式として持てないとされているので、変更の行はキーを持つオブジェクトの配列にします。

{
  "mail_type": "plan_change",
  "customer_code": "",
  "changes": [
    {
      "customer_part_no": "",
      "before_date": "",
      "after_date": "",
      "before_qty": "",
      "after_qty": "",
      "delta_text": "",
      "destination": "",
      "changed_mark": "marked | unknown",
      "evidence": "",
      "needs_check": false
    }
  ]
}

1つ目の理由は、1件のメールの中の複数の変更を、行ごとに扱えることです。 フローは changes を1行ずつ回し、行ごとに台帳を引き、行ごとに送り先を決めます。1件のメールを1つの文章で受けると、どの部署にどの行を送るかを分けられません。

2つ目は、顧客が書いた値と台帳の値を並べられることです。 フローは行ごとに台帳の値を足し、承認の一覧を次の形にします。

顧客の品番自社の品番納入日数量(台帳)数量(顧客の変更前)数量(変更後)種類送り先
AB-120331-045010/20 → 10/17120120150増量・前倒し資材・製造・出荷
AB-120731-046210/248010060減量資材・製造

2行目のように、台帳と顧客の変更前が食い違う行には印を付けて上に出します。 承認する担当者が真っ先に見るべき行です。

変更の種類と送り先は、次の規則でフローが決めます。

変更の種類決め方送り先
増量変更後の数量 > 台帳の数量資材・製造
減量・取消変更後の数量 < 台帳の数量資材・製造
前倒し変更後の日付 < 台帳の日付製造・出荷(資材は締め切りの内なら)
後ろ倒し変更後の日付 > 台帳の日付製造・出荷
納入先の変更納入先のコードが違う出荷
追加台帳に該当の行がない資材・製造・出荷

部署ごとの行は、データ操作の「配列のフィルター処理」で分けます。 このアクションは配列の中身を条件に合うものだけに絞るもので、送り先に「資材」を含む行だけ、のように3回絞って、それぞれのチャネルへ投稿します。 公式ドキュメントでは、フィルターの対象のテキストは大文字と小文字が区別されるとされているので、品番の英字は前処理で大文字にそろえておきます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共用の受信箱Office 365 Outlook(新しいメールが届いたとき (V3)、添付ファイルの取得 (V2))変更連絡のメールと添付を受ける
AI Builder のプロンプトプロンプトを実行する変更の行をJSONで受け取る
品番の対応表・受注計画の台帳SharePoint(アイテムを取得、項目を更新する、項目を作成する)引き当てと、承認後の書き換え
承認承認のアクション(開始してテキストの承認を待機)生産管理課の担当が一覧を確かめる
資材・製造・出荷Teams(チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する)部署ごとに関係する行だけを投稿する

台帳への書き込みは、承認の後だけにします。 承認の前に書き換えると、承認で差し戻した変更が台帳に残ります。変更の記録のリストには、承認の前から全部を書き、承認の結果をその行に足します。

Teams の投稿には、表と元のメールへのリンクを付けます。 投稿の表はデータ操作の「HTML テーブルの作成」で作れます。資材の担当は、元のメールまで見に行かずに手配の変更を始められます。

Step9

人が確認する

生産管理課の担当が、1件ごとに承認します。 見るのは、承認の一覧と元のメールの2つだけです。

  1. 印の付いた行を先に見る … 台帳と顧客の変更前が食い違う行、needs_check の行、changed_mark が unknown の行
  2. 元のメールと見比べる … 品番・日付・数量が、根拠の文と合っているかを確かめます
  3. 急ぎの行を確かめる … 締め切りの内の変更は、受けるかどうかを製造と相談してから承認します
  4. 承認するか、直すか、差し戻すか … 直した場合は直した値と理由を残します

1番目の食い違いの行は、承認で済ませないでください。 台帳が古いのか、顧客が勘違いしているのかで、直す先が自社の台帳か、顧客への問い合わせかに分かれます。

目標は、180件をならして1件7分です。 一覧を見て元のメールと見比べる時間が中心で、台帳を探す時間と部署への連絡を書く時間は入っていません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
添付が表計算などPDF・画像以外の形式プロンプトに渡さず、人に回す。顧客にPDFでの送付を相談
添付の合計が25MB以上、または50ページ以上人に回す。ページで分けて再投入
処理が100秒を超えてタイムアウト添付を分けて再実行。続くときは人に回す
顧客の品番が対応表にない引き当てずに needs_check。似た品番に寄せない
台帳に該当の行がない「追加」として承認の一覧に出す
台帳に該当の行が2行以上ある台帳の重複として人に回す
変更連絡でないメールmail_type を見て止め、担当者に知らせる
承認待ちの変更が残っている品番に再変更新しい変更を止め、前の変更の承認を先に促す
承認が一定時間されない生産管理課のチャネルに催促を投稿する

上から4行目が、運用の最初の数か月でいちばん多く出ます。 対応表が埋まっていない品番は、承認のときに担当者が対応表に足していけば、月を追うごとに減っていきます。

Step11

記録を残す

  • 元のメールのIDと受信日時、添付の名前
  • プロンプトが返したJSONの全文
  • 引き当てた自社の品番と、そのときの台帳の値(変更前として使った値)
  • 決めた変更の種類と送り先
  • 承認の結果と、人が直した値と理由
  • Teams に投稿した日時と、投稿したチャネル

3つ目の「そのときの台帳の値」を残すのは、後から台帳が変わるからです。 出荷の遅れが起きたときに、どの時点の台帳と比べて何を送ったかが分からないと、漏れがどこで起きたかを確かめられません。

5つ目の直した記録は、プロンプトの見直しの材料になります。 同じ顧客で同じ項目の直しが続くなら、その顧客の書き方に合わせた注意をプロンプトに足します。

04実装レベルの3段階

最小構成:本文と添付を手でAIの画面に貼り、変更の行を抜き出させる / 変更点の抜き出し
半自動化:上記+受信をきっかけにフローが動き、台帳と引き当て、承認の後に台帳を書き換え、部署ごとに投稿する / 抜き出しから部署への連絡まで
本格構成:上記+資材の所要量の再計算や製造の順番の案の作成と連動し、顧客への受領の返信の下書きも作る / 変更を受けた後の手配の下準備まで

最小構成では、台帳との突き合わせと連絡が手作業のまま残ります。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件20分が7分になり、この段階が本記事の想定です。 台帳を探す時間と連絡を書く時間がなくなり、承認のための見比べだけが残ります。 本格構成は、資材の所要量の計算などの別の仕組みとつなぐ段階で、つなぐ先ごとに個別の設計が要ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
180 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
7 分
現在  180件 × 20分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 180件 × 7分 ÷ 60 = 21 時間/月
月間削減時間
39h
削減率
65%
年間削減時間
468h
年間金額換算(時間単価3,000円)
140万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 完成品メーカーから内示と確定注文を受けて部品を作る製造業で、計画の変更がメールの本文やPDFの添付で届き、生産管理の担当が読んで資材・製造・出荷へ個別に連絡している場合。顧客が複数あり、変更の連絡の書き方が顧客ごとに違う場合。連絡の行き違いで、減った数量の資材を手配し続けたり、前倒しの出荷に間に合わなかったりしたことがある場合。Microsoft 365 を使っており、受注計画をSharePointのリストで持てる場合。
向いていない
  1. 計画の変更がEDIで決まった形式のデータとして届き、基幹システムに自動で取り込まれている場合。顧客が1社で、変更の連絡が月に数件の場合。変更を受けるかどうかの判断(能力の確認や顧客との交渉)を自動化したい場合(この構成は変更点を抜き出して知らせるまでで、受けるかどうかは決めません)。

07最小構成で試す方法

  1. 先月に届いた変更連絡から20件を選ぶ(変更後の表だけが添付された顧客のものを必ず入れる)
  2. 品番の対応表を、その20件に出てくる品番の分だけ作る
  3. 1件ずつ、本文と添付を Microsoft 365 Copilot などの手元のAIの画面に貼り、「品番・変更前と変更後の納入日・数量・納入先を1行ずつ抜き出し、根拠の文を写してください。年や数量を補わないでください」と指示する
  4. 出てきた行を、当時の台帳の書き換えと突き合わせる
  5. 変更の種類と送り先を、第7章の規則で手で決め、当時の連絡と比べる
出てきた内容判断
当時の書き換えと同じ行が出たフローを組む段階に進む
増減で書かれた数量を計算して埋めた指示の書き方で直る。構成は有効
変更後の表だけの添付で、変わった行が分からない当然の結果。 台帳と比べるのはフローの役目
規則で決めた送り先と当時の連絡が違う当時の連絡漏れか、規則の不足。 どちらかを確かめる

4行目が出たら、それがこの構成の価値の1つです。 当時の連絡が規則より少なかったなら、漏れが実際に起きていたということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
増減で書かれた数量をAIが計算する計算を禁じ、台帳の値に足すのはフローで行う
年の書かれていない日付で年を誤る書かれたまま返させ、受信日から決めて承認の一覧に表示する
引用部分の前回の変更をもう一度抜き出す前処理で引用部分を落とす
顧客の品番を似た品番に寄せる対応表で引き、無ければ needs_check
添付のダウンロードでタイムアウトする「添付ファイルを含める」を「いいえ」にし、添付ファイルの取得 (V2) で取る
表計算の形式の添付が読めない通常は PNG・JPG・JPEG・PDF。人に回し、PDFでの送付を相談
フォルダーへ手で移したメールが拾われない受信日時で動くため。振り分けは受信のルールで行う
承認待ちのまま再変更が来て向きを誤る承認待ちの品番の再変更を止める
部署ごとの絞り込みで品番が漏れるフィルターは大文字と小文字を区別する。英字を大文字にそろえる
承認の前に台帳を書き換える台帳は承認の後だけ。変更の記録は先に書く

上の2行が、この構成の分かれ目です。 どちらも、AIが親切に埋めた値が、台帳の値とずれて承認の一覧に並ぶという同じ形の失敗です。承認する担当者は、根拠の文に「30個増」とあれば気づけますが、忙しい日には見落とします。埋めさせないことを、指示とフローの両方で守ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客の生産計画(品番、数量、納入日、納入先)と、顧客の担当者の名前とアドレスです。顧客の計画は、顧客との取り決めで秘密として扱うことが多い情報です。

  1. 顧客との秘密保持の取り決めを確かめる … AI Builder のプロンプトは Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動くとされています。顧客の計画をこの仕組みで処理してよいかを、取り決めに照らして確かめてから始めます
  2. プロンプトを使える地域を確かめる … 機能は一部の地域に限定されているとされています。自社の環境の地域で使えるかを先に確かめます
  3. 共用の受信箱の権限を絞る … フローの接続に使うアカウントが、受信箱と台帳を読み書きできることになります。接続のアカウントを個人にせず、権限を必要な範囲に限ります
  4. 入力に指示が紛れ込む前提で作る … 公式ドキュメントでは、入力に指示を含めることはできないとされています。メール本文はあくまで抜き出しの対象として扱い、本文に何が書かれていても、台帳の書き込みと送り先は規則と承認で決めます
  5. 変更を受けるかの判断を自動にしない … 締め切りの内の変更や大きな増量は、能力と材料の確認、顧客との調整が要ります。この構成は変更点を伝えるまでで、受けるかは人が決めます

誤りが起きた場合のリスクは、誤った数量や日付が部署に伝わることと、伝えるべき部署に伝わらないことの2つです。 前者は承認と根拠の文で防ぎ、後者は送り先を規則で決めることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:品番の対応表を作る

顧客の品番、自社の品番、製造のライン、主要な資材、出荷の便を1つのリストにまとめます。全品番を一度に埋める必要はありません。変更連絡の多い上位3社の品番から作ります。

2週目:20件で試す

先月の変更連絡から20件を選び、手元のAIの画面で変更の行を抜き出させます。変更後の表だけが添付された顧客で、どこまで抜き出せるかを見ます。

3週目:抜き出しと承認の一覧までを組む

Power Automate で受信をきっかけにプロンプトを呼び、台帳と引き当てて承認の一覧を出すところまで作ります。この時点では台帳を書き換えず、部署へも投稿しません。 担当者は今までどおり手で処理し、一覧と見比べます。

4週目:規則と送り先を確かめる

変更の種類と送り先の規則を、資材・製造・出荷の担当と確かめます。「この変更なら自分にも知らせてほしい」という声は、ここで規則に足します。

2か月目: 承認の後の台帳の書き換えと部署への投稿を始め、上位3社で運用します。3か月目以降: 残りの顧客に広げ、1件20分が何分になったかと、部署への連絡漏れの件数を数えます。承認の一覧で人が直す行が顧客ごとに落ち着いた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
「新しいメールが届いたとき (V3)」に差出人・件名フィルター・フォルダー・添付ファイルを含めるの設定があること。添付ファイルを含めると全添付のダウンロードを待ってタイムアウトしうること、「いいえ」にして「添付ファイルの取得 (V2)」で取る回避策。受信日時で動き、フォルダーを移しても受信日時は変わらないため最新の正常な実行より前に受信したメールは飛ばされること。同時に多数のメールが届くと取りこぼしうること。添付ファイルの取得 (V2) が名前・種類・大きさ・中身・インラインかを返すことMicrosoft Learn: Office 365 Outlook コネクタ2026-10-07
フローに「プロンプトを実行する」アクションを足して作成済みのプロンプトを選び、前のアクションの内容を入力に渡せること。Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があること。承認のアクション「開始してテキストの承認を待機」と Teams の「チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する」を組み合わせる手順Microsoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する2026-10-07
プロンプトにテキストと画像またはドキュメントの入力を組み合わせられること。対応するファイルが PNG・JPG・JPEG・PDF で、Word などはコード インタープリターを有効にした場合に扱えること。合計25MB未満、50ページ未満、処理は最大100秒。入力に指示を含めることはできないことMicrosoft Learn: プロンプトに入力を追加する2026-10-07
プロンプトの出力を JSON にでき、JSON の例を更新すると形式がカスタムになり、保存した形式がフローで使われること。「JSON を生成できませんでした」のときに「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を足す対処。キーの無い配列の形式がサポートされないことMicrosoft Learn: JSON 出力2026-10-07
SharePoint コネクタの「アイテムを取得」が OData のフィルター クエリで返すエントリを絞れること。「項目を作成する」「項目を更新する」があることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-07
データ操作の「配列のフィルター処理」が配列を条件に合うものに絞り、対象のテキストで大文字と小文字が区別されること。「HTML テーブルの作成」があることMicrosoft Learn: Power Automate でデータ操作を使用する2026-10-07

変更の種類と送り先の規則は、本記事のモデル条件です。 実際の規則は、資材・製造・出荷の担当と決めてください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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