顧問先の登記事項証明書を読み取って、役員の任期満了と改選の時期を台帳にし、役員変更登記の漏れを防ぐ
顧問先の登記事項証明書を読み取り、役員ごとの資格、氏名、就任や重任の日を抽出して台帳に入れます。定款で定めた任期と事業年度から、次に任期が満了する定時株主総会の時期を出し、改選と登記の案内を出す月を決めます。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Document AI
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Make/Power Automate
- 対象業界
- 士業
- 対象部門
- 法務
- 対象業務
- データ入力・転記/台帳・マスタ管理
- 主な課題
- 入力作業が多い/属人化している/期限・対応漏れが起きる
- AIで行う処理
- 抽出
- 主な効果
- 入力漏れ削減/工数削減/機会損失防止
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 今月照合する60社の一覧を作り、登記情報提供サービスで1社ずつ登記情報のPDFを取得する
- PDFを開き、役員に関する事項から、資格・氏名・就任や重任の日を読む
- 顧問先ごとのメモを開き、定款で定めた任期と事業年度の終わりの月を確かめる
- 就任や重任の日から、次に任期が満了する定時株主総会がいつになるかを計算する
- 台帳の表に転記し、前回の内容と食い違いがないかを見る
- 満了が近い会社に、改選の準備と役員変更登記の案内を出す
- 人今月照合する60社の登記情報のPDFを取得し、所定のフォルダに保存する
- 自動保存をきっかけに連携の仕組みが動き、OCRが文字とレイアウトを読み取る
- 自動生成AIが、役員に関する事項から資格・氏名・就任や重任の日・現在の役員かどうかを抽出する
- 自動顧問先の基本情報(定款の任期、事業年度の終わりの月、公開会社かどうか)を台帳から引き、満了する定時株主総会の時期を計算する
- 自動前回の台帳の内容と照合し、変わったところに印を付ける
- 自動満了が近い会社と、食い違いのある会社を一覧にして担当者へ通知する
- 人担当者が、食い違いと、読み取りの信頼度が低い箇所だけを確かめる
- 人満了が近い会社に、改選の準備と役員変更登記の案内を出す
各工程の詳しい説明を読む
- 今月照合する60社の一覧を作り、登記情報提供サービスで1社ずつ登記情報のPDFを取得する
- PDFを開き、役員に関する事項から、資格・氏名・就任や重任の日を読む
- 顧問先ごとのメモを開き、定款で定めた任期と事業年度の終わりの月を確かめる
- 就任や重任の日から、次に任期が満了する定時株主総会がいつになるかを計算する
- 台帳の表に転記し、前回の内容と食い違いがないかを見る
- 満了が近い会社に、改選の準備と役員変更登記の案内を出す
(a)満了に気づくのが遅れる。 任期が10年の会社では、前回の重任が10年前です。担当者が替わっていれば、その会社の任期を知っている人が事務所にいません。 気づいたときには満了から何か月も過ぎていることがあります。役員の任期が満了した後は、2週間以内に役員変更の登記をする必要があり、怠れば代表者等が100万円以下の過料に処される可能性があります。
(b)重任を登記しなくてよいと思われている。 任期が満了した後、間を置かずに同じ人が選任された場合も、登記上は「重任」として役員変更の登記が必要です。 顧問先の側は「役員は変わっていない」と考えていることが多く、事務所から案内しない限り、登記の依頼は来ません。
(c)読んで写す手間が大きい。 役員の欄は会社によって長さが違い、取締役が数名の会社もあれば、監査役や会計参与まで並ぶ会社もあります。1社分を読んで、資格と氏名と日付を写すだけで数分かかります。 60社で数時間になります。
(d)計算が担当者の頭の中にある。 「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」という任期の数え方は、事業年度の終わりの月と定時株主総会の時期を知らないと計算できません。 計算のしかたも、結果も、担当者のメモにしか残っていません。
- 【人】 今月照合する60社の登記情報のPDFを取得し、所定のフォルダに保存する
- 【自動】 保存をきっかけに連携の仕組みが動き、OCRが文字とレイアウトを読み取る
- 【自動】 生成AIが、役員に関する事項から資格・氏名・就任や重任の日・現在の役員かどうかを抽出する
- 【自動】 顧問先の基本情報(定款の任期、事業年度の終わりの月、公開会社かどうか)を台帳から引き、満了する定時株主総会の時期を計算する
- 【自動】 前回の台帳の内容と照合し、変わったところに印を付ける
- 【自動】 満了が近い会社と、食い違いのある会社を一覧にして担当者へ通知する
- 【人】 担当者が、食い違いと、読み取りの信頼度が低い箇所だけを確かめる
- 【人】 満了が近い会社に、改選の準備と役員変更登記の案内を出す
7番目で人が見るのは、全件ではありません。 前回と同じ役員が同じ日付で読み取れた会社は、一覧で件数を見て終わりにします。食い違いがあった会社、読み取りの信頼度が低かった会社、満了の時期が近い会社に時間を使います。
8番目の案内は、人が出します。 改選の進め方は、顧問先の事情と定款の定めで変わります。台帳が出すのは「いつまでに案内すべきか」までです。
02今回想定するシステム構成
登記情報のPDF(登記情報提供サービス)/紙の登記事項証明書のスキャン │ ▼【トリガー】所定のフォルダへの保存 Google Apps Script ── ファイルの確認と、顧問先の特定 ▼ Google Document AI(Enterprise Document OCR) │ 文字・レイアウト・画像の品質スコア ▼ Gemini API ── 役員の事項を抽出(構造化出力) │ 資格/氏名/就任・重任の日/現在の役員か ▼ Google Apps Script ── 任期の計算と前回との照合 │ 定款の任期・事業年度の終わり・公開会社か(台帳の基本情報) ▼ 役員任期の管理台帳(Google スプレッドシート) ▼ 満了が近い会社・食い違いのある会社の通知 ──【人】確認と案内
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| OCR | Google Document AI(Enterprise Document OCR) | Azure AI Document Intelligence(レイアウト モデル) |
| 生成AI | Gemini API(役員の事項の抽出) | Claude API、OpenAI API |
| 連携 | Google Apps Script(フォルダの監視、任期の計算、台帳の更新) | Make、Power Automate |
| 保管 | Google ドライブ(登記情報のPDF) | SharePoint、Box |
| 台帳 | Google スプレッドシート | Microsoft Excel |
土台になるのは、Document AI の Enterprise Document OCR です。 PDFや画像から、ブロック・段落・行・単語・記号の単位で文字とレイアウトを検出するもので、200を超える言語の文字(手書きを含む)に対応し、日本語もその中に含まれます。デジタルのPDFに埋め込まれた文字は、そのまま取り出す機能があります。 登記情報提供サービスのPDFと紙のスキャンを、同じ処理に通せます。
役員の事項の抽出は、Document AI ではなく生成AIに任せます。 Document AI には、生成AIを使って項目を抽出する Custom Extractor がありますが、生成AIを使った抽出で公式に対応しているのは英語だけとされています。そこで、OCRで取り出した文字とレイアウトを Gemini API に渡し、JSON Schema に沿った形で返させます。
画像の品質スコアも使います。 Enterprise Document OCR は、ぼやけ、通常より小さい文字、照り返しなど8つの観点のページ単位の品質の指標を返します。紙のスキャンの品質が低いものは、抽出の前に人へ回せます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
所定のフォルダに登記情報のPDFが保存されたことを起点にします。 月初に今月照合する60社の一覧を台帳から出し、担当者がその一覧に沿って取得して保存します。取得の操作そのものは人が行い、その後はフォルダへの保存で動き出します。
もう一つの起点は、事務所が役員変更登記を終えたときです。 登記の完了後に登記情報を取り直してフォルダに保存すれば、同じ流れで台帳が更新されます。登記をしたのに台帳が古いまま、という状態をなくします。
三つ目は、毎月1日の定時の処理です。 台帳の全社について、今日から満了の時期までの月数を計算し直し、案内を出すべき会社を一覧にします。読み取りがなくても、時間が進むだけで状態が変わるためです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 登記情報のPDF | 商号、本店、役員に関する事項(資格、氏名、就任・重任・退任の日と登記の日) | 登記情報提供サービス、または紙の証明書のスキャン |
| 読み取り結果 | 文字、行、単語、ページ上の位置、画像の品質スコア | Google Document AI |
| 顧問先の基本情報 | 会社法人等番号、定款で定めた取締役・監査役の任期、事業年度の終わりの月、公開会社かどうか、定時株主総会を開く月 | 台帳の基本情報のシート |
| 前回の台帳の内容 | 前回読み取った役員の一覧と日付 | 台帳 |
質を決めるのは、3つ目の基本情報です。 登記情報からは就任や重任の日しか分かりません。任期の年数と事業年度の終わりの月が台帳に無ければ、満了の時期は計算できません。 最初の準備は、240社分の定款を見てこの列を埋めることです。
公開会社かどうかは、任期の上限を決めます。 取締役の任期は原則2年、監査役は4年ですが、公開会社でない株式会社は、定款で定めることにより10年まで伸ばせます。 ここで言う公開会社は、株式の譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定めがない会社のことで、株式を市場に公開しているかどうかとは関係ありません。
データの取得方法を決める
取得する登記情報の種類を、あらかじめそろえます。 登記事項証明書には、現在効力がある登記事項の証明(現在事項証明書)と、それに加えて請求の日の3年前の年の1月1日から請求の日までに抹消された事項等を載せたもの(履歴事項証明書)があります。台帳に入れたいのは現在の役員なので、現在効力のある事項を載せた種類を基本にします。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 役員に関する事項の文字 | OCRの行と段落 | 資格・氏名・日付の抽出 |
| ページ上の位置 | OCRのレイアウト | 役員の欄の範囲の特定と、確認時の画像の位置 |
| 画像の品質スコア | OCRのページ単位の指標 | 紙のスキャンの品質の確認 |
| 会社法人等番号 | 登記情報の冒頭 | 顧問先の特定 |
顧問先の特定は、会社法人等番号で行います。 商号は変更されることがあり、表記のゆれもあります。台帳の基本情報に会社法人等番号の列を持たせ、登記情報に書かれた番号で引きます。 番号が読み取れなかったときは、ファイル名に付けた顧問先コードで引き、担当者に確かめさせます。
Document AI の呼び出しは、1件ずつのオンライン処理で足ります。 オンライン処理で扱えるページ数は Enterprise Document OCR で15ページまで、ファイルサイズは40MBまでで、登記情報は数ページに収まります。月初にまとめて60社分を流すなら、バッチ処理(1回の要求で最大5,000ファイル)も選べますが、バッチ処理は非同期で、リアルタイムの用途向けではないとされています。担当者が取得したそばから台帳に反映させたいので、ここではオンライン処理を使います。
言語のヒントも指定します。 Enterprise Document OCR には、データの性質に合わせて言語や手書きのヒントを与えて精度を上げる設定があります。登記情報は日本語の印字だけなので、日本語を指定しておきます。 紙のスキャンに手書きの書き込みが入っていても、台帳に使うのは印字の部分だけです。
AIへ渡す前に整形する
- 形式の確認 … PDF、GIF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP のいずれかであることを確かめます
- サイズとページ数の確認 … オンライン処理のファイルサイズは40MBまでです。ページ数が多いものは、役員の欄のあるページだけに絞って読み取ります
- 品質の確認 … 紙のスキャンは、OCRの品質スコアを見て、低いものを抽出の前に人へ回します
- 顧問先の特定 … 会社法人等番号で台帳を引きます。当たらないものはここで止めます
- 役員の欄の切り出し … 読み取った文字のうち、役員に関する事項の見出しから次の区の見出しまでを抽出の対象にします
- 前回分の取り出し … 台帳から前回の役員の一覧を取り出し、照合に備えます
5番目で範囲を絞るのは、抽出の誤りを減らすためです。 登記情報には、目的、資本金の額、株式に関する事項などが並びます。役員の欄だけを渡せば、目的の欄の人名らしい語を役員として拾う誤りがなくなります。
AIに処理させる
させるのは、役員の欄の文字から、役員ごとの事実を抜き出すことだけです。
| 抜き出すもの | 中身 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 資格 | 取締役、代表取締役、監査役、会計参与 など | 読めなければ unknown |
| 氏名 | 書かれたとおりの字で | 読めない字は 〓 |
| 代表取締役の住所 | 代表取締役に書かれた住所 | 無ければ空 |
| 就任・重任の日 | 原因の日付と、就任か重任かの別 | 読めなければ null |
| 登記の日 | その事項が登記された日 | 読めなければ null |
| 現在の役員か | 退任や辞任の記載があるか | 判断できなければ uncertain |
日付は、書かれている元号のまま抜き出させます。 西暦への換算と任期の計算は、Google Apps Script の側で行います。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 任期の計算 | 定款の定めと事業年度で決まる。規則どおりに計算する |
| 満了の判断 | 計算の結果から台帳が出す |
| 定款の任期の推測 | 登記情報には書かれていない。台帳の基本情報を使う |
| 読めない氏名や日付の補完 | 前回の台帳の値で埋めると、変わったことに気づけない |
| 改選の要否や進め方の判断 | 顧問先の事情と定款の解釈が要る |
4行目が、いちばん起きやすい失敗です。 読めなかった日付を前回の台帳の値で埋めると、重任で日付が新しくなっていても、前回と同じに見えてしまいます。 照合は抽出の後で、別の工程として行います。
代表取締役の扱いにも注意します。 代表取締役の地位は取締役の地位に基づくので、取締役の任期が満了すれば代表取締役も退任します。代表取締役だけの任期を別に数えることはしません。 台帳では、代表取締役を取締役の任期にひもづけて表示します。
指示内容を固定する
あなたは司法書士事務所で、登記情報の役員に関する事項を台帳に写す担当です。
渡すのは、OCRで読み取った役員の欄の文字です。書かれていることだけを抜き出してください。
【役員の欄の文字】{officer_section_text}
【行ごとの位置】{line_positions}
【抜き出す項目】
役員ごとに:資格、氏名、代表取締役の場合は住所、
就任または重任の日(原因の日付)とその別、登記の日、現在の役員かどうか
【厳守事項】
- 日付は書かれている元号のまま書いてください。西暦に直さないでください。
- 任期や満了の時期を書かないでください。計算は別の仕組みが行います。
- 読めない字は推測せず「〓」としてください。
- 読めない日付は null としてください。他の役員の日付や、よくある日付で埋めないでください。
- 退任、辞任、解任、死亡などの記載がある役員は is_current を false にしてください。
判断できないときは uncertain にしてください。
- 同じ人が取締役と代表取締役の両方に書かれている場合は、それぞれ1件として抜き出してください。
- 役員の欄以外の文字(目的、資本金など)から人名を拾わないでください。
- 各項目には、根拠にした行の番号を source_lines に入れてください。
「任期や満了の時期を書かない」を明記しないと、生成AIは親切に計算して書きます。 その計算は、定款の任期を知らないまま原則の2年で行われることが多く、10年の会社について8年早い満了を台帳に入れることになります。
「退任の記載があれば is_current を false」も、同じくらい大事です。 取得する種類をそろえていても、紙の証明書が届いたときなどに、抹消された事項を含む種類が混ざることがあります。現在の役員かどうかの判断を抽出の段階で残しておけば、台帳に入れる前に分けられます。
出力形式を固定する
Gemini API の構造化出力で、次の形のJSONを返させます。 JSON Schema を渡して、その形に沿った応答を返させる機能です。
{
"corporate_number": "",
"company_name": "",
"officers": [
{ "title": "director | representative_director | auditor | accounting_advisor | unknown",
"name": "",
"address": "",
"cause": "shunin | junin | unknown",
"cause_date_wareki": "",
"registered_date_wareki": "",
"is_current": "true | false | uncertain",
"source_lines": [] }
]
}
1つ目の理由は、台帳の列とそのまま対応させられることです。 抽出の結果を、Google Apps Script が台帳の行に書き込みます。自由な文章では、この書き込みが毎回崩れます。
2つ目は、is_current を3つの値にしていることです。 uncertain を許さないと、判断できない役員も true か false に寄せられます。台帳に入れる前に人が見るべき行が、この値で分かります。
3つ目は、cause で就任と重任を分けていることです。 重任が記録されていれば、前回の満了の時期に改選が行われ、登記まで済んだことが分かります。
任期の計算は、抽出の結果と台帳の基本情報から、Google Apps Script が次のように行います。
| 入力 | 例 |
|---|---|
| 就任・重任の日 | 令和6年6月27日(重任) |
| 定款の取締役の任期 | 10年 |
| 事業年度の終わり | 3月31日 |
| 定時株主総会の月 | 6月 |
| 計算の結果 | 選任後10年以内に終了する最終の事業年度は令和16年3月期。満了は令和16年6月の定時株主総会の終結の時(見込み) |
| 案内を出す月 | 満了の見込み月の3か月前(令和16年3月) |
「見込み」と付けているのは、選任の日を就任や重任の日で代えているためです。 登記に書かれるのは原因の日付で、株主総会で選任された日と同じとは限りません。ずれがありうる会社は、台帳に印を付けて人が確かめます。
台帳の1行は、役員1人分です。担当者が毎月見る一覧は、次のような形で出します。
| 会社 | 資格・氏名 | 重任の日 | 任期 | 満了の見込み | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 取締役 甲野一郎 | 令和6年6月27日 | 10年 | 令和16年6月総会 | 変化なし |
| B社 | 取締役 乙川花子 | 令和7年3月27日 | 2年 | 令和9年3月総会 | 12月に案内を出す |
| C社 | 監査役 丙山次郎 | (読めず) | 4年 | 計算できず | 要確認 |
| D社 | 取締役 丁田三郎 | 令和7年6月25日 | 未整備 | 計算できず | 基本情報が未整備 |
「状態」の列だけを見れば、その月にすることが分かります。 「変化なし」は流し見て終わり、それ以外の行を開きます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| Google ドライブ | Google Apps Script の定時実行 | 所定のフォルダの新しいPDFを見つける |
| Google Document AI | API呼び出し | 文字・レイアウト・品質スコアを返す |
| Gemini API | API呼び出し | 役員の事項を構造化出力で返す |
| 役員任期の管理台帳 | スプレッドシートの読み書き | 基本情報の読み取り、役員の行と満了の見込みの書き込み |
| Gmail/Google Chat | 通知 | 満了が近い会社と食い違いのある会社を担当者へ |
顧問先への案内は、この構成から送りません。 通知は事務所の担当者までです。改選の案内は、顧問先の事情を知る担当者が書いて送ります。
台帳への書き込みは、役員の行と満了の見込みの列だけに限ります。基本情報のシート(定款の任期、事業年度の終わり)は読み取るだけで、書き換えません。基本情報の変更は、定款の変更を確かめた人が手で行います。
人が確認する
人が確かめるのは、条件に当たった会社だけです。
- 前回との食い違い … 役員が増えた、減った、日付が変わった。事務所の知らない登記がされていないかを確かめます
is_currentがuncertainの役員 … 現在の役員かどうかを、画像で確かめます- 日付が
nullの役員 … 画像を開いて読み、手で入れます - 品質スコアの低いスキャン … 取り直すか、画像を見て手で入れます
- 満了の見込みが12か月以内の会社 … 計算の結果が定款の定めと合っているかを確かめ、案内の準備に入ります
1番目を軽く見ないでください。 前回と違う役員が出てきたとき、それは読み取りの誤りか、顧問先が事務所を通さずに登記をしたかのどちらかです。後者なら、顧問先との連絡の行き違いがどこかにあります。
目標は、60件をならして1件5分です。 食い違いのない会社は一覧で件数を見るだけで、条件に当たった会社だけを開きます。条件に当たる会社が多い月は、基本情報の列の未整備を疑います。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 会社法人等番号が台帳に無い | 顧問先の登録漏れ。台帳に登録してから読み取り直す |
| 基本情報の任期や事業年度が空 | 満了を計算しない。「基本情報が未整備」として一覧に出す |
| 抹消された事項を含む種類が届いた | is_current で分ける。uncertain は人が確かめる |
| 役員の欄が複数ページにまたがる | 見出しの範囲でページをまたいで切り出す |
| 紙のスキャンの品質が低い | 品質スコアで検知し、取り直す |
| 事業年度を変更した会社 | 変更前後の事業年度で計算が変わる。人が計算し、台帳に注記する |
| 最後の登記から長い期間が経っている | 登記の日を見て、長期間登記がない会社を一覧に出す |
| OCRやAPIが応答しない | ファイルを処理待ちに残す。処理済みへ移すのは成功時だけ |
下から2行目は、休眠会社の整理作業に関わります。 最後の登記から12年を経過している株式会社は休眠会社として扱われ、毎年10月頃の法務大臣の官報公告から2か月以内に必要な登記か「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないと、みなし解散の登記がされます。 任期を10年に伸ばした会社では、重任の登記を1回忘れるだけでこの期間に近づきます。
記録を残す
- 取得した登記情報のPDFと、取得した日・担当者
- OCRが返したJSONの全文と、ページ単位の品質スコア
- 抽出の結果のJSONと、人が直した項目の直す前と直した後
- 任期の計算に使った基本情報(そのときの定款の任期と事業年度)と、計算の結果
- 前回との照合の結果と、食い違いをどう処理したか
- 案内を出した日と、改選・登記の結果
4つ目で「そのときの基本情報」を残すのは、定款が変更されることがあるためです。 任期を2年から10年に伸ばした会社では、変更前の計算と変更後の計算が食い違います。当時どの前提で満了を出したかが残っていないと、案内の遅れの原因をたどれません。
04実装レベルの3段階
最小構成では、60社を毎月回せません。 1社ずつ貼るので、一巡に時間がかかります。確かめるための段階です。 半自動化で、1件20分が5分になり、この段階が本記事の想定です。 読み取りと転記と計算が自動になり、人は条件に当たった会社だけを確かめます。本格構成は、登記の案件管理と台帳をつなぐ段階です。 登記の完了や総会の予定を案件管理の側から受け取れれば、取り直しの依頼まで自動で出せますが、案件管理の仕組みとの個別の連携が要ります。 半自動化の段階で、基本情報の列を埋め切ってください。 任期と事業年度が空の会社が残っていると、台帳は動いていても、その会社の満了は永久に出てきません。
05工数削減シミュレーション
導入後 60件 × 5分 ÷ 60 = 5 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 法人の顧問先を100社以上抱え、役員変更登記を継続して受任している司法書士事務所・行政書士事務所・税理士事務所。役員の任期を担当者の記憶や手書きの控えで管理しており、重任の登記の案内が遅れることがある場合。任期を10年まで伸ばした非公開会社が多く、次の改選が何年先かを誰も把握していない場合。
- 法人の顧問先が数社で、担当者が任期を把握できている場合。役員の任期を顧問先自身が管理し、事務所は依頼を受けてから動くだけの場合。登記事項証明書を定期的に取り直す運用を取れない場合。なお、任期の起算や定款の解釈に関する判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 顧問先から10社を選ぶ(任期2年の会社と10年の会社を両方入れる)
- 各社の登記情報のPDFを取得する
- 1社ずつ、手元の生成AIサービスにPDFを貼り、「役員に関する事項から、役員ごとの資格・氏名・就任または重任の日・登記の日を、書かれているとおりに抜き出してください。日付は元号のまま、任期は計算しないでください」と指示する
- 抜き出した結果を、表計算に貼る
- 定款の任期と事業年度を横の列に入れ、満了の時期を表計算の数式で出す
5番目を表計算で行ってください。 生成AIに満了の時期まで出させると、本番の構成で分けるはずの2つの工程を、試験の段階で混ぜてしまいます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 抜き出しが正しく、満了の時期が担当者の認識と合った | OCRのAPIと台帳の連携に進む |
| 任期を勝手に計算して書いた | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 満了の時期が担当者の認識と違った | 基本情報の確認が先。 定款の任期と事業年度を見直す |
3行目が出たら、それは発見です。 担当者の記憶と定款の定めが食い違っていたということで、そのまま放置していれば案内が遅れていた会社が見つかったことになります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 生成AIが任期を計算して書く | 計算させない。 満了は台帳の側で規則どおりに出す |
| 原則の2年で計算してしまう | 定款の任期を基本情報に持ち、空なら計算しない |
| 退任した役員が台帳に入る | 取得する種類をそろえ、is_current で分ける |
| 読めない日付を前回の値で埋める | null のまま出し、照合は別の工程にする |
| 代表取締役の任期を別に数える | 取締役の任期にひもづける |
| 公開会社を「上場会社」と取り違える | 株式の譲渡制限の定めの有無で決まる。定款で確かめる |
| 目的の欄の人名を役員として拾う | 役員の欄だけを切り出して渡す |
| 顧問先を商号で特定して誤る | 会社法人等番号で引く |
| 事業年度を変更した会社で計算がずれる | 変更の履歴を基本情報に持たせ、人が計算する |
| 基本情報が空の会社が残る | 「未整備」として毎月の一覧に出し続ける |
| 重任を登記不要と考える顧問先 | 満了の案内に、重任でも登記が必要なことを書き添える |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「任期は2年」という思い込みから出ています。非公開会社が多い顧問先では、原則どおりに計算した満了はほとんど当たりません。
下から2行目も、早く効いてきます。 基本情報の空欄は、台帳の上では何も起きないように見えます。毎月の一覧に出し続けて、埋まるまで目に触れさせます。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 顧問先の商号、本店、役員の氏名、代表取締役の住所、そして事務所が管理する定款の内容です。登記情報は公開されている情報ですが、240社分を任期と一緒にまとめた台帳は、事務所の業務情報です。
- 外部へ渡す範囲を役員の欄までに絞る … 抽出に使うのは役員の欄だけです。切り出してから生成AIに渡します
- 代表取締役の住所の扱いを決める … 台帳の管理に住所が要らなければ、抽出の項目から外すこともできます
- この構成は任期の判断を代替しません … 出すのは、登記に書かれた日付と、基本情報に基づく満了の見込みまでです。任期の起算や定款の解釈、改選の進め方は司法書士が判断します
- 顧問先への案内を自動で送らない … 案内の時期と内容は、顧問先の事情で変わります。通知は事務所の担当者までにします
- 基本情報のシートの編集権限を絞る … 任期と事業年度の列を誤って書き換えると、全社の満了の見込みが変わります。編集できる人を限り、変更の履歴を残します
誤りが起きた場合のリスクは、満了を遅く見積もって案内が遅れることと、早く見積もって不要な改選を勧めることの2つです。 どちらも、任期の年数と事業年度の誤りから起きます。計算の規則と基本情報を人が管理し、AIには登記に書かれた事実だけを抜き出させることで、誤りの出どころを限ります。
10まず何から始めるか
1週目:基本情報の列を作る
台帳に、会社法人等番号、定款で定めた取締役と監査役の任期、事業年度の終わりの月、公開会社かどうか、定時株主総会の月の列を作ります。顧問先の多い担当者の50社から埋めます。
2週目:10社で試す
任期2年と10年の会社を含む10社について、手元の生成AIサービスで役員の事項を抜き出させ、表計算の数式で満了の時期を出します。担当者の認識と合わない会社があれば、定款を確かめます。
3週目:残りの基本情報を埋める
240社すべての基本情報を埋めます。定款が手元に無い会社の一覧が、この週の成果です。顧問先に定款の写しを依頼します。
4週目:フォルダから台帳までをつなぐ
Google Apps Script でフォルダを見張り、Document AI と Gemini API を呼び、台帳に書き込むところまで作ります。この時点では満了の通知を出さず、抽出の結果が正しく台帳に入るかだけを見ます。
2か月目: 任期の計算と前回との照合を足し、月60社の一巡を始めます。3か月目以降: 満了が近い会社の通知を足し、1件20分が何分になったかを実測します。240社の一巡が終わり、基本情報が未整備の会社が0社になった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 任期満了後に同じ人が再任された場合も役員変更の登記(重任)が必要なこと。株式会社は任期満了から2週間以内に登記が必要で、怠った代表者等が100万円以下の過料に処される可能性があること。取締役の任期が選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、監査役が4年以内であること。公開会社でない株式会社は定款で10年まで伸長できること。公開会社が株式の譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定めがない会社で、市場への公開とは関係ないこと。代表取締役は取締役の任期満了で退任すること | 法務省: 役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です | 2026-09-29 |
| 登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならないこと。最後の登記から12年を経過している株式会社が休眠会社とされ、毎年10月頃の法務大臣の官報公告から2か月以内に必要な登記か「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないと、みなし解散の登記がされること | 法務省: 休眠会社・休眠一般法人の整理作業について | 2026-09-29 |
| 現在事項証明書が現在効力がある登記事項の証明であること。履歴事項証明書が、現在効力がある登記事項に加えて、請求の日の3年前の日の属する年の1月1日から請求の日までの間に抹消された事項等を記載したものであること | 法務局: 登記事項証明書・登記簿謄抄本 交付申請書(PDF) | 2026-09-29 |
| 登記情報提供サービスが、登記所が保有する登記情報をインターネットで確認できる有料のサービスであること。登記情報がPDFファイルで提供され、登記事項証明書と異なり証明文や公印等が付加されないこと | 登記情報提供サービス: 登記情報提供サービスとは | 2026-09-29 |
| Enterprise Document OCR が、PDFや画像からブロック・段落・行・単語・記号を検出し、印刷された文字と手書きの文字に対応すること。デジタルのPDFに埋め込まれた文字を取り出せること。ページ単位で8つの観点(ぼやけ、小さい文字、照り返しなど)の画像の品質スコアを返すこと。言語と手書きのヒントを与えて精度を上げられること。対応形式が PDF、GIF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP であること | Google Cloud: Enterprise Document OCR | 2026-09-29 |
| Enterprise Document OCR が200を超える言語の文字(手書きを含む)を抽出でき、日本語が対応言語に含まれること。Custom Extractor で生成AIを使って抽出する場合、公式に対応しているのは英語のみであること | Google Cloud: Document AI processor list | 2026-09-29 |
| オンライン処理のファイルサイズが40MBまで、バッチ処理が1回の要求で5,000ファイルまでであること。Enterprise Document OCR のオンライン処理のページ数が15ページまでであること。バッチ処理が非同期で、リアルタイムの用途向けではないこと | Google Cloud: Document AI limits | 2026-09-29 |
| Gemini のモデルに JSON Schema を渡し、それに沿った応答を返させられること。データの抽出に適していること | Google AI for Developers: Structured outputs | 2026-09-29 |
任期の起算、定款の解釈、改選と登記の進め方は、司法書士が判断してください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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