退職日が決まった社員のメールボックス・OneDrive・Teams のデータの引継ぎ先を上長に確かめ、退職日から逆算した案内と督促を回す
退職日が決まった社員について、メールボックス・OneDrive・所有するチームの引継ぎ先を上長にたずねる案内と、本人向けの準備の案内を、退職日から逆算した日付入りで作って送ります。未回答の項目だけを書いた督促を段階を追って回します。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Claude
- 連携・自動化
- Make/n8n/Power Automate
- 対象業界
- IT・SaaS/人材/士業/広告
- 対象部門
- 人事/情報システム
- 対象業務
- 台帳・マスタ管理/書類作成
- 主な課題
- 人手が足りない/引き継ぎができていない/期限・対応漏れが起きる
- AIで行う処理
- 生成
- 主な効果
- 対応スピード向上/工数削減/機会損失防止
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- ノーコード連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 情報システム部の担当者が、人事の退職者リストの新しい行を見る
- 上長を確かめ、その退職者が所有するチームと、OneDrive の使い方の大まかな様子を調べる
- 上長へ、メールの転送か共有メールボックスへの変更か、OneDrive のデータの引継ぎ先、チームの後任の所有者をたずねるメールを書く
- 本人へ、最終出社日までに個人の OneDrive から共有の場所へ移すファイルを案内する
- 回答が来なければ、数日おきに上長へ催促する
- 回答の内容を作業票に書き写し、退職日の前後に管理の操作を割り振る
- 退職日の後、作業票どおりにメールボックスの変換、OneDrive の権限の付与、サインインの停止、ライセンスの削除を行う
- 自動人事の退職者リストに退職日が入ると、フローが動く
- 自動Office 365 ユーザー コネクタで上長を引く。引けなければ人事に確かめる依頼を出して止まる
- 自動退職日と最終出社日から、回答の期限・督促の日・管理の操作の日を計算する
- 自動AI Builder のプロンプトが、上長への案内と本人への案内を作る
- 人情報システム部の担当者が案内を読み、所有するチームの一覧を確かめて送信を承認する
- 自動上長と本人へ Teams で案内を届け、回答用のリストの行を作る
- 自動毎朝、回答の期限に近づいた未回答の項目について、AIが督促の文面を作って届ける
- 人上長が回答用のリストに引継ぎ先を入れる
- 自動回答がそろったら作業票の行に写し、情報システム部のチャネルに知らせる
- 人担当者が作業票を確かめ、計算された日に管理の操作を行う
各工程の詳しい説明を読む
- 情報システム部の担当者が、人事の退職者リストの新しい行を見る
- 上長を確かめ、その退職者が所有するチームと、OneDrive の使い方の大まかな様子を調べる
- 上長へ、メールの転送か共有メールボックスへの変更か、OneDrive のデータの引継ぎ先、チームの後任の所有者をたずねるメールを書く
- 本人へ、最終出社日までに個人の OneDrive から共有の場所へ移すファイルを案内する
- 回答が来なければ、数日おきに上長へ催促する
- 回答の内容を作業票に書き写し、退職日の前後に管理の操作を割り振る
- 退職日の後、作業票どおりにメールボックスの変換、OneDrive の権限の付与、サインインの停止、ライセンスの削除を行う
(a)回答が退職日の直前に集まる。 上長は退職の手続きと業務の引継ぎで忙しく、データの引継ぎ先の質問は後回しになります。最終出社日の前日に回答が来て、本人に確かめる時間が残らないことがよくあります。
(b)聞くことが人によって違う。 営業には顧客のメールを、チームの所有者には後任を、と担当者が考えてメールを書き分けています。書き分けは担当者の経験に頼っていて、新しい担当者は全員に同じ質問を送ります。
(c)チャットのファイルを聞き忘れる。 Teams のチャットで送ったファイルは、送った人の OneDrive に置かれます。チャットで共有していた資料が退職者の OneDrive にあることは、上長も本人も意識していません。 退職後しばらくして「開けなくなった」と問い合わせが来るのは、たいていこの型です。
- 【自動】 人事の退職者リストに退職日が入ると、フローが動く
- 【自動】 Office 365 ユーザー コネクタで上長を引く。引けなければ人事に確かめる依頼を出して止まる
- 【自動】 退職日と最終出社日から、回答の期限・督促の日・管理の操作の日を計算する
- 【自動】 AI Builder のプロンプトが、上長への案内と本人への案内を作る
- 【人】 情報システム部の担当者が案内を読み、所有するチームの一覧を確かめて送信を承認する
- 【自動】 上長と本人へ Teams で案内を届け、回答用のリストの行を作る
- 【自動】 毎朝、回答の期限に近づいた未回答の項目について、AIが督促の文面を作って届ける
- 【人】 上長が回答用のリストに引継ぎ先を入れる
- 【自動】 回答がそろったら作業票の行に写し、情報システム部のチャネルに知らせる
- 【人】 担当者が作業票を確かめ、計算された日に管理の操作を行う
5番目と10番目が、この設計の分かれ目です。 案内は人が読んでから送り、管理の操作はすべて人が行います。 メールボックスの変換もアカウントの削除も、取り消しに手間のかかる操作で、フローから自動で行う設計にはしません。
3番目の日付をAIに作らせないのも、意図してのことです。 退職日から営業日を数えて回答の期限を出す計算はフローで行い、AIには計算済みの日付を渡して文面に入れさせるだけにします。
02今回想定するシステム構成
人事の退職者リスト(SharePoint:氏名・UPN・部署・職種・最終出社日・退職日) ▼【トリガー】項目が作成または変更されたとき(退職日が入った) Power Automate(自動化したクラウド フロー) ├──▶ Office 365 ユーザー:Get manager (V2) で上長を引く ├──▶ 退職日から回答期限・督促日・操作日を計算 ├──▶ プロンプトを実行する(AI Builder のプロンプト、JSON 出力) │ 職種・所有チーム・日付 → 上長への案内・本人への案内 ├──▶ 情報システム部が確認して承認 ├──▶ Teams:上長と本人へ案内(フロー ボット)/回答用リストに行を作る ▼ Power Automate(スケジュールされたクラウド フロー、毎朝) ├──▶ 未回答の項目を取り出し、プロンプトで督促文を作って届ける └──▶ 回答がそろったものを作業票へ写し、チャネルに知らせる ▼ 【情報システム部】作業票を確認 → 計算された日に管理の操作
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| ワークフロー | Power Automate(自動化したクラウド フロー、スケジュールされたクラウド フロー、SharePoint コネクタ、Office 365 ユーザー コネクタ) | Make、n8n |
| 生成AI | AI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、JSON 出力) | Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude |
| 保管 | SharePoint のリスト(退職者リスト、回答用のリスト、作業票) | Dataverse |
| 通知 | Microsoft Teams(フロー ボットとのチャット、情報システム部のチャネル) | Outlook のメール |
新しく足すのは、フロー2本と、回答用のリストだけです。 退職者リストは人事のものをそのまま使い、作業票は今のリストに「回答の状態」「操作の予定日」の列を足します。回答用のリストは、上長が項目ごとに選んで入れる形にし、自由な文面で返ってこないようにします。
入口は、SharePoint コネクタの「項目が作成または変更されたとき」です。 公式ドキュメントでは、項目が作成されたときと、変更されるたびに動くトリガーとされています。退職日の列が空から値に変わったときだけ先に進む条件を、最初に置きます。
上長は、Office 365 ユーザー コネクタの Get manager (V2) で引きます。 公式ドキュメントでは、Microsoft Entra ID に上長が設定されていないと「No manager found for the specified user」が返るとされています。このときは推測で誰かに送らず、人事に確かめる依頼を出して止めます。
案内と督促は、AI Builder のプロンプトを「プロンプトを実行する」アクションで呼んで作ります。 出力は JSON にでき、保存した時点の形式が固定されます。届けるのは Teams の「チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する」で、投稿者にフロー ボットを選びます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
フローは2本に分けます。 1本目は人事の退職者リストに退職日が入ったときに動き、案内を作って送ります。2本目は平日の毎朝動き、未回答の項目の督促と、回答のそろったものの作業票への写しを行います。
日付は、退職日と最終出社日から逆算して決めます。 最終出社日の後は本人に確かめられないので、本人の確認が要る項目は最終出社日を基準にします。
| 日付 | 決め方 | 何をする日か |
|---|---|---|
| 案内の日 | 退職日が入った日 | 上長と本人へ案内を届ける |
| 1回目の督促 | 回答の期限の5営業日前 | 未回答の項目を上長へ |
| 回答の期限 | 最終出社日の5営業日前 | 本人に確かめる時間を残す |
| 2回目の督促 | 回答の期限の翌営業日 | 上長へ。情報システム部のチャネルにも出す |
| 管理の操作の日 | 退職日の翌営業日から | 作業票どおりに操作する |
回答の期限を最終出社日より前に置くのが、第3章の(a)への答えです。 期限が最終出社日と同じだと、本人に「この共有ファイルはどこへ移すか」を確かめる時間がありません。5営業日は、本人が引継ぎの合間にファイルを移せる日数として置いた値です。
退職日が入ってから最終出社日までが短い退職者もいます。回答の期限が案内の日より前になるときは、案内の日から2営業日後を期限にし、情報システム部のチャネルに「期限が短い」と出します。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 退職者の情報 | 氏名、UPN、部署、職種、最終出社日、退職日 | 人事の退職者リスト |
| 上長の情報 | 氏名、UPN、部署 | Office 365 ユーザー コネクタ(Get manager (V2)) |
| 所有するチーム | 退職者が所有者になっているチームの名前と、ほかの所有者の有無 | 情報システム部が管理センターで確かめて回答用のリストに入れる |
| 職種ごとの質問の型 | 営業・開発・管理部門などの職種ごとに、たずねる項目の一覧 | 情報システム部が用意する表 |
| 計算済みの日付 | 回答の期限、督促の日、管理の操作の日 | フローが計算 |
| 回答の状態 | 項目ごとの回答の有無と内容 | 回答用のリスト |
質を決めるのは、職種ごとの質問の型です。 第3章の(b)で担当者が頭の中で書き分けていたものを、表にします。営業なら顧客から届くメールの扱い、開発なら所有するチームと共有のリポジトリの案内、管理部門なら OneDrive に置いた共有のファイル、といった具合です。
所有するチームは、人が確かめて入れます。 ほかの所有者がいないチームは、退職後に管理する人がいなくなります。この一覧はAIに推測させず、情報システム部の担当者が案内の承認の前に入れます。
データの取得方法を決める
退職者リストは、トリガーが返す行の値をそのまま使います。 変更のたびに動くトリガーなので、退職日の列の値と、作業票にすでに行があるかを最初に確かめ、二度目の案内を出さないようにします。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 退職者の行 | トリガーの出力 | 案内の材料 |
| 上長 | Get manager (V2)(退職者の UPN を渡す) | 送り先 |
| 職種ごとの質問の型 | 質問の型の表(Get items、職種で絞る) | たずねる項目 |
| 所有するチーム | 回答用のリスト(担当者が入れた行) | チームの後任をたずねる |
| 未回答の項目 | 回答用のリスト(Get items、回答の状態で絞る) | 督促の材料 |
Get manager (V2) は、取り出す項目を「Select fields」で絞れます。 公式ドキュメントでは、既定で選ばれる項目のどれかがテナントの方針で止められていると403で失敗することがあり、項目を指定すると避けられるとされています。氏名・UPN・部署だけを指定します。
AIへ渡す前に整形する
- 退職日が入ったかの判定 … 退職日の列が空でなく、作業票に行が無いときだけ進みます
- 上長の確認 … Get manager (V2) で引けなければ止まり、人事に確かめる依頼を出します
- 上長が同時に退職するかの確認 … 上長も退職者リストにいれば、上長の上長を送り先にします
- 日付の計算 … 営業日で数え、会社の休日の一覧を使います
- 質問の型の選択 … 職種で質問の型を選び、所有するチームが1つ以上あればチームの項目を足します
- 短い期限の印 … 回答の期限が案内の日より前なら、期限を置き直して印を付けます
3番目を軽く見ないでください。 組織の再編や事業の撤退では、上長と部下が同じ月に退職することがあります。上長に引継ぎ先を聞いても、その上長のデータもまもなく引継ぎの対象になります。
AIに処理させる
させるのは、渡された材料から、上長への案内・本人への案内・督促の3種類の文面を作ることだけです。
| 作る文面 | 中身 |
|---|---|
| 上長への案内 | 退職者の名前、たずねる項目(職種の型とチーム)、回答の期限、回答用のリストへの案内、期限を過ぎるとどうなるか |
| 本人への案内 | 最終出社日までに移してほしいもの(個人の OneDrive に置いた共有のファイル、チャットで送ったファイル)、私物のデータの扱い |
| 督促 | まだ答えていない項目だけ、期限までの日数、1回目と2回目で調子を変える |
本人への案内には、チャットのファイルのことを必ず入れさせます。 Microsoft のサポートの説明では、チャットで送ったファイルは送った人の OneDrive for Business に保存され、その会話の相手だけに共有されるとされています。第3章の(c)の問い合わせは、ここを案内に書いていないことから起きます。
上長への案内には、「期限を過ぎるとどうなるか」を書かせます。 公式ドキュメントの内容に沿って、次の材料を渡します。
| 渡す材料 | 公式ドキュメントの内容 |
|---|---|
| OneDrive の保持 | アカウントを削除すると保持期間が始まり、既定は30日。上長が設定されていれば上長に自動でアクセス権が渡され、通知が届く |
| メールボックス | 共有メールボックスに変えるにはライセンスが付いている必要があり、元のアカウントは削除しない |
| ライセンス | ライセンスを外すと、メール・連絡先・予定表は30日保持された後に完全に削除される |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 日付の計算 | 営業日の数え方を誤る。フローが計算して渡す |
| 引継ぎ先の提案 | 誰に引き継ぐかは上長が決める。AIが名前を挙げると、そのまま写される |
| 渡されていない手順の説明 | 管理の操作の手順は情報システム部が持つ。AIに書かせると、自社の運用と違う手順が届く |
| 退職の理由への言及 | 案内に要らない。退職者の情報は最小限にする |
| データを必ず取り戻せるという約束 | 保持期間を過ぎれば戻せない。約束は書かない |
2行目がいちばん起きやすい失敗です。 部署の名前を渡すと、「同じ部署の○○さんを引継ぎ先にするのがよいでしょう」と書きます。上長は忙しいほど、その名前をそのまま回答に入れます。
指示内容を固定する
あなたは情報システム部で、退職する社員のデータの引継ぎについて、
上長と本人に送る案内と督促の文面を書く補助です。
誰に引き継ぐかを決めるのは上長です。あなたは文面を書くだけです。
【入力】
- 文面の種類:{message_type}(manager_notice/leaver_notice/reminder)
- 退職者:{leaver}(氏名、部署、職種、最終出社日、退職日)
- 上長:{manager}(氏名)
- たずねる項目:{items}(項目名と選択肢)
- 所有するチーム:{teams}
- 計算済みの日付:{dates}(回答の期限、督促の日、管理の操作の日)
- 未回答の項目(督促のとき):{open_items}
- 督促の回数:{reminder_count}
- 期限を過ぎたときの影響の材料:{impact_notes}
【してほしいこと】
1. 文面の種類に応じて、件名と本文を書いてください。
2. 日付は計算済みの日付をそのまま使ってください。
3. 上長への案内では、たずねる項目を箇条書きにし、
回答の期限と、期限を過ぎたときの影響を1〜2文で書いてください。
影響は「期限を過ぎたときの影響の材料」に書かれた内容だけを使ってください。
4. 本人への案内では、チャットで送ったファイルが本人の OneDrive に
置かれていることと、最終出社日までに共有の場所へ移すことを書いてください。
5. 督促では、未回答の項目だけを書いてください。
1回目は丁寧に、2回目は期限を過ぎたことをはっきり書いてください。
【厳守事項】
- 日付を計算したり、書き換えたりしないでください。
- 引継ぎ先の候補となる人の名前を挙げないでください。
- 材料に無い管理の手順や、保持の日数を書かないでください。
- 「必ず復元できます」など、データを取り戻せると約束しないでください。
- 退職の理由や、退職者の評価に触れないでください。
- 本文は400字以内にしてください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。
「材料に無い保持の日数を書かない」を明記しないと、もっともらしい日数を書きます。 保持の期間は会社の設定で変えられるので、自社の設定と違う日数が上長に届くと、上長はその日数を信じて回答を後回しにします。 影響の材料は、情報システム部が自社の設定に合わせて書いた文を渡します。
督促の回数で調子を変えさせるのは、第4章の③で担当者がしていたことです。 1回目と2回目で同じ文面だと、2回目が読み飛ばされます。
最後の1行は、公式ドキュメントの FAQ にある対処です。 モデルが JSON をマークダウンで囲むと形式の検証が通らないことがあり、この一文を足すよう案内されています。
出力形式を固定する
プロンプトの出力を JSON にし、次の形の例を渡して形式を「カスタム」で保存します。
{
"message_type": "manager_notice",
"subject": "",
"body": "",
"listed_items": [ { "item": "" } ],
"dates_used": [ { "label": "", "date": "" } ]
}
1つ目の理由は、使った日付をフローの側で確かめられることです。 dates_used の日付が、フローが渡した日付と1つでも違えば、その文面は送らずに担当者へ回します。 本文の中の日付を目で追わなくても、日付の書き換えを止められます。
2つ目は、たずねた項目を確かめられることです。 listed_items と、渡した項目の一覧を比べ、抜けた項目があれば担当者へ回します。 本人への案内でチャットのファイルの項目が抜けていないかも、ここで見ます。
3つ目は、形式が固定されることです。 公式ドキュメントでは、プロンプトを保存すると形式がロックされ、フローでは保存された形式が使われるとされています。フィールドのキーの無い JSON はサポートされないので、listed_items と dates_used はキー付きの要素の配列にしています。
上長に届く案内は、たとえば次のようになります。
【退職者のデータの引継ぎ先のご確認】山田 花子さん(営業部)
最終出社日:11月20日 退職日:11月30日
次の3点について、11月13日までに回答用のリストでお知らせください。
・顧客から届くメール:転送/共有メールボックスにして閲覧者を指定/不要
・OneDrive のファイル:引き継ぐ人/不要
・所有者になっているチーム「関西営業」:後任の所有者
期限を過ぎると、本人にファイルの置き場所を確かめる時間が無くなります。
→ 回答用のリスト(リンク) システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 人事の退職者リスト | SharePoint コネクタ(項目が作成または変更されたとき) | 退職日が入ったことを受け取る |
| Microsoft Entra ID | Office 365 ユーザー コネクタ(Get manager (V2)) | 上長を引く |
| AI Builder のプロンプト | プロンプトを実行する | 案内と督促の文面を JSON で返す |
| 回答用のリスト・作業票 | SharePoint コネクタ(Get items/Create item/Update item) | 回答を受け、作業票に写す |
| Microsoft Teams | チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する | 上長と本人へはフロー ボットとのチャット、情報システム部へはチャネル |
管理の操作は、フローに入れません。 メールボックスの変換、OneDrive のアクセス権の付与、サインインの停止、ライセンスの削除、アカウントの削除は、情報システム部の担当者が作業票を見て行います。 Microsoft の公式ドキュメントが示す元社員の削除の手順も、サインインの停止、メールボックスの内容の保存、転送または共有メールボックスへの変更、OneDrive と Outlook のデータへのアクセスの付与、ライセンスの削除、アカウントの削除と、段階に分かれています。
作業票に入れる操作の順番は、公式ドキュメントの注意に沿って決めます。
| 順番 | 操作 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | サインインの停止 | 共有メールボックスに変えても、パスワードを変えなければ元のユーザー名とパスワードで使えてしまう |
| 2 | 共有メールボックスへの変換(回答が「共有」のとき) | ライセンスが付いている必要がある。外した後では変換の選択肢が出ない |
| 3 | OneDrive のデータの引継ぎ | アカウントを削除すると保持期間が始まる。既定は30日 |
| 4 | ライセンスの削除 | メールは30日保持された後に削除される。変換の後に行う |
| 5 | アカウントの削除 | 共有メールボックスにしたときは、元のアカウントを削除しない |
Teams への投稿の上限にも気を付けます。 公式ドキュメントでは、メッセージの大きさは約28KBが上限で、フロー ボットの操作は接続あたり300秒で25回とされています。月15人の退職では、上限に届くことはまずありません。
人が確認する
人が確かめるのは、案内を送る前と、管理の操作の前の2か所です。
- 案内を送る前 … 担当者が上長と本人への案内を読み、所有するチームの一覧を入れて承認します。退職者リストの情報に誤りがあれば、ここで止まります
- 回答がそろったとき … 作業票に写された引継ぎ先を見て、引継ぎ先も退職予定でないか、社外の人になっていないかを確かめます
- 管理の操作の前 … 作業票の順番どおりに、計算された日に操作します。操作した日と担当者を作業票に入れます
1番目を省かないでください。 退職の情報は、本人と上長と人事のあいだでまだ公表していない段階のことがあります。案内が届く時期と相手を誤ると、公表前の退職が周りに伝わります。 人事が「公表日」を入れている場合は、その日より前に案内を送らない条件も足します。
督促は、人の確認を経ずに送ります。 中身は未回答の項目と期限だけで、毎回人が見ると、督促が予定の日に届かなくなります。 ただし2回目の督促は情報システム部のチャネルにも出し、担当者が上長に直接声をかけるかを決めます。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 上長が引けない | 「No manager found」が返る。人事に確かめる依頼を出して止める |
| 上長も同じ月に退職する | 上長の上長を送り先にする |
| 回答の期限が案内の日より前になる | 案内の日から2営業日後を期限にし、チャネルに印を出す |
| 退職日が変わった | 日付を計算し直し、督促の予定を置き直す。案内はやり直さず、変更の知らせだけを送る |
| 退職が取り消された | 作業票の行を「中止」にし、督促を止める |
| 引継ぎ先が社外の人や退職予定者 | 作業票で止め、上長に確かめる |
dates_used が渡した日付と違う | 送らずに担当者へ回す |
| JSON を生成できなかった | 1回だけやり直し、失敗したら定型の文面で送る |
| 公表日より前 | 案内を公表日まで送らない |
上から2行は、Microsoft Entra ID の上長の登録の問題です。 上長が登録されていないと、この構成で送り先が決まらないだけでなく、退職後に OneDrive へのアクセス権が自動で誰にも渡りません。 公式ドキュメントでは、上長も2番目の所有者も設定されていなければ、削除のときに誰にも自動のアクセス権が付かず、削除の通知も届かないとされています。例外の件数が、上長の登録を整える材料になります。
記録を残す
- 退職者ごとの案内と督促の文面(AIが返した JSON の全文)と、送った日時・送り先
- 案内の承認をした担当者と日時
- 項目ごとの回答と、回答の日時
- 作業票の操作ごとの予定日・実施日・担当者
- 回答の期限までに回答がそろった割合
- 退職後に届いた「データが見られない」という問い合わせと、その原因
5つ目が、この構成の効き目を測る数字です。 督促の回数が減ることより、期限までにそろう割合が上がることのほうが、管理の操作を予定の日に行えることに直結します。
最後の行は、案内の文面を直す材料です。 問い合わせの原因がチャットのファイルなら本人への案内を、共有メールボックスの閲覧者なら上長への質問の型を直します。保存期間は、人事の退職者の記録に合わせます。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 案内と督促、回答の取りまとめが自動になり、担当者は案内の承認と作業票の確認、管理の操作を行います。1件120分が40分になるのは、この段階です。 最小構成では、③の督促と④の書き写しが残ります。 短くなるのは②だけです。 本格構成は、この記事の範囲を超えます。 管理の操作を自動にするには、管理者の権限をフローに持たせる必要があり、誤った退職者に操作が走ったときの影響が大きくなります。 半自動化で作業票の運用が安定してから考えます。
05工数削減シミュレーション
導入後 15件 × 40分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- Microsoft 365 を全社で使い、退職者のメールボックスや OneDrive の扱いを情報システムの担当者が上長に1人ずつ聞いて回っている会社。毎月10人以上の退職があり、引継ぎ先の回答が退職日の直前まで集まらないことがある場合。退職後に「前任者のメールが見られない」「チャットで共有されていたファイルが開けない」という問い合わせが来たことがある場合。人事の退職者の情報を SharePoint のリストで受け取れる場合。
- 退職が年に数人で、情報システムの担当者が直接話して足りる場合。Microsoft 365 以外のメールやファイル共有を主に使っている場合。上長の情報が Microsoft Entra ID に登録されておらず、整備の予定も無い場合(先に上長の登録が要ります)。なお、メールボックスの変換やアカウントの削除などの管理の操作と、どのデータを残すかの判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月の退職者から5人を選ぶ(営業・開発・管理部門と、チームの所有者だった人を混ぜる)
- その5人の部署・職種・日付・所有するチームを、氏名を仮の値に置き換えてから、AI Builder のプロンプトのテスト画面に入れる
- 第7章のプロンプトで、上長への案内・本人への案内・1回目の督促を作らせる
- 当時担当者が送ったメールと並べ、たずねた項目に抜けがないか、日付が書き換えられていないかを見る
- 当時の上長に、この案内なら期限までに答えられたかを聞く
5人分は必ずやってください。 フローを組む前に、「職種に合わせた質問の書き分けができるのか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時のメールより項目がそろっていた | フローに進む |
| 引継ぎ先の候補の名前を挙げた | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 職種ごとの違いが出ない | 質問の型の表が先。 AIの問題ではない |
3行目が出ても失敗ではありません。 担当者が頭の中で書き分けていた質問が、まだ表になっていないということです。ベテランの担当者に、職種ごとに何を聞いているかを30分だけ聞き取ると、型の表ができます。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 引継ぎ先の候補の名前を挙げる | 指示に明記する。部署の他の社員の情報を渡さない |
| 日付が書き換えられる | dates_used を渡した日付と比べ、違えば送らない |
| 自社の設定と違う保持の日数が届く | 影響の材料を自社の設定で書いて渡し、それ以外を書かせない |
| 上長が引けない | 「No manager found」。人事に確かめ、Microsoft Entra ID を整える |
| Get manager (V2) が403で失敗する | 取り出す項目を Select fields で絞る |
| 変更のたびにトリガーが動き、案内が二度届く | 退職日の列と作業票の行の有無で、最初の1回だけ進める |
| 回答が自由な文面で返ってくる | 回答用のリストを選択肢の形にする |
| チャットのファイルが残る | 本人への案内に必ず入れ、listed_items で抜けを見る |
| ライセンスを先に外して変換できない | 作業票の順番を決め、変換の後にライセンスを外す |
| 共有メールボックスに元のパスワードで入れる | サインインを先に止める |
| 公表前の退職が伝わる | 人の承認を経てから送り、公表日より前に送らない |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「AIが渡されていない情報を、それらしく足す」という同じ問題から出ています。上長は案内に書かれた名前や日数を信じて動くので、足された一文がそのまま回答と運用に入ります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 退職者の氏名・部署・職種・最終出社日・退職日と、上長の氏名、所有するチームの名前です。退職の事実は、公表前は本人と上長と人事だけが知る情報です。
- AIに渡す範囲を最小限にする … 退職の理由、評価、メールやファイルの中身は渡しません。渡すのは文面を書くのに要る項目だけです
- 案内は人が承認してから送る … 送り先と時期の誤りは、公表前の退職を周りに伝えることになります
- 管理の操作をフローに入れない … メールボックスの変換やアカウントの削除は取り消しに手間がかかり、フローに管理者の権限を持たせると、誤りの影響が大きくなります
- データの保持の約束を書かない … 保持期間は設定で変わり、アイテム保持ポリシーが優先されることもあります。案内に書くのは、情報システム部が自社の設定で確かめた内容だけにします
- 引継ぎ先を確かめる … 社外の人や退職予定者に OneDrive やメールボックスのアクセス権が渡らないよう、作業票で止めます
- 記録の保存期間を決める … 案内と回答にも退職者の情報が入ります。人事の退職者の記録と同じ期間で消します
誤りが起きた場合のリスクは、引継ぎ先が決まらないまま保持期間が過ぎてデータが失われることと、公表前の退職が伝わることの2つです。 前者は回答の期限と作業票の順番で、後者は承認と公表日の条件で防ぎます。どちらも、送る前と操作の前に人が見る設計から出ているので、そこだけは設計で守ります。
10まず何から始めるか
1週目:上長の登録と質問の型を整える
Microsoft Entra ID で上長が登録されていない社員を洗い出し、人事と更新の運用を決めます。あわせて、ベテランの担当者から職種ごとに何を聞いているかを聞き取り、質問の型の表を作ります。
2週目:5人分で試す
先月の退職者5人について、プロンプトのテスト画面で案内と督促を作らせます。当時のメールと並べ、引継ぎ先の名前を挙げていないか、日付が書き換えられていないかを最優先で見ます。
3週目:案内を送るところまでつなぐ
退職者リストのトリガーから、上長の引き当て、日付の計算、案内の作成、担当者の承認、Teams への送信までを作ります。この時点では督促を入れず、案内が正しい相手と時期に届くかを見ます。
4週目:督促と作業票をつなぐ
毎朝のフローで督促と、回答の作業票への写しを足します。作業票の操作の順番を、公式ドキュメントの注意に沿って決めます。
2か月目: 回答の期限までにそろった割合を毎週数え、督促の日の置き方を直します。3か月目以降: 退職後の問い合わせの原因を月1回見て、本人への案内と質問の型を直します。退職後の「データが見られない」という問い合わせが0件の月が続いた時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 「項目が作成または変更されたとき」のトリガーが作成時と変更のたびに動くこと。Get items/Create item/Update item があること | Microsoft Learn: SharePoint コネクタ | 2026-10-09 |
| Get manager (V2) が上長のプロフィールを返すこと、上長が未設定だと「No manager found for the specified user」が返ること、既定の項目がテナントの方針で止められていると403になり Select fields で避けられること | Microsoft Learn: Office 365 ユーザー コネクタ | 2026-10-09 |
| メッセージの約28KBの上限、フロー ボットの操作が接続あたり300秒で25回であること | Microsoft Learn: Microsoft Teams コネクタ | 2026-10-09 |
| 「プロンプトを実行する」アクションと、プロンプトの入力に前のアクションの値を渡せること、使用制限や容量の調整の対象になりうること | Microsoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する | 2026-10-09 |
| プロンプトの出力を JSON にでき、保存時に形式がロックされること。キーの無い JSON は非対応であること。「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を足す対処 | Microsoft Learn: JSON 出力 | 2026-10-09 |
| アカウントの削除で OneDrive の保持期間が始まり既定は30日であること、サインインの停止やライセンスの削除では始まらないこと、上長に自動でアクセス権が渡り通知が届くこと、上長も2番目の所有者も無ければ誰にも渡らないこと、保持ポリシーが優先されること | Microsoft Learn: OneDrive retention and deletion | 2026-10-09 |
| 共有メールボックスへの変換にライセンスが要ること、元のアカウントを削除しないこと、パスワードを変えないと元のユーザー名とパスワードで使えること、ライセンス無しでは50GBまでであること | Microsoft Learn: Convert a user mailbox to a shared mailbox | 2026-10-09 |
| 元社員の削除の段階(サインインの停止、メールボックスの保存、転送または共有メールボックスへの変更、アクセスの付与、ライセンスの削除、アカウントの削除)と、ライセンスの削除後メール等が30日保持された後に削除されること | Microsoft Learn: Remove a former employee | 2026-10-09 |
| チャットで送ったファイルが送った人の OneDrive for Business に保存されること、チャネルのファイルがチームの SharePoint に保存されること | Microsoft サポート: File storage in Microsoft Teams | 2026-10-09 |
どのデータを残し、誰に引き継ぐかは、自社の情報管理の規程と上長の判断で決まります。 本記事は Microsoft の公式ドキュメントで確認できた範囲の仕組みだけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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