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法律事務所の弁護士の Outlook の予定と送ったメールから、事件ごとの作業時間の記録(タイムチャージ)の下書きを作り、記録の漏れを拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

弁護士ごとに、その日の Outlook の予定と送ったメールを読み、どの事件で、何の作業を、何時から何時まで行ったかの記録の下書きを作ります。予定やメールはあるのに記録が無い事件を拾い、弁護士本人に確かめてもらいます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/Power Automate/Zapier
対象業界
士業
対象部門
経理
対象業務
データ入力・転記/記録・議事録作成
主な課題
人手が足りない/入力作業が多い/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
40h/月
想定削減
60%
年間削減
720h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 弁護士が、1日の終わりか週末に、Outlook の予定表を開いてその日の予定を見返す
  2. 予定ごとに、どの事件のものかを思い出し、事件番号を事件管理の一覧で調べる
  3. 送信済みのメールを見返し、時間を付けるべき作業を拾う
  4. 開始と終了の時刻から時間を計算し、作業の内容を短い文にして記録のシートに書く
  5. 月末に、経理の担当が事件ごとに記録を集め、期日や打合せがあるのに記録の無い日を探す
  6. 抜けがあれば、経理の担当が弁護士に聞き、弁護士が思い出して書き足す
  7. 経理の担当が請求書の明細を作り、担当の弁護士が確かめる
導入後(After)
  1. 自動毎日19時に、弁護士ごとのフローが動く
  2. 自動その日の Outlook の予定と、送信済みのメールを取得する
  3. 自動「個人」「事務所内」の分類の付いた予定と、終日の予定を除く
  4. 自動予定の開始と終了から時間を計算する。メールには時間を付けない
  5. 自動予定の件名・場所・出席者のドメインと、メールの件名・宛先のドメインを AI Builder のプロンプトに渡し、事件番号の候補と作業の種類を JSON で受け取る
  6. 自動下書きの行を SharePoint のリストに書き、弁護士本人へ Teams で知らせる
  7. 人弁護士が下書きを見て、事件・時間・作業の内容を直し、請求の対象にするかを決めて確定する
  8. 自動確定した行だけを、経理の時間記録のシートに書き込む
  9. 自動週に1回、期日や依頼者との予定があるのに確定した記録の無い事件を拾い、弁護士本人に知らせる
  10. 人経理の担当が、月末に確定した記録で請求書の明細を作る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 弁護士が、1日の終わりか週末に、Outlook の予定表を開いてその日の予定を見返す
  2. 予定ごとに、どの事件のものかを思い出し、事件番号を事件管理の一覧で調べる
  3. 送信済みのメールを見返し、時間を付けるべき作業を拾う
  4. 開始と終了の時刻から時間を計算し、作業の内容を短い文にして記録のシートに書く
  5. 月末に、経理の担当が事件ごとに記録を集め、期日や打合せがあるのに記録の無い日を探す
  6. 抜けがあれば、経理の担当が弁護士に聞き、弁護士が思い出して書き足す
  7. 経理の担当が請求書の明細を作り、担当の弁護士が確かめる

(a)記憶から後でまとめて書く。 1日の終わりに書けない日が続くと、金曜にまとめて5日分を思い出すことになります。 予定表を見ても、その打合せがどの事件だったかを思い出すのに時間がかかります。

(b)短い作業ほど落ちる。 依頼者への15分の電話、契約書の修正版を送るだけのメール、相手方の代理人との短いやり取りは、予定表に入っていないことが多く、記録から最も落ちやすい作業です。 1件ずつは短くても、月にすると少なくない時間になります。

(c)事件を取り違える。 同じ依頼者の事件が複数あると、どちらの事件の打合せだったかを、後から思い出せないことがあります。 取り違えたまま請求すると、依頼者からの問い合わせになります。

(d)経理の確認が月末に集中する。 抜けに気づくのは請求書を作る直前で、弁護士に聞いても、もう3週間前のことは思い出せません。

  1. 【自動】 毎日19時に、弁護士ごとのフローが動く
  2. 【自動】 その日の Outlook の予定と、送信済みのメールを取得する
  3. 【自動】 「個人」「事務所内」の分類の付いた予定と、終日の予定を除く
  4. 【自動】 予定の開始と終了から時間を計算する。メールには時間を付けない
  5. 【自動】 予定の件名・場所・出席者のドメインと、メールの件名・宛先のドメインを AI Builder のプロンプトに渡し、事件番号の候補と作業の種類を JSON で受け取る
  6. 【自動】 下書きの行を SharePoint のリストに書き、弁護士本人へ Teams で知らせる
  7. 【人】 弁護士が下書きを見て、事件・時間・作業の内容を直し、請求の対象にするかを決めて確定する
  8. 【自動】 確定した行だけを、経理の時間記録のシートに書き込む
  9. 【自動】 週に1回、期日や依頼者との予定があるのに確定した記録の無い事件を拾い、弁護士本人に知らせる
  10. 【人】 経理の担当が、月末に確定した記録で請求書の明細を作る

7番目が、この設計の分かれ目です。 下書きは下書きで、弁護士が確定するまで経理の時間記録には入りません。 請求するかどうか、何分にするかは、受任した弁護士が決めることです。

4番目でメールに時間を付けないのも、意図してのことです。 メールを書いた時間は、送信の時刻からは分かりません。AI に「このメールなら15分」と付けさせると、推測の数字が請求に乗ります。 時間は弁護士が入れます。

9番目は、経理の担当がこれまで月末に行っていた確認を、週ごとに弁護士本人へ前倒しする仕掛けです。 1週間前のことなら、まだ思い出せます。

02今回想定するシステム構成

構成図
Outlook(弁護士ごとの予定表と送信済みのメール)
   │
   ▼【トリガー】毎日19時の定時実行(弁護士ごとのフロー)
Power Automate(クラウド フロー)
   ├──▶ Get calendar view of events (V3) ── その日の予定
   ├──▶ Get emails (V3)(送信済み)── その日に送ったメール
   ├──▶ 個人・事務所内・終日の予定を除き、予定の時間を計算
   ├──▶ AI Builder のプロンプト(プロンプトを実行する)
   │       事件番号の候補/作業の種類/内容の短い文 を JSON で返す
   ├──▶ SharePoint のリスト(時間記録の下書き)に書く
   └──▶ 弁護士本人へ Teams で知らせる
   ▼
【弁護士が下書きを直して確定する】
   ▼
確定した行だけを経理の時間記録のシートへ

【毎週月曜】Power Automate(繰り返し)
   └──▶ 予定やメールがあるのに確定記録の無い事件を本人へ
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウド フロー、Office 365 Outlook コネクタ)Make、Zapier
生成AIAI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude
保管SharePoint のリスト(時間記録の下書き)Dataverse
照合事件管理の一覧(事件番号・依頼者・相手方・依頼者のドメイン)事件管理システムの書き出し
通知Microsoft Teams のチャットOutlook のメール

新しく足すのは、フローと下書きのリストだけです。 弁護士の予定の入れ方もメールの送り方も変えません。ただ1つお願いするのは、予定の件名か Outlook の分類に事件番号を入れる習慣です。 これが入っていれば、事件の候補はほぼ一意に決まります。

フローは、弁護士ごとに本人の接続で動かします。 予定とメールは本人のメールボックスにあり、経理の担当が全員の予定とメールを読める権限を持つ形にはしません。 同じフローを弁護士の人数分複製し、それぞれ本人のアカウントで Outlook に接続します。

予定の取得には「Get calendar view of events (V3)」を使います。 繰り返しの予定も1回ずつの予定として取れ、開始と終了の時刻(UTC)を指定して、その日の分だけを取得します。 返ってくる予定には、件名・開始と終了・場所・出席者・分類(Categories)・終日かどうかがあります。

送ったメールは「Get emails (V3)」で送信済みのフォルダから取ります。 返ってくるメールには、件名・宛先・送信の時刻・Conversation Id があります。

生成AIは、フローの中から AI Builder のプロンプトを呼びます。 AI Builder は Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があるとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎日19時に、弁護士ごとのフローを定時で動かします。 その日の予定とメールがそろった時刻で、本人がまだ事務所にいるか、帰る前に一度だけ下書きを見られる時刻を選びます。朝にすると、前日のことを思い出す時間が要ります。

予定が入るたびに動かす形にはしません。 予定は後から変わります。打合せが延びた、電話が流れた、という変更が入った後の、その日の確かな予定で下書きを作るほうが、直す手間が少なくなります。

記録の漏れの確認は、別のフローで毎週月曜の朝に動かします。前の週の予定と確定した記録を比べ、1週間前のことを思い出せるうちに本人へ知らせます。 月末にまとめて確認する形に戻さないことが、この構成の要です。

土日と休日には動かしません。休日に入った期日や打合せは、月曜の確認で拾います。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
その日の予定件名、開始・終了、場所、出席者、分類、終日かOutlook の予定表
その日に送ったメール件名、宛先、送信の時刻、Conversation IdOutlook の送信済み
事件管理の一覧事件番号、事件名、依頼者、相手方、依頼者のメールのドメイン、時間制かどうか事件管理の一覧
除外の決まり「個人」「事務所内」などの分類、事務所内のドメイン事務所で決める表
確定した記録弁護士が確定した行時間記録の下書きのリスト

事件管理の一覧には、事件ごとの担当の弁護士も持たせます。 担当でない弁護士の下書きに事件の候補が出たときに、応援で入った事件なのか、取り違えなのかを見分ける手がかりになります。

質を決めるのは、3つ目の事件管理の一覧です。 依頼者のメールのドメインが一覧にあれば、出席者や宛先から依頼者を当てられます。ドメインの列が空の事件は、件名に事件番号が書かれていない限り、候補が出ません。

「時間制かどうか」の列も必ず持たせます。 着手金と報酬金で受任した事件の作業は、請求の明細には使いません。下書きは作りますが、「時間制でない事件」と印を付けて、経理の時間記録には送りません。 事件ごとにかかった時間を事務所の中で知る材料としては残します。

メールの本文は入力にしません。 本文には依頼者の秘密が書かれています。事件を当てるのに要るのは件名と相手で、本文は要りません。

Step3

データの取得方法を決める

予定は「Get calendar view of events (V3)」で、開始と終了の時刻にその日の0時から24時(日本時間を UTC に直した値)を入れて取ります。繰り返しの予定も、その日の1回分として返ってきます。

取るものどこから何に使うか
予定の件名・場所予定の出力事件の候補と作業の種類
開始・終了予定の出力時間の計算(フローの式で行う)
出席者予定の出力依頼者・相手方の代理人のドメイン
分類予定の出力個人・事務所内の予定の除外、事件番号の分類
メールの件名・宛先・送信の時刻Get emails (V3) の出力事件の候補と、予定に無い作業の拾い出し
事件管理の一覧SharePoint のリストまたはスプレッドシート事件番号の照合

送信済みのメールは、その日の送信分だけを取ります。 Get emails (V3) の宛先や件名の絞り込みはフォルダの最初の250通に対して行われるとされているので、絞り込みに頼らず、Search Query(Outlook の検索と同じ書き方)でその日の送信を探します。

同じ Conversation Id のメールは1行にまとめます。 同じ相手と1日に5往復したやり取りを5行にすると、弁護士が5回直すことになります。まとめた行には、送った通数と最初と最後の送信の時刻を付けます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 除外する … 分類が「個人」「事務所内」の予定、終日の予定、辞退した予定を除きます
  2. 時間を計算する … 予定の開始と終了から分を計算します。この計算はフローの式で行い、AI には渡しません
  3. 事件番号を先に探す … 件名や分類に事件番号の形の文字列があれば、それを事件管理の一覧と照らします。一覧にあれば、プロンプトを使わずに事件を決めます
  4. ドメインを取り出す … 出席者と宛先のアドレスからドメインだけを取り出し、事務所内のドメインを除きます
  5. 候補を絞る … ドメインが事件管理の一覧の依頼者・相手方の代理人に当たる事件を、候補としてプロンプトに渡します
  6. メールをまとめる … 同じ Conversation Id のメールを1行にまとめます

3番目を必ず先に置いてください。 件名に事件番号がある予定は、AI に判断させる必要がありません。事件番号を書く習慣が広がるほど、プロンプトを呼ぶ回数が減り、取り違えも減ります。

5番目で候補を絞ってから渡すのは、事件管理の一覧の全体を AI に渡さないためです。 一覧には事務所の全ての依頼者と相手方の名前があります。その日の予定に関係する数件の事件だけを渡します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、1件ごとに事件番号の候補と作業の種類を選び、作業の内容を短い文にすることだけです。 時間と、請求するかどうかは扱いません。

取り出すもの決め方決められないときの扱い
事件番号渡した候補の中から選ぶ候補が複数なら multiple、無ければ none
作業の種類打合せ/期日/電話・Web会議/書面の作成・修正/調査/メール対応/その他other
作業の内容件名から、請求の明細に載せられる短い文(40字以内)件名をそのまま使う
根拠選んだ理由(件名の語、ドメイン)―

作業の内容の文は、依頼者に届く請求の明細に載ることを前提にします。 件名に「(相手方の不誠実な対応について)」のような事務所の中だけの書き方があっても、明細には「相手方代理人との協議」のように、事実だけを書いた文にします。

させないこと理由
時間の長さを決める請求の金額に直結する。予定はフローが計算し、メールは弁護士が入れる
候補に無い事件番号を作る別の依頼者に請求が行く
請求するかどうかを決める受任した弁護士の判断
本文から内容を書く本文を渡していない。秘密を広げない

2行目が、この構成で最も守るべきことです。 「A社 打合せ」という件名で、候補にA社の事件が2つあるとき、それらしい方を選ばせず multiple で弁護士に戻します。

作業の種類を7つに限っているのは、経理の側で事件ごとに集計するためです。 種類を自由に書かせると「協議」「打ち合わせ」「MTG」が別々に数えられ、事件のどの段階に時間がかかっているかを後から見られなくなります。 期日(hearing)を打合せと分けているのは、期日の前後に準備の時間が付いているかを、毎週の漏れの確認で見るためです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは法律事務所で、弁護士の1日の予定と送ったメールから、作業時間の記録の
下書きを作る係です。記録を確定するのは弁護士です。

【入力】
- 予定またはメールの件名、場所、相手のドメイン、種類(予定/メール)
- この作業に関係しうる事件の候補(事件番号、事件名、依頼者、相手方)

【するべきこと】
1. matter_no には、候補の事件番号の中から1つだけを選んでください。
2. activity_type を次から1つ選んでください。
   meeting(打合せ)/hearing(期日)/call(電話・Web会議)/
   drafting(書面の作成・修正)/research(調査)/email(メール対応)/other
3. narrative に、請求の明細に載せる作業の内容を40字以内の日本語で書いてください。
4. reason に、事件を選んだ根拠(件名のどの語か、どのドメインか)を書いてください。

【厳守事項】
- 候補に無い事件番号を書かないでください。番号を推測で作らないでください。
- 候補の中で2つ以上に当てはまりうるときは、matter_no を "multiple" にし、
  当てはまりうる番号を candidates に並べてください。それらしい方を選ばないでください。
- どの候補にも当てはまらないときは、matter_no を "none" にしてください。
- 作業の時間を書かないでください。時間の推測もしないでください。
- 請求するべきかどうかを書かないでください。
- narrative には、件名にある評価や感想の言葉(不誠実、問題、至急など)を入れず、
  行った作業だけを書いてください。依頼者が読む明細に載ります。
- narrative に、依頼者以外の個人の氏名を書かないでください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。

【件名】{subject}
【場所】{location}
【相手のドメイン】{domains}
【種類】{source_type}
【事件の候補】{candidates}

「それらしい方を選ばない」を書かないと、ほぼ必ずどちらかを選びます。 件名にA社とあれば、A社の事件のうち新しいほうか、件名に近い語のあるほうを選びます。選ばれた事件が違っていると、弁護士は確定のときに気づかないことがあり、そのまま請求に乗ります。

「時間を書かない」を独立した行にしているのは、メールの行のためです。 予定の行は開始と終了があるので時間を推測しませんが、メールの行では「メール対応 0.2時間」のように、もっともらしい長さを書き足すことがあります。

narrative の評価の言葉を禁じるのは、明細が依頼者に届くからです。 弁護士が自分用に付けた件名の言葉が、そのまま明細に出ることを防ぎます。

Step7

出力形式を固定する

1件ごとに、次の形の JSON で受け取ります。

{
  "matter_no": "2026-0153 | multiple | none",
  "candidates": ["", ""],
  "activity_type": "meeting | hearing | call | drafting | research | email | other",
  "narrative": "",
  "reason": ""
}

1つ目の理由は、matter_no の3つの状態で、弁護士の見る順番を決められることです。 番号が決まった行は流し見て確定し、multiple と none の行だけを開いて直します。

2つ目は、形式を固定できることです。 プロンプトの出力を JSON にし、JSON の例を書き換えると形式が「カスタム」になり、プロンプトをもう一度テストしても形式が変わりません。 保存した形式がフローで使われるので、下書きのリストの列にそのまま入れられます。

3つ目は、reason で確定が速くなることです。 「件名の『定時株主総会』」「宛先のドメインが依頼者の一覧に一致」と書かれていれば、弁護士は予定を開かずに確かめられます。

下書きのリストの1行は、次の列を持ちます。

列中身誰が入れるか
日付・開始・終了予定の時刻。メールは最初と最後の送信の時刻フロー
時間(分)予定は計算した値。メールは空欄フロー/弁護士
事件番号・候補JSON の matter_no と candidatesプロンプト/弁護士
作業の種類・内容JSON の activity_type と narrativeプロンプト/弁護士
時間制かどうか事件管理の一覧からフロー
請求の対象対象/対象外弁護士
状態下書き/確定弁護士
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Outlook の予定表「Get calendar view of events (V3)」その日の予定
Outlook の送信済み「Get emails (V3)」その日に送ったメール
AI Builder のプロンプト「プロンプトを実行する」事件の候補・作業の種類・内容
SharePoint のリスト項目の作成・更新時間記録の下書き
Microsoft Teams本人へのチャット下書きができたことと、確定していない件数
経理の時間記録のシート行の追加確定した行だけ

経理の時間記録には、確定した行だけを書き込みます。 下書きの段階の行が経理の側に見えると、弁護士が直す前の事件番号や時間で請求の準備が始まってしまいます。

Outlook には書き込みません。 予定に分類を付け直す、メールを移すといった操作はしません。弁護士のメールボックスは、読むだけです。

Step9

人が確認する

弁護士が見るのは、本人の下書きだけです。 1日5件前後なので、帰る前に数分で終わる量です。

  1. multiple と none の行を先に直す … 候補から事件を選ぶか、事件管理の一覧から選び直します
  2. メールの行に時間を入れる … 書いた時間を自分で入れます。請求しないなら「対象外」にします
  3. 予定の時間を確かめる … 打合せが延びた、早く終わった、を直します
  4. 内容の文を確かめる … 明細に載せてよい書き方かを見ます
  5. 確定する … 確定した行だけが経理に送られます

2番目を省かないでください。 メールの行を時間の空欄のまま確定すると、経理の側で0分の行になります。空欄のまま確定できないよう、リストの入力の決まりで止めます。

予定やメールに出てこない作業は、下書きに並びません。 事務所で1人で書面を書いていた時間、記録を読み込んでいた時間は、予定にもメールにも残らないことが多くあります。下書きのリストには、弁護士が自分で行を足せる欄を設けておきます。 下書きに無いことが、作業が無かったことを意味しない点は、最初に弁護士に伝えておきます。

経理の担当は、確定した記録だけを見ます。 毎週月曜の漏れの知らせは本人に直接届くので、経理が弁護士に聞いて回る場面は、月末の最後の確認だけになります。

目標は、1件あたり2分です。 事件番号が決まっている行は確かめて確定するだけで、multiple と none、メールの時間の入力に時間を使います。

Step10

例外に対処する

起きること対応
件名から事件が決まらないnone で下書きに出し、弁護士が一覧から選ぶ
同じ依頼者の事件が複数multiple と候補を出す。選ばせない
予定が流れたのに残っている弁護士が下書きを削除する。辞退した予定は前処理で除く
移動の時間が予定に入っている移動を請求するかは事件ごとの契約による。弁護士が対象・対象外を決める
新しい事件で一覧に未登録none になる。事件管理の一覧への登録を先に済ませる
プロンプトが JSON を返さない事件番号を空欄にして下書きに出す
フローの接続が切れる本人の Outlook の接続を作り直す。その日の分は翌日に前日分として取り直す
休暇中で下書きが溜まる確定していない行の件数を週の知らせに含める

上から2行が大半を占めます。 どちらも、予定の件名に事件番号が無いことから起きます。件名に事件番号を入れる習慣が広がるほど、この2行は減ります。 減り方を月ごとに数えると、習慣がどこまで根付いたかが分かります。

Step11

記録を残す

  • 下書きの行(予定・メールのどれから作ったか、プロンプトの JSON)
  • 弁護士が直した内容(事件番号・時間・内容のどれを、どう変えたか)
  • 確定した日時と、経理の時間記録に書き込んだ日時
  • 毎週の漏れの知らせと、その後に確定した記録
  • multiple と none の件数(弁護士ごと・月ごと)

2つ目の「直した内容」が最も大事です。 事件番号を直した行が多い依頼者は、事件管理の一覧のドメインか、事件名の書き方に原因があります。

下書きの行は、請求書を出した後も一定の期間残します。 依頼者から明細について問い合わせがあったときに、どの予定・どのメールから作った記録かを示せるようにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:予定とメールの件名を手でAIの画面に貼り、事件と作業の種類を出させる / 事件の当て方の確認
半自動化:上記+弁護士ごとのフローで毎日下書きを作り、確定した行を経理に送り、毎週の漏れを知らせる / 下書きの作成と漏れの確認
本格構成:上記+事件管理システムと請求のシステムに直接つなぎ、Teams の会議や通話の記録も材料に足す / 記録から請求の明細まで

この記事の想定は半自動化です。 1件5分が2分になるのはこの段階で、思い出す時間と、月末の聞き取りがほぼ無くなります。 本格構成は、半自動化を数か月回してから考えます。 Teams の通話の記録を足すと短い電話も拾えますが、扱う情報が広がる分、事務所の中で取り扱いの決まりを作り直す必要があります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、事件管理の一覧に足りないドメインと、件名に事件番号を入れない弁護士が先に分かります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
1,200 件
1件あたり現在時間
5 分
1件あたり導入後時間
2 分
現在  1,200件 × 5分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 1,200件 × 2分 ÷ 60 = 40 時間/月
月間削減時間
60h
削減率
60%
年間削減時間
720h
年間金額換算(時間単価6,000円)
432万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 企業法務を中心に、依頼者との委任契約で時間制の報酬(タイムチャージ)を取り決めている事件が多い法律事務所。弁護士が1日の終わりや週末に、記憶と予定表を頼りに作業時間をまとめて記録しており、月末に経理の担当が記録の抜けを弁護士に聞いて回っている場合。Microsoft 365 の Outlook で予定とメールを管理し、事件番号の一覧を持っている場合。
向いていない
  1. 着手金と報酬金の事件がほとんどで、時間で請求する事件が少ない事務所。弁護士が予定を Outlook に入れておらず、紙の手帳や別の予定表で管理している場合。予定の件名に事件を見分けられる手がかり(事件番号・依頼者名)を書く習慣が無く、付ける気も無い場合。なお、どの時間を請求の対象にするか、どれだけ減額するかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 協力してくれる弁護士2名を選び、先週1週間の予定と送信済みのメールを書き出してもらう
  2. 同じ週に、その2名が実際に付けた作業時間の記録を用意する
  3. 予定とメールの件名・相手のドメインと、関係しうる事件の候補を、手元のAIサービスの画面に貼り付ける
  4. 第7章のプロンプトの指示を貼り、事件番号と作業の種類と内容を出させる
  5. 出てきたものと、実際の記録を突き合わせる

ここでは、フローを作る前に「件名と相手から事件が決まるか」を確かめます。

出てきた内容判断
実際の記録とほぼ同じ事件が選ばれたフローを組む段階に進む
multiple が多い件名に事件番号を入れる習慣を先に広げる。構成は有効
実際の記録に無い作業が予定とメールから出てきた(b)の落ちが確かめられた。 構成の価値がある

3行目が出ることは珍しくありません。 依頼者への短い電話や、修正版を送るだけのメールが、実際の記録から落ちていたことが目に見える形になります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
同じ依頼者の事件を取り違える候補から選ばせず multiple で戻す
候補に無い事件番号が出る候補の中からだけ選ぶよう指示し、フローでも一覧と照らす
メールの行に推測の時間が入る時間を書かせない。メールは空欄で出す
個人の予定が下書きに出る「個人」の分類を付ける決まりを作り、前処理で除く
件名の評価の言葉が明細に出る内容の文に評価の言葉を入れないよう指示する
経理が全員の予定を読める形にしてしまう弁護士ごとに本人の接続で動かす
送信済みが多くて取りこぼす絞り込みでなく Search Query でその日の送信を探す
確定しないまま月末になる毎週の知らせに、確定していない行の件数を含める
時間制でない事件の記録が請求に回る一覧の「時間制かどうか」で経理に送る行を分ける
本文を渡して事件を当てようとする件名と相手で足りる。 秘密を広げない

上の3行が、請求の誤りに直結します。 どれも「それらしい値で埋める」ことから起きます。埋めずに空欄や multiple で人に戻す設計が、この構成の中心です。

下から5行目は、作り始めに起きやすい間違いです。 経理の担当1人のアカウントで全員分を回すほうが作るのは楽ですが、弁護士全員のメールを読める権限が1か所に集まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 弁護士の予定とメールの件名・相手、依頼者と相手方の名前、事件番号、作業の内容です。どれも依頼者の秘密に関わる情報で、守秘の義務の対象です。

  1. メールの本文を渡さない … 事件を当てるのに要るのは件名と相手のドメインだけです。本文と添付はプロンプトにも下書きにも入れません
  2. 事件管理の一覧の全体を渡さない … その日の予定に関係する候補の数件だけを渡します
  3. 本人の接続で動かす … 弁護士ごとにフローを分け、誰かが全員の予定とメールを読める形にしません
  4. データを処理する地域を確かめる … AI Builder のプロンプトは一部の地域に限定された機能です。事務所の環境で、どの地域で処理されるかを管理者と確かめてから使います
  5. 請求の判断を自動にしない … 弁護士の報酬は、経済的利益・事案の難易・時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当でなければならないとされています。記録された時間をそのまま請求額にせず、請求の対象にするかを弁護士が決めます
  6. 委任契約書の取り決めに合わせる … 委任契約書には報酬の種類・金額・算定方法・支払時期を書くこととされています。時間制の単位や、移動の時間を含めるかは契約ごとに違うため、下書きの側で決めつけません

誤りが起きた場合のリスクは、別の依頼者の事件に時間が付いて請求されることと、依頼者の秘密が明細や通知に出ることの2つです。 前者は multiple で人に戻すことで、後者は本文を渡さないことと内容の文の決まりで守ります。

10まず何から始めるか

1週目:事件管理の一覧に2つの列を足す

事件管理の一覧に、依頼者のメールのドメインと、時間制かどうかの列を足します。全ての事件を一度に埋める必要はありません。時間制で受任している進行中の事件から埋めます。

2週目:2名で試す

協力してくれる弁護士2名の先週の予定とメールで、手元のAIサービスに事件と作業の種類を出させ、実際の記録と比べます。取り違えが起きていないかを最優先で見ます。

3週目:件名と分類の決まりを作る

予定の件名に事件番号を入れること、個人の予定に「個人」の分類を付けることを、弁護士全員にお願いします。 あわせて、内容の文の書き方の例を経理と決めます。

4週目:2名のフローを動かす

2名分のフローを本人の接続で作り、毎日の下書きと確定までを回します。この時点では経理の時間記録に送らず、確定した行を従来の記録と並べて比べます。

2か月目: 経理の時間記録への書き込みと、毎週の漏れの知らせを足し、全員に広げます。3か月目以降: 直した内容の記録から指示と一覧を見直し、1件5分が何分になったかを実測します。月末に経理が弁護士に抜けを聞いて回る場面が無くなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
「Get calendar view of events (V3)」が繰り返しの予定も含めて予定を取得し、開始と終了の時刻を UTC で指定すること。予定の出力に件名・開始と終了・場所・出席者・分類(Categories)・終日かどうかがあること。「Get emails (V3)」の絞り込みがフォルダの最初の250通に対して行われ、Search Query でフォルダ全体を探せること。メールの出力に Conversation Id があることMicrosoft Learn: Office 365 Outlook connector2026-10-07
「プロンプトを実行する」アクションでプロンプトを選び、前のアクションの内容を入力に渡せること。AI Builder が Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があることMicrosoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する2026-10-07
プロンプトの出力を JSON にでき、JSON の例を更新すると形式が「カスタム」になってテストしても更新されないこと。保存した形式がクラウド フローで使われること。JSON の生成に失敗するときは「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を指示に足すことMicrosoft Learn: JSON 出力2026-10-07
弁護士等の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当でなければならないこと(第2条)。委任契約書に報酬の種類・金額・算定方法・支払時期などを記載すること(第5条第4項)日本弁護士連合会: 弁護士の報酬に関する規程2026-10-07

時間制の単位や請求の対象の範囲は、依頼者との委任契約と事務所の報酬基準で決めてください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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