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特許庁の特許情報取得APIで自社と競合の出願の経過をエージェントが毎週見回り、審査請求・拒絶理由・登録など動きのあった案件を知財担当の確認一覧にする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

見張っている自社と競合の特許出願の経過を、特許庁の特許情報取得APIで毎週取り直します。前回から書類が増えた案件だけをエージェントに渡し、要る情報を取りに行かせて、知財担当が確かめる一覧にします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
IT・SaaS/商社/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
情報検索/要約
主な課題
人手が足りない/情報が見つからない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
エージェント
主な効果
判断支援/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
75%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 案件台帳から、その週に見る案件の出願番号を担当ごとに書き出す
  2. J-PlatPat で出願番号を入れ、経過情報の画面を開く
  3. 書類の一覧を、台帳に書いた前回の最終書類と見比べる
  4. 新しい書類があれば、その中身(拒絶理由通知書、査定、補正書など)を開いて読む
  5. 競合の案件で登録や分割出願があれば、開発部門の担当に知らせる
  6. 台帳の「最終確認日」と「最終書類」を書き換え、週報に変化を書く
導入後(After)
  1. 自動毎週月曜の朝、ワークフローがウォッチリストの300件を読む
  2. 自動1件ずつシンプル版特許経過情報取得APIを呼び、書類の一覧を取る
  3. 自動前回の書類一覧と書類番号で比べ、増えた書類のある案件だけを残す
  4. 【AI】 エージェントが、増えた書類の種類と案件の区分(自社/競合)を見て、拒絶理由通知書・発送書類・登録情報・引用文献・分割出願のどれを取りに行くかを決め、取ってきた中身を要点にまとめる
  5. 自動要点と、規則で決めた優先度を確認一覧に書き、優先度の高いものを知財の責任者へ知らせる
  6. 人知財担当が、優先度の高いものから中身を確かめ、事業部・開発・特許事務所への連絡を決める
  7. 人分割出願の子の出願をウォッチリストに足すかを決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 案件台帳から、その週に見る案件の出願番号を担当ごとに書き出す
  2. J-PlatPat で出願番号を入れ、経過情報の画面を開く
  3. 書類の一覧を、台帳に書いた前回の最終書類と見比べる
  4. 新しい書類があれば、その中身(拒絶理由通知書、査定、補正書など)を開いて読む
  5. 競合の案件で登録や分割出願があれば、開発部門の担当に知らせる
  6. 台帳の「最終確認日」と「最終書類」を書き換え、週報に変化を書く

(a)変化の無い案件を開く時間がほとんど。 300件のうち1週間で書類が増えるのは1割に満たず、残りは開いて「変わっていない」と確かめるだけです。 それでも開かないと、変わったかどうかが分かりません。

(b)競合の登録や分割に気づくのが遅れる。 月曜の作業が終わらない週は、競合の分から後回しにします。後回しの案件が登録になっていたことに、開発部門の設計審査の場で気づくことがあります。分割出願で新しい出願番号が生まれると、台帳に無いので誰も見ません。

(c)中身を読み直す手間が重い。 拒絶理由通知書が出たと分かっても、どの条文で、どの文献を引かれたかは、本文を開いて読まないと分かりません。週報に1行で書けるところまで要点をまとめる作業が、担当者ごとにばらばらです。

  1. 【自動】 毎週月曜の朝、ワークフローがウォッチリストの300件を読む
  2. 【自動】 1件ずつシンプル版特許経過情報取得APIを呼び、書類の一覧を取る
  3. 【自動】 前回の書類一覧と書類番号で比べ、増えた書類のある案件だけを残す
  4. 【AI】 エージェントが、増えた書類の種類と案件の区分(自社/競合)を見て、拒絶理由通知書・発送書類・登録情報・引用文献・分割出願のどれを取りに行くかを決め、取ってきた中身を要点にまとめる
  5. 【自動】 要点と、規則で決めた優先度を確認一覧に書き、優先度の高いものを知財の責任者へ知らせる
  6. 【人】 知財担当が、優先度の高いものから中身を確かめ、事業部・開発・特許事務所への連絡を決める
  7. 【人】 分割出願の子の出願をウォッチリストに足すかを決める

3番目をAIにさせないのは、意図してのことです。 前回から書類が増えたかどうかは、書類番号の集合の差で一意に決まります。 AIに見比べさせると、増えていない案件を増えたと言う誤りが入ります。

エージェントが動くのは、増えた書類のある週に20〜30件ほどです。

02今回想定するシステム構成

構成図
ウォッチリスト(スプレッドシート:出願番号・自社/競合・関係する製品・担当)
   │
   ▼【トリガー】Schedule Trigger(毎週月曜 7時、Asia/Tokyo)
n8n のワークフロー
   ├──▶ アクセストークンを取得(/auth/token)
   ├──▶ HTTP Request で シンプル版特許経過情報取得API を300件
   ├──▶ 前回の書類一覧と書類番号で比較(規則)
   ├──▶ 書類の増えた案件だけを次へ
   ▼
AI Agent(Tools Agent)+ Anthropic Chat Model(Claude)
   │  使える道具(Call n8n Workflow Tool で呼ぶサブワークフロー)
   │   ・拒絶理由通知書の本文を取る(ZIPを解凍し文字コードを変換)
   │   ・発送書類(査定・却下の決定)の本文を取る
   │   ・登録情報を取る
   │   ・引用文献情報を取る
   │   ・分割出願情報を取る
   │  Structured Output Parser で決まった形のJSONを返す
   ▼
確認一覧(スプレッドシート)に書く → 優先度の高いものを知財の責任者へ通知
   ▼【人】中身の確認、事業部・開発・特許事務所への連絡
役割想定する製品代替候補
ワークフローn8nMake、Power Automate、Zapier
生成AIClaude API(n8n の Anthropic Chat Model ノード)OpenAI API、Gemini API
保管Google スプレッドシート(ウォッチリスト、書類一覧の前回分、確認一覧)データベース
通知社内チャットメール

新しく足すのは、n8n のワークフローと、書類一覧の前回分を持つシートと、確認一覧のシートです。 案件台帳には書き込みません。

土台になるのは、特許庁の特許情報取得APIです。 J-PlatPat と特許情報標準データで提供している特許・意匠・商標の出願情報の一部(実用新案を除く)を取得できる仕組みで、令和4年1月から提供され、いまも試行段階とされています。使うには利用登録が要り、利用申込書を特許庁の担当部署へ電子メールで送ります。 本記事の確認時点(2026年10月)で、国内特許情報取得APIの申込みは受け付けられています。一方、外国の出願を引くOPD-APIは令和6年8月9日で新規の申込みを終えています。

n8n を選ぶ理由は、決まった手順とエージェントに任せる部分が1つの画面に並ぶからです。 道具をサブワークフローに切り出せば、ZIPの解凍や文字コードの変換をAIに考えさせずに済みます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎週月曜の朝7時に、Schedule Trigger で動かします。 週の始まりに前週分の動きがそろい、知財部の朝の打合せに間に合います。Schedule Trigger は週ごとの間隔と曜日・時・分を指定でき、ワークフローのタイムゾーンが無ければインスタンスのタイムゾーンを使い、セルフホストの既定は America/New_York とされています。ワークフローのタイムゾーンを Asia/Tokyo にします。 保存して公開しないと動きません。

APIのデータは日次で更新され、通常、受付・発送などの手続が行われた日の翌日に取得できるとされています。月曜の朝に取れば、前週の金曜までの手続が入っています。

アクセス数は ID 単位で午前0時から数え、翌日の午前0時にリセットされます。 朝に始めれば、失敗した分をその日のうちに取り直す余裕が残ります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
ウォッチリスト出願番号(10桁)、自社/競合、関係する製品・開発テーマ、担当、見張りを始めた日スプレッドシート
経過情報発明の名称、出願人・代理人、出願日、公開番号、登録番号と登録日、抹消識別、書類の一覧(日付・書類名・書類番号・書類実体の有無)シンプル版特許経過情報取得API
前回の書類一覧案件ごとに、前回取得した書類番号の集合と取得日スプレッドシート
追加で取る情報拒絶理由通知書・発送書類の本文、登録情報、引用文献情報、分割出願情報エージェントが道具で取る

質を決めるのは、ウォッチリストの「関係する製品・開発テーマ」の列です。 競合の案件が登録になったとき、誰に知らせるかはこの列で決まります。空のままだと、確認一覧に出ても行き先がありません。

ウォッチリストの出願番号は人が足します。 API一覧にある国内特許情報取得APIは、いずれも出願番号や申請人コードなどを指定して1件の情報を引くもので、出願人を指定して出願の一覧を引くものは一覧にありません。 競合の新しい公開を探すのは、これまでどおり J-PlatPat の検索で行い、見張る番号だけをリストに足します。

Step3

データの取得方法を決める

最初にアクセストークンを取ります。 利用登録の完了後に、特許庁から ID・パスワードと、アクセストークン取得用の URL が電子メールで通知されます。その URL に POST で grant_type=password と ID・パスワードを送ると、access_token と refresh_token が返ります。アクセストークンの有効期限は取得後1時間で、8時間以内ならリフレッシュトークンで取り直せます。

取るものリクエスト上限(/日)使い方
シンプル版特許経過情報GET https://ip-data.jpo.go.jp/api/patent/v1/app_progress_simple/{出願番号}800300件すべて。書類の一覧を取る
特許拒絶理由通知書…/patent/v1/app_doc_cont_refusal_reason/{出願番号}200エージェントが選んだときだけ
特許発送書類…/patent/v1/app_doc_cont_refusal_reason_decision/{出願番号}200同上(特許査定・拒絶査定・補正の却下の決定)
特許登録情報…/patent/v1/registration_info/{出願番号}400同上
特許引用文献情報…/patent/v1/cite_doc_info/{出願番号}100同上
特許分割出願情報…/patent/v1/divisional_app_info/{出願番号}60同上

リクエストのヘッダに Authorization: Bearer とアクセストークンを付けます。 出願番号は「西暦4桁+0埋め6桁」の10桁です。

シンプル版は、特許経過情報から優先権情報と分割情報を除いた簡易版です。 書類の一覧は bibliographyInformation の下の documentList に並び、1件ごとに受付日・発送日(legalDate)、書類名(documentDescription)、書類番号(documentNumber)、書類実体の有無(availabilityFlag)が入ります。前回との比較には書類番号を使います。 書類名で比べると、同じ名前の書類が2通目に出たときに見落とします。

応答の statusCode を必ず見ます。 100 が正常、107 は該当データなし、203 はアクセス上限超過、208 は使えない文字、999 は想定外のエラーです。HTTP の状態が 200 でも、statusCode が 100 でなければデータは空です。 応答には残りのアクセス数(remainAccessCount)も付くので、毎回記録します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 出願番号の形をそろえる … 「特願2024-012345」のような表記を、10桁の数字に直します。桁が合わないものは取得せず、リストの不備として一覧に出します
  2. 対象の範囲を確かめる … 取得できるのは2003年7月以降の特許出願です。それより前の出願はリストで印を付けて外します
  3. 前回の書類一覧と比べる … 今回の書類番号の集合から前回の集合を引き、増えた書類だけを残します
  4. 書類実体の有無を付ける … availabilityFlag が 0 の書類は本文が取れません。エージェントが取りに行かないよう、増えた書類ごとに有無を添えます
  5. 案件の区分を添える … 自社/競合、関係する製品、担当をウォッチリストから付けます
  6. 残りのアクセス数を見る … 300件の取得の後の remainAccessCount を見て、追加の取得に回せる数を決めます

3番目で、変化の無い案件はここで落ち、確認一覧にも件数しか出ません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、増えた書類のある案件1件ごとに、次に取る情報を選んで取りに行き、取ってきた中身を決まった項目に要点としてまとめることです。

増えた書類の例エージェントが取りに行くものまとめる要点
拒絶理由通知書拒絶理由通知書の本文、引用文献情報根拠の条文、引用文献の番号と数、対象の請求項
特許査定・拒絶査定発送書類の本文、登録情報(査定の後)査定の種類、登録番号、登録日、請求項の数
分割に関する手続分割出願情報子の出願の番号、ウォッチリストへの追加の提案
出願審査請求書追加の取得なし審査請求があった事実と日付
手続補正書・意見書追加の取得なし(本文は取らない)応答があった事実と日付
上の表に無い書類判断を人に回す書類名と日付だけ

優先度は、エージェントにではなく規則に決めさせます。 競合の登録・分割は A、自社の拒絶理由・査定と競合の拒絶理由は B、それ以外は C、のように表で決め、エージェントの出力の event_type と案件の区分からワークフローが付けます。

させないこと理由
変化があったかを決める書類番号の差で規則が決める
応答の期限を計算する期限の管理は事務所と案件台帳の仕事。発送日だけを書く
拒絶理由を覆せるかを書く応答方針は弁理士と担当者が決める
競合の特許に触れるかを判断する侵害の判断は人が請求項を読んで行う
本文に無い引用文献や条文を補う取ってきた本文と応答だけを根拠にする
ウォッチリストを書き換える分割の子を足すかは人が決める

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 拒絶理由通知書の発送日を渡すと、生成AIは応答の期限を計算して書きます。期限は在外者かどうか、延長の請求の有無で変わり、一覧に書かれた日付を担当者がそのまま信じる危険があります。 ここでは発送日だけを書かせ、期限は事務所の報告と案件台帳で見ます。

Step6

指示内容を固定する

AI Agent ノードの System Message に、次のように書きます。

あなたは知財部で、見張っている特許出願の経過の変化を調べる担当です。
入力は、1件の出願について、前回から増えた書類の一覧と案件の区分です。

【使える道具】
- get_refusal_reason ..... 拒絶理由通知書の本文(テキスト)を返す
- get_dispatch_document .. 特許査定・拒絶査定・補正の却下の決定の本文を返す
- get_registration_info .. 登録番号・登録日・請求項の数・権利者を返す
- get_cited_documents .... 引用文献の番号と種別を返す
- get_divisional_apps .... 分割出願の番号と状態を返す

【手順】
1. 増えた書類の書類名を見て、必要な道具だけを選んでください。
2. 書類実体が「なし」の書類の本文は取りに行かないでください。
3. 出願審査請求書・手続補正書・意見書は、事実と日付だけを書き、
   道具を使わないでください。
4. 1件あたり道具の呼び出しは4回までにしてください。

【厳守事項】
- 要点は、道具が返した本文と応答だけを根拠に書いてください。
  本文に無い条文・引用文献・請求項の番号を補わないでください。
- 応答の期限を計算しないでください。発送日だけを書いてください。
- 拒絶理由を解消できるか、競合の特許に自社製品が触れるかを
  書かないでください。
- 道具がエラーを返したときは、取得できなかったことを
  fetch_errors に書き、推測で埋めないでください。
- 表に無い書類は event_type を other とし、書類名と日付だけを書いて
  ください。

【案件】{case}
【増えた書類】{new_documents}

「本文に無いものを補わない」を明記しないと、条文を知識で書き足します。 拒絶理由通知書に「29条2項」とあれば、生成AIは「進歩性の欠如」と説明を添え、さらに「36条の記載不備もよく併せて指摘される」と本文に無い条文まで並べることがあります。 確認一覧に載る条文は、本文から写したものだけにします。

「呼び出しは4回まで」は、道具を呼び続ける動きを止めるためです。 Max Iterations(既定10)も小さくします。

Step7

出力形式を固定する

Structured Output Parser で、次の形のJSONを返させます。

{
  "application_number": "",
  "side": "own | competitor",
  "event_type": "refusal_reason | decision_grant | decision_refusal | registration | divisional | exam_request | response | other",
  "event_date": "",
  "tools_used": [""],
  "summary": "",
  "refusal_articles": [""],
  "cited_documents": [""],
  "registration": { "number": "", "date": "", "claims": "" },
  "divisional_children": [""],
  "fetch_errors": [""]
}

1つ目の理由は、event_type で優先度と知らせ先を規則で決められることです。 エージェントの言葉の書き方が揺れても、ワークフローは event_type と side だけを見て次の表のとおり振り分けます。

sideevent_type優先度と知らせ方
competitorregistration / decision_grant / divisionalA。 その日のうちに知財の責任者と、関係する製品の開発担当へ
ownrefusal_reason / decision_refusalB。事務所の報告が届いているかを担当が確かめる
competitorrefusal_reason / decision_refusalB。週内に担当が確かめる
問わないexam_request / response / otherC。確認一覧に載せるだけ

2つ目は、tools_used と fetch_errors で、何を根拠に書いたかが分かることです。 本文を取れずに書類名だけで書いた要点と、本文を読んで書いた要点を、担当者が見分けられます。

3つ目は、divisional_children を別の列に出し、人が足すと決めたものだけをリストに入れられることです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
特許情報取得API(認証)HTTP Request(POST)アクセストークンとリフレッシュトークンを取る
特許情報取得API(各API)HTTP Request(GET)、サブワークフロー経過情報と、エージェントが選んだ追加の情報
エージェントの道具Call n8n Workflow Tool出願番号を受け取り、本文や情報をテキストで返す
Claude APIAnthropic Chat Model ノード道具の選択と要点のまとめ
確認一覧・前回の書類一覧Google Sheets ノード結果の追記と、書類番号の集合の更新
社内チャット通知優先度 A のものを知らせる

拒絶理由通知書と発送書類は、ZIPファイルで返ります。 中身は書類ごとのXMLで、文字エンコードは SJIS です。同じ出願に拒絶理由通知書が複数あれば、1つのZIPにまとめて返ります。サブワークフローの中で Compression ノードで解凍し、文字コードを UTF-8 に直してから、今回増えた書類番号に当たるXMLだけを選んで本文のテキストをエージェントに返します。過去の通知まで渡すと、古い拒絶理由を今回の動きとして要約します。

Call n8n Workflow Tool は、エージェントが別のワークフローを動かしてその出力を受け取る道具です。 道具ごとに Description を書き、いつ使うかをエージェントに伝えます。入力の出願番号は、$fromAI() でモデルに渡させず、案件の番号を式で固定します。 別の出願の番号を取りに行く誤りを、設定の側で塞ぎます。

案件台帳には書き込みません。 確認一覧と前回の書類一覧のシートに書くところまでです。

Step9

人が確認する

  1. 優先度 A を先に見る … 競合の登録・特許査定・分割です。登録情報と J-PlatPat で中身を確かめ、関係する製品の開発担当に知らせるかを決めます
  2. 自社の拒絶理由・拒絶査定を見る … 事務所の報告が届いているかを確かめます。届いていなければ事務所に問い合わせます
  3. 分割の子をウォッチリストに足すかを決める … 足すと決めたものだけを、関係する製品と担当を付けて入れます
  4. 要点の誤りを記録する … 条文や引用文献の写し間違いがあれば、どの案件のどの項目かを残します
  5. 優先度 C は件数と書類名を流し見る

1番目の判断はAIに寄せません。 競合の特許が自社製品に関係するかは、請求項を読んで知財担当と開発が決めることです。

目標は、1,200件の確認をならして1件0.5分です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
アクセストークンの取得に失敗ワークフローを止め、責任者に知らせる。「変化なし」と扱わない
処理中にトークンの期限が切れるリフレッシュトークンで取り直して続ける
statusCode 203(上限超過)取れなかった案件を「未取得」として残し、翌日の0時以降に取り直す
statusCode 107(該当データなし)出願番号の誤りか対象外の出願。リストの不備として一覧に出す
statusCode 999・応答なし「未取得」として残し、数時間後に1回だけ取り直す
拒絶理由通知書の本文が無い(108)fetch_errors に書き、書類名と日付だけで一覧に載せる
今回増えた書類番号に当たるXMLが無い本文は渡さず、人に回す
道具の呼び出しが上限に達したそこまでの結果で返し、fetch_errors に理由を書く
出力がスキーマに合わない増えた書類の一覧だけを一覧に載せ、人に回す
メンテナンスで使えないAPI情報提供サイトの予定を見て、実行日をずらす

上の1行目と3行目を「変化なし」として流すと、この構成の意味が無くなります。 取れなかった案件は、取れなかったことが分かる形で必ず残し、前回の書類一覧も更新しません。 更新してしまうと、翌週の比較で増えた書類が消えます。

Step11

記録を残す

  • 実行ごとの日時、取得した件数、取れなかった案件と statusCode、残りのアクセス数
  • 案件ごとの書類番号の集合と取得日(翌週の比較の基準)
  • エージェントの出力の全文と、呼んだ道具とその応答の状態
  • 人の判断 … 優先度 A の案件を誰に知らせたか、分割の子を足したか、要点の誤りの記録
  • 書類の発送日と、確認一覧に載った日の差

最後の行が、この構成の物差しです。 競合の登録日から何日で開発担当に届いたかを並べると、見回りが間に合っているかが分かります。

書類番号の集合を週ごとに残すのは、取得に失敗した週があっても比較をやり直せるようにするためです。

04実装レベルの3段階

最小構成:J-PlatPat で開いた本文を、生成AIの画面で要点にまとめる / 本文の要点のまとめ
半自動化:n8n で300件の経過情報を取り、前回との差を規則で一覧にする / 見回りと変化の検知
本格構成:上記+エージェントによる追加の取得と要点のまとめ、優先度の振り分けと通知 / 見回りから、人が見る案件の絞り込みまで

半自動化だけでも、①の時間はほぼ無くなります。 変化の検知はAIを使わずに組めます。残るのは、変化のあった案件の中身を調べる時間です。 本格構成で減るのは、その調べる時間です。 半自動化を1〜2か月回し、どの書類が多いかを見て、道具をどれから足すかを決めてください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
1,200 件
1件あたり現在時間
2 分
1件あたり導入後時間
0.5 分
現在  1,200件 × 2分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 1,200件 × 0.5分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
75%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価4,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 自社の出願中の案件と、競合の気になる出願をあわせて数百件見張っている製造業・IT企業・商社の知財部門。J-PlatPat で1件ずつ経過を開いて前回と見比べる作業が毎週続いている場合。競合の登録や分割出願に気づくのが遅れ、設計変更や対応の検討が後手に回った経験がある場合。n8n を使える、または使える体制を作れる場合。
向いていない
  1. 見張る案件が数十件で、月に一度 J-PlatPat を見れば足りる場合。特許事務所の案件管理システムや有料の特許データベースの経過ウォッチで、同じ通知がすでに届いている場合。実用新案や外国の出願が中心の場合(国内特許情報取得APIは実用新案を含まず、外国の出願を引くOPD-APIは新規の申込みを受け付けていません)。なお、拒絶理由への応答方針、競合特許への対応、期限の管理は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. ウォッチリストから20件を選ぶ(競合の登録済み、自社の拒絶理由が出たもの、分割のあるものを入れる)
  2. J-PlatPat で20件の経過情報と、増えた書類の本文を開き、テキストを写す
  3. 生成AIの画面に貼り、「この書類から、根拠の条文、引用文献の番号、対象の請求項だけを書き出してください。本文に無いものは書かず、期限を計算しないでください」と指示する
  4. 出てきた要点を、知財担当がまとめた週報の記載と比べる
出てきた内容判断
週報とおおむね同じ要点が出た利用申込書を出し、取得と比較を n8n で組む
本文に無い条文や期限を書いた指示の書き方で直る。禁止を具体的に書く
何を見ればよいかが案件ごとにばらばら増えた書類と取りに行く情報の対応表を先に決める

利用申込書は、試すのと並行して出してください。 ID・パスワードが届くまでに日数がかかります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
取れなかった案件が「変化なし」になるstatusCode を見て「未取得」を残し、前回の書類一覧を更新しない
拒絶理由の要点に本文に無い条文が入る本文だけを根拠にする指示と、tools_used の記録
一覧に応答の期限が書かれる期限の計算を禁じ、発送日だけを書かせる
過去の拒絶理由を今回の動きとして要約するZIPの中から今回の書類番号のXMLだけを渡す
文字化けした本文が渡るSJIS を UTF-8 に直してから渡す
処理の途中で認証が切れる有効期限1時間を前提に、リフレッシュトークンで取り直す
上限に当たって追加の取得ができない経過情報の後の残りのアクセス数を見て、エージェントに回す数を決める
分割の子が誰にも見られないdivisional_children を別の列に出し、人が足す

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、取れなかったことや書かれていないことを、それらしい値で埋めてしまう問題です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 特許庁が提供する出願の情報(公開前の自社の出願の経過を含む)、自社がどの競合のどの出願を見張っているかの一覧、関係する製品・開発テーマの名前です。

  1. ウォッチリストそのものが営業秘密に近い … どの競合のどの出願を、どの製品のために見ているかは、自社の開発の方向を表します。エージェントに渡すのは1件ずつの区分だけにし、リスト全体を渡しません
  2. ID・パスワードを1つの資格情報として守る … 利用規約では、特許庁は法人にも同時に複数の ID 等を発行せず、ID 等を第三者に譲渡・貸与してはならないとされています。n8n の資格情報に入れ、ワークフローの式や実行の記録に残さないようにします
  3. 利用目的を守る … 利用者は提供された情報を自ら使用し、産業財産権に関する手続、管理、情報提供、研究その他の産業財産権に関する目的以外に利用できないとされています。取得したデータを単純複製して第三者に譲渡することも禁じられています
  4. APIの停止を前提にする … 予告なく停止することがあり、データの正確性も保証されません。重要な案件の最終確認は J-PlatPat と事務所の報告で行います
  5. 判断をAIに寄せない … 応答方針、競合特許への対応、期限の管理は、弁理士と知財担当が決めます

誤りが起きた場合のリスクは、競合の登録を見落とすことと、本文に無い条文や期限を担当者が信じてしまうことの2つです。 前者は取得の失敗を「変化なし」と扱うと起き、後者は要点を本文の外から補わせると起きます。

10まず何から始めるか

1週目:利用申込書を出し、ウォッチリストを整える

国内特許情報取得APIの利用申込書を、特許庁の担当部署へ電子メールで送ります。並行して、ウォッチリストの出願番号を10桁にそろえ、自社/競合と関係する製品の列を埋めます。

2週目:20件で試す

第8章の手順で、本文に無い条文や期限を書いていないかを最優先で見ます。

3週目:取得と比較を組む

ID・パスワードが届いたら、トークンの取得、300件の経過情報の取得、前回との比較までを n8n で組みます。エージェントはまだ入れず、毎週何件動くかを数えます。

4週目:道具を1つ足す

いちばん多い書類(多くは拒絶理由通知書)の道具を1つ作り、エージェントにつなぎます。

2か月目以降: 登録情報、引用文献、分割出願の道具を足し、優先度の振り分けと通知を入れます。競合の登録に翌週のうちに気づき、週報を手で書かなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
特許情報取得APIが令和4年1月から提供され、J-PlatPat と特許情報標準データで提供する特許・意匠・商標の出願情報の一部(実用新案を除く)を取得できること。試行段階で、利用者登録が必要なこと。国内特許情報取得APIは利用申込書を電子メールで送付して申し込むこと。OPD-API は令和6年8月9日で新規申込みの受付を終えたこと(原文を取得して確認)特許庁: APIを利用した特許情報の試行提供2026-10-07
2003年7月以降の特許出願の情報が取得できること。日次で更新され、通常は手続の翌日に取得可能になること。原則24時間365日利用可能なこと。ID・パスワードとアクセストークン取得用URLが電子メールで通知されること。アクセス数は ID 単位で午前0時から数え翌日午前0時にリセットされること。通信費等は利用者負担であること(PDFの原文を取得して確認)特許庁: 特許情報取得API利用の手引き(第2.0版)2026-10-07
法人にも同時に複数の ID 等を発行しないこと、譲渡・貸与の禁止。予告なく停止・性能劣化が起こりうること。産業財産権に関する目的以外に利用できないこと。データの単純複製の第三者への譲渡の禁止。1年を超えて利用しないと利用を解除すること。データの完全性・正確性を保証しないこと(PDFの原文を取得して確認)特許庁: 特許情報取得API利用規約2026-10-07
特許経過情報・シンプル版特許経過情報の上限が800/日、拒絶理由通知書・発送書類が200、登録情報が400、引用文献情報が100、分割出願情報が60であること。シンプル版が優先権情報と分割情報を含まない簡易版であること。発送書類が拒絶理由通知書・特許査定・拒絶査定・補正の却下の決定を含むこと。2026年3月2日に上限を一律2倍にしたこと(PDFの原文を取得して確認)特許庁 API情報提供サイト: API一覧2026-10-07
アクセストークンを POST(grant_type=password)で取得し、access_token と refresh_token が返ること。API は GET で Authorization ヘッダに Bearer とトークンを付けること。トークンの有効期限が1時間で、8時間以内ならリフレッシュトークンで取り直せること(PDFの原文を取得して確認)特許庁 API情報提供サイト: アクセス方法2026-10-07
各APIのパス、出願番号が西暦4桁+0埋め6桁であること。statusCode(100・107・108・203・208・999)と remainAccessCount が返ること。書類一覧に legalDate・documentDescription・documentNumber・availabilityFlag があること。拒絶理由通知書が SJIS のXMLを含むZIPで返り、複数あれば1ファイルにまとめられること。登録情報に登録番号・登録日・請求項の数・権利者があること。国内特許情報取得APIに出願人から出願の一覧を引くものが無いこと(仕様の原文を取得して確認)特許庁 API情報提供サイト: 仕様書2026-10-07
AI Agent が Tools Agent として動き、System Message、Max Iterations(既定10)、Require Specific Output Format の設定があることn8n Docs: Tools AI Agent node2026-10-07
Call n8n Workflow Tool が、エージェントに別のワークフローを動かして出力を受け取らせる道具で、Description と Workflow Inputs(固定値・式・$fromAI())を設定できることn8n Docs: Call n8n Workflow Tool2026-10-07
Anthropic Chat Model ノードで Claude のモデルを使えることn8n Docs: Anthropic Chat Model2026-10-07
Schedule Trigger で週の間隔と曜日・時・分を指定できること。タイムゾーンの扱い(セルフホストの既定は America/New_York)。保存して公開しないと動かないことn8n Docs: Schedule Trigger2026-10-07
Structured Output Parser で JSON の例か JSON Schema から形を定めることn8n Docs: Structured Output Parser2026-10-07
Compression ノードで zip を解凍できることn8n Docs: Compression2026-10-07

応答方針と競合特許への対応は、弁理士と知財担当で決めてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。特許情報取得APIは試行段階の提供で、仕様や上限が変わることがあります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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