Media > AI活用ユースケース > 営業 > 信用調査会社から届く取引先の変動のお知らせメールを読み、取引先台帳と与信の残高に照らして、確かめるべきものを財務担当に回す

信用調査会社から届く取引先の変動のお知らせメールを読み、取引先台帳と与信の残高に照らして、確かめるべきものを財務担当に回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

信用調査会社から届く取引先の変動のお知らせメールを読み、その変動が信用の悪化の兆しにあたるかを判定します。取引先台帳の与信限度額と売掛残高に照らして、確かめるべきものだけを財務担当に回します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
商社/物流/製造
対象部門
営業/財務
対象業務
内容確認・チェック/分類・仕分け
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
75%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 財務担当が共有アドレスを開き、お知らせのメールを読む
  2. 変動のあった取引先が、自社の取引先台帳のどの行かを探す
  3. 売掛残高の一覧で、その取引先の残高と与信限度額を見る
  4. 変動の中身と残高から、確かめるべきかを決める
  5. 確かめるべきものは、担当の営業にメールで知らせ、財務部の確認台帳に書く
  6. 確かめなくてよいものは、メールを既読にしてアーカイブする
導入後(After)
  1. 自動お知らせのメールに Gmail のフィルタでラベルが付く
  2. 自動ラベルの付いたメールで Zap が動き、AI が取引先ごとの変動を一覧にする
  3. 自動取引先ごとに、取引先台帳を企業コードで引き、与信限度額と売掛残高を読む
  4. 自動AI が、変動が信用の悪化の兆しにあたるかを判定し、根拠の文を添える
  5. 自動判定と残高から、確認台帳の優先度を規則で決めて1行ずつ書く
  6. 自動メール1通の処理が終わったら、至急と要確認の件数を財務担当に知らせる
  7. 人財務担当が、至急と要確認の行だけを読み、営業に確かめを頼む
  8. 人与信限度額の見直しや取引条件の変更を、財務担当と営業で決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 財務担当が共有アドレスを開き、お知らせのメールを読む
  2. 変動のあった取引先が、自社の取引先台帳のどの行かを探す
  3. 売掛残高の一覧で、その取引先の残高と与信限度額を見る
  4. 変動の中身と残高から、確かめるべきかを決める
  5. 確かめるべきものは、担当の営業にメールで知らせ、財務部の確認台帳に書く
  6. 確かめなくてよいものは、メールを既読にしてアーカイブする

(a)お知らせが多く、読み切れない。 300件の大半は、所在地の変更や評点の小さな上下です。読み流すのに慣れると、本当に重い1件も同じ速さで読み流します。

(b)残高を見るまで、重さが分からない。 変動の中身だけでは、急ぐかどうかが決まりません。1件ごとに台帳と残高の一覧を開き直すのが、8分のうちの半分です。

(c)台帳と結びつかない取引先がある。 お知らせの商号は信用調査会社の登録名で、自社の台帳の名称と違うことがあります。企業コードが台帳に入っていない取引先は、名前で探すしかありません。

(d)記録が残らない。 確かめなくてよいと決めたお知らせは、アーカイブされるだけです。半年後に同じ取引先の悪化の兆しが届いたとき、前にどんな変動があったかを追えません。

(e)休み明けにまとめて届く。 連休の後は、数十件がいっぺんに届きます。上から順に読むしかなく、重い1件が後ろにあれば、それだけ気づくのが遅れます。

  1. 【自動】 お知らせのメールに Gmail のフィルタでラベルが付く
  2. 【自動】 ラベルの付いたメールで Zap が動き、AI が取引先ごとの変動を一覧にする
  3. 【自動】 取引先ごとに、取引先台帳を企業コードで引き、与信限度額と売掛残高を読む
  4. 【自動】 AI が、変動が信用の悪化の兆しにあたるかを判定し、根拠の文を添える
  5. 【自動】 判定と残高から、確認台帳の優先度を規則で決めて1行ずつ書く
  6. 【自動】 メール1通の処理が終わったら、至急と要確認の件数を財務担当に知らせる
  7. 【人】 財務担当が、至急と要確認の行だけを読み、営業に確かめを頼む
  8. 【人】 与信限度額の見直しや取引条件の変更を、財務担当と営業で決める

4番目と5番目を分けているのが、この設計の分かれ目です。 4番目の判定は「この変動は悪化の兆しか」だけで、残高を見ずに決めます。 5番目で、判定と残高の比率を掛け合わせて優先度を出します。AI に残高まで見せて「急ぐか」を決めさせると、なぜその順番なのかを後から説明できません。

7番目で人が読むのは、至急と要確認の行だけです。 記録のみの行は、週に1回まとめて流し見ます。

02今回想定するシステム構成

構成図
信用調査会社のモニタリング(お知らせのメール)
   │  Gmail のフィルタでラベル「与信お知らせ」を付ける
   ▼【トリガー】Gmail:New Labeled Email
Zapier の Zap
   ├──▶ AI by Zapier(Analyze and Return Data、Return a list of results)
   │       メールの本文から、取引先ごとの変動を一覧にする
   ├──▶ Looping by Zapier(Create Loop From Line Items)
   │     ├──▶ Google Sheets:Lookup Spreadsheet Row(取引先台帳を企業コードで引く)
   │     ├──▶ AI by Zapier:変動が悪化の兆しにあたるかを判定
   │     └──▶ Google Sheets:確認台帳に1行書く(優先度は表の関数で出す)
   └──▶ 最後の回だけ:Gmail で財務担当に件数を知らせる
   ▼【人】財務担当が至急・要確認の行を読み、営業に確かめを頼む
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapier(Gmail、Looping by Zapier、Google Sheets)Make、Power Automate、n8n
生成AIAI by Zapier(Analyze and Return Data)ChatGPT(OpenAI)、Claude、Gemini
保管Google スプレッドシート(取引先台帳、売掛残高の一覧、確認台帳)Airtable
メールGmail(財務部の共有アドレス)Microsoft Outlook

新しく足すのは、Zap と確認台帳だけです。 モニタリングの契約も、取引先台帳も、売掛残高の書き出しも、いまのものを使います。会計システムと与信の限度額には、この構成から書き込みません。

トリガーは Gmail の New Labeled Email です。 指定したラベルが付いたメールで動くトリガーで、Zapier のヘルプでは、New Email や New Email Matching Search が直近1時間のメールを対象とするのに対し、New Labeled Email には期間の制限が無いとされています。お知らせの送信元でフィルタを作り、ラベルを付けます。Gmail のトリガーは一定の間隔で確かめる方式なので、届いた瞬間ではなく少し遅れて動きます。

AI の処理は AI by Zapier の Analyze and Return Data で行います。 出力の項目を名前・型・説明・必須で定義し、「Return a list of results」を有効にすると、オブジェクトの配列で返ります。 1通に数社が入っているお知らせを、取引先ごとの行にするのに使います。

取引先ごとの処理は Looping by Zapier で回します。 Create Loop From Line Items で配列を1件ずつ回し、ループの後のアクションは回ごとに動きます。 最後の回だけ動かしたいステップは、loop_iteration_is_last が true のときだけ通すフィルタを置きます。Looping は Professional 以上のプランで使え、現在はオープンベータで、仕様が変わりうるとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

お知らせのメールにラベルが付いたことを起点にします。 Gmail の側で、信用調査会社の送信元アドレスと件名の決まった語でフィルタを作り、「与信お知らせ」のラベルを付けます。Zap はこのラベルだけを見ます。

New Email Matching Search を使わないのは、取りこぼしを避けるためです。 Zapier のヘルプでは、New Email Matching Search は直近1時間のメールが対象で、Zap を止めていた間に届いたメールは拾われません。 New Labeled Email は期間の制限が無く、保守で Zap を止めた後でも、ラベルの付いたメールを拾い直せます。

フィルタの条件は、送信元のアドレスだけにしないでください。 信用調査会社からは、モニタリングのお知らせのほかに、請求や新サービスの案内も同じアドレスから届くことがあります。件名の決まった語も条件に足し、お知らせだけにラベルが付くようにします。 外れたものは、例外処理の「変動が無い」で拾います。

処理が終わったメールには、別のラベル「処理済み」を付けます。 Gmail のアクションの Add Label to Email で付けます。「与信お知らせ」が付いていて「処理済み」が無いメールが、まだ処理されていないメールです。 財務担当はこの差を週に1回見ます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
お知らせのメール件名、本文、受信日時。本文に企業コード、商号、変動の項目、変動前と変動後の値Gmail(財務部の共有アドレス)
取引先台帳取引先コード、信用調査会社の企業コード、自社での名称、与信限度額、担当の営業、取引の状況取引先台帳(スプレッドシート)
売掛残高の一覧取引先コードごとの売掛残高と受注残。毎朝の書き出し会計システムから書き出したスプレッドシート
判定の基準表変動の項目ごとの扱い(悪化の兆し/中立/要確認)の例財務部で作る一覧

質を決めるのは、取引先台帳の企業コードの列です。 お知らせの商号は信用調査会社の登録名で、自社の台帳の名称と一致しないことがあります。企業コードで結べば、名前の表記ゆれに左右されません。 信用調査会社の側でモニタリングを一括登録するときに企業コードを使っているなら、その一覧から台帳に写せます。

判定の基準表は、AI への指示の材料です。 どの変動を悪化の兆しとみるかは会社ごとの取り決めで、財務部が決めたものを毎回 AI に渡します。 最初の版は、次のくらいの粒度で足ります。

変動の項目扱い補足
評点・リスクスコアの低下悪化の兆し下がった幅は問わない
評点・リスクスコアの上昇中立-
代表者の変更要確認交代の事情は本文から分からない
商号の変更要確認合併・事業譲渡のこともある
所在地の変更中立同じ都道府県の中なら中立とする例
基準表に無い項目要確認財務部が扱いを決めて足す

代表者と商号の変更を要確認にしているのは、本文だけでは良し悪しが決まらないからです。 後継への交代も、経営の行き詰まりによる交代も、お知らせの上では同じ「代表者の変更」です。

Step3

データの取得方法を決める

メールの本文はトリガーがそのまま渡します。取引先台帳と売掛残高は、取引先ごとにループの中で引きます。

取るものどこからどう引くか
取引先の行取引先台帳Lookup Spreadsheet Row で企業コードの列を検索する
企業コードで引けないとき取引先台帳商号の列を検索し、補助の検索列に所在地の都道府県を指定する
売掛残高と受注残売掛残高の一覧Lookup Spreadsheet Row で取引先コードを検索する
判定の基準表基準表のシートZap の最初に1回だけ読み、AI の指示に入れる

企業コードで引けず、商号でも1行に決まらないときは、照合不可として残します。 似た商号の別会社に結びつけると、取引の無い会社の倒産の知らせを、取引先の知らせとして回すことになります。

判定の基準表は、ループの中で毎回読み直しません。 1通の処理の途中で基準表が書き換わると、同じメールの中で判定の基準が変わるからです。Zap の最初に1回読み、その版をすべての回で使います。

売掛残高は毎朝の書き出しなので、当日の入金は反映されていません。 確認台帳には、残高の書き出し日時も一緒に書きます。 財務担当が読むときに、どの時点の数字かが分かるようにします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 本文を文字にそろえる … HTML のメールは本文の文字だけにします(Formatter)。表の形の本文は、行の区切りを残します
  2. 定型の文を落とす … 配信停止の案内、利用規約の文、署名を落とします。AI に渡す文が短いほど、取引先の取り違えが減ります
  3. 受信日時を添える … 変動の日付が本文に無いときの基準にします
  4. 判定の基準表を添える … 変動の項目ごとの扱いを、AI の指示に入れます
  5. 重複の検知 … 同じ企業コード・同じ変動の項目・同じ変動後の値の行が、確認台帳の直近にあれば、二重の書き込みとして印を付けます

5番目は、連休の後に効きます。 同じ変動が複数のお知らせに載って届くことがあり、そのまま書くと同じ取引先が確認台帳に何行も並びます。

Step5

AIに処理させる

AI のステップは2つあります。 1つ目はメールの本文から取引先ごとの変動を一覧にすること、2つ目は取引先ごとに変動が信用の悪化の兆しにあたるかを判定することです。

1つ目で抜き出す項目

項目中身
企業コード本文に書かれたとおり。無ければ空
商号・所在地本文に書かれたとおり
変動の項目評点・リスクスコア/商号/所在地/代表者/その他(本文の語のまま)
変動前・変動後本文に書かれた値。無ければ空
変動の日付本文に書かれた日付。無ければ空

2つ目で判定すること

判定意味例
deteriorating信用の悪化の兆しにあたる評点・リスクスコアの低下、基準表で悪化の兆しとした変動
neutral悪化の兆しとはいえない基準表で中立とした所在地の変更、評点の上昇
needs_review本文だけでは決められない基準表に無い変動、変動前の値が無い

判定の根拠は、基準表と本文の文に置きます。 2つ目のステップには、変動の行と基準表だけを渡し、残高も与信限度額も渡しません。 判定と残高を混ぜないためです。

優先度は、判定と残高から表の関数で決めます。

判定売掛残高 ÷ 与信限度額優先度
deteriorating50%以上至急
deteriorating50%未満、または残高あり要確認
needs_review残高あり要確認
neutral-記録のみ
どれでも残高0かつ受注残0記録のみ(取引の状況を見直す)

50%の線は例です。 財務部が決め、表の関数の1か所で持ちます。AI の指示には書きません。 線を変えるたびに指示を変えると、どの判定がどの線で出たかが追えなくなります。

させないこと理由
与信限度額を下げる・取引を止める判断財務担当と営業が決める
残高を見て急ぐかを決める優先度は表の関数で決める
本文に無い変動の理由を書く「業績悪化のため」などの推測を入れない
商号の似た別会社に結びつける照合は企業コードで行い、決まらなければ照合不可
営業や取引先へ連絡する知らせるのは財務担当まで

3行目は、指示に書かないと起きます。 代表者の変更のお知らせに「経営の立て直しのためとみられる」と書き足します。それらしい理由が付くと、読む人の判断がそれに引きずられます。

Step6

指示内容を固定する

2つ目のステップ(判定)の指示です。

あなたは商社の財務部で、取引先の信用の変動のお知らせを読む立場です。
1件の変動について、信用の悪化の兆しにあたるかを判定してください。
判定には【変動】と【判定の基準表】だけを使ってください。

【判定の選び方】
- deteriorating ... 基準表で「悪化の兆し」とされた変動。
                    評点・リスクスコアが変動前より下がった場合も含む
- neutral ......... 基準表で「中立」とされた変動。評点が上がった場合
- needs_review .... 基準表に無い変動。変動前か変動後の値が無く、
                    上がったか下がったかが決められない場合
迷ったときに neutral を選ばないでください。

【厳守事項】
- 変動の理由や背景を書かないでください。本文に無いことを推測しないでください。
- 取引をどうすべきか、与信限度額をどうすべきかを書かないでください。
- 急ぐかどうかを書かないでください。
- evidence には、判定の根拠にした本文の文をそのまま写してください。
- basis には、当てはめた基準表の行をそのまま写してください。
- 本文の値を書き換えたり、単位をそろえたりしないでください。

【変動】{change_item}
【判定の基準表】{criteria}

「迷ったときに neutral を選ばない」が、この指示でいちばん大事な一文です。 中立と判定された行は記録のみになり、人の目に入りません。 迷ったものは needs_review に寄せ、人が読む側に残します。

「急ぐかどうかを書かない」も要ります。 書かせると、AI はそれを優先度のつもりで書き、表の関数の優先度と食い違ったときに、読む人がどちらを信じるかで迷います。

Step7

出力形式を固定する

1つ目のステップは配列、2つ目は1件ずつの判定で受け取ります。

{
  "corp_code": "",
  "trade_name": "",
  "change_item": "",
  "before": "",
  "after": "",
  "change_date": "",
  "judgement": "deteriorating | neutral | needs_review",
  "evidence": "",
  "basis": ""
}

1つ目の理由は、ループで回せることです。 1つ目のステップが返す配列の1要素が、確認台帳の1行になります。1通に何社入っていても、同じ処理で回ります。

2つ目は、judgement と優先度を別の列に置けることです。 judgement は AI が埋め、優先度は表の関数が判定と残高から出します。線を変えても直すのは関数だけで、過去の判定はそのまま読み直せます。

3つ目は、evidence と basis で確認が速くなることです。 財務担当はメールを開かずに、どの文をどの基準に当てはめたかを一覧で読めます。

確認台帳の1行は、次の列を持ちます。

列中身
受信日時・メールの IDZap が付ける
取引先コード・自社での名称・担当の営業取引先台帳から
変動の項目・変動前・変動後・judgement・evidence・basisAI の出力
売掛残高・受注残・与信限度額・書き出し日時売掛残高の一覧と台帳から
優先度表の関数
確認の結果・確認した人・日時財務担当が入力
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
GmailZapier のトリガー(New Labeled Email)と Add Label to Emailお知らせを拾い、処理済みのラベルを付ける
AI by ZapierZap のステップ変動の一覧と、取引先ごとの判定
Looping by ZapierCreate Loop From Line Items取引先ごとに回す
取引先台帳・売掛残高の一覧Google Sheets の検索企業コードで取引先を引き、残高を読む
確認台帳Google Sheets の行の追加取引先ごとに1行書く
GmailSend Email最後の回だけ、財務担当に件数を知らせる

知らせのメールには、至急と要確認の件数と、確認台帳へのリンクだけを載せます。 取引先名や残高はメールの本文に書きません。数字は確認台帳の中に留めます。

営業への連絡は、財務担当が確かめてから行います。 Zap から営業に直接知らせる経路は作りません。

Step9

人が確認する

  1. 至急の行から読む … evidence と basis を読み、必要ならお知らせのメールを開きます
  2. 残高の時点を確かめる … 書き出し日時が前日なら、当日の入金を会計システムで見ます
  3. 担当の営業に確かめを頼む … 取引先の最近の様子、支払の遅れの有無を聞きます
  4. 結果を確認台帳に書く … 与信限度額を見直す、様子を見る、などを記録します
  5. 要確認の行は、その日のうちに目を通す … needs_review は基準表の穴でもあります

5番目で needs_review が多い変動の項目は、基準表に足します。 足すかどうかは財務部が決めます。AI の判定を見て基準表を直すことはあっても、基準表を AI に作らせることはしません。

記録のみの行は、週に1回まとめて流し見ます。 neutral の判定が本当に中立だったかを、数件ずつ抜き出して確かめます。

財務担当が判定を覆したら、確認台帳に覆した理由を書きます。 neutral を要確認に変えた件が同じ変動の項目に続くなら、基準表のその行の扱いを見直す合図です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
企業コードで台帳が引けない商号と都道府県で引く。1行に決まらなければ照合不可として至急に準じて人へ
台帳にあるが売掛残高の一覧に無い残高を空として書き、deteriorating なら要確認にする
お知らせの形式が変わった1つ目のステップの配列が空になる。空のときは財務担当に知らせる
1通に変動が無い(案内のメールなど)配列が空。処理済みのラベルを付けて記録のみ
AI の応答が返らない・内容の規定で止まる処理済みのラベルを付けず、Zap の履歴から再実行する
同じ変動が二度届く確認台帳の直近と照らし、2行目は印だけ付ける
取引先台帳で取引の状況が「取引終了」記録のみにし、モニタリングの登録を外すかを財務部で決める
倒産・事業停止にあたる語が本文にある判定にかかわらず至急にする(表の関数で語を見る)

1行目の照合不可を至急に準じて扱うのは、取り違えより見落としのほうが重いからです。 照合できないまま記録のみにすると、台帳の企業コードが欠けている取引先のお知らせは、ずっと人の目に入りません。

最後の行は、AI の判定に頼らない安全弁です。 本文に倒産や事業停止にあたる語があれば、表の関数で優先度を至急に上げます。

Step11

記録を残す

  • お知らせのメールそのもの(Gmail に残し、確認台帳にメールの ID を書く)
  • AI の出力(変動の一覧、judgement、evidence、basis)
  • そのとき使った判定の基準表の版
  • 照合に使った台帳の行と、残高の書き出し日時
  • 財務担当の確認の結果と、確認した人・日時
  • 照合不可の件数と、企業コードが欠けていた取引先

3つ目で基準表の版を残すのは、基準表が後から変わるためです。 所在地の変更を中立から要確認に変えたら、過去の判定がどちらの基準で出たかが分からないと、見直す範囲が決まりません。

最後の行は、台帳の整備の材料になります。 照合不可が続く取引先は、企業コードを台帳に足します。

04実装レベルの3段階

最小構成:本文と基準表を手でAIの画面に貼り、判定させる / 1件ごとの判定
半自動化:上記+ラベルの付いたメールで Zap が動き、台帳と残高を引き、確認台帳に書き、件数を知らせる / 判定・照合・優先度・記録
本格構成:上記+財務担当の確認の結果を受けて、担当の営業への確かめの依頼の下書きを作り、確認の期限を追う / 確かめの依頼と追跡

本記事の想定は半自動化です。 1件8分のうち、読み取り・台帳の検索・残高の確認が自動になり、財務担当に残るのは至急と要確認の行を読むことと、記録です。 本格構成で足すのは、営業への確かめの依頼と追跡です。 至急の行に確認の期限を付け、期限を過ぎても確認の結果が空の行を毎朝知らせます。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、needs_review に落ちる変動の項目と、照合不可になる取引先が見えてきます。基準表と台帳の穴を埋めてから営業への依頼を足すほうが、空振りの依頼が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
8 分
1件あたり導入後時間
2 分
現在  300件 × 8分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 300件 × 2分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
75%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価3,500円)
126万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 掛けで売る取引先が数百社から数千社あり、信用調査会社のモニタリングで取引先の変動をメールで受け取っている商社・メーカー・物流会社。お知らせのメールが毎日届き、財務担当が1通ずつ取引先台帳と残高を見比べている場合。取引先台帳と与信限度額・売掛残高の一覧を Google スプレッドシートに書き出せる場合。Zapier の有料プランを使える場合。
向いていない
  1. 掛けの取引先が数十社で、お知らせが月に数通の場合。信用調査会社のモニタリングを契約しておらず、お知らせのメールが届かない場合。与信管理のシステムがお知らせの取り込みと照合の機能を持ち、すでにそこで回っている場合。なお、与信限度額の見直し、取引条件の変更、取引の停止の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月のお知らせのメールから50件の変動を選ぶ(当時、実際に与信を見直したものを数件入れる)
  2. 判定の基準表の下書きを作る(変動の項目ごとに、悪化の兆し/中立/要確認)
  3. メールの本文と基準表を、手元のAIサービスの画面に1件ずつ貼り付ける
  4. 「この変動が、基準表に照らして悪化の兆しにあたるか、中立か、決められないかを判定してください。根拠にした文と基準表の行をそのまま写してください。理由を推測しないでください」と指示する
  5. 出てきた判定を、当時の財務担当の判断と突き合わせる

50件は必ずやってください。 Zap を組む前に、「基準表と本文だけで判定が決まるのか」を確かめます。 試す担当は、当時の判断を知らない人にすると突き合わせが公平になります。

出てきた内容判断
当時見直したものが悪化の兆しと出たZap の組み立てに進む
迷うものを中立にした指示の書き方で直る。構成は有効
決められないものが多い基準表の項目が足りない。 AI の問題ではない

3行目が出たら、基準表を財務部で見直してから進めます。 判定の質は基準表の質で決まります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
迷う変動を中立にする迷ったら needs_review と指示に明記する
変動の理由を推測で書く推測を禁じ、根拠の文をそのまま写させる
商号の似た別会社に結びつく企業コードで引く。 決まらなければ照合不可
AI が急ぐかどうかを書く書かせない。優先度は表の関数で出す
休止の間に届いたメールを拾わないNew Labeled Email を使い、処理済みのラベルで差を見る
ループの後のステップが回ごとに動く知らせのメールは loop_iteration_is_last のときだけ通す
お知らせの形式が変わり、配列が空になる空のときに財務担当へ知らせる
残高が前日の数字のまま読まれる書き出し日時を確認台帳に並べる
同じ変動が何行も並ぶ直近の確認台帳と照らして重複に印を付ける
基準表を AI に作らせる基準表は財務部が決める
営業に直接知らせが飛ぶ知らせは財務担当まで
取引の終わった会社のお知らせが続く取引の状況が「取引終了」の行を数え、モニタリングの登録を見直す
代表者の変更を一律に悪化の兆しにする本文では良し悪しが決まらない。要確認にして営業に聞く

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、本文に無いことを AI が埋めにいくことから出ています。判定の根拠を基準表と本文の文に置き、迷ったものを人の側に残します。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 取引先の商号・所在地・代表者、信用調査会社のお知らせの中身(評点・リスクスコアの変動など)、そして自社の与信限度額と売掛残高です。

  1. AI に残高を渡さない … 判定のステップに渡すのは、変動の行と基準表だけです。与信限度額と売掛残高は、表の関数の中で使います
  2. 信用調査会社との契約の範囲を確かめる … お知らせの中身を外部の AI に渡してよいか、社内のどこまでで共有してよいかは、信用調査会社との契約によります。 導入の前に確かめます
  3. 自前の API キーを使うなら、データの扱いを確かめる … AI by Zapier は Zapier が用意するモデルのほか、自前のキーを使えます。どちらを使うかで、データの扱いの契約の相手が変わります
  4. 知らせのメールに数字を書かない … 件数と確認台帳へのリンクだけにし、取引先名と残高は台帳の中に留めます
  5. 判定で取引を止めない … この構成は読む順番を決めるだけです。与信限度額の見直し、出荷の停止、取引条件の変更は、財務担当と営業が確かめてから決めます
  6. 確認台帳の閲覧者を絞る … 取引先の信用の情報と自社の残高が並ぶ一覧です。財務部と、担当の営業に限ります

誤りが起きた場合のリスクは、重い変動を記録のみにして見落とすことと、取引先を取り違えて誤った確かめをすることの2つです。 前者は neutral への寄せすぎから、後者は商号での照合から起きます。前者は needs_review に寄せる指示で、後者は企業コードでの照合で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:取引先台帳に企業コードを整える

モニタリングに登録している取引先の一覧を信用調査会社の画面から取り、取引先台帳に企業コードの列を足して写します。 残高の大きい上位200社から始めます。

2週目:基準表を作り、50件で試す

変動の項目ごとに、悪化の兆し/中立/要確認の扱いを財務部で決めます。過去のお知らせ50件を手元のAIサービスに貼り付けて判定させ、迷うものを中立にしていないかを最優先で見ます。

3週目:ラベルと確認台帳を作る

Gmail のフィルタで「与信お知らせ」のラベルを付け、確認台帳と優先度の関数を作ります。優先度の線(売掛残高 ÷ 与信限度額)は財務部長と決めます。

4週目:Zap をつなぐ

New Labeled Email から変動の一覧、ループ、台帳の検索、判定、確認台帳への書き込みまでをつなぎます。この時点では知らせのメールを送らず、確認台帳を財務担当が毎日見ます。

2か月目: 件数の知らせと処理済みのラベルを足します。needs_review と照合不可の件数を毎週数えます。3か月目以降: 1件8分が何分になったかを実測し、needs_review の多い項目を基準表に足し、照合不可がほぼ無くなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
tsr-van2 のモニタリングで、評点などの20以上の項目から条件を選んで登録でき、条件に合う変動があるとアラートメールが届くこと。リスクスコア・商号・所在地・代表者の変動が知らされること。企業コードを含む CSV で一括登録できること東京商工リサーチ tsr-van2 ユーザーガイド: モニタリング・ブックマークの利用手順2026-10-08
Gmail のトリガーに New Labeled Email・New Email Matching Search などがあり、一定の間隔で確かめる方式であること。New Email・New Email Matching Search が直近1時間、New Labeled Email が期間の制限なしであること。Add Label to Email・Send Email のアクションがあることZapier Help: How to get started with Gmail on Zapier2026-10-08
Analyze and Return Data で出力の項目を定義でき、Return a list of results で配列を返せること。Standard(1タスク)・Advanced(3倍)・Premium(5倍)のモデルがあること。自前のキーを使えることZapier Help: Use AI by Zapier to analyze and return data2026-10-08
Looping by Zapier に Create Loop From Line Items があり、ループの後のアクションが回ごとに動くこと。loop_iteration_is_last で最後の回だけ通せること。Professional 以上のプランで使え、オープンベータであることZapier Help: Loop your Zap actions2026-10-08
Lookup Spreadsheet Row で検索列と値、補助の検索列と値で行を探せることZapier Help: Find and update spreadsheet rows in Google Sheets2026-10-08

お知らせの形式と通知される項目は、信用調査会社と契約の内容によって違います。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-1003)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次