マンション管理会社のフロント担当から出る「この工事・この使い方は規約上できるか」の質問に、物件ごとの管理規約・使用細則・総会の決議を根拠にチャットで答える
フロント担当が「この工事・この使い方は規約上できるか」をチャットに入れると、その物件の管理規約・使用細則・総会の決議だけを探し、規約上の扱いを根拠の条項付きで返します。規約の綴りと議事録を開く時間が減ります。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- その他/不動産
- 対象部門
- カスタマーサポート
- 対象業務
- 問い合わせ対応/情報検索
- 主な課題
- 問い合わせが多い/属人化している/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 対応スピード向上/属人化解消/検索時間短縮
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 区分所有者・理事から電話かメールで質問を受け、問い合わせの記録の表に書く
- その物件のフォルダを開き、管理規約の用法の章と、該当しそうな使用細則を探す
- 規約が改正されていないかを、総会の議事録を新しい順に開いて確かめる
- 理事会で承認の基準を決めていないかを、理事会の議事録で探す
- 見つからなければ、前の担当者か業務課の先輩に聞く
- 規約上の扱いと必要な書類を、区分所有者への返事の文にまとめる
- 承認の申請が要るものは、申請書の様式を送り、理事長に回す段取りをする
- 人フロント担当が質問を受け、問い合わせの記録に書く
- 人社内のチャット画面で物件を選び、質問を入れる
- 自動中継プログラムが、物件の番号と今日の日付で絞り込みの式を作る
- 自動Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その物件の規約・細則・決議だけを探して答えを作る
- 自動中継プログラムが、根拠の文書の版と日付、根拠のスコアを確かめる
- 自動規約上の扱いの区分と、必要な書類、根拠の条項を画面に返す
- 人フロント担当が根拠の条項を開いて確かめ、区分所有者への返事を書く
- 人定めが見つからないもの・判断が要るものは、業務課の担当と理事長へ回す
- 自動質問・答え・根拠・担当の評価を記録に残す
各工程の詳しい説明を読む
- 区分所有者・理事から電話かメールで質問を受け、問い合わせの記録の表に書く
- その物件のフォルダを開き、管理規約の用法の章と、該当しそうな使用細則を探す
- 規約が改正されていないかを、総会の議事録を新しい順に開いて確かめる
- 理事会で承認の基準を決めていないかを、理事会の議事録で探す
- 見つからなければ、前の担当者か業務課の先輩に聞く
- 規約上の扱いと必要な書類を、区分所有者への返事の文にまとめる
- 承認の申請が要るものは、申請書の様式を送り、理事長に回す段取りをする
(a)物件ごとに違うので、覚えて答えられない。 140組合の規約は、標準管理規約をもとにしていても細則と決議で中身が分かれます。 フローリングの遮音の等級、ペットの頭数と大きさ、専用庭への物置の可否。担当者が覚えているのは、自分が長く持っている数物件だけです。
(b)改正と決議を見落とす。 3番と4番は、時間がないときに省かれます。細則を改正した総会の議事録を見ずに古い細則で答え、後で理事から指摘を受けるのが、いちばん多い失敗です。
(c)答えの書き方が担当で違う。 「大丈夫だと思います」と答える担当と、「理事会の承認が要ります」と答える担当がいます。前者は、工事が始まってから管理組合と区分所有者の間の争いになります。
(d)引き継ぎで物件の事情が消える。 「この物件は理事会で基準を決めている」という知識が前任者に残り、5番が増えていきます。
- 【人】 フロント担当が質問を受け、問い合わせの記録に書く
- 【人】 社内のチャット画面で物件を選び、質問を入れる
- 【自動】 中継プログラムが、物件の番号と今日の日付で絞り込みの式を作る
- 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その物件の規約・細則・決議だけを探して答えを作る
- 【自動】 中継プログラムが、根拠の文書の版と日付、根拠のスコアを確かめる
- 【自動】 規約上の扱いの区分と、必要な書類、根拠の条項を画面に返す
- 【人】 フロント担当が根拠の条項を開いて確かめ、区分所有者への返事を書く
- 【人】 定めが見つからないもの・判断が要るものは、業務課の担当と理事長へ回す
- 【自動】 質問・答え・根拠・担当の評価を記録に残す
7番目を省かないことが、この設計の条件です。 画面に出るのは規約上の扱いの候補で、区分所有者に伝えるのはフロント担当です。 根拠の条項は答えの横に並ぶので、開いて読むのは1〜2分で済みます。
5番目を機械の検査にしているのは、版の取り違えを文の読み方に任せないためです。 根拠の文書の適用期間に今日が入っていなければ、答えを出さずに業務課へ回します。
02今回想定するシステム構成
フロント担当(社内のチャット画面。物件を選んで質問) │ ▼【トリガー】質問の送信 中継プログラム(Python/Cloud Run) ├──▶ 物件の番号と今日の日付から絞り込みの式を作る ▼ Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッド │ その物件の 規約/細則/総会の決議/理事会の決議 だけを探す │ 答えと出典、文ごとの根拠のスコアを返す ▼ 中継プログラム ── 版の適用期間とスコアの検査 ▼ 規約上の扱い(承認の申請/届出/禁止の定め/定めが見つからない) ├──▶ 画面へ(根拠の条項を並べる) └──▶ 業務課の待ち行列へ(定めが見つからない・版が合わない)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド | Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル) | ─ |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・検索・記録をつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 保管 | Cloud Storage(規約・細則・議事録の原本とメタデータ) | ─ |
物件の共有フォルダと問い合わせの記録の表は、新しく足すものではありません。 中継プログラムは文書を読むだけで、共有フォルダにも記録の表にも書き込みません。最初の準備は、物件ごとに文書を集め、種類と適用期間のメタデータを付けることです。
検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作って出典を付けられ、前のセッションの ID を渡すとやり取りを続けられます。 回答の文ごとに 0〜1 の根拠のスコアを返す設定と、根拠の弱い回答を落とす設定があります。
規約の土台は、区分所有法第30条です。 建物・敷地・附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、法律に定めるもののほか規約で定めることができるとされ、第46条は、規約と集会の決議が区分所有者の特定承継人にも効力を生じ、占有者も使用方法について同じ義務を負うとしています。中古で買った区分所有者にも、借りて住む人にも、その物件の規約と決議が効くということです。e-Gov 法令APIで取れる版は、2026年4月1日施行の改正を反映したものです。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は、フロント担当が社内のチャット画面で物件を選び、質問を送ったことです。 画面は社内の ID でログインした管理事業部の社員だけが使い、区分所有者は使いません。 物件を選ばないと送信できない作りにします。
物件の選択は、自由入力にしません。 担当している組合の一覧から選ばせ、物件の番号を画面の側で確定させます。 質問の文に「○○レジデンス」と書かせて物件を推定させると、似た名前の物件を引く余地が残ります。
1件の問い合わせは、1つのセッションで続けます。 「張り替えるのは洋室2部屋だけ」と聞き足すと、同じセッションで答えを絞り直します。別の物件・別の問い合わせは、新しいセッションで始めます。 セッションをまたぐと、前の物件の文脈が残るからです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 質問 | 工事・使い方の内容、場所(専有部分/バルコニー/専用庭など)、時期 | 画面 |
| 物件の番号 | 担当している組合の一覧から選んだもの | 画面 |
| 管理規約 | 原始規約と、改正後の全文 | 物件のフォルダ |
| 使用細則 | リフォーム・ペット・駐車場・駐輪場・専用庭などの細則 | 物件のフォルダ |
| 総会の決議 | 規約・細則の改正、使用のルールの決議(議事録の決議の部分) | 物件のフォルダ |
| 理事会の決議 | 工事の承認の基準、運用の申し合わせ(議事録の決議の部分) | 物件のフォルダ |
| 様式の一覧 | 物件ごとの申請書・届出書の様式と置き場所 | 業務課が作る表 |
質を決めるのは、文書ごとのメタデータです。 文書ごとに、物件の番号、文書の種類(規約/細則/総会の決議/理事会の決議)、適用開始日、適用終了日、決議した会議の日付を付けます。物件の番号は文書を混ぜないために、適用期間は古い版を引かないために使います。
議事録は、決議の部分だけを取り込みます。 総会の議事録には、出席した区分所有者の名前や、滞納・漏水の個別の事情が書かれています。規約上の扱いを答えるのに、個人の事情は要りません。 決議の議案名と決議の内容だけを切り出して入れます。
データの取得方法を決める
文書は Cloud Storage に置き、メタデータの JSONL と一緒にデータストアへ取り込みます。 JSONL の1行に、文書の ID、structData のメタデータ、content の mimeType と Cloud Storage の uri を書きます。1回の取り込みで扱える非構造化の文書は100,000ファイルまで、1ファイルは200MBまでです。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 物件の番号 | メタデータ property_id | その物件の文書だけに絞る |
| 文書の種類 | メタデータ doc_type | 規約・細則・決議を分けて根拠に示す |
| 適用開始日・終了日 | メタデータ valid_from・valid_to | 今日効いている版だけに絞る |
| 会議の日付 | メタデータ resolved_on | 決議と規約の新しさを比べる |
絞り込みの式は、物件と日付で書きます。 項目を索引可能にしておけば、property_id: ANY("P0412") AND valid_from <= "2026-10-08" AND valid_to >= "2026-10-08" のように、その物件の、今日効いている版だけを引けます。改正の予定が無い文書には valid_to に 9999-12-31 を入れます。日付は ISO 8601 の文字列で比べられます。
物件の番号は、画面で選んだ値を中継プログラムが式に入れます。 モデルにもフロント担当にも書かせません。この1行が、物件を混ぜない仕組みのすべてです。
AIへ渡す前に整形する
- 物件ごとに文書を集める … 規約、細則、議事録のPDFを、物件の番号の付いた場所に置きます
- 改正後の全文を用意する … 新旧対照表しか無い改正は、業務課が改正後の全文を作ってから入れます
- 版に期間を付ける … 古い版には、新しい版の適用開始日の前日を終了日として書きます
- 議事録から決議を切り出す … 議案名・決議の内容・会議の日付だけを1件ずつの文書にします
- 個人の名前を消す … 決議の文に部屋番号や名前が出るものは「当該住戸」に置き換えます
- 見出しを断片に含める … データストアの作成時に分割を有効にし、
includeAncestorHeadingsを有効にします - 紙の綴りを取り込む … 紙しか無い古い細則は、スキャンして OCR の取り込み方式で入れます
2番目を省くと、答えが崩れます。 新旧対照表は、同じ条の旧い文と新しい文が左右に並ぶ表です。そのまま取り込むと、旧い文が根拠として引かれます。 改正後の全文を1本作り、新旧対照表は取り込みません。
6番目は、データストアを作る前に決めます。 分割はデータストアの作成後に有効にも無効にもできず、見出しを含める設定は既定では無効です。 「2 前項の場合において、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を…」の断片は、見出しが無いと何の申請の条か分かりません。 分割の大きさは100〜500トークンで、既定は500です。
AIに処理させる
させるのは、その物件の文書から質問に当たる条と決議を見つけ、規約上の扱いを4つの区分のどれかに当てはめ、必要な手続きと書類を根拠付きで並べることです。 承認するか、工事を始めてよいかは決めさせません。
| 区分 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 承認の申請が要る | 理事長への申請と、理事会の決議による承認が要ると定めている | 床の張り替え、配管の変更、窓・玄関扉に関わる工事 |
| 届出が要る | 承認は要らないが、事前に届け出ると定めている | 業者の立入り・資材の搬入・騒音を伴う内装工事 |
| 禁止の定めがある | 規約・細則・決議で禁じている | 細則で禁じた動物の飼育、専有部分の住宅以外の用途 |
| 定めが見つからない | その物件の文書に当たる条も決議も無い | 新しい設備の取付けなど |
標準管理規約の第17条は、この区分の手本になります。 専有部分の修繕・模様替え・建物に定着する物件の取付けや取替えで、共用部分や他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものは、理事長に申請して承認を受け、申請には設計図・仕様書・工程表を添え、理事長は理事会の決議で承認・不承認を決めるとされています。承認の要らない工事でも、業者の立入りや資機材の搬入、騒音・振動・臭気について管理組合が事前に把握する必要があるものは、理事長に届け出るとされています。
answer メソッドの設定は次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
session | 問い合わせごとのセッション | 聞き足した条件で答えを絞り直す |
includeCitations | 有効 | 規約の条と決議の日付を付ける |
ignoreLowRelevantContent | 有効 | その物件の文書に無いことを答えない |
groundingSpec の filteringLevel | FILTERING_LEVEL_HIGH | 根拠の弱い答えを出さない |
filter | 物件の番号、今日の日付 | 他の物件と古い版を混ぜない |
preamble | 下の指示 | 答え方の規則を与える |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 「できます」「問題ありません」と言う | 承認するかは理事会と理事長が決める |
| 他の物件や一般的な規約の例で補う | その物件の規約だけが効く |
| 定めが無いことから「自由にできる」と言う | 規約に無くても区分所有法や他の決議が関わる |
| 規約と法律の食い違いを解釈する | 2026年4月施行の改正前の規約もある。業務課と専門家が見る |
| 遮音の等級や頭数を推定で埋める | 細則に書かれた数字だけを示す |
3行目がいちばん起きやすい失敗です。 規約に当たる条が無いと、モデルは「規約に定めがないため、自由に行えます」と書きます。定めが無いことは、許されているという意味ではありません。 区分所有法第6条は、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないとしています。定めが見つからないものは「定めが見つからない」と書いて止め、業務課へ回します。
指示内容を固定する
answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。
あなたはマンション管理会社のフロント担当を手伝う立場で、
選ばれた1つの物件の管理規約・使用細則・総会と理事会の決議から、
質問された工事や使い方の規約上の扱いを探します。
読むのはフロント担当です。区分所有者ではありません。
【答え方】
1. 規約上の扱いを、次の4つから1つ選んで最初に書いてください。
「承認の申請が要る」「届出が要る」「禁止の定めがある」「定めが見つからない」
2. 根拠にした文書の種類(規約/細則/総会の決議/理事会の決議)、
条の番号、決議の日付を書いてください。
3. 申請や届出が要る場合は、文書に書かれている添付書類と提出先を書いてください。
4. 数字の基準(遮音の等級、頭数、大きさ、期間)は、文書の文のまま写してください。
【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
他のマンションの規約や、一般的な規約の例で補わないでください。
- 「できます」「問題ありません」「許可されます」と書かないでください。
承認するかどうかは理事会が決めます。
- 当たる条や決議が無いときは「定めが見つからない」とし、
「自由に行える」「制限はない」と書かないでください。
- 規約と細則と決議で食い違うときは、どれが優先するかを決めず、
食い違う箇所を並べて「業務課の確認が要る」と書いてください。
- 法律の条文の解釈や、規約が法律に合っているかの判断を書かないでください。
- 数字の基準を推定したり、書かれていない数字を補ったりしないでください。
「できます、と書かない」が、この指示の要です。 規約上は承認の申請が要る工事でも、承認の基準を満たしていそうに見えると、モデルは「承認されると考えられます」と書きます。フロント担当がそれを伝えれば、区分所有者には管理組合の約束に聞こえます。 書き方そのものを禁じ、区分と根拠で止めます。
検索の文は、中継プログラムが組み立てます。 例えば「質問:専有部分の洋室2部屋の床をカーペットからフローリングに張り替えたい。工事は11月中旬から。規約上の扱い、必要な書類、遮音の基準は何か」のように、場所と工事の種類を先に書きます。 区分所有者の名前と部屋番号は入れません。
出力形式を固定する
answer メソッドの応答を、中継プログラムが次の形に整えて、画面と記録に渡します。
{
"query_id": "",
"session_id": "",
"staff_id": "",
"property_id": "P0412",
"asked_on": "2026-10-08",
"question": "",
"category": "approval_required | notice_required | prohibited | not_found",
"requirements": [
{ "item": "", "detail": "", "basis": "" }
],
"refs": [
{ "doc_type": "bylaw | rule | general_meeting | board", "article": "",
"resolved_on": "", "valid_from": "", "valid_to": "", "uri": "",
"grounding_score": 0 }
],
"conflicts": [ { "summary": "", "refs": [""] } ],
"status": "answered | routed | skipped",
"staff_feedback": { "used": true, "corrected_category": "", "note": "" }
}
1つ目の理由は、category を決まった値で持てることです。 画面は区分ごとに色を変え、not_found と conflicts のあるものは区分所有者に返事をする前に業務課へ回すボタンだけを出します。区分の文言をモデルの自由な文から読み取らずに済みます。
2つ目は、refs の valid_from・valid_to を検査に使えることです。 根拠の文書の適用期間に今日が入っていなければ、その答えを画面に出さずに業務課の待ち行列へ回します。 絞り込みの式をすり抜けた古い版を、二重に止めます。
3つ目は、staff_feedback で誤りを集められることです。 フロント担当が区分を直した答えは、メタデータの付け間違いか、決議の切り出し漏れです。 業務課が毎月見て、文書の側を直します。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 社内のチャット画面 | 社内向けの画面 | 物件の選択、質問、答えと根拠の表示 |
| 社内の ID 基盤 | ログイン | フロント担当と担当物件を決める |
| Agent Search | answer メソッドの呼び出し | 物件と日付で絞って答えを返す |
| 様式の一覧 | 読み取り | 申請書・届出書の様式の置き場所を添える |
| 業務課の待ち行列 | 書き込み | 定めが見つからない・食い違い・版が合わない質問を載せる |
| 質問の記録 | 書き込み | 質問・答え・根拠・評価を残す |
画面に出す物件は、ログインした担当者の担当物件だけにします。 他の担当の物件を選べないようにしておくと、担当外の物件の規約を参照した答えが返事に混ざることがありません。代わりに対応するときは、業務課が一時的に担当を足します。
問い合わせの記録の表と、区分所有者への返事の送信には、つなぎません。 返事を書いて送るのはフロント担当です。
人が確認する
フロント担当は、毎回、根拠の条項を開いて確かめてから返事を書きます。 画面の答えだけを写して返事にしない運用にします。
- 区分と根拠の条を突き合わせる … 「承認の申請が要る」の根拠が、本当に申請と承認を定めた条かを読みます
- 決議の日付を見る … 細則より新しい総会の決議が根拠に出ていれば、決議の文を優先して読む
- 数字の基準を写す … 遮音の等級や頭数は、画面の文ではなく根拠の文書から写します
not_foundとconflictsは回す … 業務課の担当が文書を確かめ、必要なら理事長に相談します
4番目を、フロント担当の判断で済ませないでください。 定めが見つからない工事は、理事会で基準を決めるきっかけになる質問です。業務課が月ごとにまとめ、理事会の議題の候補として組合に出します。
目標は、300件をならして1件6分です。 区分と根拠を確かめて返事を書くまでで、業務課へ回るものは1割前後という想定です。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 当たる条も決議も無い | not_found。答えを出さずに業務課へ回す |
| 根拠のスコアが低く答えが落ちた | LOW_GROUNDED_CONTENT。業務課へ回し、文書の取り込み漏れを疑う |
| 規約と細則・決議が食い違う | conflicts に並べて業務課へ。どれが優先かは決めない |
| 根拠の版の期間に今日が入らない | 画面に出さず業務課へ。メタデータを直す |
| 規約が2026年4月施行の改正の前の版のまま | 総会の手続きに関わる質問は業務課へ。規約の見直しの提案につなげる |
| 質問が工事・使い方でない(管理費の滞納、近隣の苦情) | skipped。この画面の対象外と返す |
| 物件の文書が取り込まれていない | 答えを出さず、取り込みの依頼を業務課へ |
| 新旧対照表が混ざって取り込まれた | 旧い文が根拠に出たら、その文書を外して改正後の全文に替える |
| 検索が応答しない | 画面に「後で再送」を出し、質問の文は消さずに残す |
5行目は、この先1〜2年で増えます。 標準管理規約の改正のページは、規約の改正を決議する総会の招集の手続きを2026年3月31日までに行うか、4月1日以降に行うかで手続きの方法が変わるとしています。総会の定足数や決議の要件を問う質問は、規約の文だけでは答えられません。 この区分の質問は、最初から業務課へ回します。
記録を残す
- 質問の文、物件の番号、担当者、日時、セッションの ID
- 絞り込みの式と、answer メソッドの応答の全文(出典と根拠のスコアを含む)
- 整えた答え(
category、requirements、refs、conflicts) - そのとき参照した文書の版(文書の ID と
valid_from・valid_to) - フロント担当の評価と、区分を直した記録
- 業務課へ回した質問と、業務課の回答、理事会にかけた結果
4つ目で「そのときの版」を残すのは、規約が後から改正されるためです。 「去年の秋にこう案内された」という申し出が来たとき、当時効いていた版で答えたのかを確かめられます。
最後の行は、文書の側を育てる材料になります。 理事会が基準を決めたら、その決議を切り出して取り込み、同じ質問が次から not_found にならないようにします。
04実装レベルの3段階
最小構成では物件が増やせません。 文書を毎回読み込ませるので、140組合には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1件20分が10分程度になります。 探す時間は減りますが、根拠が今日効いている版かを議事録で確かめる作業が残ります。本格構成で6分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、版の確認を人がやるか、適用期間のメタデータでやるかの違いです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月使うと、古い版が根拠に出る物件と、決議の切り出しが漏れている物件が先に分かります。
05工数削減シミュレーション
導入後 300件 × 6分 ÷ 60 = 30 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 1人のフロント担当が10〜20の管理組合を受け持ち、物件ごとに管理規約・使用細則・総会の決議が違うマンション管理会社。リフォーム工事・ペット・駐車場・設備の取付けの問い合わせが毎月数百件あり、規約のPDFと議事録を開いて探すのに時間がかかっている場合。担当の交代のたびに「この物件は何が決まっているか」の引き継ぎが抜けている場合。
- 管理規約や使用細則が紙の綴りだけで、改正の履歴や総会の議事録を電子の文書として集められない場合(まず物件ごとに文書をそろえるのが先です)。受託している管理組合が数件で、担当者が規約を覚えている場合。工事の承認や使用の可否の判断までAIに任せたい場合(この構成は規約上の扱いと根拠の条項を示すだけで、承認するかどうかは管理組合の理事会と理事長が決めます)。
07最小構成で試す方法
- 問い合わせの多い3物件を選び、規約・細則・直近3年の総会と理事会の決議を集める(改正後の全文がそろっているものを選ぶ)
- 過去3か月の問い合わせの記録から、その3物件の質問を30件選ぶ
- 3物件の文書を、物件ごとに分けて手元のAIサービスに読み込ませる(物件をまたいで1つにまとめない)
- 「この物件の規約・細則・決議だけを根拠に、この工事の規約上の扱いを、承認の申請が要る/届出が要る/禁止の定めがある/定めが見つからない のどれかで答え、根拠の条と決議の日付を書いてください。できるかどうかは書かないでください」と指示する
- 出てきた答えを、当時フロント担当が返した答えと突き合わせる
30件は必ずやってください。 データストアを組む前に、「この物件の文書だけで区分が決まるのか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の答えと同じ区分と根拠が出た | データストアと絞り込みの構築に進む |
| 「できます」「自由に行えます」と書いた | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 古い細則を根拠にした | 文書のそろえ方が先。 改正後の全文と版の期間を作る |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、議事録をたどるのに時間がかかっていた理由が1つ分かったということです。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 隣の物件の細則で答える | 物件の番号を画面で確定させ、絞り込みの式に必ず入れる |
| 古い細則を根拠にする | 版に適用期間を付け、根拠の期間に今日が入るかを中継プログラムで検査する |
| 新旧対照表の旧い文が引かれる | 改正後の全文を作って入れ、新旧対照表は取り込まない |
| 「規約に定めがないので自由」と書く | 定めが無いときの書き方を指示で決め、not_found で止める |
| 「承認されると考えられます」と書く | 区分と根拠だけを返させる。承認は理事会が決める |
| 断片がどの条か分からない | データストアの作成時に includeAncestorHeadings を有効にする |
| 議事録の個人の事情が根拠に出る | 決議の部分だけを切り出し、部屋番号と名前を消してから入れる |
| 遮音の等級を一般的な値で埋める | 数字は文書の文のまま写させ、画面ではなく根拠から写す運用にする |
| 規約と決議が食い違う | どちらが優先かを決めさせず、並べて業務課へ回す |
| 改正前の規約で総会の手続きを答える | 定足数・決議の要件の質問は業務課へ回す |
| 理事会で決めた基準が取り込まれない | 理事会の後に、決議の切り出しを業務課の手順に入れる |
| 担当外の物件を選んで答える | 画面に出す物件を担当物件に限る |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「正しく見える文」が出るので、フロント担当も区分所有者もその場では気づきません。 物件と版を、文の読み方ではなくメタデータと検査で守っているかで、運用に乗るかが決まります。
下から2行目は、運用の手順で防ぎます。 理事会の基準は、取り込まなければずっと not_found のままです。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 物件ごとの管理規約・使用細則、総会と理事会の決議、そして質問の文に出てくる区分所有者の工事やペットの予定です。
- 議事録の個人の事情を入れない … 総会と理事会の議事録には、滞納・漏水・近隣の苦情の当事者が書かれています。決議の部分だけを切り出し、名前と部屋番号を消してから取り込みます
- 質問の文に名前と部屋番号を書かない … 規約上の扱いを探すのに、誰の住戸かは要りません。画面の入力の注意に書き、記録にも残さない作りにします
- この構成は承認の判断を代替しません … 工事を承認するか、使い方を認めるかは、管理組合の理事会と理事長が規約に従って決めることです。 フロント担当が伝えるのは規約上の扱いと手続きまでです
- 管理組合の文書を、受託の目的の外で使わない … 規約と決議は、管理組合から預かっている文書です。他の組合への提案や営業の資料に流用しません。 解約した組合の文書は、データストアから外します
- 担当物件で閲覧を絞る … 画面に出す物件をログインした担当者の担当物件に限り、記録の閲覧も同じ範囲にします
- 法律の解釈を画面で出さない … 規約が改正後の区分所有法に合っているかは、業務課と、組合が依頼する専門家の領域です
誤りが起きた場合のリスクは、承認の申請が要る工事を要らないと案内することと、他の物件の基準で案内することの2つです。 前者は工事の後に原状回復をめぐる争いになり、後者は区分所有者に誤った約束をしたことになります。どちらも、区分の書き方と物件の絞り込みという設計の側で止めます。
10まず何から始めるか
1週目:3物件の文書をそろえる
問い合わせの多い3物件を選び、規約・細則の改正後の全文と、直近3年の総会・理事会の決議を集めます。新旧対照表しか無い改正は、ここで全文を作ります。この作業で、版をたどるのにどれだけ時間がかかっていたかが見えます。
2週目:30件で試す
その3物件の過去の質問30件を、手元のAIサービスで試します。当時の答えと区分が合うか、古い版を根拠にしていないかを最優先で見ます。
3週目:メタデータの付け方を決める
物件の番号、文書の種類、適用開始日・終了日、決議の日付の付け方を、業務課の手順として文書にします。 議事録から決議を切り出すときの、名前と部屋番号の消し方もここで決めます。
4週目:データストアと絞り込みをつなぐ
分割と見出しの設定を決めてデータストアを作り、3物件の文書を取り込みます。中継プログラムで物件と日付の絞り込みを入れ、区分と根拠を画面に出すところまで作ります。
2か月目: 担当物件の多いフロント担当2名で使い、not_found と staff_feedback を毎週数えます。3か月目以降: 物件を問い合わせの多い順に足し、1件20分が何分になったかを実測します。理事会で決めた基準を取り込む手順が業務課に定着し、同じ質問が not_found に戻らなくなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドが検索結果から回答を作ること。前のセッションの ID でやり取りを続けられること。includeCitations(既定は無効)、ignoreLowRelevantContent、preamble、searchSpec の filter。groundingSpec の filteringLevel(FILTERING_LEVEL_LOW/FILTERING_LEVEL_HIGH)、文ごとの 0〜1 の根拠のスコア、answerSkippedReasons の NO_RELEVANT_CONTENT・LOW_GROUNDED_CONTENT | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-08 |
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR、日付を ISO 8601 の文字列で比べられること、項目を索引可能にする必要があること | Google Cloud: Filter search for structured or unstructured data | 2026-10-08 |
分割の大きさが100〜500トークン(既定500)、includeAncestorHeadings が既定で無効、分割はデータストアの作成後に切り替えられないこと。OCR の取り込み方式がスキャンしたPDF向けであること | Google Cloud: Parse and chunk documents | 2026-10-08 |
メタデータ付きの非構造化の文書を JSONL(id、structData、content の mimeType と uri)で取り込むこと。1ファイル200MBまで、1回100,000ファイルまで | Google Cloud: Prepare data for ingesting | 2026-10-08 |
| 標準管理規約が令和7年10月17日に改正されたこと。改正区分所有法が令和8年4月1日から施行されること。改正に総会の開催手続き・決議要件が含まれること。規約の改正を決議する総会の招集手続きを令和8年3月31日までに行うか4月1日以降に行うかで手続き方法が変わること | 国土交通省: 令和7年マンション標準管理規約の改正について | 2026-10-08 |
| 単棟型の第17条(専有部分の修繕等の理事長への申請と承認、設計図・仕様書・工程表の添付、理事会の決議による承認・不承認、承認を要しない修繕等の届出)、第18条(使用細則) | 国土交通省: マンション標準管理規約(単棟型)令和7年改正(PDF) | 2026-10-08 |
| 第6条第1項(共同の利益に反する行為の禁止)・第3項(占有者への準用)、第30条第1項(規約事項)、第46条(規約と集会の決議の特定承継人・占有者への効力)。2026年4月1日施行の改正を反映した版 | e-Gov 法令検索 法令API: 建物の区分所有等に関する法律 | 2026-10-08 |
工事の承認や使い方の可否は、各管理組合の規約と、理事会・理事長の判断に従ってください。 本記事は Google Cloud、国土交通省、e-Gov 法令検索で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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