AIの利用を人事評価に入れてよい?|目標に書く前の線引き

「AIを使ったかどうかを人事評価に入れれば広がるのではないか、と役員から言われました」「個人目標にAIの活用を書かせる方針が決まったのですが、何を書かせれば評価できるのか分かりません」——生成AIを配り終えた組織から上がってくる相談です。制度としては組めます。人事の実務の解説では、行動評価の欄に活用力の項目を足して等級ごとの期待水準を文章にし、半期の目標に業務改善の件数や資格の取得を置く形が紹介されています。ただし同じ解説は、利用回数だけを指標にしてはいけないとも書いています。AIの利用を評価に入れる仕事は、評価項目を1行足す仕事ではありません。本当は何を評価しないと先に決め、使わない選択が減点にならない形を作る仕事です。この記事では、載せたい側の言い分、載せると壊れるもの、入れるなら何を見るのか、そして制度に載せない代わりの広め方を整理します。
カメ先生人事評価にAIを入れる話はね、使った人を褒める仕組みだと受け取られがちなんだ。でも実務で効くのは、使わないと決めた判断を認められるかどうかのほうなんだよ。
カメ子使ったことより、使わなかったことを見るのですか。
カメ先生両方見るんだけどね。使った回数だけを数えると、向かない仕事にまで通した人が得をしてしまう。だから、どこを任せてどこを任せなかったのか、その線を本人が説明できるかを見るんだ。
カメ子線の引き方そのものが、評価の対象になるということですか。
- 回数を目標にすると回数を稼ぐ行動が生まれる。見るのは量ではなく、任せた範囲と確認の質
- 使わないほうが速い作業がある。使わなかったことを減点にしない形を先に文字にする
- 評価の判定そのものはAIにさせない。整理と下書きまでにとどめ、根拠を書かせて人が確かめる
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「使ったかどうか」を評価に入れたい、という話が出てくる場面
道具を配り、説明会も一巡した。それでも部署によって使われ方に差が出る。ここで必ず出てくるのが、評価に入れれば動くのではないかという案です。人事評価は社内で最も重い道具であり、一度入れると期の途中では戻せません。だからこそ、広げたいという気持ちの勢いではなく、入れたあとに何が起きるかを見てから決める必要があります。
制度として組むこと自体は難しくありません。人事の実務の解説では、人事考課のシートの行動評価の欄に活用力の項目を足し、等級ごとの期待水準を文章にする形が示されています。半期の目標として業務改善の件数や資格の取得を置き、期末に達成度を見る形も紹介されています。管理職への昇格の要件に、資格の合格や提案の件数を置く企業もあるとされています。
問題は、組めることと、組んで壊れないことが別だという点です。壊れ方には型があり、大きく3つに分かれます。回数を稼ぐ行動が生まれること、向かない業務にまで使われること、使わないほうが速い人が不利になることです。この3つを先に見てから、載せるかどうかを判断します。載せると決めるにしても、この3つに手当てをしてから載せることになります。
同じ解説には、条件がもうひとつ添えられています。評価のための評価で終わらせず、学ぶ機会と、身に付けた人が次に進む道筋を一緒に用意することです。項目だけが先に配られ、学ぶ場も、できるようになった人の行き先も示されていない状態だと、欄は形だけ埋められて終わります。載せるかどうかを決める前に、この2つを自社で用意できるかを確かめておきます。
載せたい側が本当に欲しいのは、評価ではなく行動の変化
評価に入れたいという要望を分解すると、欲しいものは点数ではありません。使ってほしい、止まっている人を動かしたい、経営に報告できる形が欲しい——この3つのどれかです。3つは別の打ち手で解けるもので、まとめて評価に載せると、ひとつも解けないまま制度だけが残ります。
使われていない理由も先に分けます。知らないのか、怖いのか、使う場面が業務にないのか、時間がないのか。評価が効くのは、知っていて場面もあるのに動かない、という場合だけです。怖いのが理由の人に評価をかけると、使ったことにして実際には使わないという形に逃げます。場面がない人にかけると、無理に場面を作ることになります。
経営に報告できる形が欲しいだけなら、個人の評価に落とす必要はありません。部門の数字で足ります。報告の相手が知りたいのは、誰が何回使ったかではなく、業務がどう変わったかだからです。この切り分けを先にやっておくと、評価に載せる範囲はかなり小さくなります。
残った「止まっている人を動かしたい」が本音である場合も、評価より先にできることがあります。どこで止まっているかは、本人に聞くよりも、すでに使っている人の手順を見せたときの反応で分かります。手順を見て「その業務なら自分にもある」と言う人は、場面が見えていないだけです。「それは自分には無理だ」と言う人は、手順が自分の業務と離れています。前者には場面の紹介を、後者には自分の業務での手順を渡すことになり、どちらも評価の出番ではありません。
回数を目標にすると、回数を稼ぐ行動が生まれる
数えられるものを目標として置くと、その数を上げる行動が生まれます。これは評価制度の一般的な性質で、AIに限った話ではありません。人事の実務の解説でも、利用回数だけを指標にしてはいけない、見るのは使ったかどうかではなく成果につながったかどうかだ、と明記されています。
実際にどう稼がれるかを具体で見ておくと、線を引きやすくなります。答えをすでに知っている作業をわざわざ通す、自分で下書きを書いてから通して使ったことにする、1つの依頼を細かく分けて何度も投げる。どれも規程には触れないので、後から止めることができません。評価項目の書き方だけで防ぐしかないのが、この型のやっかいなところです。
数えること自体が悪いわけではありません。広まり方を知るために数を見るのは正しい運用です。問題は、その数をそのまま個人の点数にした瞬間に、数の意味が変わってしまうことです。なお、社内での利用の広がりをどう数えるかという話は、評価とは別の設計になります。分母の取り方まで含めて、別に整理してください。
もうひとつ起きるのが、数が伸びているのに業務が変わらないという状態です。活用の量と、業務の側の変化(作業にかかる時間、差し戻しの回数、品質のばらつき)を組み合わせて見る必要があるとされています。量だけを見ていると、伸びている実感と変わらない現実が同時に存在することになります。
使わないほうが速い人が、制度によって不利になる
見落とされやすいのが、AIを通さないほうが速い作業があるという事実です。短い定型の返信、慣れた表計算の操作、すでに型のある議事録。熟練した人ほど、依頼文を書いて出力を読んで直すという往復のほうが時間を食います。
ここに評価が乗ると、速い人が遅い手順をわざわざ踏むことになります。評価のために生産性を落とすという、制度としては明確な失敗です。しかも本人は理由を言いにくい。使っていないと書けば減点されると分かっているので、使ったことにして提出します。制度が嘘を要求する形になったら、その制度はもう情報を集められません。
手当ては単純です。使わなかったことを説明できれば評価を下げない、と先に文字にします。さらに一歩進めるなら、なぜ使わなかったのかを説明できる人を加点する形にします。この工程は出典に当たる必要があるから自分で書いた、この作業は30秒で終わるから通さなかった——こう言える人は、任せる範囲を自分で判断できている人です。
線引きは、業務の種類ごとに名指しで並べておくと現場で使えます。短い定型の返信と数字だけの入力は通さなくてよい、長い文書の骨子と社外に出る文面の下読みは通したほうがよい、という形です。名指しで並べておくと、面談で「なぜ使わなかったのか」を確かめる時間そのものが要らなくなり、確認の中身の話に時間を回せます。
向かない業務にまで使われるようになる
使う動機を制度が作ると、使ってはいけない場所にも動機が届きます。評価項目を配る前に、使ってはいけない業務の一覧を先に配っておく必要があるのはこのためです。順番が逆になると、禁止の線を知らないまま動機だけが先に走ります。
- 数値の確定に使う:集計や計算の結果をそのまま報告に載せる。桁と単位の取り違えが後から出る
- 法令や契約の解釈を確定させる:もっともらしい条文の読み方が出るが、根拠の条文が実在しないことがある
- 個人データを含む処理に持ち込む:入力してよい情報の線を越える。評価のために越える動機が生まれるのが最悪の形
- 人の評価そのものを判定させる:処遇に直接触れる用途で、他の用途と同じ気軽さで置いてはいけない
- 取引先への回答をそのまま送る:社外に出る文面は、誰が確かめたかの記録が残る形にする
一覧を配るときは、禁止だけを並べないことです。禁止の隣に、その業務でAIを使ってよい範囲を書いておきます。数値の確定には使えないが、集計の前の整理には使える。契約の解釈は確定させられないが、確認したい論点を並べるところまでは使える。この形にしておくと、現場が判断に迷ったときに一覧を見に来ます。
線を越えたかどうかを後から確かめられるようにしておくことも要ります。誰がどの業務に使ったかではなく、禁止の業務で使われた形跡がないかという向きで見ます。個人を追う仕組みにすると、使うこと自体が隠れるようになり、結局どこで使われているのか分からなくなります。
評価に入れるなら、回数ではなく3つを見る
入れると決めた場合に見るものは3つです。任せた作業の範囲、確認の質、共有した知見。いずれも数ではなく、本人が言葉で説明できるかどうかで見ます。評価面談の場で、1分で説明できるかどうかが実際の判定になります。
| 評価で見るもの | 具体的に確かめること | 見てはいけないもの |
|---|---|---|
| 任せた作業の範囲 | 去年まで自分の手でやっていた工程のうち、どこを渡し、どこを渡さないと決めたか | 渡した工程の数 |
| 確認の質 | 根拠を出させたか、出典に当たったか、どこを直したかを説明できるか | 出てきた文章の見た目の良さ |
| 共有した知見 | 他の人が同じ手順を再現できる形で、やり方と失敗を残したか | 共有した件数 |
この3つなら、AIをあまり使っていない人も不利になりません。渡さないと決めた工程とその理由を説明できれば、それは範囲を判断できているということだからです。使った量ではなく、判断の質を見る形にすると、制度が求めるものと現場の速さが対立しなくなります。
3つを見ると決めても、量をまったく見ないわけではありません。導入の効果を扱う解説では、活用の量と、業務の側の変化(作業にかかる時間や品質のばらつき)を組み合わせて見ることが勧められています。量は部門の状況を知るために見て、個人の点数には使わない。この使い分けを先に決めておくと、数字を見ること自体が後ろめたいことのように扱われずに済みます。
任せた作業の範囲は、工程の名前で答えてもらう
範囲を見るときは、道具の名前ではなく工程の名前で答えてもらいます。「提案書の作成に使いました」では範囲が分かりません。骨子の候補出しは渡した、事例の引用は渡していない、数字の記載は自分で入れた——この粒度まで言えると、どこまで任せているかが見えます。
同じくらい大事なのが、渡さないと決めた工程です。理由が「なんとなく怖いから」で止まっている人と、「この工程は出典に当たる必要があるから」と言える人では、次の期に任せられる範囲が違います。渡さない判断に理由がついているかどうかが、そのまま次の期の伸びしろになります。
見るときの注意がひとつあります。渡した工程の数を数えないことです。数え始めた瞬間に、この節で書いたことが全部ひっくり返って、工程を細かく割って数を稼ぐ行動が生まれます。範囲は数ではなく、説明の解像度で見ます。
工程の名前で答えてもらうと、副次的な効果もあります。答えが並ぶと、同じ業務を担当している人どうしで、任せている範囲の違いが見えるようになります。同じ提案書の作成でも、骨子まで渡している人と清書だけ渡している人がいる。この差がそのまま、次に部門へ配る手順の題材になります。評価の面談が、そのまま現場の手順を集める場を兼ねることになります。
確認の質は、直した場所を言えるかで見る
出てきたものをどう確かめたかは、評価で最も差がつくところです。根拠を出させたか、出典に当たったか、どこを直したか。そのまま出しましたという答えは、減点というより、確認の手順を持っていないという事実として扱います。事実として扱えば、次にやることは評価ではなく手順を渡すことになります。
聞き方をひとつ決めておくと、評価者による差が縮みます。直近でAIの出力の誤りを見つけた場面を1つ挙げてください、という問いです。見つけた場面を1つも挙げられない人は、確かめていない可能性が高い。誤りが出るものを日常的に使っていて、一度も見つけていないという状態は、通常は起こりません。
確認の質を見るときは、確認にかけた時間の長さを褒めないようにします。全部を一から検証する人は確かに安全ですが、それではAIを使わないほうが速いという話に戻ります。どこを確かめ、どこは確かめなくてよいと判断したか。この線の引き方が見えれば十分です。
共有した知見は、再現できる形になっているかで見る
個人が速くなっただけでは、部門の数字は動きません。評価で拾いたいのは、他の人が同じ手順をなぞれる形で残っているかです。うまくいった依頼文をそのまま貼るだけでは足りず、どの業務のどの工程で、何を前提に使ったのかが添えられている必要があります。
特に効くのが失敗の共有です。試したがうまくいかなかった使い方は、他の人が同じ時間を使うのを防ぎます。ところが、失敗を出すと評価が下がるかもしれないと思われると、誰も出しません。失敗の共有を減点の材料にしないと、制度の文言のほうに書いておく必要があります。
ここでも件数は数えません。件数を数えると、中身のない共有が並びます。置き場所を1つに決め、他の人が実際に使ったかどうかが分かる形にしておくほうが、量を数えるより実態に近づきます。誰かの手順を使って助かったという反応が、そのまま評価の材料になります。
共有を見るときに気をつけたいのが、発信の得意な人に偏ることです。書くのが速い人の共有ばかりが拾われると、業務の中身ではなく文章の上手さを評価していることになります。共有の形を1枚の書式にそろえ、書く量で差がつかないようにすると、この偏りは小さくなります。業務名、渡した工程、確認した点、つまずいた点。この4欄だけの書式で足ります。
部門目標として持つ形と、個人評価に落とす形は別物
いちばん安全なのは、AIの利用を個人の評価項目にせず、部門の目標のほうに置く形です。部門目標は業務の結果で書けます。報告資料の作成にかかる時間を四半期で2割減らす、問い合わせの一次回答までの時間を半分にする。手段としてAIを使うかどうかは、現場が選びます。
個人評価は、本人の行動を測る仕組みです。ここにAIの利用を直接置くと、向かない業務を担当している人が、業務の中身とは無関係に不利になります。部門で持てば、AIが効く業務の人が動くだけで目標は達成できます。全員を同じ方向に走らせる必要がなくなるのが、部門で持つ形の利点です。
時間、差し戻しの回数、対応までの日数など、AIを使わなくても測れる言葉で書きます。手段は書きません。
どの工程にAIを入れるか、どこは入れないかを現場が決めます。決めた理由を1行だけ残してもらいます。
使った回数ではなく、部門の目標にどう効いたかで見ます。仕組みを作った人、手順を配った人が拾われる形になります。
目標のせいで無理に使った工程がなかったかを確かめます。あれば次の期に目標のほうを直します。
部門で持つ形にすると、経営への報告も素直になります。何人が何回使ったかではなく、どの業務の時間が何割減ったかを答えることになるからです。報告の質が上がると、次の投資の判断もしやすくなります。
等級で期待する水準を分けないと、誰の行動も変わらない
全等級に同じ文言を配ると、どの等級の人も自分のことだと思いません。人事の実務の解説では、生成AIに関する期待水準を3段に分ける考え方が示されています。一般社員は安全に使える状態、管理職はチームの生産性を改善できる状態、経営層はAIを前提に判断できる状態です。
| 等級の層 | 評価で期待する状態 | 面談で確かめる問い |
|---|---|---|
| 一般社員 | 決められた範囲で安全に使い、確認の手順を持っている | 入れてはいけない情報を挙げられますか |
| 実務の中心 | 自分の業務に組み込み、任せる範囲を自分で決められる | 渡さないと決めた工程とその理由は何ですか |
| 管理職 | 部下が安全に使える状態を作り、例外の判断を出せる | 部下から上がった判断待ちに何件答えましたか |
| 経営層 | 投資と体制の判断を出し、責任の所在を決めている | 誤りが出たとき誰が答えると決めていますか |
同じ解説では、水準の中身も3段で示されています。第1段は正しく使えること。事実に反する内容がもっともらしく出てくることを見抜けるか、情報が漏れる危険を理解しているか。第2段は仕事そのものを変える力で、提案書の作成を速くする、分析の手順を自動にするといった実践です。第3段は、AIを前提に組織の作りを設計し直す力にあたります。自社の等級のどこに第2段を置くかを決めると、表の中身は自然に埋まります。
分けるときの注意は、上の等級に「使いこなす」と書かないことです。管理職に求めるのは自分の操作の上手さではなく、部下が安全に使える状態を作ることです。ここを取り違えると、管理職が部下より上手く使うことを求められ、現場の判断待ちが増えます。なお、階層ごとに研修の中身をどう変えるかは、評価の文言とは別の設計になります。そちらは別に整理してください。
目標に書く前に確かめる4つの問い
個人目標の欄にAIの活用を書かせる前に、4つだけ確かめます。1つでも通らないなら、その期は部門目標にとどめるのが安全です。書いてしまってから直すより、書かないほうが手戻りが小さくて済みます。
- その人の担当業務に、AIが実際に効く工程があるか(無い人に書かせない)
- 使わないと判断した場合に、減点にならないと文言で保証されているか
- 書かせる目標が、行動の量ではなく業務の結果になっているか
- 評価者が、説明を聞いて中身の差を判断できる状態にあるか
4つ目が最も落ちます。評価者自身がAIを使っていないと、部下の説明を聞いても差がつけられません。結果として、分かりやすい数のほうに引っ張られ、回数で判定することになります。評価する側の準備ができていない制度は、必ず数に戻ります。
実務の解説でも、評価者の理解が足りないことがつまずきの元になるとされ、評価の基準を擦り合わせる場を必須にすることが勧められています。評価項目を配る前に、評価者だけで一度、同じ事例を採点してみる。採点がばらついたら、まだ配る時期ではありません。
評価そのものをAIに判定させない
AIの利用を評価に入れる話と並んで出てくるのが、評価する側でAIを使う話です。記述の整理や文面の下書きまでは任せられます。ただし判定は別です。欧州連合のAI規則では、雇用や労働者の管理に使うAIのうち、昇進や契約の終了に関わる決定、個人の行動や特性にもとづく業務の割り当て、そして勤務ぶりと行動の監視および評価に用いるものを、高リスクの一覧に置いています。
この規則が日本の企業にそのまま適用されるわけではありません。ただ、人の処遇に触るAIは、他の用途と同じ気軽さで置いてはいけないという扱いの重さの目安にはなります。社内の判断としても、評価の点や順位をAIが出した形にしてしまうと、なぜその評価なのかを説明する責任の持ち主が消えます。
- 整理と要約までは任せてよい。判定と順位付けは人が出す
- AIに書かせた記述には、どの記録のどの行を見てそう言えるのかという根拠を必ず添えさせる
- 人が確認する範囲を先に決める。全部を確認するのか、差がついた人だけを確認するのかを文字にする
- 被評価者から聞かれたときに、AIを何にどこまで使ったかを答えられる状態にしておく
実務での線引きは単純にできます。AIは事実の整理と文面の下書きまで、点と順位は人が出す。この1行を評価の手順書の先頭に置いておけば、現場で迷う場面はほとんどなくなります。書いていないと、忙しい期末に少しずつ越えていきます。
同じ一覧には、人を選ぶ場面も並んでいます。求人の広告を狙った相手に出すこと、応募の書類を分析して選別すること、候補者を評価すること。採用でAIを使う場面は、社内の評価と同じ重さで扱われているということです。社内の評価には使わないと決めたのに、応募書類の下読みには気軽に使っている、という不整合は起きやすいので、社内と採用の両方をまとめて線を引きます。
制度に載せない代わりの広め方
評価は最後の手段です。手前に効く手が4つあります。順に試して、それでも動かないときに初めて評価の話に戻ります。戻るときも、個人評価ではなく部門目標から入ります。
- 時間を空ける:試す時間を業務時間の中に置く。時間を作らずに動機だけ足すと、隠れて使うか、使わないかになる
- 手本を配る:自部門の業務そのものを題材にした手順を配る。他社の事例より、隣の席の人の手順が効く
- 詰まりを取る人を置く:質問できる相手を部門に1人決める。誰に聞けばよいか分からない状態が、いちばん止まる
- うまくいった例を見せる場を作る:短い持ち寄りの会を月に1回。件数を数えず、実際に楽になった話だけを扱う
4つのうち最も効くのは、時間を空けることです。評価に載せても時間がなければ試せません。逆に、試す時間があれば、評価に載せなくても使える人から先に使い始めます。使い始めた人の手順が隣に伝わっていくのが、いちばん速い広まり方です。
ここまでやって動かない部署が残った場合、動かない理由はたいてい業務の中身にあります。AIが効く工程が少ないのか、扱う情報が持ち込めないものばかりなのか。その場合に評価をかけても、無理に使う行動が増えるだけです。部署ごとに、そもそも対象にするかどうかを決め直すほうが早く片づきます。
よくある質問
個人目標の欄に「生成AIを業務に取り入れる」と書かせるのは問題ありますか
文言としては曖昧すぎて、期末に判定できません。取り入れたかどうかは本人の申告になり、申告の上手さで差がつきます。書かせるなら、業務の側の結果で書かせます。報告資料の作成にかかる時間を減らす、といった形です。手段としてAIを選ぶかどうかは、本人が決めることとして残します。
資格の取得を評価に入れるのはどうですか
資格は取ったかどうかがはっきりするので、制度としては扱いやすい項目です。ただし、資格を持っていることと業務で使えることは別です。取得を加点にするのは問題ありませんが、取得していないことを減点にすると、業務で十分に使えている人が不利になります。加点だけにしておくのが無難です。
使っていない人を減点してよいですか
減点にすると、使っていないという申告が消えます。実態が見えなくなるほうが、評価の公平さより先に困ります。減点にする代わりに、使わないと判断した理由を聞く形にします。理由が説明できるなら評価は据え置き、説明できないなら手順を渡す。これで、評価の場が実態を集める場になります。
社内の認定や段位のような仕組みを作るのはどうですか
開発に携わる人向けに、試験と研修と実務での経験を組み合わせた4段階の社内認定を設けている国内の大手システム会社の例が紹介されています。役割と必要な技能がはっきりしている職種では、認定の形が働きます。一方、全社員に同じ段位を配ると、段位を上げること自体が目的になり、業務から切り離れます。対象を職種で絞れるかどうかが、作るかどうかの分かれ目です。
評価面談の記録をAIに要約させてよいですか
要約までは任せられます。ただし、要約だけを残して元の記録を捨てないでください。後から本人に説明を求められたときに、要約の根拠が確かめられなくなります。要約と一緒に、どの発言をもとにそうまとめたのかを出させ、点や順位に直結する部分は人が読み直す範囲として先に決めておきます。
まとめ
AIの利用を人事評価に載せるかどうかは、広めたいという気持ちではなく、載せた後に何が壊れるかを先に見てから決める話です。回数を目標にすれば回数を稼ぐ行動が生まれ、使わないほうが速い人が遅い手順を踏み、向かない業務にまで動機が届きます。入れるなら、量ではなく、任せた範囲と確認の質と共有した知見を、本人の説明で見ます。いちばん安全なのは、個人評価ではなく部門目標に置く形です。そして評価の判定そのものはAIにさせず、整理と下書きまでにとどめて、根拠を書かせて人が確かめます。まずは、いま出ている案が「使ったかどうか」を見ているのか「何を任せたか」を見ているのか、そこだけを確かめるところから始めてみてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
