AIの自動値付けは談合になる?|価格を機械に委ねる線引き

「競合3社の価格が、気づいたら同じような水準で動くようになりました。誰とも話していないのですが、これは問題になりますか」「値付けの仕組みを入れようとしたら、法務から待ったがかかりました」——価格の決め方を機械に移そうとしている会社から、立て続けに出てくる質問です。独占禁止法が見ているのは、値段が同じかどうかではありません。同じ値段に至るまでに、事業者どうしの意思の連絡があったかどうかです。この記事では、どういう場合に問題になり得るのかを公正取引委員会の整理に沿って開いたうえで、値付けを機械に任せる会社が動かす前に決めておくことを整理します。
カメ先生機械が勝手に決めた価格なら会社の責任は問われない、と思われがちだけれど、話の向きが逆なんだ。その仕組みを選んで動かしているのは会社の側だから、仕組みがどう振る舞うかを分かっていたかどうかが問われるんだよ。
カメ子分かっていたかどうか、というのは、何を分かっていた場合のことですか。
カメ先生競合と同じ提供元の仕組みを使えば互いの価格が揃う、と分かったうえで使い続けている場合だね。公正取引委員会の報告書は、その状態を独立した価格設定とは評価できない、と書いている。
カメ子相手と連絡を取っていなくても、揃うと分かって使っていれば、別の話になるということでしょうか。
- 独占禁止法が見ているのは価格が揃った結果ではなく、揃うことを相互に認識して認容していたか
- 実務でいちばん踏みやすいのは、競合と同じ提供元の値付けの仕組みを並べて使う型
- 最終の承認を人が持つ線と、なぜその価格になったかを残す記録を、動かす前に決めておく
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「示し合わせていないのに、値段が揃っている」
値付けの仕組みを入れた会社で、半年ほど経つと同じ相談が出ます。競合の公開価格と自社の価格が、いつの間にか近い水準で動くようになった。担当者は誰とも連絡を取っていない。それでも法務からは、説明できる状態にしておくように言われる。この居心地の悪さの正体は、結果だけを眺めても白黒が付かないところにあります。
価格が近づくこと自体は、市場では普通に起きます。原材料が上がれば各社が上げ、需要が落ちれば各社が下げる。公正取引委員会の報告書も、事業者間に接触がなく、それぞれが独立して価格を決めた結果として同じ水準に至ることはあり得るとしたうえで、これを意識的並行行為と呼び、カルテル規制の対象外であることを確認しています。価格が揃ったこと自体は、それだけでは違反になりません。
問題は、機械が間に入ると、独立して決めたと言い切れる範囲が狭くなることです。同じ提供元の仕組みを競合と並べて使っていた。参照しているデータが同じだった。提供元が全ての利用者に同じ割引の上限を課していた。独立して決めたと言えるかどうかが、自分たちの説明だけでは決まらなくなります。以降では、どこで線が引かれるのかを順に開いていきます。
値付けを機械に渡すとき、実際に渡しているもの
値付けの自動化と呼ばれるものは、実際には3つの別々の作業を含んでいます。ひとつめは、他社の価格や在庫の情報を集めること。ふたつめは、集めた情報から次の価格を計算すること。みっつめは、計算した価格をそのまま売り場や見積に反映すること。法務が気にするのは3つ目ですが、争点になるのは1つ目と2つ目です。
集める作業だけなら、公開されている情報を見ているに過ぎません。計算する作業も、自社の在庫と原価と需要から決めているなら自社の判断です。ところが、計算の材料に競合の価格が入り、その計算の仕方を競合も同じ提供元から受け取っているとき、3つの作業が一本につながって、外から見ると各社が同じ動きをしているように見えます。
だから、どこまでを渡したのかを自分で説明できる形にしておく必要があります。どのデータを見ているか、何を基準に上げ下げするか、反映の前に人が挟まるか。この3点を紙に書き出すだけで、自社がどの型に当たるかの見当が付きます。書き出せない会社は、提供元にも聞いていないことがほとんどです。
独占禁止法が見ているのは、値段ではなく至り方
カルテルに当たるかどうかの中心にあるのは「意思の連絡」という要件です。その中身については、東芝ケミカル事件の東京高等裁判所の判決が示した基準が、その後の判決や審決にも引き継がれています。そこでは、複数の事業者の間で相互に同じ内容または同じ種類の対価の引上げを実施することを認識または予測し、これと歩調をそろえる意思があること、とされています。
大事なのはその先です。同じ判決は、事業者間で相互に拘束し合うことを明示して合意することまでは必要ではなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りるとしています。書面も会合も電話も無くても、認識して受け入れていれば足りるという線です。
一方で、片方の値上げを他方が単に認識し認容するだけでは足りない、とも書かれています。相手の動きを知っているだけの状態と、互いに歩調をそろえる意思がある状態の間に線があります。機械を挟んだ値付けの議論は、ほぼすべてこの線のどちら側かという話に帰着します。結果が同じでも、至り方が違えば評価が変わります。
公正取引委員会が示した4つの型
公正取引委員会は、2021年3月31日に「アルゴリズム/AIと競争政策」という報告書を公表しました。デジタル市場における競争政策に関する研究会がまとめたもので、機械を介した協調的な行為を4つに場合分けして検討しています。自社の仕組みがどの型に近いかを知らないまま議論すると、話が一般論のまま終わります。
| 型 | 実際に起きること | 報告書が示した見方 | 自社で確かめること |
|---|---|---|---|
| 合意の監視に使う | 申し合わせた相手が約束を守っているかを、機械が見張る | 使う以前に合意があるため、カルテルになり得る | 他社と価格の話をした記録が社内に残っていないか |
| 同じ提供元の仕組みを並べて使う | 競合各社が同じ提供元の仕組みを使い、価格が同じ方向に動く | 揃うと相互に認識しながら使っていれば、意思の連絡が認められ得る | 同じ市場で何社が同じ仕組みを使っているか |
| 値上げの発信が合図になる | 先に出した価格の情報を、競合が読み取って追随する | 需要者には判別しにくく競合には判別できる態様なら、推認する事実になり得る | 価格の予告を、誰に向けてどの形で出しているか |
| 自ら学ぶ仕組みが揃う | 各社の仕組みが互いの反応を学び、競争的な水準を上回る | 揃っただけでは足りない。揃うと相互に認識していれば例外があり得る | 仕組みが何を見て動いているかを自社で説明できるか |
表のとおり、4つの型は危なさが同じではありません。1つ目は使う前から合意があるので、機械の有無にかかわらず違反です。4つ目については、報告書自身が、現実の市場において実現する可能性は現時点では低いのではないかとしています。実務で現実に踏みやすいのは、2つ目の型です。以降、2つずつ中身を見ていきます。
型1と型2:監視に使う場合と、同じ提供元の仕組みを並べる場合
1つ目は、値上げを申し合わせた相手が約束を守っているかを機械に見張らせる型です。報告書は、この場合にはアルゴリズムの利用以前に複数の事業者間で合意が存在しているためカルテルになり得るとし、機械は合意からの逸脱の監視や逸脱に対する報復、合意に従った価格設定の自動化など、合意の実施を促進する役割を果たしていると指摘しています。
2つ目は、競合する複数の会社が、同じ提供元から受け取った値付けの仕組みを並べて使う型です。報告書は、同じ提供元の仕組みを使うことで相互に価格が同調することを認識しながら使う場合や、提供元が全ての利用者の販売価格に同じ割引率の上限を課すことを周知し、利用者がそれを認識しながら利用する場合を挙げ、直接にも間接にも情報交換が無い場合でも、価格が同調することについての共通の認識があると考えられる、としています。
そのうえで、そのような認識のもとで利用している場合には利用事業者による独立の価格設定とは評価できず、意思の連絡が認められてカルテルとして違反になり得る、と書かれています。同じ提供元の仕組みを競合と並べて使っていることそのものが直ちに違反になるのではありません。揃うと分かっていたかどうかが分かれ目です。分かっていたかどうかを、後から自分の側で示せる形にしておく必要があります。
型3と型4:合図として働く場合と、学んだ結果が揃う場合
3つ目は、値上げの情報を先に出すことが競合への合図として働く型です。報告書は、意思の連絡が認められるかは個別の事件の事情を総合的に考慮して判断する必要があるとしたうえで、値上げ情報の発信が需要者には判別しにくいが競争事業者には判別できるような態様で行われ、競争事業者がその発信に反応して同じように価格を引き上げているといった場合には、そのシグナリングは競争事業者に向けたものであり、意思の連絡が形成されていることを推認する事実になり得る、としています。
4つ目は、各社の仕組みが互いの反応から学び、結果として競争的な価格を上回る水準に落ち着く型です。報告書は、複数の自己学習の仕組みが相互に自律的に価格設定をした結果、価格が同調したにすぎない場合には、単にその事実のみで不当な取引制限とはならないと考えられる、としています。機械が勝手に揃えたという事実だけでは、それ自体では違反にならないという整理です。
ただし例外が置かれています。競争関係にある事業者の間で、それぞれの仕組みを用いれば価格が同調することを相互に認識しながら用いているような場合には、意思の連絡が認められる可能性があると考えられる、という一文です。4つの型は入口が違うだけで、出口はすべて同じ問いに戻ります。揃うと分かっていたか、です。
分かれ目は、揃うと分かって使い続けていたかどうか
ここまでを1行にすると、危ないのは価格が揃った状態ではなく、揃うと相互に認識しながら使い続けている状態です。だから実務の備えは、揃わないように調整することではありません。それをやると今度は別の問題になります。必要なのは、揃っていると気づいたときに何をしたかを、残せる形にしておくことです。
現実には、揃っていることに気づく機会は何度もあります。公開されている他社の価格を見たとき。提供元の担当者から同業の導入実績を聞いたとき。自社の価格が動いた理由を調べたら、参照先が競合の価格だったとき。気づいた後に何もしなかった、という記録だけが残るのが、いちばん説明に困る形です。
気づいた時点で取れる手は3つあります。参照先から競合の価格を外す。反映の前に人の承認を挟む。提供元に、同じ市場で何社が同じ設定を使っているかを確認する。どれを選んだかと、選んだ日付を残してください。後から問われるのは、気づいていたかどうかではなく、気づいた後に独立して決め直したかどうかです。
2025年の指針改訂で、値付けの仕組みが点検の対象に入った
公正取引委員会は2025年6月20日、企業における独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用状況に関する実態調査の結果を公表し、あわせて、実効的なコンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイドを改訂しました。上場企業を対象としたこの種の実態調査は、平成24年、つまり2012年以来12年ぶりだったと説明されています。
改訂では、アルゴリズムの活用に伴うカルテルなどの独占禁止法違反リスクへの対応と、独占禁止法に関する監査におけるAIの活用に関する記載が追加されました。実態調査でも、この2点は重点的に見られた項目として挙げられています。値付けの仕組みは、社内の点検が見に来る対象の中に入りました。
意味するところは単純です。仕組みを入れた部署の中だけで完結する話ではなくなった、ということです。法務や監査の側から、どの仕組みを使い、何を参照し、誰が承認しているのかを聞かれる前提で設計してください。聞かれてから資料を作ろうとすると、導入した当時の設定がもう分からなくなっています。
動かす前に決める4つのこと
動かし始めてからでは、決め直す機会がほとんど来ません。売上が立っている仕組みを止めて設計を見直す判断は、社内では通りにくいからです。決めるなら、導入の決裁の前しか機会はありません。次の4つを、その1回で書いてください。
自社の在庫・原価・需要だけを見るのか、他社の公開価格を含めるのか。含めるなら、どこから、どの頻度で取るのか。この1行が、後から自社がどの型に当たるかを判定するときの材料になります。書けない場合は、提供元に聞いてから決裁に出してください。
価格が動いたときに、何を見てどう判断したのかを1件ごとに記録する設定にします。記録が取れない仕組みは、この時点で候補から外します。後から追加できる機能ではないことが多いです。
全件を人が承認する運用は続きません。動いた幅・対象の金額・取引先の区分のどれで線を引くかを決め、線の外は自動で通します。線の位置は記録に残し、変えるときは変えた日と理由を書きます。
競合の価格と自社の価格が一定の期間ぶつからずに並んだとき、誰がどうやって止めるのか。止め方の書かれていない仕組みは、問題が起きても止まりません。書くのは3行で足ります。
4つのうち、いちばん飛ばされるのは4つ目です。導入の議論は入れる側の話で進むので、止める話は縁起が悪いものとして後ろに回されます。止め方を書いていない仕組みは、実際に止める場面で誰も動けません。決裁の紙に3行足すだけの作業です。
3つ目については、線を金額で引く会社が多いのですが、金額だけでは漏れます。少額の取引でも、競合と同じ動き方をしているものは説明が要るからです。金額ではなく、直前の価格からどれだけ動いたかで線を引くほうが、説明の要る取引を拾えます。金額の線と併用しても構いません。
最終の値付けを人が承認する線を、どこに引くか
値付けをAIに判断させない、という原則は、全件を人が見るという意味ではありません。全件を見る運用は3か月で形骸化します。決めるのは、どの価格変更だけは人の承認を通すかという線の位置です。線を引いた瞬間に、線の外は機械に任せてよいという合意も同時に取れます。
線の引き方は3つあります。ひとつは、直前の価格からの変化の幅。ひとつは、取引先の区分で、新規・既存・入札の案件を分けるもの。もうひとつは、参照したデータの種類で分けるものです。3つ目が、この記事の主題にいちばん近い線です。他社の価格を見て動いた分だけを人が通す設計にすれば、独立して決めたと言える範囲がはっきりします。
承認する人には、判断の材料を一緒に渡してください。動かす前の価格、動かした後の価格、動かした理由、参照したデータの出どころ。この4つが同じ画面に並んでいない承認は、押すだけの作業になります。押すだけの承認は、後から記録として見たときにも何も語りません。
なぜその価格になったかを、後から説明できる記録
根拠を書かせる、というのは、価格が動いた1件ごとに、何を見てどう計算したのかを残させることです。根拠の残っていない価格は、後から説明のしようがありません。独立して決めたと言い切るための材料は、突き詰めるとこの記録しかありません。残っていなければ、担当者の記憶で説明することになります。
- 価格が動いた日時と、動かす前後の価格を1件ずつ残す。まとめて集計した数字だけでは、個別の説明ができない
- 参照したデータの出どころと取得した時刻を残す。他社の価格を見たかどうかが、後から問われる中心になる
- 計算の設定を変えた日と、変えた人を残す。設定は静かに変わるので、変わった時期が分からなくなりやすい
- 人が承認した件は、承認した人と、承認の前に画面に出ていた情報を一緒に残す
- 記録を見られる範囲を先に決める。価格の記録が営業の側から自由に見えると、別の問題を生む
記録の量は、思ったほど増えません。価格が動いた件だけを残せば足りるからです。動かなかった件まで残そうとして、最初の設計で挫折する例が多いです。まずは動いた件だけを1年分。保存の期間は、取引先との契約や社内の文書の取り扱いに合わせて決めてください。
仕組みを選ぶときに、提供元へ確認すること
提供元に聞けば分かることを、聞かずに導入している会社が多いです。報告書が2つ目の型で想定しているのは、まさに提供元が同じであることから生じる問題でした。同じ市場で、何社が同じ仕組みを使っているかは、契約の前に聞いてよい質問です。答えにくい質問ではありますが、聞いたという事実に意味があります。
- 自社と同じ市場・同じ商材で、この仕組みを使っている会社が他にあるか。社数だけでも答えられるか
- 価格を計算するときに他社の価格を参照する設定があるか。あるなら、その設定を外せるか
- 全ての利用者に共通で課される制限があるか。割引率の上限のようなものがあれば、内容を開示できるか
- 価格が動いた1件ごとに、何を見て動いたかを記録として取り出せるか。取り出す形式は何か
- 設定の変更履歴が残るか。誰がいつ変えたかを、後から利用者の側で確認できるか
答えられない項目があっても、それ自体は問題ではありません。答えられなかったという事実を、日付とともに記録しておくことに意味があります。後から問われたとき、確認しようとした跡があるかどうかで、会社の姿勢の見え方が変わります。
3つ目は特に見落とされます。報告書が例として挙げているのは、提供元が全ての利用者の販売価格に同じ割引率の上限を課すことを周知し、利用者がそれを認識しながら利用する場合です。周知された制限を受け入れて使っている状態は、共通の認識があると見られ得ます。契約書の別紙や利用条件の細目に書かれていることがあるので、そこまで読んでください。
社内の点検は、年に一度、3つの問いで足りる
点検の仕組みを重くすると続きません。年に一度、3つの問いに答えるだけで足ります。1つ目、いま参照しているデータの中に他社の価格は入っているか。2つ目、同じ仕組みを使っている同業を何社把握しているか。3つ目、この1年で自社と競合の価格が一定の期間並んだ場面はあったか。
3つ目に「あった」と答えた場合だけ、その場面の記録を開きます。開くのは、価格が動いた日の記録と、そのとき参照したデータの出どころです。並んだこと自体を問題にするのではなく、並んだときに独立して決めていたかを確かめます。点検の問いは3つで足ります。増やすと、次の年には誰もやらなくなります。
答えは1枚に残してください。担当が替わったときに、前回どう判断したかが分かる形にしておく。1年分が1枚で、5年でも5枚です。この数枚が、後から問われたときにいちばん効きます。監査の側に見せる資料としても、これ以上のものは要りません。
やってはいけない進め方
最後に、後から説明できなくなる進め方を5つ挙げます。どれも、始めた時点で説明の材料が失われます。思い当たるものがあれば、次の設定変更のときに1つずつ外してください。
- 同業の導入実績を決め手にして仕組みを選ぶ:同じ市場の何社が使っているかを知ったうえで使い続けた、という記録になる
- 参照するデータの中身を提供元任せにする:他社の価格を見ているかどうかを、自社の口から答えられなくなる
- 反映の前の承認を、全件を対象にする:3か月で押すだけの作業になり、承認の記録が何も語らなくなる
- 価格が動いた記録を、集計した数字だけで残す:1件ごとの説明ができず、独立して決めたと示せない
- 値上げの予告を、需要者向けの案内とは別の形で出す:出し方によっては競合に向けた合図と読まれ得る
1つ目は意外に思われるかもしれません。同業が使っているという事実は、通常なら安心の材料です。ところがこの分野に限っては、同じ市場の同業が使っていると知っていたこと自体が、認識の側の材料として働き得ます。知ってはいけないという話ではありません。知ったうえで参照先から他社の価格を外したか、という記録が要るという話です。
5つ目は、値上げの案内の出し方の問題です。取引先への案内として普通に出すのは、通常の事業活動です。報告書が問題にしているのは、需要者には判別しにくく競争事業者には判別できるような態様で行われている場合でした。誰に向けて出しているかを説明できれば、通常の案内は通常の案内のままです。
よくある質問
他社の公開価格を見ること自体が、問題になりますか
公開されている価格を見ること自体を禁じる規定はありません。報告書も、事業者間に接触がなく、それぞれが独立して価格を決めた結果として同じ水準に至ることはあり得るとしています。問題になるのは、見た結果として互いに歩調をそろえる意思が生まれた場合や、同じ仕組みを介して揃うと分かりながら使い続けた場合です。見ること自体をやめるのではなく、見た情報を何にどう使ったかを1件ごとに残せる形にしてください。残っていれば、独立して決めたという説明が具体的にできます。
提供元が同じであれば、それだけで違反になりますか
なりません。報告書が示しているのは、同じ第三者が提供する仕組みを使うことによって相互に価格が同調することを認識しながら用いている場合に、独立した価格設定とは評価できず意思の連絡が認められ得る、という整理です。認識の側が要件に入っています。逆に言えば、揃うと分かった時点で参照先から他社の価格を外す、反映の前に人の承認を挟むといった手を打ち、その日付を残しておけば、認識したまま使い続けたという形にはなりません。
自ら学ぶ仕組みが勝手に揃えた場合、会社は責任を負いますか
報告書は、複数の自己学習の仕組みが相互に自律的に価格設定をした結果として価格が同調したにすぎない場合には、単にその事実のみでは不当な取引制限とはならないと考えられる、としています。ただし例外として、それぞれの仕組みを用いれば価格が同調することを相互に認識しながら用いている場合には意思の連絡が認められる可能性がある、とも書かれています。現時点で実務上できるのは、仕組みが何を見て動いているかを説明できる状態にしておくことと、揃っていることに気づいた時点の対応を残すことです。
入札の価格を機械に決めさせてもよいですか
この記事で扱ってきた考え方がそのまま当てはまる領域ですが、入札は他の取引よりも慎重に扱ってください。落札の可否が価格だけで決まる場面が多く、同じ市場の複数社が同じ仕組みを使っていた場合に、揃ったことの説明が難しくなるからです。入札の案件は、承認の線の内側に丸ごと入れて、人が通す運用にするのが安全です。自動の対象から外すという判断も、記録に残る形で決めてください。
価格が動いた根拠の記録は、どれくらいの期間残せばよいですか
公的な基準として何年という数字が示されているわけではないので、自社の他の記録に合わせるのが現実的です。取引先との契約書や見積の控えを何年残しているかを調べ、同じ年数にそろえてください。そろえておくと、後から探すときに保管場所が1か所で済みます。容量が問題になる場合は、1件ごとの明細を短めに、日時と価格と参照先だけの要約を長めに残すという分け方もできます。
まとめ
値付けを機械に任せることは、それ自体では問題になりません。独占禁止法が見ているのは価格が揃った結果ではなく、揃うことを相互に認識して認容していたかどうかです。だから備えは、揃わないように調整することではなく、気づいたときに独立して決め直した跡を残すことに向かいます。まず、いま参照しているデータの中に他社の価格が入っているかどうかを確かめてください。提供元に1通聞けば済みます。入っていた場合は、外すか、人の承認を挟むか、そのまま使うかを決め、決めた日付を1枚に残す。2025年6月の指針改訂で、値付けの仕組みは社内の点検が見に来る対象になりました。聞かれてから作る資料と、動かす前に残した1枚では、示せるものの質が違います。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
