AIで作ったロゴが使えなくなる原因|商標と独自性の確かめ方

「生成AIで図案の案を10枚出して、社内で1つ選びました」「気に入った案があるのですが、そのまま会社のロゴにして大丈夫でしょうか」——ブランドの見直しや、サービスを1つ増やす場面で続けて届く問いかけです。答えは、作れたかどうかとは別のところにあります。図案が手元にあるのは入口の話で、そこから先には、他社の権利にぶつからないか、自社の目印として認めてもらえるか、似せられたときに止められるかという関門が並んでいます。手間が減ったのは制作の側だけで、確かめる工程は1つも減っていません。この記事では、AIで作った図案が使えなくなる原因を7つに切り分け、確かめる順番と、専門家に渡す前の準備までを整理します。
カメ先生AIで図案が作れるようになったから、ロゴも自前で用意できると思われがちなんだけど、本当は使い続けられるかを決めているのは作り方じゃなくて、他人の権利と自社の登録なんだ。
カメ子きれいな図案が出てくれば、それで足りるわけではないのですね。
カメ先生同じ業種で似た目印がすでに登録されていれば、知らずに作ったものでも使えなくなる。逆に自社の目印として登録していなければ、そっくりな図案を他社が使い始めても止めにくい。
カメ子出来上がりの見た目と、守れるかどうかは別に見るということですか。
- 作れることと使い続けられることは別。他社の権利、自社の登録、模倣を止める手段の3つを分けて見る
- 商標の侵害には依拠性が要らない。AIが勝手に出したから知らなかった、という説明は最初から効かない
- AIが生成した図案でも商標登録は受けられる。問題は登録まで行けるかどうかで、独自性の弱さがそこで効く
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使い始めた図案が、半年後に差し替えになる
具体的な場面から始めます。新しいサービスを1つ追加するので、その名前と図案を用意することになりました。生成AIで案を出し、社内の投票で1つに絞り、会社案内と広告に載せ、展示会のブースには背丈より大きく掲げました。半年後、同じ業種の会社から書面が届きます。自社の登録商標に似ているので使用をやめてほしい、という内容です。ここで初めて、図案を選んだときに何を確かめていなかったのかが分かります。
差し替えの費用は、図案を作り直す費用ではありません。名刺、封筒、会社案内、提案書のひな形、広告、看板、社用車、展示会の造作、記事に使った画像、動画の冒頭。載せた場所の数だけ作業が発生します。しかも載せた期間が長いほど、認知として積み上がったものを捨てることになります。半年でも十分に痛く、3年経っていれば取引先への説明から作り直しです。
生成AIで図案を作る作業そのものは数分で終わります。だから確認も数分で済みそうに見えます。実際は逆で、制作の手間が下がったぶん、確かめる工程だけが手つかずで残ります。外注していた頃は、制作会社との打ち合わせの中に確認の話題が自然と挟まっていました。自作に切り替えた瞬間に、その挟み込みが消えます。
作れることと、使い続けられることは別の話
社内では、生成AIと著作権の一般的な注意点、ロゴと色の運用ルール、ブランドの体系の決め方といった整理がすでに進んでいるかもしれません。本記事が扱うのはそのどれでもなく、AIで作った図案を、会社の目印として使い続けられるかどうかという一点です。運用ルールは決まった後の話、体系は何を作るかの話、著作権の一般整理はもっと広い話で、いま詰まっているのはその手前にあります。
目印として使い続けるには、関門が3つあります。1つ目は他社の権利にぶつからないこと。2つ目は自社の目印として認めてもらえること、つまり登録できること。3つ目は似せられたときに止められることです。図案が洗練されているかどうかは、この3つのどれにも直接は効きません。審査は美しさを見ていません。
3つのうち、AIで作ったことが特に影響するのは2つ目と3つ目です。1つ目は人が描いても同じで、たまたま似てしまう危険は昔からありました。ところが2つ目は、AIに頼んだときの言葉の選び方がそのまま独自性の弱さにつながります。3つ目は、人の手がどれだけ入っているかで、使える手段の数が変わります。以下では、この2つが効いてくる場面を原因ごとに分けて見ていきます。
読み進める前に、切り分けを1つ置かせてください。商標として登録できるかどうかと、その図案に著作権が生じているかどうかは、別々の判断です。前者は目印としての働きを見ており、後者は表現としての創作を見ています。判断する制度も、判断する場面も違います。ここを混ぜると、著作権が怪しいのだから登録も難しいだろう、という誤った結論に落ちます。実際には逆の組み合わせも起こります。著作権は認められにくいが商標登録は通る、という図案がありえるのです。以下の原因も、商標側の話と著作権側の話を分けて並べます。
原因1:他社の登録商標と似ていた
最も件数が多く、最も痛いのがこれです。商標法第4条第1項第11号は、出願の日より前に出願された他人の登録商標と同一または類似の商標であって、その指定商品や指定役務、またはこれらに類似する商品や役務について使うものは登録を受けられない、と定めています。特許庁はこの号について、一商標一登録主義と先願主義に基づくものだと説明しています。早く出したほうが通る仕組みだということです。
似ているかどうかの見方も定まっています。内閣府の検討会が2024年5月に公表した中間とりまとめは、商標の類似性について、両者の外観と称呼と観念などによって需要者に与える印象や記憶や連想を総合して全体的に考察し、具体的な取引状況に基づいて、需要者に出所の混同のおそれが生じるかどうかで判断すると整理しています。外観は見た目、称呼は呼び方、観念は意味合いです。
ここが図案に固有の難所です。文字が入っていないロゴには、呼び方がありません。意味合いも、抽象的な形であれば読み取りようがありません。称呼と観念で差が付かないので、見た目1本の勝負になります。文字商標なら読み方が違えば区別されうる場面でも、図形だけの図案は逃げ場が狭くなります。あわせて第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品または役務と混同を生ずるおそれがある商標も登録できないとしており、こちらは同一や類似の商品に限られません。
原因2:知らなかったという言い分が通らない
AIが出したものだから、他社の登録商標があることは知らなかった。この説明が効くかどうかは、制度によって答えが違います。中間とりまとめは、商標権侵害の成立要件として、いわゆる依拠性は不要であると明記しています。相手の商標を知っていたかどうかは、そもそも要件に入っていません。不正競争防止法の商品等表示規制についても、同じく依拠性は不要と整理されています。
著作権は逆で、依拠性が要件に入ります。ただしそこも安心材料にはなりません。文化庁の法制度小委員会が2024年3月15日に公表した考え方は、利用者が既存の著作物を認識していなかったとしても、その生成AIの開発や学習の段階でその著作物を学習していた場合は、客観的にその著作物へのアクセスがあったと認められることから、通常は依拠性があったと推認され、利用者による著作権侵害になりうると整理しています。
2つを並べると、知らずに似せた場合に助けになる制度は、実質的にありません。商標では初めから問われず、著作権では学習していたことで推認される。だから対策は、知らなかったと言えるようにすることではなく、使う前に調べておくことに寄ります。制度の側に善意の抜け道が用意されていないと考えて動くのが安全です。
あわせて、よく心配される点を1つ片付けておきます。使っている道具が他社のロゴを学んでいることは、こちらの責任の話ではありません。特許庁の商標制度小委員会が2025年6月13日の会議に出した資料は、他人の登録商標が含まれるデータをAIに学習させる行為について、登録商標であっても学習用のデータとしての利用は商標法第2条第3項各号に定める商標の使用に該当しないため、商標権の効力が及ぶ行為に該当しないと整理しています。問われるのは学習の側ではなく、出てきた図案を自社の目印として使う場面です。心配する先を間違えないでください。
原因3:図案の独自性が弱く、登録できない
他社にぶつかっていなくても、登録できないことがあります。商標法第3条第1項第5号は、極めて簡単でかつありふれた標章のみからなる商標を登録できないとしています。特許庁が挙げている例は、仮名文字の1字、数字、ありふれた輪郭として丸や三角や四角、それにローマ字の1字または2字です。第6号は、その他何人かの業務に係る商品または役務であるかを認識することができない商標で、例として地模様、つまり模様的なものの連続反復のみからなるもの、それに標語や現元号が挙がっています。
生成AIに図案を頼むときの言葉を思い出してください。簡潔で、洗練された、幾何学的な、余白の多い。この注文はそのまま第5号と第6号の領域に向かっていきます。丸と三角を重ねただけの形、細い線を等間隔に並べただけの模様。人の目には整って見えても、自社と他社を区別する働きが薄いと判断されれば登録は通りません。第3号にも注意が必要で、商品の品質や役務の質などを普通に用いられる方法で表示するだけの標章も登録できません。
ここで言葉を1つ正しておきます。商標で問われる独自性は、誰も作っていない新しさではありません。特許庁の資料は、商標の登録要件に新規性や進歩性、創作非容易性は含まれていないと整理しています。求められているのは、自社の商品やサービスを他社のものと区別する働きです。世界初の形である必要はなく、逆に世界初であっても丸と三角だけなら足りません。この違いを押さえておかないと、社内の議論が新しさの競争になり、区別する働きの話が抜け落ちます。
道が閉じているわけではありません。第3条第2項は、第3号から第5号までに当たる商標でも、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品または役務であることを認識できるものは登録を受けられるとしています。ただし特許庁は、実際に使用した商標および商品や役務、使用した期間、地域、生産量、広告回数などを証明する証拠書類の提出が必要だと説明しています。使い込んで有名にすれば道は開くが、その証拠を積む年月が要ります。
原因4:生成物に著作権が認められにくい
ここが3つ目の関門です。著作権法第2条第1項第1号は、著作物を、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものと定義しています。同項第2号の著作者は、著作物を創作する者です。文化庁の考え方は、AIは法的な人格を有しないことから、この創作する者には該当し得ないと述べています。つまりAIそれ自体が著作者になることはありません。
では利用者が著作者になれるのか。文化庁の考え方は、AI生成物が著作物となる要件を、創作意図と創作的寄与という2つの観点から論点として立てています。そのうえで、生成AIに対する指示が表現に至らないアイデアにとどまるような場合には、その生成物に著作物性は認められないと考えられるとしています。創作的寄与を測る要素として挙げられているのは3点です。指示や入力の分量と内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択。ここで注目したいのは、それぞれについてこれだけでは足りないと明示されている部分です。
長大な指示であっても、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示は創作的寄与の判断に影響しない。試行回数が多いこと自体も影響しない。単なる選択行為自体も影響しない。逆に、生成物を確認して指示を修正しながら試行を繰り返した場合には著作物性が認められることも考えられる、とされています。また、人間が創作的表現といえる加筆や修正を加えた部分については、通常は著作物性が認められると整理されています。何枚も出して1枚選んだ、という経緯だけでは著作権の主張はしにくいということです。
この整理から言えることは、断定ではなく見通しです。指示を1行入れて出てきた図案をそのまま採用した場合、創作的寄与が乏しいと見られる可能性がある、という程度に留めておくのが正確です。なお、この考え方は法制度小委員会が公表時点の整理として示したもので、それ自体が法的な拘束力を有するものではないと文書の冒頭に書かれています。同じ文書は、著作権法の解釈は本来、個別具体的な事案に応じた司法判断によるべきものだとも述べています。だから実務では枠組みとして使い、個別の図案についての結論は専門家に委ねる前提で読んでください。
原因5:同じ指示から、他社にも似た図案が出る
自社が思いつく注文の言い回しは、同じ業種の他社も思いつきます。信頼感のある、先進的な、青を基調にした、余計な装飾のない。業種の中で共有された言葉から出てくる図案は、傾向まで共有されます。人が描いていた頃は、描き手の癖が偶然の差を作っていました。指示文に置き換えた瞬間、その偶然が減ります。
この状況で効くのは、先に登録している側です。商標法第18条第1項は、商標権は設定の登録により発生すると定めています。使い始めた日ではありません。第25条は、商標権者が指定商品または指定役務について登録商標の使用をする権利を専有すると定めています。先に使っていたという事実は、登録の前では弱い立場に置かれます。第4条第1項第11号が先願主義に基づくと説明されているのも、この順番の問題です。
実務上の落としどころは2つです。1つは、社内で選ぶ段階から出願を前提に日程を組み、使い始める日を出願より後ろに置くこと。もう1つは、選ぶ段階で似た図案が量産されうる方向を避けることです。抽象的で簡潔な形は美しく見えますが、他社の指示文からも同じように出てきます。覚えられる特徴が1つあるかどうかを、選定の基準に入れておくと後が楽になります。
原因6:使ってよい範囲が、道具の規約で決まっている
ここまでは権利の話でした。もう1つ、契約の話が並走しています。生成した図案をどこまで使えるかは、使った道具の利用規約に書かれた範囲でも決まります。権利の側で問題がなくても、規約の側で商用の利用が制限されていれば、会社の目印としては使えません。2つの門を別々に通す必要があります。
見る場所は4つに絞れます。商用の利用が認められる範囲と、その範囲が料金の種類によって変わるかどうか。出力されたものについて権利や利用の範囲がどう書かれているか。同じような出力が他の利用者にも出ることについての記載。そして生成した経緯の表示を求める記載です。規約は改訂されるので、選ぶ時点と、使い続けている時点の両方で見る必要があります。
勘違いしやすい点を1つ挙げます。規約で使ってよいと書かれていることは、他社の権利を侵していないことの保証ではありません。規約は道具を提供する側との取り決めで、第三者との関係を決める文書ではないからです。だから原因1から原因3までの確認は、規約を読んだあとにも必要です。順番として、規約は入口の門、権利は出口の門だと考えておくと混乱しません。
原因7:どう作ったかの記録が残っていない
最後は記録です。文化庁の考え方が挙げた3つの要素は、そのまま何を残しておくべきかの一覧として読めます。与えた指示の全文、試した回数と各回の出力、そのうちどれを選んだのか、選んだあとに人がどこをどう直したのか。特に最後の1つが重要で、人が創作的表現といえる加筆や修正を加えた部分については通常著作物性が認められるとされているのに、直した記録がなければその主張の材料がありません。
商標の側でも記録が要ります。第3条第2項で使用による認識を主張する場合、特許庁が求めているのは使用した商標と商品や役務、期間、地域、生産量、広告回数を証明する書類です。これは後から作れません。使い始めた日から積む種類の証拠です。図案を決めた日の資料をひとまとめにしておくだけでも、後の作業量がまったく変わります。
- 指示文は要約せず、そのまま残す。言い換えると再現できなくなる
- 採用しなかった案も捨てない。試行を繰り返した経緯そのものが材料になる
- 人が直した箇所は、直す前と直した後の両方を残す
- 使い始めた日と、載せた場所の一覧を1枚にしておく
- 使った道具の規約は、その時点の版を保存しておく
3つの守り方を並べて見る
守る手段は1つではありません。それぞれ守っている対象が違い、AIで作ったことの影響も違います。混ざったまま議論すると話が進まないので、分けて置きます。
| 守り方 | 守っている対象 | AIで作ったことの影響 | 似ていると知らなくても問われるか |
|---|---|---|---|
| 商標権(登録が必要) | 指定した商品や役務についての、目印としての使用 | 自然人が創作したかAIが生成したかに関わらず、拒絶理由に当たらなければ登録を受けられる | 問われる(依拠性は不要) |
| 著作権(登録は不要) | 図案そのものの表現 | 人の創作的寄与が薄いと認められにくい。加筆や修正を加えた部分は通常認められる | 認識がなくても推認されうる |
| 不正競争防止法 | 周知または著名になった商品等表示 | 表示がAIで生成されたものでも保護され得るが、周知や著名になっていることが前提 | 問われる(依拠性は不要) |
表の右端は、原因2で見た非対称です。中間とりまとめは、商標権侵害と、不正競争防止法の商品等表示規制に係る行為について、いずれも依拠性は不要と整理しています。同法第2条第1項第1号は周知な商品等表示との混同を生じさせる行為、第2号は著名な商品等表示を自己の表示として使う行為を不正競争としています。他社にぶつかる側は緩く問われ、自社が守る側は要件が厳しいという構図です。
だから現実的な打ち手は、真ん中の行に期待しないことです。著作権が認められにくい図案を、著作権で守ろうとしても届きません。もっとも、文化庁の考え方は、著作物性がないものであっても、判例上、その複製や利用が営業上の利益を侵害するといえるような場合には、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められ得ると述べています。ただしこれは例外的な救済で、最初から当てにする筋ではありません。
AIが生成した図案でも、商標登録は受けられる
ここまで原因を並べてきましたが、大前提として押さえておきたい整理があります。特許庁の商標制度小委員会は、2025年6月13日の会議で生成AIと商標制度の関係を議題に取り上げました。その資料は、AIを利用して作成された文字や図形を含む商標について、出願や権利行使をする場合であっても、原則として従来の商標登録出願や商標権と同様に扱われるものと考えられる、と整理しています。AIで作ったことそれ自体が登録の妨げになるわけではありません。
理由は商標法の目的にあります。同法第1条は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とすると定めています。資料はこの点を踏まえ、商標法は創作物を保護する法律ではないと述べています。だから、人がAIを利用して生成した商標も、商標の定義を満たせば商標に該当する。創作者にあたる概念がそもそも制度に無いので、誰が作ったかは問題になりません。同じ資料は、自然人が創作したかAIが生成したかに関わらず、従来の商標登録出願と同様、商標法第3条および第4条などに規定された拒絶理由に該当しない限り商標登録を受けることができる、としています。2024年5月の内閣府の中間とりまとめにも同じ考え方が示されています。
ここが原因4との分かれ目です。著作権の側では創作の有無が正面から問われるのに、商標の側では問われません。著作権が認められにくい図案でも、商標登録は通りうる。逆も起こります。2つを1つの話として扱っている解説をよく見かけますが、混ぜると判断を誤ります。守る手段が1つ減っただけで、もう1つは残っているのです。不正競争防止法の商品等表示規制についても、その表示が自然人により創作されたものかAIにより生成されたものかを問わないと整理されています。
この整理は実務の判断を1つ楽にします。生成AIを使ったから出願を諦める、という判断は要りません。逆に、生成AIを使ったことを隠して出願する必要もありません。問うべきは作り方ではなく、その図案が拒絶理由に当たらないかどうか。相談の場で作り方を伝えておいたほうが、記録の残し方まで含めた助言が受けられます。
確かめる順番を決める
原因が分かったら、確かめる順番を決めます。順番が大事なのは、後ろの工程が前の工程の答えを必要とするからです。図案を先に決めてしまうと、使う範囲を後から狭める話になり、事業の側が譲る展開になります。
どの商品やサービスに使うのか、売る相手は誰か、提供の形はどうなるかを文章で書き出します。商標は指定した商品や役務との組み合わせで効くので、ここが決まらないと似ているかどうかも判断できません。広告や取引書類に標章を付して展示したり頒布したりする行為も使用に含まれるため、載せる場所も並べておきます。
丸や三角の組み合わせだけになっていないか、模様の連続反復だけになっていないか、商品の性質をそのまま図にしただけになっていないか。第3条第1項の第3号、第5号、第6号を頭に置いて、社内で先に落とします。ここで落ちる案が半分あっても普通です。
名前と図案の両方で当たりを付けます。文字は読み方から探せますが、図形は後述のとおり自力では追いにくいので、この工程は当たりを付けるところまでと割り切ります。競合の会社案内や展示会の資料は、登録の有無に関わらず目を通しておく価値があります。
類似の判断は、外観と称呼と観念を総合し、具体的な取引状況に基づいて出所の混同のおそれで見る作業です。社内の目視では基準が持てません。ここは専門家に渡す工程だと最初から決めておくほうが、社内の議論が短くなります。
商標権は設定の登録により発生します。使い始めてから出願する順番だと、その間に他社が出願する余地が残ります。公開や発表の日程を先に固めてしまう前に、出願の日程を差し込みます。
うまくいかない進め方も並べておきます。どれも実際によく見かけるものです。
- 図案を決めてから使う範囲を考える:確認できないまま公開日が近づき、確かめる工程が飛ぶ
- 社内の投票だけで決める:好みは集まるが、独自性の弱さは票では見つからない
- 似ている先行例が見つかっても、色を変えて済ませる:類似性は色だけで判断されない
- 公開してから出願する:先に出願された場合に立場が弱くなる
- 生成AIで作ったことを相談先に伝えない:記録の残し方や証拠の助言が受けられなくなる
- 規約を確認しただけで権利の確認を終わりにする:規約は第三者との関係を決めていない
図形の商標を自力で調べる限界と、外注との違い
文字の商標は読み方から探せます。図形だけの図案には読み方がありません。名前を打ち込む検索では拾えないということです。しかも似ているかどうかは、外観と称呼と観念を総合して、具体的な取引状況に基づいて出所の混同のおそれで見る作業です。社内の目視では判断の基準そのものが持てません。ここは自力の確認に限界がある部分だと認めて、専門家に渡す前提で進めるほうが安全です。
外注していた頃との違いも押さえておきます。制作会社やデザイナーに頼む場合、成果物の権利をどちらが持つのか、第三者の権利を侵していないことをどう扱うのかを、契約の中で決められました。自社で生成AIを使って作った場合、その相手がいません。契約で分け合っていた責任を、全部自社が引き受ける形になります。費用が下がった代わりに、確認の責任が寄ってきたと考えるのが正確です。
折衷の進め方もあります。生成AIで方向性の当たりを付け、そこから先は人が起こし直す。文化庁の考え方に照らせば、人が創作的表現といえる加筆や修正を加えた部分については通常著作物性が認められるとされているので、守れる範囲が広がります。加えて、直した経緯が記録として残ります。全部をAIに任せるか、全部を人に任せるかの二択ではありません。
弁理士に渡す前に、社内でそろえる材料
相談の場で最初に聞かれるのは図案ではなく用途です。図案だけを持ち込むと、その日は用途の聞き取りで終わります。先にそろえておくと1回で進みます。
- 何に使うか:商品やサービスの中身を、売る相手と提供の形まで書く。似ているかどうかは商品や役務との組み合わせで決まる
- どこに載せるか:広告、包装、画面、取引書類、看板。広告や取引書類に標章を付して展示や頒布をする行為も使用に含まれる
- いつから使いたいか:公開の日程と、出願の日程の順番を並べて示す
- どう作ったか:生成AIで作った旨、与えた指示、試した回数、人が直した箇所
- 気になっている先行例:自社で見つけた似た図案や名前を、見つけた経路とともに渡す
4番目を隠さないことが特に大事です。AIで生成した図案でも登録は受けられるのですから、伝えて不利になる話ではありません。伝えていないと、著作物性の主張の余地や、証拠の残し方についての助言が受けられなくなります。隠すことで失うものだけがある項目です。
あわせて、この記事の位置づけをはっきりさせておきます。ここまで整理したのは制度の枠組みと、確かめる順番です。個別の図案が他社の商標に似ているかどうかの結論は、弁理士や弁護士の判断の領域です。本記事の内容で結論を出さず、判断の材料をそろえるところまでに使ってください。制度の運用は改まることがあるので、条文や審査の考え方は相談時に最新のものを確かめる前提で持ち込みます。
差し替えになる前に確かめておく項目
最後に、社内で回せる形にまとめます。図案を決める会議の前と、公開の1か月前に、この一覧で点検してください。埋まらない項目が残っているうちは、公開の日程を動かせる状態にしておくほうが安全です。
- 使う商品やサービスと、載せる場所を文章で書き出したか
- 図案が、丸や三角の組み合わせだけ、模様の連続反復だけになっていないか
- 同じ業種で似た目印がないか、名前と図案の両方で当たりを付けたか
- 似ているかどうかの最終判断を、専門家に渡す工程として日程に入れたか
- 出願の日程が、公開や発表の日程より前に置かれているか
- 使った道具の規約で、商用の利用と出力物の扱いを確認したか
- 与えた指示、試した回数、人が直した箇所の記録が残っているか
- 採用しなかった案と、その時点の規約の版を保存しているか
- 使い始めた日と、載せた場所の一覧を1枚にしてあるか
- 差し替えが必要になった場合の作業範囲と費用を、決裁者が把握しているか
10項目のうち、いちばん飛ばされやすいのは5番目です。公開日が先に固まると、出願の日程は後ろに押し出されます。逆に言えば、この1項目を守るだけで最も痛い事故が減ります。
言葉の意味をそろえておく
この分野の言葉は、日常の言い方とずれています。社内の会議と専門家との打ち合わせで意味が違うまま進むと、確認したつもりの項目が抜けます。使う言い方を先にそろえておきます。
- 標章:文字、図形、記号、立体的な形、色彩、またはこれらの結合や音など、目印そのもの
- 商標:標章のうち、業として商品や役務について使うもの。目印と用途の組み合わせで初めて商標になる
- 指定商品と指定役務:その商標をどの商品やサービスに使うかとして指定した範囲。効き方はこの範囲で決まる
- 外観と称呼と観念:見た目、呼び方、意味合い。類似の判断でこの3つを総合して見る
- 識別力:自社の商品やサービスを他社のものと区別する働き。簡単でありふれた形や地模様だけでは足りない
- 依拠性:相手のものを認識して作ったかどうか。著作権では要件になるが、商標権の侵害では不要とされている
- 先願主義:先に出願したほうが登録を受けられるという考え方。使い始めた順ではない
言葉がそろうと、依頼の仕方が変わります。この図案は大丈夫でしょうかという尋ね方では、返ってくる答えの範囲が定まりません。この商品とこの役務に、この図案を使いたい。似ている先行例はこれ。この日から使いたい。この3点でどう見えますかと尋ねれば、必要な判断だけが返ってきます。相談の精度は、そのまま差し替えの危険の大きさに効きます。
まとめ
AIで図案を作れるようになっても、会社の目印として使い続けられるかは別の関門です。使えなくなる原因は7つに切り分けられます。他社の登録商標と似ていた、知らなかったという言い分が通らない、独自性が弱く登録できない、生成物に著作権が認められにくい、同じ指示から他社にも似た図案が出る、道具の規約で使える範囲が決まっている、どう作ったかの記録が残っていない。制度の側から見ると、他社にぶつかる側は依拠性を問われないのに、自社が守る側は要件が厳しいという非対称が全体を貫いています。商標権侵害と不正競争防止法の商品等表示規制では依拠性が不要とされ、著作権では学習していたことから依拠性が推認されうる。一方で自社が守ろうとすると、著作権は創作的寄与が薄いと認められにくく、不正競争防止法は周知や著名になっていることが前提になります。残る道は商標登録で、こちらはAIが生成した図案でも、拒絶理由に該当しない限り登録を受けられるとされています。だから順番は決まります。使う範囲を先に書き出し、独自性を社内で疑い、似た目印の当たりを付け、専門家に渡し、出願と公開の日程を並べて決める。あわせて、与えた指示と試行と人が直した箇所を記録に残し、使い始めた日と載せた場所の一覧を1枚にしておく。まずは、いま使っている図案と、これから使う予定の図案について、どの商品や役務に使っているかを書き出すところから始めてください。書き出せない図案は、まだ確認が始まっていない図案です。個別の結論は弁理士や弁護士に確かめる前提で進めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
コンテンツ制作にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
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