AIエージェントの同時実行で決める5項目|衝突と待ちを防ぐ

AIエージェントの同時実行で決める5項目|衝突と待ちを防ぐ

「1本だけ動かしていたときは順調だったのに、10本に増やした途端、半分が途中で止まるようになりました」「速くしたくて同時に走らせる本数を倍にしたのに、終わる時刻はほとんど変わりませんでした」——社内の定型業務をAIエージェントに移し始めた会社から、本数を増やした直後に届く報告です。ここで疑われるのはたいていモデルの性能か指示文の書き方ですが、原因はどちらでもありません。同時に走らせる本数は、速さを決める設定ではなく、壊れ方を決める設定です。増やして困るのは遅いままだからではなく、1本のときには起きなかった衝突が起きるからです。この記事では、同時に何本まで走らせてよいかを何を見て決めるのかを、5つの項目に分けて整理していきます。


カメ先生カメ先生

同時に走らせる本数を増やすと速くなる、と思われがちだけれど、実際に速くなるのは、動いている時間の大半を相手の返事待ちに使っている仕事だけなんだ。詰まっている場所が別にあると、本数を増やしたぶんだけ順番待ちが伸びる。


カメ子カメ子

増やしても、待つ場所が移るだけということですか。


カメ先生カメ先生

そういう形になることが多いね。しかも本数が増えると、1本ずつでは起きなかったことが起きる。2本が同じ相手に同時に書き込むと、先に入れたほうが消えたり、同じ登録が2件できたりする。速さの話の前に、この壊れ方をどう防ぐかを決めておく必要があるんだ。


カメ子カメ子

速さの話と、壊れ方の話は、別々に決めるということでしょうか。


この記事のポイント
  • 本数は最初に決める数ではなく、最後に出てくる数。相手側の上限・同時の書き込み・費用・止め方・人が見きれる量の5つを順に置いて、いちばん小さい数に合わせる
  • 増やして速くなるのは、待ち時間が長い仕事だけ。詰まっている場所が走らせている本数の外側にあると、増やしても順番待ちが伸びるだけになる
  • AIに本数を決めさせない。契約上の上限も残りの予算も確認できる人数も、AIの側からは見えていない。人が数値を決めて設定として渡す

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目次

「本数を増やせば速くなる」が成り立つ条件は狭い

同時実行を増やす提案は、たいてい「終わる時刻を前倒ししたい」という要望から出てきます。ところが本数を倍にしても終わる時刻がほとんど変わらない、という結果はよく起きます。速くなるのは、1本が動いている時間の大半を相手の返事を待つことに使っている場合だけです。待っている間に別の本を進められるから速くなるのであって、走らせる本数そのものが速さを作るわけではありません。

逆に、1本が動いている時間の大半を、自社の側の処理や、1つの口の順番待ちに使っている場合は、本数を増やしても列が伸びるだけです。2026年に公開された並列実行の実務解説でも、共有している資源がいっぱいになった後は、本数を足しても受け付けられる仕事は増えず、待ちとやり直しだけが増えると整理されています。増やす前に、待っているのがどこなのかを見る必要があります。

この見分けは、感覚ではなく1本の実測でつきます。1本を最初から最後まで走らせ、相手の返事を待っている時間と、自社の側で計算や書き込みをしている時間を分けて測る。待ちが大半を占めていれば増やす価値があり、自社側の処理が大半なら増やしても効きません。境目の数値は業務ごとに違うので、まずは自分たちの1本で比率を出すところから始めます。

詰まっている場所は、走らせている本数の外側にある

増やして速くならないとき、詰まっている場所は4か所のどれかです。つなぐ先が一定時間に受け付ける要求の数。同時に張れる接続の数。自社側で動かせる作業の枠(計算する装置と記憶領域)。そして書き込む先の台帳が同時に扱える数。どれか1つが先に上限に当たった時点で、それ以上は増えません

数で見ると分かりやすくなります。1分間に120回まで受け付ける相手に対して、1件の仕事が3回呼び出す作りなら、計算上の天井は1分間に40件です。ここに本数を8本並べようが30本並べようが、1分間に40件を超えることはありません。むしろ30本にすると、上限に当たって断られる回数だけが増え、断られた分の送り直しで回線も費用も食います。

この天井は、走らせる側の設定をいくら見ても出てきません。相手の側の条件と、1件が何回呼び出すかの掛け算で決まります。先に天井の数を出し、その数を超えない本数に抑える——順番はこちらです。本数を決めてから相手の上限を調べる順番にすると、必ずどこかで断られます。

決める5項目を、先に1枚で見る

同時実行の設定を1つの数字で決めようとすると、必ずどれかを見落とします。見るべき条件は5つあり、それぞれ性質が違います。次の表は、5つの中身と、決めないまま本数を増やしたときに現場で何が起きるかを並べたものです。自分たちの設定がどれを欠いているかは、症状の側からも引けます。

決める項目何を見て決めるか決めないまま増やすと何が起きるか
1. 相手側が受け取れる上限つなぐ先が一定時間に受け付ける要求の数と、同時に張れる接続の数全員が同じ瞬間に断られ、送り直しの波が止まらなくなる
2. 同じものへの同時の書き込み複数の本が同じ台帳・同じ行・同じ在庫に触るかどうか先に入れた内容が上書きされる。同じ登録が2件できる
3. 費用の上限1本あたりの想定費用と、1日で使ってよい総額止め忘れた1本が、翌朝までにその月の予算を使い切る
4. 止められるかどうか走っている本数の一覧と、途中で止める操作があるかおかしいと気づいても、終わるまで見ているしかなくなる
5. 人が見きれる本数出てきたものを人が確認する速さと、確認に使える時間誰も見ていない出力が溜まり、間違いがそのまま下流へ流れる

5つの順番には意味があります。1と2は壊れるかどうかの話で、3から5は会社と人が耐えられるかどうかの話です。1と2が未決のまま3から5を詰めても、壊れる設定を安く運用するだけになります。順番を入れ替えないでください。

決める人も先に置きます。1と2は仕組みを作った側、3は予算を持つ側、4と5は運用を回す側が決めるのが自然です。ここを全部ひとりに任せると、たいてい1と2だけが詳細に決まり、5が空欄のまま運用が始まります。

項目1:相手側が受け取れる上限を、数で握る

上限は「1分間に何回まで」の1種類ではありません。要求の回数、扱える語の量、1日あたりの総数、同時に張れる接続の数と、少なくとも4種類あります。ある解説が2026年半ば時点で各社の最も低い契約段階をまとめた数値では、1分間の要求数が50回から500回、1分間に扱える語の量が3万から400万と、提供元によって桁が違うほどの開きがありました。契約の段階を上げれば緩みますが、緩んでも無制限にはなりません。

  • 1分(または1秒)あたりに受け付けられる要求の回数
  • 1分あたりに扱える語の量(入れる側と出す側で別に数えられていることがある)
  • 1日あたりの総回数(分単位の上限に余裕があっても、こちらで先に止まる)
  • 同時に張ってよい接続の数(本数の上限そのもの。明記されていないことが多い)

同じ解説では、10本のエージェントが1秒に1回ずつ呼び出すと、1分間500回の枠を50秒で使い切ると示されています。20本なら25秒、50本なら10秒です。本数を増やすほど、枠を使い切るまでの時間が短くなるという関係は、走らせる前に紙の上で計算できます。計算してから設定するか、動かしてから気づくかの違いしかありません。

調べ方も決めておきます。上限は契約の書面か管理画面に載っていますが、載っている数字が現在の契約段階のものとは限りません。使い始めてから段階が上がっている場合も、逆に上限の考え方そのものが変わっている場合もあります。半年に1度、見る日を決めて確かめる人を置いてください。

断られた全員が同じ秒に戻ってくると、波が止まらない

上限に当たると、相手は「今は受け付けられない」という応答を返します。ここで10本が同時に断られ、10本とも1秒後にそろって戻ってくると、また同じ瞬間に10本ぶんの要求が立ち上がり、また全員が断られます。2026年の解説ではこれを群れが一斉に押し寄せる状態として説明しており、1回の上限超過が、終わらない失敗の輪に変わると整理されています。しかも断られた呼び出しでも、使った語の分の料金は発生します。

手当ては単純で、戻ってくる時刻をばらけさせることです。待ち時間を一定にせず、0からその時点の上限までの間で毎回ばらばらに選ぶ。同じ解説では、基準を1秒、上限を64秒として、試行のたびに倍にしていく形が指針として挙げられています。ばらけさせるだけで、同じ瞬間に戻ってくる確率は本数が多いほど下がります。

ここで区切りを1つ。やり直しの回数と間隔をどう決めるか、何回やってもだめなときにどこへ置くかは、別の記事の領分です。同時実行の側で決めるのは1つだけ——やり直しの最中も、走っている本数の一部として数えることです。20本の枠でやり直しが6本走っていれば、新しい仕事に使える枠は14本しかありません。ここを数えていないと、枠は空いているはずなのに何も進まない、という状態になります。

項目2:同じものに同時に書き込むと、何が壊れるか

2本以上が同じ場所に同時に書くと、結果は「どちらが正しいか」ではなく「どちらが後だったか」で決まります。先に読み込んだ側が後から書けば、その間に入った変更は消えます。2026年に公表された並列実行の調査では、複数のエージェントによる不具合の内訳として、仕様のあいまいさが42%、連携の破綻が37%、検証の弱さが21%という分類(2025年公表の研究による)が引かれており、連携の破綻の中身は同時の書き込み・古い状態の読み取り・判断と実行のずれだと説明されています。

壊れ方は3つに分かれます。1つ目は上書きで、先に入れた内容が消えます。2つ目は二重で、同じ登録が2件できます。3つ目は半端で、片方だけ進んで対になる処理が進んでいない状態です。組み合わせの増え方も問題で、同時に走る本数が10本なら、ぶつかりうる組み合わせは45通りになります。本数が増える速さより、ぶつかる機会が増える速さのほうが速いということです。

3つ目の半端がいちばん見つけにくくなります。送信は済んでいるのに記録が残っていない、在庫は引き当てたのに注文が立っていない、といった状態は、どの画面を見ても異常として出てきません。気づくのは月末の突き合わせのときで、そのころには何本目のどの処理だったかを特定できなくなっています。

書く相手ごとに、触ってよい本を1本に絞る

対策の基本は、速さを捨てて全部を1本に戻すことではなく、書く先ごとに持ち主を決めることです。1つの台帳、1つの外部の登録先には、書き込む本を1本だけに決める。読むのは何本からでもよい。2026年の整理でも、各エージェントが自分の担当する範囲の状態だけを持ち、共有する状態は取りまとめ役を1つ通して触る形が勧められています。

持ち主を分けられない場合は、書く順番を一列に並べる仕組みを間に置きます。書き込みの依頼を列に積み、取り出して処理するのは常に1つ。処理の速さは落ちますが、落ちるのは書き込みの部分だけで、その手前の読み取りや整形は並べたまま進められます。全体を遅くするのではなく、ぶつかる一点だけを細くするのが要点です。

同じ登録が2件できる経路は2つあります。片方は、やり直しによって二度目の実行が起きる経路。もう片方は、別々の本が同じ瞬間に同じ場所へ書く経路です。前者の防ぎ方は別の記事に譲ります。見た目は同じ二重でも、直す場所が違うからです。前者は呼び出す側に同じ鍵を付けて送り、2回目は新しく作らず1回目の結果を返させる。後者は書き込む先の側で、持ち主か順番待ちの列を作る。混ぜて考えると、どちらも中途半端になります。

項目3:費用の上限は、1本あたりと全体の両方に置く

本数を増やすと費用が本数どおりに増える、とは限りません。2026年の並列実行の調査では、複数で分担する形は同じ仕事を1本でやる場合に比べて、やり取りする語の量が3倍から5倍になると整理されています。前提の受け渡しに語が要るためで、本数に比例するのではなく、渡す回数に比例して増えるという性質があります。同じ調査は、終了条件を書いていない並列の仕組みが費用の暴走の最大の単独要因だとも述べています。

上限の置き方は2段です。1本あたりの上限(この仕事で使ってよい語の量、呼び出しの回数、動いてよい時間)と、全体の1日あたりの上限。片方だけだと抜けます。1本あたりだけだと、上限内の本が100本走ったときに止まりません。全体だけだと、暴走した1本が他の99本の枠を食い潰します。ある開発基盤では、24時間の移動窓で使ってよい量に既定の上限を置き、超えたら止まる作りになっています。

費用の上限は、止める判断とつないでおく必要があります。上限に達したときに警告を出すだけの設定にしておくと、夜間や休日は誰も見ません。上限に達したら止まる、を既定にして、止めたくないものだけを名指しで例外にする——この順番を逆にすると、翌朝に請求だけが残ります。

項目4:止めたいときに止められるか

同時実行で最も軽視されるのがこれです。1本なら画面を閉じれば終わりますが、20本が別々の場所で動いていると、どこで何が走っているかの一覧が要ります。一覧がないと、おかしいと気づいても止める対象を特定できません。本数を増やすというのは、止める操作を先に用意しておく約束とセットの決定です。

止める仕組みは3段で考えます。1段目は新しく始まるものを止める(受付を閉じる)。2段目は走っている途中のものを止める。3段目は、途中で止めたものが半端な状態を残していないかを確かめる。2段目だけを用意して3段目を用意しないと、止めた後の後始末が手作業になり、止めること自体をためらうようになります

実装の形は仕組みごとに違いますが、確かめる問いは共通です。今何本走っているかが1か所で見えるか。名前を指定して1本だけ止められるか。全部をまとめて止める操作があるか。止めた後に、どこまで進んでいたかが残るか。この4つに全部「はい」と答えられない状態で本数を増やすのは、止まるかどうかを確かめずに速度を上げるのと同じことになります。

項目5:人が見きれる本数から、逆に決める

機械の側の上限をすべて満たしても、出てきたものを人が確認できなければ、増やした意味がありません。1日に200件の出力が出て、確認に使える時間が1日2時間なら、1件に割ける時間は36秒です。36秒で判断できる形になっていない出力を200件出すのは、確認していない200件を作ることと同じです。

だから順番を逆にします。確認に使える時間を先に置き、1件あたりに割ける時間を出し、その時間で判断できる形に出力を整え、そこから1日に流してよい件数を決め、最後に本数を決める。本数は最初に決める数ではなく、最後に出てくる数です。5つの項目からそれぞれ数が出てきたら、いちばん小さい数に合わせます。

見きれないときの逃げ道は2つあります。1つは、全件を人が見るのをやめて抜き取りに切り替えること(何件に1件かを決める)。もう1つは、機械で判定できる部分を先に落として、人が見る対象を絞ることです。どちらも人が確認する範囲を先に決めるという同じ作業で、決めないまま増やすと、見ていないものを見たことにする運用が定着します。

待たせてよい処理と、割り込ませる処理を分ける

同時実行の枠は有限なので、全部を同じ列に並べると、画面の前で人が待っている問い合わせが、夜間のまとめ処理の後ろに並ぶ事故が起きます。処理の性質ごとに枠を分けてください。次の表は、分け方と、その枠での扱いを並べたものです。

処理の種類待たせてよいか同時実行での扱い
画面の前で人が待っている問い合わせ待たせられない専用の枠を空けておき、まとめ処理と同じ列に並べない
夜間にまとめて回す集計・整形待たせてよい空いている時間帯に寄せ、本数の上限をいちばん高くしてよい
外部に送る・登録する処理順番を崩せない同じ相手ごとに1本に絞り、順番待ちの列を別に分ける
前の回で終わらなかった分の処理後回しでよい通常の列と分けて置き、空いた枠だけで進める

枠の配り方の例です。全体を20本とするなら、まとめ処理に12本、人が待つ処理に6本、残り2本を空けておく。空けておく枠は、急ぎの差し込みと、止めた後の後始末に使います。全部を埋めきると、止めるための操作すら順番待ちになります

分けた枠は固定にします。空いているから貸す、という設定にすると、まとめ処理が全部の枠を取った状態が続き、分けた意味が消えます。貸し借りを入れるなら、返させる条件を先に書いてください。書けないなら、固定のままにしておくほうが安全です。

本数を増やす前に、1本で通しきれるかを確かめる

1本で最後まで通らない仕事は、本数を増やしても通りません。増やすと、通らない仕事が同時に何本も通らなくなるだけです。増やす前の確認は、次の順番で進めます。

STEP1
1本を通しで走らせ、時間の内訳を測る

最初から最後まで1本だけ走らせ、相手の返事を待っている時間と、自社側で処理している時間を分けて記録します。ここで待ちが少なければ、本数を増やす前に処理の側を直すほうが効きます。

STEP2
1件が相手を何回呼ぶかを数える

1件あたりの呼び出し回数と、相手の上限(一定時間あたりの回数)から、本数の天井を計算します。この段階でまだ設定は触りません。

STEP3
同じ場所に書く処理を洗い出す

その仕事が書き込む先を全部書き出し、他の本も同じ場所に書くかどうかを見ます。重なる先があれば、持ち主か順番待ちの列を先に用意します。

STEP4
2本にして、同じ結果になるかを見る

いきなり10本にせず、2本で同じ入力を流します。1本のときと結果が変わる、記録が1件足りない、といった差が出たら、そこが衝突の場所です。

STEP5
止める操作を試してから、段階的に増やす

2本が走っている状態で、1本だけ止める操作と全部止める操作を実際に試します。止まることを確かめてから、4本、8本と段を上げていきます。

段を上げるときは、1段ごとに時間を空けます。上げた直後は正常に見えても、上限に当たるのは枠を使い切ったあと——つまり数十秒から数分たってからです。上げてすぐ次の段に進むと、どの段で壊れたのかが分からなくなります。

この順番を飛ばして一気に増やすと、症状が重なって出ます。断られる応答と、書き込みの衝突と、費用の急増が同時に起きるため、どれが原因でどれが結果なのかを切り分ける作業に数日かかります。段階的に上げるのは慎重さの問題ではなく、原因を1つに絞れる形を保つための手順です。

設定した本数と、実際に走っている本数はずれる

20本と設定したのに、記録を見ると同時に動いていたのは3本だった——この食い違いは珍しくありません。原因は、走らせる側の設定より手前に、別の上限が既定で入っているからです。ある開発基盤では、1つの実行系につき同時に動くのは1本という既定が置かれています。設定で20本と書いても、その手前で1本ずつに整列させられます。

連鎖を防ぐための既定も入っています。同じ基盤では、他の仕組みを呼び出す操作が既定で1回までに制限され、割り当ての間に10秒、呼び出しの間に5秒の間隔が強制的に挟まれます。急に集中して立ち上がるのを避けるための仕掛けで、こちらの設定では外せません。20本を並べたつもりでも、5秒ずつずれて立ち上がるなら、最初の1本が終わるころに最後の1本が始まるという動き方になります。

逆向きのずれもあります。1本の中で複数の呼び出しを並べる作りにしていると、設定上は5本でも、相手から見れば同時に15本が来ていることになります。相手側の上限に当たっているのに、走らせている側の一覧には5本としか出ていない——この形は原因の特定がいちばん難しくなります。数えるなら、走らせている本数ではなく、相手に届いている要求の数を数えてください

確かめ方は、設定ではなく記録の側から見ることです。同じ時刻に何本が動いていたかを、開始時刻と終了時刻から数え直す。打ち切りの既定(ある基盤では20分)に当たって終わっていた本が混ざっていることもあります。設定した数と、記録から数えた数と、相手に届いた要求の数——この3つがそろって初めて、本数の議論ができます。どれか1つだけを見て増やすと、増えたのは数字だけ、という結果になります。

増やしても速くならなかったときに見る3つの数字

本数を増やしたのに終わる時刻が変わらない場合、見る数字は3つです。1つ目は、断られた応答の割合。2つ目は、順番待ちに費やされた時間。3つ目は、1本あたりの所要時間です。この3つを増やす前と後で並べると、原因はほぼ特定できます。

読み方は単純です。断られる割合が上がっているなら、相手側の上限に当たっています——本数を戻すか、1件あたりの呼び出し回数を減らします。順番待ちの時間が伸びているなら、自社側の枠が足りていません——枠を増やすか、待たせてよい処理を別の時間帯に移します。1本あたりの所要時間が伸びているなら、書き込みの衝突で待たされています——持ち主を決め直します。

3つとも動いていないのに速くならない場合は、そもそも待ち時間の少ない仕事だったということです。この場合は本数を戻し、別の手を打ちます。効かなかった設定を残したままにすると、次に誰かが調べるときの材料が濁ります。戻したことと、戻した理由を記録に残してください。

実際に起きる失敗の形

ここまでの5項目を決めないまま本数を増やした場合に、現場で実際に起きる形を並べます。どれも珍しい事故ではなく、決めていないと順番に起きるものです。

  • 夜間に20本を走らせ、上限に当たった全員が同じ間隔で送り直し、朝まで断られ続けた。処理は1件も進んでいないのに、使った語の分の料金だけが積み上がっていた
  • 2本が同じ顧客の情報を同時に更新し、先に入れた担当者の変更が消えた。消えたことに気づいたのは、その担当者宛ての連絡が届かなくなった3週間後だった
  • 外部への登録処理を並べて走らせ、同じ内容が2件登録された。片方を消したところ、消したほうを参照していた別の処理が止まった
  • 費用の上限を警告だけに設定していたため、金曜の夜に暴走した1本が月曜の朝まで走り続けた
  • 本数の一覧を用意していなかったため、おかしいと気づいてから止める対象を特定するまでに2時間かかった
  • 機械の側の上限に合わせて本数を決めたが、出力を確認する担当が1人のままだったので、確認されていない出力が毎日積み上がった

共通しているのは、どれも増やす前に決めておけば起きなかったという点です。しかも決める作業そのものは短く、5項目を1枚に書き出して数値を埋めるだけなら1時間もかかりません。かかるのは決める時間ではなく、決めていないまま動かした後の調査の時間です。

起きてしまった後の直し方にも順番があります。まず本数を1本に戻して、症状が消えるかを確かめる。消えるなら本数に起因する問題です。消えないなら、もともと1本でも起きていた問題が、本数を増やしたことで目立つようになっただけです。この切り分けを先にやらないと、本数の設定を触り続けて時間を使うことになります。

AIに本数を決めさせない。人が上限を決めて渡す

状況に応じて本数を自動で調整させる、という設計は魅力的に見えますが、判断の材料が足りません。AIの側からは、契約上の上限も、その月にあといくら使ってよいかも、確認する人が何人いてどれだけ時間を割けるかも見えていません。見えていない条件で決めさせれば、判断は増やす方向に倒れます。増やしたほうが目の前の仕事は速く終わるからです。

渡し方はこうします。人が数値を決めて、設定として渡す。AIに任せるのは、決められた上限の範囲で仕事をどう並べるかまでにする。上限そのものを書き換えられる権限は渡しません。上限の変更を提案させるところまでは任せてよいのですが、提案と適用の間に人を1人置く形にしてください。

そして、決めた数値の根拠を書き残します。「20本」という数字だけを残すと、半年後に誰も理由を説明できず、増やしてよいのかどうかも判断できません。なぜ20本なのか、5項目のどれから出てきた数なのかを1行添える。この1行はAIに書かせてもかまいませんが、書かれた根拠が実際の上限と合っているかは人が確かめます。根拠まで出させておくと、間違いは結論より先に根拠の側に現れます。

まとめ

同時実行の設定は、速さのつまみではなく、壊れ方の境目です。増やして速くなるのは待ち時間の長い仕事だけで、詰まっている場所が別にあれば、増やしたぶんは順番待ちに変わります。決めるのは5つ——相手側が受け取れる上限、同じものへの同時の書き込み、費用の上限、止められるかどうか、人が見きれる本数。この5つからそれぞれ数が出てきたら、いちばん小さい数に合わせます。増やす前に1本で通しきれるかを確かめ、2本で結果が変わらないことを見てから段を上げる。そして本数はAIに決めさせず、人が数値と根拠を書いて渡してください。設定を1時間で決めておくか、壊れた後に数日かけて調べるかの違いになります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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