知らずに使っているダークパターン|不利にさせない画面の点検

知らずに使っているダークパターン|不利にさせない画面の点検

「うちは利用者を誘導するようなことはしていないので、ダークパターンとは無関係だと思っていました」「解約の導線はきちんとあるので、隠しているわけではありません」——自社サイトの表示を見直す場では、この二つが先に出てきます。ただ、ダークパターンは、作り手に悪意があって初めて成立するものではありません。見られているのは意図ではなく画面の作りのほうで、同じ重さの選択肢が、押しやすさの点で不均等になっていないかどうかが判断の軸になります。この記事では、消費者庁が並べた28の型を自社の申込み・料金・解約の画面に当てる順番、日本の条文のどこで問題になりうるか、海外の規制がどこに線を引いたか、そして生成AIに任せてよい範囲と、任せてはいけない判断を順に整理します。


カメ先生カメ先生

ダークパターンは、だます意図があって初めて成立すると思われがちですが、調査や規制が見ているのは画面の作りのほうです。意図の有無ではなく、同じ重さの選択肢に押しやすさの差があるかどうかで判断されます。


カメ子カメ子

意図がなくても当てはまることがある、ということですか。


カメ先生カメ先生

そうです。登録数を増やすために入れた既定のチェックや、問い合わせを減らすために深くした解約の階層が、そのまま型に当てはまります。順番としては、まず型に当てはまる箇所を洗い出し、そのあとで条文に当てます。


カメ子カメ子

型に当てはまることと、法律に触れることは別だということでしょうか。


この記事のポイント
  • ダークパターンは意図では決まらない。消費者庁が整理した28の型を自社の画面に当てるところから始める
  • 型に当たったことと、法に触れうることは別。前者は洗い出し、後者は条文に当てて人が判断する
  • 生成AIに文言やボタンの並びを作らせると成果の出やすい型に寄る。洗い出しは任せられるが、直す順と法の判断は人が持つ

AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

目次

「意図がなければダークパターンではない」という誤解

消費者庁が2026年6月に公表した消費者意識調査の概要版は、この言葉の定義として経済協力開発機構の2022年の整理を引いています。そこには「通常オンライン・ユーザー・インターフェースに見られ、消費者を誘導し、欺き、強要し又は操って、多くの場合、消費者の最善の利益とはならない選択を消費者に行わせるもの」と書かれています。読み返すと分かるのは、この定義に「意図」という語が入っていないことです。誰がどんな気持ちで作ったかではなく、結果として利用者がどんな選択をさせられるかで区切られています。

この違いは実務の入口を変えます。意図で判断するなら、点検は担当者への聞き取りになります。しかし聞き取りでは何も出てきません。既定のチェックを入れた担当者は登録数を上げたかっただけで、解約の階層を深くした担当者は問い合わせを減らしたかっただけです。どちらも自分の仕事をしただけなので、「誘導した」という自覚がありません。だから点検は聞き取りではなく、画面から数えられる量を並べるところから始めます

数えられる量は4つあります。ボタンの押せる面積、文字の大きさ、色の濃さ、そして目的に着くまでの操作回数です。この4つを、対になる選択肢どうしで並べて書き出すと、主観の入る余地が消えます。「申込みのボタンは横240点で解約のリンクは横64点」「申込みは3手で完了、解約は7手」という形にすれば、直すべきかどうかを画面を見ていない人にも説明できます。点検票の1行目にこの4つを置くのが、いちばん早い進め方です。

消費者庁が並べた28の型と、行動データで確かめられたこと

同じ概要版は、日本の実態に即して可能な限り網羅的に調べる目的で28種類の型を選んだと書いています。選定の元になっているのは、2025年4月に公表された「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」のリサーチ・ディスカッション・ペーパーです。28の型は9つの大分類に整理され、そのうち下線が引かれた7つの大分類が経済協力開発機構の7分類に対応すると注記されています。自社の画面に当てるときは、この一覧をそのまま点検の項目名として使うのが早いです。

大分類小分類(型の名前)
行為の強制強制登録/強制的情報開示
インターフェース干渉隠された情報/偽りの階層表示/事前選択/不当参照価格/ひっかけ質問/偽装広告/感情のゆさぶり
執拗な繰り返し執拗な繰り返し
妨害キャンセル困難/価格比較妨害/削除不能アカウント/中間通貨
こっそり買物かごにこっそり追加/隠れたコスト/隠れ定期購入・強制的継続
社会的証明アクティビティメッセージ/お客様の声/No.1表示・高満足度
緊急性在庫わずか/カウントダウンタイマー・期間限定
言語的な行き詰まり未翻訳/頭文字や略語による比喩表現
その他みなし同意/未成年者の法定代理人同意確認/自動スクロール/追跡メール

調査は2つに分かれています。1つ目は認識性調査で、10代から70代以上の男女1,200人に対し、2025年12月26日から2026年1月4日にかけて実施されました。結果として、何らかのダークパターンを見たことがある回答者は76.2%、過去1年間で何らかのダークパターンを経験した回答者は37.5%でした。7つの大分類ごとの経験率は、図表から読み取れる限りでは1割前後から2割弱の範囲に収まり、もっとも高いのは期限や在庫で急がせる型でした。

2つ目は心理的誘導度調査で、1,600人に対し2026年2月20日から25日にかけて実施されました。架空の動画配信サブスクリプションサービスのサイトを構築し、契約と解約の操作ログという行動データを取っています。契約の場面では各群200人、解約の場面では各群400人という設計です。概要版は「ダークパターンが含まれる場合は、ダークパターンが含まれない場合と比べて事業者にとって望ましいと想定した選択」が取られる傾向が見られたと書いています。具体的には、契約の場面ではより高額なプランの選択率が高い傾向、解約の場面では「解約した」割合が低い傾向です。

解約の場面の設計は、そのまま点検の観点として使えます。弱い妨害は「解約ページが見つけにくい、最終確認のポップアップ追加」、中程度は「最終ページで解約しない選択肢を強調」、強い妨害は「ポップアップによる継続的な阻害」と説明されています。この3段階は、自社の解約画面がどの段にいるかを当てるための目盛りになります

  • 概要版は「本調査は一定の前提条件及び実験設計の下で実施した結果であり、その結果は当該条件に依存するものである」と留保している。数字は自社の画面の効果の見積りには使えない
  • 架空のサービスは動画配信のサブスクリプションに設定されている。物販や法人向けの申込みでは、同じ型でも効き方が違う可能性がある

なぜ悪意なしに自社の画面へ入り込むのか

入り込む経路は、経験上3つに集約されます。1つ目は成果指標が単一になっていることです。登録完了数や継続率だけを見て改善を回すと、数字を上げる方法として「片方を押しやすくする」が最短になります。利用者が後で不利益に気づく確率は、その指標に写りません。だから善意の改善が、そのまま選択の非対称に育ちます。

2つ目は画面が分割して作られていることです。申込みのページは制作会社、料金表はマーケティング部門、解約と退会は基幹システムの側、というように担当が分かれていると、申込みから解約までを通しで触った人が社内に一人もいない状態になります。この状態では、申込みが3手で解約が9手になっていても誰も気づきません。点検の最初にやるべきことは、一人が最初から最後まで通しで操作して、手数を数えることです。

3つ目は文言と部品の使い回しです。他社の申込み画面を参考にする、過去のキャンペーンの文言を流用する、画面部品の集まりから既定値ごと持ってくる。こうして持ってきた部品には、前の文脈で成果を出すために付いた非対称が残っています。使い回しは効率がよい反面、型ごと引き継ぐ経路になります。

  • 「うちは誘導していない」という前提で聞き取りから始める。担当者に自覚はないので何も出てこない
  • 画面の1枚だけを見て判断する。非対称は申込みと解約を並べたときにしか見えない
  • 指摘された箇所だけを直す。同じ部品が使われている他の画面が残る
  • 改善の成果指標を変えずに文言だけ直す。次の改善で同じ型に戻る

型1 既定で入っているチェックと、みなし同意

消費者庁の一覧では「事前選択」と「みなし同意」が別の型として並んでいます。前者は初期状態で選択済みにしておくこと、後者は明示の同意を取らずに同意したものとして扱うことです。自社の画面での現れ方は、メール受信の同意、関連サービスの案内、有料オプションの初期選択、そして申込みボタンの近くに置かれた小さな注記です。

この型で押さえるべき条文は、特定商取引法の施行規則第42条第1項です。この規則は、法第14条第1項第2号でいう「顧客の意に反して申込みをさせようとする行為」として、「申込みの内容を、顧客が…操作を行う際に容易に確認し及び訂正することができるようにしていないこと」を挙げています。つまり、確認と訂正ができる状態にしていないこと自体が、指示の対象になりうる行為として書かれているわけです。何かを偽ったかどうかではありません。

点検の観点は3つです。任意の項目の初期状態が外れているか。必須と任意が見た目で区別できるか。最終の確認画面で、選んだ内容が一覧として出て、そこから戻って直せるか。この3つを画面ごとに書き出すだけで、直す箇所はほぼ確定します。なお、同意文にどの項目を書くか、外部送信の規律をどう満たすかは別の論点なので、ここでは扱いません。当サイトの同意バナーとフォームの同意項目の記事に譲ります。

型2 解約の入口を隠し、階層を深くする

一覧では「キャンセル困難」と「削除不能アカウント」が該当します。自社の画面で起きるのは、解約の案内をよくある質問の奥に置く、会員ページの設定の下層に置く、検索窓で解約と打っても案内ページが上に出ない、受付を電話だけにする、といった形です。どれも単体では「隠している」と言い切りにくいところが、この型の扱いにくさです

だから数で切ります。実務仕様としては、申込みが完了するまでの操作回数と、解約が完了するまでの操作回数を並べて書くのがいちばん強いです。差が2手以上あるなら、その差の理由を1行で書けるかどうかを確かめます。本人確認が必要だから、契約の単位が複数あるから、といった理由が書けるなら残します。書けないなら、それは慣性で増えた手数です。

先の調査は、この型の効きを行動データで確かめています。妨害の程度を弱・中・強と強めていく設計で、妨害が強いほど「解約した」割合が低い傾向が見られたと概要版は書いています。弱い段の内容が「解約ページが見つけにくい」だったことは、見つけにくさそのものが妨害として設計に組み込まれていることを示しています。なお、メール配信の解除を1操作にする実装は受信箱の側の話なので、ここでは画面側の解約と退会だけを扱います。

型3 期限と残数で急がせる

一覧の「緊急性」には、在庫わずかの表示と、カウントダウンタイマーや期間限定の表示が並んでいます。調査の図表から読み取れる限りでは、7つの大分類のうち経験率がもっとも高いのがこの型でした。よく見かける型であるということは、自社で使っていても誰も指摘しない型であるということでもあります。

点検の観点は、表示が実体と連動しているかどうかに集約されます。残数の数字は在庫の実数から引いているか、それとも固定値か。タイマーは読み込みごとに初期値へ戻らないか。期間限定と書いた条件が、実際には年間を通じて出ていないか。この3つのうち1つでも「連動していない」に当たると、表示と実際の取引条件が食い違っている状態になります。

食い違いが問題になりうる条文は、景品表示法第5条第2号です。同号は、価格その他の取引条件について「実際のもの…よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを禁じています。同法第8条第1項は、これに違反する行為について課徴金対象期間の売上額に100分の3を乗じた額の課徴金を定め、その額が150万円未満のときは命ずることができないとしています。同条第5項では、基準日から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある場合、100分の3を100分の4.5と読み替えると定めています。

型4 費用と定期購入を最後まで見せない

一覧の「こっそり」には、買物かごにこっそり追加、隠れたコスト、隠れ定期購入・強制的継続が並びます。調査の契約の場面では、この2つが実際に作り込まれていました。概要版の説明では、隠れ定期購入の群は「無料プランを強調し、定期購入・解約料有りであることを伏せて誘導」する作り、隠れたコストの群は「アカウント管理費・解約料等のコストを最終確認まで伏せて認知を阻害」する作りです。後者では、300円のアカウント追加費を適切に答えられた割合が低い傾向が出ています。

この型でいちばん効く条文は、特定商取引法第12条の6です。2021年の改正で加わり、2022年6月から施行されている条文で、第1項は申込みの手続が表示される画面に、商品や役務の分量と、第11条第1号から第5号までの事項を表示しなければならないと定めています。第11条の第1号から第5号は、販売価格または対価(送料が含まれない場合は販売価格および送料)、代金または対価の支払の時期および方法、引渡時期または提供時期、申込みの期間に関する定めがあるときはその旨および内容、申込みの撤回または解除に関する事項です。

同条第2項は、その画面で2つの表示を禁じています。1つは、送信が申込みになることについて人を誤認させるような表示。もう1つは、第1項の各事項について人を誤認させるような表示です。最終確認画面にこの5項目が揃っているかを1枚の点検票で見るだけで、この型のほとんどは片付きます。無料期間がある商材では、終わりの日付と、その後いくらになるかを同じ画面に書いてあるかを追加で確かめます。

型5 確認画面で選択肢の見た目に差をつける

一覧の「偽りの階層表示」がこれに当たります。調査では、解約の最終ページで「解約しない」選択肢を強調する作りとして再現されていました。自社の画面では、料金プランの比較表で勧めたい段だけ枠と色を強くする、確認画面で「戻る」を灰色の文字リンクにし「進む」を大きな塗りのボタンにする、といった形で現れます。

この型は、冒頭に挙げた4つの量で機械的に測れる唯一の型です。対になる2つの選択肢について、押せる面積、文字の大きさ、色の濃さ、置かれる高さを並べて書きます。4つのうち3つ以上に差があるなら、それは意味の重さの差ではなく押しやすさの差として設計されています。点検票にはこの4列を置き、差のある行だけを直す対象にします。

欧州連合のデジタルサービス法は、第25条で禁じられる設計の例として特定の選択肢をより目立たせることを挙げています。国内の条文に直接の見出しはありませんが、打消しの注記を本文よりはるかに小さく置いた結果、取引条件が実際より有利に見えるなら、景品表示法第5条第2号の議論に入ります。注記は「同じ画面で、本文と同じ流れで読めるか」を基準にします。

型6 退会の前に引き止めを挟む

一覧の「執拗な繰り返し」がこれに当たります。調査で強い妨害として設計されたのは「ポップアップによる継続的な阻害」でした。実務でよく見るのは、退会の操作の途中で割引の提案を出す、理由の入力を必須にする、期間を空ける提案を挟む、といった形です。引き止め自体が禁じられているわけではありません。問題になるのは回数と、そこから退会に戻る道が残っているかどうかです。

線の引き方は2つで足ります。引き止めは1回までにし、2回目以降は出さない。そして引き止めの画面から、同じ画面のまま退会を完了できるようにしておく。「詳しくはこちら」で別画面に飛ばし、そこから退会の入口が消える作りは、回数が1回でも実質的に妨害になります。

欧州連合のデジタルサービス法第25条は、すでに選択した事項について繰り返し選択を求めることと、解約の手続を申込みより難しくすることを、禁じられる設計の例として挙げています。この2つは、そのまま自社の点検の観点として使えます。国内で規制の議論が進む前に直しておけるのは、この型のように海外で先に線が引かれた型です。

日本の法律のどこに当たるのか

ここまで型ごとに条文を挙げてきましたが、まとめて並べておきます。特定商取引法の側では、第11条が通信販売の広告に表示すべき事項、第12条が誇大広告等の禁止、第12条の6が申込みを受ける画面の表示です。施行規則第42条第1項は、申込みの内容を容易に確認し訂正できるようにしていないことを禁止行為として定めています。第14条第1項は、これらに違反した場合に主務大臣が是正の措置を指示できると定め、同条第3項は「指示をしたときは、その旨を公表しなければならない」と書いています。

景品表示法の側では、第5条第1号が品質や内容についての優良誤認、第5条第2号が価格その他の取引条件についての有利誤認です。第8条が課徴金納付命令で、売上額の100分の3という水準と、150万円未満なら命じないという下限、10年以内の再度なら100分の4.5になるという上乗せが定められています。急がせる表示と価格の見せ方は、この2条に当たりやすい領域です。

大事なのは、ここまでの整理が「型に当たったから違法」という話ではない点です。型は洗い出しのための道具で、条文の要件は別に立っています。だから点検の結論は「違法である」ではなく、「この条件が揃うと第何条の議論に入る」という形で書きます。たとえば残数の表示なら、固定値であること、実際の在庫と乖離していること、その表示が申込みの判断に影響しうること、この3つが揃ったときに有利誤認の議論に入ります。

  • 2026年8月24日の第8回デジタル取引・特定商取引法等検討会では、「中間取りまとめ(案)」と参考資料集が配布された。報道では2026年9月2日に中間報告書としてとりまとめられ、広告・契約・解約の各段階に規制を設ける方向で、次の通常国会への特定商取引法の改正案の提出を目指すとされる
  • つまり、いま断定できるのは現行の条文までである。改正の内容を先取りして自社の基準にするのは早いが、解約の手数と費用の表示は方向がはっきりしているので、先に直しても無駄にならない

海外の規制。欧州の規則と米国の措置

欧州連合には、2022年に成立したデジタルサービス法という規則があります。第25条が「オンラインインターフェースの設計及び組織」を扱い、利用者の自由で情報に基づく判断をゆがめたり妨げたりする形で画面を設計・運用してはならないと定めています。禁じられる設計の例として、特定の選択肢をより目立たせること、すでに選択した事項について繰り返し選択を求めること、解約の手続を申込みより難しくすることが挙げられています。この規則の全面適用は2024年2月17日からです

米国では、連邦取引委員会が2022年9月に、ダークパターンを扱ったスタッフ報告書を公表しています。定期購入と自動更新については、解約を申込みと同じ手段で行えるようにする規則が2024年に定められましたが、2025年に連邦の控訴裁判所の判断で無効とされたと伝えられています。規則が動いても、表示や解約の妨害に対する個別の措置は従来の枠組みで続いているため、実務の警戒水準は下がっていません。

国内の会社にとって、海外の枠組みには2つの意味があります。1つは、欧州の利用者に向けて画面を提供している場合に、自社の画面が別の枠のもとで見られうるということです。もう1つは、海外で先に線が引かれた型は、国内の議論でも早く論点になりやすいということです。解約の手続を申込みより難しくしないという線は、先に挙げた検討会の議論の方向とも重なります。この2つは、直す順を決めるときの重みづけとして使えます。

生成AIに文言とボタンの並びを作らせると、型に落ちる

ここからがこの記事のもう一つの主題です。生成AIに画面の文言やボタンの並びを作らせると、成果を上げる書き方として、そのまま型に当てはまる案が返ってきます。頼み方が悪いからではありません。成果の上がる書き方と、消費者庁が並べた型は、重なる部分が広いからです。実際に起きる4つを挙げます。

1つ目。「解約率を下げる解約画面の文言を書いて」と頼むと、引き止めの一文、継続の利点、残りの期間、そして控えめに置かれた「やめる」という並びが返ります。これは偽りの階層表示と執拗な繰り返しの組み合わせです。2つ目。確認画面の既定値をAIに決めさせると、ほぼ確実に「そのまま進めやすい方」が既定になります。これは事前選択です。3つ目。料金の比較表を作らせると、勧めたい段が中央や強調の位置に来ます。これは選択の非対称です。4つ目。無料期間の案内文を短くさせると、終わりの日付と自動更新の一文が最初に落ちます。これは隠れ定期購入です。

ここで押さえておきたいのは、「AIが作った文言だから意図はなかった」という説明が通らないことです。特定商取引法第14条第1項の指示は、表示をした販売業者または役務提供事業者に対して行われます。同条第3項により、指示をしたときはその旨が公表されます。景品表示法第5条も、表示をした事業者を対象にしています。誰が下書きを書いたかは条文の要件に入っていません。下書きの出どころが人でもAIでも、画面に載せた時点で自社の表示です。

  • AIに「成果が上がる文言」を頼み、返ってきた案をそのまま画面に載せる
  • 既定値や並び順の決定をAIに任せる。既定値は表示ではなく設計の判断なので人が決める
  • AIが出した「この表示は問題ありません」という判断をそのまま点検の結論にする
  • 点検の指示に型の一覧を渡さず、「ダークパターンがないか見て」とだけ頼む

AIに任せる工程と、人が決める工程

では、どこまで任せられるのか。工程で切ると迷いません。任せられるのは抜き出しと候補出しまでで、該当の確定と条文への当てはめ、直す順の決定は人が持ちます。指示の書き方は3つで足ります。判断ではなく抜き出しをさせること。どの画面のどの文字で当てたかという根拠を必ず書かせること。そして、当たらなかった型についても「当たらない」と書かせることです。3つ目を外すと、拾えた型だけが並んだ一覧になり、抜けが見えなくなります。

工程AIに任せてよいこと人が決めること
1 対象を決める画面の一覧の下書きを作るどの画面と文言を点検の対象にするか
2 抜き出す画面の文字、ボタンの並び、既定値を一覧に落とす抜き出しの様式と、抜けの確認
3 型を当てる28の型を渡し、当たりうる候補と根拠を出させる候補のうちどれを該当とするか
4 条文に当てる条文の要件を要素に分けて並べさせる要件に当たるかどうかの判断
5 直す直したあとの文言の案を複数出させる最終の文言、配置、既定値、公開の可否

この切り方の理由は、機械判定の当たり外れが型によって大きく違うことです。偽りの階層表示や事前選択は、画面の文字と属性だけで当たりがつきます。一方で急がせる型は、在庫が実際に動いているかどうかが画面の外にあるので判別できません。偽装広告も、周囲の文脈を見ないと判断できません。だから候補は多めに出させて人が落とす形にします。逆に、AIに絞り込みまで任せると、判別できない型が静かに落ちます。

  • AIへの指示に、28の型の名前を一覧として渡している
  • 根拠として「どの画面のどの文字か」を書かせている
  • 当たらなかった型も「当たらない」と書かせている
  • AIが出した候補のうち、該当とするかを人が1件ずつ決めている
  • 条文に当てる工程は人が担当し、記録を残している

点検の順番。5工程で回す

順番を決めておかないと、指摘された画面だけを直して終わります。5工程で回します。工程3を挟むのが要点で、候補を「表示の事実」に書き直してから条文に当てると、法務と制作の会話が成立します。

STEP1
画面を数える

申込み、料金、解約と退会、同意、メールの受け口の5系統に分け、画面の一覧を作ります。1系統でも抜けると、同じ部品が残ります。

STEP2
型を当てて候補を出す

28の型を項目名にして、画面ごとに当たりうる候補を出します。ここはAIに任せられる工程です。根拠を必ず併記させます。

STEP3
候補を表示の事実に書き直す

「誘導している」ではなく「解約は7手、申込みは3手」「残数の数字は固定値」という形に書き直します。ここを飛ばすと議論が主観に戻ります。

STEP4
条文に当てる

特定商取引法第11条・第12条・第12条の6・施行規則第42条第1項、景品表示法第5条第1号・第2号の要件に照らします。人が担当します。

STEP5
直す順を決めて記録する

解約と退会、費用の表示、既定値、急がせる表示、社会的証明の順に直します。直す前と後の画面を日付つきで保存します。

直す順をこの並びにする理由は、利用者に残る不利益の大きさです。解約できないことは、金銭の負担が続くという形で毎月積み上がります。費用の見落としは、1回の取引で確定します。既定値は気づけば外せます。急がせる表示と社会的証明は、判断を早めますが選択そのものは残ります。後戻りできない不利益が大きい順に直すのが、限られた工数のいちばん効く配り方です。

点検票と、やってはいけない直し方

最後に、画面ごとに埋める点検票の項目を置きます。1画面につき1枚、対になる選択肢がある画面では2つを並べて書きます。数字で埋められる欄だけを作るのが要点で、「適切か」という欄を作ると全部が丸になります。

  • 申込み完了までの操作回数と、解約完了までの操作回数
  • 対になる2つのボタンの押せる面積、文字の大きさ、色の濃さ、置かれる高さ
  • 最終確認画面に、分量・価格と送料・支払時期と方法・引渡時期・申込期間・撤回や解除に関する事項が揃っているか
  • 任意項目の初期状態が外れているか。必須と任意が見た目で区別できるか
  • 残数やタイマーの数字が、在庫や期限の実体と連動しているか
  • 引き止めの回数と、引き止め画面から退会を完了できるか
  • 打消しの注記が、本文と同じ画面で同じ流れで読めるか
  • 直す前と直した後の画面を、日付つきで保存しているか
  • 文言だけ直して配置と既定値を残す。型は配置と既定値のほうに宿っている
  • 解約の入口を増やさず、注意書きを足して済ませる
  • 既定のチェックを外す代わりに、説明文を小さくして同じ効果を残す
  • 指摘された1画面だけを直し、同じ部品を使う他の画面を放置する
  • 点検票に「適切か」という判断欄を作る。数えられない欄は全部丸になる
この記事で使った型の言い換え
  • 事前選択=初期状態で選択済みにしておくこと。みなし同意=明示の同意を取らずに同意として扱うこと
  • 偽りの階層表示=同じ重さの選択肢に、見た目の強さの差をつけること
  • キャンセル困難=解約の入口や手順を、申込みより重くすること
  • 隠れたコスト=合計に含まれる費用を、最終の確認まで見せないこと
  • 隠れ定期購入・強制的継続=継続の契約であることや解約の条件を伏せて申し込ませること
  • 執拗な繰り返し=すでに選んだことについて、繰り返し選び直させること

まとめ

ダークパターンは、作り手の意図で決まる話ではありません。消費者庁が引く定義にも「意図」という語は入っておらず、見られているのは画面の作りと、結果としてどんな選択をさせられるかです。だから点検は聞き取りではなく、押せる面積、文字の大きさ、色の濃さ、操作回数という4つの量を数えるところから始めます。28の型は、その数え方を画面のどこに当てるかを教えてくれる項目名として使います。型に当たったことと、条文に触れうることは別なので、結論は「違法である」ではなく「この条件が揃うと第何条の議論に入る」と書きます。生成AIに任せてよいのは、画面の抜き出し、型の候補出し、根拠の記録、直したあとの文言の下書きまでです。既定値と並び順の決定、該当の確定、条文への当てはめ、公開の可否は人が持ちます。「AIが作った文言だから意図はなかった」は、条文の要件に入っていないので説明になりません。直す順は、解約と退会、費用の表示、既定値、急がせる表示、社会的証明の順です。後戻りできない不利益が大きい順に直し、直す前と後の画面を残してください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

運営会社:株式会社デボノ

目次