CXOレターで経営層に接点を作る5工程|届く相手と書く順番

CXOレターで経営層に接点を作る5工程|届く相手と書く順番

「代表番号にかけても、担当部署に回されて終わる」「役員あてにメールを出したが、返事どころか読まれた形跡もない」——大手企業の決裁者に近づきたい営業企画やマーケティングの現場では、この二つが並んで出てきます。そこで名前が挙がるのが、経営層あてに紙の手紙を出すCXOレターです。ただし、紙にすれば読まれる、という話ではありません。媒体を替えて変わるのは、どこで止まるかという関門の場所であって、止まらなくなるわけではないからです。この記事では、この施策が成り立つ条件、送る相手の決め方から出したあとの追いかけまでの5工程、AIに任せてよい範囲と任せると届かなくなる範囲、郵便と個人データの実務、そして返信率のほかに何を数えるかを順に整理します。


カメ先生カメ先生

手紙にすれば読んでもらえると思われがちですが、実際に替わるのは通る関門の場所です。電話は受付、メールは共有の受信箱、紙の封書は秘書の手元。どこで止まるかが移るだけなんです。


カメ子カメ子

関門が移るだけなら、結局は同じように止まってしまうのではないでしょうか。


カメ先生カメ先生

そこから先を分けるのが封筒の中身です。宛名も文面も他社と同じなら、秘書の手元で束にされます。逆に、その会社にしか書けない一文が最初にあると、本人の机まで運ばれます。


カメ子カメ子

郵送のダイレクトメールと、CXOレターは何が違うのでしょうか。


この記事のポイント
  • CXOレターは量で当てる施策ではない。対象を千社未満まで絞れるときにだけ成り立つ
  • 5工程のうちAIに任せられるのは公開資料の下読みと候補出しまで。相手固有の一文と、何を約束するかは人が決める
  • 返信を待つ設計にしない。出したあとに誰がいつ追いかけるかを、書き始める前に割り当てておく

ウェビナー・セミナーの集客と運営でお困りですか?

企画・集客・運営までデボノが伴走支援。外部リスト頼みにしない「自社の集客力」を育てます。

目次

CXOレターとは何を指すのか

CXOレターは、送り先の企業の経営層や決裁権を持つ役職者に宛てて、一社ごとに中身を変えた手紙を郵送し、面談の機会を作る施策です。手紙営業、トップアプローチといった呼び方もされますが、指しているものは同じです。対象を絞ったうえで、一通ずつ書き分けるところに特徴があります。BtoBマーケティング支援会社の才流が公開しているメソッド記事は、この点を郵送のダイレクトメールとの分かれ目として、「1通ずつカスタマイズできるのが、郵送DMとの大きな違いです。大量のリストに一斉に配布するなら郵送DM、限られたリストに1社ごとに送付するなら手紙DMがおすすめです」と書いています。

電話との関係も先に整理しておきます。同じ記事は「営業電話を迷惑だと感じる方も多く、自社の評判を落としてしまうリスクも伴います。その点手紙は、一方的に相手の時間を奪うことはありません」としています。手紙は相手が開ける時刻を選べるので、こちらの都合で相手の作業を止めないという性質があります。ただしこれは、手紙が電話の上位互換だという意味ではありません。あとで見るとおり、この施策は最後に電話を使うことを前提に組みます。電話そのものの限界と作法は別の記事の範囲なので、ここでは代替ではなく組み合わせだという点だけ押さえます。

宛先の話をもう一つ。役職の頭文字を並べた呼び名が使われますが、実際の宛先は代表取締役に限りません。取締役、執行役員、本部長、事業部長まで含めて、その案件を決められる人が宛先です。決裁の線がどこにあるかは会社ごとに違うので、肩書の高さだけで選ぶと外れます。たとえば数千万円規模の情報システム投資が事業部長の決裁で通る会社と、取締役会に上げる会社では、書くべき相手が二段違います。ここは工程1で詰めます。

なぜ今も紙なのか。媒体を替えると通る関門が替わる

紙が選ばれる理由を、精神論ではなく到達の構造で見ます。代表電話は受付で用件を聞かれ、名指しできなければそこで終わります。役員あてのメールは、サイトに公開されている問い合わせ窓口か、秘書や庶務が見る共有の受信箱に入ります。これに対して郵便物は、宛名に個人名があれば、その人の机か秘書の手元まで物として運ばれます。開けるかどうかの判断が、受付や振り分けの仕組みではなく、人の手に渡る。これが紙の性質です。

ここで注意したいのが数字の扱いです。経営層あての封書がどのくらい開封されているかを示す公開統計は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。世の中に出回っている開封率の数字は、調査対象が一般消費者あての郵送物だったり、出どころが示されていなかったりします。裏の取れない開封率を根拠に予算を通すと、うまくいかなかったときに何を直せばよいか分からなくなります。自社で数えられるのは、出した通数、宛先不明で戻った通数、後追いで実際に話せた人数、面談に至った件数の4つです。この4つで管理します。

確実に本人へ渡す手段も用意されています。日本郵便の本人限定受取郵便は、基本料金に270円を加算すると、受取人本人だけが受け取れる扱いになります。ただしこの方法は、相手に本人確認と受け取りの手続きを求めます。面識のない相手への1通目に使うと、用件より先に手間が届くので逆効果です。使うとすれば、すでに面談したことがある相手に契約関連の書面を送る場面です。初回の接点づくりと、確実な送達は、目的が違います。

向く条件と向かない条件。5工程の全体像

この施策は誰にでも効くものではありません。才流の記事は、手紙施策を検討すべき企業の条件として「ターゲットとなる企業が非常に少ない(例:1,000社未満)」「担当者クラスではなく、決裁権をもった役職者にアプローチしたい」「大手企業の役員と接点を持ちたいが人脈がない」といった項目を挙げています。対象が絞り込めることが前提だと読めます。

裏返すと、向かないのは次の場合です。対象が数万社に広がる。一件あたりの取引額が小さく、書く時間を回収できない。今期の数字を作るために動いている。同じ記事は「場合によっては受注まで1年以上かかることを考慮に入れ、継続的なアプローチが必要です」としています。短期の数字合わせに使うと、投じた時間の分だけ確実に損をする施策です。着手を決める前に、この3つに当てはまらないかを見ます。

成り立つと判断できたら、次の5工程で組みます。工程の名前より大事なのは順番です。後ろの工程から先に手を付けると、必ずやり直しになります。文面を先に作って送り先を後から探すやり方が典型で、できあがるのは誰にでも当てはまる文面です。

STEP1
送る相手を決める

企業を絞り、その中で決められる人を氏名まで特定する。ここで外すと、あとの4工程がまるごと無駄になる。

STEP2
相手の論点を掴む

公開資料から、その会社が今どこに手を入れているかを読む。AIの使いどころはここに集まる。

STEP3
何を約束するかを決める

相手が受け取って損をしない、具体的な次の一手を用意する。会う理由はここで決まり、文面の長さもここで決まる。

STEP4
書く

誰宛か、なぜあなたに出したか、何が起きていると見ているか、自社は何を引き受けられるか、次に何をしてほしいか、の順に書く。

STEP5
出したあとの動き

誰がいつ追いかけるかを、投函前に決めて名前で割り当てておく。ここが空白だと、出しただけで終わる。

工程1 送る相手を決める

この工程は二段階です。まず企業を絞り、次にその企業の中で誰に出すかを決めます。企業の絞り込みは、業種や従業員数といった外形から入らず、過去に受注できた案件と失注した案件の共通点から作ります。才流の記事も、セグメントが定まっていない場合には「過去の受注・失注データの分析や既存顧客の分析、営業へのヒアリングなど」を行って選定するとしています。ここを飛ばして名簿を買うと、そのあとの工程がすべて空回りします。

個人の特定では、部署名と役職名と氏名の3つをそろえます。同じ記事は「手紙を送る際には、『部署』『役職』『氏名』を明記して送付する必要があります」とし、確認先として人事ニュースや組織図、本人のビジネス上の発信を挙げています。ここで手を抜くと、役職名だけの宛名になります。役職あての封書は、その役職の下にいる人が開けて処理します。届いた先が違えば、どれだけ書き込んでも本人には届きません。

忘れられがちなのが、外すものを先に決めることです。既存顧客、商談が進行中の企業、過去に明確に断られた企業。除外の判断を後回しにすると、担当営業が知らないうちに顧客の役員へ新規営業の手紙が届くという事故が起きます。除外リストは、送付リストより先に作ります。実務では、営業の管理台帳から抽出した除外用の一覧を先に固定し、そこに当たらないものだけを送付対象に残す手順にすると、確認漏れが減ります。

部署名の表記ゆれも先に決めます。開発部と研究所、情報システム部と情報企画部のように、同じ機能に別の名前が付いている会社があります。どちらの表記で出すかを決めずに複数人で作業すると、同じ会社に二通が届きます。同一企業の複数部署に出すかどうかも、ここで決めておく項目です。

工程2 相手の論点を掴む

何を書くかは、相手の会社が今どこに手を入れているかで決まります。読む先はおおむね決まっていて、上場企業なら有価証券報告書、決算説明の資料、中期経営計画、統合報告書、それに直近のプレスリリースと採用情報です。有価証券報告書は、企業内容等の開示に関する内閣府令の様式で構成が決められていて、「第2 企業の概況」に「主要な経営指標等の推移」と「事業の内容」、「第3 事業の状況」に「事業等のリスク」という項目が置かれます。どの会社でも同じ場所に同じ種類の記述があるので、読み比べができます。

才流の記事も、文面の確認項目として「何を見て手紙を送付したのか、個別にカスタマイズされた記載をしているか(例:有価証券報告書、インタビュー記事)」「上記のどの部分に着目したのか、個別にカスタマイズされた記載をしているか」の2つを挙げています。つまり出典と着目点の両方が文面に現れている必要がある、ということです。出典だけでは調べたという報告になり、着目点だけでは根拠のない見立てになります。

ここがAIの使いどころです。公開資料は1社あたり数百ページになるので、人が全部読むと1社に半日かかります。読ませて、経営課題として言及されている箇所を原文のまま抜き出させ、掲載箇所とともに並べさせる。この下ごしらえは任せられます。ただし「この会社の課題は何ですか」と要約させると、どの会社にも当てはまる答えが返ってきます。指示は「課題を挙げて」ではなく、「経営課題として書かれている文を、そのままの言い回しで、掲載箇所とともに抜き出して」にします。判断ではなく、抜き出しをさせるということです。

抜き出したあとで人がやるのは、自社が引き受けられる範囲との突き合わせです。相手の論点が10個並んでも、そのうち自社が動かせるのは1つか2つです。動かせない論点に触れると、事情に詳しい人からの挨拶で終わります。残った1つについて、こちらが何を持っているかを一行で書けるかどうかを確かめます。書けないなら、その会社は今回の対象から外します。外す判断ができることが、この工程の成果です。

工程3 何を約束するかを決める

手紙を受け取る側は、その時点で自社の商品に興味を持っていません。才流の記事も「基本的に、手紙を送る段階では『対象者は自社のサービスに興味を持っていない』ことを前提に、内容を吟味しましょう」としています。だから「一度ご挨拶に伺いたい」は約束になりません。相手にとって、会う時間を使う理由がそこに書かれていないからです。

同じ記事はオファーの例として、業界動向の情報提供、自社の大規模な催しへの招待、少人数の勉強会への招待、事例の紹介を挙げています。共通しているのは、相手が受け取るものが具体的で、断っても相手が損をしない形になっていることです。逆に、値引きや無料相談は、受け取る側から見ると自社の商品説明を聞く約束になるので、経営層には効きにくくなります。

決め方の順番はこうです。まず、その論点について自社が持っている情報のうち、外に出せて、かつ相手が自分では手に入れにくいものを1つ選びます。同業他社の取り組みの傾向、自社が支援した案件で分かった落とし穴、社内で取った調査の一部などがこれに当たります。次に、それを渡す形式を決めます。資料を送る、30分だけ話す、少人数の会に招く。形式が決まると、必要な分量と同封物が自動的に決まります。ここが決まらないうちに文面を書き始めると、長さの決まらない手紙ができます。

工程4 書く。構成と分量と同封物

順番は固定します。前の工程で集めたものを、この5つの箱に入れていく作業です。自由に書き始めると、必ず自社の説明から始まる文面になります。

  1. 誰宛か。会社名、部署名、役職名、氏名を正式表記で。宛名は封筒と便箋の両方に置く
  2. なぜあなたに出したか。見た資料の名前と、着目した箇所を具体的に。ここが相手固有の一文になる
  3. 何が起きていると見ているか。こちらの見立てを1つだけ。複数並べると、当てにいっていると読まれる
  4. 自社は何を引き受けられるか。実績ではなく、引き受ける範囲を書く
  5. 次に何をしてほしいか。渡すものと、こちらから連絡する時期を書く

分量は、便箋1枚に収めます。A4判で1枚、文字にして700字前後が上限だと考えてください。2枚になった時点で、見立てが複数入っているか、自社の説明が長いかのどちらかです。相手固有の一文は、最初の段落に置きます。読むかどうかは冒頭で決まるので、後半に置いた固有の記述は存在しないのと同じです。「拝啓」から始まる時候の挨拶を長く取ると、その分だけ固有の一文が後ろに下がります。

同封物は最小にします。会社案内、サービス資料、実績集をまとめて入れると、封筒が厚くなり、封を切る前に販促物だと判断されます。入れるとすれば、工程3で決めた約束の中身そのもの、たとえば数ページの資料か、催しの案内が1枚です。同封物は、手紙で約束したものと一致しているときだけ意味を持ちます。なお、封筒に何を入れられるかには法律上の線引きがあるので、次の章で押さえます。

工程5 出したあとの動き

この工程が空白のまま出す例が、いちばん多く見られます。才流の記事は明確で、「手紙を送付したら、3営業日後からフォローの電話をしましょう。手紙を送って連絡を待つ方法もありますが、内容がよほど魅力的なものでない限り反応はほとんどありません」としています。返信を待つ設計は、この施策では成立しません

誰がかけるかを、投函前に名前で決めます。手紙を書いた本人がかけるのが基本です。書いた人と話す人が違うと、相手が手紙の中身に触れたときに答えられません。電話の入り方も先に決めます。「お読みいただけましたか」から入ると、読んでいない相手を責める形になります。読まれていない前提で、用件から話し始める組み立てにします。秘書につながったときの説明も、手紙を出した日付と、何について書いたかを一文で言えるようにしておきます。

止め時も決めます。何回かけるか、いつまでにかけ終えるか、断られたらどう記録するか。断りの記録が残っていないと、半年後に別の担当が同じ相手へ出し直します。同じ会社から二度目の手紙が来て、しかも前回断ったことに触れていなければ、その会社は候補から外れます。断りの記録は、送付の記録よりも価値があります。実務では、送付台帳の1行に、送付日、宛先、書いた見立て、追いかけた日、結果、次回の可否まで入れておくと、次の便で使えます。

郵便の実務。料金と、信書という線引き

送り方の選択肢と費用を押さえておきます。日本郵便が公開している国内の料金表では、定形郵便物は50g以内で110円、定形外郵便物の規格内は50g以内140円、100g以内180円、150g以内270円です。通常はがきは85円。資料を同封してかさが出るときは、レターパックライトが4kg以内で430円、レターパックプラスが同じく4kg以内で600円です。オプションは郵便物に加算する形で、速達が250gまで300円、簡易書留が350円、特定記録が210円、本人限定受取郵便が270円となっています。

送り方料金受け取られ方使いどころ
定形郵便物(50g以内)110円郵便受けに投函される便箋1枚と薄い同封物。基本はこれ
定形外郵便物・規格内(100g以内)180円郵便受けに投函される数ページの資料を同封するとき
レターパックライト430円郵便受けへお届けA4判の資料を折らずに送るとき
レターパックプラス600円対面でお届けし、受領印をいただく確実に社内へ渡したいとき。ただし受け取るのは秘書や庶務になる
本人限定受取郵便(加算)+270円受取人本人だけが受け取れる面談後の書面。初回の接点づくりには向かない
特定記録(加算)+210円引受と配達の記録が残る届いたかどうかを社内に説明する必要があるとき

次に、封筒に入れられるものの線引きです。総務省の信書のガイドラインは、信書を「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定義しています。同ガイドラインは信書に該当する例として「書状」や「会議招集通知の類」を挙げ、その類例に「結婚式等の招待状、業務を報告する文書」を並べています。また、ダイレクトメールのうち「文書自体に受取人が記載されている文書」も信書に当たるとしています。宛名を書いた手紙も、個人名入りの案内状も、信書です

一方、信書に該当しない文書の例には「書籍の類」が挙げられ、その類例に「新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター、講習会配布資料、研究論文」が並びます。カタログも該当しないとされています。つまり、同封する資料そのものは信書でないことが多いが、手紙本体は信書になるという構造です。

これが実務に効いてくるのは送り方です。郵便法第4条第3項は「運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならない。ただし、貨物に添付する無封の添え状又は送り状は、この限りでない」と定めています。同条第4項は、そうした事業者に信書の送達を委託することも禁じています。違反した場合、同法第76条は「三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する」としています。資料を宅配便で送り、その中に封をした手紙を入れる、という送り方はできません。厚みのある資料を送るなら、レターパックのような郵便の枠組みを使います。

AIで書くと届かなくなる理由

下書きをAIに作らせると、文章としては整ったものが数秒で出てきます。ところが、そのまま出すと反応が落ちます。理由は文章力ではなく、生成された文が平均に寄るという性質にあります。手紙の文面を書かせれば、手紙らしい文面のうち最も一般的なものが返ってきます。その結果、貴社の益々のご発展、昨今の急速な環境変化、少しでもお役に立てればといった、どの会社にも当てはまる言い回しが並びます。

これが致命的なのは、CXOレターの成立条件が一般性の逆にあるからです。才流の記事も、手紙が珍しい手段でなくなった結果として「ありきたりな提案や、カスタマイズがない画一的な提案、抽象的な訴求ではアポイントを取りづらいくなっています。効果が出る手紙、出ない手紙の2極化が進んでいると言えるでしょう」としています。受け取る側は、量産された営業文書を毎日見ています。見慣れた言い回しが冒頭に来た時点で、束のほうへ回されます。

見分け方は単純です。書き上げた文面の各文について、宛先の会社名を別の会社に差し替えても成り立つかどうかを見ます。差し替えても成り立つ文は、削るか書き直します。残った文が、その会社にしか出せない文です。1通の手紙に、この種の文が2つか3つあれば十分に機能します。ゼロなら、工程2に戻ります。

だからAIの役割は、下書きと候補出しまでです。構成の骨組みを出させる、言い回しの候補を5つ出させる、長すぎる段落を短くさせる。ここまでは効きます。その先、相手固有の一文と、何を約束するかの決定は人が書きます。順序としては、先に人が固有の一文を書き、その前後をAIに整えさせるほうが、事故が起きにくくなります。

工程ごとに、AIに任せることと人が決めること

線の引き方を工程ごとに整理します。判断の基準は一つで、間違っていたときに人が気づけるかどうかです。抜き出しや並べ替えは、原典と突き合わせれば間違いが分かります。評価や決定は、間違っていても文面としては自然なので気づけません。気づけない作業は任せない、というのが線です。

工程AIに任せてよいこと人が決めること人が確かめる範囲
1 相手を決める公開情報から役職と氏名の候補を並べる誰に出すかの最終決定宛名は全件、原典で表記まで確認する
2 論点を掴む公開資料から該当箇所を原文のまま抜き出すどの論点を取り上げるか抜き出しの引用元を全件突き合わせる
3 約束を決める自社に何の材料があるかを棚卸しして並べる何を約束するか外に出してよい情報かを人が判定する
4 書く構成の下書きと言い回しの候補出し相手固有の一文と、断りの受け方全文を読み、差し替え可能な文を削る
5 追いかける記録の整形と、次に架電する順の並べ替えいつ止めるか断りの記録は人が読んで確定させる

実務で効くのは、確かめる範囲を先に決めておくことです。「あとで確認する」にすると、通数が増えたときに確認が飛びます。宛名は全件、抜き出しの引用元も全件。ここを削ると、表記の誤りと、資料に書いていない見立てが同時に混ざります。この2つは、どちらも1回で信用を失う種類の誤りです。

もう一つ、AIに根拠を書かせる指示を入れておきます。抜き出しを頼むときに、掲載箇所を必ず添えさせる。候補を出させるときに、なぜその候補なのかを1行で書かせる。根拠が書けない出力は、その場で捨てます。根拠を書かせる指示があると、確認にかかる時間が半分以下になります。

送付先リストの持ち方。個人データとしての扱い

役員の氏名と役職は公開情報ですが、個人を識別できる情報であることに変わりはありません。自社で公開情報から集めて表にした場合も、外部から名簿を受け取った場合も、個人データとして管理する対象になります。特に注意が要るのは、名簿を購入したり、他社から提供を受けたりする場面です。ここには確認と記録の義務が付いてきます。

個人情報保護委員会のガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編、平成28年11月・令和5年12月一部改正)は、法第30条第1項として「個人情報取扱事業者は、第三者から個人データの提供を受けるに際しては、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項の確認を行わなければならない」とし、確認事項に「当該第三者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名」と「当該第三者による当該個人データの取得の経緯」を挙げています。取得の経緯については、「取得先の別(顧客としての本人、従業員としての本人、他の個人情報取扱事業者、家族・友人等の私人、いわゆる公開情報等)、取得行為の態様(本人から直接取得したか、有償で取得したか、いわゆる公開情報から取得したか、紹介により取得したか、私人として取得したものか等)などを確認しなければならない」と説明しています。作成した記録の保存期間は、原則として3年とされています。

同ガイドラインには重い記述もあります。「仮に、適法に入手されたものではないと疑われるにもかかわらず、あえて個人データの提供を受けた場合には、法第20条第1項の規定違反と判断される可能性がある」。また、確認事項を偽った提供者については「法第30条第2項。同項に違反した場合には法第180条により10万円以下の過料」と注記されています。安いから、早いからという理由で出どころの分からない名簿を買うと、リスクを買っていることになります

実務としては、リストの1行ごとに、取得日、取得元、取得の経緯を残す形にします。自社で公開情報から集めたなら、その旨と参照した資料の名前を書きます。同ガイドラインは、確認や記録の義務を免れる目的で「あえて分断して形式的に『個人データには該当しない個人情報』として提供を受ける行為は、法の潜脱であり、確認・記録義務を免れることはできない」とも述べています。抜け道を探す方向に工夫しないことです。なお、自社の取り扱いが具体的にどれに当たるかは、同委員会が公表している資料と、社内の法務や顧問弁護士で確認してください。ここは記事の一般論で決めきれる範囲ではありません。

後追いのメールは、紙とは規律が違う

紙の手紙は、特定電子メール法の対象ではありません。同法は特定電子メールを「電子メールの送信(略)をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。略)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう」と定義しているためです(法第2条第2号)。問題は、手紙のあとにメールへ切り替えた瞬間です。同じ相手、同じ用件でも、そこから規律が変わります。

メールは原則として、あらかじめ同意した相手にしか送れません(法第3条第1項第1号)。同意がなくても送れる相手として、同項は3つの類型を置いています。1つ目は自己の電子メールアドレスを通知した者で、総務省と消費者庁のガイドラインは「名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した場合には、書面を提供した側にも、書面の通知を受けた者から電子メールの送信が行われることについての一定の予測可能性がある」と説明しています。2つ目は「当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者」(第3号)。3つ目は「自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)」(第4号)です。

3つ目には条件が付きます。施行規則第3条のただし書は、「自己の電子メールアドレスと併せて特定電子メールの送信をしないように求める旨の文言をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いたときは、この限りではない」としています。サイトにアドレスと一緒に営業のご連絡はお断りしますと書いてある会社は、この例外から外れます。手紙の後追いでメールを使うなら、送る前にこの表示の有無を見ます。

送るときの表示義務もあります。同ガイドラインは、送信に責任のある者の氏名や名称を表示する義務(法第4条第1号)と、受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレスまたは連絡先を表示する義務(同条第2号)を説明し、あわせて住所と苦情の受付先の表示にも触れています。これらを守っていない場合は措置命令の対象になり得ます(法第7条)。なお、このガイドライン自体は平成23年8月のものです。自社の運用が現行の規律に合っているかは、総務省と消費者庁の最新の公表資料と、社内の法務で確認してください。ここは断定できる範囲ではありません。

効果の測り方。返信率だけで測ると0件で終わる

見込みの水準を先に共有しておきます。才流の記事は「個別にカスタマイズされた手紙を送り、フォローコールも併せて実施した際の平均的なアポイント獲得率は1%程度。最も高い場合では10%以上のケースもあります」としています。またテレワークの影響として「テレワークが一般化した今でも、手紙施策によって5%以上のアポイント獲得率を実現している企業も存在します。さまざまな企業の平均値を踏まえると、コロナ以前と比較してアポイント獲得率は3割減程度の影響が出ていると考えられます」と書いています。ただし、この数字の集計方法や母数は記事に示されていません。自社の目標値としてそのまま置くのではなく、桁の目安として読む数字です。

この桁が意味するのは、10通や20通では、うまくいったかどうかを判断できないということです。1割に近い水準が出る場合でも、10通なら1件です。1件出たか出なかったかは、文面の良し悪しではなく、その1社の事情で決まります。判断の単位は、少なくとも数十通、できれば3回の便をためてからにします。

そのうえで、数える対象を返信以外に広げます。直接の指標は、出した通数、戻ってきた通数、後追いで話せた人数、面談に至った件数。これに加えて、手紙が効いたときに出やすい間接の兆しを、送る前に決めておきます。これらは面談に至らなかった通数の価値を示す、ほぼ唯一の手がかりです

  • 自社名や商品名での検索が、送付から2週間のうちに増えたか
  • サイトの特定のページに、送付先の企業からとみられる訪問があったか
  • 展示会や別の商談の場で、先方から手紙の話題が出たか
  • 宛先とは別の部署から、問い合わせや資料の請求が来たか
  • 後日、別の経路で紹介を受けたときに、その紹介元が送付先と同じ会社だったか

この5つは、いずれも手紙と1対1では結びつきません。検索が増えた理由は他にもあるので、因果を主張するのではなく、送った週と送らなかった週の差として見ます。差が続けて出るなら効いていると判断し、出ないなら文面より先に宛先の選び方を見直します。無理に効果を証明しようとして後追いのメールに追跡用の仕掛けを増やすと、相手が受け取る印象のほうが悪くなります。

記録の形も決めておきます。誰に、どの資料を見て、どの見立てを書いたか。この3つが残っていないと、次の便で何を変えたのか分からなくなります。変えた点が分からなければ、結果が良くても悪くても学べません。AIに任せてよいのは、この記録の整形と並べ替えです。何を変えるかの決定は人が持ちます。

やってはいけない5つ

最後に、実際に成果を落とす型を並べます。どれも「効率を上げよう」とした結果として起きるところが共通しています。

  • 全社に同じ文面を送る。宛名だけを差し替えて数を出すと、量産された営業文書として処理される。工程2と工程3を飛ばした時点で、この施策の前提が消える
  • 会社名や役職や氏名を誤る。旧社名、株式会社の位置、廃止された部署名、退任した役員。1文字の誤りで、その会社にしか出せない手紙という前提が崩れる
  • 届いた前提で電話して、お読みいただけましたかと聞く。読んでいない相手を責める形になり、秘書の段階で断られる。読まれていない前提で用件から話す
  • 同封物で厚くする。会社案内と実績集とサービス資料をまとめて入れると、封を切る前に販促物として仕分けられる
  • 断られた相手に、担当を替えて出し直す。断りの記録を共有していないと半年後に起きる。相手から見れば、断ったことが伝わっていない会社になる

2つ目の表記の誤りは、対策が具体的です。宛名は必ず原典で確認します。会社の正式表記は法人の登記や自社サイトの会社概要で、役員の在任は直近の人事に関する発表で確かめます。表記の確認をAIの出力だけで済ませないこと。会社名や役職名は、もっともらしい形で誤りが混ざる典型的な箇所です。他社名の表記については別の記事で詳しく扱っているので、そちらも参照してください。

5つ目については、記録の作り方で防げます。断られた事実を、断られた日と理由の要旨とともに残し、次の送付リストを作るときに必ず突き合わせる手順にします。除外の突き合わせは、リストを作った直後ではなく、投函の直前に行います。作成から投函までのあいだに商談が始まっていることがあるからです。

出す前に埋める項目

着手前に、次の項目が埋まっているかを見ます。空欄のまま進めた項目が、あとで手戻りになる箇所です。

  • 対象企業を絞る条件を、過去の受注と失注から作ったか(業種と規模だけで決めていないか)
  • 除外リスト(既存顧客・商談中・過去に断られた企業)を、送付リストより先に固定したか
  • 宛先を、部署名と役職名と氏名の3つで特定したか。役職名だけの宛名になっていないか
  • 宛名の表記を、会社の公式な表記と直近の人事の発表で確認したか
  • 見た資料の名前と、着目した箇所の両方を文面に書いたか
  • 見立てを1つに絞ったか(複数並べて当てにいっていないか)
  • 約束することを1つ決め、その形式(資料・面談・催しへの招待)まで決めたか
  • 文面の各文を、別の会社名に差し替えても成り立つかで点検し、成り立つ文を削ったか
  • 同封物が、手紙で約束した中身と一致しているか。会社案内一式になっていないか
  • 送り方を決めたか(定形郵便か、資料を入れるならレターパックか。宅配便に信書を入れていないか)
  • 追いかける担当と日付を、投函前に名前で割り当てたか
  • リストの取得元と取得の経緯を、行ごとに記録したか

この一覧のうち、最も飛ばされやすいのが8番目の点検です。書き上げたあとに自分の文章を削るのは心理的に負担が大きいので、そのまま出したくなります。ただ、差し替えても成り立つ文は、読み手にとっては空白と同じです。削っても情報は減りません。実務では、書いた人ではない第三者に、会社名を伏せた状態で文面を読ませて「どこの会社宛か想像がつくか」を聞くと早く済みます。

11番目の担当と日付の割り当ても、抜けやすい項目です。投函までは高い集中で進み、投函した時点で気が緩みます。封筒に切手を貼る作業と同じ日に、追いかけの予定を予定表に入れてしまうのが確実です。3営業日後という目安があるので、投函日が決まれば予定は自動的に決まります

まとめ

CXOレターは、紙にすれば読まれる施策ではありません。電話は受付、メールは共有の受信箱、紙は秘書の手元というように、媒体を替えると通る関門の場所が替わるだけです。そこから先を分けるのは、その会社にしか書けない一文があるかどうかです。だから工程は、相手を決める、論点を掴む、何を約束するかを決める、書く、出したあとに追いかける、の順に固定します。後ろから手を付けると、誰にでも当てはまる文面ができあがります。AIに任せてよいのは、公開資料からの抜き出し、候補出し、構成の下書き、記録の整形までです。判断ではなく抜き出しをさせること、根拠を書かせること、人が確認する範囲を先に決めることを外さなければ、1社あたりの手間は大きく減らせます。相手固有の一文と、何を約束するかの決定は人が持ちます。郵便の側では、手紙本体は信書に当たるため宅配便では送れないこと、同封物を増やすほど販促物として扱われやすくなることを押さえます。リストは取得の経緯まで記録し、後追いでメールに切り替えるときは紙とは別の規律がかかることを確認します。効果は返信率だけで測らず、出した通数、話せた人数、面談件数に加えて、指名検索や別部署からの問い合わせといった間接の兆しを先に決めてから数え始めてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

ウェビナー・セミナーの集客と運営でお困りですか?

企画・集客・運営までデボノが伴走支援。外部リスト頼みにしない「自社の集客力」を育てます。

運営会社:株式会社デボノ

目次