商標の下調べはAIに任せてよい?|名前を決める前の手順

「この名前で進めていいでしょうか」「無料の検索で調べたら何も出てこなかったので、たぶん大丈夫です」——サービス名や施策の名前を決める場面で、告知の日程が固まったあとに法務や知財の窓口へ届く相談です。ここで見るべきなのは、検索の結果そのものではありません。下調べは「似た名前が無い」ことの確認ではなく、「どこまで確かめたか」を後から説明できる形で残す作業です。何も出てこなかったという事実は、その日その条件では見つからなかった、という以上のことを意味しないからです。この記事では、名前を決める前にどこまでを社内で調べ、どこから先を専門家に渡すのか、その線引きと手順を整理します。
カメ先生名前の下調べというのはね、検索して何も出てこなければ終わり、と思われがちなんだ。ところが出願されたばかりの名前は、まだ表に出ていないんだよ。
カメ子調べた時点では、そもそも載っていない名前があるということですか。
カメ先生載るまでに間がある。特許庁は、原則として出願日から2、3週間程度たってから出願の内容が一般に公開されると案内している。つまり「出てこなかった」は、その時点までの世界の話でしかないんだ。
カメ子見つからなかったことと、無いことは別なのですね。
- 下調べの目的は「無い」の確認ではなく、どの条件でどこまで確かめたかを残すこと
- 調べる順番は、自社の使用実績、公的なデータベース、一般の検索、専門家の4段
- 言い換えと読み方のゆれの洗い出しはAIが速い。似ているかの判断と区分の当てはめは、人が根拠を書いて決める
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「出てこなかった」が安全の根拠にならない3つの理由
まず、無料の検索で見つからなかったという結果が、なぜそのまま安心材料にならないのかを押さえます。理由は3つあり、いずれも特許庁自身が案内の中で注意している内容です。ここを飛ばすと、後の手順がすべて「気休め」になります。
- 公開までの間がある:出願の内容が一般に公開されるのは、原則として出願日から2、3週間程度たった後です。先週出願された名前は、今日引いても出てきません。
- 反映までの間がある:特許庁は、情報の反映までにタイムラグが生じることがあると明記しています。公開済みでも、検索の側に載るまでに差が出ます。
- 引き方で漏れる:特許庁は、検索の仕方によっては網羅的に検索ができていない可能性があるとして、検索項目やキーワードを変えて何度も引くことを勧めています。
3つ目は特に見落とされます。たとえば、ひらがな・カタカナ・ローマ字は別の文字として扱われます。カタカナで引いて0件でも、同じ読みのひらがな表記やローマ字表記の登録が別にある、ということが普通に起きます。1回引いて0件だったという記録には、ほとんど価値がありません。価値があるのは、どの条件で何回引いて、それぞれ何が出たかという記録のほうです。
この前提を社内で共有しておくと、報告の言葉が変わります。「調べましたが問題ありませんでした」ではなく、「読み方で3通り、文字で2通り、区分を2つ指定して引きました。近いものは1件で、分野が離れています」と言えるようになる。後者は判断材料ですが、前者は判断材料ではありません。この違いが、名前を決める会議の質を決めます。
社内で調べる範囲と、専門家に渡す範囲を先に分ける
下調べは4つの段に分かれます。順番に意味があり、前の段を飛ばすと後の段の費用が無駄になります。特に、自社の使用実績を確かめる前に外を探し始めるのは、よくある遠回りです。社内で既に使っている名前と衝突していれば、外を見る前に候補から外れるからです。
| 段 | 何が分かるか | その段で出せる結論 | 担い手 |
|---|---|---|---|
| 1 自社の使用実績 | 社内で既に使っている名前、過去の出願、契約書での呼び方 | 候補が社内で衝突していないか。使い始めた時期の記録が残る | 事業部門と法務 |
| 2 公的なデータベース | 登録されている商標と、公開済みの出願 | その時点で、同じ読み・同じ文字の登録が見えるかどうか | 担当者 |
| 3 一般の検索 | 登録はされていないが実際に使われている名前 | 同じ分野で先に使っている相手がいるかどうか | 担当者 |
| 4 専門家 | 似ていると判断される見通しと、出願の設計 | 進めてよいかの判断材料と、進めた場合の費用と期間 | 弁理士 |
段が上がるほど、出せる結論は強くなり、費用も上がります。だから候補を絞る作業は下の段で済ませ、上の段には残った候補だけを渡すのが基本です。候補が10個あるうちに専門家へ渡すと費用が10倍になりますが、3個まで絞ってから渡せば3倍で済みます。絞る作業こそ、社内で丁寧にやる価値がある部分です。
手順1:自社がその名前を今どう使っているかを確かめる
最初にやるのは、外を探すことではなく、内側の棚卸しです。過去に出願した名前、既に別の部署が使っている名前、取引先との契約書に書かれている呼び方、資料の表紙に載っている略称。これらを集めると、候補の半分は「社内で既に別の意味を持っている」という理由で落ちることがあります。
もう1つ、この段には日付の記録を作るという役割があります。商標法第32条第1項は、他人の商標登録出願の前から日本国内で不正競争の目的でなく使っていて、その出願の時点で自分の商品や役務を表すものとして需要者の間に広く認識されていた場合に、継続して使う権利を認めています。いわゆる先使用権です。ただし「広く認識されていた」の要件は重く、社内で使っていたという記録だけで満たされるものではありません。
それでも記録は取っておく価値があります。後から争いになったとき、いつからどの範囲で使っていたかを示せるかどうかで、取れる手が変わるからです。使い始めた日、掲載した資料、配った部数、公開したページの日付をひとまとめにしておく。これは名前を決めた後ではなく、決める前に始めておく作業です。
手順2:公的なデータベースで当たる
特許庁の情報を検索できる公的なデータベースがあり、工業所有権情報・研修館が提供しています。誰でも無料で使えます。ここでは画面の操作は説明しません。大事なのは、どのボタンを押すかではなく、何を変えて何回引くかの設計だからです。
引く軸は3つあります。1つ目は読み方です。同じ読みになる名前を広く拾う引き方があり、これが最も取りこぼしが少ない軸になります。2つ目は文字そのもので、候補の文字列を含む名前を探します。ひらがな・カタカナ・ローマ字を別々に引く必要があるのはこの軸です。3つ目が区分で、自社が使う商品や役務の分野に絞り込みます。
引いた結果は、件数だけを残しても意味がありません。引いた条件・引いた日・出てきた名前・その名前が指定している分野を、候補ごとに1枚にまとめます。この1枚が、後で専門家に渡す材料になり、社内の承認資料にもなります。0件だったときも、どの条件で0件だったかを書いておきます。
ミニ用語解説:区分と類似群という考え方
下調べの話が通じなくなる最大の原因が、区分という言葉です。商標は「マーク」だけでは登録できず、そのマークをどの商品・どの役務に使うかをセットで指定します。この指定するものを分野別に分類したものが区分で、特許庁の案内によれば第1類から第45類まであります。分類の元になっている国際分類は、第13-2026版が最新です。
特許庁が挙げている例が分かりやすいので借ります。「自動車並びにその部品及び附属品」は第12類、「自動車の修理又は整備」は第37類です。両方を指定すると2区分になります。費用は区分の数で動きます。特許庁の案内では、出願料は3,400円に1区分あたり8,600円を加えた額、登録料は1区分あたり32,900円です。広く取るほど確実になりますが、そのぶん費用が増え、他社の商標と衝突する確率も上がります。
もう1つ知っておくとよいのが類似群という考え方です。似ている商品や役務には同じ符号が付けられていて、特許庁の例では書籍と新聞は同じ符号、書籍とタオルは違う符号になります。区分が同じでも似ていない組み合わせがあり、区分が違っても似ている組み合わせがあるということです。だから「区分が違うから大丈夫」という判断は、そのままでは成り立ちません。
手順3:登録されていない使われ方を、一般の検索で見る
公的なデータベースに出てこない名前でも、使えば問題になりうる場合があります。不正競争防止法第2条第1項第1号は、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一または類似の表示を使い、その他人の商品や営業と混同を生じさせる行為を不正競争としています。同項第2号は、他人の著名な商品等表示と同一または類似のものを自分の表示として使う行為を挙げています。
この2つは、商標が登録されているかどうかを要件にしていません。だから、登録が無い相手でも、その分野で広く知られていれば話が持ち上がる可能性があります。一般の検索で見るのは、まさにこの層です。同じ業界で、その名前を実際に使っている先がいないかを確かめます。
あわせて確かめておくものが3つあります。所在の名前が取れるか、主要な交流サービスのアカウント名が空いているか、書籍や作品の題名と重なっていないか。商標が取れても所在の名前が取れなければ使いにくく、告知の直前に気づくと日程が崩れます。この3つは商標の調べ方と同じ日にまとめて確かめるのが実務です。
手順4:専門家に渡す材料と、聞くべき問い
ここまでで候補が2つか3つに絞れたら、弁理士に渡します。渡すときに材料がそろっていると、見通しの精度が上がり、往復の回数が減ります。逆に「この名前は大丈夫でしょうか」だけを送ると、前提を聞き直すところから始まるため、時間も費用も増えます。
- 候補の表記(漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字のうち、実際に使う形すべて)
- 読み方。複数の読み方が生じうるなら、そのすべて
- 使う商品または役務の内容を、売り方が分かる粒度で書いたもの
- 使い始めたい時期と、告知や印刷の日程
- 社内で既に使っている実績があれば、その開始時期と範囲
- 自分で引いた条件、引いた日、出てきた名前の一覧
- その名前でなければならない理由があるなら、その理由
聞く問いも大事です。「登録できますか」と聞くと、答えは断定を避けた形にならざるを得ません。代わりに、どの引用が出そうか、出たときの選択肢は何か、その選択肢ごとの費用と期間はどれくらいかを聞きます。この3つが分かれば、名前を通すか差し替えるかを事業側で判断できます。似たものが見つかった後の道筋については、承諾を得て併存させる制度もありますが、それは見つかった後の話であり、この記事の範囲の外です。
似ているかどうかは、称呼・外観・観念の3つで見る
専門家の見通しがどう組み立てられているかを知っておくと、渡す材料の意味が分かります。工業所有権情報・研修館の案内によれば、商標が似ているかどうかは、称呼つまり呼び方、外観つまり見た目、観念つまり意味合いの3つを総合的に考察して判断されます。そのうえで、その商品や役務の主たる需要者や取引の実情を考慮し、需要者が通常持つ注意力を基準に、出所の混同が生じるおそれがあるかどうかで決まります。
根拠になる条文は商標法第4条第1項第11号です。ここには、出願の日より前の出願に係る他人の登録商標またはこれに類似する商標であって、その登録に係る指定商品・指定役務またはこれらに類似する商品・役務について使うもの、と書かれています。マークが似ているだけでも、商品・役務が似ているだけでも、この号には当たりません。両方が重なったときに初めて問題になります。審査での運用は、特許庁の商標審査基準の第3の十に置かれています。基準は改訂第17版が2026年4月1日から適用されています。
この構造が分かると、下調べの引き方も変わります。読みだけで引いて終わりにせず、出てきた名前がどの分野を指定しているかまで見る。分野が離れていれば、読みが同じでも並び立つことがあります。逆に、読みが少し違っても、意味が同じで分野が重なっていれば近いと見られることがあります。この判断は最終的に専門家の領域ですが、材料を集める側がこの見方を知っているかどうかで、集まる材料の質が変わります。
なお、引っかかりうる号は第11号だけではありません。商標法第4条第1項第10号は、他人の業務に係る商品や役務を表すものとして需要者の間に広く認識されている商標またはこれに類似する商標を、その商品・役務やこれらに類似するものに使う場合を挙げています。登録の有無ではなく、知られているかどうかが条件です。さらに同項第15号は、第10号から第14号までに当たらないものでも、他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがある商標を挙げています。第11号で0件でも、この2つが残るという点は覚えておく価値があります。
似ている以前に、登録できない名前がある
他社と似ているかどうかの前に、そもそも登録の対象にならない名前があります。商標法第3条第1項は、その商品や役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示するだけのもの、慣用されている商標、産地・販売地・品質・原材料・効能・用途・形状などを普通に用いられる方法で表示するだけのもの、ありふれた氏または名称、極めて簡単でありふれた標章、そして需要者が誰の業務に係るものか認識できない商標を挙げています。
- 商品の中身をそのまま言っただけの名前:分かりやすさを優先すると、第3条第1項第3号に近づきます。特許庁は、商品「野菜」について「北海道」の文字を例に挙げています
- ありふれた社名や姓をそのまま使った名前:第3条第1項第4号に触れる可能性があります
- アルファベット2文字や単純な図形だけの名前:第3条第1項第5号の、極めて簡単でありふれた標章に寄ります
- 中身と食い違う名前:第4条第1項第16号は、商品の品質や役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標を挙げています
- 人の名前を含む名前:第4条第1項第8号は、他人の肖像や氏名などを含む商標について、承諾を得ているものを除くとしています
ただし、第3条第1項第3号から第5号に当たる商標でも、第3条第2項は、使用された結果として需要者が誰の業務に係るものか認識できるようになったものは登録を受けられると定めています。説明的な名前でも、長く使って知られれば道が開くことがあるということです。とはいえ、これから決める名前で最初からそこを当てにするのは、費用と時間の面で現実的ではありません。
生成AIに候補を出させる工程が、そのまま危険を増やす
ここからがAIの話です。名前の候補出しは、生成AIが最も気軽に使われる工程の1つです。ところが、この工程こそが下調べの負担を増やす方向に働きます。理由ははっきりしていて、AIが出す候補は既存の名前に似やすいからです。学習の元になった文章には実在の製品名やサービス名が大量に含まれており、「その業界らしい響き」を求めるほど、既にある名前の近くに寄っていきます。
さらに危ないのが、AIに調べさせて安心してしまう使い方です。AIが「この名前は使えます」「登録されていないようです」と答えても、それは根拠になりません。公的なデータベースを引いた結果ではなく、文章として自然な答えを組み立てているだけだからです。無料の検索で出てこなかったことを安全の根拠にしないのと、まったく同じ理由でAIの回答も根拠にしません。
では、人が決めるのはどこか。2つあります。1つは、似ているかどうかの判断です。称呼・外観・観念のどれで近いのか、その根拠を言葉にできるのは人です。もう1つは、区分の当てはめです。自社がこれから何を売り、どこまで広げるつもりかという情報は、事業側の頭の中にしかありません。AIに合否を出させない。合否は、根拠の一文を書ける人が出す。ここを外すと、記録は残っても説明できない下調べになります。
AIに任せてよい下ごしらえと、返ってきたものの扱い
危険を確認したうえで、任せてよい範囲を具体的に決めます。AIが速いのは、思いつきの網羅です。人が手で書き出すと必ず抜けるものを、抜けにくい形で並べてくれます。下調べの前工程にはこれが効きます。
| 工程 | AIに任せてよいこと | 人が決めること |
|---|---|---|
| 候補を広げる | 言い換え、読み方のゆれ、区切り位置の変え方を並べる | 候補として残すかどうか |
| 検索の材料を作る | 表記のゆれと意味の近い語を一覧にする | どの条件で何回引くか |
| 区分を当てる | 自社の商品・役務を説明する文章の下書き | 指定する区分と、その範囲 |
| 似ているかを見る | 任せない | 称呼・外観・観念の判断と、その根拠 |
| 進めるかを決める | 任せない | 合否、日程、費用の判断 |
実際に使うときの頼み方は、結論を求めない形にします。結論を求めると、根拠のない断定が返ってきます。次のように、列挙だけを求めて、判断は求めないのが安全な形です。
次の名前について、検索で引くための材料だけを出してください。判断や結論は書かないでください。
名前:{候補}
出してほしいもの
1. 生じうる読み方をすべて(同じ読みになる別表記も含む)
2. ひらがな、カタカナ、ローマ字、区切り位置を変えた表記の一覧
3. 意味が近い語、同じ意味になる別の言い方
4. その名前が誤読されうる読み方
禁止:登録されているかどうかの推測、使ってよいかどうかの判断、件数の見積り
返ってきたものは、そのまま検索の条件に落とします。1つの表記につき1回引くのが基本で、まとめて引かないことが取りこぼしを減らします。なお、返ってきた一覧に見覚えのない固有名詞が混じっていたら、それは候補ではなく確認対象です。実在の名前を持ち込んでいる可能性があるためです。
下調べを日程に落とす
手順が決まっても、日程に載っていなければ実行されません。名前の下調べが飛ばされる最大の原因は、告知の日程が先に決まってしまうことです。候補を3つ残した状態で調べに入ると、1つ落ちても止まりません。逆に1つに決めてから調べると、落ちたときに全部やり直しになります。
社内の使用実績と衝突するものを先に落とします。ここは会議ではなく、担当者が資料を突き合わせる作業です。
AIに列挙させて、人が抜けを足します。この一覧が、次の段の検索条件になります。
読み、文字、区分の3つの軸で、条件を変えて複数回引きます。引いた条件と日付を候補ごとに記録します。
同じ分野で使っている先がいないか、所在の名前とアカウント名が空いているかを、同じ日にまとめて確かめます。
残った候補と、集めた材料をまとめて渡します。聞くのは合否ではなく、出そうな引用と、出たときの選択肢と費用です。
採用した候補と、落とした候補の落とした理由を1枚に残します。次に名前を決めるときの出発点になります。
日程の見当をつけるうえで、審査に着手するまでの期間は知っておく必要があります。特許庁は商標審査着手状況というページで、いまどの時期の出願分に着手しているかを公表しています。時期によって動く数字なので、日程を組む前にそこで確かめるのが確実です。出願してすぐに権利が生まれるわけではないという点だけは、社内で先に共有しておきます。
名前を決めた後にやること
下調べが終わって名前が決まったら、そこで終わりではありません。まず、出願するかどうかを決めます。出願する範囲をどう設計するかは事業計画の話になるため、事業部門と一緒に決めます。ここは別の論点なので深入りしませんが、商標の担当だけでは適切な範囲を選べないという点だけ押さえておいてください。
次に、社内への周知です。名前は決まったのに、営業資料と広告と契約書で表記が違う、という状態はよく起きます。使ってよい表記、使ってはいけない略し方、他社名と並べるときの書き方を決めて、資料を作る人が見る場所に置きます。ブランドの決まりを整えている会社なら、そこに書き加えるのが最も実行されやすい形です。
最後に、取ったら使うという原則です。商標法第50条第1項は、継続して3年以上、商標権者も専用使用権者も通常使用権者も使っていないときは、何人もその登録の取消しの審判を請求できると定めています。同条第2項は、請求の登録前3年以内の使用を権利者側が証明しない限り取消しを免れないとしています。将来のために取っただけの登録は、3年を過ぎると崩れうるということです。使う予定のない範囲まで広く取ることの費用は、この観点でも見直す価値があります。
すでに使い始めていた場合の考え方
下調べをせずに使い始めていた、という相談も珍しくありません。ここで「違反です」と断定するのは正確ではありません。問題になるかどうかは条件の組み合わせで決まるため、まず条件を1つずつ確かめます。商標法第25条は、商標権者が指定商品または指定役務について登録商標を使う権利を専有すると定め、第37条第1号は、指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用などを侵害とみなすとしています。
つまり、問題になりうるのは次の条件がそろったときです。相手に登録があること。マークが同一または類似であること。自分が使っている商品・役務が、相手の指定商品・指定役務と同一または類似であること。そして、自分の使い方が商品や役務の出所を示す使い方にあたること。どれか1つでも外れれば、話は変わります。だから最初にやるのは、止めるか続けるかの判断ではなく、この4点を確かめる作業です。
あわせて記録を集めます。いつから使っているか、どの範囲でどれだけ使ったか、どの資料に載っているか。先使用権を定める商標法第32条第1項は、他人の出願前から不正競争の目的でなく使っていた結果、その出願の際に需要者の間に広く認識されていたことを要件としており、要件は軽くありません。それでも記録があるかどうかで取れる手が変わります。自己判断で使い続ける前に、集めた記録を持って専門家に相談する。名前を変える費用は、告知や印刷が進むほど跳ね上がるため、判断は早いほど安く済みます。
よくある質問
社内の無料の調べだけで済ませてよい場面はありますか
あります。社内の会議資料の題名、一度きりの企画の呼び名、外に出さない仮の名前などは、費用をかけて調べる対象になりにくいものです。判断の分かれ目は、その名前を外に向けて継続的に使うかどうかです。継続して使い、その名前で覚えてもらいたいのであれば、費用をかける側に寄せます。
商標を取らずに名前を使い続けることは問題ですか
登録は義務ではないため、取らずに使うこと自体が直ちに問題になるわけではありません。ただし、他社が同じ名前を先に登録した場合、こちらが使い続けられるとは限りません。先使用権は商標法第32条第1項に定めがありますが、需要者の間に広く認識されていることが要件になるため、当てにできる場面は限られます。
AIに調べさせた結果を、そのまま社内の承認資料に付けてよいですか
勧められません。AIの回答は、公的なデータベースを引いた結果ではないためです。承認資料に付けるべきなのは、引いた条件・引いた日・出てきた名前と分野の一覧です。AIが作った表記のゆれの一覧を「検索条件の根拠」として添えるのは有効ですが、結論の根拠としては使えません。
区分はどこまで広く取っておくべきですか
この設計は事業計画の話になるため、商標の担当だけでは決められません。判断の材料としては、区分の数だけ費用が増えること、使っていない範囲は商標法第50条第1項の取消しの審判の対象になりうること、範囲が広いほど他社の商標と衝突する確率が上がることの3つがあります。今やっている事業と、数年内に広げる見込みのある事業を事業部門と突き合わせてから決めてください。
海外でも使う予定の名前は、どの段階で相談すべきですか
候補を3つに絞った段階です。商標の権利は国ごとに成立するため、日本で問題がなくても進出先で先に登録されていることがあります。全世界を調べるのは費用が現実的ではないので、売上の見込みが大きい国を数か国に絞って先に確かめる形が一般的です。
まとめ
名前の下調べは、似た名前が無いことを証明する作業ではありません。どの条件で、いつ、どこまで確かめたかを残す作業です。出願の内容が公開されるまでに2、3週間程度かかり、反映にも間があり、引き方によっては漏れる。この3つがある以上、0件という結果に「安全」の意味を持たせることはできません。自社の使用実績、公的なデータベース、一般の検索、専門家という4段を順に上がり、候補を絞ってから費用をかけるのが最も安く済みます。生成AIは表記のゆれと言い換えの列挙で威力を発揮しますが、称呼・外観・観念の判断と区分の当てはめには使えません。次の企画で名前を出す前に、候補を3つ残す形に変えてみると、この手順は自然に入ります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
