真似されても商標だけでは戦えない|模倣に効く別の法律

競合のサイトを開いて手が止まる。自社が半年かけて作った資料の構成が、見出しの並びまでそっくりの形で並んでいる。商標を登録していないサービス名まで似せられている。こういうとき、商標の登録がないと諦めてしまう会社が多いのですが、別の法律で戦える場面があります。この記事では、その類型と使える手立て、そして2024年に広がった範囲を整理します。
カメ先生サービス名を真似されたとき、商標を登録していないと何もできないと思っていませんか。
カメ子登録していないので打つ手がないと言われて、そのままにしていました。
カメ先生登録がなくても、その名前が知られていれば争える枠組みがあります。ただし証拠が要ります。
カメ子証拠が鍵なんですね。何を残しておけばよかったのか知りたいです。
- 商標の登録がなくても、知られている表示なら混同を招く行為として争える枠組みがある
- 商品の形態の模倣は、国内で最初に販売した日から3年という期間の制限がある
- 2024年4月から、画面の中で提供される形の模倣も対象に含まれるようになった
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真似されたと気づいたときに起きること
模倣に気づいた直後の社内は、たいてい混乱します。現場は「すぐ抗議すべきだ」と言い、法務は「証拠が足りない」と言い、経営は「争って得なのか」と問う。判断の枠組みがないまま議論が始まるため、結論が出ません。
その間に状況は悪化します。相手の売上が積み上がり、市場では「よく似た2社」として認識されていく。後から争っても、どちらが先だったかを説明する手間が増えます。時間は模倣した側に有利に働きます。
さらに厄介なのが、感情的な反応が先に出ることです。相手に直接連絡して抗議する、公開の場で名前を挙げて批判する。いずれも、こちらの主張を弱める材料になりえます。特に根拠が固まる前の公開の批判は、逆に責任を問われる恐れがあります。
必要なのは、使える手立てを知り、証拠を固め、そのうえで争うかどうかを判断する順序です。まず知る、次に固める、最後に決める。この順序を守れば、慌てずに動けます。
商標だけでは守れない場面がある
名前を守る手立てとして最初に思い浮かぶのは商標の登録です。登録があれば、指定した区分の範囲で他人が同一または類似の商標を使うことを止められます。最も強く、最も分かりやすい手立てです。
しかし、限界があります。第1に、登録していない名前は守れません。第2に、登録していても指定した区分の外での使用には及びにくい。第3に、名前ではなく資料の見せ方や画面の作りを真似された場合、商標の枠組みでは扱えません。
法人向けの事業では、この3つ目が特に問題になります。サービスの名前は違うのに、資料の構成、説明の順序、図の作り方が酷似している。名前が違うから商標では争えず、しかし実質的に真似されているという状態です。
こうした場面で使えるのが、事業者間の公正な競争を確保するための法律です。商標のような登録を前提とせず、行為の性質そのものを問題にする構造になっています。登録がないから諦める、という判断は早すぎます。
不正競争防止法という別の道
この法律は、特定の行為の類型を挙げて、それに当たる行為を不正競争と位置づけています。登録の有無ではなく、実際にどういう行為が行われたかで判断する構造です。したがって、登録していなくても争える場面があります。
マーケティングの実務に関わる類型は主に4つです。第1に、よく知られた表示と混同を招く行為。第2に、著名な表示を自分のものとして使う行為。第3に、商品の形態を模倣する行為。第4に、営業の秘密を不正に取得したり使ったりする行為です。
それぞれ要件が違い、使える手立ても変わります。混同を招く行為ではその表示が知られていることを示す必要があり、形態の模倣では最初に販売した日からの期間が問われます。
| 類型 | 求められる要件の中心 | 期間の制限 |
|---|---|---|
| 混同を招く行為 | その表示が需要者に知られていること | 特になし |
| 著名な表示の冒用 | その表示が著名であること | 特になし |
| 商品の形態の模倣 | 他人の商品の形態を模倣したこと | 最初の販売から3年 |
| 営業の秘密の侵害 | 秘密として管理されていたこと | 特になし |
この表を見ると、自社の状況がどの類型に近いかが見当できます。名前や見た目を真似された場合は上の2つ、製品そのものを真似された場合は3つ目、資料や情報を持ち出された場合は4つ目。どの類型で争うかを決めることが、証拠を集める方向を決めます。
よく知られた表示の混同を招く行為
最も使う機会が多い類型です。自社の商品やサービスを示す表示として需要者の間で知られているものと同一または類似の表示を使い、混同を生じさせる行為が対象になります。商標の登録は要件ではありません。
要件の中心は「知られていること」です。全国で誰でも知っているレベルまでは求められず、その商品やサービスの需要者の間で知られていれば足りると解されています。法人向けの狭い分野なら、その分野の中で知られていることを示せばよい形です。
示すための材料は、使い始めた時期、使ってきた期間、宣伝の量と範囲、取引の実績、第三者に取り上げられた記録です。媒体に紹介された記事、業界の団体での登壇、受賞の記録などが役立ちます。
混同については、実際に間違われた事実があれば強い材料になります。顧客から「あの会社と関係があるのか」と問われた、問い合わせが誤って相手に行った、検索の候補に両方が並ぶ。こうした出来事は起きた時点で記録に残してください。
著名な表示を自分のものとして使う行為
もうひとつの類型は、著名な表示を自分の商品やサービスに使う行為です。こちらは混同が生じることを示す必要がない点が特徴です。著名であることを示せれば、分野が違っても対象になりえます。
ただし、求められる知名度は高くなります。特定の分野の需要者に知られているだけでは足りず、広く一般に知られている水準が求められると解されています。法人向けの事業では、この類型に該当するほど著名な表示を持つ会社は限られます。
実務上の使い方としては、自社が該当するかを検討するというより、自社が他社の著名な表示をうっかり使ってしまわないよう気をつける観点で押さえます。有名な社名やサービス名を語呂合わせで使う企画は避けてください。
商品の形態を模倣する行為
他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡したり貸したりする行為も対象です。形態とは、外観の形状、模様、色彩、光沢、質感などを指すと理解されています。製品を扱う事業では、この類型が中心になります。
要件で問われるのは、実質的に同一の形態であること、そして依拠して作られたことです。偶然似ただけでは模倣に当たりません。相手が自社の商品を見て作ったことを示す必要があります。
示す材料としては、相手が自社の商品を購入した記録、展示会で自社の製品を見た記録、商談の履歴などがあります。接点の記録が、依拠を示す間接的な材料になります。名刺の交換の記録も無駄になりません。
なお、同種の商品が通常持っている形態は対象外です。その形でなければ機能を果たせないような形状は、独占させるべきではないという考え方によります。自社の商品のどこが独自の形態なのかを言葉にしておく必要があります。
3年という期間の制限
形態の模倣の類型には、期間の制限があります。日本国内で最初に販売された日から3年を経過した商品には適用されません。この期間を過ぎると、この類型では争えなくなります。
3年という期間の趣旨は、最初に開発した側が投資を回収する期間を確保することにあると解されています。永久に独占させるのではなく、一定期間の先行の利益を守る。その後は模倣も競争の一部として許容される、という考え方です。
実務上の意味は2つあります。第1に、3年の起算点となる最初の販売の日を記録しておく必要があること。いつから売り始めたかを示せないと、期間内であることも示せません。
第2に、3年を超えて守りたい形態については別の手立てを準備しておく必要があることです。意匠としての登録、立体的な形状についての商標の登録。重要な製品については、3年で切れる保護に頼らない設計にします。
2024年に対象がデジタルに広がった
2023年の改正により、2024年4月1日から形態の模倣の対象に通信の回線を通じて提供する行為が加わりました。物として売る形だけでなく、画面の中で提供される形の模倣も対象になったということです。
この改正の背景には、仮想の空間や交流の場での取引が広がり、精巧な模倣が現れたことがあります。現実の商品を精密に再現した仮想の物品が無断で提供される事態に対応する必要が生じました。
法人向けの事業で関わるのは、画面上で提供する製品の見た目や、仮想の展示の場に置く自社の製品の再現です。自社が仮想の空間に出展する場合、その形態も保護の対象になりえます。逆に、他社の製品を再現して置くのは避けるべき行為です。
同じ改正では、商標の登録について類似する商標の併存を認める仕組みが導入されたことに伴い、その仕組みで併存を認め合った当事者が不正の目的なく使用している場合には相手の使用を不正競争として扱わない例外も定められました。
損害の賠償の算定が変わった
同じ改正では、損害の賠償の算定についても見直しが行われました。従来は、自社の生産の能力を超える分については損害として認められにくい構造がありました。能力を超える分は、使用を許諾したものとみなして請求できる形が加わりました。
この変更は、規模の小さい会社に効きます。自社では作りきれない量を相手が売っていた場合、従来は自社の能力の範囲でしか請求できませんでした。改正後は、超える分についても使用の許諾の対価に相当する額として請求できる道が開けました。
また、対象が広がりました。従来は「物を譲渡する」場合に限られていた規定が、データや役務を提供する場合にも及ぶ形に拡充されました。画面の中で提供される形の事業にも算定の枠組みが適用されます。
実務上の意味は、争う価値の見積りが変わることです。請求できる額が増えるなら、手続の費用を正当化しやすくなります。従来「割に合わない」と判断していた案件も、再検討の価値があります。
営業の秘密の侵害という類型
元従業員が顧客の名簿を持ち出した、取引先が提供した情報を目的外に使った。こうした場面で使えるのが営業の秘密に関する類型です。要件の中心は、秘密として管理されていたことです。
秘密として管理されていたと言えるには、その情報が秘密であることが客観的に認識できる状態にあった必要があります。見られる人を限定していた、秘密であることを表示していた、持ち出しを禁じる規程があった。こうした事実が求められます。
実務で最も多い失敗は、「重要な情報だが、誰でも見られる場所に置いていた」状態です。誰でも見られる情報は、秘密として管理されていたとは言えません。守りたい情報については、アクセスできる人を絞る運用が前提になります。
有用性と非公知性も要件です。事業に有用な情報であり、公然と知られていないこと。公表している内容や、業界で常識になっている情報は該当しません。自社の何を秘密として扱うのかを、事前に決めておく必要があります。
限定して提供するデータの保護
近年加わった類型として、限定して提供するデータの不正な取得や使用があります。業として特定の相手に提供するデータで、電磁的な方法により相当量が蓄積され、管理されているものが対象と整理されています。
法人向けの事業で関わるのは、自社が顧客に限定して提供している調査のデータや業界の統計を扱う場面です。会員だけに提供しているデータを第三者が不正に取得して使った場合、この類型で争える可能性があります。
要件を満たすには、提供の相手を限定していること、電磁的な方法で管理していることが必要です。誰でも登録すれば見られる形では、限定していると言いにくくなります。提供の条件を明確にし、記録を残す運用が前提です。
使える手立ての種類
該当する類型が見つかったとき、取れる手立ては3種類あります。第1に、その行為をやめるよう求める請求。第2に、生じた損害の賠償を求める請求。第3に、類型によっては刑事の手続もありえます。
実務で優先されるのは、やめるよう求める請求です。現在進行している行為を止められれば、損害の拡大を防げます。急ぐ場合には、本格的な裁判の結論を待たずに暫定的な措置を求める手続を使う道もあります。
損害の賠償は、額の算定に手間がかかります。相手がどれだけ売ったのか、自社がどれだけ失ったのか。相手の売上を知る必要があるため、手続の中で開示を求めることになります。
なお、手立てを取る前に相手に警告する形から始めるのが通例です。警告で止まる場合も少なくありません。警告の文面は専門家に確認してから出してください。表現を誤ると、逆にこちらが責任を問われる恐れがあります。
証拠を固める手順
争うかどうかを決める前に、証拠を固めます。第1に、相手の行為の記録。画面、資料、製品の写真。いつの時点のものかが分かる形で保存します。第2に、自社が先行していたことを示す記録です。
先行を示す記録としては、最初に販売した日、最初に公開した日、宣伝を始めた時期、取引の実績。自社の資料の作成日が分かる形で残っているかも確かめます。更新のたびに上書きしていると、いつからの形か示せません。
画面や資料を、日付が分かる形で保存します。第三者が確認できる方法で残すと確実です。
最初の販売や公開の日、宣伝の記録、取引の実績を時系列で並べます。
名前か形態か情報か。どの類型で争うかによって、必要な証拠が変わります。
集めた材料を持って相談し、警告から始めるか手続に進むかを決めます。
3つ目で複数の類型が候補になることもあります。その場合は無理に絞らず、両方の材料を揃えて相談します。素人の段階で類型を決め打ちすると、有利な道を落とすことがあります。
- 画面の記録は、日付と所在が一緒に写り込む形で残す
- 自社の資料は上書き保存せず、公開した版を日付付きで保管する
- 相手との接点(購入、来場、商談)の記録は、依拠を示す間接的な材料になる
記録を第三者が確認できる形にしておくと、証拠としての強さが増します。自社の端末に保存した画像だけでは、後から作られたものだと言われる余地が残ります。公開の記録を保存する仕組みや、日時を証明する仕組みを使う手立てもあります。重要な案件では、専門家に相談して記録の方法そのものを決めてから集めるほうが確実です。
警告から交渉に移るときの考え方
警告を出したあと、相手が話し合いを求めてくることがあります。ここで決めておくべきは、自社が何を得られれば収めるのかという着地点です。着地点を決めずに交渉に入ると、長引いて費用だけがかかります。
着地点の候補は3つです。第1に、相手が使用をやめること。第2に、一定の期間内に切り替えることを約束させること。第3に、対価を受け取って使用を認めること。3つ目は意外に現実的な選択で、争いを収めつつ収益にもつながります。
判断の材料は、自社の事業への影響の大きさです。同じ市場で正面から競合しているなら、使用をやめさせる以外に収まりません。市場が違うなら、認めて対価を得る形も成り立ちます。感情ではなく事業の観点で決めてください。
合意に至ったら、内容を書面にします。口約束では、担当が変わったときに反故にされます。いつまでに何を切り替えるのか、守られなかった場合はどうするのかまで書いておく。書面を作る手間を惜しむと、同じ交渉を繰り返すことになります。
真似される前にできる備え
起きてから慌てないための備えは4つあります。第1に、最初の販売や公開の日を記録に残す。第2に、重要な名称は商標として登録する。第3に、重要な形態は意匠として登録を検討する。第4に、秘密として扱う情報を絞って管理する。
第1の記録は、費用がかかりません。製品を出した日、サービスを公開した日、資料を配り始めた日。この一覧を作っておくだけで、後から先行を示す材料になります。
第2と第3は費用がかかるため、優先順位をつけます。事業の中核となる名称と形態に絞る。すべてを登録しようとすると費用が膨らみ、結局どれも登録しないことになります。
第4については、「秘密として扱う情報」を全社に広げすぎないことが要点です。対象を広げるほど管理が緩みます。本当に守りたい情報だけを対象にして、厳しく管理する。この形が、後から要件を満たしていると示せます。
逆に自社が指摘される場合
この法律は、自社が指摘される側になることもあります。他社の資料の構成を参考にした、似た名前を使い始めた、元従業員が持ち込んだ情報を使った。特に3つ目は、悪意なく起きて重大な結果につながります。
採用の場面で注意が要ります。同業から人を採ったとき、その人が前職の資料や名簿を持ち込むことがあります。受け取って使えば、自社が営業の秘密の侵害の当事者になりえます。入社時に持ち込みを禁じる旨を確認する運用が要ります。
- 同業から採用した人が持ち込んだ顧客の名簿を、そのまま営業に使う
- 他社の資料の構成をほぼそのまま流用し、図の並びまで似せる
- 他社の著名なサービス名に似せた名前を、語呂合わせのつもりで使う
- 他社の製品を再現した画像や仮想の物品を、自社の展示に置く
指摘を受けた場合は、まず事実を確かめます。感情的に反論する前に、本当に該当する行為をしていないかを社内で調べる。該当していた場合、早く止めて謝るほうが損失は小さくなります。争う姿勢を先に示すと、後から引きにくくなります。
備えの確認項目一覧
最後に、平時に整えておく項目をまとめます。起きてから作れるものはほとんどないので、今のうちに埋めておくことが唯一の備えになります。
- 主要な製品とサービスについて、国内で最初に販売した日を記録しているか
- 事業の中核となる名称を商標として登録しているか
- 自社の資料や画面の版を、作成日が分かる形で保管しているか
- 第三者に取り上げられた記録(媒体、登壇、受賞)をまとめているか
- 秘密として扱う情報の範囲を決め、見られる人を絞っているか
- 入社時に、前職の資料や情報の持ち込みを禁じる旨を確認しているか
- 混同された出来事(誤った問い合わせなど)を記録に残しているか
この7点のうち、3点目と7点目が特に見落とされます。資料は上書きされ、誤った問い合わせは笑い話で終わる。どちらも、後から最も効く材料です。残す習慣を作ってください。
まとめ
名前や見た目を真似されたとき、商標の登録がなくても争える枠組みがあります。知られている表示との混同を招く行為、著名な表示の冒用、商品の形態の模倣、営業の秘密の侵害という4つの類型を押さえ、自社の状況がどこに近いかを見定めてください。形態の模倣には最初の販売から3年という期間の制限があり、2024年4月からは画面の中で提供される形も対象に含まれます。損害の算定も見直され、従来は割に合わなかった案件も再検討の価値があります。そして備えの中心は記録です。最初の販売の日、資料の版、混同された出来事。起きてから作れないものを、今のうちに残しておいてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
