伝わる言い換えの型は3つある|削るだけでは逆効果

専門用語は使わない。この方針を守って書いた原稿が、レビューで最も伝わらないと言われることがあります。用語を削った結果、それが何を指すのか分からない曖昧な説明に変わっているためです。専門用語を避けることと伝わることは同じではありません。削る作業と同時に、抜けた情報を別の形で補う必要があります。この記事では、言い換え・言い添え・併記の3つの型と、それをチームで運用する形までを整理します。
カメ先生専門用語は全部やさしい言葉に直せば伝わる、と思うかい。
カメ子難しい言葉が減れば読みやすくなる気がします。
カメ先生読みやすくはなる。ただし正確さが落ちる場合がある。仕組みという言葉に置き換えたせいで、読者が別のものを想像して問い合わせが増えた例があるんだ。
カメ子やさしくした結果、違うものが伝わってしまったんですね。
- 専門用語を削ると情報が落ちるため、言い換え・言い添え・併記の3つの型を使い分ける
- 許容ラインは読者の職種と関与度で動く。同職種には標準語がそのまま通り、決裁者には結果の言葉に置き換える
- 検索される語と業界の標準語は残し、社内語と略語は外に出さない。判断は言い換え対応表に残して更新する
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専門用語を削れば伝わる、という誤解
読みにくい原稿の原因として専門用語が挙げられるのは、多くの場合で正しい指摘です。ただしその対処として全部を削るという方針を取ると、別の問題が起こります。
削ることで失われるのは正確さです。専門用語は、長い説明を1語に圧縮した記号として機能しています。語を消すと圧縮された情報も一緒に消えるため、その分の説明を別の場所で足さなければ内容が薄まります。
実際の原稿でよく起きるのは、抽象的な言葉への置き換えです。仕組み、施策、対応、環境といった語は誰にでも読めますが、何を指すか分かりません。読める文章と伝わる文章は別で、読めるだけの文章は問い合わせを増やします。
もう1つの誤解は、専門用語が読者を必ず遠ざけるという前提です。同じ職種の実務担当者に向けた記事では、標準的な用語を使ったほうが早く正確に伝わります。やさしくしすぎた文章は、専門性が低いと判断されます。
この記事の立場は単純です。削るかどうかではなく、誰に向けてどの語を残しどう補うかを決める。判断の対象は語ではなく、語と読者の組み合わせです。同じ用語が、記事によって残す語にも消す語にもなります。
この前提を共有していないチームでは、レビューが好みの言い合いになります。難しいから直してほしいという指摘と、正確さを保つために残したいという反論が並び、決着がつきません。判断の基準を読者に置くことが、議論を短く終わらせる方法になります。誰に向けた記事かを構成案の段階で1行に書いて合意しておけば、この種の往復はほとんど起きません。用語の議論は、読者の設定が曖昧なままレビューに入ったときに必ず長引きます。順序を守るだけで防げます。
削ったときに何が抜け落ちるか
削る判断が危険な理由を、抜け落ちるものの種類で整理します。3つに分けられます。
1つ目は指す範囲です。専門用語には定義された境界があります。その語で呼ばれるものと呼ばれないものの線が決まっているため、日常語に置き換えると境界が消えます。似たものを含む広い意味に読まれ、認識のずれが生まれます。
2つ目は検索の入口です。読者が自分で調べるときに使う語が本文から消えると、そこから先に進めなくなります。正式名称を1度も書かない記事は、読者が次の情報にたどり着く手がかりを持ちません。
3つ目は関係者との共通言語です。記事を読んだ担当者が社内で説明するとき、使う語が業界の標準語でなければ話が通りません。読者が社内で使う場面まで想定すると、標準語を消すのは親切ではなくなります。
言い換えが原理的に難しい語もあります。国立国語研究所のことば研究館の記事では、科学的な内容を含む専門用語の言い換えや説明はとても難しいと明記され、抽象的で数学的な思考が必要な用語は語彙の体系が形成されにくいと指摘されています。無理に日常語に落とすより、説明を添える判断が要る領域です。
読者の職種と関与度で許容ラインが動く
判断の起点は読者です。誰が読むかによって、同じ語の扱いが変わります。4つの立ち位置に分けると整理しやすくなります。
| 読者の立ち位置 | 用語の許容ライン | 書き方の方針 |
|---|---|---|
| 同じ職種の実務担当者 | 業界の標準語はそのまま通る | 定義を省き、判断の基準や手順に字数を使う |
| 隣の部署の担当者 | 標準語は通るが略語は通らない | 初出で1行の定義を添える |
| 決裁者・経営層 | 用語より効果と費用と期間を知りたい | 用語を結果の言葉に置き換える |
| これから学ぶ人・検索から来た人 | ほぼ通らない前提で書く | 日常語で説明し、正式名称を併記する |
BtoBの記事で判断を誤りやすいのは3行目です。決裁者に向けた資料で用語の定義を丁寧に書くと、知りたいこととずれた文章を読ませることになります。用語そのものではなく、それが何をもたらすかを書く必要があります。
同じ記事の中で読者が切り替わることもあります。導入の判断は決裁者、運用は担当者という構造では、両方が読みます。この場合は、決裁者向けの結論を前に置き、用語を使う詳細を後半にまとめる構成にすると両方が読めます。
関与度も見てください。すでに検討を進めている読者は、用語を調べる労力を払う状態にあります。一方で偶然たどり着いた読者は、分からない語が2つ続いた時点で離脱します。記事が想定する検討の段階を先に決めてください。
表の使い方としては、記事の種類ごとに行を割り当てるのが実務的です。解説記事は4行目、事例記事は1行目、提案資料は3行目という対応を先に決めておけば、原稿ごとに読者を想像し直す作業がなくなります。迷う時間が最も削れる部分です。
初出で定義を添える3つの型
残すと決めた語をどう扱うかには、型があります。3つに整理すると、原稿を書くときの迷いが減ります。
1つ目は言い換えです。専門用語を日常語に置き換え、元の語を本文に残しません。使える条件は、意味の幅がほぼ同じで置き換えても情報が落ちない語に限られます。難しい語をやさしくするのではなく、同じことを指す平易な語がある場合の選択です。
2つ目は言い添えです。語を残したまま、短い説明を隣に置きます。ことば研究館の記事では、クラスターに対して感染者集団や集団感染などと説明を付ける工夫が示されています。専門性を保ちながら通じる形にできるため、BtoBの記事では最も使う頻度が高い型になります。
3つ目は併記です。日常語で先に説明し、正式名称を並べて示します。読者が読める状態を作りながら、検索や社内での会話に使える語も渡せます。学ぶ段階の読者に向けた記事で有効です。
同じ語に複数の案を用意する発想も役に立ちます。ことば研究館の記事では、モチベーションに対して意欲ややる気、インセンティブに対して誘因、動機付け、報奨金、優遇措置など複数の言い換え案を示したことが紹介されています。文脈によって最適な語が変わるためです。
型を選ぶ順序も決めておくと迷いません。まず言い換えが成り立つかを確かめ、情報が落ちるなら言い添え、読者が学ぶ段階なら併記に進む。この順で当てはめると、判断が3秒で終わります。型を知っていても順序がないと、毎回同じ議論を繰り返します。
検索される語は残す
削るか残すかの判断で、最も実務的な基準がここにあります。読者が検索に使う語は、平易でなくても残す必要があります。
理由は2つあります。1つは検索からの流入で、その語を含まない記事は検索の結果に現れません。もう1つは読者の確認で、自分が調べている言葉が本文にあるかどうかで、この記事が探していたものかを判断します。
判断の材料は検索の需要です。専用のツールがなくても、検索の候補に出る語や関連する検索の語を見れば傾向はつかめます。読者が実際に打ち込んでいる語が、業界の正式名称とずれている場合もあります。
両立の方法は併記です。見出しには読者が検索する語を置き、本文の最初でその語の意味を1行で書く。正式名称と通称が違う場合は、どちらも1度は本文に出す形にしてください。片方だけでは、どちらかの読者が離れます。
ただし、語を残すことと連呼することは別です。同じ専門用語を1つの段落で3回使うと、内容が薄い印象を与えます。検索の観点でも、自然な頻度で1度ずつ出れば十分です。残す判断と繰り返す判断を混ぜないでください。
見出しの中の用語は特に慎重に扱ってください。見出しは検索の結果や記事の一覧に切り出されて表示され、本文の言い添えが付いてこない状態で読まれます。見出しだけで意味が取れるかを確認し、取れない場合は日常語を主にして本文で正式名称を出す形にしてください。
業界の標準語は残して補足する
次に、業界の中で標準として使われている語の扱いです。読者が実務担当者であれば、削るほうが不利になります。
標準語の特徴は、その業界の実務者なら説明なしで通じ、外部の文書や資料にも出てくることです。この種の語を日常語に置き換えると、読者は自分の現場の言葉と記事の言葉を頭の中で変換しながら読むことになります。読む速度が落ちます。
扱いの原則は言い添えです。語は残し、初出で1行の説明を付けます。説明は定義の丸写しではなく、その記事の文脈で何を指すかに絞ってください。辞書的な定義は長くなり、読む流れを止めます。
補足を書くかどうかは、読者の幅で決めます。同職種だけが読む記事なら省いてよく、隣の部署や決裁者も読む記事なら1行を足す判断になります。省くことは手抜きではなく、読者に合わせた選択です。
なお、標準語だと思っていた語が実は社内でしか通じない場合があります。前職から持ち込んだ言い方や、取引先との間だけで使われている言い方です。外部の公開資料や業界団体の文書に出てくるかを1度検索して確かめる工程を入れてください。
標準語の中にも、業界によって意味が変わる語があります。同じ語が製造業と金融で別の工程を指す例です。読者の業界が複数にまたがる記事では、その語をどの意味で使っているかを初出で示す必要があります。標準語だから説明は不要という判断が、ここでは通りません。
社内語と略語は外に出さない
削る判断が明確に正しい領域もあります。自社の中だけで通じる言葉です。ここは例外なく置き換えます。
社内語には種類があります。部署の通称、社内の制度や会議体の呼び名、業務フローの略称、そして自社が作った造語です。書いている本人には自然に見えるため、原稿を書く段階では気づけません。
略語は特に見落とされます。3文字のアルファベットは業界を越えると別の意味を持ちます。同じ3文字が業界によって全く違うものを指す例は珍しくないため、初出では必ず正式名称を書いてください。
見つけ方は機械的にできます。原稿から2文字以上のアルファベットの並びを抜き出し、社外の資料に出てくるかを確認します。出てこなければ社内語で、初出の正式名称か日常語への置き換えが必要です。
社内語の中には、置き換えると意味が変わってしまうものもあります。自社の制度の名前などです。この場合は、当社で呼んでいる名称であることを明記した上で、それが一般に何に当たるかを添える形にしてください。読者が自社に置き換えて考えられます。
製品コードと社内の呼び名の扱い
社内語の中でも扱いが難しいのが、製品や機能の呼び名です。正式名称と社内の呼び名が併存している状態が普通に起こります。
典型は型番やコードです。社内では3桁の数字で呼ばれている製品が、カタログでは別の名前で載っている。記事で数字だけを使うと、読者はどの製品の話か判断できません。営業が使う呼び名も社内語に含まれます。
原則はカタログの表記に合わせることです。読者が問い合わせをするとき、営業やサポートに伝わる名前で書かれている必要があります。記事の中の呼び名と問い合わせ先で通じる呼び名がずれると、対応の最初で確認が発生します。
旧称との関係も整理してください。名称を変更した製品では、旧称で検索する読者が残ります。初出で新しい名称を書き、旧称も1度だけ添える形にすると、両方の読者が迷いません。
バージョンや世代の表記も揃えてください。公式の表記と社内の言い方が違う場合、公式に合わせるのが原則です。記事が公開後に古くなる要因にもなるため、世代の表記は必要な箇所だけに絞ってください。
呼び名の判断は、営業とサポートに1度確認しておくと精度が上がります。日々顧客と話している側は、どの呼び名が通じてどれが通じないかを実感で持っています。記事の担当者だけで決めると、社内の会議で使われている呼び名がそのまま外に出ます。
カタカナ語は定着の度合いで判断が変わる
マーケの文章で最も判断が分かれるのがカタカナ語です。同じ扱いにできない理由があります。
同じカタカナ語でも、定着の度合いが違います。ことば研究館の記事では、モチベーションは定着が進んで言い添えなしで使われるようになった一方で、インセンティブは普及が不十分で言い添えが必要とされ、時間とともに動機付けによる説明へ変化したと報告されています。
この報告が示しているのは、判断が時期によって動くという事実です。数年前は説明が必要だった語が今は不要になり、逆に新しい語が増えます。一度決めた扱いを固定すると、記事が古く見える原因になります。
実務での判断は、読者の側から見て決めてください。その語が読者の職種の求人票や業界の記事に説明なしで出てくるなら、言い添えは不要と判断できます。
重ねて使うことも避けてください。1つの文に3語のカタカナ語が並ぶと、意味が取れなくなります。語ごとに残す判断が正しくても、密度が高すぎれば読めません。1文に2語までを目安にしてください。
ミニ用語解説:この記事で使う言葉
ここまでで扱いの型を4つの言葉で呼び分けてきました。チームで運用するときに認識がずれやすい部分なので、短く整理しておきます。
- 「言い換え」:専門用語を日常語に置き換え、元の語を本文に残さない扱い
- 「言い添え」:語を残したまま、短い説明を隣に添える扱い
- 「併記」:日常語で先に説明し、正式名称も並べて示す扱い
- 「社内語」:自社の中だけで通じる略語、製品コード、部署や制度の通称
- 「業界標準語」:その業界の実務者なら説明なしで通じ、外部の公開資料にも出てくる語
この5語をチームで共有すると、レビューの指摘が短くなります。この語は言い添えでという1行で、修正の方針が伝わります。専門用語が難しいという指摘だけでは、書き手は何をすればよいか分かりません。
実務では、扱いをもう1つ足すこともあります。使わないという判断です。社内語のうち置き換えても情報が落ちないものは、原稿から消す扱いにしてください。4つの型に使わないを加えた5択で、判断が全部埋まります。
呼び名は自社で決めて構いません。重要なのは、同じ言葉が同じ意味で使われている状態です。この記事の5語をそのまま使う必要はなく、既に社内で通じている言い方があればそれを使ってください。
この整理そのものが、読者に向けた記事でも使える形式です。専門用語が多い記事では、本文の途中に短い用語の整理を1つ挟むと読み進めやすくなります。冒頭に長い定義の一覧を置くと読み飛ばされるため、その語が必要になる直前に置くのが効きます。
言い換え対応表の作り方
判断は記事ごとに繰り返されます。同じ語について毎回考えるのを避けるため、表に残します。列は5つで足ります。
| 列 | 書く内容 | 運用での使い方 |
|---|---|---|
| 用語 | 実際に原稿に出てくる表記 | 検索して該当箇所を洗い出す |
| 扱い | 残す/言い添える/言い換える/併記/使わない | 判断を1語に固定する |
| 言い添え・言い換え案 | 1行の定義または日常語の候補 | そのまま原稿に貼れる形にする |
| 決めた理由 | 検索需要がある、社内語である、など | 後から覆されない根拠を残す |
| 更新日と決めた人 | 日付と担当者 | 古い判断を見直す起点にする |
3列目を必ず埋めてください。扱いだけを決めて案を書かない表は、実際の執筆では使われません。言い添えると決めた語には、そのまま貼れる1行の説明文を書いておきます。
4列目も省略しないでください。理由が残っていないと、次の担当者が同じ議論を繰り返します。検索需要があるから残す、という理由が書いてあれば、やさしくしましょうという指摘に対して答えられます。
表は大きくしすぎないでください。最初は迷いが多い20語から30語で始めるほうが機能します。全社の用語を網羅した表は作るのに時間がかかり、完成する前に使われなくなります。
同じ語で扱いが分かれる場合は、行を分けてください。読者の立ち位置ごとに扱いが違う語は珍しくありません。解説記事では併記、事例記事ではそのまま残すという形です。1行に無理にまとめると、どちらの記事でも使えない中途半端な指示になります。
用語集ページへの内部リンクで支える
記事の中で説明を尽くすには限界があります。1行の言い添えで足りない語は、別のページに預ける判断ができます。
預け方は内部リンクです。用語の初出に、その語を扱ったページへのリンクを置きます。本文には1行の言い添えを残したまま、詳しく知りたい読者だけが移動できる形にしてください。リンクだけを置いて説明を省くと、移動しない読者に何も伝わりません。
リンクを置く場所は初出の1回に絞ります。同じ語に何度もリンクを付けると、本文が読みにくくなり、どのリンクが重要か分からなくなります。
リンクの文字列も気にしてください。こちらや詳しくはという表記ではなく、用語そのものをリンクにすると、移動先の内容が予想できます。読者が移動するかどうかを判断できる状態にしてください。
預ける語と本文で説明する語の線引きも決めておいてください。記事の主題に直結する語は本文で説明し、周辺の語は用語のページに預ける。主題の語をリンクだけで済ませると、記事そのものが読み進められなくなります。
チームで運用する手順と更新
最後に定着させる手順です。表を作るだけでは使われないため、いつ誰が触るかまで決めます。
過去のレビューで指摘された語、原稿で表記が揺れている語を集めます。網羅は狙いません。
解説記事は学ぶ段階の読者、事例記事は同職種の担当者、といった対応を先に決めます。
扱いは5択から1つ。案は貼れる1行で書き、理由は1文で残します。
表の用語を検索して該当箇所を確認します。レビュー担当の負荷が下がります。
難しいという指摘ではなく、表のどの語のどの扱いに反すると書きます。
定着した語は言い添えを外し、新しく増えた語を追加します。表を生かし続ける工程です。
4番目が定着の鍵になります。照合をレビュー担当だけの仕事にすると、指摘の量が増えて表が敬遠されます。書き手が自分で確認する工程にすれば、表は自分を助ける道具になります。
6番目の見直しは、忘れられやすい工程です。カタカナ語の定着は数年で動くため、更新しない表は数年後に古い判断を強制する仕組みになります。四半期に30分で足ります。
表の置き場は、原稿を書く環境の近くにしてください。別のツールを開かないと見られない場所にあると、忙しい週に参照されません。原稿のひな型と同じフォルダに置くのが確実です。
外部の書き手にも同じ表を渡してください。委託した原稿で用語の扱いが揺れる原因は、判断の基準が共有されていないことにあります。表の1枚があれば、修正の指示が好みの問題ではなく基準に沿った指摘として伝わり、やり直しの回数が減ります。
校正でどこまで機械的に扱えるか
運用の負荷を下げるには、機械的に処理できる部分を切り分けます。人が判断すべき部分に時間を残すためです。
機械的に処理できるのは検出です。表に載せた語が原稿に含まれているかは、検索の機能で確認できます。使わないと決めた社内語が残っていないかの確認は、目視より検索のほうが確実です。
表記の揃えも機械的に扱えます。同じ語の表記が揺れている箇所を洗い出す作業は、一括の検索で終わります。アルファベットの略語が初出で正式名称と併記されているかも、検索で確認できます。
生成AIは、言い添えの案を複数出させる用途に向きます。難しい語に対して1行の説明を3案出させ、記事の文脈に合うものを人が選ぶ使い方です。案を出す作業は速く、選ぶ判断は人に残ります。
一方で、機械に任せられないのは残すか消すかの判断です。読者の立ち位置と検索の需要と社内での通じ方を踏み合わせる判断は、事業の文脈を持つ人にしかできません。検出と案の生成を機械に寄せ、判断を人が持つ切り分けにしてください。
案を採用するときは、そのまま貼らずに1度読み上げてください。生成された説明文は形が整っている一方で、自社の商材では成り立たない一般論になっていることがあります。表の3列目に入れる前に、実際の文脈で通るかを確かめる工程を1つ挟んでください。
よくある失敗パターン
最後に、実際の運用で見られる失敗を挙げます。どれも良い意図から生まれます。
- 専門用語を全部やさしい言葉に置き換える:指す範囲が広がり、読者が別のものを想像します
- 正式名称を1度も書かない:読者が次に自分で調べる手がかりと、検索からの入口を失います
- 用語の定義を長く丁寧に書く:決裁者向けの文章では、知りたいこととずれた文章を読ませることになります
- 社内語を標準語だと思い込む:前職や取引先との間だけで通じる言い方が、説明なしで公開されます
1つ目は最も多い失敗です。やさしくすることが目的化すると、正確さを削ってでも平易にする判断が積み上がります。やさしさは手段で、目的は読者が正しく理解して次の行動に進めることです。
2つ目と4つ目は、公開してから気づく種類の失敗です。検索からの流入が想定より少ない、問い合わせの最初で用語の確認が入る。どちらも本文を読み直せば原因が分かるため、公開後1か月の時点で用語だけを見る振り返りを1回入れておくと拾えます。
3つ目は逆向きの失敗です。丁寧に書くほど良いという前提が、読者の関心とずれた文章を生みます。決裁者に向けた文章では、用語の定義より効果と費用と期間が求められます。
- 言い換え対応表には決めた理由を必ず残す。理由がない判断は、担当が代わるたびに議論をやり直すことになる
- カタカナ語の扱いは四半期ごとに見直す。定着した語の言い添えを外さないと、記事が過剰な説明で重くなる
まとめ
専門用語を削るだけでは伝わりません。用語は長い説明を1語に圧縮した記号なので、消せば指す範囲、読者が検索に使う入口、社内で説明するときの共通言語という3つが同時に落ちます。判断すべきなのは語の難しさではなく、語と読者の組み合わせです。同じ職種の実務担当者には標準語がそのまま通り、隣の部署には初出の1行が必要で、決裁者には用語より効果と費用と期間を書き、学ぶ段階の読者には日常語と正式名称の併記が要ります。
扱いの型は5つに整理できます。言い換え、言い添え、併記、そのまま残す、使わない。BtoBの記事で最も使うのは言い添えで、語を残して初出に1行の説明を添える形です。検索される語と業界の標準語は残し、社内語と略語は原則として外に出さない。カタカナ語は定着の度合いで判断が動くため、モチベーションのように言い添えが不要になった語と、説明が必要なままの語を分けて扱う必要があります。
そして判断は表に残してください。用語、扱い、貼れる1行の案、決めた理由、更新日の5列です。迷いが多い20語から始め、書き手が提出前に自分で照合し、四半期ごとに古い判断を見直す。この形にすると、レビューの指摘が難しいという感想から表のどの語のどの扱いという具体に変わります。まずは直近の原稿1本から、表記が揺れている語を10個抜き出してみてください。それが最初の対応表になります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
コンテンツ制作にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
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