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博物館の展示替えで、収蔵品の写真と日本語の解説から英語・中国語・韓国語の解説文の案を作り、用語集との食い違いを拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

展示替えで新しく出す収蔵品について、日本語の解説文と写真、館の対訳用語集から、英語・中国語・韓国語の解説文の案を作ります。用語集と違う訳語、用語集に無い用語、パネルの字数の超過を一覧にして、確認に回します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Make/Power Automate
対象業界
その他/自治体
対象部門
総務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
翻訳
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
60h/月
AI導入後
21h/月
想定削減
65%
年間削減
468h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 学芸員が日本語の解説文を書き、収蔵品の管理システムに入れる
  2. 総務課の担当が、日本語の解説文と写真、用語集の抜粋をまとめて翻訳会社に送る。専門用語には注記を付ける
  3. 翻訳会社から3言語の訳が戻る(依頼から1〜2週間)
  4. 学芸員が英語の訳を読み、用語集と見比べ、作品の見え方と合っているか(「右手に持つ」が逆になっていないか)を確かめる
  5. 国際交流の嘱託職員が中国語と韓国語の訳を確かめる
  6. パネルの字数に収まらない訳を、翻訳会社とやり取りして縮める
  7. デザイン担当に渡し、パネルを作る
導入後(After)
  1. 人学芸員が日本語の解説文を書き、収蔵品の管理システムから展示替えの一覧(解説文、写真のファイル名、パネルの種類)を書き出してスプレッドシートに貼る
  2. 人総務課の担当が、訳す行を選び、スプレッドシートのメニューから「訳案を作る」を押す
  3. 自動Google Apps Script が、行ごとに写真、日本語の解説、用語集のうちその解説に出てくる語を取り出す
  4. 自動Gemini API に渡し、3言語の訳案、補足説明の案、使った訳語の一覧、用語集に無い用語を受け取る
  5. 自動用語集の訳語が訳案に入っているか、パネルの字数に収まるかを規則で確かめる
  6. 自動確認用のシートに書き出し、食い違い・新しい用語・字数の超過に印を付ける
  7. 人学芸員が英語の案と補足の案を読み、用語と作品の見え方を確かめ、新しい用語の訳を決めて用語集に足す
  8. 人国際交流の嘱託職員が、中国語と韓国語の案を確かめて直す
  9. 人総務課の担当が、採用した訳をデザイン担当に渡す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 学芸員が日本語の解説文を書き、収蔵品の管理システムに入れる
  2. 総務課の担当が、日本語の解説文と写真、用語集の抜粋をまとめて翻訳会社に送る。専門用語には注記を付ける
  3. 翻訳会社から3言語の訳が戻る(依頼から1〜2週間)
  4. 学芸員が英語の訳を読み、用語集と見比べ、作品の見え方と合っているか(「右手に持つ」が逆になっていないか)を確かめる
  5. 国際交流の嘱託職員が中国語と韓国語の訳を確かめる
  6. パネルの字数に収まらない訳を、翻訳会社とやり取りして縮める
  7. デザイン担当に渡し、パネルを作る

(a)戻ってきた訳の確認に時間が取られる。 学芸員は英語なら読めますが、用語集の1,500語と1語ずつ見比べる作業は、時代名や技法名が多い解説ほど重くなります。 展示替えの週には、展示作業と確認が重なります。

(b)訳語がパネルごとに揺れる。 翻訳会社の担当が用語集を見落とすと、同じ技法が部屋ごとに違う英語になります。来館者には同じものか違うものか分かりません。

(c)展示替えの直前に間に合わない。 日本語の解説が固まるのは展示替えの2〜3週間前で、翻訳に1〜2週間、確認と字数の調整に数日かかります。日本語の手直しが1回入ると、外国語のパネルだけが後から貼られることになります。

(d)補足説明が書かれない。 日本の来館者には説明不要の「お盆」「家紋」「茶の湯」が、外国の来館者には分かりません。補足を足すかは学芸員の判断ですが、訳の依頼の時点で決まっていないので、直訳のまま出ることが多いのが実情です。

  1. 【人】 学芸員が日本語の解説文を書き、収蔵品の管理システムから展示替えの一覧(解説文、写真のファイル名、パネルの種類)を書き出してスプレッドシートに貼る
  2. 【人】 総務課の担当が、訳す行を選び、スプレッドシートのメニューから「訳案を作る」を押す
  3. 【自動】 Google Apps Script が、行ごとに写真、日本語の解説、用語集のうちその解説に出てくる語を取り出す
  4. 【自動】 Gemini API に渡し、3言語の訳案、補足説明の案、使った訳語の一覧、用語集に無い用語を受け取る
  5. 【自動】 用語集の訳語が訳案に入っているか、パネルの字数に収まるかを規則で確かめる
  6. 【自動】 確認用のシートに書き出し、食い違い・新しい用語・字数の超過に印を付ける
  7. 【人】 学芸員が英語の案と補足の案を読み、用語と作品の見え方を確かめ、新しい用語の訳を決めて用語集に足す
  8. 【人】 国際交流の嘱託職員が、中国語と韓国語の案を確かめて直す
  9. 【人】 総務課の担当が、採用した訳をデザイン担当に渡す

7番目と8番目が、この設計の分かれ目です。 確かめる人は変わりません。変わるのは、1語ずつ用語集と見比べる作業が、印の付いた箇所を読む作業に変わることです。

8番目で嘱託職員が見るのは、AIの案ではなく、学芸員が英語で確かめた後の案です。 英語の確認で用語や補足が決まってから中国語と韓国語を読むと、同じ指摘を2回しなくて済みます。

翻訳会社への依頼は、無くすのではなく絞ります。 特別展の図録や、館の顔になる長い解説は、これまでどおり翻訳会社とネイティブのライターに頼みます。この構成で扱うのは、毎月の展示替えのパネルとキャプションです。

02今回想定するシステム構成

構成図
収蔵品の管理システム ── 展示替えの一覧(解説文・写真のファイル名・パネルの種類)を書き出し
   ▼
展示替えのスプレッドシート(訳す行を選ぶ)
   ▼【トリガー】メニュー「訳案を作る」(総務課の担当が押す)
Google Apps Script
   ├──▶ 写真(ドライブ)、用語集のうち解説に出てくる語
   ▼
Gemini API(1件ずつ)
   │   英語・中国語(簡体字)・韓国語の訳案/補足説明の案
   │   使った訳語の一覧/用語集に無い用語/写真と解説の食い違いのおそれ
   ▼
Google Apps Script ── 用語集の訳語の有無、字数の上限の確認
   ▼
確認用のシート
   ▼【学芸員が英語と補足を、嘱託職員が中国語と韓国語を確かめる】
デザイン担当へ(パネルの制作)
役割想定する製品代替候補
処理Gemini API(3言語の訳案、補足説明の案、使った訳語の一覧、写真と解説の食い違いのおそれ)Claude API、OpenAI API
連携Google Apps Script(メニュー、写真と用語の取り出し、規則による確認、確認用のシートへの書き出し)Make、Power Automate
保管Google ドライブ(展示替えのフォルダ、収蔵品の写真)Microsoft OneDrive
台帳Google スプレッドシート(展示替えの一覧、対訳用語集、確認用のシート)Microsoft Lists

新しく足すのは、Gemini API の利用と Apps Script のプログラムだけです。 収蔵品の管理システムには書き込まず、書き出した一覧を使います。

訳と写真の読み取りは Gemini API が行います。 公式のページでは、input に文字と画像を並べて渡せ、system_instruction でモデルのふるまいを指定するとされています。館の訳の決まりと禁止事項は system_instruction に置き、解説と写真と用語は input に入れます。画像は PNG・JPEG・WEBP・HEIC・HEIF を受け付け、画像を直接入れる場合はリクエスト全体が20MBまでとされています。

写真を渡すのは、訳語を選ぶ手がかりにするためです。 「皿」が plate か dish か、「鉢」が bowl か basin かは、形を見ないと決められません。解説が「右上に描かれた鶴」と書いていて、写真では左上に見えるといった、日本語の解説の側の誤りに気づくこともあります。

対応言語の一覧は、公式のモデルのページに見当たりません。 3言語の訳の質は、第8章の最小構成で館の過去の訳と比べて確かめます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

総務課の担当がスプレッドシートのメニューから「訳案を作る」を押したときに動かします。 日本語の解説は、学芸員が展示替えの直前まで直すことがあります。行を足したことを自動で拾うと、手直しの途中の文を訳してしまいます。 「この行は日本語が固まった」と人が決めた時点を起点にします。

メニューは、スプレッドシートに結び付いたスクリプトの onOpen で足します。 公式のページでは、メニューを作れるのはファイルに結び付いたスクリプトだけとされています。訳す行には「日本語確定」の列に印を付け、メニューは印の付いた未処理の行だけを処理します。

1回の実行は6分までです。 公式のページでは、Apps Script の1回の実行が6分まで、Google Workspace のアカウントで URL の取得が1日10万回までとされています。1件の呼び出しは数十秒の想定なので、1回のメニューで8件まで処理し、残りは「続きを作る」で処理します。 処理した行には時刻と状態を書き、二重に処理しません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
日本語の解説文パネルまたはキャプションの本文、作品名、作者、時代、材質・技法、寸法収蔵品の管理システムの書き出し
収蔵品の写真展示用の写真(長辺1,600ピクセルの JPEG)ドライブの展示替えのフォルダ
対訳用語集日本語、英語、中国語(簡体字)、韓国語、使い方の注記、決めた日と決めた人用語集のスプレッドシート
パネルの字数の上限パネルの種類ごと・言語ごとの上限(英語は語数、中国語と韓国語は字数)設定のシート
補足の要否の目安補足を付ける題材の例(年中行事、家紋、仏教の尊格、茶の湯など)学芸課が用意する一覧

質を決めるのは、3行目の用語集です。 用語集に無い用語は、AIが毎回訳を考えます。新しい用語が出たら、学芸員が訳を決めて用語集に足す流れを回すほど、揺れは減っていきます。

用語集は、全部を渡さず、その解説に出てくる語だけを渡します。 1,500語を毎回渡すと、指示が長くなるうえに、出てこない語の訳に引っ張られます。Apps Script で日本語の解説に含まれる用語だけを抜き出し、表にして渡します。

【用語集の抜粋(例)】
| 日本語 | 英語 | 中国語(簡体字) | 韓国語 | 注記 |
| 染付 | sometsuke (underglaze blue) | 青花(染付) | 소메쓰케(청화) | 英語は初出のみ括弧で補う |
| 江戸時代 | Edo period (1603–1868) | 江户时代 | 에도시대 | 英語は初出に年代を付ける |
| 蒔絵 | maki-e (sprinkled-gold lacquer) | 莳绘 | 마키에 | |
Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
解説文と作品の情報展示替えのスプレッドシートの行input の文字に入れる
写真行のファイル名でドライブのフォルダを引くinput の画像に入れる
用語の抜粋用語集の日本語の列と、解説文の文字列の一致input の文字に表で入れる
字数の上限設定のシートのパネルの種類の行指示に入れ、後で規則で確かめる

用語の抜き出しは、長い語から順に一致させます。 「色絵」と「色絵磁器」の両方が用語集にあるとき、短い語から当てると「色絵」の訳が使われ、「色絵磁器」の決まった訳が抜けます。長い語に当たった部分は、短い語の一致から外します。

写真は展示用の縮小版を使います。 収蔵品の撮影データは1枚数十MBになることがあり、20MBのリクエストの上限を超えます。 展示替えのフォルダに、縮小版を置く決まりにします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 日本語確定の印の確認 … 印の無い行は処理しません
  2. 写真の有無 … 写真が無い行は、写真無しで訳し、「写真無し」の印を付けます
  3. 用語の抜き出し … 長い語から順に一致させ、抜粋の表を作ります
  4. 固有名詞の確認 … 作者名と作品名が用語集にあれば、その訳を必ず使う語として印を付けます
  5. 公開しない情報を外す … 寄託者の名前、保管の場所、評価額の列は渡しません
  6. 字数の上限の取り出し … パネルの種類から、言語ごとの上限を引きます

5番目を省かないでください。 収蔵品の管理システムの書き出しには、パネルには載らない情報の列が混ざります。 訳に要るのは解説と作品の基本の情報だけです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、日本語の解説を3言語に訳し、補足説明の案を分けて作り、どの訳語を使ったかを書き出すことです。

見るもの見方判断できないときの扱い
3言語の訳用語集の訳語を使い、パネルの字数の上限に収める収まらなければ超過として返し、勝手に内容を削らない
補足説明の案日本特有の題材で、直訳では伝わらないものに、英語で数行の補足要否に迷えば suggested にして学芸員に回す
使った訳語の一覧用語集の語ごとに、どの訳語を使ったか用語集の訳を使えなかった語は理由を書く
用語集に無い用語時代名・技法名・人名・地名などで、用語集に無いもの訳の候補を挙げ、決めない
写真と解説の食い違い位置・色・数など、写真で確かめられることだけ写真で判断できなければ書かない

「勝手に内容を削らない」が、この表でいちばん大事な点です。 字数に収めるよう指示すると、AIは作品の来歴や技法の説明を黙って落とします。どこを削るかは学芸員の判断なので、収まらなければ超過として返させます。

補足の要否を3段階にするのも同じ考え方です。 「お盆の供養に使われた器」のような解説は、補足が無いと外国の来館者には用途が伝わりません。一方、どの題材に補足を付けるかは館の方針で、付けすぎるとパネルが説明だらけになります。 AIには「要る」「迷う」「要らない」を返させ、suggested の分だけ学芸員が決めます。補足の案は英語だけで作り、採用したものを中国語と韓国語に訳す二段にすると、確認の手間が3言語分に増えません。

写真との食い違いは、写真で確かめられることに限ります。 「右上に描かれた鶴」「三つの脚」「青い釉薬」は写真で見えますが、「江戸時代後期の作」「京都で焼かれた」は写真では分かりません。見えないことについて食い違いを書かせると、写真の印象から年代を推し量った指摘が混ざります。

させないこと理由
解説の内容の付け足し補足は別の欄に分ける。訳文に説明を混ぜない
年代・作者・技法の推測解説に無いことを写真から推し量って書かない
用語集の訳の言い換え自然に聞こえる別の訳に変えない
写真と解説のどちらが正しいかの判断食い違いのおそれを出すだけ。決めるのは学芸員
Step6

指示内容を固定する

system_instruction に置く指示です。解説と写真と用語の抜粋は input で渡します。

あなたは博物館の展示解説の翻訳担当です。
渡された日本語の解説を、英語・中国語(簡体字)・韓国語に訳してください。
訳すのは日本語の解説に書かれていることだけです。

【訳の決まり】
- 用語の抜粋の表にある語は、表の訳語をそのまま使ってください。
  より自然に聞こえる別の訳に言い換えないでください。
- 表の注記(「初出のみ括弧で補う」など)に従ってください。
- 表に無い時代名・技法名・人名・地名・作品名は、unknown_terms に
  日本語と訳の候補を書いてください。訳文では候補の1つを使い、印として [?] を付けてください。
- パネルの字数の上限:英語 {en_limit} 語、中国語 {zh_limit} 字、韓国語 {ko_limit} 字。
  収まらないときも内容を削らず、over_limit を true にしてください。

【補足説明】
- 日本特有のモノや事象(年中行事、家紋、仏教の尊格、茶の湯など)が題材で、
  直訳では意味が伝わらないと考えたときだけ、英語で3文以内の補足の案を supplement に書いてください。
- 補足を訳文に混ぜないでください。要否に迷ったら supplement_need を suggested にしてください。

【写真について】
- 写真は、訳語を選ぶ手がかり(形・色・材質)と、解説との食い違いの確認にだけ使ってください。
- 解説に無い年代・作者・技法を、写真から推し量って書かないでください。
- 解説に書かれた位置・色・数が写真と違うおそれがあるときは、photo_findings に書いてください。
  どちらが正しいかは書かないでください。

「別の訳に言い換えない」を明記しないと、用語集が守られません。 何も言わなければ、AIは文の流れに合わせて訳語を選び直します。用語集の訳がやや硬くても、館の中で同じであることのほうを優先する、という決まりを指示で伝えます。

補足の対象の例を指示に並べるのは、要否の基準を館の方針に寄せるためです。 例が無いと、AIは日本の固有名詞が出るたびに補足を付けます。学芸課が用意した「補足を付ける題材の例」を、展示の分野ごとに入れ替えて渡します。

[?] の印を付けさせるのは、確認の場所を目で分かるようにするためです。 印は確認用のシートで目立たせ、学芸員が訳を決めたら外します。印が残ったままの訳は、デザイン担当に渡せない決まりにします。

温度などの指定は入れません。 公式のページでは、Gemini 4 と Gemini 3.6 以降のモデルは独自の温度の値を無視するとされ、サンプリングのパラメーターを外すよう案内しています。 訳の揺れは、用語集と規則の確認で抑えます。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 Gemini API の構造化出力で、/v1beta/interactions の response_format に mime_type: "application/json" とスキーマを指定します。

{
  "item_id": "",
  "translations": {
    "en": { "text": "", "over_limit": false },
    "zh_hans": { "text": "", "over_limit": false },
    "ko": { "text": "", "over_limit": false }
  },
  "supplement_need": "needed | suggested | not_needed",
  "supplement": "",
  "terms_used": [
    { "ja": "", "en": "", "zh_hans": "", "ko": "", "from_glossary": true, "note": "" }
  ],
  "unknown_terms": [ { "ja": "", "en_candidate": "", "zh_candidate": "", "ko_candidate": "" } ],
  "photo_findings": [ { "ja_text": "", "observation": "" } ]
}

1つ目の理由は、用語集の守られ方を機械で確かめられることです。 Apps Script で、用語の抜粋の各語について、用語集の訳語の文字列が訳文に含まれているかを見ます。AIが from_glossary: true と書いていても、訳文に用語集の訳語が無ければ印を付けます。公式のページは、JSONとして正しくても値はアプリケーションの側で確かめるよう案内しています。

2つ目は、字数を規則で数え直せることです。 over_limit はAIの自己申告なので、英語は語数、中国語と韓国語は字数を Apps Script で数え直します。上限を超えた訳は、学芸員がどこを削るかを決めます。

3つ目は、補足と訳を別の列にできることです。 補足はパネルの下の段に小さく載せるか、載せないかを学芸員が決めます。訳文に混ざっていると、その判断ができません。

確認用のシートに書き出す列は次のとおりです。

【確認用のシート(解説ごと)】
| 資料番号 | 作品名 | 言語 | 訳案 | 字数 | 上限 | 用語集の印 | 新しい用語 | 補足の要否 | 補足の案 | 写真との食い違い | 採用する訳 | 確認者 |
| 陶-0412 | 染付山水文皿 | en | Plate, sometsuke (underglaze blue) ... | 96 | 90 | | 山水文 [?] | suggested | ... | 解説「右上に楼閣」/写真では左上 | | |

1行を「解説×言語」にするのは、確認者を言語ごとに分けるためです。 嘱託職員は中国語と韓国語の行だけに絞り込んで読めます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
展示替えのスプレッドシートApps Script のメニューと読み書き訳す行を読み、状態を書く
ドライブApps Script の Drive の機能写真を取り出す
用語集スプレッドシートの読み取りその解説に出てくる語を抜き出す
Gemini APIApps Script の URL の取得(/v1beta/interactions)訳案と一覧を構造化出力で受け取る
確認用のシートスプレッドシートへの書き出し訳案、補足、印、新しい用語

用語集にはこの構成から書き込みません。 新しい用語の訳は学芸員が決め、手で足します。AIの候補がそのまま用語集に入ると、次の訳からはそれが「館の決まり」になります。

収蔵品の管理システムにも書き込みません。 採用した訳をシステムに戻すかは、館の運用で決めます。

Step9

人が確認する

この構成では、パネルに載せる訳を全件、人が採用します。

  1. 学芸員が印の付いた箇所を見る … 用語集の訳語が入っていない箇所、[?] の付いた新しい用語、写真との食い違いのおそれ
  2. 学芸員が英語の訳と補足の案を読む … 解説に無いことが足されていないか、補足を載せるかを決めます
  3. 字数を超えた訳の削り方を決める … 日本語の解説の側を直すか、訳だけを縮めるかを決めます
  4. 嘱託職員が中国語と韓国語を読む … 用語集の訳語が文の中で自然かを確かめ、直します
  5. 新しい用語の訳を用語集に足す … 決めた日と決めた人を残します

1番目の写真との食い違いは、日本語の解説の側を直すきっかけになります。 写真の向きや撮影の範囲で見え方が違うだけのこともあるので、学芸員が実物か撮影の記録で確かめてから、日本語と訳の両方を直します。

4番目を省かないでください。 観光庁のガイドラインも、中国語の外来語の表記にはさまざまな型があるとして、ネイティブのチェックや辞書での確認を行い、中国語圏の旅行者にとって自然かを確かめることが望ましいとしています。

目標は、1件あたり28分です。 用語集との見比べが印の確認に変わり、確認者への受け渡しも確認用のシートで済みます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
写真が無い写真無しで訳し、写真の手がかりが要る訳語は [?] にする
写真がリクエストの上限に近い縮小版を置いてもらう。撮影データをそのまま渡さない
日本語確定の印の後に解説が直された状態を「要再作成」に戻し、もう一度メニューから作る
用語集の同じ語に訳が2つある処理せず印を付け、用語集の側を直す
字数の上限を大きく超える内容を削らず超過のまま返す。学芸員が日本語の側を直すか決める
1回の実行が6分に近づいた処理中の行で止め、「続きを作る」で再開する
Gemini API が混み合いの応答を返した少し待って再試行し、続けば状態を「失敗」にする
構造化出力の値が決めた範囲の外その行を「要確認」にし、訳案を空にする

3行目がいちばん起きやすい例外です。 展示替えの直前に日本語が直ることはよくあります。訳を作った時点の日本語を一緒に残し、いまの日本語と違えば自動で印を付けます。

Step11

記録を残す

  • 行ごとの日本語の解説(訳したときの版)と、渡した用語の抜粋
  • Gemini API が返したJSONの全文
  • 採用した訳と、AIの案から直した箇所
  • 新しい用語と、決めた訳・決めた人・日付
  • デザイン担当に渡した日時

3行目は、用語集と指示を直す材料になります。 嘱託職員が同じ型で直していれば、用語集の注記か訳の決まりが足りません。4行目は、用語集の訳がいつ誰の判断で決まったかの記録です。 後から訳を変えるとき、どのパネルが古い訳のままかを、この記録と採用した訳から引けます。

展示が終わった後も、採用した訳は残します。 同じ収蔵品は数年後に再び展示されることが多く、そのときは採用した訳から始められます。

04実装レベルの3段階

最小構成:AI Studio に解説と写真と用語を手で渡し、3言語の案を作らせる / 一部の解説の訳案
半自動化:上記+Apps Script のメニューで、選んだ行の訳案を確認用のシートに書き出す / 展示替えの全件の訳案
本格構成:上記+用語の自動の抜き出し、用語集の訳語と字数の規則の確認、写真との食い違いまで出す / 訳案から確認の印まで

半自動化で、1件80分が50分程度になります。 翻訳会社とのやり取りは無くなりますが、用語集との見比べと字数の確認が手で残ります。本格構成で28分になり、これが本記事の想定です。 差が大きいのは、見比べが印の付いた箇所だけになるからです。 半自動化の段階でも、用語集の訳語の確認は手で行います。 規則で確かめる仕組みが無いぶん、学芸員が用語集を横に開いて読みます。それでも、翻訳会社とのやり取りと待ちが無くなるだけで、展示替えに間に合わせる余裕が生まれます。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で2〜3回の展示替えを回すと、用語集に無い用語がまとまって出ます。それを用語集に足してから規則を入れるほうが、印の空振りが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
45 件
1件あたり現在時間
80 分
1件あたり導入後時間
28 分
現在  45件 × 80分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 45件 × 28分 ÷ 60 = 21 時間/月
月間削減時間
39h
削減率
65%
年間削減時間
468h
年間金額換算(時間単価3,500円)
164万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 常設展の展示替えや小企画展を毎月行い、そのたびに数十点の収蔵品の解説パネルとキャプションを英語・中国語・韓国語でも出している公立・私立の博物館・美術館。訳を外部の翻訳会社に頼んでいるが、時代名・技法名・作家名の訳がパネルごとに揺れる、戻ってきた訳の確認に学芸員の時間が取られる、展示替えの直前に間に合わない、といった課題がある場合。館の対訳用語集を持っているか、作る意思がある場合。Google Workspace を使っている場合。
向いていない
  1. 展示替えが年に数回で、訳す解説が月に数点しか無い場合。解説を外国語のネイティブの学芸員が最初から書いている場合。子ども向けの展示や学校向けの教材として来館者や児童・生徒が直接使う仕組みにしたい場合(この構成は館の職員だけが使います)。なお、解説の学術的な内容が正しいか、どこまで補足するかの判断、訳文の最終的な採否は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の展示替えから20件を選ぶ(時代名・技法名が多い解説と、日本特有の題材の解説を入れる)
  2. 当時翻訳会社から戻り、館が採用した3言語の訳を用意する
  3. Google AI Studio で、第7章の指示と用語の抜粋を貼り、解説と写真を1件ずつ渡す
  4. AIの訳と当時の訳を、用語集の訳語の使い方と、意味の抜けで比べる
  5. 中国語と韓国語は、嘱託職員に読んでもらう

用語集の語が多い解説を必ず入れてください。 用語集を守れるかが、この構成が使えるかの分かれ目です。

出てきた内容判断
用語集の訳語を守り、意味の抜けが無いApps Script の連携に進む
用語集の訳を自然な言い換えに変えた指示の書き方で直る。構成は有効
中国語か韓国語の訳が不自然で直しが多いその言語は翻訳会社に残し、英語から始める

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
用語集の訳が自然な言い換えに変わる「言い換えない」を指示に書き、訳文に訳語があるかを規則で見る
字数に収めるために内容が削られる削らず超過として返させ、削り方は学芸員が決める
写真から年代や技法を推し量って足す写真は訳語の手がかりと食い違いの確認だけに使うと縛る
短い用語が長い用語の訳を上書きする長い語から順に一致させる
補足が訳文に混ざる補足は別の欄。訳文には日本語の解説に書かれたことだけ
日本語が直されたのに古い訳が残る訳したときの日本語を残し、違えば印を付ける
中国語と韓国語の直しが多いその言語は翻訳会社に残し、英語から始める

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「読みやすい訳」に見えるので、読んだだけでは気づきません。 用語集の訳語の有無と字数を規則で数えることで防ぎます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 収蔵品の写真と解説、館の対訳用語集です。収蔵品の管理システムには、寄託者の名前、保管の場所、評価額のように公開していない情報もあります。

  1. 無料の枠で使わない … Gemini API の規約では、無料のサービスに送った内容は製品の改善に使われ、人が読む場合があるとされ、機微な情報や秘密の情報を送らないよう求めています。有料のサービスでは、プロンプトと応答を製品の改善に使わないとされています。未公開の収蔵品の写真を扱うので、本番は有料の利用にします
  2. 館の職員だけが使う … 規約は、18歳未満を対象とするか、18歳未満が利用しうるサービスでの利用を認めていません。来館者や学校の利用者が使う解説アプリや質問の窓口には、この構成をつなぎません。 使うのは館の職員だけで、パネルに載るのは人が採用した訳です
  3. 公開しない情報を渡さない … 寄託者の名前、保管の場所、評価額の列は、前処理で外します
  4. 写真の権利を確かめる … 寄託品や他館からの借用品の写真は、撮影と利用の条件が決まっていることがあります。条件が分からない写真は渡さず、写真無しで訳します
  5. 訳の採否は人が決める … 案をそのままデザイン担当に渡す経路を作りません

誤りが起きた場合のリスクは、用語の訳が館の中で揺れることと、解説に無い内容が訳に足されることの2つです。 前者は用語集と規則の確認で、後者は補足を別の欄に分けることと学芸員の確認で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:用語集を整える

対訳用語集で、同じ日本語に訳が2つある語と、注記の無い語を洗い出し、学芸課で訳を決めます。展示替えの多い分野(陶磁器、漆工)から始めます。

2週目:20件で試す

過去の展示替えの20件を AI Studio に渡し、当時の訳と比べます。用語集の訳語を守れたかを最優先で見ます。 中国語と韓国語は嘱託職員に読んでもらいます。

3週目:訳の決まりを決める

補足を付ける題材の目安、パネルの種類ごとの字数の上限、[?] の印の外し方を決め、設定のシートに入れます。

4週目:メニューから訳案を作る

Apps Script のメニューで、選んだ行の訳案を確認用のシートに書き出すところまで作ります。この段階では、用語集との見比べは手で行います。

2か月目: 用語の自動の抜き出しと、訳語と字数の規則の確認を足します。3か月目以降: 写真との食い違いの確認を足し、1件80分が何分になったかを実測します。新しい用語の印が展示替えのたびに減り、外国語のパネルが展示替えの初日に並ぶようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-15
確認した内容情報源確認日
美術館・博物館の解説系の表示は英語併記が望ましく、必要性が高い施設では中国語・韓国語等も望ましいこと。日本特有のモノや事象をモチーフにした展示物で、直訳では意味が伝わらないものには外国人向けの補足説明を加えることが望ましく、補足は数行程度を想定すること。中国語の外来語の表記はネイティブチェックや辞書で確認することが望ましいこと。専門的な用語は業種の関係者で対訳語を定めていくことが望ましいこと観光庁: 観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン(PDF)2026-10-14
Interactions で system_instruction によりモデルのふるまいを指定すること。input に文字と画像を並べて渡せること。Gemini 4 と Gemini 3.6 以降のモデルは独自の温度の値を無視し、サンプリングのパラメーターを外すよう案内されていることGemini API: Text generation2026-10-14
対応する画像の形式が PNG、JPEG、WEBP、HEIC、HEIF であること。画像を直接入れる場合、指示などと合わせたリクエスト全体が20MBまでであること。例が /v1beta/interactions を使っていることGemini API: Image understanding2026-10-14
構造化出力を /v1beta/interactions の response_format に mime_type: "application/json" とスキーマを入れて指定すること。enum と required が使えること。JSONとして正しくても値はアプリケーションの側で検証するよう案内されていることGemini API: Structured output2026-10-14
18歳未満を対象とするか、18歳未満が利用しうるサービスでの利用を認めていないこと。無料のサービスに送った内容が製品の改善に使われ人が読む場合があり、機微な情報や秘密の情報を送らないよう求めていること。有料のサービスではプロンプトと応答を製品の改善に使わないことGemini API Additional Terms of Service2026-10-14
スプレッドシートのメニューを onOpen で足すこと。メニューを作れるのはファイルに結び付いたスクリプトだけであることApps Script: Custom Menus2026-10-14
Apps Script の1回の実行が6分までであること。Google Workspace のアカウントで URL の取得が1日10万回までであることApps Script: Quotas for Google Services2026-10-14

解説の学術的な内容、補足を載せるか、訳文の採否は、学芸員と館の責任者が決めてください。 本記事は公開されている製品の仕様と観光庁のガイドラインで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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