社員からの中期経営計画・方針・組織変更の質問に、社内に公表した資料だけを根拠にチャットで答え、答えられない質問を経営企画へ毎月まとめる
社員からの中期経営計画・全社方針・組織変更の質問に、社内に公表した資料だけを根拠にチャットで答えます。資料に無く答えられなかった質問は記録し、毎月まとめて経営企画へ渡します。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- IT・SaaS/商社/製造/金融
- 対象部門
- 経営企画
- 対象業務
- 問い合わせ対応/情報検索
- 主な課題
- 人手が足りない/問い合わせが多い/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 対話
- 主な効果
- 対応スピード向上/工数削減/検索時間短縮
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 社員が、メールか全社チャンネルで経営企画に質問を送る
- 経営企画の担当者が、社内ポータルの資料から答えに当たる箇所を探す
- 当たる資料が複数の版にあれば、いま有効な版を確かめる
- 資料にある範囲で回答を書き、資料のリンクを添えて返す
- 資料に答えの無い質問は、チームのリーダーに相談して答えるか、答えられない旨を返す
- 気になった質問は、担当者が各自のメモに残す
- 人社員が社内ポータルのチャット画面に質問を書く(社内の ID でログイン済み)
- 自動中継プログラムが社員のアカウントで Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドを呼ぶ
- 自動公表済みで、いま有効な版の資料を優先して検索し、出典付きの回答を作る
- 自動回答の裏付けの度合いと、回答しなかった理由を見て、回答の扱いを決める
- 自動答えた質問は社員に返し、答えられなかった質問は「経営企画に回しました」と返して記録する
- 人経営企画の担当者が、回された質問を1日1回見て、個別に答えるものに答える
- 自動月末に、答えられなかった質問と社員が「役に立たなかった」と押した回答を集め、似た質問をまとめる
- 人経営企画が月次のまとめを読み、資料の追記・FAQの公表・次の全社会議での説明に振り分ける
- 人追記した資料を公表の手続きに通し、データストアに取り込む
各工程の詳しい説明を読む
- 社員が、メールか全社チャンネルで経営企画に質問を送る
- 経営企画の担当者が、社内ポータルの資料から答えに当たる箇所を探す
- 当たる資料が複数の版にあれば、いま有効な版を確かめる
- 資料にある範囲で回答を書き、資料のリンクを添えて返す
- 資料に答えの無い質問は、チームのリーダーに相談して答えるか、答えられない旨を返す
- 気になった質問は、担当者が各自のメモに残す
(a)同じ質問に何度も答えている。 「新しい事業部の営業の窓口はどこか」「重点施策の数値目標はいくつか」。同じ質問が担当者を変えて何度も届き、そのたびに資料を探し直しています。
(b)版を取り違える。 3番目を急ぐと、昨年度の計画の数値目標で答えてしまいます。 見直しで目標を下げた施策について、古い数値を伝えた担当者がいました。営業担当がそれを顧客に話していたことが後で分かりました。
(c)答えの出ない質問が埋もれる。 5番目で「資料にはありません」と返した質問は、担当者のメモに散らばり、次の全社会議の説明に生かされません。 社員の疑問が残ったまま、同じ質問が翌月も届きます。
(d)答えてよい範囲を担当者が守っている。 経営企画の担当者は未公表の検討状況を知っています。親しい社員からの質問に、つい発表前の内容を匂わせてしまう危うさがあります。
- 【人】 社員が社内ポータルのチャット画面に質問を書く(社内の ID でログイン済み)
- 【自動】 中継プログラムが社員のアカウントで Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドを呼ぶ
- 【自動】 公表済みで、いま有効な版の資料を優先して検索し、出典付きの回答を作る
- 【自動】 回答の裏付けの度合いと、回答しなかった理由を見て、回答の扱いを決める
- 【自動】 答えた質問は社員に返し、答えられなかった質問は「経営企画に回しました」と返して記録する
- 【人】 経営企画の担当者が、回された質問を1日1回見て、個別に答えるものに答える
- 【自動】 月末に、答えられなかった質問と社員が「役に立たなかった」と押した回答を集め、似た質問をまとめる
- 【人】 経営企画が月次のまとめを読み、資料の追記・FAQの公表・次の全社会議での説明に振り分ける
- 【人】 追記した資料を公表の手続きに通し、データストアに取り込む
3番目が、この設計の分かれ目です。 検索で当たりやすいのは、言葉が質問に近い資料です。昨年度の資料も今年度の資料も言葉はほとんど同じで、新しいほうが当たるとは限りません。 版と効力の期間をメタデータに持たせ、絞り込みで外すことで、検索の当たり外れに任せません。
8番目と9番目で、チャットが育ちます。 答えられなかった質問は、資料が足りないという知らせです。資料を足して取り込めば、翌月から同じ質問にはチャットが答えます。 経営企画の仕事は、1件ずつ答えることから、説明の穴を埋めることへ移ります。
02今回想定するシステム構成
社内ポータルのチャット画面(社内の ID でログイン) ▼【トリガー】社員が質問を送信 中継プログラム(Python、Cloud Run)── 社員の資格情報で検索を呼ぶ ▼ Agent Search(Vertex AI Search)── answer メソッド │ データストア:公表済みの中期経営計画の説明資料、社長メッセージ、 │ 全社会議の資料と質疑、組織変更の通知、公表したFAQ │ 閲覧制御:管理職向けの説明資料は管理職のグループだけ │ 絞り込み:公表済み・いま有効な版 ▼ 中継プログラム ── 回答の扱いを決める(返す/経営企画へ回す) ├──▶ 社員へ回答(出典のリンク付き) └──▶ 回された質問の一覧(経営企画が1日1回見る) ▼【月末】 中継プログラム ── 未回答の質問を集めて似たものをまとめる → 経営企画へ月次のまとめ
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドと、データソースの閲覧制御 | Azure AI Search(セキュリティトリミング)、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成と、月次のまとめでの質問の束ね) | ─ |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、チャット画面・検索・質問の記録をつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 台帳 | 公表資料の台帳(資料ごとの公表日・効力の期間・版・閲覧の区分) | 社内ポータルの属性で持つ |
社内ポータルは、新しく足すものではありません。 資料の原本は社内ポータルに置いたままで、公表の手続きを経た資料の写しだけを、検索用に Cloud Storage へ置きます。 公表資料の台帳はスプレッドシートで始められます。
検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、出典を付けられます。answer メソッドは複数の質問に分かれる複雑な質問を小さな質問に分けて検索でき、セッションを使えば前の質問を踏まえた追加の質問にも答えられるとされています。社員の質問は「新しい事業部の目標と、うちの部との関係は」のように複数のことを一度に聞くことが多く、この性質が効きます。
閲覧の範囲は、データソースの閲覧制御で守ります。 プレビューの提供で、Cloud Storage などのデータソースで使え、社内の ID の仕組み(Google の ID、または Microsoft Entra ID などを Workforce Identity Federation でつないだもの)で質問した人を見分け、その人が閲覧できる文書だけを結果に返すとされています。閲覧制御はデータストアを作るときにしか設定できず、後から切り替えられません。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は、社員がチャット画面で質問を送ったことです。 画面は社内の ID でログインさせ、中継プログラムはその社員の資格情報で検索を呼びます。 経営企画の共通のアカウントで呼ぶと、閲覧制御がその社員ではなく経営企画の権限で働き、管理職向けの説明資料が一般の社員への回答に入ります。
質問は1件ずつ、送られたその場で答えます。 回答を経営企画が確かめてから返す運用にはしません。月240件のうち7割は公表資料にそのまま答えのある質問で、それを止めると経営企画の手間が減りません。 確かめる対象は、第7章「人間の確認」で決める条件に当たるものだけにします。
月末の取りまとめは、別の起点として毎月最終営業日の夕方に動かします。 その月の未回答の質問と、社員が「役に立たなかった」を押した回答を集めます。
資料の取り込みは、公表の手続きが済んだときに動かします。 経営企画が公表資料の台帳に「公表済み」と公表日を入れた時点で、写しを Cloud Storage に置いてデータストアに取り込みます。台帳に入れない限り、検索には入りません。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 質問 | 質問の文、セッションの前の質問と回答、質問した社員 | チャット画面 |
| 中期経営計画の説明資料 | 計画の版(年度)、数値目標、重点施策、事業部ごとの方針 | 社内ポータルの写し |
| 社長メッセージ・全社会議の資料 | 四半期ごとの進捗と方針、会議での質疑の記録(公表したもの) | 社内ポータルの写し |
| 組織変更の通知 | 発表日、発令日、新しい組織と窓口、旧組織との対応 | 社内ポータルの写し |
| 公表したFAQ | 経営企画が月次のまとめから作って公表した問答 | 社内ポータルの写し |
| 公表資料の台帳 | 資料ごとの公表日、効力の開始日と終了日、版、置き換えた資料、閲覧の区分 | 経営企画のスプレッドシート |
質を決めるのは、公表資料の台帳の効力の期間と「置き換えた資料」の列です。 これが無ければ、昨年度の計画と今年度の計画を見分けられません。組織変更の通知は、発表日ではなく発令日を効力の開始日にします。 発表から発令までの2〜4週間は、旧組織の窓口がまだ有効だからです。
全社会議の質疑の記録は、公表したものだけを入れます。 会議で口頭で答えた内容のうち、経営企画が文字に起こして社内ポータルに掲載したものが対象です。録音の文字起こしをそのまま入れると、言い直しや言い淀みが根拠になってしまいます。
データの取得方法を決める
資料は、1ファイルを1つの文書として Cloud Storage に置き、メタデータ付きで取り込みます。 メタデータに、資料の種類、版、公表日、効力の開始日と終了日、閲覧の区分を持たせ、閲覧制御の情報(acl_info の閲覧できるグループ)も同じメタデータに書きます。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 資料の本文の断片 | データストア | 回答の根拠 |
| 資料の種類・版・効力の期間 | 文書のメタデータ | 絞り込み |
| 回答の各文の出典と裏付けの度合い | answer メソッドの応答 | 返すか回すかの判断 |
| 回答しなかった理由 | answer メソッドの応答(answerSkippedReasons) | 未回答の記録 |
資料1つ分のメタデータは、例えば次のような形です。
{
"id": "MTP-2026-explainer-v2",
"jsonData": "{\"doc_type\":\"midterm_plan\",\"plan_version\":\"FY2026\",\"published_date\":\"2026-05-20\",\"effective_from\":\"2026-05-20\",\"effective_to\":\"2099-12-31\",\"supersedes\":\"MTP-2025-explainer-v1\",\"audience\":\"all\"}",
"content": { "mimeType": "application/pdf", "uri": "gs://plan-qa/plan/MTP-2026-explainer-v2.pdf" },
"acl_info": { "readers": [ { "principals": [ { "group_id": "[email protected]" } ] } ] }
}
いま有効な版への絞り込みは、日付の比較で書きます。 絞り込みの式は日付の項目に >= や < の比較を使え、ANY() と AND を組み合わせられるとされています。比較に使う項目は、データストアのスキーマで索引可能にしておく必要があります。
effective_from <= "2026-10-07" AND effective_to > "2026-10-07"
日付は中継プログラムが質問を受けた日を入れます。 置き換えられた資料の effective_to は、新しい資料の効力の開始日にします。古い版を消さずに残すのは、「昨年度の計画からどう変わったか」という質問に答えるためです。 その質問のときだけ、中継プログラムが絞り込みを外して両方の版を検索させます。
AIへ渡す前に整形する
- 公表の確認 … 台帳で「公表済み」で公表日が入っている資料だけを取り込みます
- 版と効力の期間を入れる … 計画は年度、組織変更は発令日、FAQは公表日を効力の開始日にします
- 置き換えた資料をつなぐ … 新しい資料の
supersedesに古い資料のIDを入れ、古い資料のeffective_toを閉じます - 閲覧の区分を決める … 全社員向け、管理職向けの2区分を基本にし、閲覧できるグループに置き換えます
- スライドの資料に説明の文を足す … 図だけで数値目標を示したスライドは、ページの下に数値を文で書いた版を作ってから取り込みます
- 社員の名前を外す … 全社会議の質疑の記録で、質問した社員の名前を消してから取り込みます
5番目を軽く見ないでください。 中期経営計画の説明資料は、数値目標をグラフで示すことが多く、文に書かれていない数値は検索に当たりません。 当たらないと「資料にありません」と答え、社員は経営企画に聞き直します。
1番目は人の手続きです。 未公表の資料がデータストアに入る経路を、台帳の「公表済み」という1つの関門に絞ります。 経営企画の共有フォルダを丸ごと取り込む設定にはしません。
AIに処理させる
させるのは、公表済みでいま有効な資料から質問に当たる記載を見つけ、資料の言葉に沿って短く答え、出典を示すことです。
| 質問の型 | 返し方 | 例 |
|---|---|---|
| 資料に答えがある | 資料の言葉に沿って答え、出典を付ける | 重点施策の数値目標、新組織の窓口 |
| 資料に一部だけ答えがある | 答えられる部分だけ答え、残りは経営企画へ回すと書く | 方針と自部署の業務の関係 |
| 資料に答えが無い | 答えず、経営企画へ回すと書く | 来年度の組織の見通し |
| 個人の処遇の質問 | 答えず、人事の窓口を案内する | 自分の異動、評価の変わり方 |
| 経営の判断への意見 | 受け止めた旨だけ返し、経営企画へ回す | 方針への賛否、提案 |
answer メソッドの設定は次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
includeCitations | 有効 | 回答の文に出典を付ける |
ignoreLowRelevantContent | 有効 | 当たる資料が無いときに無理に答えない |
ignoreNonAnswerSeekingQuery | 有効 | 挨拶や意見だけの投稿に答えを作らない |
ignoreAdversarialQuery | 有効 | 指示を書き換えようとする投稿に答えない |
groundingSpec.filteringLevel | FILTERING_LEVEL_HIGH | 裏付けの弱い回答を返さない |
filter | いま有効な版の式 | 古い版を根拠にしない |
session | 前の質問のセッション | 追加の質問に文脈を持たせる |
preamble | 下の指示 | 答え方と禁止事項を与える |
filteringLevel は、裏付けの度合いが基準に届かない回答を返さない設定です。 低い基準と高い基準を選べ、指定しなければ絞り込みはかからないとされています。方針の説明で、資料に無い言い換えが混ざるのを防ぐため、高い基準から始めます。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 未公表の内容の推測 | 「来年はこうなるはず」は社員の行動を誤らせる |
| 資料の数値からの計算 | 「事業部の目標は全社の何割か」を計算すると、資料に無い数値が広がる |
| 個人の処遇への回答 | 人事の窓口の仕事で、経営企画も答えない |
| 方針の良し悪しの評価 | 経営の判断の説明は経営陣と経営企画が行う |
| 古い版を、いまの方針として示すこと | 見直しで変わった目標を伝えると、顧客への説明まで誤る |
1行目と2行目が最も起きやすい失敗です。 「今後の組織はどうなりますか」と聞かれると、モデルは資料の方向性の記述から先を推測して書きます。推測はそれらしく聞こえるので、社員は事実として受け取ります。 資料に書かれていない先のことは、書かせません。
指示内容を固定する
answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。
あなたは経営企画部の担当として、社員からの中期経営計画・全社方針・組織変更の
質問に、社内に公表した資料だけを根拠に答えます。読むのは全社員です。
【答え方】
1. 資料の言葉に沿って、3〜5文で答えてください。
2. 数値目標・日付・組織の名前は、資料の表記のまま書いてください。
3. 組織変更は、発表日と発令日を区別して書いてください。
発令日より前の質問には「発令日までは現在の組織のままです」と添えてください。
4. 答えられる部分と答えられない部分があるときは、答えられる部分だけを書き、
最後に「残りは経営企画部に確認を依頼しました」と書いてください。
【厳守事項】
- 資料に書かれていないことを書かないでください。今後の見通しを推測しないでください。
- 資料の数値から計算した数値を書かないでください。
- 個人の異動・評価・給与・処遇の質問には答えず、
「人事部の相談窓口にお問い合わせください」とだけ書いてください。
- 方針が良いか悪いかを書かないでください。意見には
「ご意見として経営企画部に伝えます」とだけ書いてください。
- 昨年度以前の計画を、いまの計画として書かないでください。
比べるよう求められたときだけ、版の年度を明記して両方を書いてください。
- 当たる資料が見つからないときは、
「公表済みの資料に該当する記載が見つかりません。経営企画部に確認を依頼しました」
とだけ書いてください。
「発表日と発令日を区別する」を明記しないと、モデルは発表された新しい組織を、もう有効なものとして答えます。 社員は新しい窓口に連絡し、発令前でまだ動いていない部署に問い合わせが届きます。
「計算した数値を書かない」は、一見無害に見える計算ほど危ういためです。 全社の売上目標と事業部の目標から比率を出すと、資料に無い数値が社内で独り歩きします。 計画の数値は、公表された形のままで伝えます。
出力形式を固定する
answer メソッドの応答を、中継プログラムが次の形に整えて記録します。
{
"question_id": "",
"asked_at": "",
"dept_code": "",
"session_id": "",
"question": "",
"status": "answered | partial | escalated | redirected_hr | skipped",
"answer_text": "",
"citations": [ { "doc_id": "", "doc_type": "", "plan_version": "", "effective_from": "" } ],
"grounding_score": 0,
"skipped_reasons": [""],
"user_feedback": "helpful | not_helpful | none"
}
1つ目の理由は、status で返すか回すかを値で決められることです。
| 条件 | status | 扱い |
|---|---|---|
answerSkippedReasons に NO_RELEVANT_CONTENT | escalated | 経営企画へ回す |
| 挨拶や意見だけと判定された | skipped | 受け止めた旨を返し、月次のまとめに入れる |
| 回答の文に「人事部の相談窓口」 | redirected_hr | 回さない。件数だけ数える |
| 回答の文に「確認を依頼しました」 | partial | 答えた部分を返し、経営企画へ回す |
| 上のどれにも当たらない | answered | 社員に返す |
2つ目は、citations に版と効力の開始日を持たせることです。 古い版が出典になっていれば、中継プログラムが escalated に切り替えます。絞り込みが漏れたときの最後の守りです。
3つ目は、dept_code で部署だけを残し、社員の名前を月次のまとめに出さないことです。 質問した社員は記録の上では分かりますが、経営企画に渡すまとめでは部署と件数だけにします。 社員が遠慮せずに聞けることが、このチャットの価値です。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| チャット画面 | 社内の ID でログイン | 質問を受け、社員の資格情報を渡す |
| Agent Search | answer メソッドの呼び出し | 閲覧できる資料から回答を作る |
| 質問の記録 | 書き込み | 回答の扱いと出典を残す |
| 回された質問の一覧 | 書き込み | 経営企画が1日1回見る |
| 公表資料の台帳 | 読み取り | 取り込む資料と効力の期間を決める |
| 社内ポータル | 読み取りのみ | 原本は書き換えない |
月次のまとめは、記録から未回答の質問を集めて Gemini に渡し、似た質問を束ねさせます。 束ねた質問ごとに件数・部署・代表的な質問の文を並べ、件数の多い順に経営企画へ渡します。 束ね方の誤りは件数の誤りに直結するので、代表の質問と束ねた質問の一覧を並べて、経営企画が確かめられる形にします。
人が確認する
社員への回答を、すべて人が確かめることはしません。 確かめるのは次のものだけです。
- 回された質問(
escalatedとpartial) … 経営企画の担当者が1日1回見て、個別に答えます。答えた内容が今後もくり返し聞かれそうなら、FAQの候補に印を付けます - 「役に立たなかった」を押された回答 … 回答と出典を読み、資料の不足か版の取り違えかを見ます
- 最初の1か月の
answered… 運用を始めた月は、答えた回答を毎日20件ずつ抜き出して読み、推測や計算が混ざっていないかを確かめます - 月次のまとめ … 束ねた質問を読み、資料の追記、FAQの公表、全社会議での説明、人事への連絡に振り分けます
3番目を省かないでください。 最初の月に推測が混ざる型を見つければ、preamble を直して翌月から防げます。見つけないまま回すと、誤った説明が社内に広がってから気づきます。
人の確認を「条件付き」にしているのは、方針の説明が公表資料の写しで足りるからです。 公表した内容を公表した言葉で伝える限り、1件ずつの承認は要りません。承認が要るのは、資料の外に出る回答です。 それは escalated として必ず人に回ります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 当たる資料が無い | escalated。経営企画が答え、FAQの候補にする |
| 発表済みで発令前の組織を聞かれた | 発表日と発令日を書き分け、発令日までは現在の組織と答える |
| 古い版だけが出典になった | escalated。台帳の効力の期間を直す |
| 管理職向けの資料にしか答えが無い | 一般の社員には検索に出ないので escalated。経営企画が答えてよい範囲を決める |
| 個人の処遇を聞かれた | redirected_hr。人事の窓口を案内する |
| 公表前の内容を聞き出そうとする質問 | 資料に無いので escalated。経営企画は「公表をお待ちください」と答える |
| 全社会議の直後に質問が集中する | 回答はその場で返るので待ちは生じない。回された質問の一覧を1日2回見る |
| 検索の呼び出しが失敗する | 「回答を作れませんでした。経営企画部に確認を依頼しました」と返して記録する |
4行目は、閲覧制御が正しく働いている結果です。 一般の社員には見えない資料なので、経営企画が見て、答えてよい範囲を判断します。
記録を残す
- 質問の全文と日時、質問した社員と部署、セッションのID
- answer メソッドの応答の全文(回答、出典、裏付けの度合い、回答しなかった理由)
statusと、そう決めた条件- 回答に使った資料の版と、そのときの公表資料の台帳の内容
- 経営企画が個別に答えた内容と、FAQの候補にしたかどうか
- 社員の「役に立った/役に立たなかった」の記録
- 月次のまとめと、経営企画の振り分けの結果
4つ目を残すのは、版が後から置き換わるためです。 計画の見直しのあとに「先月チャットでこう言われた」と問い合わせがあったとき、当時どの版を根拠に答えたかが分かれば、答えが誤りだったのか、計画が変わったのかを区別できます。
記録の閲覧は経営企画の担当者に限ります。 質問した社員の名前が入っているからです。
04実装レベルの3段階
半自動化で、1件15分が8分程度になります。 探す時間と版を確かめる時間は縮みますが、すべての質問を経営企画が受けて返す形のままです。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、資料に答えのある7割の質問が、経営企画を通らずに社員へ返るからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の間に、公表資料の台帳の効力の期間と、スライドの説明の文をそろえます。台帳が空のまま社員に開くと、古い版の数値が全社に返ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 240件 × 5分 ÷ 60 = 20 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 従業員が数百名から数千名で、中期経営計画を毎年見直し(ローリング)、四半期ごとに全社会議や社長メッセージで進捗と方針を伝えている企業。発表のあとに「この方針は自分の部署に関係するか」「新しい事業部の窓口はどこか」といった質問が経営企画へ毎月数百件届き、担当者が資料を探して個別に答えている場合。組織変更が年に何度もあり、どの資料がいまの版かを社員が見分けにくい場合。社内の ID の仕組みと Google Cloud をつなげられる場合。
- 従業員が少なく、全社会議の質疑で質問がほぼ出尽くす場合。中期経営計画を社内向けにまとめた資料が無く、経営陣の口頭の説明だけで伝えている場合。未公表の検討中の内容(次の組織変更の案、事業の売却の検討など)まで答えさせたい場合(この構成は公表済みの資料だけを根拠にし、未公表のことには答えません)。個人の異動・評価・処遇の質問を受けたい場合(人事の窓口の仕事です)。
07最小構成で試す方法
- 過去3か月に経営企画へ届いた質問から30件を選ぶ(組織変更の発表から発令までの間の質問と、見直しで変わった数値目標の質問を数件入れる)
- その30件について、当時どの資料を見て、どう答えたかを記録から拾う
- いま有効な版の公表資料を、手元のAIサービスに資料として読み込ませる
- 質問を貼り、「添付の資料だけを根拠に答えてください。資料に無いことは推測せず、無いと書いてください。組織変更は発表日と発令日を分けてください」と指示する
- 出てきた回答を、当時の経営企画の回答と突き合わせる
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時と同じ回答が出典付きで出た | データストアと台帳の構築に進む |
| 資料に無い見通しを書き足した | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| グラフの数値を「資料にありません」と答えた | スライドの資料に説明の文を足すのが先。 検索の問題ではない |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、社員が資料を見ても答えにたどり着けなかった理由が1つ分かったということです。 その場合は、数値目標をグラフだけで示しているページから文を足してください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 昨年度の計画の数値で答える | 効力の期間で絞り込む。 置き換えた資料の effective_to を閉じる |
| 発表済みで発令前の組織を、有効として答える | 組織変更は発令日を効力の開始日にし、指示で書き分けさせる |
| 未公表の資料が検索に入る | 台帳の「公表済み」を関門にし、共有フォルダを丸ごと取り込まない |
| 今後の見通しを推測で書く | 指示で禁じ、filteringLevel で裏付けの弱い回答を返さない |
| グラフだけの数値を「資料にありません」と答える | スライドに数値を文で書いた版を作ってから取り込む |
| 管理職向けの資料が一般の社員の回答に入る | 社員の資格情報で検索を呼ぶ |
| 閲覧制御を後から有効にしたくなる | 作成時にしか設定できない。 最初から有効にする |
| 個人の処遇の質問に答える | 指示で人事の窓口を案内させ、件数だけ数える |
| 月次のまとめに社員の名前が出る | 部署と件数だけにする |
| 答えられなかった質問が資料に戻らない | 月次のまとめから資料の追記とFAQの公表まで、経営企画の月次の仕事に入れる |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも資料が時間とともに置き換わることから来る失敗で、効力の期間を台帳の値として持っているかどうかで、社員が回答を信用できるかが決まります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 中期経営計画の説明資料、数値目標、組織変更の通知、社員の質問の文と質問した社員の名前です。計画の数値の一部は、外部に公表していない社内向けの情報です。
- 公表済みの資料だけを入れる … 未公表の検討資料は、データストアにも、経営企画の共有フォルダの取り込み先にも置きません。関門は台帳の「公表済み」の1つに絞ります
- 閲覧制御を最初から有効にする … 作成時にしか設定できません。管理職向けの資料がある限り、迷ったら有効にして作ります
- 社員の資格情報で検索する … 経営企画の共通のアカウントで呼ぶと、閲覧制御が意味をなさなくなります
- 質問した社員の名前を広げない … 記録の閲覧は経営企画の担当者に限り、月次のまとめは部署と件数だけにします
- 社外秘の数値の扱いを画面に出す … 回答に社内向けの数値目標が含まれるときは、顧客や取引先に伝えてよい範囲ではないことを、チャット画面に常に示します
- 個人の処遇に答えない … 人事の窓口へ案内し、経営企画も記録の中身を人事に渡しません
誤りが起きた場合のリスクは、古い版や推測を社員が方針として受け取ることと、未公表の内容や管理職向けの内容が広がることの2つです。 前者は効力の期間の絞り込みと推測の禁止で、後者は公表の関門と閲覧制御で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:公表資料の台帳を作る
社内ポータルの資料を一覧にし、資料ごとに公表日、効力の開始日と終了日、版、置き換えた資料、閲覧の区分を入れます。中期経営計画の説明資料と、直近1年の組織変更の通知から始めます。
2週目:30件で試す
過去3か月の質問から30件を選び、いま有効な版の資料を手元のAIサービスに読み込ませて聞きます。資料に無い見通しを書き足していないか、発表と発令を混ぜていないかを最優先で見ます。
3週目:スライドの資料に説明の文を足す
数値目標をグラフだけで示しているページに、数値を文で書いた版を作ります。あわせて、全社会議の質疑の記録から社員の名前を外します。
4週目:データストアを作る
閲覧制御を有効にしてデータストアを作り、台帳で公表済みの資料を取り込みます。経営企画の担当者が検索画面で使い、自分の回答と比べます。
2か月目: 中継プログラムとチャット画面を作り、一つの事業部で先に開きます。回された質問を毎日見て、preamble を直します。3か月目以降: 全社に開き、月次のまとめを経営企画の定例に載せます。月次のまとめから足した資料で、翌月に同じ質問がチャットで答えられるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドが複雑な質問を小さな質問に分けて検索できること、セッションで前の質問を踏まえた追加の質問に答えられること。includeCitations、ignoreLowRelevantContent(回答しなかった理由が answerSkippedReasons に NO_RELEVANT_CONTENT などで返ること)、ignoreAdversarialQuery、ignoreNonAnswerSeekingQuery、preamble、filter、session。groundingSpec.filteringLevel に FILTERING_LEVEL_LOW と FILTERING_LEVEL_HIGH があり、指定しなければ裏付けの度合いによる絞り込みがかからないこと | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-07 |
データソースの閲覧制御がプレビューであること。Cloud Storage・BigQuery・Google Drive・サードパーティのデータソースで使えること。Google の ID、または Workforce Identity Federation で外部の ID の仕組み(Microsoft Entra ID など)をつなぐこと。1文書の閲覧者が3,000まで。データストアの作成時にしか設定できず、後から切り替えられないこと。メタデータの acl_info で閲覧者を指定すること | Google Cloud: Set up data source access control | 2026-10-07 |
絞り込みの式で ANY()、AND/OR、日付の項目の >=・< などの比較が使えること。項目を索引可能にする必要があること | Google Cloud: Filter custom search for structured or unstructured data | 2026-10-07 |
どの資料を公表済みとし、社員にどこまで説明するかは、経営企画と経営陣が決めてください。 本記事は Google Cloud の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
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