海外の再保険会社から毎月届く英文の再保険精算書を読み取り、保険料・手数料・回収保険金を出再台帳と照合して、差異を理由の候補付きで出す
海外の再保険会社やブローカーから毎月届く英文の再保険精算書を読み取り、保険料・手数料・回収保険金を社内の出再台帳と照合します。差異を項目ごとに出し、シェア・料率・期間・為替といった理由の候補を付けて、再保険の経理の担当者へ返します。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- AIサービス
- AWS Textract/Azure AI/Google Document AI
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- 保険/金融
- 対象部門
- 経理/財務
- 対象業務
- 内容確認・チェック/比較検討
- 主な課題
- データ分析に時間がかかる/入力作業が多い/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 読み取り(OCR)
- 主な効果
- 入力漏れ削減/判断支援/工数削減
- 導入難易度
- ★★★★☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 精算書のPDFをメールで受け取り、出再契約と期間でフォルダに保存する
- 精算書の契約名・期間・通貨・自社のシェアを読み、出再台帳の契約を開く
- 保険料、手数料、利益手数料、回収保険金、預り金、残高を1行ずつ照合用の表に写す
- 貸借の向きを読み、社内の符号にそろえる
- 出再台帳の同じ期間の値と見比べ、差異を出す
- 差異があれば、シェア、料率、期間、為替、未計上の保険金のどれかを順に疑って理由を探す
- 理由の分からない差異は、ブローカーや再保険会社に照会する
- 人精算書のPDFを、出再契約のコードを付けて受付フォルダに保存する(メールの添付から自動で入れてもよい)
- 自動保存をきっかけに処理が動き、形式・ページ数・パスワードの有無を確かめる
- 自動OCRが精算書の表、見出しのキーと値、質問への答え、信頼度を返す
- 自動契約名・期間・通貨・シェアと、明細の各行を取り出し、社内の勘定の区分に対応付ける
- 自動プログラムがブローカーごとの規則で符号を付け、出再台帳の同じ期間の値と照合する
- 自動差異のある項目について、シェア・料率・期間・為替・未計上の保険金の型で検算し、当てはまった型を理由の候補として付ける
- 自動理由の候補を説明する短い文と、照会の英文の下書きを作る
- 人再保険の経理の担当者が、差異のある精算書だけを開き、理由の候補を確かめる
- 人責任者が処理を決め、必要なら照会を送る
各工程の詳しい説明を読む
- 精算書のPDFをメールで受け取り、出再契約と期間でフォルダに保存する
- 精算書の契約名・期間・通貨・自社のシェアを読み、出再台帳の契約を開く
- 保険料、手数料、利益手数料、回収保険金、預り金、残高を1行ずつ照合用の表に写す
- 貸借の向きを読み、社内の符号にそろえる
- 出再台帳の同じ期間の値と見比べ、差異を出す
- 差異があれば、シェア、料率、期間、為替、未計上の保険金のどれかを順に疑って理由を探す
- 理由の分からない差異は、ブローカーや再保険会社に照会する
(a)向きを読み違える。 括弧の数字を正の数として写す、Cr の列を自社の受取と読む。ブローカーによって、精算書が自社から見た向きで書かれているか、再保険会社から見た向きで書かれているかが違います。
(b)シェアを掛け忘れる。 ブローカーの精算書は、特約全体の100%の値と、各再保険会社のシェア分の値を並べることがあります。100%の行を写すと、差異は数倍になって出ます。
(c)理由探しが担当者しだい。 経験の長い担当者は、差異の金額を見ただけで「為替だ」「前の四半期の保険金だ」と当たりを付けます。この勘が表になっておらず、担当が替わると同じ差異の理由探しに半日かかります。
(d)転記に時間を取られて、照会が遅れる。 3番目の転記に時間がかかるので、6番目と7番目に手が回るのが月の後半になり、照会の回答を待つうちに次の月の精算書が届きます。
- 【人】 精算書のPDFを、出再契約のコードを付けて受付フォルダに保存する(メールの添付から自動で入れてもよい)
- 【自動】 保存をきっかけに処理が動き、形式・ページ数・パスワードの有無を確かめる
- 【自動】 OCRが精算書の表、見出しのキーと値、質問への答え、信頼度を返す
- 【自動】 契約名・期間・通貨・シェアと、明細の各行を取り出し、社内の勘定の区分に対応付ける
- 【自動】 プログラムがブローカーごとの規則で符号を付け、出再台帳の同じ期間の値と照合する
- 【自動】 差異のある項目について、シェア・料率・期間・為替・未計上の保険金の型で検算し、当てはまった型を理由の候補として付ける
- 【自動】 理由の候補を説明する短い文と、照会の英文の下書きを作る
- 【人】 再保険の経理の担当者が、差異のある精算書だけを開き、理由の候補を確かめる
- 【人】 責任者が処理を決め、必要なら照会を送る
8番目が、この設計の分かれ目です。 担当者は120通すべてを写すのではなく、差異のある項目だけを、理由の候補と画像を並べて確かめます。 差異の無い精算書は、一覧で流し見て確定します。
6番目の検算をAIにさせないのも、意図してのことです。 シェアを掛ければ合うか、料率を変えれば合うか。どれも計算で確かめられるので、プログラムが検算し、AIには当てはまった結果を文にさせるだけにします。
02今回想定するシステム構成
英文の再保険精算書(PDF。再保険会社またはブローカーからのメール) ▼【トリガー】受付フォルダ(Amazon S3)への保存 AWS Lambda ── 形式・ページ数・サイズ・パスワードの確認 ▼ AWS Textract(StartDocumentAnalysis:TABLES/FORMS/QUERIES) │ 明細の表(セル・列見出し)、見出しのキーと値、質問への答え、信頼度 ▼ Claude API ── 明細の行を社内の勘定の区分に対応付け、向きの書き方を原文のまま残す ▼ Python ── 符号を付け、出再台帳と照合し、差異を型ごとに検算する │ ① シェア ② 手数料の料率 ③ 期間 ④ 為替 ⑤ 未計上の保険金 ▼ 判定(matched / explained / unexplained / needs_human) ▼ Claude API ── 理由の候補の説明文と、照会の英文の下書き ▼ 【再保険の経理の担当者が差異のある精算書を確認】 └──▶ 責任者が処理を決める
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| OCR | AWS Textract(StartDocumentAnalysis/GetDocumentAnalysis) | Azure AI Document Intelligence、Google Document AI |
| 生成AI | Claude API(勘定の区分への対応付け、理由の説明文と照会文の下書き) | OpenAI API、Gemini API |
| 差異計算 | Python(符号の付与、出再台帳との照合、型ごとの検算) | 再保険の管理の仕組みの照合の機能 |
| 連携 | AWS Lambda(保存と完了の通知を起点に処理を動かす) | Amazon EventBridge |
| 保管 | Amazon S3(精算書、読み取り結果、照合の結果) | 社内のファイルサーバー |
出再台帳と会計システムは、新しく足すものではありません。 最初の準備は、精算書の項目名と社内の勘定の区分の対応表と、ブローカーごとの向きの書き方の規則表を作ることです。
OCRに AWS Textract を選ぶのは、精算書が英文だからです。 公式の上限の表で、対応言語は英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語とされ、日本語は読めません。 欧州の再保険会社がフランス語やドイツ語で出す精算書も読めます。
この題材で効くのは、表の読み取り(TABLES)です。 精算書の明細は、項目名の列と、通貨ごと・シェアごとの金額の列を持つ表です。表はセルごとに行と列の番号と信頼度付きで返り、セルには列見出し(COLUMN_HEADER)や合計の行(TABLE_SUMMARY)といった種類が付きます。 100% と Your Share の列見出しを手がかりに、自社のシェアの列を決められます。
契約名・期間・通貨は QUERIES で取ります。 表紙の文章や見出しの中に書かれていることが多く、キーと値の形に収まらないためです。質問は英語の文書でしか使えないので、フランス語やドイツ語の精算書では質問を外し、キーと値と全文で読みます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
受付フォルダ(Amazon S3)に精算書が保存されたことを起点にします。 再保険部の共有のメールアドレスに届いた添付を受付フォルダに入れる仕組みを置き、ファイル名の先頭に出再契約のコードを付けます。コードが分からない精算書は「未特定」のフォルダに入れ、契約名の読み取りの結果から候補を出します。
届いた順に1通ずつ処理します。 月末にまとめて処理すると、照会の回答を待つ時間が無くなります。届いた日のうちに差異と理由の候補が出ていれば、その週のうちに照会を送れます。
さらに、月の第3営業日に「まだ届いていない精算書」の一覧を出します。 出再台帳の契約ごとの精算の周期から、今月届くはずの精算書を数え、届いた分と突き合わせます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 再保険精算書 | PDF。契約名、期間、通貨、シェア、明細の表、残高、向きの表示 | 受付フォルダ(Amazon S3) |
| 読み取り結果 | 表とセル、列見出し、合計の行、キーと値、質問への答え、それぞれの信頼度 | AWS Textract |
| 出再台帳 | 契約ごとの自社のシェア、手数料の料率、期間ごとの出再保険料、回収保険金の明細、計上の為替レート | 再保険の管理の仕組みから出力 |
| 項目名の対応表 | 精算書の項目名の書き方と、社内の勘定の区分の対応 | 再保険部で用意する表 |
| 向きの規則表 | ブローカー・再保険会社ごとに、精算書がどちらから見た向きで書かれるか、括弧や Dr/Cr の意味 | 再保険部で用意する表 |
質を決めるのは、向きの規則表です。 同じ Cr でも、自社から見た貸方か、相手から見た貸方かで意味が逆になります。規則表に無い相手の精算書は、符号を付けずに人に回します。
項目名の対応表も同じくらい大事です。 Commission と Profit Commission と Brokerage は別の項目で、寄せると手数料の料率の検算が成り立ちません。対応表にある書き方だけを使い、無いものは unmapped として人に見せます。
データの取得方法を決める
読み取りは StartDocumentAnalysis にS3の場所と FeatureTypes を渡して始めます。完了は NotificationChannel に指定した Amazon SNS のトピックに通知され、状態が SUCCEEDED なら GetDocumentAnalysis で結果を取ります。
| 指定するもの | 値 | 理由 |
|---|---|---|
FeatureTypes | TABLES、FORMS、QUERIES(英語のとき) | 明細の表、表紙のキーと値、文章の中の契約名と期間 |
QueriesConfig | 質問の文と Alias の組 | 契約名や期間を項目名で受け取る |
ClientRequestToken | 出再契約のコードとファイルのハッシュ | 同じ精算書で二重に読み取りを始めない |
JobTag | 出再契約のコード | 完了の通知から契約を引く |
Alias | 質問の文 |
|---|---|
TREATY_NAME | What is the name of the treaty or contract? |
PERIOD | Which accounting period does this statement cover? |
CURRENCY | In which currency is this statement? |
OUR_SHARE | What is the reinsurer's share or participation? |
BALANCE | What is the balance of this statement? |
BALANCE_DIRECTION | In whose favour is the balance? |
質問の答えが見つからなければ空のまま返ります。 期間が空なら、表題や全文から Quarter、Period、Month を含む行を探し、それでも無ければ missing にします。期間を受け取った月で埋めません。 期間のずれは差異の理由の型の1つで、埋めるとその型が検算できなくなります。
明細の表は、セルの行と列の番号で組み立て直します。 列見出しから 100% の列と自社のシェアの列、Debit と Credit の列を決め、行ごとに「項目名・100%の値・シェアの値・向き」の組にします。 合計の行の種類が付いたセルは、明細と分けて残高の照合に使います。
結果は1回最大1,000ブロックで区切られます。NextToken が返る限り呼び直し、別ページの明細が抜けないようにします。
出再台帳は再保険の管理の仕組みからCSVで出し、Python が読みます。生成AIには渡しません。
AIへ渡す前に整形する
- 形式の確認 … JPEG、PNG、PDF、TIFF であることを確かめます
- パスワードの確認 … PDFはパスワードで保護されていてはいけないとされています。保護されたものは相手に解除したものを頼みます
- サイズとページ数の確認 … 非同期の処理で、PDFとTIFFは500MB・3,000ページまでです
- スキャンの解像度の確認 … 文字の高さは最小15ピクセルで、150 DPIで8ポイントの文字に相当します。明細の小さな数字は、ファクスやスキャンの精算書で下回りやすい箇所です
- 契約の特定 … ファイル名のコードで出再台帳の契約を引き、項目名の対応表と向きの規則表を選びます
- 同じ精算書の再送の検知 … 同じ契約・期間・残高のものがすでにあれば、再送として印を付けます。残高が違えば訂正版として扱い、前の版と並べます
6番目の訂正版の扱いを先に決めておいてください。 精算書は訂正されて再送されることがあり、前の版の差異の理由が、訂正版で消えていることがあります。
AIに処理させる
させるのは、明細の各行を社内の勘定の区分に対応付け、金額と向きの書き方を原文のまま書き出すことです。 符号を付けること、照合と検算はさせません。
| 見るもの | 取り出し方 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 契約名・期間・通貨 | 原文のまま。期間は開始日と終了日に分けられるときだけ解釈 | 決まらなければ ambiguous |
| 自社のシェア | 原文の値(% や小数) | 書かれていなければ missing |
| 明細の項目 | 項目名の対応表で社内の区分に対応付ける | 表に無ければ unmapped |
| 金額 | 100%の値とシェアの値を分けて、数字の文字列のまま | 読めなければ unreadable |
| 向きの書き方 | Dr/Cr の列、括弧、due to you/due to us などを原文のまま | 決まらなければ ambiguous |
| 残高 | 金額と向きの書き方 | 合計の行が無ければ missing |
向きは、書き方を原文のまま取り出させるだけです。 括弧が付いているか、どの列に入っているか、表紙にどう書かれているか。それを正の数か負の数かに直すのは、規則表を持つ Python です。 AIに符号まで付けさせると、精算書がどちらから見た向きかを推測で決めてしまいます。
100%の値とシェアの値を分けるのも、同じ理由です。 列見出しで区別できないときは、どちらかに寄せず ambiguous にします。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 符号を付けること | 向きの規則はブローカーごとに違い、Python が規則表で付ける |
| 出再台帳との照合と差異の計算 | 規則で決まる計算。Python が行う |
| 差異の理由を考えること | 型ごとの検算で当てはまったものだけを候補にする |
| シェアの値を100%から計算すること | 計算で埋めると、シェアの違いという差異が消える |
| 期間の補完 | 期間のずれという差異が消える |
3行目がいちばん起きやすい失敗です。 差異の金額を見せて「理由を考えて」と頼むと、為替や期間のそれらしい理由を書いてきます。検算で当てはまっていない理由が1行あると、担当者はそれを信じて照会をしなくなります。
指示内容を固定する
あなたは損害保険会社の再保険部で、海外の再保険会社・ブローカーから届いた
英文の再保険精算書を、照合用の行にそろえる担当です。
OCRの読み取り結果だけを使ってください。推測で埋めないでください。
【取り出す項目】
header:treaty_name_raw、period_raw、period_start、period_end、currency、
our_share_raw、balance_raw、balance_direction_raw
lines:明細の各行について、次を入れてください。
item_raw(原文の項目名)、account_code(項目名の対応表の社内の区分)、
amount_100_raw、amount_share_raw、direction_raw(Dr / Cr / parentheses /
minus / none と、その原文)、status、source(ページと表の行・列)
【厳守事項】
- 金額は書かれた数字の文字列のまま入れてください。符号を付けたり、
括弧を外して正の数にしたりしないでください。
- 向きは direction_raw に書き方をそのまま入れてください。
どちらが支払うかを解釈しないでください。
- 100%の列とシェアの列を区別できない場合は、どちらにも入れず
status を ambiguous にしてください。
- シェアの値が無いときに、100%の値とシェアから計算しないでください。
- account_code は項目名の対応表にある書き方のときだけ入れ、
無ければ空にして status を unmapped にしてください。
- 期間が書かれていなければ missing にしてください。
- 差異やその理由を書かないでください。
【読み取り結果】{textract_tables_forms_queries}
【項目名の対応表】{item_alias_table}
「括弧を外さない」を明記しないと、外します。 (12,345.00) を 12345.00 として返し、負の数だったという情報がその場で消えます。 原文の文字列を残しておけば、規則表で何度でも読み直せます。
出力形式を固定する
Claude API の構造化出力(output_config.format に json_schema を指定)で、次の形のJSONを受け取ります。
{
"file": "",
"treaty_code": "",
"header": { "treaty_name_raw": "", "period_raw": "Q2 2026", "currency": "USD",
"our_share_raw": "15%", "balance_raw": "48,210.55", "balance_direction_raw": "Balance due to you" },
"lines": [
{ "item_raw": "Premium", "account_code": "PREM", "amount_100_raw": "1,250,000.00",
"amount_share_raw": "187,500.00", "direction_raw": "Cr", "status": "ok", "source": "p2:T1:R4" }
]
}
1つ目の理由は、符号と照合をプログラムの側に置けることです。 Python が規則表で符号を付け、出再台帳の同じ期間の値と項目ごとに照合します。
2つ目は、差異の型ごとの検算ができることです。 差異のある項目について、Python が順に次の検算を行い、当てはまった型を付けます。
| 型 | 検算の内容 |
|---|---|
share | 台帳のシェアの代わりに精算書のシェアを掛けると一致するか |
commission_rate | 台帳の料率の代わりに、精算書の手数料÷保険料の料率を使うと一致するか |
period | 前後の期間の台帳の値と一致するか |
fx | 台帳の計上レートと別の日のレートの違いで説明できる範囲か |
unbooked_claim | 台帳に無い保険金の行が精算書にあり、その金額で差異が埋まるか |
| 印 | 付ける条件 |
|---|---|
matched | 許容の範囲内で一致 |
explained | 差異があり、上の型のどれかで説明できる |
unexplained | 差異があり、どの型にも当てはまらない |
needs_human | ambiguous、unreadable、unmapped がある、または規則表に無い相手 |
3つ目は、理由の説明文の材料が検算の結果だけになることです。 AIが説明文を書くのは、explained の型と検算の数字を渡されたときだけで、型の無い差異については何も書かせません。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 受付フォルダ(Amazon S3) | 保存の通知 | 精算書の保存を検知して AWS Lambda を動かす |
| AWS Textract | API呼び出し(非同期) | 読み取りを始め、完了の通知で結果を取る |
| Claude API | API呼び出し | 明細の対応付け、理由の説明文、照会の英文の下書き |
| 出再台帳 | 再保険の管理の仕組みからのCSV出力 | 契約ごとのシェア、料率、期間ごとの値を読む |
| 照合結果の一覧 | 書き込み | 精算書ごと・項目ごとの印と根拠を書く |
出再台帳と会計システムへは書き込みません。 差異の処理と計上は、責任者が決めてから人が行います。照会も自動では送りません。 照会の英文は下書きまでです。
人が確認する
再保険の経理の担当者が開くのは、matched 以外の印が付いた精算書です。 matched の精算書は、残高と期間を並べた一覧で流し見て確定します。
needs_humanを先に片付ける … 向きの規則表に無い相手なら規則を1行足し、unmappedなら対応表に足すかを決めますexplainedの検算を確かめる … 型と検算の数字を画像と見比べ、その型で本当に説明がつくかを担当者が判断しますunexplainedを責任者に上げる … 照会の下書きを直し、送るかを決めてもらいます- 処理を決めた結果を残す … どの差異を、どう処理したかを照合結果の一覧に書きます
2番目を流さないでください。 型が当てはまっても、それが本当の理由とは限りません。シェアで説明できる差異が、実は台帳のシェアの入力の誤りだった、ということもあります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| パスワードで保護されたPDF | 読めない。相手に解除したものを頼む |
| 6言語に入らない精算書 | 読み取りに回さず、担当者が目で見る |
| フランス語・ドイツ語の精算書 | 質問を外し、表とキーと値と全文で読む |
| 100%の列とシェアの列が区別できない | ambiguous にして人へ |
| 向きの規則表に無い相手 | 符号を付けずに人へ。担当者が規則を足す |
| 訂正版の再送 | 前の版と並べ、差異の理由が変わったかを示す |
ジョブが FAILED または PARTIAL_SUCCESS | StatusMessage と Warnings のページ番号を記録し、そのページを人へ |
| 届くはずの精算書が届かない | 第3営業日の一覧で担当者が催促する |
上から5行目が、相手を1社足すたびに出ます。 規則を1行足せば次からは自動で符号が付くので、最初の数か月で規則表を育てるのが、この構成のいちばんの仕事です。
記録を残す
- 元の精算書と、受け取った日時、出再契約のコード、訂正版かどうか
- AWS Textract が返したJSONの全文と、使った質問の一覧
- Claude API が返したJSON(明細の全行の原文と対応付け)
- Python の照合と検算の結果と、そのとき使った向きの規則表・項目名の対応表・出再台帳の版
- 担当者が型や印を覆した記録 … どの項目を、どう判断したか
- 照会と回答、処理の決定とその理由
規則表の版を残すのは、規則を直すと過去の符号の意味が変わるためです。 当時の規則が残っていないと、前の四半期の差異がなぜその向きで出たのかを説明できません。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 転記と照合と検算が自動になり、担当者は差異のある精算書を確かめて責任者に上げます。1件40分が14分になるのはこの段階です。 本格構成で足すのは、相手の側の管理です。 差異の多い相手、unexplained が続く相手を集計し、精算の手順を相手と見直す材料にします。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2〜3か月回すと、規則表と対応表が出そろい、needs_human が減ります。そこまで来てから本格構成に進むほうが、催促や差分の提示の空振りが減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 120件 × 14分 ÷ 60 = 28 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 海外の再保険会社やブローカーと多数の出再契約を持ち、英文の精算書(Statement of Account)をPDFで受け取って、再保険の経理の担当者が社内の出再台帳と手で突き合わせている損害保険会社・生命保険会社。契約ごとに書式が違い、貸借の向きや符号の書き方がブローカーごとにばらばらな場合。差異の理由を探すのに、担当者ごとに見るところが違っている場合。
- 精算書が電子データ(CSVや業界の標準形式など)で届き、すでに自動で取り込めている場合。出再契約が数本で、精算書が月に数通の場合。精算書が英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語以外で届く場合。なお、差異をどう処理するか、計上の時期や勘定科目、再保険会社との精算の合意は再保険の経理の責任者が決めるもので、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月の精算書から15通を選ぶ(括弧で負の数を書くもの、100%とシェアの列が並ぶもの、差異の理由が分かっているものを必ず入れる)
- 手元の生成AIの画面に1通ずつ貼り付け、「明細の各行について、項目名、100%の金額、シェアの金額、貸借の向きの書き方を、書かれたとおりに表にしてください。括弧や符号を外さず、どちらが支払うかは解釈しないでください」と指示する
- 出てきた表を、当時の照合用の表と見比べる
- 向きの書き方を、相手ごとに手で規則に直してみる
15通は必ずやってください。 仕組みを組む前に、括弧を外さないか、100%の列とシェアの列を取り違えないかを確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 向きの書き方と列を正しく取り出した | OCRのAPIと照合の処理に進む |
| 括弧を外した、符号を付けた | 指示で禁じる。直るまで先に進まない |
| 100%の列をシェアの列として取り出した | 列見出しの扱いを指示で直す。構成は有効 |
4番目の作業で、向きの規則表の最初の版ができます。 15通に出てくる相手の数だけ規則が要り、この表が第7章の符号の付与の土台になります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 括弧を外して正の数にする | 向きの書き方を原文のまま取り出させ、符号は規則表で付ける |
| 精算書の向きを自社から見たものと決めつける | 相手ごとの規則表を持ち、無い相手は人へ |
| 100%の列をシェアの値として照合する | 列見出しで区別し、決まらなければ ambiguous |
| AIが差異の理由を作る | 型ごとの検算で当てはまったものだけを候補にする |
| 期間を受け取った月で埋める | 期間の補完を禁じ、missing で人へ |
Commission と Brokerage を寄せる | 項目名の対応表にある書き方だけを使う |
| 訂正版で前の版の照合が残る | 同じ契約・期間で残高が違えば訂正版として並べる |
| 規則表に無い相手で止まる | 担当者が1行足せば次から自動になる |
| 中国語の精算書を読ませて失敗する | 6言語以外は読み取りに回さない |
| 照会が自動で飛ぶ | 下書きまでにする。送るのは担当者 |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも貸借の向きの誤りで、向きを1つ読み違えると、差異が2倍になって出るか、消えます。 原文の書き方を残し、規則表で符号を付ける設計で守ります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 出再契約の名称と条件、再保険会社ごとのシェア、保険料と手数料、回収保険金の明細、そして保険金の明細に含まれる保険契約者や事故の情報です。
- 外部へ渡す範囲を、対応付けに必要なものに限る … 生成AIに渡すのは読み取り結果と項目名の対応表だけです。出再台帳の値、手数料の料率、他の契約の情報は渡しません
- 保険金の明細の個人の情報に気をつける … 明細に保険契約者や被害者の名前が載ることがあります。照合に要るのは金額と事故番号なので、名前の列は読み取り結果から外してから渡す設計にできます
- 差異の処理を判定させない … この構成が出すのは照合の印と理由の候補までで、計上の時期、勘定科目、精算の合意は責任者が決めます
- 照会を自動で送らない … 照会は下書きまでで、担当者が送ります。 相手との精算の関係に関わります
- 規則表と対応表を書き換える権限を限る … 1行の変更が、その相手のすべての符号を変えます。変更は責任者の確認を経て、版を残します
誤りが起きた場合のリスクは、誤った向きや誤った理由のまま精算を確定してしまうことです。 多くは符号の推測と理由の作文から起きるので、原文を残し、検算で当てはまったものだけを候補にする設計を崩さないでください。
10まず何から始めるか
1週目:向きの規則表を作る
精算書を出してくる相手のうち、通数の多い上位10社について、精算書がどちらから見た向きで書かれるか、括弧や Dr/Cr が何を意味するかを1行ずつ表にします。担当者の頭の中にある知識を、表に出す作業です。
2週目:15通で試す
先月の精算書から15通を選び、手元の生成AIの画面で明細の表を作らせます。括弧を外さないか、100%の列とシェアの列を取り違えないかを最優先で見ます。
3週目:項目名の対応表と検算の型を決める
上位10社の精算書に出てくる項目名を集め、社内の勘定の区分に対応付けます。差異の型(シェア、料率、期間、為替、未計上の保険金)の検算の順番と許容の範囲を、責任者と決めます。
4週目:受付フォルダから照合までをつなぐ
S3、Lambda、Textract、Claude API、Python の照合をつなぎ、照合結果の一覧に書き出すところまで作ります。この時点では上位10社の精算書だけを対象にし、検算はまだ動かしません。
2か月目: 検算を動かし、unexplained と needs_human の件数を毎週数えて規則表と対応表を育てます。3か月目以降: 対象を全社に広げ、1件40分が何分になったかを実測します。担当者が替わっても、同じ精算書の差異に同じ理由の候補が付くようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 対応する形式がJPEG、PNG、PDF、TIFFであること。同期はPDF1ページ・10MB、非同期はPDFとTIFFで500MB・3,000ページであること。PDFはパスワードで保護できないこと。対応言語が英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語で、質問の検出は英語の文書だけであること。文字の最小の高さが15ピクセル(150 DPIで8ポイント相当)であること | AWS: Set Quotas in Amazon Textract | 2026-10-07 |
StartDocumentAnalysis の FeatureTypes(TABLES/FORMS/QUERIES ほか)、QueriesConfig、ClientRequestToken、JobTag、NotificationChannel で Amazon SNS に完了を通知すること | AWS: StartDocumentAnalysis | 2026-10-07 |
GetDocumentAnalysis の JobStatus(SUCCEEDED/FAILED/PARTIAL_SUCCESS ほか)、MaxResults(最大1,000)と NextToken、StatusMessage、Warnings | AWS: GetDocumentAnalysis | 2026-10-07 |
| 表がセル、結合セル、表題、脚注のブロックで返り、セルが行・列の番号と信頼度を持ち、列見出し(COLUMN_HEADER)や合計(TABLE_SUMMARY)などの種類が付くこと | AWS: Tables | 2026-10-07 |
| 質問の応答が QUERY と QUERY_RESULT のブロックで返り、別名(Alias)と信頼度を持つこと。答えが見つからなければ空のまま返ること | AWS: Queries | 2026-10-07 |
構造化出力を output_config.format に json_schema を指定して受け取れること | Claude Docs: Structured outputs | 2026-10-07 |
差異の処理、計上の時期と勘定科目、再保険会社との精算の合意は、再保険の経理の責任者が行うものです。 本記事は精算書の読み取りと出再台帳との照合、型ごとの検算までを扱っています。精算書の項目名や向きの書き方は、相手との取り決めで確かめてください。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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