Media > AI活用ユースケース > 法務 > 法律事務所で、事件ごとの期日・書面のやり取り・打合せの記録から、依頼者へ毎月送る進捗報告書の下書きを作る

法律事務所で、事件ごとの期日・書面のやり取り・打合せの記録から、依頼者へ毎月送る進捗報告書の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

事件管理システムに記録された期日の結果、書面のやり取り、打合せと電話の記録から、依頼者へ毎月送る進捗報告書の下書きを事件ごとに作ります。前月の経過、次の予定、依頼者にお願いしたい事項を、根拠の記録付きでまとめます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
士業
対象部門
法務
対象業務
書類作成/要約
主な課題
人手が足りない/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
生成
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
80h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
70%
年間削減
672h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 月初に、事務局が報告の対象の事件の一覧を作り、各弁護士に割り振る
  2. 弁護士が事件管理システムを開き、前月の期日、書面、打合せの記録を拾う
  3. 前月の報告書を開き、続きとして読めるように書き出しを考える
  4. 経過を依頼者向けの言葉で書き、次の期日と準備の予定を書く
  5. 依頼者にお願いしている資料や確認事項を、期限とあわせて書く
  6. 所見(見通し、方針)を書き、事務局が様式を整えて送る
導入後(After)
  1. 自動毎月第1営業日の朝、ワークフローが報告の対象の事件の一覧を作る
  2. 自動事件ごとに、前月の期日、書面の授受、打合せと電話の記録、依頼者へのお願いのタスク、前月の報告書を集める
  3. 自動受領した書面の要旨がまだ記録に無いものは、書面のPDFから要旨の候補を作る
  4. 自動AIが、前月の経過、次の予定、依頼者へのお願いを、根拠の記録の番号付きで報告書の様式にまとめる
  5. 自動根拠の記録の番号が実在するかを照合し、報告書のWordの下書きを担当弁護士のフォルダに置く
  6. 人担当弁護士が下書きを読み、根拠を確かめて直し、所見の欄を書く
  7. 人事務局が、弁護士の承認したものを、これまでどおりの方法で依頼者に送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 月初に、事務局が報告の対象の事件の一覧を作り、各弁護士に割り振る
  2. 弁護士が事件管理システムを開き、前月の期日、書面、打合せの記録を拾う
  3. 前月の報告書を開き、続きとして読めるように書き出しを考える
  4. 経過を依頼者向けの言葉で書き、次の期日と準備の予定を書く
  5. 依頼者にお願いしている資料や確認事項を、期限とあわせて書く
  6. 所見(見通し、方針)を書き、事務局が様式を整えて送る

(a)月初に集中する。 160件の報告が月初の数日に重なり、弁護士8名で割っても1人20件、1人あたり10時間近くが月初に固まります。 期日や起案の締め切りと重なると、報告書が後回しになり、約束の時期を過ぎます。

(b)書きぶりが弁護士ごとに違う。 ある弁護士は期日のやり取りを詳しく書き、別の弁護士は「特段の進展なし」の一行で済ませます。同じ企業の依頼者が複数の事件を頼んでいると、報告書の形が事件ごとに違い、依頼者の法務部が社内向けにまとめ直しています。

(c)依頼者へのお願いが埋もれる。 「次回期日までに、平成○年の取引の資料をお送りください」というお願いが、報告書の本文の途中に書かれています。依頼者は読み落とし、期日の直前になって弁護士が電話で催促することになります。 お願いの一覧と期限が、報告書の決まった場所にありません。

(d)記録を拾う作業に時間を取られる。 弁護士の時間の多くは、事件管理システムの画面を行き来して日付と題名を写すことに使われています。依頼者が最も読みたい所見の欄が、最後に残った短い時間で書かれます。

  1. 【自動】 毎月第1営業日の朝、ワークフローが報告の対象の事件の一覧を作る
  2. 【自動】 事件ごとに、前月の期日、書面の授受、打合せと電話の記録、依頼者へのお願いのタスク、前月の報告書を集める
  3. 【自動】 受領した書面の要旨がまだ記録に無いものは、書面のPDFから要旨の候補を作る
  4. 【自動】 AIが、前月の経過、次の予定、依頼者へのお願いを、根拠の記録の番号付きで報告書の様式にまとめる
  5. 【自動】 根拠の記録の番号が実在するかを照合し、報告書のWordの下書きを担当弁護士のフォルダに置く
  6. 【人】 担当弁護士が下書きを読み、根拠を確かめて直し、所見の欄を書く
  7. 【人】 事務局が、弁護士の承認したものを、これまでどおりの方法で依頼者に送る

6番目で、弁護士は所見を書くことに時間を使います。 下書きの経過の部分は、記録の番号から元の記録をたどって確かめます。所見の欄は空欄のまま渡り、空欄のままでは7番目に進めないようにします。

3番目は、受領した書面の要旨を弁護士がまだ記録に入れていない場合の補いです。 要旨の候補には、書面のどのページから取ったかを付けます。相手方の主張を依頼者に伝える文は、依頼者の受け止め方に直結するので、弁護士が必ず原文と照らします。

02今回想定するシステム構成

構成図
事件管理システム(期日/書面の授受/打合せ・電話の記録/タスク)
   ▼【トリガー】毎月第1営業日の朝
Power Automate(連携)
   ├──▶ 報告の対象の事件の一覧
   ├──▶ 事件ごとの前月の記録と、前月の報告書
   └──▶ 受領した書面のPDF(要旨が未記録のもの)
   ▼
Claude API ── 受領した書面の要旨の候補(ページ付き)
   ▼
Claude API ── 報告書の下書き(記録の番号付き)
   │   ① 前月の経過   ② 期日の結果   ③ 書面のやり取り
   │   ④ 次の予定     ⑤ 依頼者へのお願い(期限付き)
   │   ⑥ 所見の欄(空欄のまま)
   ▼
Power Automate ── 記録の番号の照合、Wordの様式への流し込み
   ▼
【人:担当弁護士が確かめ、所見を書く】──▶ 事務局が送付
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(書面の要旨の候補と、報告書の下書き)OpenAI API、Gemini API
連携Power Automate(記録の書き出し、番号の照合、様式への流し込み)Make、n8n
保管事件管理システム(記録、承認した報告書)、ファイルサーバー(書面のPDF)文書管理システム

事件管理システムは、新しく足すものではありません。 この構成は、事件管理システムから記録を読み出し、報告書の下書きを作るだけです。事件管理システムに書き戻すのは、弁護士が承認した報告書と、送付した日付だけです。事件管理システムからの記録の書き出しの方法は、製品によって違います。API が無ければ、事務局が月初にCSVで書き出す形でも同じ構成が組めます。

報告書の作成は、弁護士の義務の一部です。 日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程の第36条は、弁護士は必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過および事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならないと定めています。この構成は報告の材料をそろえる道具で、報告するのは弁護士です。

AIには Claude API を使い、構造化出力で受け取ります。 構造化出力は応答をJSONスキーマに沿わせる機能で、output_config.format にスキーマを渡します。報告書の各段落に、根拠の記録の番号を持たせるために使います。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎月第1営業日の朝に動かします。 報告の対象は「前月の1日から末日まで」の記録で、月が変わった時点で材料が確定します。下書きが第1営業日の朝にそろっていれば、弁護士は月初の数日で確かめと所見に集中できます。

事件ごとに1件ずつ処理します。 160件をまとめて1回でAIに渡すことはしません。事件の情報が別の事件の報告書に混ざらないことが、この構成で最も守るべきことの1つだからです。

月の途中の臨時の報告は、弁護士が事件を指定して手で動かせるようにします。 判決や和解の成立など、月末を待たずに知らせるべきことがあった場合です。中身の作り方は月次と同じで、対象の期間だけを変えます。

前月の末日に期日があった事件は、メモの入力が間に合っていないことがあります。 第1営業日の朝の時点で、前月の期日に結果のメモが無い事件は、下書きを作らずに担当弁護士へ「メモの入力待ち」と知らせ、メモが入った時点でその事件だけをもう一度動かします。 メモの無いまま下書きを作ると、期日の結果が空欄の報告書ができます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
事件の情報事件番号、事件名、依頼者の区分(企業/個人)、裁判所・手続きの種類、担当弁護士事件管理システム
期日の記録日時、種類(口頭弁論、弁論準備、調停、交渉など)、結果のメモ、次回の日時事件管理システム
書面の授受日付、提出・受領の別、題名、提出者、弁護士の要旨のメモ事件管理システム
打合せ・電話の記録日時、相手、内容のメモ事件管理システム
依頼者へのお願い依頼した資料や確認事項、期限、済・未済事件管理システムのタスク
前月の報告書承認され送付された報告書の本文事件管理システム
受領した書面のPDF要旨のメモがまだ無い書面だけファイルサーバー
報告に書かない事項事件ごとに、報告書に書かないと弁護士が決めた事項事件管理システムの事件ごとの欄

質を決めるのは、期日の記録の「結果のメモ」です。 「弁論準備。被告の準備書面(2)陳述。次回までに原告が反論」と書かれていれば、AIはそれを依頼者向けの文にできます。「期日。特になし」だけなら、AIは何も足せません。 この構成を入れると、期日の後のメモの書き方が報告書の質を決めることが、弁護士にも見えるようになります。

いちばん下の「報告に書かない事項」は、この題材に特有の入力です。 和解の条件について依頼者の一部の担当者だけに口頭で伝えている、刑事告訴を検討している、といった事項は、報告書という文書の形で残すかどうかを弁護士が決めます。 AIにはその欄を渡し、該当する記録を本文に使わせません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
対象の事件の一覧事件管理システム(月次の報告の約束がある、継続中の事件)処理の単位
前月の記録事件管理システム(期間で絞る)経過の材料
未済のお願い事件管理システムのタスク(未済のもの全件)依頼者へのお願いの一覧
前月の報告書事件管理システム続きとして読める書き出しと、前月からの変化
受領した書面ファイルサーバー(mints から事務局が保存したもの、紙をスキャンしたもの)要旨の候補

記録には、1件ずつ番号を振って渡します。 期日は H-01、書面は D-01、打合せは M-01、お願いは R-01 のように。報告書の各文に、どの記録から書いたかを番号で付けさせるためです。

未済のお願いは、前月より前のものも含めて全件取ります。 先々月にお願いした資料がまだ届いていなければ、今月の報告書でももう一度お願いする必要があります。期間で絞ると、届いていないお願いが報告書から消えます。 第3章の(c)は、ここで防ぎます。

受領した書面のPDFは、届き方で2種類あります。 民事訴訟の書面は mints から電子で届き、事務局がファイルサーバーの事件ごとのフォルダに保存します。労働審判や家事事件の書面は、いまも紙で届くものがあり、スキャンしたPDFは文字が読み取れるかを先に確かめます。 どちらも、ファイル名に書面の題名と受領日を入れて保存する決まりにしておくと、事件管理システムの書面の記録と結びつけられます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 期間で絞る … 期日・書面・打合せは前月の1日から末日まで。次回の期日は、前月より後の予定を全件
  2. 報告に書かない事項を除く … 事件ごとの欄に挙がっている記録は、AIに渡す前に取り除き、取り除いたことだけを弁護士向けの欄に記録します
  3. 記録の番号を振る … 種類ごとに番号を振ります
  4. 書面の要旨の有無を見る … 受領した書面に弁護士の要旨のメモが無いものだけ、PDFを要旨の候補づくりに回します
  5. 依頼者の区分で文体を決める … 企業の法務部向けは簡潔に、個人向けは手続きの言葉に説明を添えます
  6. 相手方や第三者の個人名の扱い … 報告書には書面や期日の記録にある名前が出ます。依頼者が知っている当事者の名前は残し、それ以外の第三者は役割(証人、相手方代理人)に置き換えます

2番目を、AIへの指示ではなく前処理で行うのが要点です。 指示で「この事項は書かないでください」と頼むと、AIはその事項を読んだうえで避けようとします。読ませなければ、書かれることはありません。 書かない事項は、渡さないことで守ります。

Step5

AIに処理させる

1回目は受領した書面の要旨の候補、2回目は報告書の下書きです。

回させること根拠の示し方
1回目受領した書面について、相手方の主な主張を3〜5点、各200字以内で要旨にする各点に書面のページ
2回目前月の経過の要約、期日の結果、書面のやり取り、次の予定、依頼者へのお願い(期限付き)を報告書の様式にまとめる各文に記録の番号

1回目の要旨は、相手方の言葉に寄せて書かせます。 「被告は、本件契約は解除されていないと主張しています」のように、誰の主張かを必ず主語に置きます。 「本件契約は解除されていません」と書かれると、依頼者は事実として読みます。

文体は、依頼者の区分で切り替えます。

依頼者の区分書き方
企業(法務部が窓口)手続きの言葉はそのまま使い、経過を箇条書きで短く。社内への報告に転記しやすい形にする
個人「弁論準備手続(裁判官と双方の弁護士が争点を整理する手続)」のように、初出の言葉に短い説明を添える

説明の文は、手続きの一般的な説明に限ります。 その事件で何が起きたかの説明は、記録の番号が付く文だけで書きます。

2回目の「依頼者へのお願い」は、本文とは別の欄に表で出させます。 何を、いつまでに、どこへ送ってほしいか。期限が前月より前で未済のものは「再度のお願い」と分かるようにします。

させないこと理由
見通し・勝敗・金額の予測弁護士の判断。所見の欄は空欄のまま渡す
相手方の主張への評価「根拠が乏しい」などの評価は弁護士が書く
方針・次の打ち手の提案依頼者と協議して決めること
記録に無い期日や書面の補完記録の番号が付けられない文は書かない
報告に書かない事項への言及前処理で除いたうえで、指示でも禁じる

1行目がいちばん大事です。 依頼者が報告書でいちばん読みたいのは見通しで、AIに書かせると便利に見えます。しかし見通しは、記録に書かれていない弁護士の経験と判断から出てくるもので、記録からAIが書いた見通しは、根拠の無い予測になります。 報告書に載れば、依頼者はそれを弁護士の判断として読みます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは法律事務所で、継続中の事件について依頼者へ毎月送る進捗報告書の下書きを作る立場です。
報告書は担当弁護士が確認し、所見を書き加えてから送ります。

【事件】{case_info}(依頼者の区分:{client_type})
【対象の期間】{period}
【記録(番号付き)】
  期日:{hearings}
  書面の授受:{documents}
  打合せ・電話:{meetings}
  依頼者へのお願い(未済):{requests}
【前月の報告書】{last_report}

【作るもの】
1. 今月の要約(3文以内)
2. 期日の結果(期日ごと)
3. 書面のやり取り(提出・受領ごと。受領した書面は要旨を添える)
4. 次の予定(次回期日と、それまでに当方が行う準備)
5. 依頼者へのお願い(何を、いつまでに。期限を過ぎたものは「再度のお願い」と明示)

【厳守事項】
- すべての文に、根拠にした記録の番号を付けてください。番号を付けられない文は書かないでください。
- 事件の見通し、勝敗、金額、相手方の主張の当否についての評価は書かないでください。
  所見の欄は作らないでください。弁護士が書きます。
- 方針や次の打ち手を提案しないでください。記録に「当方は〜する予定」とある範囲だけを書いてください。
- 相手方の主張は、必ず「相手方は〜と主張しています」の形で、誰の主張かを示してください。
- 記録に無い期日、書面、日付を補わないでください。日付は記録のとおりに書いてください。
- 前月の報告書と内容が重なる部分は「前月にお伝えしたとおり」と短くまとめ、変化を中心に書いてください。
- 記録が少ない月は、少ないまま短く書いてください。文章で埋めないでください。
- 依頼者の区分が個人の場合は、手続きの言葉に短い説明を添えてください。

「記録が少ない月は短く書く」を入れるのは、AIが行間を埋めようとするからです。 期日の無い月に「引き続き鋭意準備を進めております」のような文で段落を作ると、依頼者には何かが進んでいるように読めます。 記録が無ければ、無いと書くほうが正確です。

「前月にお伝えしたとおり」を指示するのは、依頼者が前月との差を読みたいからです。 第3章の(b)で、依頼者の法務部がまとめ直していたのは、毎月の報告書が同じ説明を繰り返し、変化が埋もれていたからです。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "case_id": "",
  "period": "",
  "summary": [ { "text": "", "refs": ["H-01"] } ],
  "hearings": [ { "date": "", "type": "", "result": "", "refs": [""] } ],
  "documents": [ { "date": "", "direction": "filed | received", "title": "", "gist": "", "refs": [""] } ],
  "next_schedule": [ { "date": "", "item": "", "refs": [""] } ],
  "requests_to_client": [
    { "item": "", "due": "", "status": "new | reminder", "refs": ["R-01"] }
  ],
  "excluded_by_policy": 0,
  "notes_for_lawyer": [""]
}

1つ目の理由は、記録の番号を機械で照合できることです。 refs に、渡していない番号が入っていないかをワークフローが確かめます。存在しない番号を挙げた文は、下書きに入れる前に印を付けます。

2つ目は、Wordの様式に決まった順で流し込めることです。 160件の報告書が同じ見出しで並び、依頼者へのお願いはいつも同じ場所の表に入ります。所見の欄は、様式の側で空欄の枠として用意しておきます。

依頼者へのお願いの欄は、様式の上では次のような表になります。

お願いの内容期限区分
取引先との間の基本契約書(締結時のもの)の写し11月14日再度のお願い
担当者の方の陳述書の案へのご確認11月21日新規

期限は、記録の期限をそのまま写します。 「次回期日の1週間前」のような書き方は、記録の側で日付に直しておきます。依頼者の担当者が予定表にそのまま写せる形にするためです。

3つ目は、notes_for_lawyer で弁護士への申し送りを分けられることです。 「打合せの記録 M-02 に、依頼者が資料を探していると書かれているが、タスクに登録されていない」のような気づきは、報告書の本文ではなく、弁護士だけが読む欄に入れます。

JSONスキーマの定義には、事件の情報を入れません。 Claude の公式ドキュメントでは、構造化出力のスキーマはメッセージの内容とは別にキャッシュされると説明されています。依頼者名や事件名を列挙型の値に並べず、項目の形だけを定めます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
事件管理システムAPI または CSV の書き出し対象の事件、前月の記録、未済のお願い、前月の報告書
ファイルサーバーPower Automate(読み取り)要旨が未記録の受領書面のPDF
Claude APIAPI呼び出し書面の要旨の候補、報告書の下書き
弁護士のフォルダPower Automate(保存)Wordの下書きと、根拠の一覧
事件管理システム書き込み承認後の報告書と送付日

事件管理システムへの書き戻しは、弁護士が承認した後だけです。 下書きの段階で書き戻すと、来月の「前月の報告書」として、弁護士が直す前の文章が使われてしまいます。

依頼者への送付は、自動にしません。 これまでどおり、事務局が事務所の決めた方法で送ります。

Step9

人が確認する

  1. 記録の番号をたどる … 担当弁護士が、下書きの各文の番号から元の記録を開き、合っているかを確かめます。特に期日の日付と、依頼者へのお願いの期限は全件見ます
  2. 相手方の主張の要旨を原文と照らす … 1回目で作った要旨は、書面の該当ページと照らします
  3. 前月の報告書と食い違っていないかを見る … 前月に「次回期日は○月○日」と書いた日付が変わっていれば、変わったことが本文に書かれているかを確かめます
  4. 所見を書く … 見通し、相手方の主張についての評価、今後の方針を書きます
  5. notes_for_lawyer を読む … タスクの登録漏れなど、記録の側の直しが要るものを直します

1番目で日付とお願いの期限を全件見るのは、誤ったときの影響が大きいからです。 期日の日付を1日間違えて依頼者に伝えると、依頼者の担当者が出席の予定を誤って組みます。 資料の期限を誤れば、期日に間に合いません。

4番目が空欄のままの下書きは、事務局に回りません。 様式の所見の枠が空なら、ワークフローは送付の一覧に載せません。弁護士が「今月は所見なし」と書くことはできますが、書かずに送ることはできないようにします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
前月に記録が1件も無い短い定型の下書きにし、未済のお願いがあればそれを中心にする
期日の結果のメモが空その期日は日付と種類だけを書き、notes_for_lawyer に「結果の記録なし」と入れる
受領した書面のPDFが読めない紙をスキャンしたものなら取り直す。要旨は作らず題名と日付だけにする
期日が変更・取消しになった変更前と変更後の両方が記録にあるかを見て、変更後だけを次の予定に書く
判決・和解の成立があった月次を待たず、弁護士が手で臨時の報告を動かす。結果の説明は弁護士が書く
依頼者が複数いる共同の事件送付先と、各依頼者に書く範囲を弁護士が確かめる
報告に書かない事項が多い事件下書きを作らず、弁護士が書く事件として一覧に印を付ける
AIの応答が途中で切れた・拒否されたその事件の下書きを作らず、弁護士の一覧に「下書きなし」と出す
記録の番号が実在しないその文を下書きから外し、弁護士に知らせる
担当弁護士が月の途中で交代した前月の報告書を書いた弁護士と今月の担当の両方に下書きを回す

6行目は、事務所の判断が要る型です。 共同の依頼者のあいだで利害が分かれてきた事件では、同じ報告書を全員に送ってよいかを弁護士が判断します。 下書きの側では決めず、事件ごとの欄に印が付いていれば送付先の確認を求めます。

8行目について。 Claude の公式ドキュメントは、拒否の応答や max_tokens への到達では、構造化出力でもスキーマに合わない出力になりうるとしています。stop_reason を見て、正常に終わらなかったものは使いません。

Step11

記録を残す

  • 事件ごとに、AIに渡した記録の番号の一覧と、前処理で除いた記録の件数
  • 1回目の要旨の候補と、参照した書面のページ
  • 2回目の下書きの全文と、番号の照合の結果
  • 弁護士が直した箇所と、書いた所見
  • 承認した報告書、承認した弁護士、送付日

4つ目が、この構成を育てる材料になります。 弁護士が毎回同じ種類の直しをしているなら、指示か記録の書き方のどちらかに理由があります。期日のメモの書き方を事務所でそろえると、直しが減ります。

保存期間は、事件の記録の事務所の保存期間に合わせます。 下書きと弁護士の直しの記録は、送った報告書と同じ事件の記録として扱い、別の場所に別の期間で残さないようにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:記録を手でAIの画面に貼り、報告書の下書きを作らせる / 1件ごとの経過の文章化
半自動化:上記+月初に事件ごとの記録を自動で集め、下書きをWordの様式に流し込み、番号を照合する / 記録の収集から下書きまで
本格構成:上記+受領書面の要旨の候補づくり、未済のお願いの期限の追跡、承認後の書き戻し / 報告書づくりの全体と、お願いの管理

本記事の想定は半自動化です。 月初に160件の下書きがそろい、弁護士は確かめと所見に時間を使います。1件30分が9分になります。 本格構成で効いてくるのは、依頼者へのお願いの追跡です。 報告書のお願いの表とタスクが結びつくと、期限が近いのに届いていない資料を、月次の報告を待たずに知らせられます。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の段階で弁護士の直しを2〜3か月分見ると、期日のメモのどこが薄いか、どの指示が守られていないかが分かります。 そこを直してから要旨の候補づくりを足すほうが、相手方の主張の要旨という扱いの難しい部分を、確かな土台の上に載せられます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
160 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  160件 × 30分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 160件 × 9分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
56h
削減率
70%
年間削減時間
672h
年間金額換算(時間単価6,000円)
403万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 民事訴訟・労働・企業間の紛争など継続中の事件を百件以上抱え、依頼者に月1回の進捗報告を送る運用をしている法律事務所。期日の結果、書面の授受、打合せの記録を事件管理システムに入れる習慣がある場合。報告書の書きぶりが弁護士ごとに違い、依頼者から「先月と何が変わったのか分からない」と言われることがある場合。
向いていない
  1. 継続中の事件が数十件以下で、弁護士が報告書をすぐ書けている場合。期日の結果や打合せの内容を事件管理システムに記録していない場合(材料が無いので下書きが作れません)。事件の見通しや方針の説明を自動で作りたい場合(この構成は見通しを書きません)。依頼者の情報を外部のクラウドサービスで扱わないと事務所で決めている場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月報告書を送った事件から10件を選ぶ(期日の無かった月の事件と、書面が何通も行き来した事件を含める)
  2. その10件の前月の記録を事件管理システムから書き出し、依頼者名と事件名を伏せる
  3. 手元のAIサービスに記録を貼り、「この記録から依頼者への進捗報告の下書きを作ってください。すべての文に記録の番号を付けてください。見通しは書かないでください」と指示する
  4. 出てきた下書きを、実際に送った報告書と並べる

期日の無かった月の事件が、この試験の本体です。 記録が少ないときに、AIが文章で埋めないかを見ます。

出てきた内容判断
記録の番号付きで、送った報告書の経過の部分と近い事件管理システムとの連携に進む
見通しや評価のような文が混ざる指示の書き方で直る。構成は有効
経過の文が薄く、送った報告書に大きく劣る期日のメモの書き方が先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 送った報告書には、弁護士が頭の中で覚えていたことが書かれています。それが記録に無ければ、AIには書けません。 期日の後のメモに何を残すかを、事務所で決めるきっかけになります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
見通しや評価が下書きに混ざる所見の欄を作らせない。 様式の側で空欄の枠を用意する
相手方の主張が事実のように書かれる「相手方は〜と主張しています」の形を指示で固定する
別の事件の情報が混ざる事件ごとに1件ずつ処理する
書かない事項が報告書に出る指示で禁じるのではなく、前処理で渡さない
記録が少ない月に文章で埋める「少ないまま短く」を指示に書く
未済のお願いが報告書から消える期間で絞らず、未済のものは全件取る
期日の日付を誤る日付は記録のとおりに書かせ、弁護士が全件確かめる
下書きのまま事件管理システムに戻る書き戻しは承認後だけ
所見が空のまま送られる空欄なら送付の一覧に載せない
毎月同じ説明が繰り返される前月の報告書を渡し、変化を中心に書かせる
個人の依頼者に手続きの言葉が伝わらない区分で文体を切り替え、初出の言葉に説明を添える
スキャンした書面の要旨が崩れる文字が読み取れるかを先に確かめ、読めなければ要旨を作らない

上の4行が、この構成の失敗のほとんどです。 1行目と2行目は依頼者の受け止め方を誤らせ、3行目と4行目は守秘に関わります。どれも、作り始める前の設計で防げます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 依頼者と相手方の名前、事件の内容、期日の結果、書面の内容、打合せでのやり取りです。いずれも弁護士が職務上知り得た依頼者の秘密に当たりうる情報です。

  1. 秘密の保持を前提に設計する … 弁護士職務基本規程の第23条は、弁護士は正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、または利用してはならないと定めています。外部のAIサービスを使うかどうか、使うならどの条件で使うかを、事務所として先に決めます
  2. 事件ごとに分けて処理する … 1回のやり取りに複数の事件の記録を入れません。ある依頼者の情報が、別の依頼者の報告書に出ることを設計で防ぎます
  3. データの保持を確認する … Claude の公式ドキュメントでは、保持されたデータは明示の許可なくモデルの学習に使われないとされ、ゼロデータ保持の取り決めもあります。構造化出力はプロンプトと出力が保存されず、JSONスキーマだけが最大24時間キャッシュされるとされます。PDFはメッセージに直接添付して渡し、ゼロデータ保持の対象外とされている Files API や Batch API は使いません。160件を夜間にまとめて流したくなっても、この点を優先します
  4. 報告に書かない事項は、AIに渡さない … 前処理で除き、除いたことだけを記録します
  5. 事件の終わりの説明は別に扱う … 弁護士職務基本規程の第44条は、委任の終了に当たり、事件処理の状況またはその結果に関し、必要に応じ法的助言を付して依頼者に説明しなければならないと定めています。判決や和解で事件が終わる月は、この構成の下書きではなく、弁護士が結果の説明を書きます
  6. 報告書は弁護士の名前で出す … 下書きを作るのは道具で、報告するのは担当弁護士です。 承認の記録を残し、誰が確かめて送ったかを後からたどれるようにします

誤りが起きた場合のリスクは、依頼者に誤った経過や日付が伝わることと、依頼者の秘密が別の事件や外部に出ることの2つです。 前者は記録の番号と弁護士の確認で、後者は事件ごとの処理と前処理で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:期日のメモの書き方をそろえる

期日の後に事件管理システムに残すメモの項目(何が陳述されたか、裁判所から何を求められたか、次回までに誰が何をするか、次回の日時)を決めます。報告書の質は、ここで決まります。

2週目:10件で試す

先月の記録から10件を選び、手元のAIサービスで下書きを作らせます。期日の無かった月の事件で、文章で埋めていないか、見通しが混ざっていないかを最優先で見ます。

3週目:様式と「書かない事項」の欄を作る

報告書のWordの様式に、所見の空欄の枠と、依頼者へのお願いの表を作ります。事件管理システムに、事件ごとの「報告に書かない事項」の欄を足します。

4週目:月初の自動の収集をつなぐ

Power Automate で、月初に事件ごとの記録を集め、Claude API で下書きを作り、番号を照合して弁護士のフォルダに置くところまで作ります。この時点では、弁護士が全件を実際に送った報告書と見比べます。

2か月目: 160件すべてで下書きを作り、弁護士の直しの種類を数えます。3か月目以降: 受領書面の要旨の候補づくりと、承認後の書き戻しを足し、1件30分が何分になったかを実測します。弁護士の直しが日付の確認と所見の記入に絞られた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
第36条が、弁護士は必要に応じ依頼者に対して事件の経過および事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならないと定めること。第23条が、正当な理由なく依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、または利用してはならないと定めること。第44条が、委任の終了に当たり事件処理の状況またはその結果を、必要に応じ法的助言を付して依頼者に説明しなければならないと定めること日本弁護士連合会: 弁護士職務基本規程(PDF)2026-10-07
改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則が令和8年5月21日に施行されたこと。電子提出システムが mints であること。非訟手続、人事訴訟、家事事件は今回のデジタル化によるオンライン申立て等の対象外で、令和10年6月までに対象となる予定であること裁判所: 民事訴訟手続のデジタル化2026-10-07
構造化出力が output_config.format で応答をJSONスキーマに沿わせること。拒否や max_tokens 到達時にはスキーマに合わない出力になりうることClaude Docs: Structured outputs2026-10-07
保持されたデータが明示の許可なくモデルの学習に使われないこと。ゼロデータ保持の取り決めがあること。構造化出力ではプロンプトと出力が保存されず、JSONスキーマだけが最大24時間キャッシュされること。メッセージに直接添付するPDFが対象になり、Files API と Batch API が対象外であることClaude Docs: API and data retention2026-10-07

報告書に何を書き、何を書かないか、外部のAIサービスを使う条件は、事務所の規程と担当弁護士の判断で決めてください。 本記事は公開の規程・裁判所の情報・製品の公開仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0657)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次