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売買仲介の物件調査を始めるときに、同じ地域で過去に作った重要事項説明書・役所調査のメモ・調査報告書から、道路・法令上の制限・インフラの調査結果を根拠付きで探し、今回確かめる窓口と項目を先に並べる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

売買仲介の営業が物件調査を始めるときに、同じ地域で過去に作った重要事項説明書・役所調査のメモ・調査報告書から、道路・法令上の制限・インフラの調査結果を探して出典付きで返します。今回どの窓口で何を確かめるかを、調査の前に並べます。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
不動産/建設
対象部門
営業
対象業務
内容確認・チェック/情報検索
主な課題
属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
品質標準化/教育コスト削減/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
90h/月
AI導入後
36h/月
想定削減
60%
年間削減
648h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 媒介を受けたら、営業が物件の所在地を自店舗の共有フォルダで探し、近くの過去の重要事項説明書を開く
  2. 見つからなければ、近くの店舗に電話して、その地域の記録が無いかを聞く
  3. 見つかった重要事項説明書と調査報告書から、道路・法令上の制限・インフラの記載を読む
  4. 役所調査のメモがあれば、どの窓口で何を確かめたかを読む
  5. 経験のある先輩に、その地域で気を付けることを聞く
  6. 役所と各事業者の窓口で調査し、結果を調査報告書と重要事項説明書にまとめる
導入後(After)
  1. 人営業が検索の画面で、物件の所在地(市区町村・町丁目・地番)、物件の種別、前面道路の手がかりを入れる
  2. 自動中継プログラムが、市区町村と町丁目から絞り込みの式を、同じ町丁目と新しい記録を上位にするブーストを組み立てる
  3. 自動Agent Search(Vertex AI Search)が、過去の重要事項説明書・調査報告書から、道路・法令上の制限・インフラの調査結果を探し、出典付きでまとめる
  4. 自動2回目の呼び出しで、役所調査のメモから、項目ごとに確かめた窓口と取った資料を探す
  5. 自動中継プログラムが、項目ごとに「地域で共通/道路ごと/物件ごと」の区分と、過去の調査日を付けて並べる
  6. 人営業が出典を開いて確かめ、今回の調査の段取りを決める
  7. 人役所と各事業者の窓口で、すべての項目を今回あらためて確かめる
  8. 人調査報告書と重要事項説明書を書き、これまでどおり社内の確認に回す
  9. 自動確認が終わった調査報告書と役所調査のメモを、個人情報を除いて取り込む
各工程の詳しい説明を読む
  1. 媒介を受けたら、営業が物件の所在地を自店舗の共有フォルダで探し、近くの過去の重要事項説明書を開く
  2. 見つからなければ、近くの店舗に電話して、その地域の記録が無いかを聞く
  3. 見つかった重要事項説明書と調査報告書から、道路・法令上の制限・インフラの記載を読む
  4. 役所調査のメモがあれば、どの窓口で何を確かめたかを読む
  5. 経験のある先輩に、その地域で気を付けることを聞く
  6. 役所と各事業者の窓口で調査し、結果を調査報告書と重要事項説明書にまとめる

(a)別の店舗の記録が引けない。 同じ私道に面した物件を2年前に隣の店舗が扱っていても、自店舗のフォルダには無く、電話で聞いても担当が辞めていれば分かりません。

(b)ファイル名で探すしかない。 共有フォルダのファイル名は「重説_○○町3丁目_山田様」「調査報告_202X」のように担当ごとにばらばらです。町丁目で探しても、隣の町丁目の同じ道路に面した物件は出てきません。

(c)どの窓口で何を確かめるかが経験頼み。 道路の種別は建築指導の窓口、上下水は水道と下水道の窓口、埋蔵文化財は教育委員会。市ごとに窓口の名前と分かれ方が違い、経験の浅い営業は窓口を回り直すことになります。

(d)調査の抜けが後で分かる。 前面道路の一部が私道で持分が無い、下水の引込管が隣地を通っている。こうした点を調査で拾えず、契約の直前や引渡しの後に分かると、説明のやり直しや価格の調整になります。

  1. 【人】 営業が検索の画面で、物件の所在地(市区町村・町丁目・地番)、物件の種別、前面道路の手がかりを入れる
  2. 【自動】 中継プログラムが、市区町村と町丁目から絞り込みの式を、同じ町丁目と新しい記録を上位にするブーストを組み立てる
  3. 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search)が、過去の重要事項説明書・調査報告書から、道路・法令上の制限・インフラの調査結果を探し、出典付きでまとめる
  4. 【自動】 2回目の呼び出しで、役所調査のメモから、項目ごとに確かめた窓口と取った資料を探す
  5. 【自動】 中継プログラムが、項目ごとに「地域で共通/道路ごと/物件ごと」の区分と、過去の調査日を付けて並べる
  6. 【人】 営業が出典を開いて確かめ、今回の調査の段取りを決める
  7. 【人】 役所と各事業者の窓口で、すべての項目を今回あらためて確かめる
  8. 【人】 調査報告書と重要事項説明書を書き、これまでどおり社内の確認に回す
  9. 【自動】 確認が終わった調査報告書と役所調査のメモを、個人情報を除いて取り込む

7番目は、この構成があっても減りません。 過去の記録は調査の道筋を示すだけで、法令上の制限も道路の扱いも、今回の調査日で確かめた結果だけが書面の根拠です。 画面の結果をそのまま書面に写す作りにはしません。

9番目が、次の調査の手がかりを増やします。 調査が終わるたびに記録が取り込まれ、同じ地域の次の物件で、別の店舗の営業が引けるようになります。

02今回想定するシステム構成

構成図
店舗ごとの共有フォルダ(重要事項説明書・調査報告書・役所調査のメモ)
   │  社内の確認が終わったものを、個人情報を除いて Cloud Storage へ
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)── データストア(レイアウト パーサー、チャンク分割)
   │   city/town/road_id/property_type/doc_kind/item_scope/surveyed_at
   ▼
検索の画面 ──【トリガー】営業が物件の所在地を入れる
   ▼
中継プログラム(Python、Cloud Run)
   ├──▶ answer メソッド ①:重要事項説明書・調査報告書から調査結果
   ├──▶ answer メソッド ②:役所調査のメモから窓口と取った資料
   └──▶ 項目ごとの区分と調査日の整理
   ▼
画面:項目ごとの過去の結果(調査日付き)/確かめる窓口/物件ごとに一から調べる項目
   ▼
【営業が役所と各事業者の窓口で、すべての項目を今回確かめる】
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・検索・項目の整理をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(個人情報を除いた調査の記録とメタデータ)─

物件管理の基幹システムと共有フォルダは、今あるものをそのまま使います。 新しく作るのは、検索の画面と中継プログラム、それに個人情報を除いた調査の記録を作る手順です。

調べる項目の骨組みは、宅地建物取引業法第35条第1項に合わせます。 同項は、契約が成立するまでに宅地建物取引士をして説明させる事項として、登記された権利のほか、「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限」に関する事項の概要(第2号)、私道に関する負担に関する事項(第3号)、飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(第4号)などを挙げています。本記事が扱うのは、このうち役所や事業者の窓口で調べる第2号〜第4号です。

土台になるのは、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、includeCitations で出典を付けられます。この構成では、出典の文書の調査日を必ず一緒に表示します。 古い調査の結果が、今の結果のように読まれないためです。

役所調査のメモには、手書きのものやスキャンしたものが混ざります。 レイアウト パーサーは、スキャンした文書にも光学式文字認識(OCR)をかけ、表や見出しを検出するとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、営業が媒介を受けて、検索の画面で物件の所在地を入れたことです。 役所に出る前、物件の現地を見たあとに使います。現地で前面道路の幅や私道の有無を見てから引くと、検索の文に道路の手がかりを入れられます。

記録の取り込みは、社内の確認が終わったときに動かします。 重要事項説明書と調査報告書は、宅地建物取引士と店長の確認が終わったものだけを取り込みます。確認の前の書面には、後で直された誤りが残っているからです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
物件の条件市区町村、町丁目、地番、物件の種別(土地/戸建て/マンション)、前面道路の手がかり検索の画面
重要事項説明書法令上の制限、道路、私道の負担、飲用水・電気・ガス・排水の記載(売主・買主の氏名は除く)共有フォルダ(確認済み)
調査報告書項目ごとの調査結果、調査日、取った資料共有フォルダ(確認済み)
役所調査のメモ訪ねた窓口、聞いた内容、取った資料、注意点営業が調査の後に書くメモ

質を決めるのは、役所調査のメモの「窓口」と「調査日」です。 「道路は42条2項」とだけ書かれたメモは、どこで確かめたのか、いつの話なのかが分からず、次の営業は同じ窓口を探し直します。 「○○市 建築指導課で道路台帳を閲覧(調査日)。前面道路は2項道路、中心後退あり」と書く様式にします。

地番は検索の文に入れますが、絞り込みには使いません。 同じ地番の過去の記録はまれで、引きたいのは同じ町丁目・同じ道路に面した記録だからです。

Step3

データの取得方法を決める

確認済みの書面は、個人情報を除いて Cloud Storage に置き、データストアに取り込みます。 メタデータは JSONL の各行に id、structData、content.mimeType、content.uri を書きます。

取るものどこから何に使うか
市区町村、町丁目メタデータ city/town絞り込みとブースト
道路の識別(路線名、道路番号など)メタデータ road_id同じ道路に面した記録を寄せる
物件の種別メタデータ property_type表示(マンションと戸建てで項目が違う)
文書の種類(重説/調査報告/役所メモ)メタデータ doc_kind2回の呼び出しを分ける
調査日メタデータ surveyed_at新しい記録を上位に、古い記録を見分ける

絞り込みは市区町村で、町丁目と道路はブーストで寄せます。 項目を索引可能にしておけば、city: ANY("city_a") AND doc_kind: ANY("disclosure", "survey_report") のように絞り込めます。町丁目まで絞り込むと、隣の町丁目にある同じ道路に面した記録が落ちます。 そこで town: ANY("town_3") と road_id: ANY("r_0123") を条件にした boostSpec に正の値を与え、同じ町丁目・同じ道路の記録を上に寄せます。

新しい調査ほど上に出すには、日付のブーストを使います。 ブーストの指定には日付の属性による寄せ方があり、検索した時点からの経過期間を 7D のような形式で指定できるとされています。surveyed_at を使い、1年以内の記録を強く、5年を超える記録を弱く寄せます。 古い記録を消すのではなく、下に置きます。

データストアは、レイアウト パーサーとチャンク分割を有効にして作ります。 includeAncestorHeadings を有効にすると、文書の途中のチャンクにもタイトルと見出しが付きます。重要事項説明書の「私道に関する負担」の段落だけが引かれても、どの物件のどの項目かが分かるようにします。

見られる人は、売買仲介の営業と宅地建物取引士に限ります。 個人情報を除いた版でも、どの地域でいつ調査したかは営業の情報です。メタデータの acl_info に売買仲介のグループの group_id を書き、賃貸管理や他の部署の社員の検索には出さないようにします。アクセス制御はデータストアを作るときにしか有効にできず、Cloud Storage からの定期的な取り込みでは使えないため、確認が終わるたびに取り込みを実行します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 個人情報を除く … 売主・買主の氏名・住所・連絡先、価格、ローンの情報を、取り込む版から消します
  2. 所在地をそろえる … 町丁目の表記(「三丁目」「3丁目」)をそろえ、市区町村と町丁目のコードを付けます
  3. 道路の識別を付ける … 調査報告書に書かれた路線名や道路番号を road_id に入れます。無いものは空のままにします
  4. 調査日を付ける … 調査報告書の調査日を surveyed_at に入れます。調査日の無い記録は取り込みません
  5. 役所調査のメモを清書する … 手書きのメモは、窓口・内容・資料・調査日の様式に写してから取り込みます
  6. 項目の区分を付ける … 調査結果の項目ごとに、地域で共通/道路ごと/物件ごとの区分を付けます

1番目を最優先にしてください。 重要事項説明書には、売主の氏名と住所、取引の価格が入っています。検索に入れれば、別の店舗の営業の画面に、自分の顧客ではない人の取引が出てきます。 取り込むのは、調査結果の項目だけを抜き出した版にします。

2番目の所在地のそろえ方は、ブーストの効き方を決めます。 「三丁目」と「3丁目」、「大字」の有無が混ざったままだと、同じ町丁目の記録が別の町として扱われ、上位に寄りません。 市区町村と町丁目は、表記ではなくコードで持たせます。

6番目の区分は、項目の種類で機械的に決めます。 用途地域・建ぺい率・容積率・下水道の処理区域は「地域」、道路の種別・幅員・中心後退は「道路」、私道の持分・越境・引込管の口径は「物件」。営業に1件ずつ判断させず、項目の名前から決める表を作ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、同じ地域の過去の調査結果を、項目ごとに調査日と窓口付きで並べることです。 今回の物件の調査結果を書かせることはしません。

返すもの中身根拠
法令上の制限の過去の結果用途地域、地区計画、埋蔵文化財の包蔵地などの記載と調査日重要事項説明書・調査報告書
道路の過去の結果道路の種別、幅員、中心後退、私道の負担の記載と調査日同上
インフラの過去の結果飲用水・電気・ガス・排水の整備の状況の記載と調査日同上
確かめた窓口と資料項目ごとに訪ねた窓口、閲覧・取得した資料役所調査のメモ

4行目の窓口と資料が、経験の浅い営業にいちばん効く部分です。 「○○市では、道路の種別は建築指導の窓口で道路台帳を見る」「下水の引込みは下水道の窓口で台帳の写しを取る」。市ごとの窓口の分かれ方は、過去のメモにしか書かれていません。

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
includeCitations有効結果と窓口に出典と調査日を付ける
ignoreLowRelevantContent有効関係の無い地域の記録で答えない
filter市区町村、文書の種類同じ市の記録だけを引く
boostSpec同じ町丁目・同じ道路、新しい調査日近くて新しい記録を上位に出す
maxReturnResults10(既定値。最大25)近い記録が入る数にする
preamble下の指示答え方の規則を与える
させないこと理由
今回の物件の調査結果を書く調査日の違う記録は、今回の結果ではない
重要事項説明書の文案を作る書面の記載は、今回の調査の結果から宅地建物取引士が書く
近くの物件の結果から今回を推定する道路も私道の負担も、物件ごとに違う
法令の解釈制限の内容は、窓口と法令で確かめる
記録に無い窓口の補完市ごとに窓口の名前が違う

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 隣の物件の前面道路が2項道路と書かれていると、モデルは「この物件の前面道路も2項道路と考えられます」と書きます。同じ通りでも、角を曲がれば別の道路で、種別も違うことがあります。 過去の結果は、どの物件の記録かを添えて並べるだけにします。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます(1回目の調査結果の呼び出し用)。

あなたは不動産の売買仲介の会社で、物件調査を始める営業に、
同じ地域で過去に行った調査の記録を示す担当です。
読むのは、これから役所と各事業者の窓口で調査する営業です。

【前提】
検索の文の最初に、市区町村、町丁目、地番、物件の種別、前面道路の手がかりが並んでいます。
検索の対象は、社内で確認が終わった過去の重要事項説明書と調査報告書だけです。

【答え方】
1. 法令上の制限、道路と私道の負担、飲用水・電気・ガス・排水 の3つに分けて書いてください。
2. 各項目について、過去の記録の所在地(町丁目まで)、調査日、記載の内容を、
   記録の言葉のまま書いてください。
3. 同じ項目で記録ごとに内容が違うときは、両方を調査日と一緒に書いてください。

【厳守事項】
- 検索結果の記録に書かれていることだけで答えてください。
  一般的な法令の知識や、他の市の例で補わないでください。
- 今回の物件について、「〜と考えられます」「〜の可能性が高い」と書かないでください。
  過去の記録の所在地と調査日を書き、今回の物件の結果としては書かないでください。
- 調査日を省略しないでください。
- 重要事項説明書に書く文章を作らないでください。
- 関係する記録が見つからないときは、
  「この地域の過去の調査記録が見つかりません。すべての項目を窓口で確かめてください」
  とだけ書いてください。

2回目の窓口の呼び出しでは、【答え方】を「項目ごとに、訪ねた窓口の名前、閲覧・取得した資料、注意点を、メモの言葉のまま調査日と一緒に書く」に替えます。 【厳守事項】に「メモに無い窓口の名前を書かない」を足します。

「今回の物件について『考えられます』と書かない」を名指しで禁じるのが、この指示の要です。 推定を禁じるだけでは、モデルは「近隣の例では」と前置きして同じことを書きます。禁じるのは、過去の記録を今回の物件に当てはめる文の形そのものです。

「記録ごとに内容が違うときは両方を書く」も外せません。 同じ町丁目で用途地域の記載が違えば、途中で変更があったか、町丁目の中で境界があるかのどちらかです。 どちらかに丸めると、調査で確かめるべき点が消えます。

Step7

出力形式を固定する

2回の応答を、中継プログラムが次の形に整えて、画面と記録に渡します。

{
  "request_id": "",
  "city": "",
  "town": "",
  "lot": "",
  "property_type": "land | house | condo",
  "items": [ { "item": "", "category": "legal_restriction | road | utilities",
               "scope": "area | road | parcel",
               "past_results": [ { "text": "", "town": "", "surveyed_at": "", "uri": "" } ],
               "conflict": false,
               "counters": [ { "office": "", "material": "", "note": "", "surveyed_at": "", "uri": "" } ] } ],
  "status": "found | no_record | partial"
}

1つ目の理由は、scope で調べ方を分けられることです。 area の項目は過去の結果が手がかりになり、parcel の項目は過去の結果があっても「今回の物件で一から確かめる」と画面で強調します。 区分は第7章の前処理で決めた表から付け、AIに判断させません。

2つ目は、conflict で食い違いを目立たせられることです。 同じ項目で過去の記録ごとに内容が違えば true にし、画面の先頭に出します。 用途地域や道路の扱いが途中で変わった地域は、調査でいちばん注意が要る地域です。

3つ目は、counters で調査の段取りを組めることです。 項目ごとの窓口を集めれば、どの窓口に何の資料を取りに行くかの一覧になり、役所を回り直す手間が減ります。

4つ目は、surveyed_at を全部の結果に持たせることです。 画面では、調査日から1年を超える結果を灰色にします。古い結果ほど、今回の調査で変わっている見込みが高いからです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
検索の画面社内向けの画面物件の条件を受け、項目ごとの過去の結果と窓口を表示する
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し(2回)市区町村で絞り、町丁目・道路・調査日で寄せて探す
共有フォルダ確認済みの書面の読み出し個人情報を除いた版を作って取り込む
物件管理の基幹システム物件番号の参照検索の記録と物件を結びつける

基幹システムと重要事項説明書には書き込みません。 調査報告書と重要事項説明書は、これまでどおり営業が今回の調査の結果から書きます。画面の結果を書面に貼り付ける機能も作りません。 貼り付けができると、調査日の違う結果が書面に入ります。

Step9

人が確認する

営業は、すべての項目を、今回あらためて窓口で確かめます。 画面に出るのは過去の記録で、今回の調査の代わりにはなりません。

  1. 調査日を確かめる … 何年前の結果かを見ます。1年を超えるものは変わっている前提で調べます
  2. 食い違いのある項目を先に調べる … conflict の項目は、変更の時期か境界を窓口で確かめます
  3. 物件ごとの項目を一から調べる … parcel の項目は、過去の結果を参考にもしません
  4. 窓口の名前を確かめる … 組織の改編で窓口の名前が変わっていることがあります

4番目は、役所調査のメモに返します。 窓口の名前が変わっていたら、今回のメモに新しい名前を書きます。次の営業の画面は、そのメモで正しくなります。

目標は、120件をならして1件18分です。 出典を開いて確かめ、調査の段取りを組む時間の平均です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
その市の記録が無いno_record を返し、「すべての項目を窓口で確かめる」と表示する
町丁目の記録が無く、隣の町丁目の記録だけある隣の町丁目の記録として所在地を明示して出す
同じ項目で記録ごとに内容が違うconflict を付け、両方を調査日と一緒に出す
道路の識別が分からない道路のブーストを使わず、町丁目だけで寄せる
マンションの1室で、敷地の項目が建物全体の話になる同じ建物の過去の記録を寄せ、管理に関する項目は管理会社への確認として分ける
手書きのメモが読めない取り込みの前に清書を担当に頼む
個人情報を除いていない書面が取り込まれたその文書をデータストアから消し、手順を見直す
検索の呼び出しが失敗する「確認できませんでした」と表示し、店長に相談するよう示す

7行目は、起きる前提で備えます。 取り込みの手順で1件でも見落とせば、別の店舗の営業に他人の取引が見えます。 取り込む版を作る処理で、氏名と価格の欄が空であることを確かめてから置きます。

Step11

記録を残す

  • 物件の条件、日時、営業の所属店舗
  • 中継プログラムが組み立てた絞り込みとブーストの式
  • answer メソッドの応答の全文(2回分。出典、調査日、回答しなかった理由)
  • 項目ごとの区分と conflict の結果
  • 今回の調査で、過去の結果と違っていた項目

最後の行は、地域の変化の記録になります。 過去の結果と今回の結果が違った項目を数えれば、どの地域でどの項目が変わりやすいかが分かり、調査日の灰色の基準を見直せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:近くの記録を手元のAIサービスに読み込ませ、過去の結果と窓口を聞く / 1つの地域の記録の要約
半自動化:上記+データストアを作り、各店舗の店長が営業の依頼を受けて検索画面で引く / 店舗をまたいだ検索、出典と調査日付きの結果
本格構成:上記+営業が画面で直接引き、町丁目・道路・調査日のブースト、項目の区分、食い違いの印まで出す / 所在地の入力から、調査の段取りの一覧まで

半自動化で、1件45分が28分程度になります。 他の店舗に電話する時間は消えますが、店長に頼んで引いてもらう形が残ります。本格構成で18分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、窓口と資料の一覧が項目ごとにそろい、先輩に聞く時間が減るからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の期間に、個人情報を除く手順の抜けと、調査日の無い記録が見つかります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
40 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
45 分
1件あたり導入後時間
18 分
現在  120件 × 45分 ÷ 60 = 90 時間/月
導入後 120件 × 18分 ÷ 60 = 36 時間/月
月間削減時間
54h
削減率
60%
年間削減時間
648h
年間金額換算(時間単価3,500円)
227万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 中古の戸建て・土地・マンションの売買仲介を、同じ市区町村で長く続けている不動産会社。店舗が複数あり、同じ地域の物件調査の記録が店舗や担当ごとに散らばっている場合。経験の浅い営業が、役所のどの窓口で何を確かめればよいかを先輩に聞きながら調査している場合。過去の重要事項説明書と役所調査のメモを電子で残している場合。
向いていない
  1. 扱う地域が毎回違い、同じ地域の過去の記録がほとんど無い場合。新築の分譲で、物件ごとの調査が開発の段階でまとめて済んでいる場合。過去の調査結果をそのまま今回の重要事項説明書に写したい場合(法令上の制限や道路の扱いは変わるため、この構成は調査の手がかりを示すだけで、役所での確認の代わりにはなりません)。

07最小構成で試す方法

  1. 1つの市の、同じ町丁目か近い町丁目の過去の調査報告書と役所調査のメモを10件集める(氏名・住所・価格を消した版にする)
  2. 手元のAIサービスに、所在地と調査日が分かるファイル名で読み込ませる
  3. その近くで最近媒介を受けた物件を1件選び、「添付の記録だけを根拠に、法令上の制限・道路と私道の負担・インフラの過去の調査結果を、所在地と調査日付きで並べ、確かめた窓口を示してください。今回の物件の結果として書かないでください」と指示する
  4. 出てきた内容を、その物件を実際に調査した結果と突き合わせる
出てきた内容判断
実際の調査で訪ねた窓口と、確かめた項目が出たデータストアの構築に進む
「この物件も〜と考えられます」と書いた指示の書き方で直る。構成は有効
窓口がほとんど出ない役所調査のメモの様式を作るのが先。 検索の問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、窓口と調査日がメモに残っていなかったと分かったということです。 様式を作り、次の調査から書き始めてください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
過去の結果が今回の結果のように読まれる調査日を必ず表示し、今回の物件に当てはめる文を名指しで禁じる
近くの物件の道路の種別を今回に当てはめる道路は road の区分で、物件の所在地を添えて並べるだけにする
他人の取引が別の店舗に見える氏名・住所・価格を消した版だけを取り込み、置く前に確かめる
町丁目で絞って隣の同じ道路が落ちる絞り込みは市区町村、町丁目と道路はブーストで寄せる
古い記録が上位に来る調査日のブーストで新しい記録を寄せ、1年を超えるものを灰色にする
窓口の名前が古い今回のメモに新しい名前を書き、取り込む
画面の結果を書面に写す貼り付けの機能を作らず、今回の調査の結果から書く
町丁目の表記ゆれで寄せが効かない所在地を表記ではなくコードで持たせる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、過去の記録を今回の調査の代わりにしたときに起きます。 調査日の表示と、当てはめの禁止で防ぎます。

3行目は、仲介の会社に特有の失敗です。 同じ地域で別の店舗が同じ顧客と競っていることもあり、取引の価格が見えれば、それだけで顧客との関係の問題になります。

最後の2行は、運用が始まってから効いてきます。 窓口の名前や所在地の表記が古いままだと、画面の結果が少しずつ当てにならなくなり、営業は先輩に聞く元のやり方に戻ります。 今回のメモで直す運用を、最初から決めておきます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 過去の重要事項説明書と調査報告書の、法令上の制限・道路・インフラの調査結果、役所調査のメモです。売主・買主の氏名・住所・連絡先、取引の価格、ローンの情報は取り込みません。

  1. 個人情報と価格を除いてから取り込む … 取り込んでから伏せるのではなく、取り込む前の版から消します
  2. 今回の調査の代わりにしない … 重要事項説明書の記載は、今回の調査日の結果から宅地建物取引士が書きます
  3. 調査日を必ず表示する … 古い結果であることが、画面で分かるようにします
  4. 法令の解釈をさせない … 制限の内容は、窓口と法令の原文で確かめます
  5. 書面に書き込まない … 画面の結果を重要事項説明書に貼り付ける機能を作りません

誤りが起きた場合のリスクは、古い結果が重要事項説明書に入ることと、他人の取引が別の店舗に見えることの2つです。 前者は調査日の表示と当てはめの禁止で、後者は取り込む前の版で防ぎます。どちらも、AIの回答の文ではなく、取り込みと表示の規則で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:役所調査のメモの様式を作る

窓口・聞いた内容・取った資料・調査日の欄を持つ様式を作り、今月の調査から書き始めます。 あわせて、調査項目を「地域/道路/物件」に分ける表を作ります。

2週目:1つの市で試す

1つの市の近い町丁目の記録を10件、個人情報を消して手元のAIサービスに読み込ませ、最近の物件1件で過去の結果と窓口を聞きます。「この物件も〜と考えられます」と書いていないかを最優先で見ます。

3週目:個人情報を除いた版の作り方を決める

重要事項説明書の様式ごとに、消す欄を決めます。消したあとの版を、店長が数件ずつ目で確かめます。

4週目:データストアを作る

1つの市の直近3年の確認済みの書面を取り込みます。店長が検索画面で使い、営業の依頼に答えてみます。

2か月目: 中継プログラムと検索の画面を作り、1つの市の店舗で試します。過去の結果と今回の結果が違った項目を数えます。3か月目以降: 3つの市の全店舗に広げ、1件45分が何分になったかを実測します。調査のたびに役所調査のメモが取り込まれるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
宅地建物取引業法第35条第1項が、契約の成立までに宅地建物取引士をして説明させる事項として、登記された権利(第1号)、都市計画法・建築基準法その他の法令に基づく制限に関する事項の概要(第2号)、私道に関する負担に関する事項(第3号)、飲用水・電気・ガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(第4号)などを挙げていることe-Gov 法令API: 宅地建物取引業法 第35条2026-10-06
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの includeCitations、ignoreLowRelevantContent、preamble、filter、検索の指定の boostSpec。maxReturnResults の既定値が10・最大25であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-06
絞り込みの ANY()、AND/OR/NOT、項目を索引可能にする必要があることGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-06
ブーストの条件に絞り込みの式を使い、値が −1〜1 の範囲であること。日付の属性による寄せ方で、検索した時点からの経過期間を 7D のような形式で指定できることGoogle Cloud: Boost search results2026-10-06
レイアウト パーサーがスキャンした文書にOCRをかけ、表・見出しを検出すること。includeAncestorHeadings で見出しをチャンクに付けられることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-06
Cloud Storage から取り込むときのメタデータの JSONL(id、structData、content.mimeType、content.uri)。定期的な取り込みではデータソースのアクセス制御が使えないことGoogle Cloud: Create a search data store2026-10-06
データソースのアクセス制御で acl_info に group_id を書いて閲覧の範囲を限れること。データストアの作成時にしか有効にできないことGoogle Cloud: Use data source access control2026-10-06

重要事項説明書の記載と法令の解釈は、宅地建物取引士と各窓口で確かめてください。 本記事は e-Gov と Google Cloud の公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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