既存顧客の別部署に広げる方法|社内の紹介をAIで探す

「既存のお客様の中に、うちの製品を使えそうな部署がほかにもありそうだけれど、どう入り込めばいいのか分からない」「導入してくれた担当者に紹介をお願いしたいが、図々しいと思われないか心配だ」。法人向けの営業やカスタマーサクセスの担当者が抱えやすい二つの迷いです。前者は探し方の、後者は頼み方の迷いで、どちらも手順が決まれば軽くなる種類のものです。顧客の中で広げる動きは、押しの強さの勝負ではありません。本当は、導入部署の成果を、隣の部署が自分の課題として受け取れる形に運ぶ仕事です。この記事では、1部署で定着した製品を別部署へ広げるまでの流れを一つのシナリオに沿って追い、候補の探し方、紹介の頼み方、別部署向けの話の組み直し、AIに任せる範囲を整理します。
カメ先生顧客の中で広げる動きは、英語圏の法人営業では「ランド・アンド・エクスパンド」と呼ばれているよ。まず一つの部署に着地して、そこで出た成果を足場に、同じ課題を持つ隣の部署へ広げていく考え方なんだ。
カメ子同じ会社の中なら、話は早く進みそうに聞こえますね。
カメ先生取引の窓口が同じでも、予算も課題も部署ごとに別なんだ。だから導入部署の担当者の紹介が効くし、頼む時期と頼み方で結果が変わる。AIに任せるのは記録から部署名を拾うことや公開情報の下調べ、文面の下書きまで。誰にいつ頼むかは人が決めるよ。
カメ子探す作業と頼む判断を、分けて考えるのが要になるわけですね。
- 別部署は、同じ会社でも予算と課題が別の「隣に推薦者がいる新しい顧客」として扱う
- 候補は会話記録の他部署名・公開情報・利用データ・問い合わせの社名の重なりの四つから探し、二つ以上重なる部署を先にする
- 紹介は導入部署で成果が語られてから、断りやすい形で頼み、転送できる材料を渡す
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「顧客の中で広げる」とはどういう動きか
英語圏の法人営業では、既存顧客の中で導入の範囲を広げる動きを「ランド・アンド・エクスパンド」と呼びます。まず顧客企業の中の一つの部署やチームに小さく導入し(着地)、そこで成果を出してから、同じ課題を持つ別の部署や拠点へ広げていく(拡大)という考え方です。最初の導入を、終点ではなく足場として扱うところに特徴があります。
似た言葉にアップセルとクロスセルがあります。こちらは導入済みの部署に上位の区分や別の製品を勧める動きで、相手は同じ部署のままです。この記事で扱うのは、相手そのものが変わる動きです。同じ会社でも、別部署には別の責任者、別の予算、別の課題があります。海外の解説には、別部署は、隣に推薦者がいる新しい顧客のようなものという言い方も見られます。
国内の営業の現場でも、「横展開」「他部署展開」と呼んで昔から行われてきた動きです。ただ、多くは担当者の人脈と偶然に頼っていて、誰が二つ目の部署を探す役なのかが決まっていないことがよくあります。海外の解説でも、この動きがうまくいかない一番の理由は最初の契約の出来ではなく、二つ目を探す責任者が決まっていないことだと指摘されています。
新規開拓より進めやすいと言われる理由と、その限界
既存顧客の別部署は、新規開拓より成約しやすいと言われます。理由として挙げられるのは、同じ社内に使っている部署があり、その成果を証拠として示せること、取引の口座や基本契約、情報の取り扱いの審査がすでに済んでいる場合があることです。相手の側から見ても、社内の別部署が使って困っていない製品は、まったく知らない会社の製品より検討の入口が低くなります。
ただし、どれだけ成約しやすいかを示す数字は、海外の営業支援の会社が出しているものが多く、調べ方も対象もまちまちです。自社の目標にそのまま置くのは避けたほうが無難です。また、取引の口座が共通でも、部署ごとに予算の枠と決裁の順路が違うのが普通です。基本契約が一本でも、稟議は部署ごとに一からになることは珍しくありません。
もう一つの限界は、導入部署との関係に寄りかかりすぎることです。担当者一人を通じてしか顧客とつながっていない状態は、その人が異動した時点で止まります。海外の解説でも、一人の推薦者だけに頼ると拡大が止まりやすく、最初の導入の段階から、複数の人と関係を作っておくことが勧められています。紹介を頼むのは、その複数の関係づくりの一つの手段と位置づけると無理がありません。
シナリオの前提:1部署で製品が定着するまで
ここからは、架空の例を使って流れを追います。自社は、商談の記録を整理して要点をまとめる営業支援の製品を提供しています。顧客は従業員数百人規模の部品メーカーで、最初に導入したのは営業企画部の一つのチームです。導入から半年がたち、チームの全員が毎週使うようになり、商談の記録を書く時間が減ったという声が定例の場で出るようになりました。
この段階で自社の担当者が持っている材料は、利用状況のデータ、定例の議事録、サポートへの問い合わせの記録、そして導入部署の担当者との雑談の記憶です。どれも別部署へ広げるための手がかりを含んでいますが、日々の運用の記録として散らばっていて、広げる目的で読み直されたことはありません。
このシナリオを、以降の節では四つの場面に分けて進めます。定着を確かめる、別部署の候補を探す、導入部署の担当者に紹介を頼む、別部署との初回の場を持つ、の順です。順番を飛ばすと、どの場面でも無理が出ます。とくに、定着を確かめないまま紹介を頼むのが、いちばんよくある失敗です。
場面1 広げる前に「定着」を確かめる
別部署に話を持っていく前に、導入部署で本当に定着しているかを確かめます。海外の解説では、利用が一定の水準に達したこと、成果の物差しで効果が示せたこと、推薦者が次のチームに紹介する用意があること、予算の時期が合うことが、拡大に進む合図として挙げられています。合図が出る前に押し込むと、顧客の側に抵抗が生まれるとも書かれています。
架空の例に当てはめると、確かめる項目は次の四つになります。
- チームの大半が、誰にも言われずに毎週使っている
- 導入前と比べた変化を、数字か具体的な場面で言える
- 導入部署の担当者が、製品の良さを自分の言葉で説明できる
- 未解決の不具合や、更新をめぐる懸念が残っていない
四つの中でいちばん大事なのは三つ目です。紹介は、導入部署の担当者が社内の同僚に向けて行うものなので、担当者自身が製品の価値を説明できなければ、紹介のしようがありません。自社の担当者が説明できることと、顧客の担当者が説明できることは別です。定例の場で「隣の部署に説明するとしたら、どう言いますか」と聞いてみると、定着の度合いがよく分かります。
場面2 候補の探し方1 会話記録に出てくる他部署の名前
別部署の候補を探すとき、最初に見るのは自社の手元にある会話の記録です。定例の議事録、サポートへの問い合わせ、商談の記録には、導入部署の担当者が何気なく口にした他部署の名前が残っています。「品質保証のほうでも、似たような報告書の山に困っているみたいで」「海外営業は別の仕組みを使っている」といった一言です。
こうした一言は、書き留めた本人も忘れていることが多く、記録の中に埋もれています。ここはAIの使いどころです。議事録や問い合わせの記録をまとめて渡し、他部署の名前と、その部署について語られた課題を抜き出させます。次のように頼むと、根拠の行が付いた一覧が返ってきます。
次の議事録と問い合わせの記録から、導入部署(営業企画部)以外の部署名を抜き出してください。
各行に、部署名・その部署について語られた課題(原文に近い言葉で)・根拠になった記録の日付と発言の一文を書いてください。
記録に書かれていない推測は加えないでください。
個人の名前は書かず、役職か「担当者」と書いてください。
返ってきた一覧は、あくまで候補です。AIは文脈を取り違えて、取引先の別の会社の部署名を拾ったり、冗談まじりの発言を課題として書いたりすることがあります。一覧の一行ずつについて、根拠の行を人が読んで確かめるのが前提です。確かめた結果、同じ部署の名前が複数の記録に出てくるなら、その部署は有力な候補になります。
渡す記録には、顧客の社内の事情や個人の名前が含まれます。使うAIの契約で入力が学習に使われないか、保存の期間はどうかを先に確かめ、社内の規程で認められた道具だけを使います。名前を伏せてから渡せば、抜き出しの結果にも名前が残りません。
候補の探し方2 公開情報で組織と重点を下調べする
二つ目の手がかりは、顧客企業が自ら公表している情報です。上場している会社なら、統合報告書や中期経営計画、決算説明の資料に、組織の構成や重点的に取り組む事業、業務の改革の方針が書かれています。会社のサイトの組織図や、報道向けに出される人事の発表からは、部署の名前と役割、新しくできた部署が分かります。
たとえば中期経営計画に「品質保証の業務の効率化」や「海外事業の拡大」が重点として挙がっていれば、該当する部署に予算がつきやすい時期だと推し量れます。新しい部署ができたという発表は、その部署がまだ仕組みを整えている最中だという合図でもあります。こうした資料は分量が多いので、AIに要約させ、部署と重点施策の対応を表にさせ、出典の資料名と箇所を書かせると、下調べが速くなり、確かめ直すのも簡単になります。
ここで線を引いておくことがあります。調べるのは会社の組織と方針であって、個人ではありません。人事の発表に出てくる人の名前をきっかけに、その人の経歴や私的な投稿までAIで集めるのはやめます。公開されている情報であっても、個人に関する情報であることに変わりはありません。集めた情報が相手に知られたときに、信頼を失う使い方は避けるべきです。
相手の部署の責任者が誰かを知りたいときも、導入部署の担当者に聞けば済むことがほとんどです。紹介を頼む流れの中で自然に分かることを、先回りして外から集める必要はありません。
候補の探し方3 利用状況と問い合わせ記録の社名の重なり
三つ目は、自社の側のデータです。製品の利用状況を見ると、導入部署以外の人が使っていることがあります。導入部署の担当者に誘われて試している人や、会議で画面を見て自分でも登録した人などです。利用者の所属の欄や、メールアドレスの形から、別部署の利用者がいるかを確かめられます。
問い合わせや資料請求の記録も見ます。顧客企業と同じ社名で、導入部署とは違う部署から資料請求が来ていれば、その部署はすでに関心を持っています。展示会で名刺を交換した記録や、ウェビナーの参加者の一覧に同じ社名が出てくることもあります。社名で記録を突き合わせるだけで、見落としていた接点が見つかることは少なくありません。
ただし、この手がかりを使うときは注意が要ります。資料請求をした人に、いきなり「御社の営業企画部で導入いただいていて」と連絡すると、相手は自分の行動が社内の別の人の話とつなげて見られていると感じるかもしれません。資料請求への対応は通常どおりの流れで行い、導入部署の話は相手から聞かれたときか、導入部署の担当者の了承を得てから出します。自社のデータで分かったことと、相手に言ってよいことは別です。
四つの手がかりを並べて候補を絞る
四つの手がかりは、それぞれ分かることと限界が違います。表にまとめ、候補の部署ごとにどの手がかりが当てはまるかを見ていきます。
| 手がかり | 分かること | 限界と注意 |
|---|---|---|
| 会話記録に出る他部署の名前 | 同じ課題を抱える部署と、その課題の中身 | 発言の一部分であり、部署の正式な方針とは限らない |
| 公開情報(組織図・人事発表・中期計画) | 部署の役割、重点施策、新しくできた部署 | 会社の組織と方針に限り、個人の経歴や私的な情報は集めない |
| 利用状況のデータ | すでに試している別部署の利用者 | 利用者本人の了承なく営業の材料にしない |
| 問い合わせ・資料請求の社名の重なり | 関心を持ち始めた部署 | 導入部署とのつながりを勝手に持ち出さない |
候補を絞るときは、手がかりが二つ以上重なる部署を先にします。会話記録に名前が出て、中期計画でも重点に挙がっている部署は、課題と予算の両方がそろっている見込みが高いからです。あわせて、導入部署との距離も見ます。同じ本部の中の隣の部署なら、担当者どうしが顔見知りで紹介しやすいことが多く、離れた拠点の部署は紹介の糸が細くなります。
候補は、多くても二つか三つに絞るのが現実的です。一度に何部署も紹介を頼むと、導入部署の担当者の負担が大きくなり、どれも中途半端に終わります。アカウントプランを作っている会社なら、関わる部署を書く欄に候補を書き足し、誰がいつ、どの手がかりで確かめたかを残しておきます。担当が替わっても、探し直す必要がなくなります。
場面3 紹介を頼む時期は成果が出てから
候補が決まったら、導入部署の担当者に紹介を頼みます。最初に考えるのは時期です。海外の解説では、最初の導入で四半期ほどのうちに成果を示し、それから拡大の話に進むことが勧められています。国内でも考え方は同じで、導入部署の中で、成果が担当者の口から語られるようになってからが頼みどきです。
反対に、避けたい時期もあります。次のような時期に頼むと、断られるだけでなく、導入部署との関係まで気まずくなりかねません。
- 導入の直後:担当者自身がまだ使いこなせておらず、勧める自信がない
- 不具合や問い合わせの対応が続いている最中:紹介より先に解決を求められる
- 更新や値上げの交渉の最中:紹介が交渉の材料のように見える
- 担当者の繁忙期や、異動が近いと分かっている時期:頼まれても動けない
時期を見極める一番確かな方法は、定例の場で成果を一緒に振り返ることです。導入前と比べて何が変わったかを担当者と話し、担当者の口から「ほかの部署にも使えそう」という言葉が出れば、頼む準備はできています。出てこなければ、まだ早いか、担当者にとって紹介しにくい事情があるかのどちらかです。頼む前に、担当者の言葉を待つくらいの構えでちょうどよいでしょう。
紹介を頼む手順と頼み方
頼み方は、次の五つの段取りで進めます。
導入前と比べた変化を、数字と具体的な場面で担当者と確かめます。紹介の材料は、この振り返りから生まれます。
会話記録で拾った他部署の課題が、今も続いているかを担当者に聞きます。自社の見立てを押しつけず、「以前こうおっしゃっていましたが」と記録の言葉で尋ねます。
「もしよろしければ」と前置きし、紹介しにくい事情があれば遠慮なく言ってほしいと添えます。
担当者が同僚に送るための短い紹介文と、成果をまとめた一枚の資料を用意します。
紹介先と会えたか、その後どうなったかを担当者に報告し、お礼を伝えます。
三つ目の段取りで大切なのは、相手が断る道を先に用意しておくことです。導入部署の担当者は、自社との関係を大事に思うほど断りにくさを感じます。断ってもよいと明言してから頼むと、担当者は本当の事情を話しやすくなります。社内で相手の部署との関係がこじれている、紹介して失敗したら自分の評価に響く、といった事情は、頼む側からは見えません。
五つ目の報告は、忘れられやすい段取りです。紹介した側は、その後どうなったかを気にしています。会えた、見送られた、検討が止まった、のどれであっても伝えることで、担当者は安心し、次の機会にも声をかけやすくなります。報告の場は、導入部署への支援の状況を確かめる定例に組み込んでしまうと、特別な連絡を増やさずに済みます。
頼む相手に手間をかけさせない材料
紹介を頼むとき、担当者に「どう説明すればいいか」を考えさせてはいけません。海外の解説でも、推薦者が社内に転送できる一枚の資料や、部署ごとに組み直した事例を用意することが勧められています。担当者の仕事は、中身を確かめて転送するだけにしておくのが理想です。
用意するのは二つです。一つは、担当者の名前で同僚に送れる短い紹介文です。三〜五行で、導入部署で何に使っているか、何が変わったか、なぜ相手の部署にも関係がありそうか、を書きます。もう一つは、成果をまとめた一枚の資料で、導入の目的、使い方、変化の数字か場面、相手の部署で考えられる使い方を並べます。紹介文の下書きはAIに任せられますが、担当者の口調と社内の言葉づかいに合っているかは、担当者に見てもらって直します。
気をつけたいのは、成果の数字の扱いです。導入部署の数字は、顧客の社内の情報です。一枚の資料に載せてよいか、どこまで具体的に書いてよいかは、必ず導入部署の担当者に確かめます。社内向けの資料だからといって、顧客の数字を自由に使ってよいわけではないので、了承を得た範囲を記録に残しておきます。了承が得られなければ、数字を外し、変化の場面だけで伝えます。
断られたときの引き方
紹介を頼んでも、断られることはあります。理由として多いのは、今は時期が悪い、相手の部署とあまりつながりがない、社内の事情で自分からは勧めにくい、の三つです。理由を深く問いただすのはやめ、担当者が言える範囲で聞いたら、すぐに引きます。
引き方は理由によって変えます。時期が理由なら、いつ頃ならよいかを担当者に聞き、その頃に改めて相談することだけを約束します。つながりが薄いなら、適任の人を教えてもらえるかを聞くか、別の候補の部署に切り替えます。社内の事情が理由なら、その部署への働きかけ自体をしばらく止めるのが安全です。担当者を飛び越えて相手の部署に直接連絡すると、担当者との関係を損ないます。
断られたことも記録に残します。いつ、どの部署について、どんな理由で断られたかが分かれば、同じ時期に別の担当者が同じ頼みごとをしてしまう事態を防げます。そして、断られた後も導入部署への支援の質は変えません。紹介してくれないから手を抜いた、と受け取られると、本来の取引まで危うくなるからです。
場面4 別部署との初回の場は話を組み直してから
紹介がかなって別部署との初回の場が決まったら、導入部署で話したことをそのまま繰り返さないようにします。同じ製品でも、部署が変われば解きたい課題が違います。営業企画部では商談の記録を書く時間が問題でしたが、品質保証の部署では、報告書の山から過去の似た事例を探す手間が問題かもしれません。導入部署の成果は証拠であって、提案そのものではありません。
初回の場は、提案よりも聞くことに重心を置きます。会話記録で拾った課題を仮説として持っていきつつ、相手の部署の業務の流れ、今使っている仕組み、困っている場面を聞き取ります。そのうえで、導入部署の例のうち相手の課題に近い部分だけを示します。海外の解説でも、部署ごとの優先事項に合わせて、同じ成果の見せ方を変えることが勧められています。
相手の部署には、別の予算と決裁の順路があります。初回の場で、検討を進めるなら誰が決めるのか、どの時期に予算が組まれるのかを聞いておくと、次の段取りが立てやすくなります。導入部署の担当者に同席してもらうかどうかは、担当者の負担と相手の部署との関係を見て、担当者と相談して決めます。同席してもらう場合も、話の主役は相手の部署の課題に置きます。
初回の場で関心が確かめられたら、次は相手の部署で小さく試す範囲を決めます。導入部署のときと同じく、まず一つのチームや一つの業務に絞り、相手の部署にとっての成功の物差しを、試す前に一緒に決めておくことが大切です。営業企画部では記録を書く時間が物差しでしたが、品質保証の部署なら、似た事例を探し当てるまでの時間や、見落としの件数かもしれません。物差しが導入部署の借り物のままだと、試した結果を相手の部署の言葉で説明できません。試す期間と、終わったときに誰が何を見て続けるかを決めるのかも、最初の打ち合わせで確かめておきます。
AIに任せる範囲と、人が決めること
この流れの中で、AIに任せられるのは三つです。会話記録からの部署名と課題の抜き出し、公開情報の下調べと要約、紹介を頼む文面や転送用の紹介文の下書きです。いずれも、根拠の行や出典をAIに書かせ、人が確かめる前提で使います。
反対に、AIに判断させないことを先に決めておきます。どの部署を候補にするか、誰に紹介を頼むか、頼んでよい時期か、断られた後にどう引くかは、顧客との関係を知っている人が決めます。関係の温度や社内の事情は記録に残っていないことが多く、AIは記録にないことを判断できません。人が確認する範囲を先に決めておくと、下調べの便利さを保ったまま、関係を損なう使い方を避けられます。
- AIが出した候補の一覧をそのまま営業の対象にする:根拠の取り違えに気づかず、関係のない部署に連絡してしまう
- 個人の経歴や私的な投稿をAIで集める:公開されていても個人に関する情報であり、知られれば信頼を失う
- AIの下書きをそのまま担当者に送る:担当者の口調や社内の言葉と合わず、転送されない
- 導入部署の成果の数字を了承なく資料に載せる:顧客の社内の情報を外に出したことになる
顧客管理のツールに付いているAIの機能を使う場合も、同じ線を引きます。入力した議事録や会話の記録がどこに保存され、提供会社の学習に使われるかどうかを、契約と設定で確かめてから使います。
よくある質問
導入部署の担当者を通さずに、別部署へ直接連絡してもよいですか?
資料請求など相手から接点があった場合は、通常の対応として連絡して構いません。ただし、導入部署の話を持ち出すのは担当者の了承を得てからにします。何の接点もない部署へ、導入部署の名前を使って連絡するのは避けます。担当者が知らないところで自分の名前が使われると、関係が損なわれます。
紹介のお礼に、謝礼を渡したほうがよいですか?
顧客企業の社員個人に謝礼を渡すと、相手の会社の規程に触れるおそれがあります。社内の紹介は、製品が会社の役に立つという理由で行われるものなので、お礼は結果の報告と、導入部署への支援の充実で示すのが無難です。何かを渡したい場合は、相手の会社の規程を担当者に確かめてからにします。
別部署に広げる役は、営業とカスタマーサクセスのどちらが持つべきですか?
会社によって違いますが、決めておくこと自体が大切です。海外の解説でも、最初に売った営業が拡大を担うのか、カスタマーサクセスに引き継ぐのかを決めないと、拡大の段階が起こらないと指摘されています。日々の接点が多いカスタマーサクセスが候補を探し、商談は営業が進める、という分担も考えられます。
候補が見つからないときは、どうすればよいですか?
導入部署での定着がまだ浅いか、製品が解く課題がその部署に固有のものである可能性があります。無理に候補を作らず、導入部署での成果を深めることに力を注ぎます。定例の場で、業務のどこで他部署と受け渡しがあるかを聞いておくと、受け渡しの相手の部署が後から候補として浮かぶことがあります。
まとめ
既存顧客の別部署へ広げる動きは、同じ会社の中でも予算と課題が別の「隣に推薦者がいる新しい顧客」を相手にする仕事です。まず導入部署で定着しているかを、担当者が自分の言葉で製品を説明できるかどうかで確かめます。候補は、会話記録に出る他部署の名前、公開されている組織図や中期計画、利用状況のデータ、問い合わせの社名の重なりの四つから探し、二つ以上重なる部署を先にします。紹介は成果が語られるようになってから、断ってよいと明言したうえで頼み、転送できる紹介文と一枚の資料を渡し、結果を必ず報告します。断られたら理由に応じて引き、担当者を飛び越えません。初回の場では、導入部署の成果を証拠として使いながら、相手の部署の課題に合わせて話を組み直します。AIに任せるのは部署名と課題の抜き出し、公開情報の下調べ、文面の下書きまでで、誰にいつ頼むかは人が決めます。まずは直近三か月の議事録を読み返し、導入部署以外の部署の名前がどこに出てくるかを拾うところから始めてみてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
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