取引先にAI不使用を求められたら|答えられる形の作り方

取引先にAI不使用を求められたら|答えられる形の作り方

生成AIと著作権の関係について、文化庁は2024年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、同年7月31日には当事者の立場ごとに整理した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公開しました。作る側だけでなく、受け取る側にも判断の材料が配られたということです。「この納品物にAIは使っていませんか」「今回はAIを使わないでください」——取引先から届く言い方は、おおむねこの2つの形をとります。同じ返事で足りそうに見えますが、聞かれている中身は違います。AI不使用を求められたときに要るのは、使っていませんと言い切ることではありません。本当は、どの工程で何を使い、どこまで人が確かめたかを示せる形を先に持っておくことです。この記事では、相手が何を心配しているのかの分け方から、約束できることとできないことの書き分けまでを整理します。


カメ先生カメ先生

AI不使用という言い方はね、1つの要求に見えて中身がばらばらなんだ。止めたいものが人によって違うんだよ。


カメ子カメ子

同じ言葉で、別のことを求めているということですか。


カメ先生カメ先生

そう。うちの情報を学習に使われるのが困るという人。雑な仕事をされるのが困るという人。権利でもめたくないという人。契約にそう書いてあるだけという人。この4つが同じ一文になって届く。


カメ子カメ子

どれなのかを先に確かめないと、答えがかみ合わないのですね。


この記事のポイント
  • 「AIは使わないで」という一文には、学習・品質・権利・契約の4つの別々の心配が混ざっている
  • 校正や翻訳や検索の要約にすでに組み込まれているため、一切使っていないと言い切れる工程は少ない
  • 答えられる形とは、工程ごとの利用の有無・人が確認した範囲・設定の証跡を先に持っていること

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目次

その一文は、4つのうちのどれを止めたいのか

最初にやることは、返事を書くことではありません。相手が止めたいものを4つに分けることです。1つ目は、渡した情報が外のモデルの学習に取り込まれることへの心配。2つ目は、AIに書かせたものをそのまま出されるのではないかという品質への疑い。3つ目は、他人の著作物が混ざって権利でもめることへの不安。4つ目は、相手の会社の契約や社内規程にそう書いてあるだけ、という場合です。

この4つは、必要な答えが全部違います。1つ目には設定と契約の話を、2つ目には確認の工程の話を、3つ目には出どころの話を、4つ目には条項の文言の話をしなければ届きません。分けずに「弊社では適切に管理しております」と返すと、4つのどれにも答えていない文章ができあがります。相手はもう一度、同じことを別の言い方で聞き直すことになり、やりとりが1往復増えます。

見当をつける材料はあります。情報システムや法務の名前で届いた質問なら1つ目か3つ目、発注の担当者から口頭で出たなら2つ目、購買や調達の書式に混ざっているなら4つ目であることが多い。ただし見当は見当なので、確かめる一文を先に返します。相手も自分の懸念を言葉にしていないことが多く、聞き返すこと自体が失礼になる場面はほとんどありません。

  • 聞き返すときは、自由に答えてもらう形にせず、心配の種類を選べる形で出す
  • 「差し支えなければ」の一言を添えると、答えたくない相手は答えなくてよい状態になる
  • 口頭で出た質問も、確認の内容は文章にして残す。後で回答の根拠になる

学習に使われるのが困る、という心配への答え方

いちばん多いのがこれです。中身は「渡した仕様書や顧客の情報が、外のモデルの学習に取り込まれ、いずれ他社への回答に出てくるのではないか」という心配です。契約条項の形でも現れ、条文例としては秘密情報、個人情報、営業情報、技術情報その他機密性を有する情報を、AIサービスへ入力またはアップロードしてはならないという書き方が使われます。

この心配には、事実で答えられます。法人向けの契約や、プログラムから呼び出す形での利用では、入力と出力をモデルの学習に使わないことを既定としているサービスが多い。個人向けのプランは既定で学習に使われる設定があり、利用者の側で外す設定が用意されています。つまり止めるべきなのはAIそのものではなく、学習に使われる契約での利用です。ここを分けて説明すると、相手の要求は満たせます。

ただし既定は動きます。あるコード補助のサービスでは、2026年4月24日から個人向けの一部プランで入力をモデルの改善に使う方針へ変わり、利用者側で外す設定が用意されました。法人向けのプランはこの変更の対象外です。一度確認したから大丈夫、では答えの根拠にならない。契約の種類と設定の状態を、答える時点で見直す必要があります。

抜け道になりやすいのは、契約していない経路です。会社として法人向けの契約を持っていても、担当者が個人の無料プランに本文を貼り付けていたり、ブラウザに入れた拡張機能や翻訳サイトを通していたりすれば、そちらの既定が効きます。確かめるべきなのは会社の契約ではなく、その納品物を作った人が実際に通した経路です。工程の一覧を作るときに、使ったサービスの名前だけでなく契約の種類まで書いておくと、聞かれたときにここで詰まらずに済みます。

品質を疑われている、という心配への答え方

2つ目は「AIが書いたものをそのまま納品されるのではないか」という疑いです。過去に中身の薄い納品物を受け取った経験があると、この形で出ます。条項としては、生成AIによる出力をそのまま納品してはならない(人による加筆・確認を必須とする)という書き方で契約書に入ることがあります。

この心配に「使っていません」と答えると、話がそこで終わります。相手が本当に欲しいのは、使ったかどうかではなく、人がどこまで見たかという情報だからです。使っていませんと答えた場合、では人はどこを見たのかという次の問いに答える材料が、こちらに何も残りません。

答え方は、確認の工程を言葉にすることです。誰が、何を基準に、どの範囲を見たか。事実と数字の裏取りを誰が担当したか。出典にあたったのは誰か。確認という言葉を、担当者名と基準と範囲の3つに分解して書くと、疑いは具体的な安心に変わります。これは、AIを使っていない仕事でも本来必要な情報です。

権利の不安|問われているのは、使ったかどうかではない

3つ目は権利です。発注側の懸念として挙げられるのは、第三者の著作物が意図せず混入すること、そして生成物の著作権の帰属が曖昧になることの2つです。ここは考え方が公表されているので、同じ資料を見ながら話せます。

文化庁が2024年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」は、著作権の問題を2つの段階に分けて整理しています。開発・学習の段階については著作権法第30条の4の非享受目的の利用に当たるかどうかが、生成・利用の段階については依拠性が問題になる、という並びです。納品物について問われているのは後ろの段階です。つまり相手が確かめたいのは、AIを使ったかどうかではなく、出てきたものが既存の著作物に似ていないかどうかということになります。

だから答えるべきは「使っていない」ではなく「似たものが混ざっていないかを確かめた」です。確かめ方は工程で決まります。引用した箇所に出どころを付けたか。図版や写真の権利者を確認したか。既存の記事や資料との重なりを見たか。この3つを誰がやったかを書けば、権利の不安への回答になります。

相手と同じ土台に立つために、2024年7月31日に公開された「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を使う手もあります。当事者の立場ごとに整理された資料なので、こちらが作った説明資料より通りがよい。自作の説明より、公表されている資料を指し示すほうが話が短く済みます

契約で禁じられている場合|条項の型を先に読む

4つ目は契約です。契約書に条項がある場合、相手の担当者が何を心配しているかとは無関係に、文言が実務を縛ります。まず条項の型を見分けます。実際に使われている条文例を並べると、対応できる幅が違うことが分かります。

条項の型典型的な文言こちらでできること
全面禁止型本件業務の遂行にあたり、生成AIツールを一切使用してはならない守れる工程と守れない工程を洗い出し、範囲の限定を相談する
事前承諾型相手方の事前の書面承諾なく、生成AIその他AIサービスを利用してはならない使う工程を列挙し、着手前に一括で承諾を取る
入力制限型秘密情報、個人情報その他機密性を有する情報を、AIサービスへ入力またはアップロードしてはならない入力しない運用を決めて守る。守りやすく、証跡も残しやすい
申告型生成AIを利用する場合は事前に発注者へ申告すること工程ごとの利用の有無を1枚にして提出する
出力確認型AIにより生成された成果物について、その正確性および適法性を自ら確認した上で利用する確認者と確認範囲を記録し、求められたら出す

実務で守りやすいのは、下の3つです。範囲がはっきりしていて、守ったことを記録で示せます。厄介なのは全面禁止型で、禁止される生成AIツールの範囲が定義されていないことがほとんどです。文章校正の機能や機械翻訳まで含むのか、下書きの作成だけを指すのかで、守れるかどうかが変わります。

相談の仕方は、条項を消してほしいと言うのではなく、範囲を書き足す提案にします。どの工程では使わない、どの機能は使うがそのまま納品しない、入力しない情報はこれ、という形です。契約の確認項目をまとめた公的な資料としては、経済産業省が2025年2月に「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」を公表しています。話の土台として名前を出せる資料があると、こちらの都合だけの要求には見えなくなります。

一切使っていません、と言い切れない理由

ここが実務でいちばん危ないところです。文章校正、機械翻訳、検索結果の要約、表計算の予測入力、画像の自動補正。これらはすでに日常の道具の中に組み込まれていて、利用者が意識して呼び出すものではなくなっています。ライティングやデザイン、翻訳の現場では、下書きの作成や一次校正、コードの補完といった用途で日常的に使われるようになったと指摘されています。

この状態で「一切使っていません」と答えると、事実として危うい約束をすることになります。しかも危なさの出方が悪い。後から1つでも使用が見つかったとき、その1つが問題になるのではなく、それ以外の説明まで信用されなくなるからです。断定した否定は、1か所崩れると全部が崩れます

代わりに言えるのは、限定つきの否定です。どの工程で何を使ったかを列挙し、それ以外では使っていないと書く。列挙があるぶん、範囲がはっきりします。限定つきの否定のほうが、無条件の否定より強いというのは感覚に反しますが、確かめられる形になっているからです。確かめられない断定は、相手にとって価値がありません。

工程で分けて答える|利用の有無を1枚にする

答えられる形の中心がこれです。納品物を作る工程を5つから8つに割り、各工程でAIを使ったかどうかと、人が何を確認したかを1枚に並べます。記事や資料の制作なら、次のような粒度になります。

工程AIを使ったか人が確認したこと
情報収集と下調べ使った(検索結果の要約)要約に出た事実を出典にあたって確認
構成と骨子使った(案出し)採用する構成は担当者が選定
本文の執筆一部使った(下書き)全文を担当者が書き直し、表現を確定
図表の作成使っていない元データとの一致を確認
数値と固有名詞使っていない原典にあたって再確認
最終確認使っていない担当者と責任者の2名で確認

粒度の決め方に注意が要ります。細かく書けば正確になりますが、全部を細かく残すと誰も書かなくなるのが実務です。1つの納品物につき1枚、行数は5から8に収める。工程の名前は社内で共通のものを使い、案件ごとに作り変えない。この2つを守ると続きます。

もう1つ。この1枚は納品時ではなく着手時に作ります。後から作ると記憶で書くことになり、正確でなくなるからです。着手時に作っておけば、途中で使う道具が変わったときに1行直すだけで済みます。聞かれてから作り始めると、そこで初めて工程を思い出す作業が発生します。返事が遅れること自体が、管理できていないという印象になります。

人が確認した範囲を、範囲として書く

「確認しました」は答えになりません。確認は、誰が・何を基準に・どこまで、の3つがそろって初めて情報になります。誰がは名前か役割で書く。基準は出典か社内の基準か相手の仕様書か。どこまでは全文なのか抜き取りなのか、抜き取りなら何割かを書きます。

ここで重要なのが、確認そのものをAIに任せないという線です。出てきた文章が正しいかどうかをAIに判定させると、判定の根拠が残りません。根拠が残らない確認は、聞かれたときに説明できない確認です。AIに任せてよいのは、確認すべき箇所の洗い出しまで。数字が出てくる箇所を抜き出す、出典の付いていない主張を挙げる、といった作業です。

洗い出しを頼むときも、頼み方を変えると使えるものになります。正しいかどうかを聞くのではなく、確認が要る箇所とその理由を列挙させる。根拠の形で返させると、人が確かめられる材料になります。判定の形で返させると、確かめようがない結論だけが残ります。この差は、取引先に説明するときにそのまま出ます。

学習に使われない設定の証跡を、先に取っておく

口頭で「学習には使われません」と言っても、相手には確かめようがありません。証跡として残せるものを、聞かれる前に集めておきます。集める対象は次の5つです。

  • 使っているサービスの名称と、契約しているプランの種類(個人向けか法人向けか)
  • 入力と出力を学習に使わない旨の記載がある規約のページと、こちらが確認した日付
  • 管理画面での設定の状態(誰が、いつ、どの項目を設定したか)
  • 個人の契約での業務利用を禁じているなら、その社内規程の条番号
  • 既定が変わったときに気づくための、確認の頻度と担当者

5つ目が抜けやすい項目です。前に書いたとおり、サービス側の既定は途中で変わります。日付の入っていない証跡は、いつの状態を示しているのか分からないので使えません。確認した日付を必ず添え、四半期に一度など頻度を決めて見直します。

提出の仕方も先に決めます。これらを常に納品物に添付する必要はありません。求められたら出せる状態にしておくことと、こちらから毎回出すことは別の判断です。毎回出すと相手の確認の手間が増え、かえって使いにくい取引先になります。求められたときに1営業日で出せる置き場所を決めておけば足ります。

約束できること・できないことを書き分ける

返答文で事故が起きるのは、ほぼ約束の範囲です。できることを書くのは簡単ですが、できないことを書かないまま出すと、書いていないことまで約束したと読まれます。まず、実務で約束できるものを並べます。

  • 提供を受けた資料や情報を、学習に使われる設定のサービスには入力しないこと
  • 出力をそのまま納品せず、担当者が確認・修正したうえで納品すること
  • 使った工程と使っていない工程を、求められたときに示すこと
  • 図版・引用・数値について、出どころを示せる状態にしておくこと
  • 使う道具や設定を変える場合に、その旨を事前に伝えること

逆に、約束できないものもはっきりしています。一切使っていないという断定、将来にわたって一切使わないという約束、第三者の権利を侵害しないという無条件の保証。1つ目は前に書いたとおり、道具の側に組み込まれているため確かめようがありません。2つ目は、ソフトの更新で機能が追加されると守れなくなります。3つ目は、AIの有無にかかわらず誰にも約束できないものです。

書き方は、できないことを先に、できることを後に置きます。「〜については保証しかねますが、〜は実施しています」の順です。逆にすると、後半の否定だけが記憶に残ります。できないことを先に書いたほうが、後の紛争は減ります。相手は約束の範囲を知りたいだけで、全部を約束してほしいわけではないことが多いからです。

返答文を組み立てる手順

ここまでの材料を、実際の返事にする順番です。5つの段に分かれます。

STEP1
何を聞かれているのかを確かめる

学習・品質・権利・契約の4つのどれなのかを、相手の言葉で確認します。見当がついていても、確認の一文を挟みます。ここを飛ばすと、以降の4段が全部ずれます。

STEP2
契約書の該当条項を読む

条項があるなら、担当者の心配の内容より文言が優先します。型を見分け、守れる範囲と守れない範囲を分けます。条項がなければ、秘密保持の条項が何を禁じているかを読みます。

STEP3
工程の1枚を引く

着手時に作った工程ごとの一覧を開きます。記憶で書かないことがここでの唯一の規律です。その案件で一覧を作っていなければ、作ってから返事をします。

STEP4
約束できることとできないことを分けて書く

できないことを先に、できることを後に。列挙は5つまでに収めます。長い説明は、隠していることがあるように読まれます。

STEP5
誰の名前で出すかを決める

担当者個人ではなく、窓口として決めた人の名前で出します。個人名で出した約束が、会社の約束として扱われる事故を避けるためです。

所要の目安は、工程の一覧ができていれば1時間、できていなければ半日です。返事は即日でなくて構いません。その場で答えないことを、失礼だと考えない。書面で回答しますと伝えるほうが、あとで訂正するより相手の手間が少なくて済みます。

文面の長さは2段落から3段落。相手が知りたいのは、約束の範囲と確認の体制の2点だけです。AIの仕組みの説明や、社内の取り組みの紹介は入れません。長い返事は、質問に答えていない返事であることが多い。

現場が即答してしまう事故と、その防ぎ方

答えられる形を作っても、答える場面が管理されていなければ意味がありません。実際に起きる崩れ方は、だいたい次の5つです。

  • 打ち合わせの場で「使っていません」と即答する:後から校正機能の利用が見つかり、それ以外の説明まで疑われる
  • 担当者が自分の判断で「大丈夫です」と答える:会社としての約束になり、契約上の保証と同じ重さで扱われる
  • 相手の質問を社内に流し、返ってきた文章をそのまま転送する:誰が確認した内容なのか分からない回答になる
  • 「補助的に使っただけです」と程度で答える:補助の範囲が人によって違うため、何も伝わらず追加の質問を呼ぶ
  • 聞かれた事実を記録に残さない:同じ相手から2度目に聞かれたとき、前回と違う答えを返してしまう

なぜ起きるかというと、聞かれる場面が営業の打ち合わせや納品の場だからです。法務も情報システムもいない場所で、しかも相手は答えを待っている。答えてよい範囲が決まっていないと、人は場の空気で答えます。これは個人の注意では直りません。

防ぎ方は1行で済みます。この質問はその場で答えず、書面で回答すると決めておくこと。そのうえで、その場で言ってよい一文だけを用意します。たとえば「工程ごとの利用状況をまとめた資料がありますので、後ほどお送りします」。答えないための一文を全員が持っていれば、即答の事故はほぼ止まります

誰が答えるかを、先に決めておく

事実を持っているのは現場で、約束する権限を持っているのは別の人です。この2つが同じ人であることは、ほとんどありません。だから役割を分けます。事実は現場が出し、約束は決めた1人が書く。この形にしておくと、現場は知っていることを正直に出せます。

決めておくものは3つです。一次回答をする人、文面を承認する人、記録を残す場所。一次回答をする人は、答えないことを選べる権限も併せて持たせます。答えないという判断ができない窓口は、結局その場で答えてしまいます。承認する人は、契約の内容を読める人にします。

記録は、案件ごとに3項目で足ります。聞かれた日、聞かれた内容、返した文面。これだけで、2度目に聞かれたときに前回と同じ答えを返せます。2度目に同じ答えを返せることが、信用の中身です。前回と違う答えが出た時点で、相手はどちらも信用できなくなります。

要求が重すぎるときの、言い換えと代替案

全面禁止型の条項をそのまま受けると、守れない約束に署名することになります。断るのでもなく、そのまま飲むのでもなく、相手の目的に言い換えて代替案を出すのが実務です。言い換えの型は、4つの心配に対応しています。

学習が心配なら、学習に使われない契約の下でのみ使う、と条項を書き換える。品質が心配なら、出力をそのまま納品しないことと確認者を明記することを足す。権利が心配なら、図版と引用の出どころを提出することを約束する。契約にそう書いてあるだけなら、範囲の定義を1文足してもらう。どの場合も、こちらの都合ではなく相手の言葉で書き換えます

  • 条項を削除する提案はしない。範囲を書き足す提案にするほうが通りやすい
  • 代替案は、学習・品質・権利という相手の言葉で書く。効率や工数の話にしない
  • 合意した内容は、打ち合わせの議事録ではなく契約か覚書に落とす

それでも全面禁止のままで押し切られる場合は、受けるかどうかの判断になります。守れない条項に署名して後で発覚するほうが、断るより高くつきます。判断の分かれ目は、こちらの工程からその道具を本当に外せるかどうかです。外せる案件もあるので、案件単位で見ます。

よくある質問

すでに「使っていません」と答えてしまいました。どうすればよいですか

早い段階で訂正するほうが被害は小さく済みます。訂正の仕方は、前言を撤回する形ではなく、確認した結果を報告する形にします。工程ごとに確認したところ、校正の機能が有効になっていた、この工程では下書きに使っていた、といった事実を並べ、人が確認した範囲を添えます。訂正が遅れるほど、隠していたと読まれます。

使っているサービスが学習に使うかどうかは、どこを見れば分かりますか

規約またはヘルプの該当箇所と、管理画面の設定の2つです。法人向けの契約では学習に使わないことが既定になっているサービスが多く、個人向けでは既定が逆であることがあります。どちらの場合も、該当箇所のページと確認した日付を控えます。既定は変わるので、日付のない記録は使えません。

工程ごとの一覧は、案件ごとに毎回作るのですか

案件の型ごとに雛形を1つ作り、差分だけを直す形にします。記事の制作、資料の制作、翻訳、といった単位で3つか4つあれば足ります。毎回ゼロから作ると続かず、続かない記録は聞かれたときに存在しません。雛形の行数は5から8に固定しておきます。

契約書にAI利用の条項がない場合は、自由に使ってよいのですか

条項がなくても、秘密保持の条項が効きます。受け取った情報を第三者に提供しない、という定めがある場合、学習に使われる設定のサービスへの入力がこれに当たるかどうかが論点になります。条項がないことは、確認しなくてよいという意味ではありません。入力しない運用を先に決めておくほうが安全です。

返答文をAIに書かせてもよいですか

下書きまでなら使えます。ただし、4つのどの心配に答えるのかの判断と、約束できる範囲の確定は人が決めます。頼むときは、約束の文言を考えさせるのではなく、こちらが決めた事実と範囲を渡して文章にまとめさせる形にします。出てきた文面は、約束の語が足されていないかを1文ずつ確かめます。

まとめ

取引先からAI不使用を求められたとき、返事の質を決めるのは文章力ではありません。聞かれている中身が学習・品質・権利・契約のどれなのかを分けられるかどうかと、工程ごとの利用の有無を書いた1枚を持っているかどうかです。分けられれば答えが決まり、1枚があれば即答の事故が止まります。

言い切れないことは言い切らない、という線も守ります。文章校正や機械翻訳や検索結果の要約は、すでに道具の側に組み込まれていて、意識して呼び出すものではなくなりました。一切使っていないという断定は、1か所崩れると説明全体が崩れます。列挙つきの限定した否定のほうが、確かめられるぶんだけ強い。権利については、文化庁が2024年3月15日に公表した考え方と、同年7月31日のチェックリスト&ガイダンスが土台になります。

最後に、人が持つ範囲を先に決めておきます。確認が要る箇所の洗い出しまではAIに任せてよく、正しいかどうかの判定と約束の範囲は人が持つ。根拠の形で返させれば確かめられ、判定の形で返させれば確かめられません。まずは自社の主な納品物について、工程を5行から8行に割った1枚を作るところから始めてください。聞かれてから作るのでは、間に合いません。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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