取引先にAIを使うなと言われたら?|契約で確かめる範囲

取引先にAIを使うなと言われたら?|契約で確かめる範囲

「取引先から、うちの案件では生成AIを使わないでほしいと言われました」「秘密保持の取り決めに、AIへの入力を禁じる条項が足されて戻ってきました」——発注を受ける側で、この連絡が届く場面が増えています。背景の1つははっきりしています。2026年7月10日に成立した改正個人情報保護法で、預かった個人情報を受託業務に必要な範囲を超えて扱うことが、受託した側の義務として直接定められたからです。ここで最初に決めるのは、飲むか断るかではありません。使うなという一言が、実際には別々の3つの心配を1語でまとめたものだからです。この記事では、言われ方の3段階を見分けたうえで、何が禁じられているのかを分解し、契約のどこを読めば答えが出るのか、代わりに何を出せるのかを順に追います。


カメ先生カメ先生

取引先からのAIを使うなという要求はね、1つの禁止に見えるんだけれど、開けてみると中身が違うんだ。学習に使われるのが困る、情報が社外に出るのが困る、他人の著作物が成果物に混ざるのが困る。この3つが同じ言葉で包まれていることが多い。


カメ子カメ子

同じ使うなでも、心配している中身が違うということですか。


カメ先生カメ先生

そう。だから聞き返さずに全面禁止として受けると、相手が心配していない工程まで止まってしまう。逆に、心配されている1点を外したまま使い続けると、後で契約違反の話に変わる。


カメ子カメ子

どの心配なのかは、契約書のどこを見れば分かるのでしょうか。


この記事のポイント
  • 言われ方は3段階。口頭の要望・秘密保持の取り決めの条項・発注書や仕様書の明記で、拘束の強さも記録の残し方も変わる
  • 禁止されているものを、学習に使われる/情報が社外に出る/成果物に混ざる の3つに分解してから答える
  • 契約で読むのは4か所。秘密保持の範囲と第三者の定義、再委託、データの取り扱い、監査と報告

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目次

使うなと言われて、最初にやることは反論ではない

この場面で起きる失敗は2つに分かれます。その場で全面的に飲むか、技術の話で反論するかです。どちらも、相手が何を心配しているのかを確かめないまま先へ進んでいます。飲めば工程が止まり、反論すれば話が硬くなります。どちらの道でも、半年後に同じ話をもう一度することになります。

最初に置く問いは1つで足ります。使うなの対象は、道具ですか、情報ですか、成果物ですか。道具の話なら使うサービスを変えれば済み、情報の話なら入れる範囲を変えれば済み、成果物の話なら確認の工程を足せば済みます。3つは対策がまったく違うので、混ぜたままでは1つも解けません。

相手の担当者自身が、心配の中身を言葉にできていないことも珍しくありません。上から言われて伝えている場合もあります。だから聞き方は自由回答にせず、選択肢で出します。3つ並べて、どれが近いですかと聞くと、その場で答えが返ってきます

言われ方の3段階を見分ける

同じ内容でも、どこに書かれているかで扱いが変わります。口頭の要望、秘密保持の取り決めの条項、発注書や仕様書への明記の3段階です。拘束の強さも、後から直せる余地も、この順で変わります

見分けが要る理由は、対応の大きさを合わせるためです。口頭の要望に条項レベルの構えで返すと、相手は身構えます。逆に、条項に書かれているものへ口頭レベルの対応で済ませると、それは契約違反です。どちらの間違いも、相手との関係と自社の責任の両方を削ります。

段階が違っても、共通してやることが1つあります。言われた日、言った人、言われ方を1行で残すことです。後から効いてくるのは条文の解釈ではなく、いつ誰が何と言ったかの記録のほうです

段階①:口頭の要望として言われた場合

その場の会話で言われただけなら、契約上の拘束はまだありません。ただし無視してよいわけではありません。口頭の要望は、次の契約更新で条項になります。ここで扱いを間違えると、次に来るのは交渉の余地がない文面です。

やることは2つです。心配の中身を3択で聞き返して議事に残すこと。そして、いまの運用を1枚で説明することです。1枚に書くのは、どの工程で使っているか、預かった情報を入れているかどうか、納品前に誰が何を確認しているかの3点で足ります。説明できる形になっていれば、全面禁止まで行かずに済むことが多くあります。

口頭のまま運用を変えるときも、変えた内容は書面で相手に渡します。口頭で始まった約束は、口頭のままだと担当者が代わった時点で消えます。消えるだけならまだしも、消えた後に問題が起きると、約束していなかったことにされます。

段階②:秘密保持の取り決めの条項に書かれている場合

条項に入っている場合、論点は預かった情報をAIサービスに入れる行為が第三者への開示に当たるかどうかです。多くの秘密保持の取り決めは、受け取った情報を第三者に開示・提供することを禁じています。サービスの提供元は契約の当事者ではないので、形のうえでは第三者に当たります。法律事務所の解説でも、原則として開示に当たるという前提で整理されています。

ただし契約の書き方で結論が動きます。委託先への開示を認める条項があり、提供元が同程度の秘密保持の義務を負っているなら、例外に入る余地があります。逆に、外部のAIサービスの利用禁止が明記されていれば、承諾があったとは読めません。読む順は、禁止の文言より先に、例外の条項があるかどうかです

自社の側の事情も1つあります。不正競争防止法2条6項が定める営業秘密として守ってもらうには、秘密として管理していることが要ります。入力先が守秘の義務を負っていない場合、取引先との契約だけでなく、自社の営業秘密の管理の面でも不利に働きます。相手のための確認ではなく、自社のための確認でもあるということです。

では提供元の何を見れば足りるのか。法律事務所の解説では、黙示の承諾があると読めるかを測る材料として、入力と出力を機械学習に使わないこと、応答を返す以外の目的に使わないこと、開示の範囲を超えて出力に反映しないこと、提供元が契約上の守秘義務を負うこと、利用者の承諾なく人が中身を見ないこと、情報の取り扱いについて第三者の審査を受けた認証があること、通信と保存が暗号化されていること、提供元の側に入力と出力を残さないことが挙げられています。1つでも欠けるサービスは、この案件では使わないと決めておくほうが早いです。

段階③:発注書・仕様書に明記されている場合

いちばん強いのがこの段階です。作業の仕様として書かれているので、守らなければ債務の不履行になります。ここで黙って使い続けるのが、選べる中で最も損害の大きい選択です。発覚するのはたいてい納品後で、そのときには是正と再点検の費用が上乗せされます。

条項のパターンは3つに分かれます。下書きから納品まで一切使わせない全面禁止。入力した内容を学習に使わせない形だけを禁じるもの。申告や確認を条件に使ってよいとするもの。この3つを見分けてから交渉に入らないと、通る提案まで断られます。多くの場合、相手が本当に止めたいのは真ん中か3つ目の条件の部分です。

署名の前に、定義の有無も確かめます。契約書に生成AIの定義があるか。定義が無いと、翻訳、校正、文字起こし、検索の補助、画像の書き出しまで含むのかが読めません。定義の無い禁止条項は、守る側が毎回その場で判断を迫られます。判断が分かれた時点で、守れていないのと同じ状態になります。

禁じられているものを、3つに分解する

ここからが本題です。使うなの中身は、ほぼ次の3つのどれかに落ちます。入れた情報が学習に使われること。情報が社外の場所に出ること。第三者の著作物が成果物に混ざること。3つは対策も、示せる証拠の形も、かかる費用も全部違います

それぞれの性格を押さえます。1つ目は契約の形態と設定の話で、書面で示せます。2つ目は経路と保存場所の話で、構成図と保存先の指定で示せます。3つ目は納品前の確認の話で、確認の工程と担当と記録で示せます。1つ目と2つ目は道具を替えれば解けますが、3つ目は道具を替えても解けません。

相手に聞くときは、この3つを並べて選んでもらいます。どれが心配ですかと聞けば、たいてい1つか2つに絞られます。3つとも心配だと返ってきたときだけ、全面禁止を前提に組み直します。それでも、どれが最も重いかを聞いておくと、後の交渉の順番が決まります。

分解すると、出せる答えが変わる

どれが心配かによって、通る答えと通らない答えが入れ替わります。ここを取り違えると、丁寧に説明したのに話が進まないという状態になります。

相手が心配していること通らない答え通る答え
入れた情報が学習に使われる気をつけますという運用上の約束入力を学習に使わない契約形態に切り替え、その条件が書かれた書面を示す
情報が社外の場所に出る学習には使われませんという説明預かった情報を入れない工程だけに限る。または社外に出ない経路で動かす
第三者の著作物が成果物に混ざる人が確認していますという一般論確認の工程と担当を書いて示し、確認した記録を納品物に添える

通らない答えに共通しているのは、相手が後から確かめられない点です。相手が確かめられない約束は、相手の側のリスクを1つも減らしません。減らないので、担当者は上に説明できず、結局は全面禁止のまま戻ってきます。

逆に言えば、通る答えの条件は1つです。書面か記録か経路のどれかで、相手が後から見られる形になっていること。この条件を満たす提案だけを持っていくと、交渉の回数が目に見えて減ります。

持っていく形も揃えておきます。口頭で説明するのではなく、1枚にまとめて渡します。書くのは、どの工程で使うか、預かった情報を入れるか入れないか、確認するのは誰か、その記録をどこに残すかの4点です。相手の担当者は、受け取った紙をそのまま社内で回します。相手が社内で回せる形になっていない提案は、担当者の机で止まります

契約で確かめる①:秘密保持の範囲と、第三者の定義

読む順を決めておきます。何が秘密情報にあたるか。誰が第三者にあたるか。例外の定めはあるか。この3つを上から見ます。第三者の定義に、業務を受託する者や役務の提供者を含めるかどうかで結論が変わります。定義の条項が短い契約ほど、解釈の幅が広く残ります。

例外条項では2点を見ます。委託先への開示を認める条項があるか。あるなら条件は何か(同等の義務を負わせること、事前の書面による承諾を得ること、など)。条件が書いてあるということは、満たせば使えるということです。禁止だけを読んで諦める前に、条件の側を読みます。

実務では、事前の書面による承諾という条件が最も扱いやすい形です。使う工程と、入れる情報の範囲と、確認の担当を書いて承諾をもらえば、その範囲は堂々と使えます。禁止の解除ではなく、範囲の合意として出すほうが通りやすい形です。相手にとっても、何も知らされないより、範囲が書かれているほうが説明しやすくなります。

契約で確かめる②:再委託の条項

見落とされやすいのが再委託です。AIサービスを使う行為を再委託と読む契約があります。その場合、事前の承諾が要る、再委託先の一覧を出す、再委託先にも同等の義務を課す、といった条件が付いてきます。秘密保持の条項だけを見て問題なしと判断すると、ここで引っかかります

一覧を出す形になっているなら、使うサービスを列挙して承諾をもらうのが早道です。列挙した範囲を超えて別の道具を足すときは、その都度承諾を取り直します。取り直しを面倒に感じて黙って足すと、承諾の意味が失われ、次からは一覧そのものを信用されなくなります。

同等の義務を課す条項がある場合は、先に提供元の側を確かめます。利用規約や書面で守秘の条件を示せるか。示せないサービスは、少なくともこの案件では使えません。示せるかどうかを、案件が始まる前に調べておくのが実務の勘どころです。始まってから調べると、代わりを探す時間がありません。

契約で確かめる③:データの取り扱いと、保存場所

3か所目はデータの条項です。見るのは保存場所の指定(国内に限るなど)、保存する期間、終了時の削除の義務の3点です。AIサービスの側が入力を一定期間保持する設計になっている場合、この3点のどれかに触れます。触れるかどうかは、提供元が公開している条件を読めば分かります。

預かるものに個人情報が含まれる場合、2026年7月10日に成立し同月17日に公布された改正個人情報保護法が効いてきます。改正後は、委託を受けた側が、預かった個人情報を受託業務の遂行に必要な範囲を超えて取り扱うことを直接禁じられます(改正30条の3)。これは再委託など2段階以上の委託にも及びます。施行は公布から2年を超えない範囲で政令の定める日で、遅くとも2028年7月です。罰則に関する部分は公布から6か月後に施行されます。

同じ改正で、委託契約の中に取扱方法と漏えい時の報告を定めた場合の特例(改正58条の2)も置かれました。契約で具体的に決めておくほど、受託した側の負担が軽くなる設計です。ただし細かい規則はこれから定まるので、契約には規則の公表後に改めて協議する旨の留保を入れておきます。いま断言できないことを断言すると、後で直せなくなります。

契約で確かめる④:監査と報告の条項

4か所目は監査と報告です。監査条項があると、約束を守れているかを相手が確かめに来られます。ここで効くのは説明ではありません。監査に耐えるのは運用ではなく記録です。使っていませんと口で言っても、確かめる材料が無ければ、相手は確かめられなかったという結果しか持ち帰れません。

報告の条項では、何を、いつ、誰に報告するかを見ます。AIの利用について報告の義務が新しく入る場合、その形で記録が取れているかを先に確かめます。報告できない形の記録しか無いなら、条項を受ける前に記録の取り方を変えます。受けてから変えると、最初の報告に間に合いません。

見せる物も、見せない物も先に決めます。見せるのは、使ったサービス名、使った工程、入れた情報の種類、確認した担当者。見せないのは、他社の案件が混ざる記録です。案件をまたぐ記録を1つの表で取っていると、監査のたびに切り出す作業が発生します。最初から案件ごとに分けて取るほうが、後の手間が小さくなります。

監査の頻度と方法も条項で確かめます。年に1回なのか、必要が生じたときなのか。訪問して見るのか、書面の提出で足りるのか。書面で足りる形なら、提出する書式を先にこちらから提案しておくと、毎回の負担がほぼ固定できます。提案しなければ、相手の書式に合わせて毎回作り直すことになります。ここは断られても失うものがないので、契約の段階で必ず出します。

代わりに何を出すか。3つの逃げ道を順に試す

全面禁止を丸のみする前に、順番に試す手が3つあります。順番には理由があるので、上から試します。

STEP1
学習に使われない契約形態に切り替える

入力した内容を学習に使わない条件で契約し、その条件が書かれた書面を相手に示します。工程を削らずに済むので、通れば影響がいちばん小さくなります。

STEP2
預かった情報を入れない工程だけに限る

調べもの、言い回しの案、体裁の整えなど、相手から預かった情報を入れない工程に用途を限ります。工程は削れますが、用意はその日のうちに終わります。

STEP3
社外に出ない経路で動かす

手元の環境や、社外へ出ない経路で動かす形に替えます。効き目は大きいものの、用意に時間と費用がかかるので最後に置きます。

この順にするのは、影響と時間の両方が小さい順だからです。1が通れば工程を1つも削らずに済み、2は削るがその日から動かせ、3は削らずに済むが間に合わないことがあります。上から順に提案すると、どこで折り合ったかが相手にも見えます。

3つとも通らなかった場合は、全面禁止を受けます。そのうえで、その分の工数と納期を見積りに反映します。禁止を受けること自体は問題ではありません。受けたのに従来の見積りのまま出すことが問題です。ここを曖昧にすると、品質か納期のどちらかが黙って削られます。

反映のしかたも決めておきます。工数を増やして見積りに載せるのか、納期を後ろへずらすのか、成果物の点数を減らすのか。3つのうちどれで吸収するかを、こちらから選んで示します。示さずに見積りだけを上げると、理由が伝わらないまま金額の交渉になります。禁止を受けた結果として何が増えるのかを1行書き添えると、次の案件の条件も変わってきます。

調査票や誓約書が届いたときの、答え方

条項の交渉とは別に、AIの利用状況を尋ねる調査票が届く場面も増えています。聞かれる順はおおむね4段階です。使っているか。どのサービスのどの契約か。誰が管理し誰が使うか。社内の決まりはあるか。後ろの2つに答えられない会社ほど、前の2つで良い回答を書きたくなります。

最も危ないのは、確かめずに利用していませんと書くことです。この一文は、文言によっては表明保証としての意味を持ち得ます。公式の導入が無いことと、誰も使っていないことは別です。実際に起きるのは次の形です。

  • 会社として導入していなかったので、調査票に利用していませんと書いて返した
  • 実際には制作の担当者が個人の契約で下書きに使っていた
  • 納品後にそれが分かり、表明した内容と違うとして是正と再点検を求められた
  • 使ってよい範囲を決めていなかったため、どこまで使ったのかを後から示せなかった

書き方は分けます。会社として導入しているかどうか。個人での利用を禁じる決まりがあるかどうか。その決まりをどう確かめているか。この3つを別々に書きます。状態を書くのではなく、確かめ方を書くと、後から崩れません

誓約書が同封されている場合は、署名の前に3点を見ます。生成AIの定義があるか。違反したときに何が起きると書かれているか。守れているかを相手がどう確かめると書かれているか。3つ目が書かれていない誓約書は、守る側にとっても危ない形です。確かめようがない約束は、疑われたときに反証もできないからです。確かめ方を書き足す提案は、相手の利益にもなるので通りやすくなります。

回答の期限が短いこともあります。数日で返せと言われた場合は、答えられる範囲だけを先に返し、残りは日付を切って追って返す形にします。急いで全部を埋めると、確かめずに書いた欄が混ざります。後から訂正する手間は、待たせる手間よりはるかに大きくなります。期限が短いこと自体を、相手に伝えて構いません。

要求が来る前に、手元に揃えておく4つの物

ここまでは要求が来た後の話でしたが、答えの速さは来る前に決まります。揃えておく物は4つで、どれも新しく作る書類ではなく、既にある情報を1か所に寄せるだけのものです。

  • 使っている道具の一覧(サービス名と、どの契約で使っているか。案件に紐づけて持つ)
  • 提供元が示している守秘と保存の条件(入力を学習に使うかどうか、保存の期間、保存の場所が書かれた書面)
  • 回答の雛形(会社としての導入の有無、個人利用を禁じる決まりの有無、その確かめ方の3点を分けて書いたもの)
  • 答える人の名前(部署名ではなく個人名。契約の担当と技術の担当の2人を書く)

4つのうち、いちばん時間がかかるのが2つ目です。提供元の条件は、契約の種類や設定によって変わることがあり、画面の説明文だけでは足りません。書面として示せる形で取り寄せるまでに数日かかることもあります。要求が来てから取り寄せると、回答の期限に間に合いません。この書面が手元にあるかどうかで、交渉の入口が変わります

3つ目の雛形は、案件ごとに書き換える前提で作ります。使い回せるのは書き方の枠だけで、中身は案件ごとに違うからです。枠を決めておくと、答える人が代わっても書き方が揺れません。答える人を2人書くのは、契約の解釈と、道具の設定の2つを1人で答えられる会社が少ないためです。

4つを揃える作業そのものも、記録に残しておきます。いつ時点の一覧かが分からない資料は、次に要求が来たときに使えないからです。更新の頻度は四半期に1回で足ります。道具を足したときと、契約の形を変えたときだけ、その場で直します。

断られた工程は、案件の台帳に記録として残す

最後は記録です。残すのは5つで足ります。断られた日、断った相手の担当者名、対象になった工程、言われた理由、代わりに取った手段。残す先は案件の台帳で、新しい書類は作りません。新しい書類は、作った人がいなくなった時点で更新が止まります。

残す理由は3つあります。次回の見積りの根拠になること。担当者が代わったときに同じ議論をやり直さずに済むこと。監査や照会で聞かれたときに、その場で答えられること。3つとも、記録が無ければ記憶の突き合わせから始まります。記憶の突き合わせは、たいてい担当者が異動した後に必要になります。

1つだけ足す欄があります。いつ見直すかの日付です。見直す日付の無い禁止は、理由が消えた後も残り続けます。契約の更新の月に合わせて日付を入れておけば、次の交渉のときに材料として出せます。

よくある質問

取引先の担当者は自分で使っているようです。指摘してよいですか

指摘する前に、契約上の義務は自社の側にあることを確認します。相手の運用は相手の問題で、こちらの義務を軽くするものではありません。ただし、相手が使っているという事実は材料にはなります。心配の中身が学習や漏えいではなく、別のところにある合図だからです。指摘ではなく、どの工程までなら想定されているかを聞き直す形で使います。

社内では利用を認めていますが、この案件だけ止めることはできますか

案件の単位で止めるのが現実的です。止め方は、案件の台帳に印を付けて、工程の一覧のどこで止まるかを書きます。担当者の記憶に頼る形にしないのが要点です。人が確認する範囲も案件ごとに決めます。全社の決まりを書き換えるより、案件ごとの印のほうが早く、戻すときも1か所で済みます。

翻訳や文字起こしの道具も、この禁止に含まれますか

契約書に定義が無ければ、含まれるかどうかは決まりません。まず定義の有無を確かめ、無ければ定義を足す交渉をします。通らない場合は、自社が使う道具を列挙して承諾をもらう形に切り替えます。定義の争いを残すより、列挙して合意するほうが、後の解釈で揉めません

使わないと約束した後、守れていることをどう示しますか

示せるのは記録だけです。どの工程で誰が何を使ったかを案件ごとに残します。記録が無い場合に示せるのは、決まりがあるという事実までで、守れているという事実には届きません。約束を受ける前に、示せる記録が取れる形かどうかを確かめます

契約書をAIに読ませて、使ってよいかを判定させてもよいですか

判定はさせません。任せてよいのは、関係しそうな条項の抜き出しと、読むべき箇所の候補を並べるところまでです。出させるときは、条項の番号と原文をそのまま根拠として書かせます。最終の判断は人が行い、誰がいつ判断したかを案件の台帳に残します。人が確認する範囲も先に決めておきます。秘密保持と再委託とデータの条項は全件を人が読む、それ以外は抜き出しを見る、という形が始めやすい置き方です。

まとめ

取引先からAIを使うなと言われたとき、最初の分かれ目は飲むか断るかではありませんでした。言われ方の3段階を見分けることと、禁止の中身を分解することの2つです。口頭の要望なら次の更新で条項になる前に運用を1枚で示し、秘密保持の取り決めの条項なら例外の条件から読み、発注書や仕様書に書かれているなら定義の有無から確かめます。中身は、学習に使われる、情報が社外に出る、成果物に混ざるの3つに割れます。契約で読むのは、秘密保持の範囲と第三者の定義、再委託、データの取り扱いと保存場所、監査と報告の4か所です。そして、通る答えの条件は1つ。相手が後から確かめられる形になっていることです。代わりの案は、学習に使わせない契約、預かった情報を入れない工程、社外に出ない経路の順に試し、3つとも通らなければ禁止を受けたうえで見積りに反映します。まずは、断られた日と工程と理由を案件の台帳に1行足すところから始められます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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