決裁が通る提案書に入れる7項目|下書きはAIに任せる

「提案書を出したのですが、持ち帰りますと言われたまま3週間止まっています」「先方の担当者は乗り気なのに、そこから上で話が進んでいないようです」——法人向けの提案を作っている営業とマーケティングの担当者から、この二つは同じ週の相談の中に並んで出てきます。止まっているのは、提案の中身ではありません。効いてくるのは、その紙が、書いた人のいない場所で一人で歩けるかどうかです。この記事では、提案書が読まれる場所の話から、決裁で問われる7項目、項目が書けていないときに紙がどう見えるか、並べる順番、1通を作る5工程、社内の誰の承認で何を書けるのか、そして下書きをAIに任せてよい工程と人が決める工程までを順に整理します。
カメ先生提案書は目の前の担当者に読ませる紙だと思われがちですが、実際に読んで判断するのは、その先にいる決裁者です。担当者が納得しても、決裁の場に持っていけない紙だと止まります。
カメ子担当者の方が説明してくれるのではないのですか。
カメ先生説明はしてくれます。ただ、説明する側も、書いていない欄を自分の言葉では埋められません。費用の区分、相手側でやってもらう作業、効果の測り方。ここが空いていると、上長への説明が組み立てられないのです。
カメ子空いているかどうかは、どこを見れば分かるのでしょうか。
- 提案書は担当者ではなく、その先の決裁に向けて書く。担当者が上長に説明するときに必要になるものが、そのまま項目になる
- 落ちやすいのは、範囲の境目・相手側の作業・費用が動く条件の3つ。ここが空いていると、金額の議論そのものに進めない
- 骨子と言い換えと下書きは機械に出させてよい。価格、体制、実施時期、効果の数字、そして書いてよい範囲の線は人が引く
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提案書は、目の前の担当者ではなく「その先」に向けて書く
提案書を手渡す相手は、たいてい窓口の担当者です。けれども発注を決めるのは、その場にいない別の人であることが多い。担当者は受け取った紙をそのまま上長に回すか、自分で要点をまとめ直して社内の稟議に添えます。つまり提案書は、書いた人がいない場所で読まれる紙です。商談の場で口頭で補った説明は、その場所には一行も届きません。
決裁が上に行くほど、読む人はその案件の背景を知りません。会社法第362条第4項は、取締役会は「重要な財産の処分及び譲受け」や「多額の借財」その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない、と定めています。金額や重要性が一定の線を越えると、担当役員の判断では終わらない構造が、法律の側にもあるということです。社内の決裁権限の規程も、たいていこの考え方に沿って金額で区切られています。提案の金額は、その紙を誰が読むことになるかを先に決めている、と考えたほうが実態に合います。
だから項目は、書き手が言いたいことの一覧からではなく、決裁の場で問われることの一覧から決めます。問われるのは七つです。なぜ今なのか。どこまでやるのか。誰がやるのか。いつ終わるのか。いくらか。何が返るのか。想定どおりにならなかったらどうするのか。この七つに答えの欄があるかどうかが、紙が一人で歩けるかどうかを分けます。逆に言えば、七つ以外の情報を厚くしても、決裁の速さは変わりません。
決裁が止まるのは、たいてい7か所のどれか
項目名だけを覚えても、自分の提案書は点検できません。効くのは、書けていないときにその紙がどう見えるかを知っておくことです。七つを、抜けたときの見え方と、止まる場所と並べて置きます。
| 項目 | 書けていないときの見え方 | 止まる場所 |
|---|---|---|
| 1 困りごと | 「貴社の課題」が一般論で、他社に出しても通る文になっている | 「なぜ今これをやるのか」を担当者が上長に説明できない |
| 2 範囲 | やることは書いてあるが、やらないことが1行もない | 追加費用を疑われ、金額の議論に進まない |
| 3 体制と役割 | 自社の担当者名だけが並び、相手側でやってもらう作業がない | 現場部門が「その工数は出せない」と反対する |
| 4 日程 | 着手日から数えた期間だけが書いてある | 相手の決裁の時期と合わず、期初に間に合わないと判断される |
| 5 費用 | 総額が1行だけ置かれている | 減らす相談ができず、そのまま保留になる |
| 6 効果 | 数字が前提なしに置かれている | 「この数字はどこから」と聞かれて答えが止まる |
| 7 前提と次の一歩 | 断り書きも、次にやることも書かれていない | 決めるべきことが分からず、次の打ち合わせが設定されない |
この表で大事なのは、右の列です。止まる場所が全部違います。1が抜けると社内の議題にすら乗らず、2と5が抜けると金額の話に入れず、3が抜けると現場から反対され、4が抜けると時期の問題で見送られる。止まった理由を聞けないまま案件が消えるのは、どの列で止まったかが外から見えないからです。だから点検は、提案の良し悪しではなく、七つの欄の空白から始めます。
項目1 困りごと——相手の言葉で、放っておくとどうなるかまで
最初の項目は、相手がいま困っている状態です。ここを自社のサービス説明の枕にしてしまう提案書がとても多い。見分け方は簡単で、その段落を、そのまま別の会社に出せてしまうなら書けていないと考えてください。「情報発信の強化が求められています」は、どこにでも出せます。
書き方は、聞き取りで相手が使った言葉と数を、加工せずに残すことです。「毎月3本の資料を作っているが、営業からの差し戻しが月に10件ほどある」「先月は展示会の配布物の入稿が2日遅れて、印刷費が上がった」。この粒度になると、担当者は上長にそのまま読み上げられます。抽象化した瞬間に、説明できるのは書いた本人だけになります。
もう一行足すのが、放っておいたときに何が起きるかです。「来期の展示会に間に合わない」「4月の組織変更で担当が代わり、いまの経緯を知る人がいなくなる」。決裁の場で最初に問われるのは、やる価値があるかではなく、なぜ今なのかです。この一行がないと、良い提案ほど「来期に検討」に回されます。期限があるなら、その期限は相手の都合から取ってきた期限でなければ意味がありません。
項目2 範囲——やらないことを書くと、金額の話に進める
範囲は、やることの箇条書きだけでは閉じません。必要なのは三つの区分です。今回やること。今回はやらないこと。そして今回は判断せず、後で決めること。この三つを並べて初めて、見積の根拠が読み取れるようになります。
資料の制作を例にすると、「構成と本文と図版の作成まで。写真の撮影と、使用の許諾の取得は含まない」「初稿と修正2回まで。3回目以降は1回あたりの単価を別に記載する」という書き方になります。やらないことを書くのは、逃げ道を作っているように見えるかもしれません。決裁者から見ると逆です。範囲が閉じていない提案は、上限のない支出に見えます。上限が読めない支出は、金額の大小にかかわらず承認しにくい。
境目は、揉めた経験のある場所に引きます。回数、本数、対象の範囲、支給されるものと自社で用意するもの、そして「相手の社内で意見が割れたときにどう決めるか」。最後の一つは書きにくいのですが、「意見が分かれた場合は窓口部門の判断を最終とする」の一行があるだけで、作業の途中で止まる回数が変わります。境目を書けない項目があるなら、それは提案の前に確かめることが残っているという合図です。
項目3 体制と役割——相手にやってもらうことを先に書く
体制の欄に自社の担当者名と役職だけを並べた提案書は、決裁の場では「こちらは何をすればよいのか」という質問に変わります。先に書くべきなのは、相手側でやってもらうことのほうです。誰が、いつ、どれくらいの時間を使うのか。レビューは1回あたり何時間で何人か。素材の提供は着手から何営業日以内か。ここが書いてあると、現場部門は反対する理由を失います。
役割分担を先に決めることの効き目は、契約の実務でも指摘されています。情報処理推進機構と経済産業省が2020年12月22日に公表した「情報システム・モデル取引・契約書」第二版の解説は、見直しの論点の一つに「プロジェクトマネジメント義務及び協力義務」を挙げたうえで、契約書に新しい条項を足すのではなく、役割分担や連絡協議会など既存の条項で定められたプロセスを適切に運用すれば、義務違反が問題となるような事案は一定程度防げるのではないか、という議論があったことを書いています。同じ解説は、発注する側と受ける側の双方がプロジェクトの管理をしなければならず、各段階で自らが果たすべき役割を踏まえることが重要だ、とも述べています。
裁判になった場面も紹介されています。同じ解説は、東京高判平成25年9月26日について、受注側のプロジェクトマネジメント義務の一環として、一定の場合における中止提言義務が判示されている、と書いています。役割分担は、提案の段階で書いておくほど後で効くということです。提案書に書いておけば、契約書に落とすときの下敷きになります。書かずに始めると、忙しくなってからの押し付け合いになります。相手側の作業は、人数と時間と回数と期限の4つの単位で書きます。「レビューにご協力ください」では工数が読めませんが、「初稿の確認を2名で2時間、受領から5営業日以内」と書けば、現場部門が自分の予定と突き合わせられます。
項目4 日程——相手の決裁日から逆算して引く
日程表の起点を着手日にしている提案書が、いちばん多い型です。「ご発注から8週間」と書いてあっても、読む側は、その8週間が自社のどの予定に収まるのかを計算できません。起点にすべきなのは、相手の決裁が下りる想定日です。相手の予算の年度、稟議が回る周期、役員会の開催月、展示会や決算のような動かせない日。ここから前に引きます。
決裁の時期を聞くのは、失礼ではありません。「この規模だと、社内ではどのくらいの期間で決まりますか」「決めるのは月次の会議ですか、それとも都度ですか」。この二つを聞いておくと、日程だけでなく、提案書を出す日も決まります。会議の3日前に出すのと、翌日に出すのとでは、次の回まで1か月ずれます。
書き方も変えます。「◯月◯日までに決裁が下りた場合、◯月◯日から着手し、◯月◯日に納品」という条件つきの形にします。条件つきにすると、担当者はその紙を持って上長のところに行けます。「いつまでに決めればよいか」が紙に書いてあるからです。期限は、こちらの都合ではなく相手の予定から作る。自社の稼働の都合を期限にすると、値引きの交渉材料に読み替えられます。
項目5 費用——総額の前に区分を置き、動く条件を書く
費用の欄が総額1行だと、相手は「高い」か「安い」しか言えません。減らす相談ができないので、そのまま保留になります。区分を三つから五つに割り、必須のものと任意のものを分けます。任意の行があると、相手は自分で調整して稟議に載せられます。調整の余地を渡すことは、値引きとは別のことです。
もう一つ書くのが、費用が動く条件です。数量が増えたとき、修正の回数が上限を超えたとき、素材の支給がなくなったとき、期間が延びたとき。この4つは、後から必ず出てきます。先に単価を書いておけば追加の相談で済み、書いていなければ交渉になります。見落としやすいものを並べておきます。
- 交通費と宿泊費:発生する条件と、上限を書いておく
- 第三者に支払う費用:写真や書体の使用料、外部の協力者への支払い
- 上限を超えた分の単価:修正、追加の本数、追加の打ち合わせ
- 納品後にかかる費用:更新、差し替え、保守にあたる作業
- 相手の社内で発生する費用:機材、権限の付与、既存の契約の変更
金額の見せ方は、相手の決裁の線をまたぐかどうかで変えます。先に触れたとおり、金額が上がるほど読む人が増え、決まるまでの時間が延びます。線をまたぐ提案しか用意していないと、「まず小さく試したい」という相手の逃げ道がなくなります。またがない形の案を1つ併記しておくと、少なくとも会議の議題には乗ります。
項目6 効果——数字ではなく、測り方を先に書く
効果の欄は、提案書の中でいちばん事故が起きます。根拠のない数字を置くと、その一行だけを理由に信用が下がるからです。書き方の順番を変えます。先に測り方を書き、そのあとに目安の数字を置く。測り方が書けない項目には、数字を置かない。この二つだけです。
たとえば「問い合わせが2倍になります」ではなく、「問い合わせの件数を、現在の月平均を基準に、公開から3か月の平均で比べます。前提は、掲載する面と広告の出稿量がいまのまま変わらないことです」と書きます。数字が入るのは、この文のあとです。数字は約束ではなく、確かめ方の合意だと考えると、書ける範囲がはっきりします。
測れないものもあります。社内の合意が取りやすくなる、説明の手間が減る、といった効果です。こういうものは無理に数字にせず、「どういう状態になったら成功と呼ぶか」を文で書きます。「営業から資料の作り直し依頼が来なくなる」「新任の担当者が、説明を受けずに使い始められる」。状態で書けば、後から検証もできます。数字にできないから書かない、という選択が、いちばんもったいない。
項目7 前提と次の一歩——断り書きは、弱さではない
最後の項目は、前提と制約、そして合意したら次に何をするかです。前提には、相手から出してもらう情報、承認の回数、素材の権利関係、既存の契約との関係を書きます。制約には、動かせない事情を書きます。「この期間は担当が別案件に入っているため、着手は◯月から」のような、こちらの事情も含めてです。
断り書きを書くと弱く見える、という心配は分かります。ただ決裁者の側から見ると、前提を書ける相手は、うまくいかなかったときの話ができる相手に見えます。前提が一つもない提案書のほうが、むしろ「検討が浅いのではないか」と読まれます。書き方を整えれば印象は変わります。前提のあとに「この前提が崩れた場合は、◯日以内に見直しの案を出します」と続ければ、断り書きが対応の約束に変わります。
大きな案件では、前提が多すぎて書き切れないことがあります。そのときは提案を段階に割ります。先の「情報システム・モデル取引・契約書」第二版の解説は、前の工程の契約と後の工程の契約が順に積み重なる形を「直列型」と呼び、複数の契約が同時並行で進む「並列型」と分けて整理しています。提案の側でも同じことができます。調査と整理だけの小さな段階を先に置き、その結果を見てから本体の見積を出す。決裁の金額が下がるぶん、最初の1歩が動きやすくなります。
7項目を、どの順に並べるか
項目がそろっても、並び順を間違えると読まれません。読む人が3人いるからです。窓口の担当者は、範囲と体制を見ます。自分の仕事量が決まるからです。その上長は、費用と効果を見ます。そして決裁者は、なぜ今なのかと、外れたときにどうなるかを見ます。3人が見る場所が違うのに、順番が1通りしかない。ここが難所です。
解き方は二つあります。一つは、並びを「困りごと→効果→範囲→進め方と体制→日程→費用→前提と次の一歩」にすること。決裁者が見る項目を前後の端に置き、担当者が見る項目を真ん中に挟む形です。もう一つは、表紙の次に要約の1枚を入れることです。七つの項目を1行ずつ、7行だけ書いた紙を置きます。
要約の1枚は、飾りではありません。決裁者はその1枚しか読まないことがあるからです。だから7行は、本文の見出しの写しではなく、それぞれの答えそのものを書きます。「費用:合計◯◯万円。内訳は3区分、うち任意が1区分」のように、読んだだけで判断材料になる形にします。この1枚が作れないなら、本文のどこかが決まっていないということです。作れないまま出すより、決まっていない項目の名前をそのまま担当者に伝えるほうが早い。曖昧な提案書を1通渡すより、確認したいことを3行渡したほうが、話は前に動きます。
1通を作る手順を、5つの工程に割る
項目と順番が決まったら、作る手順も決めておきます。毎回ゼロから考えていると、時間が足りないときに真っ先に落ちるのが確認の工程になります。工程を先に割っておくと、落とす順番も決められます。
議事録、問い合わせの文面、過去に断られた理由。相手が実際に使った言葉を、加工せずに集めます。この段階の要約と抜き出しは、AIに任せてよい作業です。
先に器を作ります。埋まっていない欄が、そのまま確かめるべきことの一覧になります。文章を書き始める前に、どこが空いているかを見えるようにするのが目的です。
決裁の時期、予算の区分、相手側で動ける人数。この3つは推測で埋めないほうが早い。1回の打ち合わせで聞き切るために、質問を欄の順に並べておきます。
骨子、比較の表、概算の枠まではAIに出させます。ただし数字の欄は空のまま出させ、人が入れます。この分け方を先に決めておくと、後の確認が短くなります。
価格、他社の事例、約束になる表現。この3か所は、社内の別の人の承認が要ります。出す前日に気づくと間に合わないので、下書きの段階で回します。
この5工程のうち、削ってよいのは4だけです。1と2と3を飛ばすと項目が埋まらず、5を飛ばすと後で撤回することになります。急ぎのときは、下書きの丁寧さを落として、空欄を空欄のまま「確認中」と書いて出すほうが、結果的に早く進みます。
社内の誰の承認で、何を書けるのか
提案書には、担当者の一存では書けないことが三つ混ざっています。価格と、他社の事例と、約束になる表現です。この三つは、書いた後に取り消すのが難しい。だから承認の相手と、確認する内容を先に決めておきます。
- 価格:標準の価格から外れる場合の決裁者と、外れてよい幅
- 他社の事例:どこまで書いてよいか。相手先の名前を伏せても、業種と規模と時期がそろえば特定できることがある
- 約束になる表現:「必ず」「保証します」「◯%改善します」を含む文は、契約の内容として読まれうる
他社の事例については、線引きの根拠になる条文があります。不正競争防止法第2条第6項は、「営業秘密」を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。秘密として管理されていて、有用で、公然と知られていない。この三つがそろうものを、提案書に書いてよいはずがありません。相手が公表している範囲かどうかを確かめるのが、いちばん確実な線引きになります。公表されている範囲かどうかは、相手の会社が出した記事や登壇の資料で確かめ、その所在を社内の台帳に控えておきます。控えがないと、次に使う人が同じ確認を最初からやり直すことになります。
約束になる表現は、営業の現場で最も見落とされます。提案書は契約書ではありませんが、契約の解釈で参照される文書になることはあります。だから「必ず」「保証」「確実に」を含む文は、法務か上長の確認に回す。回すのが面倒なら、使わないと決めてしまうほうが早い。効果は前の章のとおり、測り方と前提で書けば、断定しなくても十分に伝わります。
下書きをAIに任せてよい工程と、人が決める工程
総務省の令和8年版情報通信白書は、2025年度の企業向け調査で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合が日本で86.4%だったと書いています。業務の種類別では「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、「営業・販売」が約6割と続きます。提案の下ごしらえに使うことは、もう例外的な運用ではありません。問題は、どこまで任せるかを決めずに使っていることのほうです。
任せてよいのは、次の四つです。第一に、骨子の案出し。七つの欄それぞれについて、見出しの候補を複数出させます。第二に、相手の課題の言い換え。議事録から、相手が使った言葉を抜き出させます。自分の言葉に直させるのではなく、相手の言葉のまま拾わせるのが要点です。第三に、比較の表と概算の枠の下書き。列だけ作らせ、数字は空欄で出させます。第四に、過去の案件からの流用候補の洗い出し。似た構成の提案書を探させ、どの案件のどの節から取ったかを併記させます。
人が決めるのは、価格、体制、実施時期、効果の数字、そして書いてよい範囲の判断です。この五つには共通点があります。いずれも、自社の外にある事情で決まるということです。AIは自社の稼働状況も、相手の稟議の慣習も、先月結んだ秘密保持契約の内容も知りません。だから「この提案は通りますか」と聞かないでください。通るかどうかは相手の社内事情で決まり、それを判断する材料をAIは持っていません。
運用に落とすときは、確認する範囲を先に決めます。数字が入る欄、社名が入る欄、期日が入る欄。この3種類には、AIが書いた文字を残さないと決めておく。残っていないことを確認するのは目視で足ります。白書は、リスク対策として「全社的な指針やガイドラインを整備している」と回答した割合が41.1%と最も高かったとも書いています。指針はあっても、提案書のどの欄を人が確かめるかまで書かれていないことが多い。そこは各部門で埋める話です。
AIが書いた数字を載せて、説明できなくなる型
いちばん多い事故が、効果の欄です。下書きを頼むと、それらしい数字がついてきます。そのまま残して提出し、質問されて答えられなくなる。この型は、次の四つの形で出てきます。
- 「同業他社では平均して30%の工数削減が実現しています」——どの会社の、いつの、何を数えた30%かを答えられない
- 「導入企業の90%が効果を実感しています」——自社が数えた数字でないなら、誰が何をどう聞いたかを説明できない
- 「一般的に3か月で成果が出ます」——一般論のつもりが、自社の見込みとして読まれる
- 「貴社の場合、年間◯◯万円の削減が見込めます」——前提を書かずに置くと、届かなかったときに説明が立たない
同じ白書は、日本の企業が生成AIの活用について懸念するリスクとして、「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」が最も高く、次いで「出力結果の精度に問題がある」「著作権等の権利を侵害する可能性がある」の順だったと書いています。精度への懸念は認識されているのに、提案書の数字については確認の担当が決まっていないことが多い。認識と運用の間に、この落差があります。
対処は簡単です。数字を置く欄に、出どころの列を必ず持たせます。自社が数えた数字か、公表されている資料の数字か、相手から聞いた数字か、前提つきの概算か。この4つ以外は載せない、と決めます。列を作ると、埋められない数字が自然に落ちます。落ちた分は、測り方の説明で置き換えれば、提案の説得力はむしろ上がります。概算を載せるときは、数字の横に前提を1行で添えます。「現在の月平均を基準に、掲載する面と出稿量が変わらない場合の目安」と書いてあれば、届かなかったときにも、どの前提が崩れたのかを話せます。
まとめ
提案書が止まるのは、中身が弱いからではありません。決裁の場で問われることに、答えの欄が用意されていないからです。入れるのは七つ。相手の言葉で書いた困りごとと、放っておいたときに起きること。やることとやらないことの境目。相手側でやってもらう作業まで書いた体制。相手の決裁日から逆算した日程。区分と、動く条件まで書いた費用。測り方を先に書いた効果。そして前提と、合意したら次にやること。七つのうちどれが空いているかを見れば、どこで止まるかが先に分かります。
並べる順番は、読む人が3人いることから決めます。決裁者が見る項目を前後の端に置き、表紙の次に7行の要約を1枚入れる。作る手順は5工程に割り、価格と他社事例と約束になる表現の3か所は、出す前に社内の承認を取ってから出します。AIには、相手の言葉の抜き出し、骨子の案出し、枠だけの比較表、過去案件からの流用候補までを任せる。価格と体制と時期と効果の数字、そして書いてよい範囲は人が決める。数字の欄には出どころの列を持たせ、埋められない数字は載せない。この線引きを一度決めてしまえば、提案書を作る時間は短くなり、出したあとに撤回する回数は減ります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
コンテンツ制作にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
