Pマークがあっても生成AIは使える|審査で問われる4点

「Pマークを取っているので、生成AIは使えないと総務に言われました」「情報セキュリティの認証があるうちは、外のサービスに何も入れられないと聞いています」——認証を持っている会社で生成AIの利用を通そうとすると、この二つが同じ会議で並びます。けれども、制度の側に「生成AIを使ってはいけない」と書かれた要求事項はありません。効いてくるのは、その道具が、すでに通っている枠組みのどこに座るのかを説明できるかどうかです。この記事では、審査で実際に問われる適用範囲・委託先・記録・内部監査の4点を、公表されている指針の項番と法律の条文から順に整理します。制度は動くので、以下は2026年9月時点で公表されている資料にもとづく記述です。
カメ先生認証を持っていると生成AIが使えなくなる、と思われがちですが、規格にも指針にも、使ってはいけないという要求は書かれていません。問われるのは、その道具を枠組みのどこに置いたのか、という一点です。
カメ子置き場所というのは、規程に一行足すということでしょうか。
カメ先生文言を足すだけでは足りません。指針が求めているのは、どの個人情報がその道具を通るのかを台帳に書き、委託先として扱うかを決め、決めたとおりに動いた跡を残すことです。規程は入り口にすぎません。
カメ子台帳と、委託と、記録ということですか。それは審査でも見られるのでしょうか。
- 制度の側に「生成AIの利用は禁止」という要求はない。問われるのは適用範囲・委託先・記録・内部監査の4点
- 分かれ目は「個人データを渡すかどうか」。渡すなら委託の話になり、選定基準と、契約に入れる8つの事項がそのまま効いてくる
- 規程と手順書の洗い出し、台帳の下書き、想定問答の一覧づくりは下ごしらえとして渡せる。適用範囲に入れる決め、委託先として扱うかの判断、審査に出す回答の確定は人が引き受ける
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「認証があるから使えない」は、制度の側には書かれていない
最初に、根拠のありかを確かめておきます。プライバシーマークの審査は、日本情報経済社会推進協会が公表している「プライバシーマークにおける個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針」にもとづいて行われます。現行のものは2023年12月25日に制定され、2024年10月1日から申請の受付が始まりました。本文は公開されていて、誰でも読めます。そこに、特定の道具や特定のサービスを禁じる項目はありません。
では、なぜ現場では「使えない」という結論になるのか。理由は、判断する人が指針を読んでいないからではありません。読んだうえで、説明が立たないから止めているのです。どの個人情報がその道具を通るのかが分からない。提供元を委託先として扱うのかどうかが決まっていない。審査で聞かれたときに出す紙がない。この3つが決まっていない状態で通してしまうと、更新の審査で指摘を受けるのは通した人になります。止めるのが合理的な判断になります。
だから、通したい側がやるべきことは、安全だと主張することではありません。枠組みのどこに座るのかを、指針の項番に沿って書いて渡すことです。この記事は、その4か所を順に埋めていく形で進みます。なお、顧客から送られてくるセキュリティの確認票に答える側の話は、当メディアの別の記事が扱っています。ここで書くのは、自社が持っている認証の側の話です。
止まるのは規程の文言ではなく、4か所のどれか
認証を持つ会社で生成AIの利用が止まるとき、止まっている場所はだいたい決まっています。規程に「生成AIの利用について定める」と一行書き足しても、止まったままです。止まるのは、規程の外にある4か所だからです。どこで、どういう問いになって出てくるのかを、先に一覧で置きます。
| 問われる点 | 審査で立つ問い | 書けていないと起きること |
|---|---|---|
| 1 適用範囲 | その道具を通る個人情報は、台帳のどの行にあたるのか | 実験だから対象外、という説明が通らず、範囲の決め方そのものを問われる |
| 2 委託先 | 提供元を委託先として扱うのか、扱わないのか。その理由は何か | 扱うなら選定基準と契約、扱わないなら入らない仕組みの説明が要る |
| 3 記録 | 決めたとおりに動いたことを、どの記録で示せるのか | 規程は立派なのに、教育も相談対応も記録が残っていない状態になる |
| 4 内部監査 | その道具を含む業務を、誰が監査したのか | 入れた本人しか中身を知らず、監査の独立性が保てない |
この表で大事なのは、真ん中の列です。審査は「規程がありますか」とは聞きません。「この場合はどうしているのですか」と、具体で聞いてきます。答えるのは規程の条文ではなく、台帳の行と、契約書と、記録の綴りです。だから準備の順番も、規程の改訂から始めません。台帳から始めます。次章から1つずつ見ていきます。
どの制度の、どの要求の話をしているのか
話を進める前に、扱う制度を整理しておきます。現場で「認証」とひとまとめに呼ばれているものは、根拠も、審査する相手も、更新の周期も違います。混ぜたまま議論すると、片方では要らない資料を、もう片方の理屈で求めてしまうことが起きます。2026年9月時点で公表されている情報にもとづいて並べます。
| 呼ばれ方 | 根拠になるもの | この記事で触れる範囲 |
|---|---|---|
| プライバシーマーク | 個人情報保護マネジメントシステムの規格と、それに準拠した構築・運用指針 | 適用範囲・台帳・委託先・記録・内部監査の5か所 |
| 情報セキュリティの認証 | 情報セキュリティマネジメントシステムの規格。国内の規格は2025年5月20日に追補が公示された | 適用範囲の決め方と、クラウド向けの管理策の側で起きること |
| クラウドセキュリティの認証 | クラウド向けの管理策を示すガイドライン規格。2026年7月27日に改訂版が発行された | 認証基準の改訂と、移行の予定 |
| AIマネジメントシステムの認証 | 人工知能のマネジメントシステムの国際規格。国内の規格は2025年8月20日に発行 | 制度が立ち上がった段階であることと、いつ聞かれ始めるか |
| SOC 2 と呼ばれる報告書 | 米国公認会計士協会が示す枠組み。会計士が出す保証報告書 | 認証ではなく報告書である、という区別だけ |
いちばん下の行だけ、性質が違います。米国公認会計士協会の公開ページは、これを会計士が役務提供組織のシステムの統制について提供する一連のサービスであり、外部委託に伴うリスクを利用者が評価するための保証報告書だと説明しています。マークが付与される認証ではなく、監査人が出す報告書です。取引先から「持っていますか」と聞かれることはありますが、自社の認証の枠組みに何かを足す話ではありません。以降は上の4つを見ます。
問われる点1:適用範囲は、狭めることができない
最初の壁が適用範囲です。生成AIを入れるとき、「まずは一部門で試すので、認証の対象からは外しておきたい」という相談がよく出ます。けれども、指針の項番 J.1.4 は「事業者は、自らの事業の用に供している全ての個人情報の取扱いを個人情報保護マネジメントシステムの適用範囲として定め、その旨を文書化すること」と書いています。全ての、と書かれているので、道具や部門を理由に外すことはできません
同じ指針は冒頭でも、定める要求事項は「事業の種類又は事業者の規模を問わず、全ての事業者に適用できることを意図している」と述べています。つまり適用範囲は、会社が選ぶものではなく、個人情報を扱っている事実のほうから決まるということです。試験運用だから外す、という説明は成り立ちません。外せるとしたら、それは個人情報がそこを通っていない場合だけです。
ここから、実務の判断が1つ立ちます。その道具に個人情報を通すのか、通さないのか。通さないと決めるなら、通らない仕組みと、通っていないことを確かめる手立てが要ります。通すと決めるなら、台帳に行が増え、次章以降の話が全部かかってきます。どちらを選んでもよいのですが、選ばないまま始めることはできません。この判断は、情報システム部門だけでは決められません。使う部門と、個人情報保護管理者と、3者で決める話になります。
台帳に何を書くか——生成AIを入れると増える行
適用範囲を決めたら、次は台帳です。指針の項番 J.3.1.1 は、個人情報を管理するための台帳を整備し、少なくとも次の項目を含むことを求めています。個人情報の項目、利用目的、保管場所、保管方法、アクセス権を有する者、利用期限、保管期限、そして管理する個人情報の件数です。件数は概数でもよいとされています。そして台帳の内容は少なくとも年一回、必要に応じて適宜に確認し、最新の状態で維持することとも書かれています。
生成AIを入れたときに変わるのは、列ではなく行の中身です。同じ個人情報が、新しい経路を通るようになるからです。とくに書き方が変わるのは、次の4つです。
- 保管場所:入力した内容が提供元の側に残るのか、残るならどこの国か
- 保管方法:契約している形態と、履歴の保存日数の設定値
- アクセス権を有する者:その道具を使える人の一覧。部門単位ではなく、実際に鍵を持っている人の単位で書く
- 保管期限:提供元の側に残る期間と、自社で消せるかどうか
この4つが埋まらないなら、それは台帳の書き方の問題ではありません。契約と設定の中身を、まだ誰も確かめていないということです。審査で聞かれて答えられないのも、たいていここです。先に管理画面を開いて、設定値をそのまま画面の写しで控えておく。控えを台帳の横に置けば、台帳の1行が、そのまま審査での答えになります。年一回の確認の対象にも、この控えを含めておきます。
問われる点2:委託先として扱うか、扱わないか
4点のうち、いちばん判断が割れるのがここです。分かれ目は道具の種類ではなく、個人データを渡して処理させているかどうかです。個人情報保護法の第27条第5項第1号は、「個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合」は第三者に該当しない、と定めています。
この条文の意味は2つあります。1つは、委託にあたるなら、本人の同意を取り直さなくてよいということ。もう1つは、そのかわりに監督の義務がかかるということです。同じ法律の第25条は「個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない」と定めています。同意が要らなくなる代わりに、監督が要る。この交換になっているわけです。
では、生成AIのサービスに個人データを入力したら委託になるのか。ここは断定を避けるべきところです。契約の形態、入力した内容の保存の有無、学習に使われるかどうかの設定によって、評価が変わりうるからです。実務では、個人データを入力する運用にするなら、委託として扱っておくのが安全側という整理をしている会社が多く見られます。扱わないと決めるなら、次章と、その次の章の両方を読んでから決めてください。求められる準備の重さが、まったく違います。
委託先として扱うなら、契約と選定基準がそのまま効く
委託先として扱うと決めた場合、指針の項番 J.9.4 が丸ごとかかってきます。求められているのは、まず「十分な個人データの保護水準を満たしている者を選定するための委託先選定基準」を確立して選ぶこと。次に、特定した利用目的の範囲内で委託契約を締結すること。そして契約に、次の8つの事項を盛り込むことです。
- 委託者及び受託者の責任の明確化
- 個人データの安全管理に関する事項
- 再委託に関する事項
- 個人データの取扱状況に関する委託者への報告の内容及び頻度
- 契約内容が遵守されていることを委託者が、定期的に、及び適宜に確認できる事項
- 契約内容が遵守されなかった場合の措置
- 事件・事故が発生した場合の報告・連絡に関する事項
- 契約終了後の措置
同じ項番は、ほかに3つのことを求めています。全ての委託先を漏れなく特定すること。委託契約書を、その個人データの保有期間にわたって保存すること。そして契約にもとづいて委託先を適切に監督すること。さらに留意事項として、選定基準には「少なくとも委託する当該業務に関しては、自社と同等以上の個人情報保護の水準にあること」と「契約に規定する事項に対応可能なことを客観的に確認できること」を含めることが挙げられています。
実務でつまずくのは、最後の一文です。大きな提供元は、個別の会社ごとに契約の文言を変えることに応じないことがあります。そのとき、公開されている利用条件と、第三者が出した報告書で客観的に確認できるかが論点になります。ここは会社ごとに事情が違うので、断定はできません。確かなのは、その確認の跡を残していない状態が、いちばん指摘を受けやすいということです。何を見て、いつ、誰が水準を満たすと判断したのか。この1枚を作っておきます。
委託先として扱わないなら、代わりに何を示すか
個人データを入力しない設計にするなら、委託の話は立ちません。ただし、入力しないと決めただけでは足りません。審査で問われるのは決意ではなく、入らない仕組みと、入っていないことを確かめる手立てです。社内ルールに書く項目そのものは、当メディアの別の記事が扱っているので繰り返しません。ここでは、認証の枠組みの中でどう説明するかに絞ります。
示すものは3つに分かれます。1つめは、入らないようにした仕組みです。使える版を法人向けの契約に限る、管理画面で履歴の保存を切る、利用できる人を申請制にする。設定値の画面の写しが、そのまま証拠になります。2つめは、確かめる手立てです。抜き取りで入力の内容を見る運用にしているか、見る人が誰で、どの頻度でやっているか。3つめは、破られたときの手当です。誤って個人情報を入れてしまったときに、誰にどう連絡し、どう消すのかの手順を先に決めておきます。
3つめは、書きにくいので抜けやすい場所です。けれども、誤って入れる事故は必ず起きる前提で作ってあるかは、審査でも実務でも効きます。手順があれば、それは緊急事態への対応の記録として残ります。手順がなければ、事故は現場で握りつぶされます。握りつぶされた事故は、次の審査ではなく次の事故のときに表に出ます。そのときには規模が大きくなっています。
問われる点3:記録は「決めたとおりに動いた跡」
3つめは記録です。指針の項番 J.4.5.5 は、作成する記録を具体的に並べています。法令や指針の特定に関する記録、個人情報の特定に関する記録、リスクアセスメントとリスク対応に関する記録、利用目的の特定に関する記録、開示等の請求への対応記録、第三者提供に係る記録、教育などの実施記録、苦情及び相談への対応記録、緊急事態への対応記録、監視・測定・分析及び評価の記録、内部監査の記録、マネジメントレビューの記録、不適合及び是正処置の記録です。
生成AIを入れたときに、新しく発生する記録は主に4つです。その道具についてのリスクアセスメントの記録。使い方を教えた教育の実施記録。現場から来た「これは入れてよいのか」という相談への対応記録。そして、誤って入れてしまったときの緊急事態への対応記録です。4つとも、規程を書いただけでは1枚も生まれません。実際にやらないと残らない種類の紙です。
相談への対応記録は、いちばん軽く見られていて、いちばん効きます。現場が迷った問いと、それにどう答えたかが並んでいる綴りは、運用が生きている証拠そのものだからです。記録の量ではなく、日付の連続性を見られていると考えると、残し方の見当がつきます。半年分がまとめて同じ日付で作られている綴りは、作った日に作られたことがすぐ分かります。月に数件でよいので、そのつど残しておくほうが強い。
問われる点4:内部監査の範囲に、その仕組みが入る
4つめが内部監査です。指針の項番 J.6.2 は、内部監査を「少なくとも年一回、及び必要に応じて適宜に」実施することを求めています。そして留意事項として、監査の範囲は「自らの事業の用に供する個人情報を取扱う全ての業務、従業者、情報システム等を含めることが重要となる」と書いています。情報システム等、と明記されているので、生成AIを組み込んだ仕組みも当然に監査の対象になります。
ここで実務の壁になるのが、同じ留意事項のもう1つの文です。個人情報保護監査責任者は、「監査員に、自己の所属する部署の内部監査をさせてはならない」とされています。生成AIを入れたのが情報システム部門なら、情報システム部門の人はその監査をできません。けれども、中身を分かっているのはその部門だけ、という状態がよくあります。だから、監査する側が読める資料を先に作っておく必要があります
読める資料というのは、設定の一覧と、台帳の該当行と、契約または利用条件の写しと、教育と相談の記録の綴りです。この4点セットがあれば、他部門の監査員でも点検できます。逆に、これがないと監査は「担当者に聞いたところ、適切に運用しているとのことでした」という一行で終わります。その一行は、更新の審査でいちばん突かれるところです。監査のために資料を作るのではなく、運用のために作った資料が監査で使える、という順番にしておきます。
情報セキュリティの認証の側では、何が起きるか
ここまでは個人情報の側の話でした。情報セキュリティの認証を持っている場合は、別の面が動きます。こちらでも適用範囲を定めますが、個人情報の側と違って、範囲を組織や事業の単位で区切ることが一般に行われています。そのうえで、選んだ管理策とその理由を書いた一覧を作ります。新しい道具が増えると、この一覧の説明が古くなるのが最初の影響です。
国内の規格自体も動いています。情報マネジメントシステム認定センターの公表によれば、2025年5月20日に追補が公示され、従来の版はこの追補の内容で改正された形になりました。またクラウド向けの管理策を示すガイドライン規格は、2026年7月27日に改訂版が発行されています。同センターは、これに伴ってクラウドセキュリティ認証の認証基準を2026年秋頃の発行を目途に改訂中であり、移行期間は改訂版の発行後3年間とする予定だと公表しています。
クラウドセキュリティの認証を持っている会社にとって、これは予定に入れる話です。生成AIのサービスは、多くの場合クラウドサービスとして使うことになります。つまり「新しい道具を1つ増やす」と「認証基準が移行する」が、同じ時期に重なる可能性があるということです。移行の作業と、道具を通す作業を別々に走らせると、同じ資料を2回作ることになります。台帳と設定の一覧を先に整えておけば、両方で使えます。
AIそのもののマネジメントシステム認証も、動き出している
もう1つ、知っておくと判断が変わる動きがあります。人工知能のマネジメントシステムについての国際規格ができ、その審査と認証を行う機関に対する要求事項も整いました。情報マネジメントシステム認定センターは、2025年7月8日の公表で、その要求事項が2025年7月7日に発行されたこと、これに伴って認証機関の認定を開始したことを明らかにしています。国内の規格も、2025年8月20日に発行されました。
制度としては立ち上がりの段階です。同センターは2026年1月14日に、AIマネジメントシステムの認証を提供する認証機関を2つ初めて認定したことを公表しました。さらに2026年6月24日の公表では、アジア太平洋地域の相互承認の取決めについて、2026年6月21日付で署名認定機関として承認されたこと、既にインドとシンガポールの機関が承認されており3機関目であることを述べています。国境をまたいで通用する仕組みが整い始めた段階だということです。
では取るべきかというと、そこは慎重に見たほうがよい。認証機関の数がまだ少なく、費用と工数の相場を読める公表資料は見当たりません。現時点で言えるのは、取引先の確認票に、この認証の欄が増える時期が近づいているということです。いま準備しておくべきなのは、認証そのものではなく、聞かれたときに答えられる台帳と記録のほうです。それは、この記事の前半でやることと同じものになります。
AIに任せてよい工程と、人が決める工程
ここまでの作業は紙の量が多く、AIに手伝わせたくなります。任せてよいのは4つです。第一に、既存の規程と手順書のどこに手を入れる必要があるかの洗い出し。現行の文書を読ませて、新しい道具に触れていない箇所を一覧にさせます。第二に、台帳の下書き。列の形をそろえ、既存の行から書き方の型を拾わせます。第三に、審査で聞かれそうな問いの一覧づくり。第四に、教育資料の下書きです。
人が決めるのは3つです。適用範囲に入れるかどうかの決め。委託先として扱うかどうかの判断。そして、審査に出す回答の確定です。この3つに共通するのは、会社としての立場を表明する行為だということです。適用範囲は、外に向かって「ここまでを対象にしています」と言うこと。委託の判断は、監督の義務を負うかどうかを決めること。審査の回答は、事実として説明できるかを引き受けること。どれも、間違えたときに責任を負うのは会社であって、道具ではありません
運用に落とすときは、線を1行で書いておきます。「洗い出しと下書きはAIに出させる。適用範囲と委託の判断、審査に出す回答は個人情報保護管理者が確定する」。この1行があると、担当が代わっても線がぶれません。そして、下書きに使った元の文書と、確定した人と日付を残しておきます。下書きの出どころが残っていないと、後から「なぜこの範囲にしたのか」を説明できなくなります。
規程だけ直して、運用が付いてこない型
最後に、いちばんよく見る失敗の形を置きます。規程の改訂は、社内でいちばん進めやすい作業です。文面を直して、決裁を通して、周知すれば終わる。だから先にそこだけが終わり、実際の運用が1つも変わらないまま更新の審査を迎えます。表に出るのは、次のような形です。
- 規程に「生成AIの利用は事前申請を要する」と書いたが、申請の様式も受付先もない——申請の記録が1件も存在せず、運用していないことがすぐ分かる
- 利用ルールを全社に周知したが、教育の実施記録がない——周知は配っただけで、誰が受けたかを示せない
- 委託先として扱うと決めたのに、選定の判断を書いた紙がない——何を見て水準を満たすと判断したのかを、後から誰も説明できない
- 台帳に行は足したが、保管場所の欄が空欄のまま——契約と設定を確かめていないことが、その1マスで見えてしまう
4つに共通するのは、決めたことと、決めたとおりに動いた跡が、対になっていないことです。対にする方法は単純で、規程に一行足すたびに、その一行が生む記録の名前を横に書く。事前申請を求めるなら申請書、教育をやるなら受講の記録、委託先として扱うなら選定の判断書。記録の名前が書けない要求は、運用できない要求です。書けないなら、その一行は入れないほうが健全です。
申請や更新の前に、何をそろえるか
最後に、順番を置きます。更新の審査までに時間がないときも、この順で進めれば形になります。先に規程を直さないのが要点です。
使う部門と情報システム部門と個人情報保護管理者の3者で決めます。通さないと決めたなら、通らない仕組みの設定値を控えます。ここが決まらないと、以降の作業は全部やり直しになります。
保管場所、保管方法、アクセス権を有する者、保管期限の4つを埋めます。埋まらない欄があれば、契約と管理画面を開いて確かめます。管理画面の写しは、台帳の横に日付つきで置きます。
委託先として扱うなら、選定基準と、契約に入れる8つの事項を確かめます。扱わないなら、入らない仕組みと確かめる手立てと事故時の手順を書きます。どちらの場合も、判断した人と日付を残します。
教育を一度やり、相談の受付先を決めて、誤入力時の連絡先を周知します。実際に動かして記録が出てから、規程の文面をその運用に合わせます。
この4工程のうち、順番を入れ替えてよいのは2と3だけです。1を飛ばすと後で全部やり直しになり、4を先にやると、規程と実態が食い違ったまま審査を迎えます。時間がないときは、4の記録の量を減らして構いません。教育1回、相談の記録が数件、事故時の手順が1枚。この最小の組み合わせでも、「決めたとおりに動いている」ことは示せます。
まとめ
認証を持っている会社で生成AIが止まるのは、制度が禁じているからではありません。枠組みのどこに座るのかを説明できないからです。問われるのは4点。適用範囲は、指針が「全ての個人情報の取扱い」を対象と定めているので、道具や部門を理由に狭められません。委託先として扱うかどうかは、個人データを渡すかどうかで分かれ、渡すなら選定基準と、契約に入れる8つの事項がそのままかかります。記録は、規程ではなく、教育・相談・事故対応・リスクの評価という実際に動かさないと生まれない4種類が見られます。そして内部監査は、情報システムを含む範囲で、入れた部門以外の人が点検できる形にしておく必要があります。
制度そのものも動いています。情報セキュリティの規格は2025年5月に追補が公示され、クラウド向けのガイドライン規格は2026年7月27日に改訂版が発行され、認証基準の改訂は2026年秋頃を目途に、移行期間は発行後3年間とされています。人工知能のマネジメントシステムの認証も、2026年1月に国内で最初の認証機関が認定され、同年6月には国境をまたぐ相互承認の枠に入りました。いま整えるべきは認証の取得ではなく、聞かれたときに出せる台帳と記録です。台帳の行を埋め、設定の写しを控え、委託の判断を1枚にし、教育と相談の記録をそのつど残す。この4つがそろっていれば、規程の文面は最後に合わせるだけで足ります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
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